結論
中西製作所は、学校給食センター、病院、外食、食品工場に、食器洗浄機や炊飯システムを納める厨房機器の会社だ。売上の約半分が学校向けで、この分野では国内でも有数のシェアを持つ。大阪の会社で、東京、群馬、奈良に拠点がある。
結論から言う。今の値段は、本質価値とほぼ釣り合っていると見る。時価総額は自己資本の4分の3で、実績の利益に対して安く見える。だが、いまは群馬工場と大阪の新拠点に約60億円を投じる局面で、借入が増え、利益は会社計画で2割減る。安さの一部は、この投資の重さで説明がつく。
稼ぐ力は着実に上がった。営業利益率は2023年3月期の3%台から、2026年3月期の7%台へ戻った。学校と外食の更新需要に加え、生産の効率化が効いた。受注残も85億円ほど積み上がっている。
一方で、利益の波には癖がある。学校給食の納品は8月と3月に偏り、四半期では毎年のように第1四半期が赤字になる。売上の1割強は日本マクドナルド向けで、この取引先の動きが利益に響く。
10年の中立では、売上は物価の分だけゆるやかに増え、利益率は6%台に落ち着くと見る。自己資本は積み上がるが、稼ぎの割合は資本コストにわずかに届かない。これが倍率を抑えている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、中西製作所は「いい仕事をする会社だが、安全域は思ったほど厚くない」。
事業の本質は、学校や外食の厨房という、長く続く現場に道具を納めることだ。需要は景気より更新の周期で動く。10年後も事業はあると思える。
堀は中程度だ。学校給食の実績は強いが、価格を自分で決められるほどではない。大口のマクドナルドが売上の1割強を占めるのも、気になる点だ。
資本の使い方は、いま分かれ目にある。借金に頼らず育ってきた会社が、約60億円の投資を借入で進める。これが利益率の維持か、稼働の遊びになるかで評価が大きく変わる。同じ業界の他社は、投資を絞って現金を積む会社が多い。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主に残る利益は、2027年3月期は投資の山で細る。山を越えた後は、純利益に近い額が残るとみる。時価総額に対する利回りは、そこから見て10%近い。
安全域はある程度ある。中立でわずかに上、やや悲観でも自己資本の半分以上を保つ。ただし、投資の失敗が重なる悲観では価値が大きく崩れる。厚い安全域とまでは言えない。
何で稼ぐ会社か
中西製作所は、業務用厨房機器を作って売るメーカーだ。売上の99.8%が厨房機器で、残りは不動産の賃貸が占める。
主力は、食器洗浄機、食器消毒保管機、炊飯システムだ。ほかに加熱、冷却、調理の機器もある。単品で売るだけでなく、厨房全体を設計して納める「システム」の提案が強みになる。納めた後の保守も手がけ、中期計画はこのメンテナンス事業の拡大を掲げている。
客は4つに分かれる。学校給食(約半分)、病院や福祉施設、中食・食品加工、外食だ。外食では日本マクドナルドが売上の11.8%を占める。学校向けは自治体の予算で動くため、納品が8月と3月に集中する。
工場は群馬と奈良にあり、三重に物流センターを持つ。群馬工場は約35億円で増築中で、2026年11月に完成する見通しだ。大阪では八尾市に新事務所を建てており、約25億円をかけて2027年12月に完成する。
社員は単体で669人。連結子会社は無く、決算は単体で出している。不動産賃貸の売上は1億円ほどで、利益への寄与は小さい。
受注高は2026年3月期に約410億円、受注残は約86億円で、売上の2割ほどの仕事を抱えて期を終える。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、学校給食という実績の積み上げにある。
給食センターの厨房は、数百から数千食を決まった時間に作り、衛生基準を満たし続けなければならない。設計の経験、機器の組み合わせ、納めた後の保守の網が、入札のたびに効く。自治体は「前に問題なく動いた会社」を選びやすい。
ただし、価格は入札と競争で決まる。ホシザキ、マルゼン、タニコーなどが同じ客を狙う。ブランドの力で値段を引き上げられる会社ではない。堀は中程度と見る。
資本効率は、ようやく資本コストに近づいた。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は、10年の中央値が7.3%で、2026年3月期は9.8%に上がった。営業利益率は7.4%。過去のピーク(2014年3月期の8.7%)に近づいたが、2023年3月期には3.5%まで落ちた経験もある。
財務は、いまは健全だ。自己資本比率は66%。ただ、有利子負債は1年で2倍の約40億円になり、今後の工場投資でさらに増える。
政策保有株は15銘柄で、帳簿で約43億円。配当収入が経常利益を支える。経営は、投資を増やしつつ配当性向3割を守る方針で、堅実な部類に入る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業務用厨房機器の市場は、新店と更新の2つの需要でできている。機器は10〜15年で替え時が来るので、更新は安定した需要になる。
学校給食は、子どもの数が減り、給食センターの統合も進むため、数量は緩やかに減る。一方で、古いセンターの建て替えや、衛生基準の高度化、人手不足による機械化が需要を支える。数量は10年でわずかに減ると見る。
外食、中食、食品工場は、数量が少し増える。人手を確保しにくく、洗浄や調理を機械に置き換える投資が進んでいる。中食の工場が増える流れは、炊飯システムや洗浄機の需要を押し上げる。
価格は物価で上がる。鋼材の価格は物価ほどには上がらないが、人件費の上昇は製造と据え付けの双方に響く。値上げが通るかは、入札と競争の中身しだいだ。
競争では、ホシザキが国内最大手として製氷機や洗浄機で強い。マルゼンは病院や学校の施工に実績がある。タニコーは給食や弁当工場に強い。ガリレイは中西製作所の株主でもある。それぞれ得意が違い、ひとつの分野での競争は激しい。
利益の波には、季節の癖がある。学校の納品が8月と3月に偏り、第1四半期は赤字になるのが通例だ。
資本政策と M&A
還元は、配当性向3割をめどにする方針だ。2026年3月期は期末配当を大きく引き上げ、性向は約3割になった。自社株買いは小さく、自己株式は9万株ほどだ。
投資は大きく動く。中期計画の設備投資は50億円で、前の計画の10億円から5倍になった。群馬工場の増築(約35億円)と大阪の新事務所(約25億円)が中心で、奈良工場の移転も計画に挙がる。投資の資金は借入で賄い、有利子負債は約40億円まで増えた。利払いの負担は、借り換えのたびに重くなる。
政策保有株は15銘柄で約43億円(帳簿)。配当が利益に入っているので、価値には二重に足していない。土地の簿価は47億円ほどで、含み益の開示はない。
大株主は、社長の中西一真氏(約10%)、レック(約9%)、取引先持株会(約8%)、ガリレイ(約3%)。シンプレクス・アセット・マネジメントは、2023年に24%を持っていたが、2026年8月には7%台まで下げた。kabufuの試算で10年以内のTOB(公開買い付け)の確率は約31%。
株主優待は、マクドナルドのギフトカードだ。費用は年1億円に近いとみて、10年の還元に足している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
学校給食で積み上げた実績と保守網は、簡単には崩れない。自治体は、動かなかった時の責任を避けるため、実績のある会社に更新を任せやすい。給食センターの建て替えが一巡する前に、衛生基準の高度化がさらに更新を促す。
足元の利益は本物だ。営業利益率は3%台から7%台に戻り、受注残も積み上がった。生産効率の改善は一時的な追い風でなく、工場の自動化と標準化で続く。
外食、中食、食品工場の伸びしろも大きい。人手不足は止まらず、洗浄や炊飯、搬送の機械化は年々進む。中食の工場が増える流れに、炊飯システムの技術は合う。会社は中期計画で、これらの分野のシェア拡大と、メンテナンス事業の拡充を重点に置く。
財務の余裕も大きい。自己資本比率は66%で、借入が増えても、営業利益は支払利息の百倍を超える。群馬工場の増築で生産が増え、納期の遅れが減れば、受注の取りこぼしが減る。
10年で営業利益率が7%台後半に乗り、外食や食品加工の売上が3割伸びれば、純利益は今の1.6倍になる。中立が前提にする利益率6%台は、足元の実力に比べて低すぎる。
慎重な見方
2027年3月期の会社計画は、売上が横ばいなのに営業利益が2割減る。足元の好調は、すでに頭打ちになっているということだ。会社は減益の理由を説明していない。
学校向けは、子どもの数が減り、給食センターの統合が進めば、数量は縮む。自治体の予算は景気で動き、入札の競争は厳しい。数量が縮むなかで、工場を拡張するのは重い判断だ。
約60億円の投資は、借入で賄われている。群馬工場の増築が稼働して利益を生む前に、減価償却と利払いが先に膨らむ。借り換えで金利が3.5%に上がれば、利払いの負担はいまの何倍にもなる。
営業利益率は、2023年3月期に3.5%、2020年から2022年は4%台にとどまった。7%台は、価格改定と生産効率が重なった例外の水準だと見たほうがよい。
日本マクドナルドは売上の11.8%を占める。外食の設備投資は、景気や出店の計画で急に止まる。大口の客が投資を絞れば、数量と工場の稼働は一度に落ちる。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。強気の見方は実績と受注残に、慎重な見方は大型投資のタイミングと大口依存に支えられている。
筆者は、慎重な見方をやや強いと見た。中立の営業利益率は、足元の7%台でなく6%台前半に置く。確率はやや悲観に23%、悲観に12%を置き、楽観は7%にとどめた。結果として、中立では今の値段を少し上回るが、確率で割り引くと、ほぼ同じになる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,014 円312 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,431 円89 億円)。 今の値に割り戻すと 3,430 円213 億円、今との差 +27.3%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,702 円541 億円 | 1,962 円122 億円 | +295.7% | +14.7% | 746 円46 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,189 円447 億円 | 1,753 円109 億円 | +231.8% | +12.7% | 1,788 円111 億円 |
| 中立 | 38% | 5,743 円357 億円 | 1,544 円96 億円 | +170.4% | +10.5% | 2,769 円172 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,026 円188 億円 | 1,190 円74 億円 | +56.4% | +4.6% | 970 円60 億円 |
| 悲観 | 12% | 738 円46 億円 | 691 円43 億円 | −47.0% | −6.1% | 172 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,014 円312 億円 | 1,431 円89 億円 | +139.1% | +9.1% | 6,445 円401 億円 |
今の株価時価総額 2,695 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 学校・外食・中食がそろって伸び、利益率が7%台後半に 利益 36 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 8,702 円541 億円
学校給食の更新と衛生基準の高度化が重なり、学校向けの数量は今より3%減る程度にとどまる。外食、中食、食品加工は人手不足による機械化投資が続き、数量が3割増える。メンテナンス事業の拡充で、納めた後の収入も厚くなる。価格は物価を少し上回る。
群馬工場の増築で生産と納期が安定し、受注の取りこぼしが減る。生産の自動化も進み、営業利益率は7%台後半まで上がる。過去のピーク(8.7%)には届かない。借入は返済が進み、10年後には現金が借金を上回る。株主の取り分は、配当性向を4割台に上げることで厚くなる。それでも堀は中程度で、価格を決める力は弱いため、倍率は式の上限の約95%にとどめた。
- 厨房機器:学校給食・病院・福祉施設:数量 9.9(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 274(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 272 億円・営業利益 21 億円。営業利益率7.6%
- 厨房機器:外食・中食・食品加工:数量 13.3(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 274(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 364 億円・営業利益 28 億円。営業利益率7.6%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 1.37(賃料(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.1 倍、時価総額 538 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:学校の更新、外食の機械化、工場増築の稼働がすべてそろう必要がある。営業利益率が過去のピークに近づく姿で、連続して当たる確度は高くない。
やや楽観 20% 更新需要とメンテナンスで利益率7%に近づく 利益 30 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 7,189 円447 億円
学校向けは緩やかに減るが、更新の需要が下支えする。外食、中食、食品加工は2割弱増え、メンテナンスの売上も増える。価格は物価並みに少し上乗せがつく。営業利益率は7%に近づき、会社が中期計画に掲げる売上420億円、経常利益28億円を上回る推移になる。
大型投資が稼働し、減価償却の増加を売上の増加が吸収する。借入は返済が進み、配当性向は4割台に近づく。ROEは資本コストの8%をわずかに上回る。ただ、取引先の大口依存と、学校予算の変動は変わらず、強い会社と呼ぶほどではない。
外食と食品加工では、保守の収入が積み上がり、売上の波がならされる。学校向けも、更新の周期が読めるため、受注の見通しは立てやすい。
- 厨房機器:学校給食・病院・福祉施設:数量 9.5(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 272(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 259 億円・営業利益 18 億円。営業利益率6.9%
- 厨房機器:外食・中食・食品加工:数量 11.9(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 272(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 325 億円・営業利益 22 億円。営業利益率6.9%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 1.36(賃料(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.42 倍、時価総額 431 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残と生産効率の改善は続きやすく、会社の中期計画を上回る推移は十分ありうる。ただし、会社自身が2027年3月期の減益を見込み、跳ね上がるほどではない。
中立 38% 中立:学校は緩やかに縮み、外食・食品加工が補う 利益 24 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 5,743 円357 億円
学校向けの数量は、子どもの数の減少と給食センターの統合で10%減る。一方で、外食、中食、食品加工は3%増にとどまる。価格は物価並みの1.34倍で、売上は530億円ほどになる。会社の長期ビジョン(2036年3月期に売上500億円)を、少し上回る水準だ。
営業利益率は6.3%に落ち着く。足元の7%台は、価格の改定と生産効率が重なった水準だと見る。人件費は物価で上がり、新しい工場の減価償却も増える。減価償却は今の水準から、新しい設備の分だけ10年後に5億円ほど増える。更新の投資も物価で膨らむため、借入の返済は2030年代にずれ込む。
配当性向4割(優待を含む)で、自己資本はゆっくり積み上がる。ただ、稼ぎの割合は資本コストにわずかに届かない。
- 厨房機器:学校給食・病院・福祉施設:数量 9.2(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 268(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 247 億円・営業利益 15 億円。営業利益率6.2%
- 厨房機器:外食・中食・食品加工:数量 10.5(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 268(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 282 億円・営業利益 18 億円。営業利益率6.2%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 1.34(賃料(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.54 倍、時価総額 328 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:学校は緩やかに縮み、外食と食品加工はわずかに伸び、価格は物価並み。利益率は足元より低く、過去の平均より高い水準が最も自然。
やや悲観 23% 大型投資の重さと学校予算の抑制で利益率が5%を割る 利益 16 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 3,026 円188 億円
学校給食センターの統合と予算の抑制で、学校向けの数量は今より18%減る。外食と食品加工も、投資の凍結で8%減る。入札の競争が激しくなり、価格は物価に届かず、10年で1.28倍にとどまる。営業利益率は5%を割る水準まで下がる。
新しい工場の償却と借入の利払いが先に重くなり、投資の効果が出る前に利益が削られる。赤字には落ちないが、ROEは5%前後に沈む。配当は利益に合わせて縮み、優待も縮小する。自己資本は積み上がるが、稼ぎが追いつかず、ためた利益の価値は目減りする。
外食の設備投資が戻る年もあるが、入札の価格競争がそれを打ち消す。新しい工場の稼働率が上がらず、固定費の重さが数年続く姿だ。
- 厨房機器:学校給食・病院・福祉施設:数量 8.4(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 256(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 215 億円・営業利益 10 億円。営業利益率4.8%
- 厨房機器:外食・中食・食品加工:数量 9.4(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 256(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 240 億円・営業利益 12 億円。営業利益率4.8%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 1.28(賃料(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み
倍率:ROE約5%でk7.5%を下回る。稼ぐ力(純利益16億円÷k=約200億円)の約75%にあたる9.5倍に置いた。
確率:大型投資が稼働する前に、償却と利払いが先に重くなる。学校予算の抑制や入札競争の激化は、過去にも起きた。慎重な見方が強いため、やや悲観に厚めの確率を置いた。
悲観 12% 大口の投資停止と入札競争で新工場が遊び、減損が出る 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 738 円46 億円
日本マクドナルドをはじめとする外食大手が投資を絞り、同時に学校向けの入札競争が厳しくなる。学校向けの数量は3割減り、外食・食品加工も2割強減る。価格は物価に追いつかず、10年で1.18倍にとどまる。群馬工場の増築は稼働率が上がらず、営業利益率は2%まで下がる。
投資の回収が遅れ、工場の一部で減損が出る。自己資本は25億円ほど減る。純利益は5億円まで細り、配当は大きく削られ、優待も廃止に近づく。財務は崩れないが、安定した専用メーカーとは見なされなくなる。
会社は借入の返済を優先し、新しい投資を止める。政策保有株の売却で財務の傷は浅くなるが、事業の稼ぐ力は戻らず、中期計画は大幅に未達となる。
- 厨房機器:学校給食・病院・福祉施設:数量 7.2(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 236(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 169 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.0%
- 厨房機器:外食・中食・食品加工:数量 8.0(納入台数(千台、システムは台数換算))× 価格 236(1台あたりの平均納入額(万円、名目))→ 売上 188 億円・営業利益 4 億円。営業利益率2.0%
- 不動産賃貸:数量 1.0(賃貸物件(一式))× 価格 1.18(賃料(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み
倍率:ROE約2%でk7.5%を大きく下回る。稼ぐ力は純利益5億円÷k=約64億円で、その約7割(PER9倍)に置いた。政策保有株(簿価約43億円)の売却益や土地の含み益は開示がなく、床に積んでいない。清算されない限り、少数株主は現金の使い方を決められない。
確率:大口の外食客が投資を絞り、学校の入札が崩れ、新工場が遊ぶ局面は、同時に起きる確率は低い。ただ、約60億円の投資と大口依存の組み合わせは、一度崩れると深いため12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
厨房機器:学校給食・病院・福祉施設
給食センター、学校、病院、福祉施設に納める洗浄機、炊飯システム、調理機器。売上の約半分で、国内の上位シェアを持つ。
| 数量納入台数(千台、システムは台数換算) | 価格1台あたりの平均納入額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.3 | 200 | 205 | 15 |
| 10 年後 中立 | 9.2 | 268 | 247 | 15 |
取り方:売上の約半分が学校向け(日本食品機械工業会の会社紹介)とされるため、厨房機器の売上409.1億円を学校・病院など205.0億円と、外食・中食・食品加工204.1億円に二分した(推定)。1台あたりの平均納入額を200(万円)、台数を10.25千台とした。小さな洗浄機から数億円の炊飯システムまで混ざるため、台数は換算の目安。営業利益は区分の開示がなく、厨房機器の営業利益率7.33%を両区分に仮置きした。市場の大きさ:学校給食と病院給食の厨房機器の更新は、国内で数千億円規模とみる(推定)。子どもの数の減少と給食センターの統合で数量は中立で0.90倍、価格は物価並みの1.34倍。競合はホシザキ、マルゼン、タニコー。
厨房機器:外食・中食・食品加工
外食チェーン、食品工場、事業所給食に納める洗浄機、炊飯システム、調理機器と保守。日本マクドナルドが売上の11.8%。
| 数量納入台数(千台、システムは台数換算) | 価格1台あたりの平均納入額(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.2 | 200 | 204 | 15 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 268 | 282 | 18 |
取り方:厨房機器の売上409.1億円から学校向け205.0億円を引いた204.1億円を、同じ平均納入額200(万円)で割って10.205千台とした(推定)。外食・中食・食品加工は人手不足による機械化投資が伸び、メンテナンス事業の拡充も加わるため、数量は中立で1.03倍。価格は物価並みの1.34倍。市場の大きさ:国内の外食産業の設備投資は、新店と更新で動き、中食の工場の増設が上積みになる(推定)。営業利益は全社の厨房機器の営業利益率7.33%を仮置き。
不動産賃貸
保有する不動産の賃貸。売上は1億円ほどで、利益への寄与は小さい。
| 数量賃貸物件(一式) | 価格賃料(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 1.02 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.34 | 1 | 1 |
取り方:不動産賃貸事業の売上は1.0億円、セグメント利益は0.47億円(有報)。物件一式を1と置き、賃料は物価並みの1.34倍で上がると見る。
リスクと懸念
大型投資の回収
群馬工場の増築(約35億円)と大阪の新事務所(約25億円)を、借入を増やして進めている。稼働が遅れる、または受注が伸びなければ、償却と利払いが先に重くなる。中期計画の設備投資は前の計画の5倍で、投資の失敗が経営に響く。
学校給食の数量減と入札競争
売上の約半分を学校向けが占める。子どもの数が減り、給食センターの統合が進めば、数量は縮む。自治体の予算は景気や財政で変わり、入札の競争は厳しい。
大口客への依存
日本マクドナルドが売上の11.8%を占める。外食大手の出店や設備更新の計画が変われば、売上と工場の稼働が一度に変わる。ほかの大口の動きも要注意だ。
利益の振れと季節性
学校の納品が8月と3月に偏り、四半期の利益は大きく振れる。2023年3月期のように営業利益率が3%台に落ちた年もあり、現在の7%台が続く保証はない。
金利の上昇
有利子負債は約40億円で、投資でさらに増える見込み。借り換えのたびに3.5%前後の金利になり、利払いは今の何倍にもなる。投資が終わって返済が進むまで、純利益を押し下げる。
人件費・部材費の上昇
従業員の賃金と据え付けの人件費は物価で上がる。鋼材などの部材費は物価ほど上がらないが、価格に移せるかは入札しだい。
今後の分かれ目
- 群馬工場の増築が予定どおり完成し、受注残と売上が増えたら
- やや楽観・楽観の確率を上げ、中立の営業利益率を見直す。
- 2028年3月期の営業利益が計画の27億円を下回ったら
- やや悲観・悲観の確率を引き上げ、中立の利益率を下げる。
- 日本マクドナルドの売上比率が15%を超える、または大幅に下がったら
- 大口依存の構造が変わったとして、数量の前提を見直す。
- 政策保有株を売却し、借入の返済や自社株買いに回したら
- 資本効率の改善として、ROEとオーナー利益の前提を上方に見直す。
- 学校給食の入札で価格競争が激しくなり、受注が減ったら
- 学校向けの数量と価格を下方に見直し、悲観の確率を上げる。
- TOBや大株主の動きが表明されたら
- 買い取り価格が本質価値を上回るかを別に確かめる。
見ておくもの
- 受注残高と、学校・外食・食品加工の受注の動き
- 営業利益率が7%台を保てるか、6%台に下がるか
- 群馬工場の完成時期と、新工場の稼働率
- 有利子負債の水準と、利払いの増減
- 日本マクドナルド向けの売上比率
倍率と資本コストの決め方
売上は納入台数×1台あたりの平均納入額で、学校向けと外食・食品加工向けに二分し、不動産賃貸を別に置いた。区分の売上は日本食品機械工業会の「学校が売上の約半分」の紹介による推定で、単価も推定になる。価格は物価並みの1.34倍を基本にした。倍率は式(正当化PER)から決め、中立はROEがk7.5%に届かないので上限1÷kの約9割弱に置いた。今の株価は見ずに決め、最後に比べて、ほぼ同じと出た。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)の約7割。リースは小さく、新リース会計基準(2028年3月期から)の影響は軽いが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→15.1 倍・やや楽観 PER 11.5→14.42 倍・中立 PER 11→13.54 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足して8.0%。事業は傾いておらず、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。