結論
那須電機鉄工は、送電用の鉄塔と、電線まわりの金具をつくる小さな鉄鋼メーカーだ。通信会社の基地局鉄塔や、高速道路の電気設備も手がける。筆者の結論は「ほぼ適正」。稼ぐ力は上がったが、その先の伸びしろは今の値段がすでに織り込んでいる。
売上の約8割が電力・通信向けで、最大の客は東京電力パワーグリッドだ(売上の3割)。鉄塔は一基ずつ設計する受注生産で、つくれる会社は全国に12社しかない。営業利益率が3%台から13%台へ上がった背景に、この供給側の絞り込みがあると筆者は見る。
一方で、今の好調は山でもある。大型の幹線鉄塔の案件は終盤に入り、会社自身が次の年度は減収を見込む。10年後の中立では、利益は今と同じ名目額にとどまる。物価の分を引けば、実質で3割近い目減りだ。
それでも株価が安く見えるのは、純現金と持ち合い株が時価総額の半分近くを占め、利益の9倍台で買えるからだ。ただ、ためた資金は稼ぎを生まず、自己資本利益率は5%台まで下がる。海外のアクティブ・ファンドが約13%を持って会社と対立しており、資金の使い方が変わるかどうかが評価をいちばん左右する。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10年後もこの事業は今の稼ぎを保つか」だ。電力網は社会の基盤で、鉄塔が要らなくなる未来は見えにくい。ただ、利益は電力会社の予算と案件の山に左右され、予測しやすい事業とは言えない。確信度は中程度である。
次に、稼いだ利益の使い方を見る。この会社は純資産の3分の1強を現金と上場株に置き、事業に使わない資金が厚い。自己資本利益率は直近で7〜8%程度で、それも先では5%台に下がる。ためた資金が稼ぎを生まない限り、中立の価値は伸びない。
安全域はどうか。純現金と持ち合い株を足せば、時価総額の約半分が事業の外にある。この厚みが悲観の床になる点は評価できる。ただし、床が厚くても、使い道を決める力が少数株主に無ければ価値には換算しにくい。経営が資金を株主に戻す方向へ動くかどうかが、最終的な分かれ目だと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は電力・通信インフラ事業で、売上の約8割、利益の約9割を占める。送電鉄塔、通信鉄塔、鋼管柱、架空線の金物や碍子(電線を支える絶縁体)をつくって売り、通信鉄塔の補強工事も請ける。工場は千葉の八千代と大阪にあり、鉄塔の製作と溶融亜鉛めっき(さび止めの加工)を自社で一貫して行う。従業員は連結で約475人で、小さな会社だ。
鉄塔は一基ずつ、建てる地形に合わせて設計する受注生産だ。客は電力会社と通信会社で、東京電力パワーグリッドが売上の3割、東北電力が1割弱を占める。受注残は約51億円と、売上の2か月半分にすぎず、案件の山谷がそのまま業績に出る。
残りの約2割が交通等インフラ事業だ。高速道路のETCや換気設備の更新、地中線工事、交通システム材料の販売、めっきの賃加工を手がける。利益率は電力・通信の6割ほどで、大型工事がひとつ消えると売上が振れる。
近年の動きでは、2020年に碍子メーカーの会津碍子を買って翌年に合併し、2022年には子会社2社を一つにまとめた。大型の買収で規模を追うより、既存の工場と製品を磨く会社である。
優良さと弱いところ
この会社の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、供給側の少なさにある。鉄塔をつくれる会社は全国で12社、そのうち8社が過去に撤退や廃業をしている。鉄塔の製作は人の手と経験に頼る度合いが高く、若い人の採用が難しい。電力会社から見れば、品質が安定して納期を守れる相手は限られる。この希少性が、値段と利益率を支えてきた。
数字にもそれが出ている。営業利益率は2019年3月期の4%台から、2026年3月期の13%台まで上がった。工場の集約を進めたことも効いている。ただ、筆者は「堀が広がった」とまでは言わない。顧客が数社の電力会社に偏り、買い手の力が強いからだ。電力会社は制度上、調達費を絞る圧力を受けている。
弱点は三つある。第一に、東京電力パワーグリッドへの依存だ。比率は下がってきたが、なお3割を超える。第二に、受注の波が大きい。幹線鉄塔の大型案件が終わると、売上は一気に減る。第三に、資本の使い方だ。純資産の厚みに比べて利益が小さく、自己資本利益率は直近でも7〜8%にとどまる。
経営は、中期経営計画の目標を低めに置き、実績が大きく上回る傾向がある。2026年3月期は営業利益が計画の1.4倍だった。保守的な会社と言える一方、株主との対話は硬い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の源は、電力網の更新と増強だ。国内には約24万基の鉄塔があり、1970年代に建てた設備が更新の時期に入っている。国の資料は、更新工事の物量が増える一方で、作業員は減っていくと述べる。建て替えは長い停電を伴うため、補修で延ばす工法も検討されており、全部が新設になるわけではない。
足もとの追い風は大きい。再生可能エネルギーの連系、原子力発電所の再稼働への対応、データセンターや半導体工場の新増設で、産業向けの電力需要は増える見通しだ。電力広域的運営推進機関のマスタープランでは、北海道・東北・東京の幹線だけで最大6〜7兆円の投資が要るとされる。もっとも、これは2050年までの長い話で、鉄塔メーカーの受注に直結するのは先になる。
通信は、携帯キャリアの5G基地局向けの部材と、鉄塔の延命工事が中心だ。基地局投資は一巡する時期があり、有報もそれをリスクに挙げている。
制度面では、電力会社の収入に上限を設けるレベニューキャップ制度が2023年度から始まった。第一規制期間は2027年度まで。設備投資の増加は認められるが、調達費の効率化も求められる。鉄塔メーカーにとっては、数量が増えても値段が抑えられる可能性がある。
競合は、全国12社の鉄塔メーカーと、鉄構・橋梁を兼ねる会社だ。当社は東日本の電力会社向けが中心になっている。鋼材価格は中国の輸出増で天井を抑えられており、物価ほどは上がらない。コストの面では追い風だが、売値にも同じ圧力が及ぶ。
資本政策と M&A
還元は急に厚くなった。配当は2024年3月期から2026年3月期の2年で2.4倍になった。中期経営計画で総還元性向30%を目安とする方針を新たに定め、2026年3月期は30.1%となった。2027年3月期の配当予想は2026年3月期の約7割で、実績を下回る。
株主との関係では、NIPPON ACTIVE VALUE FUNDが2024年に5%超を取得して以来買い増し、2026年8月時点で共同保有者と合わせ約12.7%を持つ。同ファンドは2026年6月の株主総会で、買収防衛策の廃止、発行済株式の約10%に当たる自社株買い、社外取締役の過半数化など5議案を提案した。会社は全部に反対し、賛成率は16〜20%で否決された。社長の再任も賛成は84%で、不満は小さくない。
防衛策は2027年の総会まで有効で、会社は「必要」と説明する。純現金は約53億円、上場の持ち合い株は約68億円で、合わせて時価総額の半分近い。成長投資の機動性を理由に厚い内部留保を守る会社と、資本効率を求めるファンドの綱引きが続く。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電力網への投資は、ここから長い増加の局面に入る。1970年代に建てた鉄塔の更新、再生可能エネルギーの連系、データセンターの受電設備と、需要の理由が3つ重なる。鉄塔メーカーは全国で12社、人手も細っているので、電力会社は納期と品質を守れる会社に頼らざるを得ず、値段も通りやすい。営業利益率はすでに13%台まで上がった。
会社の計画は、実績が大きく上回ってきた。2026年3月期の純利益は計画の1.7倍で、2027年3月期の第1四半期は営業利益が前年から8割近く伸びている。次の年度の減収予想も、前年と同じく保守的な数字だ。地中送電や携帯基地局の部材など、幹線鉄塔以外の受注も増えている。
資本の面でも変化が進む。配当は2年で2.4倍になり、総還元性向の目安も定めた。ファンドが約13%を持ち、株主提案への賛成が2割に迫った以上、次は自社株買いか、さらなる増配が出てくる可能性が高い。純現金と持ち合い株が時価総額の半分近くあるのだから、還元の余地は大きい。株価が利益の9倍台にとどまる今は、そこに安全域がある。
慎重な見方
今の利益は山だ。幹線鉄塔の大型案件が終盤に入り、会社は次の年度に売上を2割近く減らすと見ている。通信は基地局投資が一巡すれば鉄塔の延命工事も尽き、交通等も高速道路の大型更新が終わると細る。最大の客である東京電力パワーグリッドは売上の3割を占め、調達費を絞る力が強い。レベニューキャップの下で、電力会社に値上げを許す余地は小さい。
鋼材は物価ほど上がらないが、人件費は物価並みに上がる。本社費も物価で増える。値段が物価より遅れれば、利益率は今の13%から11%台へ下がる。10年後の純利益が今と同じ名目額なら、実質では3割近い目減りだ。
資本の使い方も不安が残る。純現金と上場株で時価総額の半分近くを抱えながら、自己資本利益率は直近でも7〜8%と、資本コストをようやく超えるかどうかだ。取締役会は6人中2人が社外で、株主提案を全部退けた。防衛策も2027年まで残る。還元が増える保証はなく、ためた資金が稼ぎを生まないまま積み上がれば、価値は目減りする。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は需要と供給の両面で説得力があり、慎重な見方は利益の山と資本の使い方を突いている。10年後の中立は、実質で横ばいの数量と、物価に届かない値段の組み合わせとした。純利益は今と同じ名目額で、ためた資金が稼ぎを生まず、自己資本利益率は5%台にとどまる。
確率は、需要が堅調な側と弱い側をほぼ同じ重みで置いた。強気には、実績が計画を大きく上回る傾向と還元の拡大余地を、慎重な見方には、顧客の偏りと調達費の圧力を反映した。本質価値は今の時価総額をわずかに下回り、「ほぼ適正」となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 29,195 円340 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 8,667 円101 億円)。 今の値に割り戻すと 20,607 円240 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 49,374 円576 億円 | 13,720 円160 億円 | +217.1% | +12.2% | 7,571 円88 億円 |
| やや楽観 | 24% | 37,609 円439 億円 | 10,118 円118 億円 | +139.8% | +9.1% | 11,455 円134 億円 |
| 中立 | 32% | 31,928 円372 億円 | 9,690 円113 億円 | +109.1% | +7.7% | 13,318 円155 億円 |
| やや悲観 | 21% | 16,031 円187 億円 | 6,431 円75 億円 | +12.9% | +1.2% | 4,717 円55 億円 |
| 悲観 | 11% | 6,002 円70 億円 | 1,286 円15 億円 | −63.4% | −9.6% | 802 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 29,195 円340 億円 | 8,667 円101 億円 | +90.3% | +6.6% | 37,862 円442 億円 |
今の株価時価総額 19,900 円232 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 12% 系統増強が本格化し、鉄塔の供給難で値段も通る 利益 39 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 49,374 円576 億円
電力会社の設備計画が、再生可能エネルギーの連系、データセンター向けの受電、1970年代の鉄塔の更新で上振れする。国内の対象市場は実質で2割広がる。鉄塔をつくれる会社が限られる中、当社はシェアを16%まで上げ、東京電力パワーグリッド以外の電力会社にも納めるようになる。
通信は基地局の高度化と鉄塔の延命工事が続き、交通等は高速道路の設備更新で受注が積み上がる。営業利益率は電力・通信で15%と今の水準を保ち、全社で13%となる。これは近年の山と同じ水準で、10年続くという前提が強気の核心だ。
資本政策も変わる。株主からの働きかけが実り、総還元性向は5割に高まって、自己資本利益率は資本コストに並ぶ。買収の提案が現れても、会社は防衛策を外して株主に判断を委ねる。
- 電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔):数量 1,560(国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 21.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 335 億円・営業利益 50 億円。市場 1560 億円 × シェア 16.0%、物価の倍率 1.34、営業利益率 15.0%
- 交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工):数量 1,150(国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定))× 価格 6.2%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 71 億円・営業利益 7 億円。市場 1150 億円 × シェア 4.6%、物価の倍率 1.34、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 14.63 倍、時価総額 576 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:マスタープラン級の送電網投資と更新が重なり、供給側(12 社・人手不足)が絞られて値が通る。ただし幹線鉄塔の大型案件は波があり、10 年続けて取り切る確度は高くないので 1 割強。
やや楽観 24% 更新需要が下支えし、利益は緩やかに増える 利益 31 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 37,609 円439 億円
国内の対象市場は実質で1割ほど広がる。当社のシェアは15.5%で、今とほぼ同じだ。鉄塔の更新と架空線の付属品が堅調で、携帯基地局向けの部材も続く。東京電力パワーグリッドへの依存はやや下がり、大型案件の山谷はあるものの、年平均では今の受注量を超える。
値段は物価に近く、10年で1.32倍上がる。営業利益率は電力・通信で14.5%、全社で12%と、近年の山に近い。人手不足で供給が絞られ、電力会社が納期と品質を重んじる状況が続く。
還元は総還元性向の目安30%を超え、4割強まで上がる。それでも自己資本は積み上がり、自己資本利益率は6%台にとどまる。ファンドとの対話は続くが、防衛策は2027年の総会で見直され、会社は資金の一部を自社株買いに回す。
- 電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔):数量 1,420(国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 20.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 291 億円・営業利益 42 億円。市場 1420 億円 × シェア 15.5%、物価の倍率 1.32、営業利益率 14.5%
- 交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工):数量 1,050(国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定))× 価格 5.8%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 61 億円・営業利益 6 億円。市場 1050 億円 × シェア 4.4%、物価の倍率 1.32、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 439 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:老朽化した鉄塔の更新と系統増強は、国の制度(レベニューキャップ)の下で電力会社が進める。需要は底堅いと見て、強めの筋書きに 4 分の 1 を置く。
中立 32% 中立:数量は横ばい、利益は今と同じ水準 利益 26 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 31,928 円372 億円
国内の鉄塔と架空線材料の市場は、実質で横ばいだ。更新と系統増強が、小型鉄塔や通信の減少を打ち消す。当社のシェアは15%を保ち、東京電力パワーグリッドの比率は3割前後にとどまる。
鉄塔の値段は物価に遅れて上がる。鋼材は物価より緩やかにしか上がらず、電力会社が調達の効率化を迫られる(レベニューキャップ)ため、10年で1.30倍と置く。営業利益率は電力・通信で14%、全社で11%台だ。本社費は物価並みに増える。
10年後の純利益は今とほぼ同じ名目額になる。実質では3割近い目減りで、近年の山を平らにならした姿である。株主への還元は4割台半ばまで上がるが、自己資本は積み上がり、自己資本利益率は5%前後にとどまる。
- 電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔):数量 1,300(国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 19.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 254 億円・営業利益 36 億円。市場 1300 億円 × シェア 15.0%、物価の倍率 1.30、営業利益率 14.0%
- 交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工):数量 950(国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定))× 価格 5.4%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。市場 950 億円 × シェア 4.2%、物価の倍率 1.30、営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 360 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画(30 年 3 月期で営業利益 27.6 億円)は、直近の実績より保守的で、実績は計画を大きく上回ってきた。ただし幹線鉄塔の山は越えつつある。山の利益を踏まえた平らな筋書きを最も重く置く。
やや悲観 21% 調達の値下げ圧力と通信投資の一巡で、利益が半減 利益 13 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 16,031 円187 億円
通信鉄塔の新設と延命工事が一巡し、電力会社は調達費の削減を強める。国内の対象市場は実質で2割縮み、当社のシェアも14%に下がる。鉄塔の値上げは物価に届かず、10年で1.26倍にとどまる。
交通等は高速道路の大型更新が終わり、リニア中央新幹線関連も計画が遅れて、受注が細る。営業利益率は電力・通信で11%、全社で8%弱へ下がる。
本社費は物価で増えるため、利益は半分になる。それでも工場の集約は済んでおり、赤字には沈まない。純現金と持ち合い株は残り、財務制限条項に触れる心配もない。電力会社の調達方針が変わる速さしだいで、傷の深さは決まる。還元は利益に合わせて細り、総還元性向は4割に戻っても額は小さい。
- 電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔):数量 1,050(国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 17.6%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 185 億円・営業利益 20 億円。市場 1050 億円 × シェア 14.0%、物価の倍率 1.26、営業利益率 11.0%
- 交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工):数量 900(国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定))× 価格 4.8%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。市場 900 億円 × シェア 3.8%、物価の倍率 1.26、営業利益率 6.0%
倍率:ROE 2.8%(事業の純利益÷自己資本、余った現金を除く)は k 7.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PER は 1÷k=13.3 倍が上限。稼ぐ力が落ちる筋書きなので上限の 7.9 割の 10.5 倍に置いた。余った現金 15 億円は戻り方 0.5 を掛けて足した。
確率:基地局投資の一巡と、電力会社の調達コスト圧縮が重なる筋書き。会社自身が有報で挙げる事業環境の変化そのもので、実際に次年度は減収と見ているため、5 分の 1 強を置く。
悲観 11% 構造的に負ける:電力会社の調達が変わり、鉄塔が縮む 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 6,002 円70 億円
電力会社が老朽鉄塔を建て替えず補修で延ばす方針を強め、鉄塔の需要量が実質で3割以上縮む。通信鉄塔は新設が終わり、延命工事も尽きる。シェアは12%まで下がり、値段は物価に追いつかず10年で1.15倍にとどまる。
工場は稼働が落ち、固定費を吸収できなくなる。営業利益はほぼゼロになり、工場の減損も出る。交通等も縮小する。鉄塔メーカーの撤退が過去に8社あった事実は、この業界で負ける側に回ると立て直しが難しいことを示している。
株主へ戻せる利益は乏しい。それでも純現金と上場株の含みは残る。会社が清算に至らない限り、少数株主はその使い道を決められないため、価値は資産の一部だけを認める。
- 電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔):数量 880(国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定))× 価格 13.8%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み))→ 売上 121 億円・営業利益 6 億円。市場 880 億円 × シェア 12.0%、物価の倍率 1.15、営業利益率 5.0%
- 交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工):数量 800(国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定))× 価格 3.5%(市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率)→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。市場 800 億円 × シェア 3.0%、物価の倍率 1.15、営業利益率 2.0%
倍率:10 年の悲観は稼ぐ力が消えるので、利益ではなく資産で値を付ける。今の自己資本 332 億円のうち、純現金と上場株の税後を戻り方で割り引いた約 70 億円(今の自己資本の 0.21 倍)を床とした。ためた利益に床の倍率は掛けていない。
確率:電力会社が建て替えをやめて補修に切り替え、鉄塔の絶対量が縮むうえ、海外メーカーとの競争で値が下がる構造的な負けを置く。起きれば深いが、供給側が絞られている現状では 1 割にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電力・通信インフラ(鉄塔・架空線材料・通信鉄塔)
送電鉄塔・通信鉄塔・鉄構・鋼管柱・架空線の金物や碍子などを作って売り、通信鉄塔の補強や設備の工事も請ける。
| 数量国内の対象市場(送電鉄塔・通信鉄塔・架空線材料・関連工事の合計、億円・今の値段で測った実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率(10 年 1.34 倍が物価並み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,300 | 15.1% | 196 | 31 |
| 10 年後 中立 | 1,300 | 19.5% | 254 | 36 |
取り方:開示が見つからないため推定。日本鉄塔協会の資料で鉄塔メーカーは全国 12 社(上場 3 社)。電力・通信向けの外部売上 195.9 億円を、当社シェア約 15% で割り戻して対象市場を約 1,300 億円(実質)とした(売上からの逆算で、独立した裏づけではない)。営業利益は内部取引を含むセグメント利益 30.7 億円(利益率は外部売上比で約 16%)。数量は実質、物価の分は価格(シェア × 物価の倍率)に入れる。
交通等インフラ(道路設備・地中線・めっき加工)
高速道路の ETC・換気設備の更新工事、地中線工事、交通システム材料、溶融亜鉛めっきの賃加工。
| 数量国内の対象市場(高速道路会社などの電気・換気設備の更新、地中線工事、めっき賃加工、億円・実質、推定) | 価格市場 1 億円あたりの当社売上(億円)=当社シェア × 物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 4.2% | 42 | 5 |
| 10 年後 中立 | 950 | 5.4% | 51 | 4 |
取り方:外部売上 41.6 億円。対象は高速道路会社など道路設備の更新工事とめっき賃加工で、開示が無いので市場を約 1,000 億円(実質)、当社シェアを約 4% と置いた推定。営業利益はセグメント利益 4.9 億円。
リスクと懸念
東京電力パワーグリッドへの依存
売上の31%を東京電力パワーグリッドが占める。比率は前期の36%から下がったが、同社の設備計画と調達方針の変更は、当社の受注量と値段にそのまま響く。取引先登録制度のもとで、仕様や価格の見直しも起こりうる。
幹線鉄塔の山が終わる
数年続いた大型の幹線鉄塔の案件が終盤に入り、受注残は前期末から6%減った。会社は2027年3月期の売上を2割近い減収と見ている。小型鉄塔の受注も減っており、次の大型案件が出るまで空白が生じる可能性がある。
電力会社の調達費の圧縮
レベニューキャップ制度では、電力会社は収入に上限があり、調達の効率化を求められる。設備投資が増えても、鉄塔の単価が物価に届かない可能性がある。第一規制期間は2027年度に終わり、次の期間の査定が焦点になる。
基地局投資の一巡
通信では、5G基地局向けの部材と鉄塔の延命工事が下支えしてきた。有報は通信基地局投資の一巡を事業等のリスクに挙げる。これが終われば、電力以外の稼ぎ頭が一つ失われる。
人手とコストの制約
鉄塔の製作は人の技能に頼る度合いが高く、採用が難しい。燃料や鋼材、運送費の上昇に加え、中東情勢による資材の供給制約も会社は懸念している。人件費の上昇を売値に転嫁できなければ、利益率が下がる。
株主との対立と資本の使い方
約13%を持つファンドと、取締役会は全面的に対立している。提案は否決されたが、賛成は2割に迫った。次の総会で追加の提案が出る可能性があり、防衛策は2027年の総会で更新の判断を迎える。対立が続けば、経営の時間と費用を取られる。
保有株の価格下落と財務制限条項
上場の持ち合い株は約68億円で、株価が下がれば自己資本が減る。有利子負債の約41億円はシンジケートローンで、財務制限条項に触れると期限前の返済が必要になる。現状は純現金で余裕があるが、赤字が続けば別だ。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の通期業績が会社予想(営業利益24億円)を大きく上回って着地したら
- 中立の利益水準を引き上げ、強気側に確率を移す。第1四半期の営業利益は前年から77%増えており、すでにその兆しがある。
- 自社株買いや大幅な増配など、総還元性向30%を超える還元が発表されたら
- ためた資金の目減りが止まり、中立の価値が上がる。強気側の筋書きに近づくと見る。
- 東京電力パワーグリッドの比率がさらに下がり、他の電力会社や通信向けが伸びたら
- 顧客の偏りが和らぎ、利益の安定度が増す。確率を強気側へ寄せる。
- 電力会社が鉄塔の建て替えを抑え、補修中心の方針に変えたら
- 鉄塔の数量が構造的に縮む。慎重な側の筋書きに確率を移す。
- レベニューキャップの次期の査定で、調達費の削減が厳しく求められたら
- 鉄塔の単価が物価に届かなくなる。やや悲観側に重みを置く。
- 買収防衛策が廃止され、買収提案が現れたら
- 株主に資金が戻る方向に動くため強気側が近づく。ただし価値の評価そのものは事業の稼ぐ力で決まる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注残と、東京電力パワーグリッドの売上比率
- 2027年3月期の通期予想の修正と、総還元性向
- 2027年の定時株主総会での防衛策の扱いと、ファンドの持ち株比率
- レベニューキャップ次期の査定と、電力会社の設備投資計画
- 通信基地局向け部材の受注の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。中立の事業の自己資本利益率は5%台で資本コスト7.25%を下回るため、PERの上限は資本コストの逆数の13.3倍で、受注の波と客の偏りを見て9割の12倍とした。今のPERが9倍台であることには寄せていない。
数量は実質で横ばい、価格は物価より遅れて10年で1.30倍、営業利益率は近年の山の13%から11%台へ戻る置き方にした。会社の中期計画は保守的で、実績が計画を超え続けてきたことも考え、中立の純利益を今と同じ名目額に置いた。
悲観は稼ぐ力ではなく、純現金と上場株の税後を戻り方で割り引いた約70億円とした。過去のPBRの底からは置いていない。工場の賃借は小さく、リース会計基準の変更の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→14.63 倍・やや楽観 PER 12.3→13.79 倍・中立 PER 12→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。