結論
協立エアテックは福岡の空調部品メーカーだ。ビルのダクトに付く防火ダンパーや吹出口、住宅の全館空調と24時間換気の機器を作る。筆者の結論はやや割高だ。事業は地味だが堅実で、借金も実質ない。それでも自己資本の稼ぎは5%前後と資本コストに届かず、純現金も株主に戻らずに積み上がってきたからである。
稼ぎの柱は二つある。一つはビル用で、火災の時に煙や炎を止める防火ダンパーは法令で設置が決まり、建物の改修でも更新される。もう一つは住宅用で、桧家住宅の全館空調に機器を納め、売上の1割強をこの1社に頼る。
この先10年、ビルの改修は底堅いが、新築の住宅は人口の減少で細る。全館空調が広がっても、新築の戸数の減りを埋めきるのは難しい。会社は営業利益率10%とROE10%を目標に掲げるが、過去12年で営業利益率が9%に届いた年は無い。値段の割に、株主の取り分が伸びる道筋は細い。筆者は事業そのものは評価する。下値は現金が支えるが、上値を開くには資本の使い方の変化が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、法令が需要を約束する部品は、地味だが息の長い商売になりうる。防火ダンパーはその一つで、建物がある限り点検と更新が続く。ここは評価できる。
オーナー利益、つまり設備を保つ投資を済ませたあとに株主に残る利益は、ならせば年4〜5億円だ。工場の更新の費用は大きくないので、利益の多くは現金として残る。問題は、その現金がどこに行くかだ。
この会社は配当で2割を返し、残りを預金と取引先の株に積んできた。自己資本が膨らむので、稼ぎは資本コストに届かない。目標のROE10%は、資本を軽くしない限り届かない数字だ。
住宅用の桧家住宅への依存も、長く持つ株主には気になる。払う値段は帳簿の4割ほどだが、帳簿の多くが眠っている以上、安全域は見かけほど厚くない。筆者は、現金の使い道が変わるのを待ちたい。その時まで、払う値段は事業の稼ぎだけで測るべきだと考える。
何で稼ぐ会社か
売上は119億円で、大きく三つに分かれる。ビル用の部品、住宅用の空調と換気の機器、そして他社の空調資材の仕入れ販売だ。
ビル用はダンパーと吹出口が中心で、売上の半分近くを占める。ダンパーはダクトの中の弁で、風の量を調整したり、火災の時に閉じて煙や炎の広がりを止めたりする。防火ダンパーは建築基準法で設置が義務づけられ、定期の点検の対象でもある。吹出口は天井や壁から風を出す部品だ。買い手は高砂熱学工業やダイダン、大気社のような空調工事の会社で、商社の住友商事マシネックスが売上の13%を占める。
住宅用は売上の3分の1だ。24時間換気の機器と、家全体を一台の空調でまかなう全館空調の機器を作る。桧家住宅が売上の12%を占め、同社の全館空調に機器を納める。全館空調は光熱費の安さと快適さで人気を集め、新築の注文住宅で広がっている。
空調資材の仕入れ販売は売上の2割弱で、利益率は低い。工場は福岡の本社に四つ、名古屋と群馬の伊勢崎に一つずつあり、中国の常熟にも子会社を持つ。従業員は連結で333人の小さな会社だ。研究所も福岡に持ち、風の量や防火の性能の試験を自前で行う。
優良さと弱いところ
ビル用の防火ダンパーには、小さいながら堀、つまり他社がまねしにくい強みがある。法令で設置が決まり、性能の認定を受けた品しか使えない。建物ごとに寸法が違う特注品を、短い納期で数多く作る力も要る。新しく入る会社は少なく、顧客の工事会社は使い慣れた品を変えたがらない。
ただ、値段を決める力は強くない。鋼材の値上がりは後から値上げで返し、大口の工事会社や商社との交渉で値段が決まる。営業利益率は過去12年で5〜8%台にとどまり、自己資本の稼ぎは過去10年の中央値で7%弱だ。
住宅用は桧家住宅への依存が気になる。売上の1割強を1社に頼り、その会社の販売の浮き沈みがそのまま響く。
資本の使い方は保守的だ。純現金は20億円あり、取引先の空調工事会社の株を10億円ほど持つ。配当は利益の2割ほどで、目標のROE10%には資本が重すぎる。現金を厚く持つことは谷の年の守りにはなるが、株主の稼ぎを薄める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
空調の部品の需要は、建物の新築と改修の二つから来る。ビルの新築は、都心の再開発と物流倉庫、工場、データセンターの建設が支える。ここ数年は半導体の工場や物流の施設の投資が多かった。一方で、建設の人手不足と資材高で工期は延び、受注から売上までの時間が長くなっている。
改修の需要は底堅い。高度成長期から1990年代に建てたビルが一斉に古くなり、空調の設備の更新が続く。防火ダンパーは点検と更新が法令で求められるので、景気が悪くても一定の量が出る。省エネの規制が強まれば、風の量を細かく調整する機器の需要も増える。
住宅は逆風だ。新築の住宅の着工は人口と世帯の減少で細り、10年で2割ほど減るとみる。ただ、高気密・高断熱の住宅が標準になり、24時間換気は法令で義務、全館空調も広がっている。1戸あたりの機器の値段は上がり、着工の減りの一部を埋める。
競争の相手は、ダンパーや吹出口では空研工業などの専業の中小、住宅の換気ではパナソニックや三菱電機のような大手の家電メーカーだ。大手が全館空調を本格的に攻めれば、住宅用の取り分は削られる。業界全体では、数量は横ばいで、伸びは値段と1戸あたりの機器の高度化から来る。
資本政策と M&A
配当は1株あたりの額を据え置く安定配当で、利益の2割ほどを払う。会社は余った資金を可能な限り株主に返すと書くが、自社株買いの最近の実績は見当たらない。
その結果、純現金は10年で5億円ほどから20億円に増えた。借入も20億円ほど残しており、現金と借金を両方持つ形だ。取引先の空調工事会社の株を10銘柄、10億円ほど持ち、配当は利益に入る。
株主は創業家とみられる個人が上位に並び、合わせて4分の1を超える。住友生命と地元の西日本シティ銀行も持つ。時価総額は40億円台と小さく、創業家の意向で資本の使い方が決まる会社とみる。買収の歴史は乏しく、中国の子会社のほかは自前で育ってきた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値段は帳簿の4割ほどで、純現金と政策保有株を合わせると時価総額の7割に届く。事業の部分は、ほとんどただで買える計算だ。しかも事業は悪くない。防火ダンパーは法令が需要を約束し、古いビルの改修で更新が続く。景気が悪くても点検の需要は消えない。
住宅も伸びしろがある。高断熱の住宅が標準になり、全館空調は光熱費の安さで人気を集める。1戸あたりの機器の値段は上がり、新築の戸数の減りを補う。2026年上期は売上が減っても営業利益は増え、値上げが通っている証拠だ。
会社は営業利益率10%とROE10%を目標に掲げた。余った資金は株主に返すとも書いている。純現金の半分を自社株買いに回すだけで、自己資本の稼ぎは大きく上がる。創業家が資本の使い方を変える決断をすれば、今の値段は安すぎる。下値は現金が守り、上値は資本政策の一歩で開ける。地味な会社ほど、変化が起きた時の値段の見直しは大きい。取引先の空調工事会社の株も、売れば現金になる。資産の厚さは、悲観の筋書きでも株主を守る。
慎重な見方
帳簿が安いのは、帳簿が稼がないからだ。自己資本の稼ぎは5%前後で、資本コストの8%に届かない。目標のROE10%は何年も掲げられているが、近づいた形跡はない。営業利益率も過去12年で9%に届いた年は無い。
住宅は細る。新築の着工は人口の減少で10年で2割ほど減り、全館空調の広がりでは埋めきれない。売上の1割強を桧家住宅に頼るので、同社の販売が落ちればすぐに響く。パナソニックや三菱電機が全館空調を本格的に攻めれば、値段の勝負になる。
ビル用も新築の波を受ける。工場や物流倉庫の投資が一巡すれば、受注は減る。鋼材の値上がりは後からしか返せない。そして現金は戻らない。創業家が上位に並び、配当は利益の2割で、自社株買いの実績は見当たらない。少数株主はこの現金の使い道を決められない。取引先の株を持ち合うのも、資本を眠らせる一つの形だ。帳簿の安さは、こうした稼ぎの低さと現金の眠りを、そのまま映した値段にすぎない。目標の数字だけでは、株主の取り分は増えない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。防火ダンパーの需要の固さと、足元の利益率の改善は本物で、上振れの筋書きに重みを残した。ただ、資本の使い方が10年変わっていないことと、住宅の新築の縮みは、目標の数字だけでは覆らない。中心は事業が今の稼ぎを物価並みに保つ筋書きに置き、悲観は純現金が支えるので1割にとどめた。資本の使い方が変われば、強気の側へ戻す。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,477 円71 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 249 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 909 円44 億円、今との差 +4.9%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,663 円129 億円 | 352 円17 億円 | +247.7% | +13.3% | 241 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,131 円103 億円 | 311 円15 億円 | +181.6% | +10.9% | 488 円24 億円 |
| 中立 | 40% | 1,737 円84 億円 | 269 円13 億円 | +131.4% | +8.8% | 803 円39 億円 |
| やや悲観 | 22% | 529 円26 億円 | 186 円9 億円 | −17.5% | −1.9% | 157 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 269 円13 億円 | 104 円5 億円 | −57.0% | −8.1% | 37 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,477 円71 億円 | 249 円12 億円 | +99.1% | +7.1% | 1,727 円83 億円 |
今の株価時価総額 867 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 全館空調が広がり、目標の利益率に近づく 利益 9 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,663 円129 億円
高断熱の住宅が標準になり、全館空調は注文住宅の当たり前の設備になる。新築の戸数は減っても、機器を付ける家の割合が大きく上がり、住宅用の台数は増える。桧家住宅以外の住宅会社にも納め先が広がる。
ビル用は古いビルの改修とデータセンター、工場の建設で数量を伸ばす。防火ダンパーの更新は法令の点検で着実に出る。値上げは鋼材高を少し上回って通り、営業利益率は9%台に乗る。経営は配当を増やし、自己資本の稼ぎは6%台に上がる。それでも資本コストには届かず、現金はなお厚い。堅実な部品メーカーとして、ようやく目標に手が届きかける10年になる。
- 住宅用の全館空調・換気:数量 38.0(機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 17(1 台あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 5 億円。台数 1.15 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 8%
- ビル用のダンパー・吹出口:数量 31.5(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 2.76(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 9 億円。個数 1.1 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 10.5%
- 空調資材の仕入れ販売:数量 46.9(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.69(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。個数 1.05 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率10%の目標に近づく筋書きだが、過去12年で9%に届いた年は無いので低い確率にとどめた。
やや楽観 20% 改修と全館空調で、利益率が過去の山に戻る 利益 7 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,131 円103 億円
ビルの改修は着実に続き、防火ダンパーと吹出口の数量は少しずつ増える。住宅は新築の戸数が減るが、全館空調の広がりがそれをほぼ打ち消す。値段は物価をわずかに上回って上がり、鋼材高は時間をかけて返せる。
営業利益率は8%台と、2018〜19年の山に戻る。配当は利益の2割強を保ち、自社株買いはしない。純現金は積み上がり、自己資本の稼ぎは5%台にとどまる。事業は強くなるが、資本の重さがそれを薄める。目標のROE10%は、この筋書きでも遠い。株主の取り分は、利益の伸びほどには増えない。改修の需要が続くことが、この筋書きの支えになる。
- 住宅用の全館空調・換気:数量 34.7(機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 16(1 台あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 4 億円。台数 1.05 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 7%
- ビル用のダンパー・吹出口:数量 30.0(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 2.72(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 82 億円・営業利益 8 億円。個数 1.05 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 9.5%
- 空調資材の仕入れ販売:数量 44.7(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.68(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。個数横ばい × 単価 1.36 倍、利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ビルの改修の底堅さと足元の利益率の改善が続けば、2018〜19年の山の利益率に戻る道筋は十分ありうる。
中立 40% ビルは横ばい、住宅は少し細り、稼ぎは物価並み 利益 6 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,737 円84 億円
ビル用は新築の波が落ち着き、改修と防火ダンパーの更新で数量は横ばいを保つ。住宅用は新築の戸数が2割ほど減るが、全館空調と換気の機器を付ける家の割合が上がり、台数の減りは5%ほどにとどまる。値段は物価並みに上がる。
営業利益率は6%台と、過去12年の中ほどだ。純利益は名目で5億円台になる。配当は利益の2割強で、自社株買いはしない。純現金と取引先の株は積み上がり、自己資本の稼ぎは4%台にとどまる。事業は息長く続くが、株主の取り分はそれほど増えない。目標のROE10%は、資本を軽くしない限り届かない。防火ダンパーの更新が、谷の年でも利益の底を支える。
- 住宅用の全館空調・換気:数量 31.4(機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 16(1 台あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。台数 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 6%
- ビル用のダンパー・吹出口:数量 28.6(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 2.68(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 7 億円。個数横ばい × 単価 1.34 倍、利益率 9%
- 空調資材の仕入れ販売:数量 42.5(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.67(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。個数 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 3%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ビルの改修の底堅さと住宅の新築の縮みが打ち消し合い、利益率は今の水準を保つのが最もありそうな道筋とみた。
やや悲観 22% 住宅の着工が落ち、ビルの新築も一巡する 利益 2 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 529 円26 億円
新築の住宅の着工が想定より速く減り、桧家住宅の販売も落ちる。大手の家電メーカーが全館空調に本格的に入り、住宅用の値段は物価ほどに上がらない。ビル用は工場と物流倉庫の投資が一巡し、新築向けのダンパーと吹出口が減る。
鋼材高は値上げで返しきれず、営業利益率は2%台に落ちる。純利益の多くは預金の利息と取引先の株の配当になる。配当は保つが、現金は谷の年の穴埋めに少しずつ削られる。価値は事業の稼ぎと、手元の現金と取引先の株で測るしかなくなる。防火ダンパーの更新だけが、細く利益を支える。会社は残るが、株主の取り分は細る。純現金の厚さだけが救いになる。
- 住宅用の全館空調・換気:数量 26.4(機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 15(1 台あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。台数 0.8 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 3%
- ビル用のダンパー・吹出口:数量 25.7(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 2.56(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 4 億円。個数 0.9 倍 × 単価 1.28 倍、利益率 6%
- 空調資材の仕入れ販売:数量 38.0(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.62(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。個数 0.85 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 2%
倍率:事業の利益が細るので PER は 1÷k の 56% の 7.0 倍に置き、稼ぐ力の床として扱う。余った現金は今の 12 億円の 0.75 倍に戻り方 0.5 を掛けて足し、床の資産 13 億円を上回る。
確率:住宅の着工の減少と工場・倉庫の投資の一巡は、どちらも起こりうる。売上の1割強を1社に頼る住宅用は振れやすいので厚めに置いた。
悲観 10% 住宅で大手に負け、ビル用も値段の勝負になる 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 269 円13 億円
桧家住宅が全館空調の機器を大手の家電メーカーに切り替え、住宅用の台数は大きく減る。ビル用は中国製の安い部品が入り、防火ダンパー以外は値段の勝負になる。建設の不況が重なり、ビルの新築と改修の両方が細る。
営業損益は赤字になり、配当は大きく減らす。工場の一部を閉じ、預金は赤字の穴埋めに食われる。価値は事業の稼ぎでなく、残った現金と取引先の株を売った手取りでしか測れない。少数株主は資産の使い道を決められず、清算の値段より低い所で値が付き続ける。地場の部品メーカーとして名前は残るが、株主に報いる力は無くなる。
- 住宅用の全館空調・換気:数量 19.8(機器の出荷台数(千台・年、推定))× 価格 14(1 台あたりの出荷単価(万円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。台数 0.6 倍 × 単価 1.2 倍、赤字
- ビル用のダンパー・吹出口:数量 21.5(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 2.40(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。個数 0.75 倍 × 単価 1.2 倍、利益率 3%
- 空調資材の仕入れ販売:数量 31.3(販売個数(万個・年、推定))× 価格 0.60(1 個あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。個数 0.7 倍 × 単価 1.2 倍、利益率 0.5%
倍率:赤字なので PER は当てない。今の自己資本 98.6 億円に PBR 0.132 を掛け、床の資産(余った現金の戻り方 0.5 の分と政策保有株の税後)の 13 億円に合わせた。
確率:住宅用の取引先を失い、ビル用も値下げが続けば赤字になりうる。ただ、純現金が厚く借金も実質ないので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅用の全館空調・換気
新築の住宅に付ける全館空調の機器と24時間換気の機器。桧家住宅の全館空調に納める。
| 数量機器の出荷台数(千台・年、推定) | 価格1 台あたりの出荷単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 33.0 | 12 | 40 | 2 |
| 10 年後 中立 | 31.4 | 16 | 50 | 3 |
取り方:製品別の販売実績 39.64 億円(有報)。台数は非開示。全館空調の本体と換気の機器をならして 1 台 12 万と置き、年 3.3 万台と推定。単一セグメントなので利益は利益率 6% の推定。
ビル用のダンパー・吹出口
ダクトの防火ダンパー・風量調整のダンパー、吹出口、ファスユニット。空調工事の会社に売る。
| 数量出荷個数(万個・年、推定) | 価格1 個あたりの平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.6 | 2.00 | 57 | 5 |
| 10 年後 中立 | 28.6 | 2.68 | 77 | 7 |
取り方:ダンパー 32.28 億円・吹出口 23.95 億円・ファスユニット等 0.98 億円の合計(有報)。特注品をならして 1 個 2 万と置き、年 28.6 万個と推定。利益は利益率 9% の推定(自社製で法令の認定品のため住宅用より高いとみた)。
空調資材の仕入れ販売
他社の空調資材を仕入れて自社品と一緒に売る。
| 数量販売個数(万個・年、推定) | 価格1 個あたりの平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 44.7 | 0.50 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 42.5 | 0.67 | 28 | 1 |
取り方:空調資材(商品)22.36 億円(有報)。1 個 0.5 万の平均で年 44.7 万個と推定。仕入れ販売なので利益率 3% の推定。全社の営業利益 5.97 億円との差 −2.23 億円を本社費とした。
リスクと懸念
住宅の着工の減少
住宅用は売上の3分の1で、新築の住宅に付く。着工は人口と世帯の減少で細り、10年で2割ほど減るとみる。全館空調の広がりで1戸あたりの値段は上がるが、減りを埋めきれない恐れがある。
桧家住宅への依存
桧家住宅が売上の12%を占める。同社の全館空調の販売が落ちるか、機器の調達先を変えれば、住宅用の数量はすぐに減る。1社への依存は、値段の交渉でも弱みになる。
大手の参入
住宅の換気と空調では、パナソニックや三菱電機のような大手がライバルだ。大手が全館空調を本格的に攻めれば、規模と販路で押され、値段の勝負になる。
鋼材の値上がり
ダンパーと吹出口は鋼材でできている。鋼材が急に上がる年は、工事会社や商社との交渉で値上げが遅れ、利益が削られる。2022年の利益率の落ち込みはその例だ。
現金が株主に戻らない
純現金は10年で5億円ほどから20億円に増えたが、還元は利益の2割ほどの配当だけだ。創業家が上位に並び、資本の使い方が変わる兆しは乏しい。目標のROE10%は資本を軽くしない限り届かない。
今後の分かれ目
- 自社株買いや増配で、純現金の使い道を数字で示したら
- 現金の戻り方を引き上げ、価値を見直す。
- 営業利益率が8%台に乗り、2年続いたら
- 利益率が過去の山に戻る筋書きの確率を上げる。
- 桧家住宅が全館空調の機器の調達先を広げたら
- 住宅用の数量を下げ、悲観側に寄せる。
- 大手の家電メーカーが全館空調の値下げで攻めてきたら
- 住宅用の利益率を下げ、確率を慎重側に寄せる。
- 創業家や大株主が株を手放す動きが出たら
- 資本の使い方が変わる契機になりうる。ただし筋書きの確率は事業と資本の中身で決める。
見ておくもの
- 営業利益率と鋼材の価格
- 住宅の新築の着工戸数
- 桧家住宅向けの売上
- 純現金と配当・自社株買いの額
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト7.25%と10年後の事業の稼ぎだけで決めた。事業のROEは中立で4%台とkに届かないので、PERの上限は1÷kで、中立はその7割に置いた。余った現金は戻り方0.5で別に足し、PERに混ぜていない。今のPBRが0.4倍台であることは計算の後に比べただけで、割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.79 倍・やや楽観 PER 9.4→13.79 倍・中立 PER 8.75→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。