結論
川田テクノロジーズは、鋼橋の大手の川田工業を中核とする持株会社だ。PC橋の川田建設、建設向けソフトとロボットの事業、ゼネコンの佐藤工業(持分 49.9%)を抱える。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を1割ほど上回り、「適正」と「やや割安」の境にあるというもの。割安と言い切れないのは、今の利益が山の高さにあるからだ。
事業の中身は三層に分けて見ると分かりやすい。橋の新設は国の予算で細っていく。老朽橋の補修は築50年超の橋が増えるため、量が伸びる。そこに、利益率が4割近いソフト事業が乗る。売上の7%にすぎないが、営業利益では全社の約3割を稼ぐ。
気になるのは二つ。一つは、今の利益が山の高さにあること。営業利益率は7.5%と過去10年で最高で、会社自身も次の3年は5〜6%台を見込む。もう一つは、純利益に佐藤工業の持分法利益が年20億円ほど混じることだ。現金で入る額は小さく、ゼネコンの市況で振れる。
資本効率は並みで、ROEは資本コストにわずかに届かない。それでも、借金がほぼなく、時価総額は自己資本の7割弱。割り引いた数字でも、安全域は一定ある。確率は、利益が山から下りる道をやや厚めに見て、悲観側へ少し寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10年後もこの事業があるか」だ。橋は老朽化が進むため、直す仕事は消えない。ここは評価できる。
次に、堀と利益の質を見る。鋼橋は入札の世界で、値段を決める力は弱い。ただ、橋の設計ソフトという自前の道具は、売上が小さくても利益率が高く、安定している。この部分は質が良い。逆に、純利益の4分の1ほどを占める持分法利益は、現金で入る額が小さく、割り引いて見る。
経営の資本の使い方は、これから試される。自己資本は1,000億円近くあるのに、ROEは資本コストにやっと並ぶ程度だ。総還元性向50%の目途が守られれば、資本効率は上向く。
安全域は、借金がほぼ無いことと、時価総額が自己資本の7割弱という点にある。筆者は、今の値段に払うなら安全域は十分にあるが、利益が山から下りる前提で見ないと危ういと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は四つある。最大は鉄構で、売上の4割強を占める。川田工業が鋼製の橋を設計・製作・架設し、建築鉄骨も手がける。明石海峡大橋など大型橋の実績があり、発注者は国土交通省・高速道路会社・自治体だ。入札で決まるため、値段は自分では決めにくい。
土木は川田建設が担う。PC橋(コンクリートの橋)とプレビーム橋の新設に加え、橋の保全工事を請け負う。売上の3割弱だが、利益率は5%前後で薄い。建築は物流倉庫を主な相手とする一般建築・システム建築で、売上の15%弱を占める。
見落とされがちなのがソリューションだ。川田テクノシステムの構造解析・CADソフトと、カワダロボティクスの産業用ロボットで成り立つ。売上は80億円弱、営業利益は31億円で、利益率は4割近い。橋の設計ソフトという「道具」を握っているため、橋の発注が減っても、保守料が積み上がる。ロボットはまだ小さく、人型ロボットの開発は先行投資の段階だ。
最後に、持分法適用会社の佐藤工業がある。東南アジアに強いゼネコンで、川田が49.9%を持つ。連結の売上には載らないが、純利益には年20億円規模で効く。大口顧客は清水建設で、完成工事高の約15%を占める。
優良さと弱いところ
堀は、鋼橋の技術者集団と大型橋の実績だ。長大橋の設計・架設を担える会社は限られる。さらに、橋を設計するソフトまで自社で持つ点が、他の橋梁メーカーにない強みになっている。ただし、値段を決めるのは発注者だ。堀は受注のしやすさにとどまり、値上げの力にはならない。
収益性は、直近で急に上がった。営業利益率は2015年に2%台だったが、2026年3月期は7.5%になった。選別受注と設計変更の獲得、ソフトの積み上がりが効いた。ただし、会社の次の3年の計画は5〜6%台で、山の高さを自分でも認めている。
財務は堅い。自己資本比率は6割を超え、純有利子負債はほぼゼロ。営業利益で利払いの22倍をまかなえる。
弱みは三つ。一つは、純利益の4分の1ほどが持分法利益で、中身が見えにくいこと。二つ目は、資本の効率だ。ROEは過去10年の中央値で9%台。資本コストを超える年と下回る年が混じる。三つ目は、鉄構の売上が前期に2割落ちた点だ。大型工事の工程が長引き、売上が計上されなかった。受注残は1,780億円と厚いが、売上への換算に時間がかかる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
橋の需要は、新設から保全へ移っている。橋建協の統計では、道路橋の受注量は1995年度の約86万トンから2018年度の約22万トンへ、4分の1に減った。新しい橋を架ける場所が少なくなったためだ。
一方、築50年を超える道路橋は2040年に約4分の3になる見通しだ。補修・補強・架け替えは増え続ける。ただし保全は1件あたりの金額が小さく、現場を回す技術者の数が上限になる。需要があっても、人手が足りなければ売上にならない。
競合は、鋼橋では横河ブリッジ、宮地エンジニアリング、駒井ハルテック、JFEエンジニアリングなどだ。各社の力は近く、入札で値段が崩れやすい。2005年の談合事件の後、業界は一時、赤字に沈んだ。PC橋ではゼネコンや専業会社と競う。
建築は物流倉庫の更新が支えるが、民間の設備投資の景気に動く。ソフトは、国や自治体の橋の点検・設計にデジタル化が進むほど、使われる場面が増える。
10年の標準的な姿は、橋の数量がほぼ横ばい、値段は物価並みだ。新設の減少を保全の増加がほぼ埋める。同じ領域の横河ブリッジHDとの違いは、川田がソフトと持分法という別の稼ぎを持つ点にある。
資本政策と M&A
還元の姿勢は、はっきり変わった。第4次中期経営計画(2026〜28年度)は、総還元性向50%を目途とし、年間配当に下限を設けた。3年で還元に120億円を回す。2026年4月には株式を3分割し、個人投資家を意識した動きも見える。
政策保有株は、川田工業分で上場12銘柄が約30億円と小さい。縮減の方針は持つが、還元の原資としては小さい。
資本配分で大きいのは、佐藤工業の持分だ。持分法適用にとどまり、配当で戻る現金の額は開示されていない。筆者は、この持分が価値を生む一方で、使い道を外から見えにくくしている点を気にしている。
成長投資は3年で30億円と控えめで、M&Aも視野に入れるとしている。大型の買収は想定されていない。買われる側になる可能性は、公共工事の主要プレーヤーである点を考えると低い。ただし、創業家の持分は開示から確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
橋の保全は、これからが本番だ。築50年を超える橋は2040年に4分の3になる。補修の予算を後回しにできない管理者が増え、受注は積み上がる。受注残はすでに1,780億円と厚く、売上の1.5年分以上ある。大型工事の工程が長引いた分は、期ずれで戻る。
ソフトとロボットは、利益の伸びしろが大きい。橋の設計・点検のデジタル化が進むほど、構造解析ソフトの利用が増える。利益率は4割近く、売上が2倍になれば営業利益は2倍になる。建設の人手不足は、ロボットの導入を後押しする。
資本政策も変わった。総還元性向50%、年間配当の下限、3分割。自己資本が厚く借金が少ないので、還元を厚くしても傷まない。ROEが9%台に乗れば、PERは12倍台が妥当だ。
佐藤工業は東南アジアの建設需要を取り込み、持分法利益は年20億円を超えて安定する。橋梁の最大手同士の入札では、技術評価の加点が効き、値崩れは起こりにくい。営業利益率は7%台を保てる。
慎重な見方
今の利益は山の高さにある。営業利益率7.5%は過去10年の最高で、会社自身が次の3年は5〜6%台と見ている。2015年には2%台だった。選別受注が効いたのは確かだが、新設の橋は減り続ける。新設が減れば、各社が残りの案件を低い値段で奪い合う。2005年の談合事件のあと、業界が赤字に沈んだ記憶は消えていない。
保全は量が増えるが、1件が小さく、技術者の数が上限になる。需要があっても受けきれず、売上は増えない。実際に、2026年3月期は大型工事の工程が伸びて、鉄構の売上が2割減った。
純利益の中身にも不安が残る。持分法利益の4分の1は、ゼネコンの市況と為替で振れる。現金で入る額は見えない。ロボットは開発費が先行し、まだ小さい。ROEは資本コストにやっと並ぶ程度で、規模が増えても価値は増えにくい。
一つの顧客(清水建設)への依存が15%あり、建築は物流倉庫の投資が一巡すれば落ちる。10年後、利益率は全社で5%台に下がる。それが現実的な姿だ。
どちらに重みを置いたか
中立の線では、橋の量は新設の減少を保全の増加が埋めてほぼ横ばい、値段は物価並みに上がる。利益率は山から少し下り、7%を保つ。ROEは資本コストにわずかに届かず、倍率は式の上限の9割に置いた。強気の言い分は、ソフトとロボットの伸びと還元の拡大に頼る分だけ、実現の確度に差がある。慎重な言い分は、足元の利益が山であるという事実に立つ。確率は、楽観と悲観の両端を薄くし、中立に厚く置いた。悲観の側をわずかに厚くしたのは、利益率の山と持分法の不透明さのためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,252 円1,133 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 849 円427 億円)。 今の値に割り戻すと 1,652 円831 億円、今との差 +25.1%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,013 円2,019 億円 | 1,153 円580 億円 | +291.3% | +14.6% | 413 円208 億円 |
| やや楽観 | 24% | 3,210 円1,615 億円 | 1,044 円525 億円 | +222.2% | +12.4% | 1,021 円514 億円 |
| 中立 | 36% | 2,491 円1,253 億円 | 895 円450 億円 | +156.5% | +9.9% | 1,219 円613 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,050 円528 億円 | 656 円330 億円 | +29.2% | +2.6% | 375 円189 億円 |
| 悲観 | 10% | 325 円163 億円 | 398 円200 億円 | −45.3% | −5.9% | 72 円36 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,252 円1,133 億円 | 849 円427 億円 | +134.9% | +8.9% | 3,101 円1,560 億円 |
今の株価時価総額 1,320 円664 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 保全とソフトが伸び、利益率が高いまま続く 利益 139 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 4,013 円2,019 億円
国と自治体の老朽化対策が拡充され、保全の工事が10年で5割近く増える。川田は鋼橋とPC橋の両方で大型案件を取り、橋の利益率が高く保たれる。ソフトは橋の設計のデジタル化で利用が増え、利益率は38%を保つ。ロボットは建設現場に入り込み、黒字に転じる。佐藤工業は東南アジアの建設需要で利益を伸ばし、持分法利益は年30億円台で安定する。全社の営業利益率は9%を超える。還元は総還元性向60%近くへ引き上げられ、ROEは9%台に乗る。2026年3月期の山の高さが、そのまま水準になる形だ。受注残は厚いまま推移し、大型工事の工程の遅れも解消する。清水建設など大口の民間顧客との取引も広がり、建築の採算が安定する。株式の3分割で個人の持ち株が増え、還元の拡大が評価される好循環も起こる。
- 鋼橋(新設・保全):数量 20.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 482 億円・営業利益 63 億円。20×24.12、営業利益率13.0%
- 建築鉄骨・その他鉄構:数量 165(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.21(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 200 億円・営業利益 20 億円。165×1.2144、営業利益率10.0%
- 土木(PC橋・保全):数量 135(工事件数(件・年、推定))× 価格 3.64(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 491 億円・営業利益 34 億円。135×3.6403、営業利益率7.0%
- 建築(物流倉庫・システム建築):数量 62.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 4.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 251 億円・営業利益 21 億円。62×4.0444、営業利益率8.5%
- ソリューション(ソフト・ロボット):数量 32.0(ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定))× 価格 5.26(1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む))→ 売上 168 億円・営業利益 64 億円。32×5.2595、営業利益率38.0%
- その他(橋梁付属物・航空):数量 90.0(取引・業務の件数(件・年、推定))× 価格 1.38(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 1 億円。90×1.3772、営業利益率1.0%
倍率:事業の純利益 139 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 14.42 倍、時価総額 2,019 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保全の拡大、ソフトとロボットの伸び、佐藤工業の好調、入札の安定が全部そろう必要がある。利益率が山の高さを保つ前提で、そろう確度は低い。
やや楽観 24% 保全が堅調で、利益率が高めを保つ 利益 118 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,210 円1,615 億円
保全の工事が10年で約3割増え、新設は1割ほど減る。値段は物価並みに上がり、橋の利益率は12%台を保つ。ソフトは年に数%ずつ増え、利益率は37%。ロボットは赤字を脱するが、小さな事業にとどまる。建築は物流倉庫の更新で堅調。佐藤工業は市況の波を越えて年25億円ほどを稼ぐ。営業利益率は8%台で、2026年3月期の水準にやや届かない。総還元性向は55%前後で続き、自社株買いが自己資本の膨らみを抑える。ROEは8%台で、資本コストに並ぶ。強気ほどの飛躍はなく、堅実に利益を積む10年だ。受注残は厚みを保ち、工程の遅れも少しずつ解消する。橋の設計ソフトは、国や自治体の点検・設計のデジタル化で売上が伸びる。建築は清水建設など大口の取引が続き、民間の設備投資が崩れない限り採算が保たれる。
- 鋼橋(新設・保全):数量 18.5(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 446 億円・営業利益 56 億円。18.5×24.12、営業利益率12.5%
- 建築鉄骨・その他鉄構:数量 158(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.21(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 192 億円・営業利益 18 億円。158×1.2144、営業利益率9.5%
- 土木(PC橋・保全):数量 128(工事件数(件・年、推定))× 価格 3.64(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 466 億円・営業利益 30 億円。128×3.6403、営業利益率6.5%
- 建築(物流倉庫・システム建築):数量 58.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 4.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 235 億円・営業利益 18 億円。58×4.0444、営業利益率7.5%
- ソリューション(ソフト・ロボット):数量 28.5(ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定))× 価格 5.26(1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む))→ 売上 150 億円・営業利益 56 億円。28.5×5.2595、営業利益率37.0%
- その他(橋梁付属物・航空):数量 88.0(取引・業務の件数(件・年、推定))× 価格 1.38(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 121 億円・営業利益 1 億円。88×1.3772、営業利益率0.5%
倍率:事業の純利益 118 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.56 倍、時価総額 1,615 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保全の需要増の確度は高く、ソフトの積み上がりも続く。ただし人手不足と利益率の山という二つの不確かさが残る。
中立 36% 新設は縮み保全が埋め、利益率は山から少し下る 利益 96 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,491 円1,253 億円
新設の鋼橋は10年で1割弱減り、保全が増えてほぼ埋める。値段は物価並みの3%で上がる。橋の利益率は11%台で、2026年3月期の13%よりは低い。土木は薄利のまま、建築は7%前後。ソフトは年に数%ずつ増え、営業利益は46億円に届く。ロボットは小さな黒字にとどまる。佐藤工業の持分法利益は年25億円ほどで、ゼネコンの波を均した姿だ。営業利益は約107億円、純利益は96億円。還元は総還元性向55%で、10年に約450億円。自己資本は約1,360億円に積み上がり、ROEは7%台で、資本コストの手前に落ち着く。
- 鋼橋(新設・保全):数量 17.5(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 24(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 422 億円・営業利益 49 億円。17.5×24.12、営業利益率11.5%
- 建築鉄骨・その他鉄構:数量 150(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.21(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 16 億円。150×1.2144、営業利益率9.0%
- 土木(PC橋・保全):数量 120(工事件数(件・年、推定))× 価格 3.64(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 437 億円・営業利益 24 億円。120×3.6403、営業利益率5.5%
- 建築(物流倉庫・システム建築):数量 55.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 4.04(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 222 億円・営業利益 16 億円。55×4.0444、営業利益率7.0%
- ソリューション(ソフト・ロボット):数量 25.0(ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定))× 価格 5.26(1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む))→ 売上 131 億円・営業利益 46 億円。25×5.2595、営業利益率35.0%
- その他(橋梁付属物・航空):数量 85.0(取引・業務の件数(件・年、推定))× 価格 1.38(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 0 億円。85×1.3772、営業利益率0.0%
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,253 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:橋の数量はほぼ横ばい、値段は物価並み、利益率は今の山から少し下がる。最も確度の高い筋書きで、厚く置いた。
やや悲観 22% 新設の入札が荒れ、利益率が元の水準へ戻る 利益 54 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 1,050 円528 億円
新設が2割近く減り、入札の値段が下がる。物価の分を価格に移しきれず、橋の利益率は9%に下がる。保全は増えるが、人手不足で受けきれない。土木は4%台、建築も物流投資の一巡で5%台に落ちる。ソフトは堅調だが、利益率は32%に下がる。佐藤工業も市況の悪化で、持分法利益は年15億円ほどに縮む。営業利益は約60億円、純利益は54億円。還元は総還元性向50%台を保てず、10年で約330億円。ROEは4%台で、資本コストに届かない。優良な橋の大手という評価は残るが、稼ぎは普通の建設会社並みに近づく。ソフトの高い利益率が全体を支えるが、橋の事業が薄利に傾いた分は埋まらない。受注残は厚くても、利益に変わる割合が落ちる形だ。清水建設など大口の顧客への依存も、交渉力の弱さとして表に出る。
- 鋼橋(新設・保全):数量 16.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 23(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 360 億円・営業利益 32 億円。16×22.5、営業利益率9.0%
- 建築鉄骨・その他鉄構:数量 135(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 153 億円・営業利益 11 億円。135×1.1328、営業利益率7.0%
- 土木(PC橋・保全):数量 112(工事件数(件・年、推定))× 価格 3.40(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 380 億円・営業利益 15 億円。112×3.3958、営業利益率4.0%
- 建築(物流倉庫・システム建築):数量 50.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.77(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 189 億円・営業利益 10 億円。50×3.7727、営業利益率5.5%
- ソリューション(ソフト・ロボット):数量 22.0(ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定))× 価格 5.10(1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む))→ 売上 112 億円・営業利益 36 億円。22×5.1025、営業利益率32.0%
- その他(橋梁付属物・航空):数量 80.0(取引・業務の件数(件・年、推定))× 価格 1.28(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 −1 億円。80×1.2847、営業利益率-1.0%
倍率:ROE 4.2% が k 7.75% 以下で、RONIC=8.0%+1/2×(4.2%−8.0%)=6.1%、g 4% から正当化 PER=(1−4%÷6.1%)÷(8.0%−4%)=8.6 倍。稼ぐ力が資本コストに届かない分を、そのまま式で置いた。 持ち合い株の含み益(評価差額金26億円×戻り方0.5)を余り資産として足している。
確率:利益率が山から元の水準へ戻る道は、2015年前後に3%台だった過去が示す。人手不足と入札の悪化が重なる確度は、小さくない。
悲観 10% 入札の値崩れと人手不足、持分も傷む 利益 19 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 325 円163 億円
新設が3割減り、入札競争が荒れて、橋の値段は物価に届かない。保全も、予算の制約と技術者不足で伸びない。鋼橋の利益率は7%に下がり、土木は3%、建築は4%まで落ちる。ソフトは顧客の発注減で伸びず、ロボットは開発費がかさんで赤字が続く。佐藤工業は東南アジアの市況悪化で利益が細り、持分法利益は5億円ほどに縮む。営業利益は約25億円、純利益は19億円。還元は配当の下限を守るのがやっとで、10年に約200億円。自己資本は、持分の評価損の分だけ削られて約1,190億円にとどまる。かつての安定した大手という評価が外れ、利益のぶれる工事会社として見られる姿だ。
- 鋼橋(新設・保全):数量 14.0(鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定))× 価格 21(1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む))→ 売上 290 億円・営業利益 20 億円。14×20.7、営業利益率7.0%
- 建築鉄骨・その他鉄構:数量 120(工事件数(件・年、推定))× 価格 1.04(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 6 億円。120×1.0422、営業利益率5.0%
- 土木(PC橋・保全):数量 100(工事件数(件・年、推定))× 価格 3.12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 312 億円・営業利益 9 億円。100×3.1242、営業利益率3.0%
- 建築(物流倉庫・システム建築):数量 42.0(施工する延床面積(千㎡・年、推定))× 価格 3.47(1 千㎡あたり売上(億円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 6 億円。42×3.4709、営業利益率4.0%
- ソリューション(ソフト・ロボット):数量 18.0(ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定))× 価格 4.71(1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む))→ 売上 85 億円・営業利益 24 億円。18×4.71、営業利益率28.0%
- その他(橋梁付属物・航空):数量 70.0(取引・業務の件数(件・年、推定))× 価格 1.18(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 −2 億円。70×1.1819、営業利益率-2.0%
倍率:稼ぐ力は純利益19億円÷k 7.75%=約238億円だが、構造的に負けた筋書きなので利益の質も落ちるとみて、やや悲観(8.6倍)より低い、純利益の約8.6倍(約163億円)に置いた。今の自己資本990億円の約0.165倍にあたる。ROEがkを大きく下回るので、帳簿の自己資本は床にならない。純現金は無く、売れる資産は稼ぐ力より小さいので床には使わない。
確率:新設が縮む産業で入札が崩れる例は2005年の談合事件のあとにある。人手不足とゼネコンの市況悪化が重なる確度は低いが、無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋼橋(新設・保全)
川田工業が手がける道路橋・鉄道橋の設計・製作・架設。新設から保全へ重心が移る。
| 数量鋼橋の製作・架設量(千トン・年、推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、設計・架設を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19.0 | 18 | 342 | 46 |
| 10 年後 中立 | 17.5 | 24 | 422 | 49 |
取り方:鉄構セグメントの外部売上 487 億円のうち、鋼橋を約 7 割の 342 億円、鉄骨を残りの 145 億円と置いた。橋建協の統計では道路橋は 1 トンあたり約 156 万円(2018 年度)で、その後の鋼材・労務の上昇を見て 180 万円(1 千トンで 18 億円)とすると、年約 1.9 万トン。業界全体(約 21 万トン)の 1 割弱にあたる。開示は無く推定。数量は実質のトン数、物価は価格に入れる。
建築鉄骨・その他鉄構
川田工業・富士前鋼業が手がける建築鉄骨など、橋以外の鉄構。
| 数量工事件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 0.91 | 145 | 17 |
| 10 年後 中立 | 150 | 1.21 | 182 | 16 |
取り方:鉄構の外部売上 487 億円から鋼橋の 342 億円を引いた 145 億円。1 件あたり約 0.9 億円、年約 160 件と推定。開示は無く推定。
土木(PC橋・保全)
川田建設が手がけるPC橋・プレビーム橋の新設と、橋梁の保全工事。
| 数量工事件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 2.72 | 326 | 17 |
| 10 年後 中立 | 120 | 3.64 | 437 | 24 |
取り方:土木セグメントの外部売上 326 億円、営業利益 16.5 億円(5.1%)。1 件あたり約 2.7 億円、年約 120 件と推定。開示は無く推定。
建築(物流倉庫・システム建築)
物流倉庫を主な対象とする一般建築・システム建築の設計と工事。
| 数量施工する延床面積(千㎡・年、推定) | 価格1 千㎡あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 3.02 | 166 | 13 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 4.04 | 222 | 16 |
取り方:建築セグメントの売上 166 億円、営業利益 13.1 億円(7.9%)。1 ㎡あたり約 30 万円(1 千㎡で 3.0 億円)として年の延床を約 5.5 万㎡と推定。開示は無く推定。
ソリューション(ソフト・ロボット)
川田テクノシステムの建設向けCAD・構造解析ソフトと、カワダロボティクスの産業用ロボット。
| 数量ソフトの利用・保守契約など(千件・年、推定) | 価格1 千件あたり売上(億円・名目、ロボット販売を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 3.93 | 78 | 31 |
| 10 年後 中立 | 25.0 | 5.26 | 131 | 46 |
取り方:ソリューションの売上 78.5 億円、営業利益 31 億円(39%)。大半は設計ソフトの利用料・保守料で、ロボットは小さい。契約数の開示は無く、1 件あたり約 39 万円・年約 2 万件の売上単位に置いた推定。
その他(橋梁付属物・航空)
橋梁付属物の販売(橋梁メンテナンス)と、航空機使用事業(東邦航空など)。
| 数量取引・業務の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 1.03 | 93 | −4 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 1.38 | 117 | 0 |
取り方:その他の外部売上は連結 1,150 億円から他を引いた約 92.5 億円、営業損益は 3.9 億円の赤字。件数は開示が無く、売上を割る単位として 1 件約 1 億円と置いた推定。
リスクと懸念
利益率の山からの下落
営業利益率7.5%は過去10年で最高だ。会社は次の3年を5〜6%台と見ている。新設の入札が荒れ、鋼材・労務の上昇を価格に移せなければ、利益は計画より早く落ちる。
持分法利益の不透明さ
佐藤工業は持分49.9%で、純利益に年20億円規模で効く。ゼネコンの市況と為替で振れ、現金の戻りも開示されない。持分が傷めば、純利益の4分の1が動く。
人手不足で売上にならない
保全は件数が増えるが、1件が小さい。技術者が足りなければ工程が延び、売上が先送りされる。2026年3月期に鉄構の売上が2割減ったのも、工事の長期化が理由だ。
新設橋梁の入札競争
新設の橋は国の予算の制約で減る。数が減るほど各社が低い値段で応札する。2005年の談合事件の後に業界が赤字へ沈んだ例がある。
顧客の集中と民間建築の景気
清水建設が完成工事高の約15%を占める。建築は物流倉庫の投資に左右され、投資が一巡すれば受注は落ちる。2023年3月期には建築セグメントが赤字になった。
ソフト・ロボットの伸び悩み
利益の約3割を稼ぐソフトは、橋の設計という限られた市場に依る。ロボットは先行投資が続く。伸びなければ、高い利益率という利点が小さくなる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて7%を超え、受注残が1,800億円を上回ったら
- 利益が山でなく水準として定着したことになる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 新設鋼橋の入札で、落札率が大きく下がる案件が続いたら
- 入札が荒れ始めている。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ソリューションの営業利益が40億円を超え、ロボットが黒字になったら
- ソフトとロボットが第二の柱になる。楽観寄りに見直す。
- 佐藤工業からの配当が開示され、持分法利益の現金化が確認できたら
- 純利益の質が上がる。中立の倍率を上限寄りに置ける。
- 総還元性向50%を超える自社株買いが続き、ROEが8%を超えたら
- 資本効率が改善している。中立の線を上へ見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(鉄構・土木・建築の内訳)
- ソリューションの営業利益とロボットの損益
- 新設鋼橋の入札の落札率
- 佐藤工業の持分法利益と配当
- 総還元性向と自社株買いの実施額
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト7.75%と長期の成長率4%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。10年中立はROE約7.1%、RONICは約7.6%、式の値は約11.8倍。ROEが資本コスト以下なので式の値が上限で、その約9割の10.5倍に置いた。利益のうち持分法利益が約4分の1あり、現金の戻りが見えないぶん、上限の下の方に置いた。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で置き、7割へ引き上げていない。今の株価や過去のPERは使っていない。10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形で置いた(工場・本社が中心で、新リース会計の影響は小さい)。純利益÷営業利益は過去の中央値0.98に対し、中立で約0.9と、持分法の寄与を厚く見積もりすぎないよう下げた。 持ち合い株の含み益(評価差額金26億円)は戻り方0.5で余り資産に足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.2→14.42 倍・やや楽観 PER 11.5→13.56 倍・中立 PER 10.5→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。