結論
KTCは、京都の作業工具メーカーだ。自動車整備に使うレンチやソケット、スパナを作り、高級ブランド「nepros」を持つ。売上は83億円、営業利益率は9%ほどだ。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。ブランドは強いが、それが利益率に表れていない。12年で最も高い営業利益率でも11%に届かず、ROE(自己資本に対する純利益の割合)は4〜6%で推移してきた。
会社は2026年5月、立て直しの計画を出した。2030年度に売上100億円、営業利益率10%、ROE8%を目指す。子会社の不適切会計で計画の公表が遅れ、その後始末を終えた段階だ。
筆者は、売上は物価に乗って伸びるが、数量はほぼ横ばいとみる。国内の整備士は減り、通販には安い工具が並ぶ。10年後の営業利益率は9.5%、純利益は8億円ほどにとどまる。
純現金22億円と賃貸不動産は下支えになる。ただ、事業の稼ぐ力が資本コストに届かない限り、帳簿の厚さは値段の根拠にならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、KTCは「よい製品を持つが、よい商売とまでは言えない会社」だ。
10年後も存在するか。ボルトとナットは残り、整備士はレンチを握り続ける。答えは「はい」だ。堀は広がるか。neprosの名声は保たれるが、通販で安い工具と並べられる場面は増える。広がるとは言いにくい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて自由に使える利益は、年5億円前後だ。自己資本126億円に対して薄い。
経営の資本の使い方には、まだ点を付けられない。不適切会計の後始末を終え、計画を出し直したばかりだ。ROE8%の目標が自社株買いを伴うなら、評価は変わる。
安全域はどうか。時価総額は自己資本の半分ほどで、帳簿の上では安い。だが、ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益は帳簿の額ほどの値打ちを持たない。筆者は、稼ぐ力から測った値段は今の時価総額をやや下回るとみる。
何で稼ぐ会社か
KTCは1950年に京都で創業した。本社と工場は京都府久御山町にある。連結の従業員は248人と小さい。
売上の97%が工具事業だ。自動車整備用のレンチ・ソケット・ドライバー、電気工事の工具、医療用の工具、精密鋳造品を作る。主力の高級品が「nepros」で、鏡のように磨いた仕上げと軽さで、プロの整備士に指名買いされる。
もう1つの柱が、締め付けを記録する工具だ。IoT(ネットにつながる機器)で締め付けの力をデータに残す「TRASAS」や、ICタグを埋め込んで工具を管理する「nepros ID」がある。整備や組立で、作業の証拠を残す需要に応える。
売り先は3社で4割を超える。工具の通販・卸のトラスコ中山が18%、整備工具の専門商社ヤマト自動車が14%、トヨタ自動車が12%だ。トヨタ向けには、新車に積む車載工具や販売店の整備工具がある。
残りの3%は、旧本社などの賃貸と太陽光発電だ。売上は小さいが、利益率は高い。
工場は国内に集め、鍛造から仕上げまでを自社で手がける。磨きや熱処理の技が品質を決めるので、ここを外に出さない。海外売上はまだ小さく、国内の整備と工場の需要に支えられた会社だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、整備の現場でのブランドだ。neprosは国産の高級工具の代名詞になり、トヨタの車載工具も長く手がける。
ただ、数字はその強さを十分に映していない。営業利益率は過去12年で6〜11%、ROEは4〜6%にとどまる。資本コストの7.75%を一度も上回っていない。ブランドで値段は取れても、規模が小さく、固定費を吸収しきれない。
弱点は3つある。1つは販売先の集中で、上位3社に4割強を頼る。2つ目は管理の甘さだ。子会社の北陸ケーティシーツールで不適切な会計が見つかり、調査に5.6億円かかった。デジタルトルクレンチの自主回収も出した。3つ目は規模で、海外大手と比べて研究開発に使える額が限られる。
財務は堅い。自己資本比率は80%、純現金は22億円ある。ただ、この厚さは稼ぐ力の強さではなく、使い道を決めずにためてきた結果だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
作業工具の市場は、伸びの小さい成熟市場だ。数量は自動車の保有台数、整備の件数、工場の保全で決まり、景気にゆるやかに連動する。
国内の自動車保有はほぼ横ばいで、整備士は減っている。電気自動車が増えれば、エンジン回りの整備は減る。一方で、人手が足りないほど、作業を速く確実にする工具の値打ちは上がる。締め付けの記録を残す工具は、品質の証拠を求める流れに乗る。
競争は2層に分かれる。高級品では、同じ関西のTONEや、米国のスナップオンと競う。中位から下の価格帯では、台湾・中国製の安い工具が通販で並び、比べられる。KTCの主な売り先がトラスコ中山のような通販・卸であることは、販路の広さと引き換えに、価格を比べられやすい立場を生んだ。
値上げは通りやすい環境だ。鋼材と人件費が上がり、業界全体が値上げに動いた。ただし数量が伸びないので、売上の伸びはほぼ価格の分にとどまる。
海外は、北米や東南アジアに販路を広げる余地がある。ただ、スナップオンなど現地の大手が強く、筆者は大きな上積みを見込まない。国内の数量を守ることが先になる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2026年3月期の配当は記念配当を含めて増やし、性向は4割ほどになる。自社株買いの実績はない。
立て直しの計画は、PBR1倍とROE8%を掲げた。今の自己資本126億円でROE8%を出すには、純利益10億円が要る。直近の2倍だ。資本を減らす自社株買いを組み合わせない限り、届きにくい。
子会社の整理も進む。2026年10月に北陸ケーティシーツールとHI-TOOLを吸収合併した。不採算事業の見直しも計画に入る。
純現金22億円と賃貸不動産は、使い道が決まっていない。TOBや買収の可能性は、市場の推計で10年で2割強ある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
neprosは国産の高級工具で、整備士に指名買いされるブランドだ。トヨタの車載工具を長く手がけ、品質の信頼もある。物価が上がる時代には、この力で値上げが通る。
会社は膿を出し切った。子会社の不適切会計は調査と和解を終え、子会社を吸収合併して管理を一本にした。特別損失が消えれば、利益は素直に戻る。
立て直しの計画は、2030年度に売上100億円、営業利益率10%を掲げる。過去の最高は10.8%なので、無理な目標ではない。TRASASやnepros IDのように、締め付けの記録を残す工具は、自動車や航空機の組立で需要が増える。人手不足の工場ほど、作業の証拠を残す道具を欲しがる。
資本も厚い。純現金22億円と賃貸不動産を持ち、時価総額は自己資本の半分ほどしかない。PBR1倍を掲げた以上、還元を厚くする圧力は強まる。利益が計画どおり戻れば、今の値段は安かったと言える。賃貸と発電の安定した稼ぎも、谷の年の下支えになる。
慎重な見方
ブランドが強いなら、利益率に出ているはずだ。KTCの営業利益率は12年で最高でも10.8%にとどまる。ROEは一度も資本コストを上回っていない。neprosの名声は、株主の稼ぎに変わっていない。
売り先も心配だ。トラスコ中山、ヤマト自動車、トヨタの3社で4割強を占める。通販では台湾・中国製の安い工具と並べられ、値段を比べられる。
市場は伸びない。整備士は減り、電気自動車ではエンジン回りの整備が減る。数量が横ばいでは、売上の伸びは値上げの分しかない。
管理の弱さも見過ごせない。子会社の不適切会計に加え、デジタルトルクレンチの自主回収も出した。会社は2027年3月期の営業利益を6億円と、むしろ減ると見込んでいる。立て直しの出発点は、思ったより低い。
ROE8%の目標は、純利益を倍にする話だ。自社株買いの実績もない。資本が厚いのは、使い道を決められない結果でもある。帳簿の厚さを値段の支えと見るのは早い。
どちらに重みを置いたか
ブランドの力は本物だが、それが利益率に表れていないことを重く見る。12年の利益率の実績が、言い分の強さを決めた。
中立は、数量が横ばいで、利益率が計画の10%にわずかに届かない姿だ。確率は中立の40%を中心に、通販の値下げ圧力と管理の弱さを踏まえ、悲観側を楽観側よりやや厚くした。賃貸と純現金の下支えがあるので、悲観は1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,024 円97 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,161 円28 億円)。 今の値に割り戻すと 2,761 円67 億円、今との差 +0.4%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,503 円157 億円 | 1,694 円41 億円 | +198.1% | +11.5% | 574 円14 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,565 円135 億円 | 1,405 円34 億円 | +153.4% | +9.7% | 1,394 円34 億円 |
| 中立 | 40% | 4,685 円113 億円 | 1,198 円29 億円 | +113.9% | +7.9% | 2,353 円57 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,134 円52 億円 | 868 円21 億円 | +9.2% | +0.9% | 690 円17 億円 |
| 悲観 | 10% | 909 円22 億円 | 826 円20 億円 | −36.9% | −4.5% | 174 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,024 円97 億円 | 1,161 円28 億円 | +88.5% | +6.5% | 5,185 円126 億円 |
今の株価時価総額 2,750 円67 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 記録の残る工具が伸び、計画を超える 利益 11 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,503 円157 億円
締め付けの記録を残す工具が、自動車と航空機の組立で標準になる。TRASASとnepros IDが新しい数量を生み、工具の点数は15%増える。価格は物価を少し上回る1.40倍だ。
不適切会計の後始末を終え、子会社を一本にしたことで固定費が下がる。営業利益率は11.5%と、過去の最高をわずかに超える。純利益は11億円になる。
還元は配当性向を5割に上げ、10年で41億円を配る。PBR1倍の目標を、利益と還元の両方で追う。
この筋書きでは、neprosのブランドが初めて数字に表れる。整備の現場から組立の現場へ、工具の売り先が広がる。
- 工具:数量 232(出荷点数(万点))× 価格 5,600(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 130 億円・営業利益 15 億円。点数1.15倍・単価1.40倍・利益率11.5%
- ファシリティマネジメント:数量 7.9(賃貸・発電設備の簿価(億円))× 価格 0.41(簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。賃料・売電の単価1.25倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 157 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:TRASASなど記録の残る工具が組立ラインで標準になり、数量が15%増える必要がある。過去12年で利益率が11%を超えた年はなく、確度は低い。
やや楽観 20% 計画どおり利益率10%に届く 利益 10 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,565 円135 億円
立て直しの計画がほぼ実行される。工具の点数は記録の残る工具の分だけ8%増え、価格は1.36倍になる。
営業利益率は10.5%に届く。子会社の統合と不採算事業の見直しで、固定費の伸びが抑えられる。賃貸と発電は安定して稼ぐ。
純利益は10億円弱。配当性向は5割近くに上がり、10年で34億円を還元する。
ROEは6%弱にとどまる。自己資本が厚すぎるためで、自社株買いを組み合わせない限り、計画のROE8%には届かない。それでも、事業の稼ぎは過去の最高の水準を保つ。トヨタ向けの車載工具も途切れず、販売先の集中は大きな傷にならない。
- 工具:数量 218(出荷点数(万点))× 価格 5,440(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 119 億円・営業利益 12 億円。点数1.08倍・単価1.36倍・利益率10.5%
- ファシリティマネジメント:数量 7.9(賃貸・発電設備の簿価(億円))× 価格 0.42(簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。単価1.28倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の営業利益率10%は過去の山10.8%の内側で、値上げの環境もある。ただ2027年3月期の会社予想は減益で、出発点が低い。
中立 40% 数量は横ばい、利益は物価に乗る 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,685 円113 億円
工具の点数は10年で横ばいだ。整備士の減少と電気自動車の分を、記録の残る工具と海外の販路が埋める。価格は通販の圧力を割り引き、1.32倍にとどまる。
営業利益率は9.5%で、計画の10%にわずかに届かない。人件費と鋼材は物価で上がるが、値上げで吸収する。既存の工場の償却は取得した時の値段のままで、更新の分だけが新しい値段で足される。
純利益は8億円。配当性向は45%に上がり、10年で29億円を配る。
ROEは5%前後にとどまる。neprosのブランドは保たれるが、利益を大きく押し上げる力にはならない。純現金は厚いまま残る。
- 工具:数量 202(出荷点数(万点))× 価格 5,280(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 107 億円・営業利益 10 億円。点数横ばい・単価1.32倍・利益率9.5%
- ファシリティマネジメント:数量 7.9(賃貸・発電設備の簿価(億円))× 価格 0.43(簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。単価1.31倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 113 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:12年の営業利益率は6〜11%で、中央は9%前後。値上げの環境と通販の圧力を差し引くと、計画にわずかに届かない姿が最も自然。
やや悲観 23% 通販の値下げで利益率が6%台に 利益 5 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 2,134 円52 億円
通販で安い輸入工具と比べられ、中位の価格帯で値段が崩れる。工具の点数は12%減り、価格は1.22倍にとどまる。
営業利益率は6.5%に下がる。固定費は物価で上がり、値上げが追いつかない。賃貸と発電は稼ぐが、全体を支えるほどではない。
純利益は4.5億円。配当は維持し、10年で21億円を配る。
neprosの高級品は残るが、売上の多くを占める中位の工具で利益が削られる。ROEは3%ほどに落ち、資本の厚さはむしろ重荷になる。現金は配当に回るが、事業に投じても稼ぎは戻らない。会社が掲げたPBR1倍は遠のく。
- 工具:数量 178(出荷点数(万点))× 価格 4,880(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 87 億円・営業利益 6 億円。点数0.88倍・単価1.22倍・利益率6.5%
- ファシリティマネジメント:数量 7.9(賃貸・発電設備の簿価(億円))× 価格 0.39(簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。単価1.19倍
倍率:ROEは約3%でkを大きく下回る。値決めの力が通販に移った構造的に弱い姿として、1÷kの約66%の8.5倍。余った現金は0.75倍の額で足した。
確率:上位3社に4割強を頼る構造で、通販の値下げ圧力は現実的。会社自身が2027年3月期の減益を見込み、利益率7%台の年は過去にも多い。
悲観 10% ブランドが崩れ、利益がほぼ消える 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 909 円22 億円
安い輸入工具が中位の価格帯を奪い、電気自動車の普及でエンジン回りの整備も減る。工具の点数は25%減り、価格は1.10倍しか上がらない。
営業利益率は3%に落ちる。管理の不祥事が再び起き、トヨタなど大口の取引も細る。
純利益は2億円弱。配当は減らしつつ維持し、10年で20億円を配る。
賃貸と発電の稼ぎ、純現金は残るが、事業の価値は大きく損なわれる。neprosのブランドは一部の整備士の道具にとどまる。値段の床は、事業の稼ぎではなく、純現金と賃貸不動産の価値になる。ただし、現金の使い方は少数株主には決められない。
- 工具:数量 152(出荷点数(万点))× 価格 4,400(1点あたりの平均販売価格(円))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。点数0.75倍・単価1.10倍・利益率3%
- ファシリティマネジメント:数量 7.9(賃貸・発電設備の簿価(億円))× 価格 0.36(簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍))→ 売上 3 億円・営業利益 1 億円。単価1.10倍
倍率:ROEは1%台で、稼ぐ力(純利益÷k)は約24億円。純現金と賃貸不動産の床(約22億円)とほぼ並ぶので、床の額を今の自己資本126億円に対する0.175倍で書いた。
確率:通販での値崩れ・整備需要の縮小・管理の不祥事が重なる構造的な負け。純現金と賃貸の下支えがあり、2009〜2010年以外は黒字だったので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工具
自動車整備用のレンチ・ソケット・スパナ、電設・医療用工具、精密鋳造。高級品nepros、IoTのTRASAS。トラスコ中山・ヤマト自動車・トヨタが主な売り先。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1点あたりの平均販売価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 202 | 4,000 | 81 | 7 |
| 10 年後 中立 | 202 | 5,280 | 107 | 10 |
取り方:2026年3月期の工具事業の売上80.8億円(有報)を、セットものを含む平均単価を4千円として点数に直した推定(約202万点)。営業利益は全社7.5億円から賃貸・発電の推定1.0億円を引いた推定。
ファシリティマネジメント
旧本社・久御山町の物件の賃貸と、太陽光発電の売電。
| 数量賃貸・発電設備の簿価(億円) | 価格簿価に対する年間の賃料・売電収入の割合(倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.9 | 0.33 | 3 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.9 | 0.43 | 3 | 1 |
取り方:有報の賃貸不動産と発電設備の簿価(旧本社2.25億・久御山5.02億・太陽光0.65億)を数量とし、売上2.6億円を割った値を単価とした。営業利益は利益率4割弱の推定。
リスクと懸念
販売先の集中
トラスコ中山18%、ヤマト自動車14%、トヨタ12%で売上の4割強を占める。通販での値下げ要求や、トヨタの車載工具の仕様変更があれば、数量と利益率が同時に落ちる。
管理と品質の弱さ
子会社の不適切会計で調査費5.6億円を払い、デジタルトルクレンチの自主回収も出した。管理が再び緩めば、特別損失とブランドの傷が重なる。
整備需要の縮小
整備士の減少と電気自動車の普及で、エンジン回りの整備工具の数量が減る。締め付けの記録を残す工具が、その減りを補えるかが分かれ目になる。
安い輸入工具との比較
通販では台湾・中国製の工具が並んで比べられる。中位の価格帯で値段が崩れれば、neprosの高級品以外の利益率が削られる。
資本の使い道
純現金22億円と賃貸不動産の使い道が決まっていない。ROE8%の目標が還元を伴わず、低い稼ぎの事業への投資に向かえば、資本効率は改善しない。
今後の分かれ目
- 2028年3月期までに営業利益率が10%を超え、2年続いたら
- 計画の実行力を認め、やや楽観の確率を厚くする。
- 自社株買いや配当性向の引き上げが数字で示されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に上げ、ROE8%の目標の確度を上げる。
- TRASASなど記録の残る工具が、自動車・航空機の組立ラインで標準になったら
- 数量の伸びを上げ、楽観側を厚くする。
- 上位の販売先が値下げを求め、利益率が7%を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 子会社や品質で新たな不祥事が出たら
- 管理の弱さが続くとみて、悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 営業利益率(計画の10%に近づくか)
- 上位3社の販売先の売上比率
- 自社株買い・配当性向の方針
- TRASAS・nepros IDの売上
- 特別損失・品質問題の有無
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、工具の出荷点数×平均単価と賃貸・発電で10年後の利益を積んだ。点数は横ばい、単価は物価の1.34倍を通販の値下げ圧力で少し割り引いた1.32倍。中立の営業利益率9.5%は過去12年の山10.8%と計画の10%の下。ROEが資本コストに届かないため、PERは1÷k(約12.9倍)を上限に、利益の質から約8割に置いた。余った現金は戻り方0.75で足した。今の時価総額と比べたのは最後。リースは小さく新基準の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.6→13.33 倍・やや楽観 PER 11→13.33 倍・中立 PER 10.3→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。