結論
ダイケンは、引戸を吊る金物や自転車置場、ゴミ置き場などの屋外の製品を作る大阪の老舗だ。筆者の結論は割高である。一見すると安い。現金と預金は33億円、投資有価証券は12億円あり、合わせると時価総額46億円にほぼ並ぶ。借金はない。
だが、本業の稼ぎは細い。2026年2月期の営業利益は2.6億円で、売上の2%余りにすぎない。自己資本137億円に対し、純利益は3億円ほどだ。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は2%台で、資本コストの3分の1にも届かない。
建物の着工は人口とともに減る。金物も外構の製品も、新しく建つ建物の数に左右される。同社は板金加工の三木製作所を買い、改修と海外に活路を探すが、規模はまだ小さい。
厚い現金は、株主に戻らなければ帳簿の価値にならない。配当性向の目標は25%以上と控えめで、自社株買いはほとんどない。筆者は、事業に要らない現金を4分の3の価値で見る。10年の中立で純利益は4億円台にとどまり、現金を足しても今の値段には届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ダイケンは「財布は厚いが、事業は細い」会社だ。
事業は10年後も続く。建物がある限り、引戸の金物も自転車置場も要る。設計事務所の図面に載り続ける製品は、簡単には消えない。ただ、新築は減り、値段を決める力も弱い。オーナー利益、つまり設備の更新を引いて株主が自由に使える利益は、年に2〜3億円しかない。
資本の使い方は慎重だが、効率は悪い。現金は長年積み上がったまま、配当は利益の3〜4割にとどまる。買収は割安に買えたが、規模が小さく全社を変えるほどではない。
安全域は財布にある。現金と投資株で時価総額にほぼ並び、借金はない。事業が傾いても、株主の取り分がすぐに消えることはない。
それでも、現金は株主に戻るまで価値が確定しない。筆者は、余った現金を4分の3の価値で見て、事業の稼ぎを足した。その合計は今の値段に届かない。
何で稼ぐ会社か
ダイケンは1924年に大阪で創業した建築金物のメーカーだ。本社は大阪市淀川区にあり、連結の従業員は約350人である。
売上は2026年2月期で116億円。中身は5つに分かれる。自転車置場やゴミ置き場などのエクステリアが40億円、引戸の吊り金具などの金物が34億円、建物に付ける建材が21億円、施工や板金加工などのその他が19億円、マンションや事務所の賃貸が2億円だ。
稼ぎの源は、建物1棟ごとに使われる部品の数である。集合住宅が1棟建てば、自転車置場とゴミ置き場、何十枚もの引戸の金物が要る。設計事務所に図面で指定されれば、そのまま注文が来る。
売り先は建材の問屋が中心だ。最大の取引先は金物問屋の杉田エースで、売上の19%ほどを占める。問屋を通して全国の工務店や施工会社に届く。
2025年6月には、板金加工の三木製作所を買った。取得の支出は3億円余りで、負ののれんが出たほど割安な買い物だった。加工の内製化と、製品の幅を広げるねらいがある。
不動産賃貸は小さいが、利益率は5割を超える。
製品の多くは自社の工場で作り、問屋の在庫と組み合わせて現場に届ける。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは狭い。引戸の金物や自転車置場は、品ぞろえと設計事務所への指定の積み重ねで売れる。長年の実績で図面に載る製品は、簡単には入れ替わらない。ただ、同じような製品を作る会社は多く、問屋を通す商売で値段を決める力は弱い。
利益率は長く下がってきた。営業利益率は2013年2月期の8%台から、ここ数年は2〜4%に落ちた。原材料と人件費の上昇を、問屋を通じて価格に移しきれていない。2026年2月期は労務費の増加と買収の一時費用も重なった。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値で2.3%だ。自己資本の3割強が現金と預金で、2割近くが投資株と賃貸の不動産である。事業に使う資産だけで見ても、稼ぐ力は並みより下だ。
財務は鉄壁である。借金はなく、自己資本比率は8割を超える。倒れる心配はまずない。だが、それは株主のお金が事業の外で眠っていることの裏返しでもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
建築金物とエクステリアの需要は、建物の新築に強く結びつく。国内の住宅着工は人口減で長く細り、集合住宅や事務所の新築も頭打ちだ。筆者は、10年で新築向けの数量が1割ほど減ると見る。
伸びるのは改修だ。古い集合住宅の外構の作り替えや、引戸の交換、バリアフリーの工事が増える。宅配の荷物を受け取る設備や、自転車の駐輪の整備のように、暮らしの変化から生まれる需要もある。
価格は原材料に引っ張られる。鉄やアルミ、ステンレスは相場で動き、円安で輸入の資材も高くなった。問屋を通す商売では、値上げはいつも後から追いかける。人手不足で施工の手間賃も上がっている。
競争の形は、中小のメーカーが多く並ぶ分散型だ。シャッターやドアの大手と違い、寡占の旨味はない。設計事務所に指定されるかどうか、問屋の棚に並ぶかどうかで勝負が決まる。
同社は海外市場の開拓と、三木製作所との一体化を課題に挙げる。ただ、建築金物は国ごとに規格が違い、海外で大きく稼ぐ道は細い。
脱炭素と省力化に応える製品の開発も課題だ。施工の手間を減らす製品は、人手不足の現場で選ばれやすい。
資本政策と M&A
資本政策は、現金を厚く持ち続ける形だ。現金と預金は33億円で借金はない。投資有価証券は12億円あり、ユアサ商事や大手銀行の株が中心である。2026年2月期には、取引先の杉田エースの株を一部売って1.3億円の売却益を出した。
還元は控えめだ。配当性向の目標は25%以上で、2026年2月期の配当総額は1.1億円、性向は4割弱だった。自社株買いは2020年に一度行ったきりで、続いていない。
買収は小さく慎重だ。三木製作所は3億円余りで買い、負ののれんが出た。高値づかみをしない規律はある。
少数株主から見ると、現金の使い道は経営に預けたままだ。現金が株主に戻る仕組みが弱く、帳簿どおりには評価できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、ほぼ現金の値段で買える。現金と預金33億円、投資有価証券12億円を足せば、時価総額46億円にほぼ並ぶ。借金はない。事業には、ほとんど値段が付いていない。
その事業が持ち直す。会社は2027年2月期に売上130億円、営業利益5.5億円を見込む。三木製作所の1年分が加わり、営業利益は倍になる計算だ。負ののれんが出たほど割安に買えたので、買収の利益はそのまま株主のものになる。
改修の需要は伸びる。古い集合住宅の外構の作り替え、引戸の交換、バリアフリーの工事、宅配の荷物の受け取りの設備が増える。新築が減っても、建物の数は急には減らない。
政策保有株の売却も始まった。杉田エースの株を一部売り、売却益を出した。株が売られ、現金が自社株買いに回れば、ROEは一気に上がる。
利益率が過去の山の8%台に戻れば、営業利益は10億円を超える。今の値段は、それに何の期待も置いていない。
無借金で現金が厚いので、次の割安な買収にも動ける。
慎重な見方
現金は厚いが、株主のものではない。配当性向の目標は25%以上と低く、自社株買いは2020年に一度きりだ。現金は何年も積み上がったまま眠っている。少数株主には使い道を変える手段がない。
事業は細っている。営業利益率は2013年2月期の8%台から、2026年2月期は2%余りまで落ちた。原材料と人件費の上昇を、問屋を通じて価格に移しきれない。最大の取引先の杉田エースに売上の2割近くを頼り、値段の主導権は問屋にある。
新築は減り続ける。住宅も集合住宅も、着工は人口とともに細る。改修の需要は増えるが、新築の減りを埋めるほどではない。海外で戦える製品も乏しい。
三木製作所は割安に買えたが、売上の1割余りの規模だ。全社の利益率を変えるには小さい。会社予想の営業利益5.5億円も、売上の4%台で、過去10年の並みの水準にすぎない。
ROEは過去10年の中央値で2.3%だ。帳簿を下回る値段には、それだけの理由がある。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。現金と投資株の厚さは本物だが、株主に戻る仕組みが弱い。事業の利益率は長く下がり続け、新築の縮小という逆風は変わらない。
確率は中立を中心に置き、悲観側を楽観側より少し厚くした。会社予想どおりの回復をやや楽観に入れ、過去の山の利益率に戻る姿は楽観だけに置いた。
現金が自社株買いで戻り始めれば、評価は大きく変わる。今はその兆しがない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 1,146 円63 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 216 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 722 円40 億円、今との差 −16.1%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,219 円122 億円 | 365 円20 億円 | +200.5% | +11.6% | 181 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,729 円95 億円 | 292 円16 億円 | +135.0% | +8.9% | 404 円22 億円 |
| 中立 | 38% | 1,328 円73 億円 | 237 円13 億円 | +81.9% | +6.2% | 595 円33 億円 |
| やや悲観 | 23% | 439 円24 億円 | 146 円8 億円 | −32.0% | −3.8% | 134 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 328 円18 億円 | 73 円4 億円 | −53.3% | −7.3% | 48 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,146 円63 億円 | 216 円12 億円 | +58.4% | +4.7% | 1,362 円75 億円 |
今の株価時価総額 860 円47 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% 改修と買収で利益率が過去の山に近づく 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,219 円122 億円
古い集合住宅の改修が本格化し、自転車置場やゴミ置き場の作り替えが増える。エクステリアの台数は1割増える。引戸の金物はバリアフリーの改修で横ばいを保つ。
三木製作所との一体化で板金の加工を内製し、原価が下がる。施工と加工の件数は6割増える。値上げは物価並みに通り、問屋との力関係も少し改まる。
営業利益率は5%台半ばに戻る。全社費用は物価で増えるが、売上の伸びがそれを吸収する。
配当性向は3割台に上がり、10年で20億円を株主に戻す。それでもROEは5%に届かず、資本コストを下回る。
筆者は、この姿でも現金が株主に戻る保証はないと見る。利益が増えるほど、現金はさらに積み上がるからだ。
- エクステリア:数量 10,956(出荷台数(台))× 価格 54(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 9.0%
- 金物:数量 3,430(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 10.0%
- 建材:数量 2,237(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 8.0%
- 施工・板金加工ほか:数量 2,976(工事・加工の件数(件))× 価格 134(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 6.0%
- 不動産賃貸:数量 6.8(賃貸床面積(千㎡))× 価格 29(1㎡あたりの年間賃料(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 55.0%。賃料は長期契約で改定が遅く、物価の1.34倍に届かない
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:改修需要の伸び、値上げの定着、三木製作所との一体化が重なり、利益率が2013年2月期の山に近づく姿。10年以上下がり続けた利益率が反転する必要があり、確度は低い。
やや楽観 20% 会社予想どおり持ち直し、利益率4%台を保つ 利益 6 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,729 円95 億円
三木製作所の1年分が加わり、営業利益は会社予想どおり5億円台に戻る。改修の需要が新築の減りを補い、エクステリアの台数は横ばいを保つ。
金物は新築の減りで台数が5%減るが、値上げは物価並みに通る。施工と加工は三木製作所との一体化で4割強増える。
全社費用は物価で増えるが、利益率は4%台を保つ。受取利息も増え、純利益は6億円ほどになる。
配当は性向3割前後で、10年で16億円を払う。現金は厚いまま残り、ROEは4%に届かない。
賃貸の不動産は修繕費が物価で増えるが、賃料の改定は遅く、利益率は少し下がる。本業と賃貸を合わせた稼ぎは、今の倍ほどになる。
- エクステリア:数量 9,960(出荷台数(台))× 価格 54(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 8.0%
- 金物:数量 3,259(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 9.0%
- 建材:数量 2,130(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 7.0%
- 施工・板金加工ほか:数量 2,697(工事・加工の件数(件))× 価格 134(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 5.0%
- 不動産賃貸:数量 6.8(賃貸床面積(千㎡))× 価格 29(1㎡あたりの年間賃料(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 50.0%。賃料は長期契約で改定が遅く、物価の1.34倍に届かない
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の会社予想は営業利益5.5億円で、三木製作所の1年分が加わる。改修需要と値上げで、その水準を10年保つ姿には根拠がある。
中立 38% 新築の減りを改修と買収が埋め、利益は細いまま 利益 5 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,328 円73 億円
新築の着工が減り、金物と建材の数量は5〜10%細る。改修の需要が自転車置場やゴミ置き場の作り替えを支え、エクステリアの減りは小さい。
三木製作所は加工の件数を3割増やす。価格は物価並みに上がるが、全社費用と人件費も同じように増える。
営業利益率は3%台半ばで、過去10年の並みにとどまる。純利益は4億円台で、そのうち2割ほどは現金の利息と投資株の配当だ。
配当は性向3割台で、10年で13億円を払う。現金は厚いまま残り、ROEは3%に届かない。
筆者が最もありそうだと見る姿である。事業は続き、財務も揺るがない。ただ、資本に見合う利益は出ず、現金は眠ったままになる。
- エクステリア:数量 9,462(出荷台数(台))× 価格 54(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 51 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 7.0%
- 金物:数量 3,087(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 8.0%
- 建材:数量 2,024(出荷個数(千個))× 価格 1,340(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 6.0%
- 施工・板金加工ほか:数量 2,418(工事・加工の件数(件))× 価格 134(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 4.0%
- 不動産賃貸:数量 6.8(賃貸床面積(千㎡))× 価格 29(1㎡あたりの年間賃料(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 50.0%。賃料は長期契約で改定が遅く、物価の1.34倍に届かない
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.79 倍、時価総額 73 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新築は減り、値決めは弱いが、改修と三木製作所で売上は保つ。利益率は過去10年の並みの水準にとどまるのが最も自然な落としどころ。
やや悲観 23% 新築の急減と原料高で、本業がほぼ稼げない 利益 1 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 439 円24 億円
住宅と集合住宅の着工が想定より速く減る。金物の数量は4分の1減り、エクステリアと建材も2割減る。改修の需要は伸びるが、新築の減りを埋めきれない。
原材料と人件費の上昇を、問屋を通じて価格に移しきれない。価格は物価に届かず、利益率が削られる。
全社の営業利益は1億円ほどにとどまる。純利益の大半は、現金の利息と投資株の配当になる。
配当は今の額を守るが、10年で8億円となる。厚い現金は残るが、本業は資本を食うだけになる。
経営が現金を使って次の買収に動いても、新築の縮小という流れは変えられない。買った会社の利益も同じ逆風を受ける。
- エクステリア:数量 7,968(出荷台数(台))× 価格 50(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 5.0%
- 金物:数量 2,573(出荷個数(千個))× 価格 1,250(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 6.0%
- 建材:数量 1,704(出荷個数(千個))× 価格 1,250(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 4.0%
- 施工・板金加工ほか:数量 2,046(工事・加工の件数(件))× 価格 125(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
- 不動産賃貸:数量 6.8(賃貸床面積(千㎡))× 価格 28(1㎡あたりの年間賃料(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 45.0%。賃料は長期契約で改定が遅く、物価の1.34倍に届かない
倍率:ROEは1%弱で資本コストを大きく下回る。本業がほぼ稼がない姿で、1÷k(約12.1倍)の約70%の8.5倍に置いた。余った現金は谷で4分の1を食い13.5億円、戻り方0.75を掛けた。PBRは0.13倍と低いが、床となる純現金と投資株の価値(約18億円)をわずかに上回る水準で、床は割っていない。
確率:利益率は2013年2月期から下がり続け、2026年2月期は2%台だった。新築の減りが速まり、値上げが追いつかなければ、本業の利益はほぼ消える。
悲観 12% 本業が赤字に沈み、現金だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 328 円18 億円
新築の着工が大きく減り、問屋は海外の安い金物や外構の製品を仕入れ始める。同社の製品は価格で負け、数量は3割以上減る。
本業は赤字に沈む。工場と賃貸の不動産で減損を出し、自己資本は140億円まで減る。三木製作所の一体化も思うように進まない。
配当は減らし、10年で4億円にとどまる。残るのは現金と投資株だが、少数株主はその使い方を決められない。経営が現金を眠らせたまま赤字の事業を続ければ、株主の取り分は少しずつ削られる。
賃貸の不動産も、空室が増えて利益が細る。法人の事務所は借り手が見つかりにくく、ワンルームも築年数とともに家賃が下がる。最後に株主の支えになるのは、帳簿の現金と投資株だけである。
- エクステリア:数量 6,972(出荷台数(台))× 価格 48(1台あたりの平均売上(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- 金物:数量 2,230(出荷個数(千個))× 価格 1,200(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
- 建材:数量 1,491(出荷個数(千個))× 価格 1,200(1個あたりの平均売上(円))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 -2.0%
- 施工・板金加工ほか:数量 1,860(工事・加工の件数(件))× 価格 120(1件あたりの平均売上(万円))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 -2.0%
- 不動産賃貸:数量 6.8(賃貸床面積(千㎡))× 価格 26(1㎡あたりの年間賃料(千円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 40.0%。賃料は長期契約で改定が遅く、物価の1.34倍に届かない
倍率:本業は赤字で稼ぐ力は無い。床は純現金と投資株で、今の自己資本136.9億円に0.131を掛けた約18億円。
確率:新築の急減と問屋の値下げ要求、海外の安い金物の流入が重なる構造的な負け。無借金で現金が厚いので倒れる心配はなく、1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エクステリア
集合住宅や施設の自転車置場、ゴミ置き場などの屋外の製品。
| 数量出荷台数(台) | 価格1台あたりの平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 9,960 | 40 | 40 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9,462 | 54 | 51 | 4 |
取り方:有報の品目別売上(エクステリア39.9億円)を、1台平均40万円として台数に直した推定。営業利益は建築関連製品のセグメント利益5.73億円を品目に配分した推定。
金物
引戸を吊る金具やレールなどの建築金物。設計事務所の図面に指定されて売れる。
| 数量出荷個数(千個) | 価格1個あたりの平均売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,430 | 1,000 | 34 | 2 |
| 10 年後 中立 | 3,087 | 1,340 | 41 | 3 |
取り方:有報の金物の売上34.3億円を、1個平均千円として個数に直した推定。営業利益は配分した推定。
建材
建物の外装や内装に取り付ける金属の建材。
| 数量出荷個数(千個) | 価格1個あたりの平均売上(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 2,130 | 1,000 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,024 | 1,340 | 27 | 2 |
取り方:有報の建材の売上21.3億円を、1個平均千円として個数に直した推定。営業利益は配分した推定。
施工・板金加工ほか
製品の取り付け工事と、2025年6月に買った三木製作所の板金加工など。
| 数量工事・加工の件数(件) | 価格1件あたりの平均売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,860 | 100 | 19 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,418 | 134 | 32 | 1 |
取り方:有報のその他の売上18.6億円(三木製作所は8か月余りの連結)を、1件平均100万円として件数に直した推定。営業利益は配分した推定。
不動産賃貸
法人向けの事務所と、ワンルームマンションの賃貸。
| 数量賃貸床面積(千㎡) | 価格1㎡あたりの年間賃料(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 6.8 | 24 | 2 | 1 |
| 10 年後 中立 | 6.8 | 29 | 2 | 1 |
取り方:セグメント売上1.63億円・利益0.86億円(有報)。床面積の開示はないため6.8千㎡と置き、1㎡年2.4万円で売上に合わせた推定。賃料は長期の契約で改定が遅く、10年の価格は物価の1.34倍でなく1.2倍と置く。
リスクと懸念
新築の着工の減少
金物と外構の製品は、新しく建つ建物の数に左右される。住宅と集合住宅の着工は人口減で長く細る。中立で新築向けの数量は1割ほど減ると置いた。AIエージェントによる代替は関係しない。
原材料と人件費の上昇
鉄やアルミ、ステンレスの値上がりと労務費の増加を、問屋を通じて価格に移すには時間がかかる。2026年2月期は労務費の増加が利益を削った。
問屋への依存
最大の取引先の杉田エースが売上の19%ほどを占める。問屋が海外の安い製品の仕入れを増やせば、数量と値段の両方が削られる。
現金が株主に戻らない
現金と預金は33億円、投資有価証券は12億円ある。配当性向の目標は25%以上と低く、自社株買いは続いていない。現金が眠り続ければ、帳簿の価値は評価されない。
買収の一体化
三木製作所との一体化が進まなければ、加工の内製化と製品の幅の広がりは期待どおりにならない。次の買収を高値で行えば、規律が崩れる。
賃貸の不動産の空室
法人向けの事務所の空室と、ワンルームマンションの入居率が課題だ。賃料は物価ほど上がらず、修繕費は物価で増える。
今後の分かれ目
- 自社株買いや配当性向の大幅な引き上げが発表されたら
- 余った現金の戻り方を1.0に近づけて見直す。差は大きく縮む。
- 政策保有株の売却を数値で掲げ、実際に売り進めたら
- 売った分を税後で余りの資産に足し、その配当を利益から外して見直す。
- 2027年2月期に営業利益5億円台を達成し、翌期も保ったら
- やや楽観の確率を厚くする。
- 営業利益率が2%を割り込む期が続いたら
- 値決めの弱さが深まったとみて、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 大型の買収を行ったら
- 買収の値段と稼ぎを確かめ、現金の使い方の規律を見直す。
見ておくもの
- 品目別の売上と営業利益率
- 三木製作所の売上と利益
- 配当性向と自社株買い
- 政策保有株の売却の進み
- 住宅と集合住宅の着工戸数
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、品目ごとの台数・個数×単価で10年後の利益を積んだ。品目別の利益は開示が無く配分した推定である。全社費用は物価で1.34倍に増やした。中立の営業利益率は3.5%で、過去12年の山8.4%を下回る。倍率はROEが資本コストを下回るので1÷k(約12.1倍)の83%に置いた。純現金はfactsの現金同等物でなくBSの現金及び預金33億円から見て、余りの18億円を戻り方0.75で足した。PBR0.3倍台は割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.79 倍・やや楽観 PER 10.8→13.79 倍・中立 PER 10→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。