結論
小野建は、建築・土木向けの鋼材を仕入れ、在庫を持って、小口で素早く届ける鉄鋼の専門商社である。九州・中国を地盤に、関西・中京、関東・東北へ広げてきた。筆者の結論は、事業の足腰は強いが、拡大の投資が利益に結びついておらず、今の値段はやや割高、というものだ。
商売の特徴は、自前の倉庫・加工機・トラックを持つことだ。顧客の小さな注文にすぐ応えるので、大手の商社が入りにくい。販売数量が約 160 万トンで横ばいなのは、国内の鋼材需要が縮む中でシェアを取ってきた結果である。
ただ、そのコストが重い。有形固定資産は約 800 億円に膨らみ、借入は約 570 億円ある。2026 年 3 月期は九州・中国の減損で、上場来初の最終赤字になった。営業利益率は 1.9% と、薄い。
会社は 2035 年に売上 5,000 億円、営業利益率 4% を掲げる。筆者は、2.7% で止まると見る。国内の需要が縮み、鋼材の値段に利益が左右されるからだ。
中立の筋書きでも、ROE は 5% 弱と資本コストを大きく下回る。PBR が 0.4 倍を割っているのは、割安というより、資本の稼ぐ力に見合った値付けと言える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「悪い会社ではないが、資本の使い方が報われていない」と映る。理由は、拠点を増やすたびに、稼ぎより資産が先に膨らんでいるからだ。
事業は 10 年後も残る。ただ、国内の鋼材需要は縮み、堀は浅い。営業利益率は 12 年のうち 11 年が 3.7% 以下で、5% を超えたのは市況が高騰した 2022 年 3 月期だけだ。会社の目標である 4% は、その市況頼みの年を除けば、届いたことのない水準である。
株主のものになる利益で見ると、稼ぎは設備に吸い込まれる。営業の現金収入は 100 億円あるが、ほぼ投資に消え、残った自由な現金は 10 億円ほどだ。減価償却費の約 49 億円は、実質の維持費でもある。
安全域は、資産にある。PBR が 0.4 倍を割っているのは、帳簿の自己資本が 930 億円あるからだ。ただ、その中身は倉庫・土地・在庫・売掛金で、事業が稼げないなら帳簿の値で売れない。減損が実際に出た通りだ。
筆者は、10 年で資本コストを超える年率のリターンは出にくいと見る。買う理由が資産の安さだけなら、待つ価値は低い。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、鋼材を仕入れ、在庫として持ち、顧客の注文に応じて切って運ぶ機能だ。2026 年 3 月期の売上は約 2,530 億円。粗利益率は 10.4% で、営業利益率は 1.9%。販売数量は約 160 万トンである。
地域別の売上は、九州・中国が約 1,390 億円で 55%、関西・中京が約 600 億円で 24%、関東・東北が約 540 億円で 21%。九州・中国は 2000 年から売上が 9 倍、関西・中京は 8 倍、関東・東北は 3 倍に伸びた。九州・中国は営業利益の約 6 割を稼ぐ土台だ。
顧客は、建設会社、鉄骨・鉄筋の加工業者、機械や設備のメーカーなど。中小型の工事向けが多く、注文は小口で頻度が高い。小野建は在庫を厚く持ち、翌日に届ける。だから価格だけでは選ばれない。
自前の設備が武器だ。倉庫の面積は約 60 ヘクタール、加工機は 345 台、トラックは 184 台。コイルを切る加工能力は年 30 万トンを超える。静岡、山口、大阪、福山、鹿児島、高知で拠点を新設し、償却費は年約 49 億円まで増えた。
外から買う分は、国内メーカーが決める鋼材の価格に左右される。市況が上がれば在庫の評価益が出て、下がれば評価損が出る。この振れが利益の質を下げる。為替は 1 ドル 150 円で置く。
優良さと弱いところ
優良さは「堅実だが、薄利」にとどまる。地域に根ざし、在庫と配送で選ばれる。上場来、最終黒字を続けてきた。売上は 2024 年 3 月期まで増え続けた。経営の目線も、地道に拠点を増やすものだ。
堀は中くらいだ。在庫を持ち、小口の注文にすぐ応えられる会社は、地方では少ない。同業や商社の傘下の会社が追いつくには、倉庫と加工機への投資が要る。だが、鋼材そのものは差がつかない。メーカーの値上げを転嫁できる力はあるが、値段を自分で決める力はない。
資本の稼ぐ力は弱い。ROE は過去 10 年の中央値が 6.3% で、直近 5 年は下がり続けた。投資を増やしても、営業利益は増えなかった。2026 年 3 月期の九州・中国の減損は、その表れだ。
借入は重い。短期と長期で約 570 億円、現預金は約 60 億円。ただし、借入の多くは在庫と売掛金に見合う運転資金で、実質の担保はある。自己資本比率は 47% あり、すぐ危うくなる水準ではない。
株主構成は、取締役が出資する資産管理会社が 1 割前後を持ち、個人の筆頭株主も 1 割ほどいる。長期保有の安定株主が多く、少数株主の意見を聞く圧力は弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の鋼材需要は、ゆっくりと縮んでいる。粗鋼生産は 2019 年度の約 9,800 万トンから、2025 年度は約 8,100 万トンの見込みだ。6 年で 2 割近く減った。2026 年度の最初の四半期の鋼材需要も、前年同期より 1.5% 減る見通しである。
縮む理由は 3 つある。人口減で建物の新築が減る。建設会社の人手が足りず、着工が延びる。資材費の上昇で、小さな案件が見送られる。大型の再開発や半導体工場は需要を支えるが、それも一部の地域に偏る。
一方、流通の側では、淘汰が進む。小さな卸は、配送費と人件費の上昇に耐えられず、後継者も足りない。在庫と物流を持つ会社に、顧客が移りやすい。小野建は、この構造を追い風にシェアを取ってきた。
値段の面では、鋼材はメーカーの原料高や電気代の上昇を転嫁して上がる流れにある。2027 年 3 月期は、メーカー主導の値上げで在庫の評価益が出る前提だ。ただ、需要が弱いままだと値上げは定着しない。
競合は、総合商社系の鉄鋼商社と、地域の中堅卸だ。専業で全国に拠点を持つ在庫型の卸は少ない。ただ、総合商社が系列で押さえる大口の案件には入りにくい。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結配当性向 30% または下限配当(年間の配当金額で固定)のいずれか高い方だ。利益が赤字でも、下限どおり配当を続ける。2026 年 3 月期は、約 10 億円の自社株買いも実施した。配当と自社株買いの合計は、純利益が低い年は純利益を上回る。
成長の投資は大きい。第 1 次中期経営計画(2026 年 3 月期〜2028 年 3 月期)では、加工・物流の能力と買収に 150 億円以上を計画する。長期ビジョンでは 2035 年 3 月期に売上 5,000 億円、営業利益 200 億円を掲げ、10 年で 700 億円を投じる。一部は大型の買収を想定している。
買収は、2022 年以降だけで、ヤマサ、興永鋼材、マツオメタル、丸み興商、中央鋼材、三友鋼材と続いた。規模は小さい。次は関東・東北を狙う。長期借入金は、3 年で約 70 億円を返す予定だ。
政策保有株は 11 銘柄あるが、簿価は小さく、価値の厚みにはならない。株主優待は見当たらなかった。
取締役が出資する資産管理会社が、約 1 割を長期で持つ。非公開化や大型の再編の可能性は、10 年で 3 割弱と見られている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鋼材の流通は、小さな卸が消え、残った会社に顧客が集まる。小野建は、在庫と加工と配送を自前で持つ。その拠点がようやく出揃った。静岡、大阪、福山、鹿児島、高知の新しい拠点が稼働し始め、償却費は 2027 年 3 月期から横ばいになる。
数量は戻る。2027 年 3 月期は 170 万トンを計画し、直近の落ち込みの反動を見込む。九州の半導体工場や、大型の再開発など、九州・中国で需要の核がある。値上げでメーカーの価格が戻れば、在庫の評価益も出る。
資本政策も変わる。配当性向 30% または下限配当に加え、自社株買いも実施した。PBR が 0.4 倍を割り込む状況で、会社は資本効率の改善を強く意識している。長期借入の返済も進み、純負債は減る。
長期の目標は、売上 5,000 億円、営業利益 200 億円。関東・東北は売上が 3 倍にしか伸びておらず、伸びしろが大きい。買収も積極的に続く。営業利益率が 3.5% を超えれば、ROE は 7〜8% に上がり、時価総額は今の 3 倍になる。
慎重な見方
稼ぐ力が弱い会社に、投資が多すぎる。営業利益は 2022 年 3 月期の 118 億円から、2026 年 3 月期は 47 億円まで半分以下に落ちた。その間、有形固定資産は大きく膨らんだ。投資が利益を生んでいない。九州・中国の減損が、その証拠だ。
国内の鋼材需要は縮んでいる。粗鋼生産は 6 年で 2 割近く減り、人口減と人手不足で建築の着工も増えない。数量は、シェアの拡大でようやく横ばいを保っているにすぎない。
足元の好決算は、市況の上昇による在庫評価益に頼る。市況が崩れれば、評価損と運転資金の増加が重なる。借入は約 570 億円で、金利が上がると利益を削る。10 年国債 3% の世界では、利払いが 10 年で約 13 億円増える。
会社の目標である営業利益率 4% は、これまで市況が高騰した 1 年を除き、一度も届かなかった。10 年たっても、ROE は 5% 前後で、資本コストを大きく下回る。資本効率が低い会社の PBR が 1 倍を下回るのは当然である。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、流通の再編と、新しい拠点の効果を正しく捉えている。だが、投資が利益に結びついていない現実と、会社の利益率の目標が過去に一度も届いていない点を、十分に説明できていない。慎重な見方は、資本効率の低さと借入の重さを的確に突いている。
確率は中立を中心に置き、悲観側をやや厚くした。強気の筋書きは、営業利益率が 3.7% に届く場合に限った。悲観は、国内需要の縮みと市況の崩れで、利益率が 1% を割る場合だ。慎重な見方がやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,305 円564 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 801 円196 億円)。 今の値に割り戻すと 1,582 円387 億円、今との差 +16.0%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 5,134 円1,256 億円 | 1,227 円300 億円 | +366.4% | +16.6% | 382 円93 億円 |
| やや楽観 | 19% | 3,618 円885 億円 | 1,022 円250 億円 | +240.2% | +13.0% | 882 円216 億円 |
| 中立 | 40% | 2,800 円685 億円 | 859 円210 億円 | +168.3% | +10.4% | 1,464 円358 億円 |
| やや悲観 | 23% | 675 円165 億円 | 695 円170 億円 | +0.4% | +0.0% | 315 円77 億円 |
| 悲観 | 12% | 286 円70 億円 | 245 円60 億円 | −61.0% | −9.0% | 64 円16 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,305 円564 億円 | 801 円196 億円 | +127.7% | +8.6% | 3,106 円760 億円 |
今の株価時価総額 1,364 円334 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% 拠点と買収が実り、利益率 3.7% 利益 104 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,134 円1,256 億円
新しい拠点の稼働率が上がり、関東・東北で買収が成功する。販売数量は 1 割以上増え、売上は 4,300 億円を超える。会社が掲げる 2035 年の 5,000 億円には届かないが、近づく。営業利益率は 3.7% に上がり、償却費の増加が一巡した効果が出る。加工の比率が高まり、粗利益率が改善する。借入は返済が進み、金利負担も重くない。配当は下限を上回り、自社株買いが年 20 億円規模で続く。ROE は 8% 近くに上がり、資本コストにほぼ届く。拠点を持つ在庫型の卸として、再び成長を評価される。加工の比率が高まる一方、人手不足の中でも配送網を保てる点が、他社との差を広げる。ただ、国内の需要が縮む前提は変わらず、成長の大半は同業から取るシェアで支えられる。
- 九州・中国:数量 109(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 2,324 億円・営業利益 88 億円。シェア 2.7% 前後、営業利益率 3.8%
- 関西・中京:数量 45.5(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 966 億円・営業利益 35 億円。シェア拡大、営業利益率 3.6%
- 関東・東北:数量 49.7(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 1,056 億円・営業利益 38 億円。買収でシェア拡大、営業利益率 3.6%
倍率:事業の純利益 104 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,256 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新設拠点が稼働し、買収も当たり、市況の追い風も重なる必要がある。利益率が市況高騰の年を除く過去の最高を超えるため、確率は低い。
やや楽観 19% 稼働率が上がり、利益率 3% 台 利益 73 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,618 円885 億円
新しい拠点が稼働し、償却費の負担が薄まる。販売数量は 1 割ほど増え、関東・東北は買収で 2 割伸びる。営業利益率は 3.1% で、2015 年以降の平均をやや上回る。鋼材市況は穏やかに上がり、在庫の評価益が毎年少しずつ出る。借入は 3 年で約 70 億円を返し、金利負担も抑えられる。配当性向は 3 割前後で、下限配当と自社株買いが続く。ROE は 6% 近くで、資本コストを下回る。地道な成長を保つが、成長株としては扱われない。関東・東北での買収は小粒のまま続き、年に 1 件ほどの割合で拠点が増える。大型の再開発や半導体関連の需要が九州・中国で下支えするが、全国の鋼材需要の縮みは止まらない。
- 九州・中国:数量 96.3(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 2,045 億円・営業利益 65 億円。シェア微増、営業利益率 3.2%
- 関西・中京:数量 39.8(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 845 億円・営業利益 25 億円。シェア微増、営業利益率 3.0%
- 関東・東北:数量 41.2(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 875 億円・営業利益 27 億円。買収でシェア拡大、営業利益率 3.1%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 885 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2015〜2021 年に 2.2〜3.4% だった利益率が、規模の拡大で 3% 台に乗る姿は現実味がある。ただ、需要の縮みが重しになる。
中立 40% 数量は横ばい、利益率 2.7%、ROE 5% 弱 利益 57 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,800 円685 億円
国内の鋼材需要は年 1.5% ほど縮むが、小野建はシェアの拡大でほぼ打ち返す。九州・中国は 3%、関東・東北は 8% 増える。値段は物価並みに上がり、売上は 3,500 億円ほどになる。会社が掲げる 2028 年 3 月期の営業利益 75 億円は、数年遅れて達成する。営業利益率は 2.7% で、2015〜2021 年の平均とほぼ同じだ。償却費は売上に比べて薄まるが、人件費と運賃が上がり、効果を打ち消す。金利負担は 12 億円ほど増える。純利益は 57 億円で、配当性向 30% と下限配当を保つ。ROE は 5% 弱で、資本コストを大きく下回る。
- 九州・中国:数量 90.1(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 1,914 億円・営業利益 54 億円。シェア 2.2% を維持、営業利益率 2.8%
- 関西・中京:数量 37.9(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 805 億円・営業利益 21 億円。シェア 2.2% を維持、営業利益率 2.6%
- 関東・東北:数量 37.0(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 786 億円・営業利益 20 億円。シェア拡大 8%、営業利益率 2.6%
倍率:事業の純利益 56 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 685 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の需要の縮みをシェアの拡大で打ち返し、数量は横ばい。価格は物価並みで、利益率は 2015〜2021 年の平均に近い。最も起こりやすい。
やや悲観 23% 市況と需要の縮みで利益率 1.8% 利益 28 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 675 円165 億円
国内の需要の縮みが、シェアの拡大を上回る。販売数量は 1 割弱減り、メーカーの値上げも定着しない。売値は物価に届かず、10 年で 1.30 倍にとどまる。新設拠点の稼働率が上がらず、償却費の負担が残る。営業利益率は 1.8% で、直近と同じ水準だ。さらに拠点の再編に伴う追加の減損が出る。金利の上昇で利払いは 13 億円増え、純利益は 28 億円に減る。配当は下限どおり続けるが、自社株買いは止まる。ROE は 3% 近くで、買収で成長する余力もなくなる。九州・中国では、減損後も稼働率の低い拠点が残り、再編と人員の見直しの費用が先に出る。関西・中京と関東・東北の伸びも止まり、配当は下限の金額を守るのが精一杯になる。
- 九州・中国:数量 80.5(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 1,659 億円・営業利益 32 億円。シェア維持、営業利益率 1.9%
- 関西・中京:数量 34.1(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 703 億円・営業利益 12 億円。シェア維持、営業利益率 1.7%
- 関東・東北:数量 31.9(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 21(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 657 億円・営業利益 11 億円。シェア維持、営業利益率 1.7%
倍率:事業の純利益 28 億円、ROE 2.5% で資本コストを大きく下回り、稼ぐ力は約 6 倍にとどまる。稼ぐ力(約 155 億円)より売れる資産の床(約 165 億円)の方が大きいので、床に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.1778 倍・時価総額 165 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:鋼材市況は荒れやすく、国内の需要の縮みも続く。直近 2 年の利益率(2.5%、1.9%)の延長に近く、現実味が高い。
悲観 12% 需要の縮みと市況の崩れで構造的に負ける 利益 4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 286 円70 億円
国内の鋼材需要が加速して縮み、販売数量が 2 割近く減る。輸入材や商社系の値引き攻勢で、売値は物価に届かず 1.22 倍にとどまる。営業利益率は 1% を割り、営業利益は 19 億円まで落ちる。金利の負担で、純利益はほぼ消える。新設した拠点の稼働率が低く、減損が追加で 400 億円ほど出る。配当は下限を維持できず、性向を下げて続く。借入の返済が重く、新しい投資も止まる。資産の売却で借入を減らす局面に入り、優良な卸という評価は消える。買収の余力もなく、縮小均衡で生き残る姿になる。九州・中国に加え、関西・中京や関東・東北の新しい拠点も採算が合わなくなる。会社は撤退と統合を進めるが、倉庫や土地に買い手が少なく、売却は思うように進まない。
- 九州・中国:数量 70.0(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 19(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 1,354 億円・営業利益 12 億円。シェア低下、営業利益率 0.9%
- 関西・中京:数量 29.6(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 19(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 572 億円・営業利益 4 億円。シェア低下、営業利益率 0.7%
- 関東・東北:数量 29.2(販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア)× 価格 19(売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍)→ 売上 565 億円・営業利益 4 億円。シェア低下、営業利益率 0.7%
倍率:事業の稼ぐ力は純利益 4 億円 ÷ 資本コスト 8.25% で約 40 億円だが、売れる資産の税後の方が大きいので床の 70 億円に置いた。借金が重く EV÷営業利益は 32 倍で、EV でも見たが、構造的な負けでは営業利益が戻らず、利益の倍率で割安とは言えない。
確率:国内の需要の縮みが加速し、大口を握る商社系との競争も強まる構造的な負け。借入が重く、市況の崩れが利益を直撃するため、10% 強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
九州・中国
地盤の九州・中国。建築・土木向けの鋼材を在庫で持ち、小口で届ける。営業利益の約 6 割を稼ぐ。
| 数量販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア | 価格売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 87.5 | 16 | 1,387 | 28 |
| 10 年後 中立 | 90.1 | 21 | 1,914 | 54 |
取り方:今。販売数量 約 87.5 万 t(全体 159.7 万 t を売上比で按分)× 売上÷数量で 15.85 万円/t。国内の鋼材需要は約 7,200 万 t で、全国のシェアは約 2.2%。地域別の数量は未開示のため、売上比で置いた。
関西・中京
関西・中京。2000 年から売上が 8 倍に伸びた。堺や静岡などの拠点が中心。
| 数量販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア | 価格売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 37.9 | 16 | 601 | 10 |
| 10 年後 中立 | 37.9 | 21 | 805 | 21 |
取り方:今。販売数量 約 37.9 万 t(売上比で按分)× 15.85 万円/t。市場の縮みをシェアの拡大で打ち返す前提で置いた。
関東・東北
関東・東北。2000 年から売上が 3 倍で、拠点網はこれから。次の買収の標的地域。
| 数量販売数量(万トン)=国内の鋼材需要 × シェア | 価格売上÷数量(万円/トン)。物価 3% で 10 年 1.34 倍 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.3 | 16 | 543 | 10 |
| 10 年後 中立 | 37.0 | 21 | 786 | 20 |
取り方:今。販売数量 約 34.3 万 t(売上比で按分)× 15.85 万円/t。拠点網が薄く、シェアを伸ばす余地は大きいが、需要の縮みは同じ。
リスクと懸念
鋼材市況と在庫の評価
在庫を厚く持つ商売なので、市況が下がると評価損と運転資金の増加が重なる。2027 年 3 月期の増益計画は、市況上昇による評価益に支えられる。上昇が続かなければ、利益は計画を下回る。
国内需要の縮み
粗鋼生産は 6 年で約 2 割減った。人口減、建設の人手不足、資材費の上昇で、着工は増えにくい。数量を保つにはシェアを取り続ける必要があり、その投資が利益を食う。
投資の回収と減損
拠点の新設で償却費は年約 49 億円に増えた。九州・中国では減損が出た。新しい拠点の稼働率が上がらなければ、他の地域でも減損が出うる。自己資本を削り、ROE を下げる。
借入と金利の上昇
借入は約 570 億円。運転資金が大半だが、10 年国債 3% の世界では、借り換えで利払いが約 13 億円増える試算だ。金利負担が営業利益の 1 割を超える年も出る。
大型買収の失敗
長期ビジョンは非連続の買収を前提とする。これまでは小粒の買収が中心だった。大型になれば、価格の高さとのれんの減損で、資本効率を一気に損ねる恐れがある。
大口顧客と商社系との競争
総合商社系の鉄鋼商社は、大口の案件を系列で押さえる。小野建の領域は中小型の工事だが、その需要が弱いと、価格競争に巻き込まれる。粗利益率の 10% は薄く、少しの値引きが響く。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 3.5% を超えた
- 拠点の稼働率が上がり、投資が利益に結びついた証拠になる。楽観側の確率を上げてよい。市況高騰の年を除く過去の最高を超える実績になる。
- 鋼材市況が下落に転じ、在庫の評価損が出た
- 計画の増益が崩れ、借入の運転資金も増える。やや悲観の確率を上げる。2022 年の高騰期の利益は、再現しない前提で見る。
- 新設した拠点で追加の減損が出た
- 投資の失敗が広がる信号になる。自己資本が削られ、ROE がさらに下がる。悲観側の確率を上げる。
- 関東・東北で買収が進み、売上が 3,000 億円を超えた
- シェア拡大が実を結んだ姿になる。買収額と利益率次第で、楽観に寄せる。のれんが重ければ、効果は薄い。
- 自社株買いを年 30 億円以上に増やし、借入を減らした
- 資本効率の改善に本気で動いた合図になる。時価総額への効果は限定的だが、ROE の下げ止まりに寄与する。
- 創業系の資産管理会社が持株を動かした、または非公開化の話が出た
- 少数株主に有利な価格が付く可能性がある。事業の価値は変わらないが、時価総額は上振れうる。
見ておくもの
- 営業利益率と、地域別の営業利益(特に新設拠点の稼働率)
- 鋼材市況と在庫の評価損益
- 販売数量(万トン)と、国内の鋼材需要との差
- 借入残高と金利負担、長期借入金の返済の進み方
- 追加の減損の有無
- 買収の発表と、大株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROE が資本コストを下回る事業として、正当化 PER の式(g は 4%)から上限を出し、その約 9 割に置いた。今の PER や PBR、過去の水準には寄せていない。数量は市場が年 1.5% 縮み、シェア拡大で打ち返すとして横ばい、価格は物価並みの 10 年 1.34 倍で積んだ。地域別の数量は未開示で、売上比で按分した。2027 年 3 月期の計画に含まれる在庫評価益は、起点に使っていない。赤字と減損の 2026 年 3 月期は、純利益の起点を計画の 41 億円にそろえた。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→12.12 倍・やや楽観 PER 8.1→12.12 倍・中立 PER 7.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した。個別の事情は筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.25%。