結論
筑波銀行は、茨城県で首位の常陽銀行に次ぐ2番手の地方銀行である。貸出は2.2兆円、取引先のうちメインバンクにしている会社の割合は18%で、首位の47%とは大きな差がある。筆者の結論は、今の値段はやや割安。いちばんの理由は、金利が上がる世界で利益が倍近くに伸びる力に比べて、公的資金と薄い資本の重荷が値段に引かれすぎていることだ。
稼ぎの源は、貸出と預金の利ざやである。短期金利が2%に定着すれば、貸出の利ざやは今より0.2ポイントほど広がる。10年後の純利益は、直近の67億円から125億円前後へ、ほぼ倍になる。貸出が名目で年3%近く伸びることも効く。
ただし重荷は軽くない。2011年の震災特例で国が入れた優先株350億円が残っている。この優先株は、2031年9月末までに返せなければ普通株に転換される。会社は内部留保で返せると説明するが、返せば資本比率は下がり、その後の還元と貸出の伸びを縛る。
自己資本は薄く、不良債権比率は2.4%と地銀の中では高い。首位の常陽銀行が近くにいて、貸出金利を自分で決める力も弱い。確率は慎重な側にやや寄せた。それでも、中立でも資本コストを超える稼ぎが出るので、今の値段には一定の安全域がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「ずっと持ち続けたい」とは言いにくい。堀が広くなく、資本が薄く、利益が金利と与信費用の偶然に大きく左右されるからだ。
それでも、値段に対する見返りは悪くないと筆者は見る。金利が定着するだけで、貸出の利ざやが広がり、利益は数量と価格の積み上げから素直に倍近くになる。地盤のつくば・県南は、県内で人口が増えている数少ない地域だ。
株主のものになる利益は、見かけより小さい。貸出が伸びる間は、資本比率を保つために利益の7割ほどを内部に残す必要がある。さらに優先株350億円を返す財源も、同じ利益から出る。手元に渡るのは、返済が終わってからだ。
安全域は、悲観の筋書きでこそ試される。構造的に負ける10年では、優先株が普通株に転換され、既存株主の取り分は大きく目減りする。この尾を、確率に入れて評価した。
確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額に対して2割弱上にある。安全域は中くらいで、資本の薄さを考えれば、大きいとは言えない。
何で稼ぐ会社か
本業は、茨城県内の中小企業と個人にお金を貸し、預金を集めることだ。2026年3月期の貸出は2.2兆円で、前期より4%増えた。伸びたのは住宅ローンなどの個人向けと、中小企業向けである。預金は2.5兆円ほどあり、公金預金(自治体の預金)の減少で前期を下回った。
店は県内の水戸・つくば・県南を中心に、いまは70ほどある。会社は中期経営計画で、これを66まで減らす。新しい店は作らず、同じ建物の中に2つの店を入れる形で畳んでいる。
収益は3つに分けて見る。最大は法人と自治体への貸出で、全体の7割を占める。個人向けは3割弱で、住宅ローンが中心だ。3つ目は投資信託・保険・法人向けの助言などの手数料で、年40億円ほどある。この3つに、国債などで預金を運用する収益が加わる。
2010年に茨城銀行と関東つくば銀行が合併して生まれた銀行で、2011年の東日本大震災のあとに、国から350億円の資本参加を受けた。震災で傷んだ取引先を支えるためだった。その優先株は今も残る。
常陽銀行との関係は、競争しながら協力する形だ。2025年10月から、筑波銀行の税金・公金の取り扱いを常陽銀行が引き受けている。事務の重なる部分を合理化しつつ、貸出では争う。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、広くない。茨城県でメインバンクにしている会社の割合は、常陽銀行が47%、筑波銀行が18%、3番手の県信用組合は1割ほどである。2番手とはいえ、首位との差は大きく、しかも毎年少しずつ縮んでいる。貸出金利を自分で決められる立場ではない。
それでも、地盤は悪くない。つくば市の人口は2025年の国勢調査で26.9万人と、県内で初めて首位になり、5年で11%増えた。守谷市とつくばみらい市も増えている。県の北部が9%減る一方、県の南部はわずかに増えた。筑波銀行はつくば・県南に強く、住宅ローンも伸びている。人口減の影響は、県全体よりずっと小さい。
弱みは資本と、利益のぶれである。純資産に占める普通株の取り分は700億円ほどで、これに対して優先株が350億円ある。不良債権比率は2.4%と、地銀の中では高い。2023〜24年3月期には、大口の取引先の債務者区分を下げて与信費用が膨らみ、利益が20億円台にとどまった。
経営は規律を持ち始めた。債券の含み損を抱え、2025年3月期と2026年3月期に評価損のある債券を売って入れ替えを進めている。人件費の増加は、店の統廃合と事務の効率化で吸収する計画である。ただ、2026年3月期の純利益は与信費用が9億円と低く、株式の売却益も含んでいる。この利益を、そのまま続く力とは見ない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、金利のある世界に入ったところだ。日銀が政策金利を上げると、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。この時間差で利ざやが広がる。筑波銀行は、2026年3月期にコア業務純益が99億円と、前期より30億円増えた。貸出金利息の増加が主因である。
短期金利が2%に届いて落ち着いたあと、筆者は貸出の利ざやが今より0.15〜0.3ポイント広がると置く。預金は県の信用金庫や信用組合、ネット銀行と競うので、預金金利は貸出金利の半分ほどは追う。国債の運用も、満期を迎えた低利の債券が高い金利のものに入れ替わり、利ざやが少しずつ上がる。
量の伸びは弱い。茨城県の人口は5年で2.6%減り、2035年には1割近く減ると見られる。ただ県の南部はわずかに増えている。貸出残高は、物価の伸びを含めて年2〜3%台で伸びると見る。人手不足で、人件費も毎年上がる。
業界を動かすいちばんの力は再編だ。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行、あいちFGと三十三FGなど、県境を越えた統合が続く。茨城県では、首位の常陽銀行(めぶきFG)が7.7兆円の貸出を持つ。筑波銀行が常陽銀行と一緒になれば、県内の取引先の6割超が1行に集まり、公正取引委員会が認めにくい。組む相手は、すでに広域連携協定を結ぶ栃木銀行や東和銀行のような、県外の中堅行になりやすい。
資本政策と M&A
最大の課題は、公的資金350億円の優先株をどう片づけるかだ。この優先株は、議決権がなく、配当は預金保険機構の資金調達コストに連動して低い。普通株への転換を請求できる期間は2031年9月末まで。その日までに残った分は、翌日に普通株へ一斉に転換される。転換価格は時価に連動するので、転換されると既存株主の持ち分が薄まる。
会社は、利益剰余金が2025年9月末に450億円あり、350億円の返済財源は確保できると説明する。2034年3月期までに返済を含む目指す姿を実現する計画で、返済後は総還元性向40%程度を目指す。それまでの普通株の配当は低く、純利益の1割に届かない。
返済には代償がある。現金で返せば、優先株で調達した安い資金が無くなり、国債などの運用収益が年7億円前後減る(筆者の推計)。資本比率も2〜3ポイント下がる(筆者の推計)。返済と貸出の伸びを両立させるため、返済前は還元を抑え、利益を厚く残す形になる。
M&Aは、公表された案件は見当たらない。常陽銀行との税公金の受託のような、競争しない分野の協力が中心である。会社は自らの再編には触れていないが、kabufuの推計では、10年以内に買収・TOBを受ける確率は2割ほどだ。ただ常陽銀行との統合は、取引先の集中で認められにくい。
(点検済み:優先株350億円は中立で現金返済(運用収益の減り年7億円前後を調整に入れた)、やや悲観・悲観では転換による既存株主の取り分の減りを時価総額から引いた。評価差額金のマイナス(約-328億円)は戻りを見込まず自己資本に残した。会社の長期目標(純利益100億円・ROE8%)より中立は高いが、貸出残高×利ざやで積んである。)
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に定着するだけで、利益は倍近くになる。2026年3月期の純利益はすでに67億円と、中計が2028年3月期に置いた50億円を上回った。コア業務純益は99億円で、与信費用が9億円しかかからなかった年でもある。利ざやが広がる余地は大きく残っている。
地盤の強さも見逃せない。つくば市は人口で県内首位になり、TX沿線の守谷市やつくばみらい市も増えている。住宅ローンが伸び、貸出は1年で4%増えた。首位の常陽銀行が県内のメインバンクシェアを2年続けて落とすなか、筑波銀行は2位の座を守っている。
資本の面でも、返済の道筋は見えている。利益剰余金は優先株の額を超え、会社は2031年3月末に680億円まで積み上がると計画する。返済が終われば、総還元性向40%程度の還元に入れる。
再編も追い風になりうる。栃木銀行や東和銀行との広域連携は、システムや事務の共通化に進める余地がある。小さな銀行ほど、統合で経費が減る幅は大きい。
慎重な見方
利益は金利の偶然に乗っているだけで、堀が薄い。茨城県のメインバンクシェアは、首位の常陽銀行が47%、筑波銀行が18%。差は大きく、筑波銀行のシェアも毎年少しずつ落ちている。利ざやが広がる局面でも、貸出金利は競争で決まる。
2026年3月期の純利益は、与信費用が9億円しかかからず、債券の入れ替えで出た売却損59億円を、株式関係の益などで埋めた形だ。大口の取引先の債務者区分が下がれば、2023〜24年3月期のように利益は20億円台に戻る。不良債権比率は2.4%と高い。
優先株350億円の存在は、普通株主にとって最大の重荷だ。返済は2031年9月末が期限で、返せなければ時価で転換され、既存株主の持ち分は薄まる。返すと資本比率が下がり、貸出の伸びも還元も縛られる。会社の長期目標である2034年3月期の純利益100億円は、足元の水準から見て高くない。
県の人口は5年で2.6%減り、2035年にはさらに1割近く減る。つくばは伸びても、県北や県西の取引先は縮む。県外の銀行や、ネット銀行が住宅ローンで攻めてくれば、数量もシェアも守りきれない。
どちらに重みを置いたか
金利で利益が伸びること、地盤のつくば・県南の人口が増えていることは、強気の見方に分がある。一方、堀が薄いこと、優先株の返済と転換の問題、与信費用のぶれは、慎重な見方の指摘がより具体的で重い。
確率は、中立に最も重みを置いた。そのうえで、やや悲観を楽観側より厚くし、悲観も1割台に置いた。地銀の標準よりやや慎重である。資本コストも、同じ領域の千葉興業銀行と同じ水準に近づけた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,572 円1,296 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 328 円270 億円)。 今の値に割り戻すと 913 円753 億円、今との差 +43.8%、 期待の年率 +11.6%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,312 円2,730 億円 | 558 円460 億円 | +509.5% | +19.8% | 348 円287 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,558 円2,109 億円 | 461 円380 億円 | +375.5% | +16.9% | 664 円548 億円 |
| 中立 | 30% | 1,823 円1,503 億円 | 364 円300 億円 | +244.4% | +13.2% | 656 円541 億円 |
| やや悲観 | 25% | 632 円521 億円 | 230 円190 億円 | +35.9% | +3.1% | 216 円178 億円 |
| 悲観 | 14% | 43 円36 億円 | 67 円55 億円 | −82.7% | −16.1% | 15 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,572 円1,296 億円 | 328 円270 億円 | +199.2% | +11.6% | 1,900 円1,566 億円 |
今の株価時価総額 635 円523 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 統合と金利が噛み合い、資本の薄さを抜け出す10年 利益 198 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 3,312 円2,730 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、利ざやが法人でも個人でも大きく広がる。つくば・県南の人口増で住宅ローンと中小企業向けの貸出が名目で年3%台半ばまで伸び、首位の常陽銀行とのシェア差も縮む。栃木銀行や東和銀行との広域連携が統合に進み、システムと店舗の共通化で人件費の増加を吸収する。与信費用は景気の山が続いて低く抑えられる。
優先株350億円は、2020年代の終わりまでに現金で返し終える。返済後は総還元性向を5割近くまで引き上げ、自社株買いも入る。ROEは12%を超え、資本コストを大きく上回る。県内で人口が増える地域に根を張る、地方銀行として望みうる最良の10年になる。会社が長期目標に掲げるROE8%も、大きく超える。
- 法人・自治体向け貸出:数量 2.1(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 300 億円・営業利益 137 億円。残高 2.15 兆円(名目)× 利ざや 1.40%、利益率 46%
- 個人向け貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 121 億円・営業利益 47 億円。残高 0.93 兆円(名目)× 利ざや 1.31%、利益率 39%
- 手数料・預かり資産:数量 0.8(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率(%))→ 売上 69 億円・営業利益 27 億円。残高 0.81 兆円(名目)× 手数料率 0.85%、利益率 39%
- 市場運用(有価証券・日銀預け金):数量 0.8(運用資産残高(兆円))× 価格 1.3%(預金調達コスト控除後の運用ざや(%))→ 売上 104 億円・営業利益 54 億円。残高 0.80 兆円(名目)× 利ざや 1.30%、利益率 52%
倍率:事業の純利益 198 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 2,730 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%定着、統合の実現、優先株の早期返済、与信費用の低位が10年そろう前提。どれか1つが崩れれば届かないので、確率は1割に届かない。
やや楽観 22% 金利の追い風を取り込み、返済を終えて還元に移る 利益 161 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,558 円2,109 億円
短期金利2%の定着で、利ざやは中計の想定を超えて広がる。貸出は名目で年3%ほど伸び、つくば・県南の住宅ローンが全体を支える。県北・県西の縮みは続くが、店舗の統廃合と事務の効率化で人件費の増加を抑える。与信費用は景気を1周する間に1〜2度膨らむが、利益を損なうほどではない。
優先株350億円は、2030年ごろまでに現金で返す。返済で資本比率が一時下がるため、普通株の配当は低めに抑え、利益を厚く残す。返済後は総還元性向40%程度に入る。常陽銀行との差は縮まらないが、2番手の座は保つ。会社が長期目標に置くROE8%を上回り、地銀の標準を少し超える10年になる。
- 法人・自治体向け貸出:数量 2.1(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 283 億円・営業利益 115 億円。残高 2.06 兆円(名目)× 利ざや 1.37%、利益率 41%
- 個人向け貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 115 億円・営業利益 39 億円。残高 0.89 兆円(名目)× 利ざや 1.29%、利益率 34%
- 手数料・預かり資産:数量 0.8(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 64 億円・営業利益 21 億円。残高 0.78 兆円(名目)× 手数料率 0.83%、利益率 33%
- 市場運用(有価証券・日銀預け金):数量 0.8(運用資産残高(兆円))× 価格 1.3%(預金調達コスト控除後の運用ざや(%))→ 売上 99 億円・営業利益 49 億円。残高 0.78 兆円(名目)× 利ざや 1.27%、利益率 49%
倍率:事業の純利益 161 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.1 倍、時価総額 2,109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の追い風と返済の道筋が会社の計画どおり進み、与信費用も平均に近い。会社の計画と業界の上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:金利は定着し、利益は倍に。返済に資本を取られる 利益 124 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,823 円1,503 億円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは法人で0.25ポイントほど広がる。貸出は名目で年2.6〜3%伸びるが、人口減とシェアの緩やかな低下で、物価の伸びを大きく上回ることはない。与信費用は景気を1〜2周してならすと、貸出の0.15%前後に落ち着く。人件費は物価並みに上がり、店舗統廃合とデジタル化で一部を吸収する。
優先株350億円は、2030年代前半までに利益剰余金で現金返済する。返済で運用収益が年7億円前後減り、資本比率も下がるため、返済前の還元は低く、返済後に総還元性向を3割台へ引き上げる。常陽銀行との差は変わらず、特別な上振れも下振れもない。それでも名目の成長と利ざやの広がりだけで、利益は倍近くになる。ROEは9%台で、会社の長期目標の8%を超える。
- 法人・自治体向け貸出:数量 2.0(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 265 億円・営業利益 90 億円。残高 2.00 兆円(名目)× 利ざや 1.32%、利益率 34%
- 個人向け貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 109 億円・営業利益 30 億円。残高 0.87 兆円(名目)× 利ざや 1.25%、利益率 28%
- 手数料・預かり資産:数量 0.7(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 59 億円・営業利益 16 億円。残高 0.74 兆円(名目)× 手数料率 0.80%、利益率 27%
- 市場運用(有価証券・日銀預け金):数量 0.8(運用資産残高(兆円))× 価格 1.2%(預金調達コスト控除後の運用ざや(%))→ 売上 94 億円・営業利益 43 億円。残高 0.77 兆円(名目)× 利ざや 1.23%、利益率 46%
倍率:事業の純利益 124 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,503 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気を1〜2周した平均に戻る。優先株は会社の説明どおり現金で返る。最も重みを置く中心の筋書き。
やや悲観 25% 競争とシェア低下で利ざやの広がりが半分にとどまる 利益 74 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 632 円521 億円
金利は上がるが、預金を信用金庫・信用組合・ネット銀行と奪い合うため預金金利の追随が早く、貸出の利ざやの広がりは想定の半分ほどにとどまる。首位の常陽銀行に取引先を奪われ、メインバンクのシェアは毎年落ちる。県北・県西の取引先の縮みも響き、貸出は名目で年2%前後にとどまる。与信費用は景気後退と大口先のランクダウンで、貸出の0.2%台に膨らむ年が混ざる。
優先株は、資本比率を保つため返済が2031年にずれ込み、半分が普通株へ転換される。転換で既存株主の取り分が薄まり、返済後の還元も細る。ROEは6%台にとどまり、資本コストに届かない。会社が掲げる長期目標のROE8%にも届かず、資本コストを超える稼ぎに戻る道が見えなくなる。
- 法人・自治体向け貸出:数量 1.9(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 247 億円・営業利益 56 億円。残高 1.93 兆円(名目)× 利ざや 1.28%、利益率 23%
- 個人向け貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 99 億円・営業利益 13 億円。残高 0.82 兆円(名目)× 利ざや 1.20%、利益率 13%
- 手数料・預かり資産:数量 0.7(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 51 億円・営業利益 7 億円。残高 0.69 兆円(名目)× 手数料率 0.74%、利益率 14%
- 市場運用(有価証券・日銀預け金):数量 0.7(運用資産残高(兆円))× 価格 1.2%(預金調達コスト控除後の運用ざや(%))→ 売上 86 億円・営業利益 34 億円。残高 0.74 兆円(名目)× 利ざや 1.16%、利益率 40%
倍率:10年後のROE6.1%(純利益74億円÷自己資本1222億円)。ROEはk8.5%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.76倍までが上限。競争で稼ぐ力が鈍る姿で、上限の8割(9.41倍)に置くと時価総額は約696億円。ここから、優先株の半分(175億円)が普通株に転換されて既存株主の取り分が削られる分を引き、7.04倍とした。
確率:競争の激化と与信費用が重なる。首位との差、信用金庫・信用組合との預金競争、2023〜24年3月期に大口先で利益が20億円台に落ちた実績から、10年という期間ではこうした鈍い年が相応に混ざる。
悲観 14% 構造的に負け、優先株の転換で既存株主の取り分が削られる10年 利益 15 億円 · PER 2.4 倍 · 株価時価総額 43 円36 億円
10年のどこかで景気後退が重なり、大口の取引先の破綻が相次ぐ。与信費用は貸出の0.3%に膨らみ、不良債権比率は3%を超える。首位の常陽銀行とネット銀行に挟まれ、貸出の利ざやは広がらず、シェアも落ちる。県の人口減で、貸出は名目でも1%ほどしか伸びない。店舗の統廃合で経費を抑えても、利益はほとんど残らない。
優先株350億円は返せない。2031年9月末に、時価で普通株に一斉に転換される。株価が下限(発行時の株価の7割)まで下がった状態では、新しい株は既存株の2.5倍にもなり、既存株主の取り分は3割に満たなくなる。構造的に負けた地方銀行の姿である。純利益は十数億円にとどまり、配当も細る。
- 法人・自治体向け貸出:数量 1.7(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 205 億円・営業利益 12 億円。残高 1.71 兆円(名目)× 利ざや 1.20%、利益率 6%
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 81 億円・営業利益 −5 億円。残高 0.73 兆円(名目)× 利ざや 1.10%、利益率 -6%
- 手数料・預かり資産:数量 0.6(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。残高 0.60 兆円(名目)× 手数料率 0.70%、利益率 0%
- 市場運用(有価証券・日銀預け金):数量 0.7(運用資産残高(兆円))× 価格 1.1%(預金調達コスト控除後の運用ざや(%))→ 売上 75 億円・営業利益 25 億円。残高 0.70 兆円(名目)× 利ざや 1.08%、利益率 33%
倍率:10年後のROE1.5%(純利益15億円÷自己資本1000億円)。ROEはk8.5%以下なので、PERは1÷k=11.76倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿で、上限の7割(8.24倍)に置くと時価総額は約124億円。ただ優先株350億円が下限の価格で一斉に転換される前提では、新しい株が既存株の約2.5倍になり、既存株主の取り分は約29%。123.6×0.288=35.6億円、2.37倍。今の自己資本(普通株分708億円)に対する倍率は0.05倍で、稼ぐ力と転換の希薄化から出した値。
確率:景気後退・大口先の破綻・優先株の転換が重なる。2009年3月期と2010年3月期に赤字を出し、過去20年に3度の希薄化を経験した銀行で、10年という期間では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・自治体向け貸出
茨城県内の中小企業・自治体向けを中心とする貸出(事業性貸出と公共向け)。
| 数量法人・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 1.1% | 163 | 43 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1.3% | 265 | 90 |
取り方:貸出金は2026年3月期末で2.2兆円。中計は2028年3月期末の事業性貸出9,128億円、消費性貸出6,878億円を目標にしており、そこから逆算して事業性約0.85兆円と自治体・その他約0.70兆円を足した1.55兆円をこの区分とした(内訳は推定)。利ざや1.05%は、貸出金利回りと預金利回りの差から置いた。預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)は50%と置く。変動金利の貸出はほぼ全部上がり、預金は半分だけ上がるので、中立の利ざやは10年で+0.27%広がる(率なので物価では上がらない)。残高はお金の量なので名目で伸びる:中立で年2.6%(物価3%に、メインバンクシェアが毎年少しずつ落ちる分と県北の縮みを引く)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+26%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人向け貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出(消費性貸出)。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.1% | 72 | 16 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.3% | 109 | 30 |
取り方:個人向け貸出を0.65兆円と置いた(中計の2028年3月期末目標0.69兆円の少し手前。内訳は推定)。住宅ローンは固定型が多く競争も強いので、利ざやは1.10%から中立で10年+0.15%しか広がらないと置く(法人より小さい)。残高は名目で伸びる:中立で年3.0%(物価3%に、つくば・県南の人口増と、県外・ネット銀行との競争を相殺)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+14%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
手数料・預かり資産
投資信託・保険の販売手数料、法人向けの助言(事業承継・ビジネスマッチング等)の収益。
| 数量預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 0.8% | 42 | 8 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 0.8% | 59 | 16 |
取り方:預金と預かり資産の合計2兆9,803億円(2026年3月期)と預金約2.5兆円から、預かり資産を約0.45兆円と見て、法人ソリューションの取扱高を足して0.50兆円と置いた。役務取引等の利益は年40億円強(2025年3月期は40億円)で、実効手数料率0.84%はそこから逆算した推定。住宅ローンの保証料が手数料の費用に出るため、純額で置く。預かり資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年4.0%(物価3%+NISAなど資産形成)。手数料率は率なので物価では上がらず、低コスト商品への流れで緩やかに下がる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で-5%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場運用(有価証券・日銀預け金)
貸出に回らない預金の運用。国債・地方債・日銀預け金など。
| 数量運用資産残高(兆円) | 価格預金調達コスト控除後の運用ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 1.0% | 63 | 23 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1.2% | 94 | 43 |
取り方:総資産2.84兆円から貸出2.21兆円を引いた約0.63兆円を、有価証券と日銀預け金としてこの区分に置いた(推定)。2025年3月期の資金利益は264億円、2026年3月期は貸出金利息の増加で約300億円と見て、貸出2区分の利ざやの残りを運用ざや1.00%とした。満期を迎えた低利の債券が高い金利の債券に入れ替わり、中立で10年後に1.23%まで広がると置く。残高は預金に連動して中立で年2.0%。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+23%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ、長期金利が3%へ上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ50%(業種共通の置き方・同じ会社の他のセグメントと同じ)だけ追うので、中立の率は10年で1.00%→1.23%(+0.23ポイント)。
リスクと懸念
優先株350億円の返済と転換
2031年9月末までに返せなかった優先株は、翌日に時価で普通株へ一斉に転換され、既存株主の持ち分が薄まる。返済には金融庁の確認が要り、返せば自己資本比率が下がる。利益が伸びなければ、返済と貸出の伸びを同時には満たせない。会社は2034年3月期までの返済を目指すが、時期の約束はない。
与信費用の振れ
2026年3月期の与信費用は9億円と低く、前期の26億円の3分の1だった。2023〜24年3月期には大口の取引先の債務者区分が下がり、純利益が20億円台に落ちた。不良債権比率は2.4%と地銀の中では高く、景気が崩れれば利益は大きく振れる。直近の利益は、この低い与信費用に支えられている面が大きい。
首位の常陽銀行との差とシェアの低下
県内のメインバンクシェアは、常陽銀行47%に対し筑波銀行18%。筑波銀行のシェアも2025年調査で0.45ポイント下がった。常陽銀行は貸出7.7兆円で、金利競争や人材の面で優位に立つ。2番手として貸出金利を自分で決める力は弱く、利ざやが広がる局面でも、その分を取りきれない恐れがある。
債券の含み損と評価損益の振れ
マイナス金利を避けるために買った国債・地方債が、金利上昇で含み損を抱えた。2026年3月期には国債等の債券損益が単体で約59億円のマイナスになった。平均の残存年数は約5年で、金利が想定よりさらに上がれば、評価損が自己資本を傷める。債券の入れ替えは、含み損を実現させる痛みを伴う。
人口減と県北・県西の縮み
茨城県の人口は2025年の国勢調査で5年前より2.6%減り、県北は9%減った。つくば・守谷・つくばみらいは増えているが、取引先の多くは縮む地域にもある。県全体の貸出需要は伸びにくく、事業の承継や廃業が与信費用に響く。人口減の影響を、つくばの伸びだけで補いきれるかが問われる。
預金の競争と預金コストの上昇
預金は信用金庫・信用組合・ネット銀行との奪い合いになる。2026年3月期は公金預金の減少で預金が3%減った。預金金利の追随が想定より早ければ、貸出の利ざやの広がりは半分にとどまる。預金は銀行の仕入れで、その値段を自分では決めにくい。
経費の上昇
賃上げで、2026年3月期の中間期の経費は前年同期より4億円増えた。経費率(コアOHR)は70%台と高く、物価並みの上昇が続くと、利ざやの改善の相当部分が人件費で消える。会社は店を70から66へ減らし、事務の効率化で3年に20万時間を生む計画だが、効果が出るまで時間がかかる。店舗統廃合とデジタル化が計画どおり進むかが分かれ目だ。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%に向けて想定より速く上げたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出の利ざやの広がりを、決算の預貸金利回り差で確認する。
- 与信費用が四半期で急に増えたり、大口先の債務者区分が下がったら
- やや悲観・悲観に重みを移す。どの業種で出たか、不良債権比率が3%に近づいていないかを見る。
- 優先株350億円の返済の時期と方法が公表されたら
- 現金での返済なら資本比率の下がり方と還元方針を確認し、楽観側の確率を見直す。転換が前提なら、悲観側に重みを移す。
- 栃木銀行・東和銀行など県外の銀行との統合や提携が発表されたら
- 経費の削減幅を確認する。統合効果が大きければ、楽観側の確率を上げる。
- 常陽銀行とのメインバンクシェア差が広がり続けたら
- やや悲観に重みを移す。貸出残高の伸びが物価を下回り始めていないかを見る。
- 預金金利の引き上げが貸出金利の引き上げに追いつく動きが出たら
- 貸出の利ざやの広がりを半分に見直し、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 日銀の政策金利と、筑波銀行の預貸金利回り差(決算)
- 与信費用と不良債権比率(2026年3月期は9億円・2.36%)
- 優先株350億円の返済方針と、利益剰余金の積み上がり
- メインバンクシェア(帝国データバンクの茨城県調査)と貸出残高の伸び
- 自己資本比率(中計目標9%以上)と経費率(コアOHR)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。中立〜楽観は10年後のROEがk 8.5%(基本7.5%+quality)を超えるので、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(g 4.0%・残る割合1/2)の上限と下限1÷k=11.76倍の間に置き、ROEがkを超える中立はこの下限に置いた。やや悲観・悲観はROEがk以下で上限が1÷kだが、優先株の転換で既存株主の取り分が削られる分を引いた。悲観の利益は、利ざやが広がらず与信費用が重い構造から出し、過去の底値や今の倍率は使っていない。悲観の時価総額が極端に小さいのは、優先株が下限の価格で転換される前提で既存株主の取り分が約3割に削られるためで、自己資本の何割という置き方はしていない。kが1%高い(9.5%)と、中立のPERは1÷k=10.5倍に下がり、時価総額は1割ほど下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.14→13.79 倍・やや楽観 PER 11.76→13.1 倍・中立 PER 11.76→12.12 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(優先株の返済・転換、首位との差)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていない(2026年3月期の純利益は過去最高)ので上乗せ(extra)は 0。