結論
池田泉州ホールディングスは、大阪府の北摂と泉州を地盤に、大阪・兵庫へ店を広げる地方銀行グループである。貸出は約4.8兆円、預金は約5.9兆円。筆者の結論は「適正」だ。金利の追い風は本物だが、関西は競争が厳しく、費用も重い。10年後の価値は今の値段を1割ほど下回ると見る。
足元の利益は急回復している。2026年3月期の純利益は173億円で、ROEは6.4%まで上がった。中期経営計画(2026〜28年度)は、2028年度に純利益300億円・ROE10%を掲げる。短期金利が2%へ向かえば、貸出の金利は預金より先に上がり、利ざやが広がる。
弱みは構造にある。大阪はメガバンク、りそなグループ、信用金庫に囲まれ、単独で重いシステム投資を負う。連結の自己資本比率は国内基準で約10.6%と、地銀の中でも厚くはない。2026年4月には滋賀銀行と資本業務提携を結んだが、経営統合は否定している。
もう1つの変数は株主だ。ありあけキャピタルが約10.8%を持ち、資本政策の提案もありうる。還元が増えればROEは上がるが、利益の中身は変わらない。筆者は、利ざやの伸びと費用の重さが打ち消し合う姿を中立に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社を長く持ち続けたいかと問えば、答えは「安く買えるなら」である。事業の本質は預金を仕入れて貸し出す、地味で規制された商売だ。堀は浅く、金利が上がれば他の銀行も同じ恩恵を受ける。利ざやの広がりは業界の追い風であって、この会社だけの強みではない。
筆者がいちばん気にするのは、資本の使い方だ。ROEが資本コストを超えて初めて、ためた利益に価値が出る。この会社のROEは過去10年の中央値で4.3%と、資本コストの半分に届かなかった。今は急回復しているが、10年先もこの水準が続くかは確かめようがない。ROEが10%を超えるのは、金利が定着した前提でも楽観に近い。
安全域は薄い。自己資本比率は10.6%、貸出は4.8兆円、自己資本は2,500億円。金融の世界では、景気の悪化で与信費用が急増すれば、利益はすぐ削られる。悲観の筋書きは、利益がほぼ消える姿まで置いた。
経営の変化は好ましい。政策保有株の縮減、還元の強化、M&A・事業承継への投資と、手は打っている。ただ、費用の重さと大阪の競争が利益の伸びを打ち消す。中立の価値は今の値段とほぼ同じで、安全域を取って買う場面ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は、池田泉州銀行の貸出と預金である。大阪北部の池田・箕面から泉州の堺・岸和田、阪神間の西宮・神戸東部まで、店舗は136カ店ある。預金は個人が4.2兆円、法人が1.6兆円。個人預金が厚く、法人預金が薄い。この釣り合いの悪さが、法人貸出を伸ばすときの足かせになる。
貸出は4.8兆円で、事業性(中小企業と公共)と個人(住宅ローン中心)にほぼ半々で分かれる。住宅ローンは固定金利が多く、金利上昇の恩恵が法人貸出より遅れる。法人貸出は変動金利が多く、利上げがすぐ利ざやに効く。
預かり資産の営業は、池田泉州TT証券が柱である。個人の預かり資産5.5兆円のうち、証券子会社の分が2.9兆円と最も大きい。投資信託と保険は合わせて約0.9兆円。手数料は、事業承継とM&Aの仲介も含めて育てている途中だ。M&Aの成約は2023年度以降、年30〜40件に増えた。
有価証券は約0.87兆円で、国債が中心である。債券の入れ替えが進めば、運用の稼ぎは時間をかけて上がる。2025年にはM&A仲介の子会社と事業承継の投資会社を新設する方針を示し、貸出以外の収益源を広げている。
優良さと弱いところ
筆者の見立ては、堀は浅いが、足場は固い、である。大阪北摂・泉州には長い取引の基盤があり、個人預金の厚みは強みになる。だが、県内で圧倒的な首位に立つ地銀と違い、大阪では首位ではない。メガバンクとりそなグループ(関西みらい銀行など)、信用金庫が同じ顧客を取り合う。
価格を自分で決める力は普通だ。貸出金利は競争で決まる。中小企業向けは変動金利が多く、利上げの効果は出るが、取引先を失えば利ざやだけでは守れない。
資本の厚みは平均的である。国内基準の自己資本比率は10.6%で、前期より約1ポイント下がった。貸出が伸び、自社株買いも続けたためだ。リスク管理債権は貸出の約1%と低い。
経営は変化の途上にある。阪口頭取は2025年6月に就任した生え抜きで、法人営業の強化、事業承継とM&Aの子会社新設、滋賀銀行との提携と、手を打ち続けている。まだ成果が利益に表れる前の段階だ。
資本効率は弱い。過去10年のROEの中央値は4.3%と資本コストに届いていない。近年は改善しているが、10%に乗るかが分かれ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
関西の地銀は、人口減と競争の二重の圧力にある。大阪は人口が減りつつあるが、企業の数が多く、法人の資金需要は地方より厚い。そのぶんメガバンクの法人部門、りそなグループ、信用金庫、京都銀行や紀陽銀行など、競争相手が多い。
金利の環境は追い風だ。短期金利が2%に向かえば、変動金利の貸出は先に上がり、預金は預金ベータ(預金金利が追随する割合)の40%ほどしか上がらない。地銀の法人の利ざやは10年で約0.45%、個人は約0.40%広がると業界は見る。ただし大阪は競争が厳しいので、広がった分の一部は貸出金利の競り合いで削られる。
量は広がらない。業界のノートは、地銀の貸出残高を名目で年3%前後と置く。物価を除けば横ばいに近い。大阪の人口は全国より減り方が緩やかだが、郊外の北摂・泉州と個人の住宅ローンは細る。
再編が進んでいる。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行が経営統合に動く中、池田泉州HDは滋賀銀行と資本業務提携を選んだ。金融庁は合併よりも機能連携を重んじる方向にある。総資産は滋賀銀行7.6兆円、池田泉州6.5兆円で、合わせて14兆円を超える。経営統合の布石と見る向きも強い。
費用の面では、システムとサイバー対策の負担が重い。単独で投資を続けられるかが10年の分かれ目になる。
資本政策と M&A
還元は、配当性向40%を目安に、累進配当と機動的な自社株買いを組み合わせる方針である。自己資本比率が国内基準で10.6%と、地銀の中で厚くないため、自社株買いの規模には限りがある。
政策保有株式は縮減の方針で、連結純資産に占める比率は2025年度末で17.0%と、目標の20%未満を保つ。小さくはないが、会社が目標としている水準にはある。
M&Aは、買う側としては大きな案件がない。滋賀銀行との提携は、相互に0.5〜1%の出資、協調融資、案件の紹介が柱で、経営統合は「しない」と明言している。一方でアクティビスト的な株主が資本政策や組織再編を提案できる位置にある。ありあけキャピタルは2026年5月の報告で約10.8%を保有し、市場内で買い増している。大株主にはほかにゴールドマン・サックスの口座(約9%)もある。
kabufuの推定では、10年以内に買収・TOBを受ける確率は約17%。地銀再編の流れの中で、買われる側にも回りうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利が追い風であるうえ、会社は変わり始めている。純利益は2025年3月期の132億円から2026年3月期の173億円へ3割増え、ROEは5.6%から6.9%に上がった。中計は2028年度に純利益300億円・ROE10%を掲げ、その前提の政策金利は1.25%だ。短期金利が2%に届けば、前提より約0.75ポイント上に振れる。貸出は4.8兆円あり、利ざやが0.1%広がるだけで利益は約50億円動く。
事業の中身も変わる。大阪市内の貸出1兆円を目指し、M&A助言子会社と投資子会社を新設した。M&Aの成約は年30〜40件と、従来の2倍を超えた。滋賀銀行との提携で、近畿の案件と協調融資の幅が広がり、重いシステム投資の負担も分け合える。
株主の圧力も味方になる。ありあけキャピタルが約10.8%を持ち、資本効率の改善を求める。配当性向40%に自社株買いを加え、総還元を引き上げる余地がある。自己資本を薄く保てば、ROEは12%台に乗る。10年後の利益は今の2倍を超える、という見方である。
慎重な見方
利ざやの広がりは、すでに大半が織り込まれている。関西は金利競争が激しい。預金の主力は金利に敏感な個人で、法人預金が薄い。金利が上がるたびに預金を高く払わないと貸出を支えられず、広がる利ざやの一部は預金側に流れる。
経費は止まらない。賃金とシステムの費用は物価で増え続け、サイバー対策も要る。単独で投資を続ける負担は重く、滋賀銀行との提携は経営統合ではないので、費用が割れる保証がない。コア経費率55%の目標は、収益が計画どおり伸びてはじめて届く。
大阪市内の法人開拓は、メガバンクとりそなの営業網との正面勝負になる。人口が減る中で、事業性貸出は増えにくい。ROEは過去10年の中央値で4.3%だった。10%に乗せるには、金利の追い風が10年続くことが要る。
自己資本比率は国内基準で10.6%と、前期より約1ポイント下がった。貸出が伸び、自社株買いを続けるほど、余裕は減る。景気後退で与信費用が膨らめば、還元より先に資本を守る局面が来る。ROEは5〜7%に戻り、資本コストを下回るという見方である。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。金利の追い風は強気の根拠として確かだが、広がった利ざやは大阪の競争と預金の確保に削られ、経費の重さも消えない。10年中立では、ROEは10%に届かず9%台にとどまる。
一方で、強気の言う会社の変化も本物だ。純利益の急回復と、還元・事業承継への投資は実績が出ている。確率は楽観・やや楽観に3割強、やや悲観・悲観に4割弱を置き、慎重な側へ少し寄せた。悲観は構造的に負ける姿として、利益がほぼ消える筋書きまで落としている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,449 円4,034 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 464 円1,291 億円)。 今の値に割り戻すと 968 円2,695 億円、今との差 +0.6%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,696 円7,508 億円 | 681 円1,896 億円 | +251.0% | +13.4% | 338 円940 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,086 円5,809 億円 | 574 円1,598 億円 | +176.5% | +10.7% | 585 円1,629 億円 |
| 中立 | 30% | 1,628 円4,533 億円 | 492 円1,369 億円 | +120.3% | +8.2% | 636 円1,770 億円 |
| やや悲観 | 24% | 829 円2,309 億円 | 369 円1,028 億円 | +24.6% | +2.2% | 288 円801 億円 |
| 悲観 | 14% | 236 円656 億円 | 237 円661 億円 | −50.8% | −6.9% | 66 円184 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,449 円4,034 億円 | 464 円1,291 億円 | +98.8% | +7.1% | 1,912 円5,326 億円 |
今の株価時価総額 962 円2,679 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 大阪の法人に食い込み、金利の追い風を取り切る10年 利益 516 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 2,696 円7,508 億円
大阪市内の法人で主力行の座を取りに行く計画が、想定より速く実る。市内支店の貸出1兆円の目標を超え、M&A助言子会社と投資子会社が事業承継の案件を厚く積む。成約は年40件を超え、手数料の稼ぎが貸出の外に育つ。
短期金利は2%に届き、変動金利の貸出がいち早く上がる一方、預金は追随が遅れる。利ざやは広がり、低利回りの債券の入れ替えも進む。人件費とシステム費は物価並みに上がるが、BaaSと生成AIで店舗と事務の費用を抑え、経費率は中計の目標の55%に近づく。
滋賀銀行との提携は協調融資と案件の紹介にとどまらず、システムの共同利用にまで広がる。重い単独のIT投資の負担が軽くなり、ROEは13%近くまで上がる。ただし銀行のROEが10%台前半を超えて長く続くことは珍しく、これは良い目が重なった姿だ。
- 事業性貸出:数量 3.0(事業性貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 676 億円・営業利益 450 億円。残高 2.97 兆円(実質)× 粗利益率 1.70%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 67%
- 個人向け貸出:数量 2.1(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.9%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 413 億円・営業利益 203 億円。残高 2.12 兆円(実質)× 粗利益率 1.45%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 49%
- 有価証券運用:数量 0.9(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 190 億円・営業利益 172 億円。残高 0.91 兆円(実質)× 粗利益率 1.55%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 91%
- 預かり資産・手数料:数量 4.9(預かり資産残高(兆円・実質))× 価格 0.6%(残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 278 億円・営業利益 82 億円。残高 4.94 兆円(実質)× 粗利益率 0.42%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 30%
倍率:事業の純利益 516 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.55 倍、時価総額 7,508 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:大阪市内での法人開拓、事業承継の手数料、滋賀銀行との共同のIT利用、金利2%定着が10年そろう必要があり、1割に置く。ROE13%近い状態は銀行では長く続きにくい。
やや楽観 22% 中計の路線が10年続き、ROEが10%台前半に乗る 利益 424 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,086 円5,809 億円
中計(2026〜28年度)の路線が、そのまま10年続く姿である。2028年度の純利益300億円とROE10%は達成され、その後も金利の定着と大阪市内の法人開拓で利益が積み上がる。
貸出は実質で横ばいを保つ。法人は大阪市内で増え、郊外と個人の住宅ローンは人口減で細る。利ざやは10年で法人0.45%、個人0.40%ほど広がり、これが利益の伸びの大半を生む。
手数料は事業承継とM&Aの仲介、証券子会社の預かり資産で伸びる。経費は物価で増えるが、システムの投資を滋賀銀行と分け合うことで増え方を抑える。
還元は配当性向40%に自社株買いを足し、純利益の5割余りを返す。自己資本は薄く保たれ、ROEは11%近くになる。大株主のありあけキャピタルが求める資本効率の改善にも応える形だ。
- 事業性貸出:数量 2.8(事業性貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 621 億円・営業利益 400 億円。残高 2.81 兆円(実質)× 粗利益率 1.65%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 64%
- 個人向け貸出:数量 2.1(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.9%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 386 億円・営業利益 178 億円。残高 2.06 兆円(実質)× 粗利益率 1.40%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 46%
- 有価証券運用:数量 0.9(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 175 億円・営業利益 158 億円。残高 0.87 兆円(実質)× 粗利益率 1.50%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 90%
- 預かり資産・手数料:数量 4.6(預かり資産残高(兆円・実質))× 価格 0.5%(残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 248 億円・営業利益 58 億円。残高 4.64 兆円(実質)× 粗利益率 0.40%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 23%
倍率:事業の純利益 424 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.7 倍、時価総額 5,809 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の路線が10年おおむね維持され、金利の追い風が利益に反映される姿。費用の重さと大阪の競争は残るため、2割強に置く。
中立 30% 中立:金利は定着し、ROE9%台で安定する 利益 353 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,628 円4,533 億円
金利は2%・3%で定着し、貸出利ざやは広がる。ただ大阪・兵庫は競争が厳しく、広がった分の一部は貸出金利の競り合いで削られる。10年の利益は今の約2倍、ROEは9%台に落ち着く。
貸出の量は実質で横ばいに近い。法人は大阪市内で伸びるが、個人の住宅ローンは人口減と他行との競争で細る。手数料は預かり資産と事業承継で伸びる。
経費は賃金と情報システムで物価より重く増え、経営統合で費用を割ることはしない前提とする。滋賀銀行との連携は効果が出るが、費用を大きく減らすほどではない。
還元は純利益の約5割(配当性向40%に自社株買いを少し足す)。ありあけキャピタルの提案があっても、中計の枠を大きく超える還元にはならない。銀行らしい普通の地銀として、資本コストをわずかに上回る水準で続く。
- 事業性貸出:数量 2.7(事業性貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 568 億円・営業利益 354 億円。残高 2.65 兆円(実質)× 粗利益率 1.60%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 62%
- 個人向け貸出:数量 2.0(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 364 億円・営業利益 159 億円。残高 2.02 兆円(実質)× 粗利益率 1.35%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 44%
- 有価証券運用:数量 0.9(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.9%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 169 億円・営業利益 152 億円。残高 0.87 兆円(実質)× 粗利益率 1.45%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 90%
- 預かり資産・手数料:数量 4.4(預かり資産残高(兆円・実質))× 価格 0.5%(残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 223 億円・営業利益 38 億円。残高 4.37 兆円(実質)× 粗利益率 0.38%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 17%
倍率:事業の純利益 353 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.84 倍、時価総額 4,532 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気を1〜2周してならした水準になる最も重みを置く中心の筋書き。ROEは資本コストをわずかに上回る水準に落ち着く。
やや悲観 24% 滋賀銀行との連携が実らず、費用の重さが残る 利益 222 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 829 円2,309 億円
連結の利益は2028年度の目標を超えられず、ROEは6%台にとどまる。金利の追い風はあるが、費用と競争が食い尽くす姿だ。
大阪市内の法人開拓は、メガバンクとりそなグループ(関西みらい銀行など)の厚い営業網に阻まれて進まない。預金は個人で集まるが、貸出の伸びを支える法人預金が足りず、高い金利で預金を集めて利ざやが縮む。
経費は情報システムとサイバー対策で下がらない。滋賀銀行との提携は協調融資の紹介が中心で、費用の削減に届かない。与信費用は景気の一巡で平均的な水準に戻る。
還元は純利益の5割ほどに落ち、自社株買いは機動的とは言えない規模にとどまる。資本コストをわずかに下回る収益力で、投資家から見ると魅力の薄い地銀に落ち着く。
- 事業性貸出:数量 2.5(事業性貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 495 億円・営業利益 284 億円。残高 2.46 兆円(実質)× 粗利益率 1.50%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 57%
- 個人向け貸出:数量 1.9(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 319 億円・営業利益 114 億円。残高 1.91 兆円(実質)× 粗利益率 1.25%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 36%
- 有価証券運用:数量 0.8(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 153 億円・営業利益 135 億円。残高 0.84 兆円(実質)× 粗利益率 1.35%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 89%
- 預かり資産・手数料:数量 4.0(預かり資産残高(兆円・実質))× 価格 0.5%(残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 192 億円・営業利益 13 億円。残高 3.99 兆円(実質)× 粗利益率 0.36%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 7%
倍率:10年後のROE6.4%(純利益222億円÷自己資本3,454億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。長期の成長gは3%に落ちると置いた。競争と費用の重さで稼ぐ力が鈍る姿。稼ぐ力から出した値である。上限の8.6割に置き、10.4倍。還元を会社の方針(52%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:大阪はメガバンク・りそな・信金に囲まれ、法人預金が足りない構造は続く。滋賀銀行との提携は経営統合ではなく、費用削減の効果が薄い前提。ありあけキャピタルが10.8%を持つが、還元の拡大が実績に出るとは限らない。強い方(慎重な見方)に寄せ、2割台前半に置く。
悲観 14% 構造的に負け、大阪の競争と費用で資本効率が崩れる10年 利益 81 億円 · PER 8.1 倍 · 株価時価総額 236 円656 億円
構造的に負ける10年である。大阪の人口と事業所は減り、メガバンク・りそな・信用金庫・ネット銀行に囲まれて、貸出は実質で2割減る。
預金は金利に敏感な個人が他へ動き、預金金利を高く払い続けないと貸出に見合う預金を保てない。貸出の利ざやは広がらず、法人貸出の競り合いで薄いまま残る。国債と外債の入れ替えでも評価損が出て、自己資本は削られる。
経費は物価で上がり、収益だけが細る。滋賀銀行との提携は経営統合に進まず、重いIT投資を単独で負う。景気後退で与信費用が膨らみ、利益はほぼ消える。
還元は配当の維持にとどまり、ROEは3%を割る。もう優良な地銀とは見なされず、買い手も現れにくい。稼ぐ力は資本コストをはるかに下回る。
- 事業性貸出:数量 2.3(事業性貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.9%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 429 億円・営業利益 223 億円。残高 2.25 兆円(実質)× 粗利益率 1.42%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 52%
- 個人向け貸出:数量 1.8(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.6%(残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数)→ 売上 277 億円・営業利益 77 億円。残高 1.75 兆円(実質)× 粗利益率 1.18%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 28%
- 有価証券運用:数量 0.8(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 137 億円・営業利益 120 億円。残高 0.80 兆円(実質)× 粗利益率 1.28%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 88%
- 預かり資産・手数料:数量 3.6(預かり資産残高(兆円・実質))× 価格 0.4%(残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 145 億円・営業利益 −28 億円。残高 3.61 兆円(実質)× 粗利益率 0.30%(物価指数 1.34 倍を乗せた価格)、利益率 -19%
倍率:10年後のROE2.6%(純利益81億円÷自己資本3,115億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。長期の成長gは2%に落ちると置いた。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の6.7割に置き、8.1倍。還元を会社の方針(52%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:人口減の加速、メガ・ネット銀行への預金流出、与信費用の急増、再編に乗れない孤立が重なる構造的な負け。自己資本比率が国内基準で10%台前半と薄く、買い手もまだ見えないため、他の地銀とほぼ同じ1割強の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
事業性貸出
北摂・泉州・阪神間の中小企業と公共向け貸出に、大阪市内の法人開拓を加えたもの。
| 数量事業性貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.7 | 1.2% | 318 | 168 |
| 10 年後 中立 | 2.7 | 2.1% | 568 | 354 |
取り方:連結貸出は4.84兆円。内訳は開示を見ていないので、事業性(公共を含む)を約55%の2.65兆円、個人を残りの2.19兆円と置いた(推定)。粗利益率は貸出の利ざやと法人手数料を合わせて1.20%と置いた。経費約150億円を割り振って利益168億円。残高は今の値段のままの実質で置き、物価の分は価格の指数(10年1.34倍)に入れる。短期金利が1%前後から2%へ上がる間、預金ベータを40%とすると、中立の法人の利ざやは10年で約0.40%広がる(大阪の競争で地銀の標準0.45%より少し低く置く)。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
個人向け貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+手数料、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.2 | 1.0% | 219 | 69 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1.8% | 364 | 159 |
取り方:個人向け貸出を2.19兆円(推定)、粗利益率を住宅ローンの薄い利ざやを含めて1.00%と置いた。経費約150億円を割り振って利益69億円。住宅ローンは固定金利が多く、金利上昇の恩恵が法人より遅れ、中立の利ざやの広がりは10年で約0.35%。残高は実質で、人口減と他行との競争で中立10年0.92倍と置いた。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
有価証券運用
国債・地方債・外債などの運用。金利上昇で低利回りの債券を入れ替える。
| 数量運用資産の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 1.0% | 87 | 75 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.9% | 169 | 152 |
取り方:有価証券は連結で約0.87兆円(国債が増加)。調達費用を引いたあとの運用の稼ぎを1.00%と置いた(推定)。経費約12億円を引いて利益75億円。債券の入れ替えが進めば10年でこの稼ぎは約0.45%広がる。株式等の売却益は一度きりなので、この部門に入れず全社の調整に入れた。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
預かり資産・手数料
池田泉州TT証券を含む投資信託・保険・証券の預かり資産と、事業承継・M&A仲介などの手数料業務。
| 数量預かり資産残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの手数料率(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 0.4% | 152 | 32 |
| 10 年後 中立 | 4.4 | 0.5% | 223 | 38 |
取り方:個人の預かり資産5.47兆円から預金を除いた投資信託・保険・証券の約3.8兆円(推定)に、手数料等の収入を約152億円(残高の0.40%)と置いた。M&A・事業承継の仲介を含む。手数料率は低コスト商品への流れで緩やかに下がる。経費約120億円を引いて利益32億円。残高は資産形成の需要で、中立は実質で10年1.15倍。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
リスクと懸念
大阪での競争と法人預金の薄さ
預金は個人が7割で、法人預金は1.6兆円と薄い。大阪市内の法人貸出を増やすには預金も要るが、メガバンク・りそなグループ・信金と取り合いになり、高い預金金利でしか集まらない恐れがある。広がるはずの利ざやが削られる。
経費の重さと単独のIT投資
賃金とシステム、サイバー対策の費用は物価で上がる。滋賀銀行との提携は経営統合ではなく、費用を割る効果は限られる。コア経費率55%の目標に届かなければ、利益の伸びは鈍る。
与信費用の正常化
リスク管理債権は貸出の約1.1%と低く、与信費用は歴史的な低水準にある。景気の一巡で平均的な水準に戻れば、年に数十億円の費用が積み上がる。利上げの副作用で中小企業の資金繰りが苦しくなる局面も想定する。
債券の評価損と自己資本
有価証券は約0.87兆円で、国債が増えている。金利が上がれば評価損が出る。国内基準の自己資本比率は10.6%で、前期の11.6%から下がった。自社株買いと貸出の伸びが重なれば、余裕はさらに減る。
アクティビスト株主への対応
ありあけキャピタルは約10.8%を持ち、資本政策や組織再編の提案をしうると届けている。提案に沿って還元を増やせば、資本の余裕は減る。経営の独立か再編かの方針で、会社と大株主の考えが分かれる恐れがある。
滋賀銀行との提携の行方
提携は協調融資とM&A案件の紹介、DXが柱で、相互出資は0.5〜1%にとどまる。効果が出なければ、再編の圧力が再び強まる。統合に進めば持ち分の薄まりや費用の発生が起こりうる。
今後の分かれ目
- 短期金利が2%に届かず、1%台前半で止まる
- 利ざやの広がりが半分になり、2028年度の純利益300億円の達成も遅れる。10年の中立の利益は今の1.5倍程度にとどまる。
- 大阪市内の貸出1兆円が早期に達成される
- 法人預金の確保が追いつけば、利ざやと手数料が上振れる。楽観の筋書きに近づく。
- 滋賀銀行と経営統合に進む
- システム費用を割れて経費率が下がる一方、統合の費用と持ち分の薄まりも出る。10年の利益は上振れうる。
- 景気後退で与信費用が急増する
- 数年間は利益が半分以下に減り、還元も絞られる。自己資本比率が下がれば自社株買いが止まる。
- ありあけキャピタルが取締役の派遣や還元の大幅拡大を迫る
- 短期的にはROEが上がる。ただ利益の中身は変わらず、自己資本の余裕が減る。
- 他の地銀や外部の資本から買収・TOBの打診がある
- 買う側の評価で値段が決まり、10年の筋書きより上振れる可能性がある。kabufuの推定は10年以内に約17%。
見ておくもの
- 大阪市内の貸出残高と法人預金の釣り合い
- コア経費率が55%に向けて下がるか
- 預金金利の追随の速さ(預金ベータ)
- 与信費用と有価証券の評価損益
- ありあけキャピタルの持ち分と株主提案
- 滋賀銀行との提携の中身(システム共同利用・統合の有無)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9.2・9.1割に置いた(中立は大阪の競争と費用の重さで低めの割合。下限の1÷k=12.1倍と同じ水準)。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、gを3%・2%に落として同じ式で上限を出し、その約9割・8割に置いた。悲観の利益は、預金流出・与信費用・重い経費から10年後のROE約3%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。含み益は開示で確かめられず、床には足していない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは11.7倍から9.9倍に下がる。10年後の数字は今と同じ形(利ざやと経費で置いた形)にそろえ、新リース会計基準の影響は店舗賃借が小さいため入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.81→14.55 倍・やや楽観 PER 12.61→13.7 倍・中立 PER 11.69→12.84 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(大阪での競争・単独のIT投資・アクティビストの提案)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せは 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。横浜FG(+0.5%)より高いのは、大阪での値決め力が弱いため。