結論
あおぞら銀行は、日本長期信用銀行を前身とする銀行だ。いまは国内の企業買収向け融資(LBO)や不動産ファイナンスを得意とする投資銀行型の銀行に姿を変えている。大和証券グループが2割を超える筆頭株主で、証券との協働が成長の柱になる。
筆者の結論は、いまの値段に安全域は乏しいというものだ。利益は回復途上にあり、ROE(自己資本に対する利益率)は5%台にとどまる。資本コストの8.5%には届かない。この差が埋まるまでは、株価が純資産を大きく上回る理由が見つからない。
追い風は確かにある。短期金利が2%に向かう間、貸出の利ざやは広がる。中計は2027年度に純利益330億円、2029年度に500億円を掲げ、大和証券との協働も実績が出始めた。ただし、この会社は2024年3月期に約500億円の赤字を出した。過去に集中した与信が一度に傷む癖があり、利益の質は慎重に見たい。
10年の筋書きを確率で重ねると、本質価値はいまの時価総額を約3割下回る「割高」と筆者は考える。割高といっても、中計が計画どおり進めば値段は妥当に近づく。逆に不況で与信が傷めば、下げ幅は大きい。上にも下にも振れ幅が大きい銘柄だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは「10年後にも持ち続けたいか」だ。あおぞら銀行の答えは、条件つきの「はい」になる。
事業の本質は、案件を選ぶ目利きにある。堀は規制ではなく人の腕に依存する。こういう事業は、うまくいけば高いROEを出すが、判断を誤れば一度に利益が吹き飛ぶ。2024年3月期の赤字は、まさにそうだった。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、いまの水準で年250億円前後。純資産が4,800億円だから、利益率は5%強にすぎない。国債で3%が取れる世界で、この数字は魅力的とはいえない。中計どおりROEが8%に届いても、資本コストにわずかに届かない程度だ。
資本の使い方は、改善している。配当性向を半分に置き、集中した与信を減らす方針も打ち出した。大和証券が大株主に入ったことで、経営の規律も増した。
安全域は、今の値段にはほとんどない。純資産に近い値段で買えるなら守りは効くが、ROEが資本コストに届くまでは、その値段でも割安とはいえない。待つ価値のある会社で、焦って買う会社ではない。
何で稼ぐ会社か
あおぞら銀行の稼ぎ方は、3つの部門で説明できる。
中心は投資銀行だ。国内のLBO(企業買収のための融資)、不動産ファイナンス、環境関連の融資を手がける。資本の半分以上をここに振り向けており、中計では残高を2.6兆円から3.6兆円へ増やす計画だ。ROEは10%台と、全社平均より高い。
次が市場国際だ。国債・外債などの有価証券運用と、海外のコーポレートローンを受け持つ。2024年3月期の赤字は、ここで抱えた米国オフィス向け融資と債券の評価損が原因だった。いまは米国オフィス向けの残高を14億ドル台から12億ドル弱まで落とし、処理が必要な案件も3分の1まで減らしたとしている。2026年度から通常の管理に戻す段階だ。
3つ目が顧客部門だ。個人の資産管理、金融法人との取引、GMOあおぞらネット銀行がここに入る。ネット銀行は法人口座が25万件、預金が1.3兆円を超え、実質業務純益ベースで黒字になった。BaaS(他社に銀行機能を貸す事業)を伸ばし、5年で粗利益の倍増を狙う。
店舗網は小さく、個人店舗に頼らない形だ。大和証券との提携は、ファイナンスの案件紹介や、ファンドラップ(資産運用の一任口座)の販売で効く。2025年度に35億円の効果が出て、2027年度に100億円を目指す。
人員は少数精鋭で、案件ごとの判断が利益を左右する。部門の損益は大きく振れやすく、全社の利益は、与信費用の増減に左右される。
優良さと弱いところ
この銀行の強みは、地方銀行にない案件力だ。買収ファイナンスや不動産ファイナンスは、取引先の経営や物件の中身を読む力が要る。長信銀の時代から培った目利きがある。ここに大和証券の営業網が加わり、案件の入り口は広がった。
一方で、堀は広くない。規制や独占で守られた事業ではなく、同じ分野には大手銀行、リース会社、外資系ファンドが入ってくる。利ざやを守れるかは、案件を選ぶ腕しだいだ。
弱点は、与信が偏りやすいことだ。2024年3月期に米国オフィス向け融資と外債の損失で、純損失が約500億円に膨らんだ。この痛手で、経営は集中を減らす方針を掲げた。ただ、投資銀行を伸ばせば、特定の業種に残高が寄る危うさは再び出てくる。
資本の厚みも薄い。自己資本比率は6%弱で、大手銀行より余裕がない。大和証券の増資で立て直したが、少しの損失で配当の余力が揺れる。中計はCET1比率を2030年3月末に9%以上へ引き上げるとしており、配当を増やす速度にも限りがある。
資本効率は改善途上だ。直近のROEは5%台で、中計でも2027年度に7%程度、2029年度に8%以上を目指す段階にある。この数字が本当に出るかを確かめる時期が続く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行業は、金利のある世界の入り口にいる。短期金利が2%まで上がる間、貸出金利は早く追随し、預金金利は遅れて追う。この時間差が、利ざやを広げる。日本の銀行にとっては、約20年ぶりの追い風だ。
ただし、あおぞら銀行の領域は、メガバンクや地方銀行とは少し違う。主な競争相手は、投資銀行型のファイナンスを手がける大手行、リース会社、外資系ファンドだ。顧客は上場企業の買収案件や、不動産会社である。借り手が景気で大きく動くため、与信費用が振れやすい。
同じ領域のSBI新生銀行は、消費者金融を併せ持つ。スルガ銀行は個人向けが中心だ。あおぞら銀行はこの2社より個人向けが小さく、法人の専門ファイナンスと有価証券の比率が高い。金利上昇の恩恵は貸出に出やすいが、債券は満期が来て入れ替わるまで効かない。
地方銀行の再編も追い風になりうる。統合や提携が進めば、地銀向けの有価証券運用、協調融資、システムの受託といった仕事が増える。あおぞら銀行は、地銀向けの金融サービスを持つことで、その受け皿になれる。
悲観の見方は2つある。3年以内に急な不況が来れば、買収融資と不動産の与信費用が一度に跳ねる。10年の構造的な負けは、競争で案件を取れなくなり、無理をして質の低い融資を積む展開だ。2024年の損失は、その予告だったともいえる。
為替はドル円150円で固定して見ている。海外ローンの利ざやや、米国オフィスの処理の進み方は、この前提のもとでの話だ。
資本政策と M&A
還元の姿勢は、はっきりしている。中計は配当性向50%程度を掲げ、2026年3月期は約49%だった。2027年3月期は増配を予想し、性向は51%強になる。
ただし、増やせる幅には限りがある。自己資本比率が低く、CET1比率を2030年3月末に9%以上へ上げる約束があるためだ。自社株買いは、利益が安定するまで本格化しにくい。
最大の資本イベントは、2024年の大和証券グループとの資本業務提携だ。約519億円の第三者割当増資で、同社は約15%を持つ筆頭株主になった。その後、市場外で追加取得し、2026年3月末の持株比率は約24%とされる(二次情報で、確認はできていない)。
大和証券が議決権の過半を持つ形ではない。ただ、筆頭株主として経営に関わる度合いは強い。将来、さらに出資比率を上げる、あるいは完全子会社化に動く可能性は排除できない。kabufuの推計では、10年以内にTOB(株式公開買い付け)を受ける確率は16%ほどだが、筆者は具体的な材料を確認できていない。
政策保有株は縮小の途上にあり、売却益が時々出る。その分は一時的な上積みとして扱い、本質価値には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利が2%へ向かう間、あおぞら銀行の貸出利ざやは確実に広がる。法人向けの変動金利の貸出は、ほぼ全部が追随する。調達も、金利の上昇に合わせて見直しやすい。投資銀行ユニットは、資本配分を56%まで高め、ROE14%を狙っている。
米国オフィス向けの傷は、もう癒えている。残高は3分の2近く減り、処理が必要な案件は3分の1になった。2026年度から通常の管理に戻る。与信費用は年80億円台で落ち着いており、2024年の再来を心配する段階は過ぎた。
大和証券との協働は、数字で出ている。2025年度に35億円と計画を上回り、2026年度は65億円、2027年度は100億円を目指す。証券の営業網とあおぞらの案件力は、補い合う形だ。ファイナンスの実行額は5,600億円まで増える。
GMOあおぞらネット銀行は黒字化した。法人口座は25万件、預金は1.3兆円を超える。BaaSで他行にも機能を貸し、収益源が広がる。
中計どおり2029年度に純利益500億円、ROE8%を達成すれば、PBRは1倍を超える。配当性向50%は維持され、増配も続く。再建のあとの安定成長局面に入り、株価は純資産を上回って評価されるはずだ。
慎重な見方
2026年3月期の純利益257億円は、税の負担が軽かった分だけ良く見えている。繰延税金資産という、過去の赤字の恩恵がある間の数字だ。本来の税率に戻れば、同じ経常利益でも手取りは3割ほど減る。
ROEは5%台で、資本コスト8%に届かない。中計の2027年度ROE7%も、まだ資本コストを下回る。この会社は、利益を出しても株主の要求する水準を満たしていない状態がしばらく続く。
投資銀行の拡大には代償がある。LBOと不動産ファイナンスは、不況で一度に傷む。2024年の米国オフィスの損失は、与信の集中がどれほど大きな損失になるかを見せた。残高を2.6兆円から3.6兆円へ増やせば、同じ過ちを国内で繰り返す危険が増す。
調達にも弱みがありうる。ネット銀行や法人の預金は、不安が出れば動きやすい。自己資本比率は6%弱と薄く、損失の吸収力に限りがある。
大和証券との協働効果は、すでに数字に織り込まれている部分も大きい。100億円の目標は野心的で、実現しなければ中計全体が崩れる。配当性向50%を守るため、資本の積み上げ(CET1の9%)が遅れれば、さらに無理が出る。今の値段は、中計が全部うまくいくことを前提にしている。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方にやや分があると判断した。追い風は確かだが、ROEが資本コストを超えるのは、早くても数年先だ。それまでの間に景気が悪化すれば、損失の吸収力が足りない。
確率は中立に最も多く置いた。楽観の側は、中計がほぼそのまま実現する場合に限った。悲観の側には、2024年に実際に起きた損失の大きさを踏まえ、他の銀行より少し厚めに配った。確率の寄せ方は、利益の回復を認めつつ、損失の吸収力の薄さを重く見たものだ。結論として、いまの値段は中計の成功をほぼ織り込んでおり、資本コストを稼げるまでは安全域がない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,014 円4,173 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,213 円1,679 億円)。 今の値に割り戻すと 2,140 円2,962 億円、今との差 −29.2%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,811 円8,045 億円 | 2,239 円3,100 億円 | +166.3% | +10.3% | 563 円780 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,494 円6,222 億円 | 1,476 円2,043 億円 | +97.5% | +7.0% | 1,194 円1,653 億円 |
| 中立 | 33% | 3,417 円4,730 億円 | 1,278 円1,770 億円 | +55.3% | +4.5% | 1,549 円2,145 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,592 円2,205 億円 | 1,076 円1,490 億円 | −11.7% | −1.2% | 640 円887 億円 |
| 悲観 | 16% | 1,242 円1,720 億円 | 506 円700 億円 | −42.2% | −5.3% | 280 円387 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,014 円4,173 億円 | 1,213 円1,679 億円 | +39.8% | +3.4% | 4,227 円5,852 億円 |
今の株価時価総額 3,023 円4,186 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 投資銀行へ転換し、ROE10%が定着する10年 利益 731 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 5,811 円8,045 億円
短期2%・長期3%が定着し、投資銀行は残高5兆円まで伸びる。LBOと環境ファイナンスは、国内の事業承継と脱炭素の資金需要を取り込む。大和証券の営業網と案件力が結びつき、ファンドラップなど手数料収入も育つ。GMOあおぞらネット銀行はBaaSで地銀・事業会社の基盤になり、黒字が積み上がる。与信は分散が進み、2024年のような損失は10年間出ない。ROEは10%に乗り、増配と自社株買いが続く。経営が資本の使い方を磨き、ROEが10%に乗る銀行は、国内では少数派になる。市場はこの銀行を、地銀の再編でも頼られる存在として評価し、純資産を大きく上回る値段がつく。地銀の再編が進むなかで、受け皿としての役割も広がる。
- 投資銀行:数量 5.0(投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(残高に対する粗利益の率))→ 売上 1,225 億円・営業利益 735 億円。残高5.0兆円(名目)×粗利率2.45%、利益率60%
- 市場国際:数量 2.9(市場・海外の運用残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(運用利回り − 調達コスト))→ 売上 508 億円・営業利益 345 億円。残高2.9兆円(名目)×粗利率1.75%、利益率68%
- 顧客・ネット銀行:数量 1.4(顧客部門の貸出・運用残高(兆円))× 価格 0.03(粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む))→ 売上 350 億円・営業利益 175 億円。残高1.4兆円(名目)×粗利率2.50%、利益率50%
倍率:ROE9.7%・資本コスト8.5%・g3.0%から PBR=(ROE−g)÷(k−g)=1.22倍が式の目安。中計が計画どおり進み利ざやも広がる最良の姿。PBR1.067倍に置き、時価総額8,045億円(正当化PERの上限検査でも上限の90%)。
確率:投資銀行の拡大、大和証券との深い協働、与信の分散がすべてうまくいく場合。10年間、大きな損失が出ないことが前提で、確度は高くない。
やや楽観 20% 中計の目標に近づき、ROE8%台が定着する10年 利益 570 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 4,494 円6,222 億円
金利は定常化し、投資銀行は4.5兆円まで増える。大和証券との協働は100億円に届き、そのまま維持される。市場国際は債券の入れ替わりが終わり、利ざやが落ち着く。与信費用は景気の波を経て、平均的な水準に戻る。純利益は600億円近くに乗り、ROEは8%台で安定する。配当性向は5割を保ちつつ、自己資本も厚くなる。株価は純資産と同じ水準で評価される。大和証券との関係は安定し、証券・銀行の一体運営が定着する。投資銀行は伸びが落ち着き、残高の増加は物価並みに近づく。堅実な運営が実を結ぶ10年だ。米国オフィスの損失は過去の話になり、経営は与信を業種と地域で分ける運営を続ける。CET1比率は9%台に乗り、配当と自社株買いを両立できる余力がつく。
- 投資銀行:数量 4.5(投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(残高に対する粗利益の率))→ 売上 1,058 億円・営業利益 603 億円。残高4.5兆円(名目)×粗利率2.35%、利益率57%
- 市場国際:数量 2.6(市場・海外の運用残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(運用利回り − 調達コスト))→ 売上 442 億円・営業利益 287 億円。残高2.6兆円(名目)×粗利率1.70%、利益率65%
- 顧客・ネット銀行:数量 1.2(顧客部門の貸出・運用残高(兆円))× 価格 0.03(粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む))→ 売上 300 億円・営業利益 141 億円。残高1.2兆円(名目)×粗利率2.50%、利益率47%
倍率:ROE8.0%・資本コスト8.5%・g3.0%から PBR=(ROE−g)÷(k−g)=0.90倍が式の目安。利ざやの拡大が続くがROEはk未満。PBR0.87倍に置き、時価総額6,222億円(正当化PERの上限検査でも上限の93%)。
確率:中計の2029年度目標(純利益500億円・ROE8%以上)に近い水準が10年続く想定。与信は景気の波を1〜2回経ても致命傷にならない。
中立 33% 利ざやは広がるが、投資銀行の競争でROEは7%台にとどまる10年 利益 448 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 3,417 円4,730 億円
短期2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。投資銀行は残高4兆円まで増えるが、LBOと不動産ファイナンスの競争は続き、採算は大きく上がらない。大和証券との協働は70〜100億円で安定する。この10年のうちに、景気の後退局面が1回は入り、与信費用が年200億円を超える年もある。純利益は450億円前後で、ROEは7%ほどだ。配当は性向5割を保つ。株価は純資産をやや下回る水準で評価される。市場国際は債券の入れ替えが終わり、利ざやは頭打ちになる。GMOあおぞらネット銀行は黒字を保つが、全体の利益を押し上げるほどにはならない。大きな変化はなく、堅実だが平凡な銀行になる。経営は慎重で、損失の再来は避けるが、成長の速度も抑えめだ。
- 投資銀行:数量 4.0(投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(残高に対する粗利益の率))→ 売上 920 億円・営業利益 506 億円。残高4.0兆円(名目)×粗利率2.30%、利益率55%
- 市場国際:数量 2.4(市場・海外の運用残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(運用利回り − 調達コスト))→ 売上 384 億円・営業利益 246 億円。残高2.4兆円(名目)×粗利率1.60%、利益率64%
- 顧客・ネット銀行:数量 1.0(顧客部門の貸出・運用残高(兆円))× 価格 0.03(粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む))→ 売上 250 億円・営業利益 112 億円。残高1.0兆円(名目)×粗利率2.50%、利益率45%
倍率:ROE6.8%・資本コスト8.5%・g3.0%から PBR=(ROE−g)÷(k−g)=0.69倍が式の目安。ROE6.8%はk未満で、純資産を下回る水準に置く。PBR0.72倍に置き、時価総額4,730億円(正当化PERの上限検査でも上限の90%)。
確率:金利は定常化し、与信費用は景気の波を経て平均に戻り、投資銀行は伸びるが競争で採算は大きく上がらない、最も重みを置く想定。
やや悲観 24% 競争と与信費用で採算が悪化し、ROE4%前後にとどまる10年 利益 218 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,592 円2,205 億円
不動産とLBOの与信サイクルが何度か悪化し、利ざやの広がりの恩恵を食いつぶす。投資銀行の残高は3.6兆円にとどまり、採算は大手や外資との競争で下がる。大和証券との協働効果は期待より小さい。米国オフィスの損失の再来はなくとも、他の海外与信で損失が出る。ROEは4%近辺に張りつき、増配の余地は乏しく、CET1比率の積み上げも遅れる。市場は、資本コストを稼げない銀行として評価する。それでも自己資本は守られ、大和証券の支援が必要な水準には至らない。配当は性向を下げつつ続くが、増配は見込めず、市場は純資産の半分ほどの値段しかつけない。投資銀行を伸ばすほど、案件の質を保つのが難しくなる。
- 投資銀行:数量 3.6(投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(残高に対する粗利益の率))→ 売上 684 億円・営業利益 315 億円。残高3.6兆円(名目)×粗利率1.90%、利益率46%
- 市場国際:数量 2.2(市場・海外の運用残高(兆円))× 価格 0.01(粗利ざや(運用利回り − 調達コスト))→ 売上 297 億円・営業利益 154 億円。残高2.2兆円(名目)×粗利率1.35%、利益率52%
- 顧客・ネット銀行:数量 0.9(顧客部門の貸出・運用残高(兆円))× 価格 0.03(粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む))→ 売上 234 億円・営業利益 84 億円。残高0.9兆円(名目)×粗利率2.60%、利益率36%
倍率:ROE3.8%・資本コスト8.5%・g3.0%から PBR=(ROE−g)÷(k−g)=0.14倍が式の目安。与信の傷みでROEが3.8%に下がる筋書き。PBR0.46倍に置き、時価総額2205億円(正当化PERの上限検査でも上限の86%)。
確率:10年のうち与信の悪化が何度か重なり、投資銀行の競争が強まって採算が落ちる想定。10年という長さでは、停滞する年も相応に混ざる。
悲観 16% 構造的に負け、与信の損失が繰り返される10年 利益 9 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,242 円1,720 億円
10年の間に、世界的な信用収縮がまた起きる。LBOと不動産の与信が傷み、米国オフィス以外にも海外ローンの損失が出る。投資銀行は案件を取れなくなり、残高も3兆円を下回る。大和証券との協働は成果を出せず、提携の見直しが議論される。利益はほぼゼロまで落ち、配当は大幅に削られる。大和証券が資本の支援に動く可能性は残るが、少数株主の持ち分は薄まる。この間の配当は、保有する債券・株式・不動産の売却で得た資金を取り崩して一部を維持する形になり、単年の純利益だけでは支えられない。市場からは、再び再建が必要な銀行と見られる。この銀行はもはや優良ではなく、再編の対象として扱われる。
- 投資銀行:数量 2.8(投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円))× 価格 0.02(粗利ざや(残高に対する粗利益の率))→ 売上 420 億円・営業利益 134 億円。残高2.8兆円(名目)×粗利率1.50%、利益率32%
- 市場国際:数量 1.8(市場・海外の運用残高(兆円))× 価格 0.01(粗利ざや(運用利回り − 調達コスト))→ 売上 171 億円・営業利益 38 億円。残高1.8兆円(名目)×粗利率0.95%、利益率22%
- 顧客・ネット銀行:数量 0.7(顧客部門の貸出・運用残高(兆円))× 価格 0.02(粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む))→ 売上 147 億円・営業利益 29 億円。残高0.7兆円(名目)×粗利率2.10%、利益率20%
倍率:過去に集中した与信が一度に傷む構造的な負けで、純利益は9億円とほぼ消える。稼ぐ力は小さいので、売れる資産で測る:減損後の自己資本4,300億円のうち、貸出債権と債券の一部は簿価近くで売れるが、LBO融資・不動産は大きく値引きされ、約40%(1,720億円)が株主に残るとみた。
確率:10年のうち再びリーマン級の与信損失が起き、投資銀行の戦略も崩れて、優良ではなくなる想定。2024年の実例を踏まえ、同領域の銀行と同程度に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
投資銀行
国内の LBO・不動産・事業会社向けファイナンスと、環境ファイナンス。大和証券との協働もここに入る。
| 数量投資銀行向けの貸出・投資の残高(兆円) | 価格粗利ざや(残高に対する粗利益の率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 0.02 | 494 | 260 |
| 10 年後 中立 | 4.0 | 0.02 | 920 | 506 |
取り方:中計の投資銀行ユニットのビジネスアセット 2.6 兆円(2030/03 末に 3.6 兆円の目標)を今の残高とし、ビジネス利益 260 億円から粗利ざやを 1.90%、利益率を約 53% と置いた(会社資料の要約からの推定)。残高はお金の量なので名目で伸ばす。率の価格は物価では上がらず、短期金利が 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動の貸出がほぼ全部追随し預金・調達は 45〜50% 追随するとして、中立の粗利ざやは 3 年で +0.25%、10 年で +0.40% 広がると置いた。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+21%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場国際
有価証券の運用(ALM)、海外のコーポレートローン、米国オフィス向けローンの処理。
| 数量市場・海外の運用残高(兆円) | 価格粗利ざや(運用利回り − 調達コスト) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.01 | 260 | 150 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 0.02 | 384 | 246 |
取り方:市場国際ユニットのビジネスアセットを約 2.0 兆円(国内債・外債・海外ローン・米国オフィス向け)、粗利ざやを 1.30%、ビジネス利益を 150 億円と置いた(会社資料の要約と 2027 年度計画 190 億円からの推定)。債券は満期のたびに高い金利で入れ替わるので、利ざやの広がりは貸出より遅く、中立で 3 年 +0.15%、10 年 +0.30% とした。ドルは 150 円で固定。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+23%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
顧客・ネット銀行
個人の資産管理型ビジネス、金融法人、GMO あおぞらネット銀行(法人向け決済・BaaS)。
| 数量顧客部門の貸出・運用残高(兆円) | 価格粗利率(残高に対する粗利益。手数料を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 0.03 | 150 | 60 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.03 | 250 | 112 |
取り方:個人・金融法人・GMO あおぞらネット銀行をまとめ、残高を約 0.6 兆円、手数料を含む粗利率を 2.5%、ビジネス利益を 60 億円と置いた(ネット銀行の実質業務純益 19 億円の黒字化と中計資料からの推定)。GMO あおぞらネット銀行の預金は 1.3 兆円を超えるが、運用の多くは市場国際ユニット側で計上されるとみて、ここには運用残高だけを置いた。口座数は人と会社の数なので物価では伸びない。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+14%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし) (R23c 点検:率の10年の上昇を支える値上げの開示・金利などの事業の理由を、具体的な数字や出典つきで書けないので、楽観・やや楽観・中立は現在の2.5%の横ばいにした。やや悲観・悲観は据え置き。)
リスクと懸念
与信の集中が再び損失を生む
LBOと不動産ファイナンスは、不況で一度に傷む。2024年3月期の約500億円の赤字は、米国オフィス向け融資への集中が原因だった。投資銀行の残高を2.6兆円から3.6兆円へ増やす計画は、同じ形の損失を国内で繰り返す危険を含む。分散の方針を掲げても、残高を増やす局面では、同じ傾きが戻りやすい点に注意したい。
米国オフィス向けローンの残り
残高は12億ドル弱に減り、処理の必要な案件も3分の1になった。それでも市況が戻らなければ、追加の引当が出る。2026年度から通常の管理に移るが、損失がゼロになったわけではない。市況が戻るまで、この項目は決算のたびに確認が要る。
自己資本の薄さ
自己資本比率は6%弱で、大手銀行より余裕がない。CET1比率を2030年3月末に9%以上へ上げる約束があり、配当を増やす力にも限りがある。損失が出れば、増配の計画は止まる。資本の薄さは、成長と還元の両方を縛る。
債券の評価損
有価証券は満期が来るまで、金利上昇の恩恵を受けにくい。長期金利がさらに上がれば、保有する債券の評価損が自己資本を削る。2024年の損失にも、この要因が含まれていた。金利の上昇は、貸出には追い風でも債券には向かい風になりうる。
税負担の正常化
2026年3月期は、純利益が経常利益とほぼ同じだった。過去の赤字の恩恵が薄れれば、同じ経常利益でも手取りは減る。純利益の見通しを、実際より良く見てしまう危うさがある。決算の利益を見るときは、税の効果を除いた経常利益で比べたい。
大和証券との協働が計画に届かない
2027年度に100億円の効果を目指すが、2025年度の実績は35億円だ。案件の紹介やファンドラップの販売が伸びなければ、中計の純利益330億円は届かない。協働の効果は、案件が実際に実行される数で確かめる必要がある。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の純利益が会社予想の270億円を大きく上回り、与信費用も80億円台に収まったら
- 中計の筋書きに近づいているとみて、やや楽観・楽観の確率を上げる。税の負担を除いた経常利益で判断する。
- 米国オフィス向けローンで追加の引当が数十億円以上出たら
- 処理は終わっていないとみて、やや悲観の確率を上げる。他の海外与信に広がっていないかも確かめる。
- 投資銀行の残高が急に増え、特定の業種に偏り始めたら
- 2024年の再来を警戒し、悲観側に重みを移す。ROEが上がっても、質が下がる形なら評価しない。
- 大和証券が出資比率を引き上げる、または完全子会社化の方針を示したら
- TOBの価格が焦点になる。今の純資産に近い値段なら、安全域は小さいと判断する。
- 配当性向が50%を超えて上がり、自社株買いも始まったら
- 資本の積み上げが予定より速いとみて、楽観側の確率を上げてよい。CET1比率の推移とあわせて確認する。
- 短期金利の上昇が2%に届く前に止まったら
- 利ざやの広がりが想定より小さくなり、利益の伸びが鈍る。中立の利益を引き下げる。
見ておくもの
- 投資銀行ユニットのビジネス利益とROE(中計では2027年度に360億円・14%)
- 与信費用と、米国オフィス向けローンの残高・追加引当
- 大和証券との協働効果(2026年度計画は実質業務純益65億円)
- CET1比率の推移(2028年3月末に8%以上、2030年3月末に9%以上)
- 配当性向と自社株買いの有無
- GMOあおぞらネット銀行の法人口座数と預金残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。銀行なので、10年後のROEと資本コスト8.5%(基本7.5%に品質+1.0%)・g3.0%から、正当化PBR=(ROE−g)÷(k−g)を目安に置いた。ROEがkを超える楽観では、超えた分を半分だけ数え、正当化PERの上限(RONICで測る)に収まることも確かめた。ROEがkを下回る筋書きはPBRが1倍を割る。悲観はROEが赤字近辺で稼ぐ力が小さいので、売れる資産の床(貸出債権・債券は簿価近く、LBO融資・不動産は大きな値引き)から置いた。利益は残高(名目)×粗利率で積み、金利上昇の恩恵は預金ベータ45〜50%で広げた。純利益は経常利益の0.72〜0.76倍に置き、2026年3月期の0.945倍(税の負担が軽かった年)を先へ伸ばさなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PBR 1.09→1.067 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。資本コストは基本7.5%に quality +1.0% を足した 8.5%(β・規模は使わない)。LBO融資・不動産ファイナンスへの与信集中で信用の波を受け循環+0.25、貸出金利は市場で決まり値決め力+0.25、銀行の借金は仕入れで0、2024年3月期に約500億円の赤字を出した履歴と薄い自己資本比率で長く続くかの確かさが大手より低く寿命+0.5。合計+1.0%。