結論
ひろぎんホールディングスは、広島銀行を中核に、広島・岡山・山口・愛媛の瀬戸内沿いで稼ぐ地方銀行グループだ。広島県内では預金の4割弱、貸出の3割台半ばを握る。
結論は「適正」で、安全域は厚くない。会社は2028年度に純利益700億円、ROE 11%を掲げる。計画はこの2年で3度引き上げられた。目標どおりに進めば割安だが、与信費用が普通の水準へ戻るだけで、その差は縮む。
利益の源は貸出の利ざやだ。短期金利が2%へ上がると、貸出の金利が先に動き、預金の金利は遅れてついてくる。この追い風が中立の筋書きの軸になる。広島は人口が減る中でも産業の厚い地域で、船舶向け融資という他の地銀にまねしにくい武器もある。
弱みは資本の薄さだ。総資産に対する自己資本は4.7%しかない。国債や政策保有株の値動きが、そのまま資本を揺らす。リーマン級の不況が来れば、時価総額は3分の1まで沈むと見る。
10年後の中立は純利益900億円前後・ROE 10%強とした。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額(約6,707億円)に対し10年で+4.1%、「適正」と見る(資本コスト8%、10年の筋書きだけで測る)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「堀のある地域独占に近い銀行」だが、「安全域の厚い銀行」ではない。
まず事業の質を見る。県内の預金の4割弱と貸出の3割台半ばを握る銀行は、10年後も残る。預金という安い資金が集まり、地元企業の相談が先に来る。この点は評価が高い。
次に、稼ぐ力の中身を見る。足元の利益の伸びは、経営の腕よりも金利の追い風によるところが大きい。だから、金利が定常化した後の利益こそが本質価値だ。10年後の中立で純利益900億円前後、ROE 10%強と置いた。この水準は資本コストを上回るが、大きく上回るわけではない。
銀行は借り入れで商売をする。総資産に対する自己資本が4.7%という薄さは、不況期に小さな評価損で資本が大きく削れることを意味する。安全域が要るのは、この点だ。
経営者は資本をどう使うか。配当性向40%に自社株買いを足し、総還元性向50%超を保つ。政策保有株も減らす。方向は正しい。ただ、配当と自社株買いだけで資本効率が決まるわけではなく、利ざやと手数料の稼ぎが先に立つ。最後の安全域の判断では、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し+4.1%で、値段に見合う程度で、安全域は薄いと見る。割安と言い切るには、悲観の筋書きでの下振れが大きい。持つなら、与信費用が上がる局面を耐えられる値段で持ちたい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は広島銀行の貸出と預金だ。連結の貸出金は約8.2兆円、預金は約9.6兆円。広島県内では預金の4割弱、貸出の3割台半ばを占めるリーディングバンクである。中期計画2024(2024〜28年度)では、広島を中心に岡山・山口・愛媛の4県を主戦場に置く。
収益は4本に分けて見るとわかりやすい。1本目は法人貸出だ。相手は地元の中堅・中小企業と、自動車・造船・海運といった瀬戸内の産業である。2本目は個人向けで、住宅ローンが中心になる。3本目は有価証券の運用だ。計画は残高2兆円、調達費用を引いた利回り1.1%以上を目標にしている。金利が上がるほど、運用の稼ぎは厚くなる。4本目は手数料の収益で、投信・保険の販売と、M&A・事業承継・不動産証券化などの法人ソリューションからなる。法人ソリューションは最終年度に110億円を目指す。
特色は船舶関連ファイナンスだ。計画は残高1.1兆円、関連収益160億円を掲げる。瀬戸内は造船・海運の集積地で、地の利を生かして長年積み上げてきた。他の地銀が簡単にまねできる分野ではない。
もう1つの方針は、貸出の中身の入れ替えだ。利ざやの薄い政府・自治体向けの貸出を圧縮し、事業性貸出へ資金を移す。量を追うより、貸出あたりの稼ぎを上げる戦略である。
2026年3月期の純利益は437億円、ROEは7.7%だった。5年前は純利益が200億円台、ROEは4%台。利ざやの回復が、数字をここまで押し上げた。
優良さと弱いところ
最大の強みは、県内の預貸シェアという「堀」、つまり他行が簡単に崩せない基盤だ。預金の4割弱を握る銀行は、安い資金を集める力がある。貸出の3割台半ばを持つ銀行は、地元企業の相談がまず持ち込まれる。信用格付け会社も、県のリーディングバンクとして高く評価している。この基盤は10年先も残ると見る。
資本効率は改善途上である。ROEは4%台から7.7%へ上がり、会社の目標は11%だ。ただ、資本コストを大きく上回る水準ではない。利ざや拡大の恩恵は、他の地銀にも同じように及ぶ。広島の強みは、その上に船舶ファイナンスと法人ソリューションの手数料が乗る点だ。
弱点は3つある。1つ目は資本の薄さだ。総資産に対する自己資本は4.7%で、同業の中でも余裕は小さい。2つ目は政策保有株である。連結純資産の約17%を占め、2029年3月末に15%未満へ減らす計画だが、株価が下がれば資本を直撃する。3つ目は集中だ。船舶関連の貸出は1兆円規模で、海運市況が崩れれば痛みが大きい。
経営の姿勢は前向きだ。計画を金利上昇に合わせて3度引き上げ、配当性向40%と総還元性向50%超を掲げる。ただ、引き上げた計画の達成が、金利という外部の追い風に大きく頼っている点は割り引いて見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行の最大の変化は、金利のある世界への復帰である。10年近いマイナス金利と超低金利の時代が終わり、貸出の利ざやが広がる局面に入った。短期金利が2%へ向かう間は、貸出の金利がすぐ動き、預金の金利は遅れて動く。この時間差が利益を押し上げる。全国の銀行の貸出残高は2026年に前年比5%近い伸びで、需要も強い。
ただし、地方の貸出需要は人口減で細る。広島は都市部と産業に恵まれ、全国の地方よりはまだ強い。それでも、実質で貸出が大きく伸びる地域ではない。伸ばせるのは、利ざやと手数料である。
広島の競合は3つある。1つ目は山口フィナンシャルグループ傘下のもみじ銀行で、広島県内に店舗網を持つ。2つ目は隣県の中国銀行など、県境を越えて攻めてくる地銀だ。3つ目は信用金庫と、メガバンクの広島支店である。優良な大企業の貸出では、メガバンクとの競争が利ざやを削る。
業界全体では、「1県1行」への再編が進んでいる。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行が統合に向かった。広島県内では、大きな統合の報道は確認できなかった。ひろぎんHDは中期計画で、他社との資本・業務の提携を必要に応じて検討するとしている。再編に乗るか、単独で強みを磨くか。10年のうちに、その選択が利益の差になる。
景気の循環では、今は与信費用がまだ低い局面にいる。金利が上がると、借り手の負担も増える。中堅・中小企業の倒産が増える局面で、与信費用は急に跳ねる。業界の筋書きでは、10年後は平均的な水準に戻ると置く。
資本政策と M&A
還元の方針は明快だ。配当性向は約40%を基本とし、総還元性向は2026年度に5期連続で50%超を計画する。2026年度は増配を計画し、自己株取得は70億円である。2024年度・2025年度の自己株取得は50億円だった。総還元性向の中身は、配当が約4割、自己株取得が1割強という構成だ。
政策保有株は、連結純資産の約17%(2026年3月末の計画)で、2029年3月末に15%未満へ下げる。売却益が出る一方、売却代金は貸出や有価証券へ回る。資本の質が上がる点は評価できる。
M&Aは、この会社の主役ではない。中期計画は他社との資本・業務の提携を「必要に応じて検討」と書くにとどまる。船舶ファイナンスや法人ソリューションは、自前の育成で伸ばす考えだ。再編の主役になる可能性は低く、むしろ他の地銀や金融グループから提携の話が来る側ではないか。
資本政策の焦点は、自己資本の厚みだ。目標とする自己資本比率は11%程度から10%程度へ見直された。余った資本を自社株買いと成長に回せるかが、ROEの上振れを決める。
還元の点検(P3 2026-10-19):配当性向約40%、総還元性向50%超(5期連続)。中立の約52%と整合。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の追い風はまだ半分も出ていない。短期金利が2%まで上がる間に、貸出の金利は変動の部分が先に上がり、預金の金利は遅れてついてくる。2026年3月期の貸出金利息は前の年から約140億円増えた。有価証券の利息配当金も約100億円増えた。この勢いが2〜3年続けば、純利益は計画の700億円を超える。
会社は計画を2年で3度引き上げた。当初の純利益450億円が570億円になり、いまは700億円だ。引き上げのたびに、実績が追いついてきた。経営は金利の追い風を過小に見積もる傾向がある。
広島銀行には、他行がまねしにくい武器が2つある。1つは船舶関連ファイナンスで、残高は1兆円規模、関連収益は160億円を目指す。もう1つは、広島県内の預金の4割弱を握る調達力だ。安い資金を厚く持つ銀行ほど、預金金利が上がる局面でも利ざやを保てる。
有価証券も追い風だ。2兆円の運用で調達費用を引いた利回りが1.1%を超えると、1%台前半の貸出の利ざやに近づく。国債の利回りが3%に向かう間に、満期の来た低利の債券が高利に入れ替わる。
資本の使い方も変わった。総還元性向は5期続けて50%超。政策保有株も減らす。ROEが11%に届けば、PBRは1倍を大きく超える。10年後には、再編に乗らなくても、単独で強い銀行として評価される。
慎重な見方
今の利益は、金利が急に上がった局面の「いいとこ取り」にすぎない。貸出の金利が先に上がって預金の金利が遅れる時間差は、いずれ解消する。預金者はより高い金利を求め、他行との預金競争が始まる。そのとき利ざやの拡大は止まる。
与信費用はまだ歴史的な低水準にある。金利が上がれば、借り手の返済の負担も増える。中堅・中小企業の倒産が増えれば、貸倒れの費用は何倍にも跳ねる。特に船舶関連は残高1兆円規模で、海運市況が崩れると一度に傷む。
資本は薄い。総資産に対する自己資本は4.7%、政策保有株は連結純資産の約17%を占める。国債の利回りが上がれば、保有債券の含み損が資本を削る。リーマン級の不況では、債券と株式の評価損が重なる。
計画は「3度の引き上げ」と言うが、数字は金利という外部の条件に乗っているだけだ。2026年2月の機関投資家向けの説明では、最終年度の見通しは9.5〜10%だった。それが3か月後に11%になった。見通しの振れ幅が大きすぎる。
人口は減る。広島は地方の中では強いが、貸出残高は実質では伸びない。県外・海外の拡大は、利ざやの厚い分だけ競争も厳しい。再編に乗り遅れれば、システムなどの固定費を分け合う相手もいない。
今の値段は、ROE 10%超の姿を先に払っている。目標に届いても大きな上振れはなく、届かなければ下振れは深い。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は数字の裏づけが厚い。利ざやの回復は実績に出ており、広島の基盤も確かだ。一方、慎重な見方が突く資本の薄さと、与信費用の反転は、実際に起きうる。
確率は、やや楽観までを合わせて4割弱、やや悲観と悲観を合わせて3割強とした。中立が3割で最も厚い。資本の薄さを反映している。利益ベースの正当化PER(k 8%。新しく投じるお金の稼ぎだけを薄める)で中立・楽観を置き、悲観は稼ぐ力から出すと、10年の本質価値は今の時価総額に対し+4.1%の「適正」になった。ただし、上振れの幅は悲観の下振れの深さと見合う程度で、大きな安全域は無い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,899 円1.15 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,072 円3,170 億円)。 今の値に割り戻すと 2,536 円7,495 億円、今との差 +18.7%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 6,609 円1.95 兆円 | 1,516 円4,480 億円 | +280.4% | +14.3% | 894 円2,642 億円 |
| やや楽観 | 24% | 5,788 円1.71 兆円 | 1,397 円4,129 億円 | +236.4% | +12.9% | 1,724 円5,097 億円 |
| 中立 | 30% | 4,382 円1.30 兆円 | 1,184 円3,501 億円 | +160.7% | +10.1% | 1,670 円4,936 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,846 円5,456 億円 | 783 円2,315 億円 | +23.1% | +2.1% | 578 円1,710 億円 |
| 悲観 | 13% | 477 円1,410 億円 | 328 円971 億円 | −62.3% | −9.3% | 105 円310 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,899 円1.15 兆円 | 1,072 円3,170 億円 | +132.8% | +8.8% | 4,971 円1.47 兆円 |
今の株価時価総額 2,136 円6,312 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 11% 金利と手数料の両輪で ROE 13%台の銀行になる 利益 1,249 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 6,609 円1.95 兆円
10年のあいだ短期2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは構造的に高い水準で落ち着く。2兆円の有価証券は高利の債券に入れ替わり、運用の稼ぎが大きく厚くなる。船舶ファイナンスと法人ソリューションは、他の地銀がまねできない専門の領域として育ち、手数料の収益は今の1.5倍を超える。与信費用は景気の循環を経ても平均的な水準に収まる。政策保有株は計画どおり15%未満へ下がり、総還元性向50%超の還元を続けても自己資本は厚みを増す。ROEは13%台に乗り、再編に頼らず単独で強い銀行として評価される。株式市場は、利ざやの回復が一時のものでなく、手数料と運用に裏づけられた稼ぐ力だと認める。10年後の時価総額は今の3倍近くに達し、その間の配当と自社株買いも大きく積み上がる。
- 法人貸出:数量 8.0(事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,231 億円・営業利益 962 億円。残高 7.99 兆円(名目)× 率 1.54%、利益率 78%
- 個人・公共向け貸出:数量 3.8(個人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 495 億円・営業利益 315 億円。残高 3.81 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 64%
- 有価証券運用:数量 2.4(有価証券残高(兆円))× 価格 1.6%(運用利回り(調達費用控除後・%))→ 売上 395 億円・営業利益 346 億円。残高 2.44 兆円(名目)× 率 1.62%、利益率 88%
- 手数料・ソリューション:数量 7.8(預かり資産+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 636 億円・営業利益 391 億円。残高 7.75 兆円(名目)× 率 0.82%、利益率 62%
倍率:事業の純利益 1,249 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.64 倍、時価総額 19,534 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の定常化、船舶ファイナンスと法人ソリューションの育成、他社との提携の三つが10年噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 24% 計画の線を保ち、ROE 12% 台で定着する 利益 1,130 億円 · PER 15.1 倍 · 株価時価総額 5,788 円1.71 兆円
短期2%・長期3%への定常化が進み、貸出の利ざやは高めの水準で安定する。有価証券の入れ替えが終わり、運用利回りは貸出の利ざやに近づく。船舶ファイナンスと法人ソリューションが貸出の成熟を補い、手数料の収益は今の1.5倍近くまで育つ。人口減は貸出の伸びを抑えるが、広島の都市と産業が下支えする。与信費用は平均的な水準だ。ROEは12%台で、配当と自社株買いを合わせた総還元性向は5割を保つ。広島の基盤は10年たっても強く、PBRは1倍を大きく超えたまま推移する。再編の主役にはならないが、単独で戦える強さがあると市場に認められる。県内の貸出シェアは守られ、他の銀行との差はむしろ広がる。
- 法人貸出:数量 7.7(事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,150 億円・営業利益 878 億円。残高 7.67 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 76%
- 個人・公共向け貸出:数量 3.7(個人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 462 億円・営業利益 279 億円。残高 3.70 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 60%
- 有価証券運用:数量 2.4(有価証券残高(兆円))× 価格 1.6%(運用利回り(調達費用控除後・%))→ 売上 372 億円・営業利益 322 億円。残高 2.40 兆円(名目)× 率 1.55%、利益率 87%
- 手数料・ソリューション:数量 7.8(預かり資産+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 604 億円・営業利益 356 億円。残高 7.75 兆円(名目)× 率 0.78%、利益率 59%
倍率:事業の純利益 1,130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.1 倍。全体の PER 15.14 倍、時価総額 17,108 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画の方向が10年おおむね保たれ、手数料の育成が貸出の成熟を補う、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 金利は定常化し、広島のシェアが利益を支え続ける 利益 920 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 4,382 円1.30 兆円
10年のうちに短期2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは今より高い水準で落ち着く。ただし預金の金利も追随するため、広がり方は3年後から先は鈍い。広島県内の貸出は、人口減の中でも名目では年3%前後で伸びる。船舶関連と法人ソリューションは緩やかに育つ。与信費用は景気循環を1〜2周して平均に戻る。純利益は900億円前後、ROEは10%強に収まる。県内の預貸シェアは守られ、再編には乗らなくても単独で戦える。PBRは1.9倍に届かず、1倍台後半である。再編の波は周囲で続くが、広島は強い地盤を保つ。経費は物価並みに増えるが、デジタル化で人手は抑えられる。ROEは資本コストを2〜3%上回る水準で落ち着く。
- 法人貸出:数量 7.3(事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,028 億円・営業利益 747 億円。残高 7.34 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 73%
- 個人・公共向け貸出:数量 3.5(個人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 416 億円・営業利益 228 億円。残高 3.53 兆円(名目)× 率 1.18%、利益率 55%
- 有価証券運用:数量 2.3(有価証券残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利回り(調達費用控除後・%))→ 売上 334 億円・営業利益 284 億円。残高 2.30 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 85%
- 手数料・ソリューション:数量 7.3(預かり資産+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 522 億円・営業利益 266 億円。残高 7.25 兆円(名目)× 率 0.72%、利益率 51%
倍率:事業の純利益 920 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.08 倍、時価総額 12,954 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気循環を1〜2周して平均に戻る、最も重みを置く想定。
やや悲観 22% 預金競争と人口減で稼ぐ力が資本コストを割る 利益 485 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 1,846 円5,456 億円
金利は定常化するが、預金者はより高い金利を求め、他行との預金競争で預金の金利が貸出の金利に追いつく。利ざやの拡大は3年後の水準で止まり、その後は縮む。広島県内の貸出は人口減で実質で細り、名目でも伸びが鈍る。再編に乗らなかったため、システムなどの固定費は単独で負担し続ける。経費は物価並みに増え、利益率が下がる。与信費用も平均を上回る年が増える。純利益は500億円前後、ROEは6%台と資本コストを割る。評価は低迷し、PBRは0.7倍を下回る。計画で掲げた法人ソリューションの育成は途中で息切れし、手数料の収益は物価並みの伸びにとどまる。株主への還元は、資本を守るため配当性向40%の線までに絞られる。
- 法人貸出:数量 6.8(事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 810 億円・営業利益 516 億円。残高 6.75 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 64%
- 個人・公共向け貸出:数量 3.2(個人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 322 億円・営業利益 125 億円。残高 3.22 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 39%
- 有価証券運用:数量 2.2(有価証券残高(兆円))× 価格 1.3%(運用利回り(調達費用控除後・%))→ 売上 275 億円・営業利益 226 億円。残高 2.20 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 82%
- 手数料・ソリューション:数量 6.3(預かり資産+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 388 億円・営業利益 126 億円。残高 6.25 兆円(名目)× 率 0.62%、利益率 33%
倍率:10年後のROE6.1%(純利益485億円÷自己資本8,001億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「預金競争と人口減で稼ぐ力が資本コストを割る」。上限の9割に置き、11.25倍。今の自己資本5,686億円に対する倍率は0.96倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:預金金利の追随が進み、利ざやの拡大が3年後の水準で止まる。県内の貸出も細り、ROEが資本コストの手前で低迷する。
悲観 13% 構造的に負け、普通の地銀に戻る 利益 141 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 477 円1,410 億円
構造的に負ける筋書きだ。広島の人口減が加速して貸出需要が縮み、船舶など集中分野で大きな損失を出す。再編からも取り残され、システム投資の固定費を単独で抱える。預金は金利の高い他行へ流れ、調達コストが上がる。与信費用が重くなり、純利益は100億円前後まで落ちる。ROEは1〜2%で、資本コストを大きく下回る。優良な地銀ではなくなり、配当も縮む。それでも県内の預貸シェアは残るため、自己資本の6割を切る水準(PBR 0.4倍)が床になる。競合は広域の再編でシステム費用を薄め、広島の企業と個人の取引を奪う。経営は資本を守るために貸出を絞り、地域の取引が細る悪循環に入る。
- 法人貸出:数量 5.7(事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 539 億円・営業利益 240 億円。残高 5.67 兆円(名目)× 率 0.95%、利益率 45%
- 個人・公共向け貸出:数量 2.7(個人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 225 億円・営業利益 25 億円。残高 2.74 兆円(名目)× 率 0.82%、利益率 11%
- 有価証券運用:数量 2.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.1%(運用利回り(調達費用控除後・%))→ 売上 210 億円・営業利益 160 億円。残高 2.00 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 76%
- 手数料・ソリューション:数量 5.0(預かり資産+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.5%(実効手数料率(%))→ 売上 275 億円・営業利益 14 億円。残高 5.00 兆円(名目)× 率 0.55%、利益率 5%
倍率:10年後のROE2.2%(純利益141億円÷自己資本6,372億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、普通の地銀に戻る」。上限の8割に置き、10.00倍。今の自己資本5,686億円に対する倍率は0.25倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:再編に乗れず、船舶など集中分野での大きな損失や人口減の加速で、もう優良な地銀ではなくなっている構造的な負けの筋書き。資本の薄さを考えて厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
広島銀行を中心とする中堅・中小企業・大企業向けの事業性貸出。船舶関連ファイナンス(計画の残高 1.1 兆円)を含む。
| 数量事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.4 | 1.0% | 513 | 300 |
| 10 年後 中立 | 7.3 | 1.4% | 1,028 | 747 |
取り方:連結貸出金 8.19 兆円(2026/03)のうち事業性(船舶関連 約 1.1 兆円を含む)を 5.4 兆円と推定し、残りを個人・公共 2.8 兆円とした(開示の内訳ではなく推定)。貸出金利息 1,050 億円(前年 908 億円)から預金コストと経費を引いた手取りの利ざやを 0.95% とした。利ざやは率なので物価では上がらない。残高はお金の量なので名目で伸びる(物価 3% + 実質の増減)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約55%だけ追うので、中立の率は10年で0.95%→1.40%(+0.45ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。
個人・公共向け貸出
住宅ローンなど個人向け貸出と、政府・自治体向け貸出(計画で圧縮する方針)。
| 数量個人・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 0.9% | 238 | 95 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 1.2% | 416 | 228 |
取り方:個人・公共向け 2.8 兆円(推定)、利ざや 0.85%。住宅ローンは固定が多く金利の上がり方が遅いこと、政府向けは薄利で圧縮方針であることから事業性より低く置いた。残高は名目、広島県の人口減を込みで中立は実質ほぼ横ばい。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約67%だけ追うので、中立の率は10年で0.85%→1.18%(+0.33ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。
有価証券運用
国債・外債・株式などの運用。計画は残高 2 兆円、調達費用を引いた利回り 1.1% 以上を目標にする。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り(調達費用控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1.1% | 220 | 175 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 1.5% | 334 | 284 |
取り方:有価証券 2 兆円(計画の目標水準)、調達費用控除後の利回りを 1.1% とした(計画は 1.1% 以上)。有価証券利息配当金は 390 億円(前年 287 億円)。国債 3% への入れ替えで利回りが上がる。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ換算で約65%だけ追うので、中立の率は10年で1.10%→1.45%(+0.35ポイント)。
手数料・ソリューション
投信・保険の販売、M&A・事業承継・不動産証券化などの法人ソリューション、決済・為替。
| 数量預かり資産+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 0.7% | 330 | 150 |
| 10 年後 中立 | 7.3 | 0.7% | 522 | 266 |
取り方:預かり資産残高とソリューション取扱高を合わせて 5.0 兆円、実効手数料率 0.66% と推定(開示の内訳ではなく、手数料収益 330 億円に合うように置いた)。法人ソリューションは計画の最終年度に 110 億円。預かり資産は名目で伸びる。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
与信費用の反転
金利が上がると、借り手の返済の負担が増える。今の与信費用は歴史的に低い水準だ。中堅・中小企業の倒産が増えれば、貸倒れの費用は何倍にも跳ねる。足元の利益の伸びは、この低い費用に支えられている面がある。費用が平時の水準に戻るだけでも、利益は数十億円単位で減る。
船舶関連ファイナンスの集中
計画は残高1.1兆円、関連収益160億円を掲げる。他の地銀にない強みだが、貸出全体の1割を超える規模だ。海運市況が崩れ、船価や運賃が下がると、一度に不良債権が出るおそれがある。担保の船の価値が下がる局面では、回収も難しくなる。
資本の薄さと有価証券の評価損
総資産に対する自己資本は4.7%で、規制上の比率の目標も11%程度から10%程度へ引き下げた。国債の利回りが上がれば保有債券に含み損が出る。リーマン級の不況では政策保有株も下がり、資本が一気に削られる。資本が削られると貸出も絞られ、悪循環に入る。
預金競争の激化
貸出の金利が先に上がり、預金の金利が遅れる時間差は、永久には続かない。預金者が高い金利を求めれば、利ざやの拡大は止まる。県内の預金の4割弱を握る強みは、資金調達の安定には効くが、金利競争の免除にはならない。
人口減と貸出需要
広島は地方の中では強いが、人口は減る。実質の貸出需要は伸びにくく、残高の伸びは物価と利ざやに頼ることになる。人口減が加速すれば、10年の筋書きは大きく下がる。県外や海外へ貸出を広げる動きもあるが、土地勘のない地域では与信の判断も難しくなる。
計画の引き上げ頻度
計画は2年で3度引き上げられた。純利益450億円が570億円、700億円となった。金利の追い風に乗せた数字で、引き上げが続く間は評価も上がるが、止まると失望が出る。2026年2月の見通し(ROE 9.5〜10%)と5月の見通し(11%)の差も大きい。
再編に乗り遅れる可能性
全国で再編が進み、規模の経済が効く銀行が増えている。広島県内で大きな統合は確認できないが、取り残されると、システム投資の固定費を単独で抱える。新しい金融勢力の参入も続く。決済やローンでネットの金融勢力に顧客を奪われれば、店舗網の価値も下がる。
今後の分かれ目
- 短期金利が計画より速く2%へ届き、有価証券の入れ替えも進んだら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出金利息と有価証券の利息配当金の伸びを四半期ごとに確かめる。
- 中堅・中小企業の倒産が増え、与信費用が純利益の2割を超えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。船舶関連と不動産関連の貸出の延滞を重点的に確認する。
- 預金の金利が政策金利の7割近くまで追随したら
- 利ざやの拡大は中立の想定より早く止まる。やや悲観の確率を上げる。
- 国債の利回りの急上昇で、有価証券の含み損が自己資本の1割を超えたら
- 自己資本比率の目標を守るため、自社株買いが絞られる。還元の想定を下げる。
- 県内での再編の動きや、他の地銀・金融グループとの資本提携が出たら
- 費用の削減が見込めるので、中立の経費の想定を見直す。ただし提携の条件次第で、買う側か買われる側かで評価は分かれる。
- 政策保有株の削減が前倒しで進み、売却益が出たら
- 一時的な利益の押し上げと、資本の質の向上が同時に起きる。自社株買いの上積みがあれば、ROEは上振れる。
見ておくもの
- 貸出金利息・有価証券利息配当金の伸び(四半期ごとの決算)
- 与信費用の純利益に対する比率
- 預金金利の追随率(政策金利に対する比率)
- 船舶関連貸出の残高と延滞の状況
- 政策保有株の連結純資産に対する比率(2029年3月末に15%未満)
- 総還元性向と自己株取得の発表
- 連結自己資本比率(目標10%程度)の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality +0.5%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=12.5倍)。やや悲観・悲観はROEがk(8%)以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その9・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは12.0倍から10.5倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.85→15.64 倍・やや楽観 PER 13.62→15.14 倍・中立 PER 11.97→14.08 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β 0.79 × 5% + 規模 0.50%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(自己資本の薄さと有価証券の含み損)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。