結論
宮崎太陽銀行は、宮崎市を本拠に宮崎県内で営業する第二地方銀行だ。貸出は 5,600 億円、預金は 7,700 億円で、2026 年 3 月期の純利益は 15 億円。筆者は、10 年の本源価値は今の時価総額を下回ると見る。
理由は二つある。一つは、直近の増益の質だ。経常利益 26 億円は、貸出利息の増加に加えて株式等の売却益が押し上げた。売却益は繰り返せないので、10 年の利益には織り込まない。もう一つは、10 年後も ROE が 3% 前後と、資本コスト 8.5% に届かないことだ。
優先株も重しになる。2022 年に地元企業が引き受けた 60 億円の優先株は、2032 年に普通株へ一斉に替わる仕組みで、会社の価値が 130 億円を割ると、既存の普通株の持ち分は 3 割まで薄まる。
筆者なら、優先株の整理の方針と、売却益を除いた本業の利益の水準が見えるまで待つ。宮崎銀行との競争も見ておきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地域に根ざした堅実な銀行だが、安全域は薄い。
時価総額は 124 億円で、自己資本 460 億円の 0.27 倍と安く見える。しかし、優先株 60 億円を引くと普通株の純資産は 400 億円。純利益 15 億円は、株式の売却益に押し上げられた面がある。
事業の儲け口は広がらない。宮崎県の人口は 25.5% 減り、ROE は 10 年後も 3% 台と資本コストの半分に届かない。ためた利益は、額面より低い価値でしか見られない。
筆者なら、売却益を除いた本業の利益が 15 億円を超えて安定し、優先株を現金で整理する計画が示されるまで待つ。逆に、宮崎銀行との統合のような再編が起きるなら、比率を見たい。今の値段の安さは、安全域というより、収益の薄さを映したものだ。地域の銀行が長く続くかどうかは、経営者が資本を守れるかにかかる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、宮崎県内の貸出と、預金で集めたお金の運用だ。
連結の貸出は 5,609 億円で、前の期より 67 億円増えた。単体の消費者ローンは 1,550 億円で、貸出の約 27%。預金は 7,747 億円で 126 億円増えた。余った資金は有価証券 1,699 億円で運用する。
2026 年 3 月期は、経常収益が 180 億円で 21% 増え、経常利益は 25.9 億円、純利益は 14.8 億円だった。貸出金利息の増加と株式等売却益の増加が利益を押し上げ、預金利息と貸倒引当金繰入額の増加が重しになった。2027 年 3 月期は経常利益 26 億円、純利益 15 億円と、ほぼ横ばいを見込む。
中期経営計画は 2024 年度から 2026 年度の 3 年で、財務の数値目標は開示されておらず、「目標とする経営指標は概ね順調」とだけ書かれている。人材面では、スキルアップ講座の受講者や男性育児休業の取得率の目標を置く。次の計画は 2027 年度から始まる。銀行業のほか、リースなど周辺の事業も営むが、利益の大半は銀行業から出る。
優良さと弱いところ
良さは地元の取引先との関係にあり、弱さは利益の質と首位との差にある。
良い点は、貸出と預金がともに伸び、国内基準の自己資本比率が連結 8.60% と最低基準の 4% を倍以上上回ることだ。地元の企業が優先株を引き受けるなど、地域の支持は厚い。自社株買いも続けている。
弱い点は三つある。一つ目に、直近の利益に株式等の売却益が含まれ、本業の稼ぐ力が見えにくい。二つ目に、宮崎県では宮崎銀行が首位で、過去最高益を出している。貸出の金利は競争が決める。三つ目に、宮崎県の人口は 2050 年に 25.5% 減る。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 +0.25%(宮崎銀行が首位)、借金 0%、寿命 +0.25%(人口 25.5% 減)の合計 +1.0%、k は 8.5% とした。地元の企業や住民との関係の深さは、数字に出にくい強みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、2024 年の政策金利の解除で「金利のある世界」に入った。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、貸出の利ざやは今より 0.4% ほど高い水準で安定する。債券は金利が上がると評価損が出るが、満期まで持てば元本は戻る。
宮崎県は人口が 2050 年に 25.5% 減る見通しで、貸出は名目で物価並みにしか伸びない。宮崎市・都城市・延岡市に事業が集まるが、周辺の町は細る。農業と食品加工、観光が地盤を支える。
競争の構図は、宮崎銀行が首位として厚く、宮崎太陽銀行は第二地銀として小口の取引と地域密着で補う形だ。九州では、鹿児島銀行を含む九州 FG、福岡の大手、熊本の再編などが進み、地銀の連携が広がる。宮崎太陽銀行は、2018 年に南日本銀行・豊和銀行と販路開拓の分野で業務提携したが、経営統合には進んでいない。地銀の連携は、システムや商品の共同利用から始まるのが通例だ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、配当を 2 割台に抑え、自社株買いを併用する形だ。
普通株の配当は中間と期末の半々で、年間の配当性向は 2 割前後。自社株買いの枠を決め、自己株式を持つ。優先株の配当は年約 1.05 億円で、普通株より先に払う。
優先株は 2022 年に地元企業へ 60 億円で発行した第 1 回 B 種優先株で、転換請求権はない。会社は 2029 年 4 月 1 日から現金で取得でき、取得しないまま 2032 年 4 月 1 日になると、普通株へ一斉に替わる。会社は、利益の積み上げで現金による取得を目指し、転換を避ける方針だ。
筆者は、自社株買いと優先株の取得のどちらに資金を回すかを重く見る。株数を減らすのは優先株の整理が先だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
宮崎太陽銀行は、小さいが堅実な地域密着の銀行だ。貸出は 5,609 億円で、預金は 7,747 億円と、どちらも前の期から伸びた。国内基準の自己資本比率は 8.60% あり、貸出を増やす余力が残る。短期金利が 2% に上がれば、貸出の利ざやは広がり、純利益は 15 億円から 20 億円を超える水準まで伸びる余地がある。自社株買いを続けており、株数の減りが 1 株あたりの利益を押し上げる。優先株 60 億円は地元の企業が引き受けた安定株主で、会社は 2029 年から現金での取得を目指している。時価総額は自己資本の 0.27 倍と安く、再編の観測が出れば、見直し買いも起きうる。九州の地銀が連携を広げる中、提携の選択肢もある。宮崎県は農業と観光、食品加工の裾野が広く、貸出先の底堅さは九州の中でも悪くない。売却益に頼らなくても、貸出利息だけで利益が積み上がる局面に入りつつある。経営陣は自社株買いと優先株の整理の両立を掲げており、資本の使い方は株主を意識している。
慎重な見方
直近の経常利益 26 億円には、株式等の売却益が含まれる。売却益は繰り返せず、本業の稼ぐ力は見かけより小さい。純利益は自己資本の 3% 前後と、資本コスト 8.5% の 3 分の 1 にすぎない。宮崎県では宮崎銀行が首位で、過去最高益を出して厚みを増している。宮崎県の人口は 2050 年に 25.5% 減り、貸出は名目でも伸びにくい。優先株の整理にも時間がかかる。会社の価値が 130 億円を割ると、2032 年の一斉転換で既存株主の持ち分は 3 割まで薄まる。利益が伸びなければ、現金での整理も進まない。再編が進む九州では、小さな側が不利な条件を飲むことになりやすい。評価損の再来は、自己資本を直接削る。九州の地銀は広域の再編で規模を広げており、宮崎県でも大手行が優良な取引先を取りにくる。第二地銀が価格で対抗すれば、利ざやが削られる。自己資本比率が最低基準に近づく局面では、配当と自社株買いが先に止まる。
どちらに重みを置いたか
薄い収益と優先株の重しが、利ざやの回復を上回ると見る。中立の 10 年後の会社全体の価値は 137 億円、優先株を引いた普通株の取り分は 0.56 で 77 億円ほどになる。今の時価総額 124 億円を下回る。悲観の確率は地銀の標準の 10% に置き、やや悲観を 25% と厚めにした。楽観は、優先株を現金で整理できる道に限り 8% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,915 円101 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 459 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 1,152 円61 億円、今との差 −48.2%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,099 円217 億円 | 868 円46 億円 | +123.1% | +8.4% | 397 円21 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,128 円165 億円 | 699 円37 億円 | +71.9% | +5.6% | 651 円34 億円 |
| 中立 | 40% | 2,280 円121 億円 | 530 円28 億円 | +26.2% | +2.4% | 1,124 円59 億円 |
| やや悲観 | 25% | 422 円22 億円 | 214 円11 億円 | −71.4% | −11.8% | 159 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 379 円20 億円 | 55 円3 億円 | −80.5% | −15.1% | 43 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,915 円101 億円 | 459 円24 億円 | +6.7% | +0.6% | 2,374 円125 億円 |
今の株価時価総額 2,226 円118 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:宮崎県で貸出を伸ばし、優先株を現金で買い戻して純利益が 25 億円へ 利益 25 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,099 円217 億円
中小企業向けの貸出が年 3% 台後半で伸び、短期金利 2% の定着で利ざやが広がる。株式等の売却益に頼らない本業の利益が育ち、預り資産の手数料も新 NISA で積み上がる。経費は物価と賃金で増えるが、地銀3行の販路開拓の提携で営業の費用は抑えられる。与信費用は平常の水準に収まる。純利益は 25 億円。優先株は 2029 年 4 月以降に現金で買い戻され、転換による希薄化は起きない。配当は性向を引き上げ、自社株買いも続ける。宮崎県の人口は減るが、宮崎市周辺の需要は底堅い。地元の企業との取引は深く、貸出先の信用は安定している。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.6(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 85 億円・営業利益 22 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 293 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:宮崎銀行が首位を固める県内で、第二地銀が貸出を伸ばし続ける道は例外に近い。8% に置いた。
やや楽観 17% やや楽観:貸出が着実に伸び、純利益が 21 億円まで増える 利益 21 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,128 円165 億円
貸出が名目で年 3% 台前半伸び、利ざやの広がりが経費の増加を上回る。宮崎県は人口が 2050 年に 26% 減る見通しだが、宮崎市と都城市に事業の集積があり、貸出の下支えになる。株式の売却益は減るが、貸出の利息収入がそれを補う。純利益は 21 億円で、優先株の一部が現金で買い戻される。自社株買いは続き、1 株あたりの利益が押し上げられる。預金の個人比率が高く、調達も安定している。宮崎市と都城市の事業の集積が、貸出を下支えする。貸出先の業種は分散しており、特定の大口の破綻で利益が崩れるおそれは小さい。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 77 億円・営業利益 18 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 8 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:優先株の現金での整理が進み、中計の期間を超えて緩やかに伸びる標準より良い道。17% を置いた。
中立 40% 中立:株式の売却益が剥げ、利ざやの回復と人口減が相殺する十年 利益 18 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,280 円121 億円
短期金利 2%・長期 3% が定着し、貸出の利ざやは今より 0.4% 前後広い水準で落ち着く。宮崎県の人口は 2050 年に 26% 減る見通しで、貸出は名目で年 2.5% 前後の伸びにとどまる。事業性貸出は 5,100 億円、個人向けは 1,770 億円まで増える。株式の売却益は一過性なので、10 年の利益には織り込まない。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。経費は物価と賃金で増える。純利益は 18 億円。優先株 60 億円は 2032 年までに現金で整理されるか、普通株に転換される。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 71 億円・営業利益 15 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 22 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 8 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。n
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の増益は株式等の売却益が押し上げた面があり、本業の回復と相殺される標準的な筋書き。最も重く 40% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:宮崎銀行に押され、優先株の転換が現実味を帯びる 利益 12 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 422 円22 億円
県内首位の宮崎銀行が貸出の金利を下げて取りにくる。利ざやは広がらないまま預金金利だけが上がる。株式の売却益が消え、債券の評価損も膨らむ。貸出は名目で年 1.2% しか伸びない。与信費用は人口減の地域で高止まりする。純利益は 11.5 億円で、会社全体の価値は 77 億円ほどにとどまる。優先株は 2032 年に下限に近い価格で普通株に転換され、既存株主の取り分は 0.29 まで下がる。預金を集める金利競争が続き、利益の改善は限られる。貸出の質は保たれるが、利益率が薄く、自己資本の積み上がりは遅い。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 55 億円・営業利益 10 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 15 億円・営業利益 5 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。n
倍率:事業の ROE は 2.1%(純利益 11.5 億円 ÷ 自己資本 552 億円)。k 8.50%、g 3%、残る割合 1/2 で式の PER は 7.9 倍(ROE が k 以下なので上限は 1÷k = 11.8 倍)。式の 85% の 6.7 倍に置いた。
確率:首位の宮崎銀行が過去最高益を出す中で、第二地銀の利益は伸びにくい。25% を置いた。
悲観 10% 悲観:人口減と信用コストの急増で、優先株が普通株の 7 割を奪う 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 379 円20 億円
構造的に負ける筋書き。県内の人口減が加速し、貸出が名目でも縮む。取引先の倒産で与信費用が急増し、利益はほとんど出ない。債券と株式の評価損が自己資本を削り、国内基準の 4% の最低基準が近づく。優先株は現金で整理できず、2032 年に下限の価格で普通株に転換される。既存の普通株主に残る割合は 0.295。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になる。自己資本は 360 億円まで減る。貸出の縮小と利ざやの低下が重なり、純利益は 1 億円にも届かない。地元の取引先の信用も傷み、悪循環に入る。預金の流出も進み、資金繰りの手当てに費用がかさむ。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 39 億円・営業利益 1 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、会社全体の今の自己資本(460 億円。優先株 60 億円を含む)に 0.15 を掛けた 69 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、単純な自己資本比率が 5.5% と薄く、悲観では利益が自己資本の 1 割にも届かず、優先株が先に請求するため。会社全体の価値に、優先株の転換後の既存株主の取り分を掛ける。
確率:宮崎県は人口減が大きく、構造的に負ける筋書きを 10% に置いた。2010 年 3 月期に赤字を出した実績がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
宮崎県内の中小企業・事業性融資と自治体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 0.01 | 43 | 13 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 0.01 | 71 | 15 |
取り方:連結の貸出は 5,609 億円(2026 年 3 月末)。単体の消費者ローン 1,550 億円を個人向けとし、残りの約 4,060 億円を事業性・公共向けとした。利ざやは 1.05% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.9 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・個人ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 0.01 | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 22 | 2 |
取り方:消費者ローン 1,550 億円(貸出の約 27%)を個人向けと置いた。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやは 0.92% と事業性より薄い。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.9 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信・株式などの運用。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 0.01 | 24 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 20 | 8 |
取り方:有価証券は 1,699 億円(2026 年 3 月末)。2026 年 3 月期は株式等の売却益が利益を押し上げたので、売却益を含めて 1.4% と置いた。10 年後は売却益が剥げた水準に戻す。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.9 億円に合わせた。
手数料・預り資産
投信・保険の販売、為替・ローン関連の手数料。
| 数量預り資産残高(兆円) | 価格手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.01 | 11 | 1 |
取り方:預り資産の残高は確かめられず、預金の約 1 割強の 900 億円と置いた。為替・ローン手数料を含めた総額を預り資産で割った率を 0.95% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.9 億円に合わせた。
リスクと懸念
優先株の一斉転換
優先株 60 億円は 2032 年 4 月に普通株へ一斉に替わる。会社の価値が 130 億円を割ると、既存株主の取り分は 3 割まで下がる。
売却益が剥げた後の利益
直近の利益に株式等の売却益が含まれる。売却益がなくなれば、純利益は 15 億円を下回りうる。
首位行との競争
宮崎銀行が過去最高益を出して厚みを増している。貸出の金利で競り負ければ、第二地銀の利ざやは広がらない。
人口減と地盤の細り
宮崎県の人口は 2050 年に 25.5% 減る。貸出は名目でも伸びにくく、物価と賃金で膨らむ経費を吸収しきれないおそれがある。
評価損と与信費用
金利の急変で債券と株式に評価損が出れば、自己資本が削られる。取引先の倒産が増えれば与信費用も急増する。
今後の分かれ目
- 優先株を現金で取得する発表が出る
- 転換による希薄化の心配が消え、中立の普通株の取り分は 0.56 から 0.7 以上へ上がる。
- 株式の売却益を除いた本業の利益が 15 億円を超える
- 利ざやの回復が裏づけられ、楽観側の重みが 8% から 15% 前後へ上がる。
- 宮崎銀行など県内の銀行との経営統合の発表がある
- 比率次第で少数株主の取り分が変わる。優先株の扱いも条件に入り、見方は大きく動く。
- 短期金利が 2% に届かず 1% 台前半で止まる
- 貸出の利ざやが広がらず、純利益は 14 億円前後にとどまる。優先株の整理は遠のく。
- 債券・株式の評価損が自己資本の 2 割を超える
- 貸出を絞って利益が落ち、悲観の確率が 10% から 20% 近くへ上がる。
見ておくもの
- 売却益を除いた本業の利益
- 優先株の取得方針
- 単純な自己資本比率と評価差額金
- 貸出金の伸びと利ざや
- 宮崎銀行など県内の再編の動き
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から会社全体の ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の PBR 0.27 倍や同業の PER は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。優先株 60 億円が普通株に先立つ点は、既存株主の取り分の係数で別に表し、倍率に混ぜていない。株式の売却益は、10 年の利益に織り込まなかった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.1→11.76 倍・やや楽観 PER 8.3→11.76 倍・中立 PER 7.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。優先株の転換による希薄化は k に足さず、既存株主の取り分の係数で表した。