結論
福井銀行は、福井県の貸出の約半分、預金の過半を握る地方銀行である。2026年5月に子会社の福邦銀行を吸収合併し、県内で並ぶ者のいない存在になった。
筆者の結論は、今の値段は10年先の価値より高い、というものだ。10年で稼ぐ力は2倍近くに育つと見るが、それでも自己資本の厚みに対する利益は資本コストをわずかに下回る。
伸びの源は2つある。1つは短期金利が2%へ上がり、貸出の利ざやが広がること。もう1つは合併で店舗とシステムを一本にし、経費を削ることだ。会社は統合の効果を2030年3月期に単年で60億円以上と見ている。
足を引っ張るのは地盤である。福井は人口が減る県で、貸出残高は大きくは伸びない。しかも県内シェアが高いため、取れるお客はもう取っている。伸びしろが乏しい分、利ざやと経費でしか稼ぎを増やせない。
規制上の自己資本比率が8%台と薄いことも、還元の余地を狭める。配当性向は40%程度へ引き上げたが、自社株買いの方針はまだ見えない。
中立の10年後はROE8%、倍率は10倍台とみる。強気の筋書きでも、資本コストを大きく超える会社にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「強い地位に弱い収益」という組み合わせだ。県内の半分を握る地位は本物で、10年後も残る。しかし、残る地位が高いROEを保証してこなかったことは、過去の数字が示している。
オーナーとして持ちたいかと問われれば、今の値段では持たない。理由は、利益の伸びがすでに値段に先取りされているからだ。10年で純利益が2倍近くになる中立の筋書きでも、ROEは資本コストにわずかに届かない。資本コストを下回る会社が貯めた利益は、額面より低い価値しか持たない。
見るべきは、合併の効果が本当に経費に出るかだ。店とシステムを一本にする仕事は、地銀にとって最も確実な利益の増やし方である。60億円の見込みが達成されるなら、中立より上の筋書きが現実に近づく。
もう1つは資本の使い方だ。自己資本が薄いうちに配当性向を40%へ上げた判断は、貸出の伸びを犠牲にしかねない。自己資本比率が9%に届くまでの道筋が示されるかどうかを、筆者は見たい。
安全域の面では、悲観の筋書きでも自己資本の1割強は稼ぐ力として残る。ただ、それは払う値段の安全域にはならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は、福井県内の企業と住民への貸出である。預金で集めたお金を貸し、その金利の差で稼ぐ。県内の貸出シェアは約5割、預金は過半で、福井県では最大の金融グループだ。
事業は4つに分けて見られる。法人貸出は県内の中小企業が中心で、繊維・眼鏡・化学・機械など福井の製造業が取引先になる。個人貸出は住宅ローンが中心で、固定金利が多く、金利上昇の波及は遅い。
3つ目は預かり資産の手数料である。投資信託・保険・証券の販売で、2023年に野村證券と提携し、県内4か所のコンサルティングプラザで資産形成の相談を受ける。野村が口座を管理し、福井銀行が勧誘と販売を担う分業だ。預り資産5,000億円の目標は約3年前倒しで達成した。
4つ目は有価証券の運用である。国債・外債・株式・投信を持ち、運用益を稼ぐ。政策保有株の売却益が利益を押し上げた年もある。
経営の大きな節目は合併だ。2021年に福邦銀行へ出資して子会社にし、2024年に完全子会社化、2026年5月2日に吸収合併した。同じ県に2つの銀行が並ぶ重複をなくし、店舗とシステムを一本にする。県内の店は本支店91、出張所6で、再編の余地は大きい。
中期経営計画Ⅱは「人財の力」を掲げ、3年で人的資本に10億円、DXに30億円を投じる。指標は2029年3月期に純利益100億円以上、ROE6%以上、コアOHR(本業の経費率)60%以下だ。
優良さと弱いところ
この銀行の最大の強みは、県内での圧倒的な地位である。貸出の約5割、預金の過半を握るため、中小企業の多くがメインバンクに選ぶ。他行は福井で同じ密度の店と顧客を再現できない。
ただし、強い地位がそのまま高い収益に結びついてこなかった。過去10年のROEの中央値は3%ほどで、資本コストを大きく下回る。理由は3つある。貸出金利が競争で薄いこと、経費率が高いこと、福邦銀行との2行体制で店とシステムが二重だったことだ。
合併はこの二重を解く手である。経費率の改善は今の弱さに直接効く。コアOHRの目標は60%以下で、実現すれば収益力は別の水準に上がる。一方、統合費用は122億円と軽くなく、効果が出るまでの数年は利益を食う。
資本の薄さも弱点だ。規制上の自己資本比率は8%前後で、地銀の中でも厚くない。貸出を増やすにも、還元を増やすにも、自己資本の余裕が小さい。政策保有株は純資産の20%未満へ縮める途上で、株価が崩れると自己資本が痛む構造が残る。
経営の質では、規律が改善している点を評価できる。配当性向を引き上げ、政策保有株を減らし、取締役会の監督機能の強化を課題に挙げている。ただ、自己資本が薄い会社が配当性向を40%まで上げると、貸出の伸びか自己資本比率のどちらかを削ることになる。この綱引きが最大の見どころだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は今、数十年ぶりの追い風の中にいる。短期金利が上がり、貸出の金利は変動型を中心にすぐ上がる。預金の金利は遅れて上がる。この差が利ざやの拡大になる。これは低金利の時代にはなかった構図だ。
一方、数量は逆風である。福井は人口が減る県で、企業の数も減る。貸出残高の名目の伸びは年2〜3%にとどまる。物価の上昇で金額は増えるが、実質では横ばいに近い。
競合は県内で3つある。北陸銀行(ほくほくFG)、福井信用金庫など県内の信金、そして石川・岐阜から入る他県の地銀である。福井銀行は貸出の半分を持つため、シェアを取り合うより、金利の取り分を守る戦いになる。預金金利の引き上げ競争が起きれば、利ざやの拡大は想定より小さくなる。
再編の波もある。地銀は「1県1行」へ向かい、千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行の統合など、他地域では経営統合が進む。福井は県内の再編が終わった側で、次の相手は県境を越える提携になる。
北陸新幹線の敦賀延伸は観光客を増やしたが、県内の資金需要を恒常的に押し上げるかは未知数だ。景気の面では、与信費用(貸倒れの費用)が歴史的な低さにある。10年のあいだに景気の悪化が1回は来ると見るのが妥当で、その時の費用が利益を削る。
資本政策と M&A
資本政策は変わり目にある。2025年5月に配当性向を30%程度へ上げ、2026年5月にはさらに40%程度へ引き上げる方針を示した。年間の配当は前期の倍近くになる計画だ。
ただし、自社株買いの数値目標は見当たらない。自己資本比率が8%台と薄く、統合費用の負担も続くため、還元を急ぐ余裕は大きくない。
政策保有株は、2027年3月末までに時価ベースで純資産の20%未満へ縮める。含み益は純資産にすでに入っており、売却益は一時の利益を生むが、実力の利益ではない。
M&Aでは、福邦銀行の吸収合併が最大のものだ。統合費用は122億円、効果は2030年3月期に60億円以上を見込む。費用は2029年3月期までに回収する計画である。
買収される可能性は、kabufuの推定で10年以内16%ほどある。県内で最大の銀行だけに、買い手は他県の大手地銀か、SBIのような新しい勢力に限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
福井は、日本の地銀の中で再編が最も進んだ県の1つになった。同じ県で2つの銀行が競い合っていた時代は終わり、貸出の約5割を握る1行が残る。値引き競争の余地が減り、貸出金利は守りやすくなる。
合併の効果は大きい。店は91か所あり、統合で重なる店を閉じれば経費が確実に減る。会社はこれを2030年3月期に単年で60億円以上と見る。純利益が100億円に届かない水準でも、60億円は利益の半分以上にあたる。
金利の追い風は始まったばかりだ。短期金利が2%へ向かう間、変動型の貸出は全部が見直され、預金の金利は遅れて追う。福井銀行は預金で県内の過半を握っているので、預金金利の競争に巻き込まれにくい。
預かり資産も育つ。野村證券との提携で目標を3年前倒しで達成し、県内の高齢の資産家に手数料を稼ぐ道筋が見えた。
これらがそろえば、純利益は10年で今の3倍に近づき、ROEは10%に届く。資本コストを超える銀行になり、倍率は12倍台まで上がる。
慎重な見方
県内シェアの高さは、同時に伸びしろのなさを意味する。取れるお客はもう取っており、貸出は人口減の福井で実質では増えない。名目の伸びは物価のおかげで、利益の質は高くない。
合併の効果は、会社の見込みどおりに出る保証がない。システムの統合は、地銀の歴史でも遅れ・費用の超過が珍しくない。統合費用は122億円と大きく、効果が出る前に景気が悪化すれば、費用だけが残る。
利ざやの拡大も過信できない。預金で県内の過半を持つ強みは、裏返せば預金者が金利に敏感になった時に払う金利が増えることを意味する。信金や他県の地銀が預金金利を引き上げれば、預金ベータ(預金金利が政策金利に追う割合)は想定の4割より上がる。
自己資本が薄い点も重い。自己資本比率は8%台で、政策保有株の評価損や債券の含み損が出ると、貸出も還元も止まる。配当性向を40%に上げた直後に自己資本が痛めば、減配か資本増強を迫られる。
過去10年のROEは3%ほどで、一度も資本コストに届いていない。10年後にそれが8%に跳ねる根拠は、合併と金利という外部の力に頼っている。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分には、合併による経費削減と利ざやの拡大という、会社の努力と環境の両方に根拠がある。中立でも純利益が2倍近くになるのは、その力を認めたからだ。
それでも慎重な見方が強いと判断した。ROEが資本コストに届かない点が、倍率の上限を決めるからだ。強気の筋書きでも倍率は12倍台にとどまる。確率は、中立を最も厚く置いたうえで、やや悲観にわずかに寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,487 円1,772 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,566 円607 億円)。 今の値に割り戻すと 5,095 円1,206 億円、今との差 −23.0%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 13,568 円3,211 億円 | 3,718 円880 億円 | +161.1% | +10.1% | 1,729 円409 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,529 円2,492 億円 | 3,042 円720 億円 | +105.0% | +7.4% | 2,986 円707 億円 |
| 中立 | 31% | 8,910 円2,109 億円 | 2,746 円650 億円 | +76.1% | +5.8% | 3,613 円855 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,879 円918 億円 | 2,028 円480 億円 | −10.8% | −1.1% | 1,359 円322 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,141 円270 億円 | 1,479 円350 億円 | −60.4% | −8.9% | 367 円87 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,487 円1,772 億円 | 2,566 円607 億円 | +51.9% | +4.3% | 10,053 円2,379 億円 |
今の株価時価総額 6,620 円1,567 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 合併の効果が満額出て、利ざやも乗る10年 利益 240 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 13,568 円3,211 億円
合併の費用は2029年3月期までに回収され、重なる店とシステムの削減が経費率を大きく下げる。コアOHRは60%を割り、福井の貸出の半分を握る強みが収益に表れる。
短期金利は2%に定着し、法人貸出の利ざやは1.5%まで広がる。預金は県内の過半を握る強みで、金利競争に巻き込まれにくい。
野村證券との提携が育ち、預かり資産と決済の手数料は10年で倍増に近づく。有価証券の運用も、再投資の利回りの上昇で安定して稼ぐ。
純利益は10年で今の3倍近くに届き、ROEは10%を超える。資本コストを超える稼ぎ手に変わり、自己資本比率も9%台に乗る。
- 法人貸出:数量 2.2(法人・事業性貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.02(預貸の利ざや(率))→ 売上 322 億円・営業利益 135 億円。残高等 2.15 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 42%
- 個人貸出:数量 1.3(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 166 億円・営業利益 50 億円。残高等 1.30 兆円(名目)× 率 1.28%、利益率 30%
- 預かり資産・手数料:数量 3.2(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 208 億円・営業利益 79 億円。残高等 3.20 兆円(名目)× 率 0.65%、利益率 38%
- 市場運用:数量 1.8(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 228 億円・営業利益 141 億円。残高等 1.75 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 62%
倍率:事業の純利益 240 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.38 倍、時価総額 3,211 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合併の経費削減が会社の見込みを上回り、利ざやの拡大と預かり資産の伸びが重なる前提。10年のあいだにすべてが良い方向にそろう必要があり、確率は高くない。
やや楽観 22% 合併の効果がほぼ計画どおり出る10年 利益 200 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 10,529 円2,492 億円
合併の効果がほぼ会社の見込みどおり出て、2030年3月期には単年で50〜60億円の経費削減が利益に乗る。統合費用は予定どおり回収される。
利ざやは10年で約0.4%広がるが、預金金利の追随で一部が削られる。法人貸出は1.45%まで上がる。
預かり資産は野村との提携で堅調に伸びるが、県内の高齢化で伸びは緩やかになる。
純利益は10年で今の2.3倍ほどになり、ROEは9%近くまで改善する。資本コストをわずかに上回る水準だ。
配当性向は40%台を保ち、自社株買いも少しずつ入る。自己資本比率は9%に届き、貸出を伸ばしながら還元もできる状態になる。ただ、人口減の県で貸出の実質の量は増えない。伸びを支えるのは利ざやと経費であり、それが計画どおり進んだ姿が、この筋書きである。
- 法人貸出:数量 2.1(法人・事業性貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 297 億円・営業利益 116 億円。残高等 2.05 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 39%
- 個人貸出:数量 1.3(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 157 億円・営業利益 42 億円。残高等 1.27 兆円(名目)× 率 1.24%、利益率 27%
- 預かり資産・手数料:数量 3.1(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 189 億円・営業利益 66 億円。残高等 3.05 兆円(名目)× 率 0.62%、利益率 35%
- 市場運用:数量 1.7(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 213 億円・営業利益 124 億円。残高等 1.70 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 58%
倍率:事業の純利益 200 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.46 倍、時価総額 2,492 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期経営計画の方向(統合効果60億円・利ざや拡大・預かり資産の育成)がおおむね実現する。計画の達成は大手地銀より不確実だが、合併という手が打たれている点を重く見る。
中立 31% 利ざやと合併の効果で稼ぎは伸びるが、人口減が頭を抑える10年 利益 175 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 8,910 円2,109 億円
福井の人口は10年で1割近く減り、貸出の残高は名目で年2〜3%しか伸びない。それでも利ざやが広がり、純利益は今の2倍ほどになる。
合併の効果は、会社の見込みの7割ほどが出る。システムの統合が遅れ、店の統廃合も地元の反発で進みが鈍る。効果が経費に出きるのは2031年ごろだ。
預かり資産は着実に伸び、手数料は10年で5割増える。有価証券は、再投資の利回りが上がるが預金の利払いも増え、利益の伸びは小さい。
ROEは8%ほど。配当性向は40%台にとどまり、自社株買いは小規模にとどまる。資本コストにあと一歩届かない姿だ。
- 法人貸出:数量 2.0(法人・事業性貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 280 億円・営業利益 101 億円。残高等 2.00 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 36%
- 個人貸出:数量 1.2(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 149 億円・営業利益 37 億円。残高等 1.24 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 25%
- 預かり資産・手数料:数量 3.0(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 177 億円・営業利益 57 億円。残高等 2.95 兆円(名目)× 率 0.60%、利益率 32%
- 市場運用:数量 1.7(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 198 億円・営業利益 109 億円。残高等 1.65 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 55%
倍率:事業の純利益 175 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 2,109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%の定着で利ざやは広がり、合併で経費も減る。一方、福井の人口減とシェアの天井が伸びを抑える。最も重みを置く中心の姿。
やや悲観 23% 預金競争と景気の悪化で、稼ぎが伸び悩む10年 利益 102 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,879 円918 億円
信金や他県の地銀が預金の金利を引き上げ、預金ベータは4割から6割に上がる。貸出の利ざやの広がりは想定の半分にとどまる。
景気は10年のうちに1度悪化する。県内の製造業の需要が落ち、与信費用が増え、純利益は数年にわたって削られる。
合併の効果は計画の半分程度で、統合費用も予定を超える。人口の減少で貸出の実質の量は縮み、店舗網の維持費が重くなる。
純利益は今と同じ水準にとどまり、ROEは5%ほどで資本コストを大きく下回る。自己資本比率は9%に届かず、還元も限られる。
福井銀行は地元で最大の銀行であり続けるが、最大であることが収益を保証しない姿だ。株主から見れば、10年待っても資本コストを稼げず、保有の理由が薄い状態が続く。
- 法人貸出:数量 1.9(法人・事業性貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 231 億円・営業利益 69 億円。残高等 1.85 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 30%
- 個人貸出:数量 1.2(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 121 億円・営業利益 24 億円。残高等 1.15 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 20%
- 預かり資産・手数料:数量 2.5(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 137 億円・営業利益 36 億円。残高等 2.50 兆円(名目)× 率 0.55%、利益率 26%
- 市場運用:数量 1.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 158 億円・営業利益 76 億円。残高等 1.50 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 48%
倍率:10年後のROEは約5.1%(純利益102億円÷自己資本1,989億円)で k 8.3% を大きく下回る。稼ぐ力が資本コストに届かない姿で、PER の上限 1÷k=約12.0倍の7.5割に置き9.0倍。今の自己資本に対する倍率は約0.6倍。
確率:預金金利の競争で利ざやの広がりが小さくなり、景気の悪化で与信費用が上がる。合併の効果も計画の半分にとどまる。10年では1度はこの種の局面が来る。
悲観 14% 構造的に負け、合併の効果が出ない10年 利益 30 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,141 円270 億円
人口減が加速し、県内の企業の数も減る。貸出の残高は縮み、福井の貸出の半分を握る強みが、縮む市場の中の半分に変わる。
システムの統合が失敗して費用が膨らみ、効果は出ない。預金は県外の高い金利やネット銀行に流れ、預金ベータは7割に上がる。
景気の悪化と政策保有株・債券の評価損が重なり、自己資本比率は8%を割る。貸出も還元も止まり、増資や他行との統合を迫られる。
純利益は今の3分の1ほどに落ち、ROEは2%ほどになる。稼ぐ力は低く、構造的に優良さを失った姿になる。
県内最大という看板は残るが、縮む地域の中で稼ぎの質が落ちた銀行として扱われる。他県の地銀との統合や、公的資金に近い形の資本増強が選択肢に上がる。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・事業性貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 150 億円・営業利益 33 億円。残高等 1.50 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 22%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 85 億円・営業利益 10 億円。残高等 0.95 兆円(名目)× 率 0.90%、利益率 12%
- 預かり資産・手数料:数量 1.9(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.00(実効の手数料率)→ 売上 85 億円・営業利益 15 億円。残高等 1.90 兆円(名目)× 率 0.45%、利益率 18%
- 市場運用:数量 1.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 102 億円・営業利益 41 億円。残高等 1.20 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 40%
倍率:10年後の純利益は約30億円でROEは約2%。稼ぐ力は30億円÷k=約360億円で、構造的に負けた姿としてその7.5割ほどの9.0倍(mcap 約270億円)に置く。今の自己資本1,529億円に対する倍率は約0.18倍。銀行は預金が仕入れで、売れる資産は預金に見合う貸出債権であり、事業と別に売って株主に戻せる資産の床は置けない。稼ぐ力から出した値で、PBRの床からは置いていない。
確率:県内の人口減の加速、預金の流出、合併の失敗、評価損による自己資本の毀損が重なる。自己資本比率8%台と薄いため、同業の中でもこの尾を厚めに置く(質の差は k でなく確率で表す)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
福井県内の中小・中堅企業向けの事業性貸出。繊維・眼鏡・化学・機械などの製造業が中心。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円・名目) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 0.01 | 163 | 55 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 0.01 | 280 | 101 |
取り方:連結の貸出金は約2.6兆円(単体の約2.04兆円に福邦銀行の分を足した推定)、うち法人・事業性を約6割の1.55兆円と置いた。利ざやは1.05%(推定)。預金金利が政策金利の上げに付いていく割合(預金ベータ)は4割。短期金利が1%前後から2%へ上がる間に、10年で利ざやは約+0.35%広がるとした。残高はお金の量なので名目で伸ばすが、福井は人口減で年2.6%と、業界の中心値よりやや低め。営業利益の欄は経常利益ベース(銀行に営業利益は無い)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+33%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円・名目) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.01 | 90 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 0.01 | 149 | 37 |
取り方:個人向けを約1.0兆円と置いた(住宅ローン中心、内訳は推定)。利ざやは0.90%。固定金利が多く上昇の波及は遅いので、10年で約+0.30%の広がり。残高は福井の人口減を入れて名目で年2.2%。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+33%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預かり資産・手数料
投信・保険・証券の販売手数料、決済、法人向け助言から入る役務収益。
| 数量手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円) | 価格実効の手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.01 | 110 | 25 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 0.01 | 177 | 57 |
取り方:預かり資産・決済・助言の取扱高を合わせて約2.0兆円、実効の手数料率を0.55%と置いた(役務収益は推定)。野村證券との提携で預り資産は伸びている。残高は資産形成の広がりを入れて名目で年3.9%、手数料率は10年で小幅に上がる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+9%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場運用
国債・外債・株式・投信などの有価証券の運用収益(調達コスト控除後)。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格調達コスト控除後の運用利回り(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 0.01 | 130 | 50 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 0.01 | 198 | 109 |
取り方:有価証券残高を約1.3兆円、調達コスト控除後の利回りを1.0%と置いた(推定)。今期は株式等売却益が乗っており、利益率は実力より高めに出ている。再投資の利回りは上がるが預金の利払いも増えるので、差し引き10年で+0.2%程度。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+20%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
リスクと懸念
合併の効果が出ない・遅れる
統合費用は122億円で、効果は2030年3月期に単年で60億円以上の見込み。システムの統合が遅れれば費用だけが先に出る。地銀の統合では、遅れと超過が珍しくない。
自己資本の薄さ
規制上の自己資本比率は8%台。政策保有株の評価損や債券の含み損が出ると、貸出も還元も止まる。配当性向40%への引き上げは、この余裕をさらに削る。
人口減と貸出の頭打ち
福井は人口と企業の数が減る県で、貸出の実質の伸びが乏しい。県内シェアが約5割と高く、取れるお客は取り切っている。伸びは利ざやと経費に頼る。
預金競争で利ざやが想定を下回る
信金や他県の地銀、ネット銀行が預金金利を引き上げると、預金ベータが4割から上がる。預金の過半を持つ強みが、金利を払う負担に変わる。
景気の悪化と与信費用
与信費用は歴史的な低さにある。10年のうちに景気は1度悪化する。繊維・眼鏡・化学・機械など県内の製造業の需要が落ちれば、貸倒れの費用が利益を大きく削る。
政策保有株の売却と利益の質
2026年3月期は株式等の売却益が利益を押し上げた。2027年3月までに純資産の20%未満へ減らす途上で、売却益は一時の利益。実力の利益と混ぜて評価できない。
今後の分かれ目
- システム統合が2028年までに終わり、コアOHRが65%を下回る
- 経費削減の効果が出る段階に入る。中立より上の筋書きの確率が高まる。
- 預金ベータが5割を超えて上がる
- 利ざやの拡大は想定の半分以下になり、純利益は今の水準にとどまる。やや悲観の筋書きが近づく。
- 自己資本比率が9%を超え、自社株買いの方針が示される
- 還元の余地が広がり、ROEが上がる。中立の自己資本の流れが上振れる。
- 景気が悪化して与信費用が数年続く
- 純利益が削られ、自己資本比率が8%を割る恐れが出る。還元が止まる。
- 他県の大手地銀・SBIなどが提携や出資を申し出る
- 買収や提携で価値が再評価される余地がある。ただし統合の費用と実行の難しさは別に残る。
- 福井の貸出が実質で縮み始める
- 県内シェアの高さが利益を守らず、悲観の筋書きの確率が上がる。
見ておくもの
- 合併後の店舗統廃合とシステム統合の進み具合
- コアOHRと連結自己資本比率(中計Ⅱの目標:60%以下・9%以上)
- 福井県内の預金金利と預金ベータ
- 与信費用の推移
- 政策保有株の削減の進み具合(2027年3月末に純資産の20%未満)
- 配当性向40%と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観〜中立は10年後のROEとk 8.3%(基本7.5%+quality 0.8%)・g 4.0%から、利益ベースの正当化PERの上限(ROEがk以下の中立では1÷k=約12.0倍)を出し、上限の9割(中立)・9割・9.3割に置いた。やや悲観・悲観は構造的に稼ぐ力が落ちた姿から9.0倍で、今のPERや過去の底値から置いていない。悲観の床は稼ぐ力から出した。銀行は預金が仕入れのためリースの基準変更の影響は小さい。kが1%高いと中立のPERは約1倍下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→13.38 倍・やや楽観 PER 11.2→12.46 倍・中立 PER 10.84→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足して k 8.3%(決まり v2。内訳は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず利ざやで扱う。合併の実行・自己資本の薄さなど個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せは 0。同じ領域の大垣共立銀行(+0.8%)と同じ物差し。