結論
群馬銀行は、群馬県内企業のメインバンクシェア44.45%で17年連続首位という、県内で他を圧倒する顧客基盤を持つ地方銀行である。2025年4月に第四北越フィナンシャルグループ(新潟県)との経営統合で基本合意し、2026年3月に最終合意、2027年4月に株式交換(群馬銀行1株に第四北越FG株1.125株)で第四北越FGの完全子会社となり、持株会社名は「群馬新潟フィナンシャルグループ」に改まる予定で、県境をまたぐ「越境統合」としては地銀再編の中でも異例の組み合わせになる。合算の連結総資産は21兆円台、預金は17兆円超に達し、地銀グループとして預金残高で第4位級に浮上する見通しである。短期金利が2%へ向かう「金利のある世界」では法人・個人の貸出利ざやが構造的に拡大し、中期経営計画「Growth with “Purpose”」(2025〜2028年3月期)は2028年3月期に連結純利益600億円(2025年3月期予想の1.5倍)・ROE10%以上を掲げる。統合後は2030年3月期に両社合算で純利益1,400億円超・ROE10.5%超を目標にしている。ここでは法人貸出・個人貸出・資産運用ソリューションの3つを数量×価格で積み上げ、第四北越FGとの統合効果は別枠で位置づけたうえで、その時点のROEと資本コストから倍率を決めて株価を出した。純利益が3期連続で過去最高を更新し統合の思惑も重なって今のPERが17.9倍まで上がっており、値段が利益の伸びを先取りしており、追いつくには中期経営計画の確実な実現が要る。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、群馬県内で既に確立した顧客基盤(メインバンクシェア44.45%)を使って、金利上昇に伴う利ざやの拡大がほぼ自動的に利益を押し上げる構造になっており、追加の大きな設備投資を伴わずに資本効率が改善しやすい点を、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、群馬県内で17年連続首位という顧客基盤の厚さと、第四北越フィナンシャルグループとの統合を自ら主導した立場を評価するが、銀行業は規制業種であり、信用サイクルの悪化時には自己資本が傷みやすいという構造的な制約は消えず、群馬銀行の自己資本比率5.7%という単純指標の低さは、堀の強さと財務の頑健さが別問題であることを示している。資本配分については、政策保有株式の圧縮と配当性向40%・累進配当の組み合わせを評価するが、第四北越FGとの統合は県境をまたぐ前例の少ない「越境統合」であり、持株会社の経営がどこまで規模のメリットを資本効率の改善に結びつけられるかは未知数を抱える。
何で稼ぐ会社か
群馬銀行は群馬県を中心に、法人・個人向けの貸出と預金業務を土台とする地方銀行で、県内企業のメインバンクシェア44.45%(帝国データバンク2025年調査)を握り17年連続で首位を維持している。法人向けは県内中小企業への事業性融資を主軸に、地域商社機能や事業承継支援、M&Aアドバイザリーも手がける。個人向けは住宅ローンを中心に、資産形成層・相続を控える層への対応まで幅広い。貸出金残高は7兆2,261億円、預金残高は8兆5,710億円(いずれも2026年3月末、単体)と、北関東の地銀としては大規模な基盤を持つ。資産運用・ソリューション部門は投資信託・保険の販売、法人のM&A・事業承継支援、地域商社的な取り組みを担い、非金利収益の柱として育成中である。営業エリアは群馬県を基盤に、埼玉・東京など首都圏にも広域展開している。2025年に第四北越フィナンシャルグループ(新潟県の地銀持株会社)との経営統合で基本合意し、2027年4月に株式交換(群馬銀行1株に第四北越FG株1.125株)で第四北越FGの完全子会社となり、持株会社名は「群馬新潟フィナンシャルグループ」に改まる予定で、両グループの合算総資産は21兆円台、預金残高は17兆円超に達し、地銀グループとして上位に浮上する見通しである。群馬・新潟という隣接しない2県をまたぐ「越境統合」は、危機対応ではなく双方が体力のあるうちに規模とシステム効率を確保する「先回り型」の再編とされ、北関東で競合するめぶきフィナンシャルグループ(足利銀行・常陽銀行、2016年統合)のような広域グループに対抗する狙いもある。
優良さと弱いところ
群馬県内で企業のメインバンクシェア44.45%・貸出金シェア34.6%・預金シェア37.8%を握る顧客基盤の厚さが最大の堀で、しののめ信金・東和銀行・桐生信金などの競合を大きく上回る地位を17年にわたり維持している。地銀再編が進む業界の中で、群馬銀行は自ら買収される側ではなく、第四北越フィナンシャルグループとの経営統合を自ら持ちかけた主導役であり(kabufuのTOB・買収確率推定は10年以内16.2%)、県境をまたぐ規模拡大によって北関東で競合するめぶきフィナンシャルグループに対抗する立場を強めている。弱点は、国内銀行業が規制業種であるため急激な収益改善は難しく、自己資本比率は単純指標で5.7%とkabufuの脆さスコアでは低めに判定される点で、信用サイクルの悪化局面では資本の余裕の乏しさが響きやすい。経営の規律という点では、2025年3月期より株主還元方式を配当性向40%目安・累進配当に切り替え、政策保有株式は2027年3月末までに簿価を200億円縮減(2026年3月末時点で84%進捗)、2028年3月末には連結純資産に対する時価保有比率を10%未満とする目標を掲げている。第四北越FGとの統合は「越境統合」という前例の少ない組み合わせであり、持株会社の経営の手腕次第で、規模拡大のメリットをどこまで資本効率の改善に結びつけられるかが最大の経営課題である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は長い低金利時代を経て、2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」に入った初期段階にある。短期金利が2%に向けて上がる過程で、預金の約定利回りの追随が遅れるため預貸ざやは構造的に拡大しており、群馬銀行の中期経営計画が前提とする金利上昇の持続が、地方銀行に共通する最大の追い風になる。一方、群馬県内の貸出需要そのものは人口減少や企業の内部留保志向で伸びが鈍く、群馬県は首都圏の千葉県などと比べても人口減少がやや速い内陸県であるため、量でなく価格(利ざや)で稼ぐフェーズがより強く効く。地方銀行最大の構造要因は再編であり、「1県1行」体制への収束が進む中、群馬銀行と第四北越フィナンシャルグループ、千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行がそれぞれ経営統合で基本合意するなど再編ドミノが進行している。群馬銀行の統合は県境をまたぐ「越境統合」として、同一県内での統合(千葉銀行と千葉興業銀行など)とは性格が異なり、持株会社「群馬新潟フィナンシャルグループ」のもとでシステムは2030年1月に基幹系統合、2030年代前半にほぼ全体の統合を終える計画である。北関東では、足利銀行・常陽銀行が2016年に統合して生まれためぶきフィナンシャルグループという広域の競合が既に存在し、群馬銀行にとって規模で対抗する必要性が統合の背景の一つになっている。NISA拡充・高齢化に伴う相続需要は資産運用・資産管理分野の追い風で、地銀各社にとって非金利収益の拡大余地は大きい。
資本政策と M&A
株主還元は2025年3月期より株主還元率方式から配当性向方式に切り替え、配当性向40%を目安に累進配当を基本とする方針である。2024年3月期は配当総額86億円・自己株式取得80億円の総還元166億円、還元率53.6%で、2026年3月期の1株当たり配当も前期から増配された。政策保有株式は2027年3月末までの5年間で上場政策保有株式の簿価残高を200億円縮減する目標を掲げ、2026年3月末時点で簿価約168億円を縮減(進捗84%)、2028年3月末には連結純資産に対する政策保有株式の時価保有比率を10%未満とする方針で、千葉銀行の15%未満目標より厳しい水準を目指している。最大のM&A・資本政策イベントは第四北越フィナンシャルグループとの経営統合で、2025年4月の基本合意、2026年3月の最終合意を経て、2027年4月に株式交換で第四北越FGの完全子会社となる(群馬銀行1株に第四北越FG株1.125株)。持株会社は「群馬新潟フィナンシャルグループ」に改称し、両行が傘下に並ぶ。群馬銀行は2027年3月に上場廃止となり、今の株主は第四北越FGの経済的価値も含む持株会社の株式を持つことになる。両社は統合前から提携関係にあり、当初目標「5年間累計シナジー効果80億円」を3年間で前倒し達成した実績があり、統合後も新潟県の地域活性化(観光・脱炭素・健康医療・インフラ・農業)に40億円規模で投資する計画である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に向けて上がる過程で、法人・個人の貸出利ざやは構造的に拡大し、群馬銀行は中期経営計画「Growth with “Purpose”」が掲げる2028年3月期の連結純利益600億円・ROE10%以上を上回るペースで利益を伸ばしてきた(2026年3月期純利益588億円は3期連続の過去最高)。第四北越フィナンシャルグループとの経営統合は、群馬・新潟という隣接しない2県をまたぐ「越境統合」でありながら、両社は統合前から提携関係を深め、当初目標の5年間累計シナジー効果80億円を3年間で前倒し達成した実績があり、持株会社「群馬新潟フィナンシャルグループ」のもとで統合3年後の2030年3月期には両社合算で純利益1,400億円超・ROE10.5%超を見込む。群馬県内で企業のメインバンクシェア44.45%・17年連続首位という顧客基盤は、北関東で競合するめぶきフィナンシャルグループに対抗できる規模を統合によって手に入れる。政策保有株式の圧縮(2028年3月末に時価保有比率10%未満)が計画通り進めば資本の安定性が高まり、配当性向40%・累進配当と自社株買いの原資も厚くなる。地方銀行の中でも県内シェアが最も厚い地銀の一つである群馬銀行は、金利正常化と統合シナジーの両方のメリットを取り込める位置にあり、統合が軌道に乗れば中期経営計画を上回るROEの改善が続く。
慎重な見方
金利が上がる過程は利ざやの拡大と同時に、群馬県内の中小企業の資金繰りを厳しくし信用コストを押し上げる副作用も伴う。群馬銀行の自己資本比率は単純指標で5.7%と相対的に低く、世界的な信用収縮が来れば保有する株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷みやすい。第四北越フィナンシャルグループとの統合は、群馬・新潟という県境をまたぐ「越境統合」であり、同一県内での統合(千葉銀行と千葉興業銀行など)と比べて営業基盤の重複が少ない分、店舗統廃合によるコスト削減効果も限られ、2030年代前半まで続くシステム統合の過程で予期せぬコストや混乱が生じるリスクがある。群馬県は首都圏の千葉県などと比べても人口減少が速い内陸県であり、県内の貸出需要そのものの伸びは鈍く、県内シェアが既に44.45%と高い水準にある以上、さらなるシェア拡大の余地は限られる。北関東では既にめぶきフィナンシャルグループという規模の大きい広域グループが存在し、首都圏ではネット証券やデジタル専業銀行との競争も強まっている。今の株価はPER17.9倍まで上昇しており、3期連続の最高純利益更新と統合の思惑をすでに先取りした値段であって、中期経営計画の実現ペースが計画通りでも、利益の伸びが今の値段に追いつくには時間がかかり、統合実行が計画より遅れるだけで割高さが一段と目立つ値段である。
どちらに重みを置いたか
金利正常化の恩恵が群馬県内の厚い顧客基盤にほぼ自動的に効く点と、第四北越FGとの統合による規模拡大の両方を評価する強気の見方には理由があるが、今の株価が3期連続の最高純利益と統合の思惑をすでに大きく先取りしている点、県境をまたぐ越境統合という前例の少なさ、自己資本比率の低さという慎重な見方の指摘も軽くない。確率は中立に最も重みを置きつつ、越境統合という実行の難しさと群馬県の人口減少の速さを踏まえて悲観側をやや厚めに残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,639 円9,990 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,062 円4,020 億円)。 今の値に割り戻すと 1,909 円7,226 億円、今との差 −25.5%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,615 円2.13 兆円 | 1,469 円5,560 億円 | +176.5% | +10.7% | 708 円2,681 億円 |
| やや楽観 | 23% | 3,942 円1.49 兆円 | 1,318 円4,989 億円 | +105.4% | +7.5% | 1,210 円4,580 億円 |
| 中立 | 29% | 2,657 円1.01 兆円 | 1,169 円4,424 億円 | +49.3% | +4.1% | 1,109 円4,200 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,522 円5,761 億円 | 1,065 円4,033 億円 | +1.0% | +0.1% | 569 円2,155 億円 |
| 悲観 | 16% | 410 円1,552 億円 | 242 円917 億円 | −74.5% | −12.8% | 104 円395 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,639 円9,990 億円 | 1,062 円4,020 億円 | +44.5% | +3.7% | 3,701 円1.40 兆円 |
今の株価時価総額 2,562 円9,696 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 越境統合の完全実現と北関東・新潟での規模戦略が結実する10年 利益 1,502 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 5,615 円2.13 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、群馬県内の貸出利ざやは構造的に高い水準で安定する。2027年に発足した群馬新潟フィナンシャルグループでは、県境をまたぐ越境統合のシステム統合・事務共通化が2030年代前半にほぼ完了し、統合3年後に掲げた純利益1,400億円超・ROE10.5%超の目標を上回る実現が進む。資産運用・事業承継ソリューションも結実し、政策保有株式の売却もほぼ完了して浮いた資本は大規模な自社株買いに回る。群馬県内シェア44.45%という顧客基盤の厚さに加え、北関東で競合するめぶきフィナンシャルグループに対抗できる規模の経済が効く、地方銀行として最も理想的な10年になる。
- 法人貸出:数量 6.8(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 2.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,410 億円・営業利益 1,022 億円。残高 6.8 兆円(名目)× 利ざや 2.08%、利益率 72%
- 個人貸出:数量 4.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 777 億円・営業利益 554 億円。残高 4.3 兆円(名目)× 利ざや 1.80%、利益率 71%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.0(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.3%(実効手数料率等(%))→ 売上 656 億円・営業利益 495 億円。残高 5.0 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 76%
倍率:10年後のROE13.5%(純利益1,502億円÷自己資本11,091億円)。k8.25%・g4.0%、残る割合1/2 で RONIC=k+1/2×(ROE−k)=10.9%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.9倍(下限は1÷k=12.1倍)。堀と統合・利ざやの追い風が10年そろう最良の姿。上限の9.5割に置き、14.15倍。
確率:短期2%・長期3%の定常化、第四北越フィナンシャルグループとの統合シナジーの完全実現、資産運用・ソリューション収益拡大が10年間すべて噛み合う前提で、県境をまたぐ越境統合という前例の少なさから確度は高くない。
やや楽観 23% 統合シナジーとソリューション収益を軸に安定成長 利益 1,175 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 3,942 円1.49 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、群馬県内の貸出利ざやは高水準で安定する。群馬新潟フィナンシャルグループの統合シナジーは安定した貢献を続け、県境をまたぐ越境統合という前例の少ない組み合わせながら、統合前から深めてきた提携のノウハウを生かして資産運用・事業承継ソリューションも着実に伸ばす。政策保有株式の売却はほぼ完了し、自社株買いが継続する。資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の資産形成の広がりと高齢化に伴う相続需要を取り込みながら安定的に拡大し、群馬県内のリテール基盤と、北関東で競合するめぶきフィナンシャルグループに対抗できる新潟を含めた広域グループとしての規模を両輪にする体制が定着する10年になる。
- 法人貸出:数量 6.2(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,098 億円・営業利益 786 億円。残高 6.2 兆円(名目)× 利ざや 1.76%、利益率 72%
- 個人貸出:数量 4.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 621 億円・営業利益 438 億円。残高 4.0 兆円(名目)× 利ざや 1.55%、利益率 71%
- 資産運用・ソリューション:数量 4.6(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.2%(実効手数料率等(%))→ 売上 532 億円・営業利益 397 億円。残高 4.6 兆円(名目)× 率 1.15%、利益率 75%
倍率:10年後のROE11.7%(純利益1,175億円÷自己資本10,019億円)。k8.25%・g4.0%、残る割合1/2 で RONIC=k+1/2×(ROE−k)=10.0%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=14.1倍(下限は1÷k=12.1倍)。おおむね計画どおりに進む姿。上限の9.0割に置き、12.70倍。
確率:中期経営計画の方向性と第四北越フィナンシャルグループとの統合効果が10年間おおむね維持され、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 29% 中立:金利は定常化し越境統合の効果が緩やかに実現する 利益 902 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 2,657 円1.01 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、群馬県内の貸出利ざやは高めの水準で安定する一方、県内の人口減少で貸出の量そのものは伸び悩む。与信費用も景気循環を1〜2周してならした水準に戻る。群馬新潟フィナンシャルグループの統合シナジーは計画どおりの貢献にとどまり、県境をまたぐ越境統合ならではの調整も一部残る。政策保有株式の売却は完了し、資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の標準的な成長軌道に乗る。群馬県内シェア44.45%としての顧客基盤の厚さは変わらず維持される、特別な上振れも下振れもない10年になる。
- 法人貸出:数量 5.8(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 875 億円・営業利益 600 億円。残高 5.8 兆円(名目)× 利ざや 1.50%、利益率 69%
- 個人貸出:数量 3.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 499 億円・営業利益 344 億円。残高 3.7 兆円(名目)× 利ざや 1.35%、利益率 69%
- 資産運用・ソリューション:数量 4.1(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.1%(実効手数料率等(%))→ 売上 435 億円・営業利益 310 億円。残高 4.1 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 71%
倍率:10年後のROE9.8%(純利益902億円÷自己資本9,225億円)。k8.25%・g4.0%、残る割合1/2 で RONIC=k+1/2×(ROE−k)=9.0%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.1倍(下限は1÷k=12.1倍)。利ざや拡大と統合シナジーが積み上がる。上限の8.5割に置き、11.15倍。
確率:短期2%・長期3%が定着し、群馬県内の与信費用も景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 22% 人口減少の加速と越境統合効果の実現遅れで成長が鈍る 利益 528 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 1,522 円5,761 億円
国内の金利正常化は進むが、群馬県内の人口減少・事業所数の減少が計画より加速し、法人・個人向け貸出の量の伸びがさらに鈍る。群馬新潟フィナンシャルグループの統合シナジーは、県境をまたぐ越境統合という前例の少ない組み合わせの制約もあって実現が計画より遅れ、北関東では規模の大きいめぶきフィナンシャルグループとの競争も強まる。政策保有株式の売却は完了するが、与信費用の増加分を自社株買いの抑制で吸収する場面も出る。資産運用・ソリューション業務の成長も市場環境の悪化で鈍化し、県内シェア44.45%という強みだけでは成長の鈍さを十分に補えない10年になる。
- 法人貸出:数量 4.9(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 597 億円・営業利益 372 億円。残高 4.9 兆円(名目)× 利ざや 1.22%、利益率 62%
- 個人貸出:数量 3.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 321 億円・営業利益 207 億円。残高 3.1 兆円(名目)× 利ざや 1.05%、利益率 64%
- 資産運用・ソリューション:数量 3.4(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 291 億円・営業利益 194 億円。残高 3.4 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 67%
倍率:10年後のROE6.8%(純利益528億円÷自己資本7,742億円)は k8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。競争や統合の遅れで稼ぐ力が鈍る姿。上限の9.0割に置き、10.91倍。今の自己資本6,193億円に対する倍率は0.93倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:群馬県内の人口減少が計画より加速し、第四北越フィナンシャルグループとの統合シナジーの実現も県境をまたぐ越境統合の前例の少なさから計画どおり進まない想定。10年という期間では停滞する年も相応に混ざる。
悲観 16% 構造的に負け、越境統合だけでは資本効率が戻らない10年 利益 160 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 410 円1,552 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、群馬県内の与信費用が急増する。人口減少が想定を超えて加速し、県内の貸出需要そのものが縮小する。群馬新潟フィナンシャルグループの統合は、県境をまたぐ越境統合という前例の少ない組み合わせの制約もあって期待したシナジーに至らず、統合3年後に掲げた純利益1,400億円超の目標は実現しない。北関東ではめぶきフィナンシャルグループとの競争にも阻まれる。政策保有株式の売却で資本は確保するものの、自己資本比率5.7%という元々低めの資本バッファのもとで、県内シェア44.45%という強みだけでは資本効率の低さを補えず、地方銀行としての存在意義そのものが問われる苦しい10年になる。
- 法人貸出:数量 4.1(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 179 億円・営業利益 80 億円。残高 4.1 兆円(名目)× 利ざや 0.44%、利益率 45%
- 個人貸出:数量 2.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 101 億円・営業利益 46 億円。残高 2.5 兆円(名目)× 利ざや 0.40%、利益率 45%
- 資産運用・ソリューション:数量 2.9(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.4%(実効手数料率等(%))→ 売上 100 億円・営業利益 44 億円。残高 2.9 兆円(名目)× 率 0.35%、利益率 44%
倍率:10年後のROE2.2%(純利益160億円÷自己資本7,200億円)は k8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の8.0割に置き、9.70倍。今の自己資本6,193億円に対する倍率は0.25倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。悲観の利益は、貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%(純利益160億円)に置いた。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、群馬県内の人口減少の加速、第四北越フィナンシャルグループとの統合の不調(シナジー不発・越境統合ならではの文化統合の難しさ)、北関東でのめぶきフィナンシャルグループへの顧客流出といった複合的な悪材料が10年のどこかで重なる想定。10年という期間かつ自己資本比率が低めであるため相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
群馬県内の中小企業向け事業性融資を主軸に、地域商社機能・事業承継支援・M&Aアドバイザリーなどを含む法人向け貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.3 | 1.1% | 456 | 270 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 1.5% | 875 | 600 |
取り方:貸出金残高7兆2,261億円(2026年3月末、単体)のうち法人・事業性向けを約6割の4.34兆円とおき、利ざやを1.05%とした(開示に法人・個人の内訳が無いため、千葉銀行など他の地銀と同様の6割:4割の推定)。2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を地銀共通の40%と置いた。短期金利が今の1%前後から2%へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は40%だけ上がるので、固定金利の貸出や定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは3年で+0.27%、10年で+0.45%広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない。地銀の物差しを揃えるため千葉銀行と同じ幅を使う)。残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年3.0%(物価3%+実質−0%。群馬県は人口減少が千葉県よりやや速い内陸県のため、千葉銀行の法人3.5%より低めに置いた)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。資産形成層・相続を控える層への対応も含む。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.9 | 1.0% | 275 | 165 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 1.4% | 499 | 344 |
取り方:貸出金残高の残り約4割を個人向け2.89兆円とおき、住宅ローン中心の利ざやを0.95%とした。2026-10-18 の直し:預金ベータを地銀共通の40%と置いた。短期金利が今の1%前後から2%へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は40%だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは3年で+0.24%、10年で+0.40%広がると置いた(千葉銀行と同じ幅を使い地銀の物差しを揃える)。残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年2.5%(物価3%+実質−0.5%、群馬県の人口減少を千葉県より速めに見込んだ)。
資産運用・ソリューション
投資信託・保険等の預かり資産業務と、M&Aアドバイザリー・事業承継支援、地域商社的な取り組み等の非金利収益。
| 数量預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 0.9% | 252 | 160 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 1.1% | 435 | 310 |
取り方:預かり資産残高と事業承継・M&A等の取扱高合計を、貸出金規模が千葉銀行の約半分であることを踏まえ2.8兆円とおき、実効手数料率を0.9%とした(千葉銀行と同じ率を使う)。預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年4.0%(物価3%+実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。
リスクと懸念
信用コストの急増
金利上昇が進む過程では群馬県内の中小企業の資金繰りが悪化しやすく、与信費用が増える。群馬銀行の自己資本比率は単純指標で5.7%と相対的に低く、リーマン級の信用収縮が起きれば保有する株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷む。
第四北越フィナンシャルグループとの越境統合の実行リスク
2027年4月に持株会社群馬新潟フィナンシャルグループを設立する計画だが、群馬・新潟という隣接しない2県をまたぐ「越境統合」は地銀再編の中でも前例が少なく、営業基盤の重複が少ない分、同一県内統合(千葉銀行と千葉興業銀行など)と比べてコスト削減効果が見えにくい。システム統合(2030年1月基幹系統合、2030年代前半にほぼ完了予定)の過程で予期せぬコストや混乱が生じるリスクがある。
群馬県内の人口減少と貸出需要の縮小
群馬県は内陸県で、首都圏の千葉県などと比べても人口減少がやや速いとみられ、法人・個人向け貸出の量の伸びは鈍い。県内シェアが既に44.45%と高い水準にあるため、さらなるシェア拡大の余地は限られ、成長は利ざやと非金利収益に依存する度合いが強まる。
北関東での競争(めぶきフィナンシャルグループ)
北関東では足利銀行・常陽銀行が2016年に統合して生まれためぶきフィナンシャルグループという規模の大きい広域グループが既に存在し、群馬銀行が第四北越フィナンシャルグループとの統合で対抗しようとする構図にある。統合効果が計画より遅れれば、規模の差がむしろ広がるリスクがある。
政策保有株式売却の遅れ
政策保有株式の売却は取引先との関係維持の観点から急には進められない面があり、2028年3月末までに連結純資産比10%未満とする目標が遅れれば資本効率の改善ペースも鈍る。取引先企業との関係悪化を避けながら進める難しさが常に伴う。
財務の脆さと規制の制約
自己資本比率は単純指標では5.7%とkabufuの脆さスコアでは低めに判定される。銀行業の規制資本(バーゼル基準の自己資本比率)とは別の指標だが、信用サイクルの悪化局面では資本の余裕の乏しさが貸出姿勢の慎重化を招きやすい。規制業種である以上、資本増強や業務範囲の拡大には認可・規制対応のコストと時間がかかり、機動的な動きには限界がある。
統合後の株式の扱いと今の値段の先取り
2027年4月の株式交換(群馬銀行1株に第四北越FG株1.125株)で、現在の群馬銀行株式は持株会社「群馬新潟フィナンシャルグループ」(第四北越FGの改称)の株式に替わる予定である。比率は最終合意で決まったが、取り分の価値は統合後の稼ぎで決まる。また3期連続の最高純利益更新と統合の思惑を背景に、今の株価はPER17.9倍まで上昇しており、統合実行や金利正常化のペースが計画よりわずかに遅れるだけでも、割高さが一段と目立つ値段である。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速いペースで上げたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。群馬県内の貸出利ざやの拡大ペースを決算で確認する。
- 群馬県内の与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。中小企業のどの業種で信用コストが増えたかを確認する。
- 群馬新潟フィナンシャルグループの統合シナジーが2030年3月期の目標(純利益1,400億円超・ROE10.5%超)を上回るペースで実現したら
- 楽観側の筋書きの確度を上げる。システム統合・事務共通化の進捗を決算説明会で確認する。
- 第四北越フィナンシャルグループとの統合に遅延や条件の見直しが生じたら
- やや悲観側に重みを移す。株式交換の手続き(株主総会・上場廃止日)の進み方を確認する。
- 政策保有株式の売却が2028年3月末目標(連結純資産比10%未満)に向けて計画を上回って進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率をやや上げる。
- 今の株価のPERが17.9倍からさらに上昇を続けたら
- 本質価値との差がさらに開くため、割高の見方を強める。中期経営計画の上方修正があるかを確認する。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・群馬県内の貸出利ざやの推移
- 群馬県内の与信費用(信用コスト)の推移
- 群馬新潟フィナンシャルグループの統合準備の進捗(2027年4月設立予定)とシステム統合(2030年代前半完了予定)の進み方
- 第四北越フィナンシャルグループとの株式交換の手続きと、統合後の経費削減の進み方
- 政策保有株式の売却進捗(2028年3月末に連結純資産比10%未満)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=12.1倍。利ざや拡大と統合シナジーが積み上がる)。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その9割・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造からROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは11.2倍から9.9倍に下がる。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β 0.69 × 5% + 規模 0.25%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(第四北越FGとの越境統合の実行)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。
同じ業種(銀行業)の AI 分析
読んだ資料
- 日経:群馬銀行の26年3月期純利益588億円 統合後の利益目標上方修正も
- 帝国データバンク:群馬県・「メインバンク」動向調査(2025年)
- 上毛新聞:群馬県内企業メインバンク、群馬銀行が1位でシェア5割以上
- 時事:新社名は「群馬新潟FG」 第四北越・群馬銀が統合最終合意
- 東洋経済:第四北越FGと群馬銀行が27年4月の経営統合で基本合意
- 日経:群馬銀行と第四北越FG、システム「2030年代前半にほぼ統合」
- 新潟日報:第四北越FGと群馬銀行、27年4月の経営統合へ最終合意
- ダイヤモンド:群馬銀行が第四北越FGに持ちかけた「越境統合」の内幕
- 日経:群馬銀行、連結純利益1.5倍の600億円に 新中計発表
- 東洋経済:常陽・足利統合で周辺地銀はどう動くのか
- 群馬銀行 開示(2026年3月26日・第四北越FGとの経営統合の最終合意)