結論
栃木銀行は、栃木県で足利銀行に次ぐ第二地方銀行だ。預金は3兆円超、貸出は2.4兆円台で、小さくはないが突き抜けた強みもない。筆者の結論は、今の値段は10年後の稼ぐ力に照らしてほぼ適正で、安全域は薄いというものだ。
追い風は金利である。短期金利が2%へ上がれば、貸出の利ざやが広がり、使い道に困っていた預金の運用利回りも上がる。直近の貸出は1年で12%増え、有価証券の入れ替えで膨らんだ損失も出尽くした。2026年3月期の純利益は83億円に戻った。
ただ、10年の利益の水準を決めるのは経費と与信費用だ。この銀行の過去10年のROE(自己資本利益率)の中央値は1.6%にとどまる。金利の追い風で8%近くまで戻せるかが勝負で、筆者は届くと見るが、他の優良地銀のようには上げきれないと考える。
2025年3月期には、低利回りの債券を前倒しで売り、200億円を超える純損失を出した。運用の判断の甘さは、バリュー投資家が最も嫌う種類の失敗である。中計は純利益130億円以上を掲げるが、実績は90億円の予想にとどまり、距離はまだある。
筆者の見立てでは、10年後の中立のROEは7.5%前後で、資本コストの8.5%にわずかに届かない。この水準の銀行は、帳簿の純資産に見合う価値を認められない。再編の主役にもなりにくい。強気と慎重のどちらも言い分があり、確率は中立に重く置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、栃木銀行は良い銀行だが、良い事業とまでは言えない。理由は三つある。
一つ目は、稼ぐ力だ。この銀行の過去10年のROEの中央値は1.6%で、資本コストを大きく下回る。金利上昇で改善する局面は確かに来るが、それは多くの地銀に共通する追い風で、この銀行だけの強みではない。
二つ目は、経営の判断だ。2025年3月期の債券売却損は、運用の読みを誤った結果だった。もう同じ失敗はしないだろうが、資本を預ける側は、同じ種類の過ちが再び起きうることを前提に安全域を厚く取る。
三つ目は、資本の厚みだ。自己資本比率は国内基準で9.9%。貸出が増えるほど薄くなる。利益を内部に留めることになるため、株主に戻る分は小さい。
結局、10年後の中立のROEは7.5%前後と見る。資本コストの8.5%には届かない。そうすると、帳簿の純資産に見合う価値は認められず、利益の何倍かで測ることになる。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額とほぼ同じで、安全域は薄い。持ち続けたいと思う銀行かと問われれば、金利の恩恵だけで買う理由にはならない、と答える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、栃木県を中心とする法人・個人への貸出と、その元手になる預金だ。連結ベースの預金は3.2兆円、貸出は2.5兆円弱。預金のほうが貸出より大きく、余った資金は国債などの有価証券と日銀への預け金で運用している。有価証券は4,000億円強と預金の1割強にとどまり、預金を貸し出しにも債券にも回しきれていないのが実情だ。
店舗は83(2025年9月末)。県内の第一地銀である足利銀行(134店)に次ぐ位置で、中小企業と個人の取引が厚い。直近の貸出の伸びは個人・中小企業向けに加え、中堅・大企業向けと地方公共団体向けも寄与した。
手数料の稼ぎは、投資信託・保険の販売、法人向けの事業承継やM&Aの仲介、決済などだ。2025年11月にはインターネット専用の「いちご支店」を開き、若い世代の入口をつくった。子会社のとちぎんキャピタルを通じた出資も手がけ、新しい中計ではエクイティ投資の約束額を109億円から200億円程度へ広げる。
首都圏への貸出拡大も柱だ。中計は栃木県で600億円、首都圏で400億円の貸出増を掲げる。県内だけでは貸出の需要が伸びにくいため、東京近郊の法人・不動産関連へ踏み出す。ただ、東京は都市銀行・大手地銀が厚く、ここで利ざやを取れるかは未知数である。
分析では、これを法人貸出・個人貸出・市場運用・手数料の4つに分けて数量と価格を置いた。
優良さと弱いところ
優良さを一言でいうと、堅いが平凡である。県内では足利銀行が第一地銀で、栃木銀行は第二地銀だ。メインバンクの座を取り合う相手が、店舗網でも規模でも上にいる。値段を自分で決められる銀行ではない。
数字にも出ている。過去10年のROEの中央値は1.6%で、優良な地銀が持つ10%近い水準とは遠い。経費の重さが主因だ。収益が伸びないまま店舗網を維持してきたツケである。2025年3月期の赤字は、運用の失敗が収益の弱さを覆い隠せなくなった結果だった。
弱点はもう一つある。自己資本比率は国内基準で9.9%、貸出が急に増えたため前期より下がった。会社は中計で10%台後半へ引き上げると言うが、貸出を増やしながら資本を厚くするには、利益を内部に留めるしかない。株主還元を厚くする余地は小さい。
よい点も書いておく。栃木は宇都宮を中心に製造業が集まり、首都圏に近い。預金は個人預金を中心に安定して増えており、調達の面では心配が少ない。
経営の規律は、2025年の損失を経て改善の途上と見る。債券のデュレーション(償還までの期間)を管理し、円債中心で運用する方針を明示した。ただし、エクイティ投資の枠を倍近くに広げる点は、収益の上振れと損失の両方を呼びうる。筆者はここを割り引いて見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行は、金利のある世界に入ったばかりだ。短期金利が2%へ上がっていく間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。預金が余っている栃木銀行は、この恩恵を受けやすい。預金3.2兆円に対して貸出は2.5兆円弱で、差額の資金が日銀預け金や債券で、金利上昇の分だけ稼ぎを増やす。
貸出の量のほうは、地域の人口が減るため伸びにくい。栃木県は首都圏の北端で、宇都宮の工業団地や物流の需要はあるが、県全体では人口減が続く。物価の分だけ名目の残高は増えるが、実質の需要は横ばいと見る。
再編は、この銀行にとって両刃の剣だ。足利銀行はめぶきフィナンシャルグループ傘下で、茨城・栃木の広域で規模を持つ。栃木銀行は2014年から筑波銀行・東和銀行と広域連携を結び、東和銀行は大株主にも名を連ねる。統合に発展すれば経費の圧縮で収益力が上がるが、時期も相手も決まっていない。千葉・静岡・愛知などで統合が進む中、単独のまま取り残されるリスクもある。
競争は、県内の足利銀行と信用金庫・ネット銀行、首都圏では大手行だ。資産運用では、NISAの定着で預かり資産が増える追い風があり、地銀の手数料収入は伸びる。ただし手数料率は低コスト商品に押されて下がりやすく、数量の伸びで補う構図になる。
業界全体の見方は、金利で稼ぎが戻り、再編に乗れた銀行と乗れない銀行で二極化する、というものだ。栃木銀行は、その分かれ目の手前にいる。
資本政策と M&A
還元は、中計の期間中に配当性向40%程度を目安とする。前の中計では配当と自社株買いを合わせて30〜35%が目安だった。足元では貸出が急増して自己資本比率が下がったため、自社株買いに回す余力は小さい。
資本の置き場は、リスクのある資産の増加に最も多く、株主還元と成長投資の順に割り振る方針だ。累計利益のうち株主への配分は小さく、まず資本を厚くする姿勢である。バリュー投資家の目には、資本の使い方が堅実か、それとも伸び悩みの言い訳かの境目に映る。
成長投資は、AI・DXに90億円、人への投資に30億円、店舗に120億円と、合計240億円を見込む。純利益が100億円前後の銀行にとって軽くない額である。投資の回収を、金利の追い風が覆い隠さないよう見ていく必要がある。
再編の面では、筑波銀行・東和銀行との広域連携が土台にある。統合の話は今のところ確認できないが、買われる側になる確率は、kabufuの推定で10年以内に19%である。小さく、株価が帳簿より低い銀行は、その対象になりうる。
ガバナンスは、頭取の仲田裕之氏のもとで2025年の損失への対応を進めている段階だ。政策保有株の縮減方針は、確認できた資料の範囲では数字を見つけられなかったので、ここでは評価しない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利は想定より強い追い風になる。栃木銀行は貸出より預金が7,000億円ほど多く、金利が上がるたびに、余っていた資金の運用利回りが上がっていく。貸出の利ざやも、預金金利の遅れで広がる。この構造は、他の地銀より素直に効く。
直近の貸出は1年で12%伸びた。個人・中小企業に加え、中堅・大企業と地方公共団体の貸出も増えている。中計が掲げる栃木県での600億円、首都圏での400億円の積み増しは、この勢いなら前倒しで達成できる。
有価証券の損失は2025年3月期に出し切った。低利回りの債券を手放して短期債へ入れ替えたので、これからの金利上昇はそのまま運用益になる。コア業務純益が200億円を超えれば、当期純利益は130億円を超える。
さらに、筑波銀行・東和銀行との広域連携が統合へ発展すれば、システム費用と本部コストを大きく削れる。足利銀行を持つめぶきFGに対抗する、第二の広域グループが栃木・茨城・群馬にまたがって生まれる。小さい銀行ほど統合効果が大きい。
手数料の面でも、NISAの定着と相続で預かり資産が増え、手数料収入が積み上がる。経費率が改善すれば、ROEは10%近くまで届き、今の値段は大幅に安かったと分かる。
慎重な見方
金利の追い風は、栃木銀行だけのものではない。全国の地銀が同じ恩恵を受け、預金を取り合って預金金利を上げれば、利ざやの広がりは薄まる。預金が余っている強みも、競争で預金金利が上がれば消える。
この銀行の弱点は、過去の数字が示している。ROEの中央値は1.6%で、赤字の年もあった。収益の弱さは、経費の重さと貸出の薄い利ざやから来ている。金利が上がっても、経費は物価で上がる。店舗投資120億円、システム投資90億円は、利益を食う。
直近の貸出の12%増も、見方を変えれば不安だ。急いで積んだ貸出の質は、景気が崩れて初めて分かる。首都圏への400億円の積み増しは、大手行がひしめく市場で、利ざやを削って取りに行くことになりかねない。与信費用は今ほぼゼロで、正常化すれば年に数十億円の負担が戻る。
自己資本比率は9.9%で、貸出が増えるほど薄くなる。還元を増やす余地は小さく、ROEは資本が厚いままでは上がりにくい。債券運用で一度大きな損失を出した経営が、エクイティ投資の枠を倍近くにするのも気がかりだ。
再編でも主役になれない。単独のまま経費が減らず、10年後も資本コストに届かないROEのまま、というのが最も確からしい姿である。
どちらに重みを置いたか
追い風の大きさは強気の見方が正しい。ただ、この銀行が10年後に資本コストを超える稼ぎを出せるかは、過去の実績と経費の構造からは慎重な見方に分がある。確率は中立に最も重く置き、楽観側は優良地銀より薄くした。やや悲観はやや厚めに置いたが、悲観は1割強にとどめた。2025年の損失は、すでに時価総額に織り込まれた失敗として扱い、再発は悲観の筋書きに入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,626 円1,693 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 529 円551 億円)。 今の値に割り戻すと 1,071 円1,115 億円、今との差 +13.3%、 期待の年率 +8.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,792 円2,907 億円 | 755 円786 億円 | +275.3% | +14.1% | 355 円369 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,266 円2,360 億円 | 665 円693 億円 | +210.2% | +12.0% | 674 円702 億円 |
| 中立 | 31% | 1,931 円2,011 億円 | 584 円608 億円 | +166.1% | +10.3% | 780 円812 億円 |
| やや悲観 | 24% | 769 円801 億円 | 361 円376 億円 | +19.6% | +1.8% | 271 円282 億円 |
| 悲観 | 12% | 354 円369 億円 | 271 円282 億円 | −33.8% | −4.0% | 75 円78 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,626 円1,693 億円 | 529 円551 億円 | +128.0% | +8.6% | 2,155 円2,244 億円 |
今の株価時価総額 945 円984 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 首都圏の貸出と広域連携が噛み合う10年 利益 232 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,792 円2,907 億円
短期金利2%、長期金利3%が定着し、預金が貸出より多い構造が利ざやの拡大にそのまま効く。栃木と首都圏の貸出は計画を上回って伸び、与信費用も平均的な水準にとどまる。筑波銀行・東和銀行との広域連携は統合へ進み、システムと本部のコストが大きく減る。足利銀行を持つめぶきFGに対抗できる第二の広域グループができ、経費率は大きく下がる。債券運用は短期債中心で安定し、2025年のような損失は起きない。手数料も預かり資産の拡大で伸びる。ROEは10年後に10%近くまで上がり、地銀の中位から上位へ抜ける最良の10年になる。
- 法人貸出:数量 2.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 323 億円・営業利益 152 億円。残高2.046兆円(名目)× 率1.58%、利益率47%
- 個人貸出:数量 1.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 158 億円・営業利益 58 億円。残高1.17兆円(名目)× 率1.35%、利益率37%
- 市場運用(預け金・有価証券):数量 1.0(運用資金残高(兆円))× 価格 1.5%(調達コスト控除後の運用利回り(%))→ 売上 146 億円・営業利益 96 億円。残高0.972兆円(名目)× 率1.50%、利益率66%
- 手数料(預かり資産・ソリューション):数量 1.7(預かり資産・取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 124 億円・営業利益 47 億円。残高1.65兆円(名目)× 率0.75%、利益率38%
倍率:事業の純利益 232 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.53 倍、時価総額 2,907 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の追い風、首都圏貸出の積み増し、筑波・東和との統合効果が10年すべて噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 23% 計画どおり利ざやが戻り、経費が抑えられる 利益 200 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,266 円2,360 億円
短期金利2%が定着し、貸出と運用の利ざやが広がる。栃木県内の貸出は物価並みに伸び、首都圏の貸出も計画の範囲で積み上がる。与信費用は景気を1〜2周した平均的な水準に戻るが、中計の経費投資は回収が進む。広域連携は共同事業どまりで統合には至らないが、システム投資の負担は分け合える。手数料はNISA定着で堅調に伸び、事業承継やM&Aの仲介も少しずつ積み上がる。ROEは8〜9%まで改善し、資本コストにほぼ並ぶ。金利の追い風を素直に取り込み、小さな銀行として手堅く稼ぐ10年になる。大きな上振れはないが、2025年のような運用の失敗も起きず、自己資本比率も計画どおり10%台へ戻る。株主への還元は、配当を中心に着実に積み上がる。
- 法人貸出:数量 2.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 300 億円・営業利益 134 億円。残高1.984兆円(名目)× 率1.51%、利益率44%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 146 億円・営業利益 50 億円。残高1.134兆円(名目)× 率1.29%、利益率34%
- 市場運用(預け金・有価証券):数量 1.0(運用資金残高(兆円))× 価格 1.5%(調達コスト控除後の運用利回り(%))→ 売上 138 億円・営業利益 88 億円。残高0.95兆円(名目)× 率1.45%、利益率64%
- 手数料(預かり資産・ソリューション):数量 1.6(預かり資産・取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 112 億円・営業利益 40 億円。残高1.55兆円(名目)× 率0.72%、利益率36%
倍率:10年後のROE8.6%(純利益200億円÷自己資本2,325億円)。k8.5%・g4.0%、残る割合1/2でRONIC=8.6%、正当化PER=11.8倍(下限は1÷k=11.8倍)。ROEがkをわずかに上回る姿で、倍率は式の上限と下限が重なる11.8倍に置いた。
確率:中計の方向が10年おおむね維持され、広域連携が緩い協力関係にとどまりつつ経費が抑えられる、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 31% 中立:金利は定常化し、稼ぐ力は資本コストにわずかに届かない 利益 171 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,931 円2,011 億円
10年のうちに短期金利2%、長期金利3%が定着し、貸出と運用の利ざやは高めで安定する。栃木県の貸出は人口減で実質では横ばいに近く、名目でだけ伸びる。首都圏の貸出は積み増せるが、利ざやは大手行との競争で伸びきらない。与信費用は今のほぼゼロから正常な水準へ戻り、本業の利益を年に数十億円削る。経費は物価並みに増え、AI・DXと店舗への投資が重しになる。広域連携は続くが、統合には至らない。足利銀行との差も縮まらず、手数料の伸びもNISA定着後の標準的な水準にとどまる。利益は増えても資本効率は資本コストにわずかに届かないまま10年を終える。
- 法人貸出:数量 1.9(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 279 億円・営業利益 117 億円。残高1.922兆円(名目)× 率1.45%、利益率42%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 137 億円・営業利益 44 億円。残高1.098兆円(名目)× 率1.25%、利益率32%
- 市場運用(預け金・有価証券):数量 0.9(運用資金残高(兆円))× 価格 1.4%(調達コスト控除後の運用利回り(%))→ 売上 129 億円・営業利益 80 億円。残高0.922兆円(名目)× 率1.40%、利益率62%
- 手数料(預かり資産・ソリューション):数量 1.5(預かり資産・取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 102 億円・営業利益 35 億円。残高1.45兆円(名目)× 率0.70%、利益率34%
倍率:事業の純利益 171 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 2,011 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用が景気循環を経て平均に戻る中心の筋書き。経費の重さが残る点を踏まえ、最も重く置く。
やや悲観 24% 再編に乗れず経費が減らない 利益 89 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 769 円801 億円
金利は上がるが、預金の取り合いで預金金利が先に上がり、利ざやの広がりは小さくなる。首都圏の貸出は大手行との競争に負けて量も質も伸びない。県内では足利銀行とネット銀行に顧客を取られ、貸出の量は名目でも伸び悩む。与信費用は予想より重くなる年が続き、店舗とシステムの投資の回収も遅れる。広域連携は具体的な統合に至らない。店舗網の維持費は減らず、人口減が続く県内で顧客基盤が少しずつ細る。再編が進む他の地域との差が開き、ROEは4%前後に沈み、自己資本は積み上がっても稼ぎに結びつかない。中計の純利益130億円という目標にも、10年を通じて届かない年が多く、経営の求心力も弱まる。
- 法人貸出:数量 1.8(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 228 億円・営業利益 75 億円。残高1.782兆円(名目)× 率1.28%、利益率33%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 109 億円・営業利益 27 億円。残高1.008兆円(名目)× 率1.08%、利益率25%
- 市場運用(預け金・有価証券):数量 0.9(運用資金残高(兆円))× 価格 1.2%(調達コスト控除後の運用利回り(%))→ 売上 104 億円・営業利益 57 億円。残高0.864兆円(名目)× 率1.20%、利益率55%
- 手数料(預かり資産・ソリューション):数量 1.3(預かり資産・取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 78 億円・営業利益 21 億円。残高1.25兆円(名目)× 率0.62%、利益率27%
倍率:10年後のROE4.1%(純利益89億円÷自己資本2,151億円)はk8.5%を大きく下回るので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍が上限。構造的に稼ぐ力が落ちた姿で、上限の約7.6割の9.0倍に置いた。
確率:首都圏貸出で利ざやが取れず、与信費用が重くなり、広域連携も止まる想定。10年という期間では停滞する年が相応に混ざる。
悲観 12% 構造的に負け、債券運用か貸出の失敗が重なる 利益 41 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 354 円369 億円
10年のどこかで景気が崩れ、急いで積んだ貸出の質が試される。首都圏の不動産関連や中堅企業の貸出で与信費用が重なり、利益の大半を失う年が続く。金利の変動で有価証券にも評価損が出て、自己資本比率が薄くなり、貸出を絞らざるをえなくなる。県内では足利銀行とネット銀行に預金と貸出の両方を取られ、広域連携も具体的な統合には進まない。エクイティ投資の一部は損失になる。取引先への融資を止めることはなく、地域の銀行としての役割は残るが、稼ぐ力は資本コストを大きく下回り、小さな銀行として苦しい10年を終える。再編の相手としての魅力も落ち、条件のよい統合の機会も逃してしまう。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 147 億円・営業利益 44 億円。残高1.472兆円(名目)× 率1.00%、利益率30%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 73 億円・営業利益 15 億円。残高0.81兆円(名目)× 率0.90%、利益率20%
- 市場運用(預け金・有価証券):数量 0.7(運用資金残高(兆円))× 価格 1.0%(調達コスト控除後の運用利回り(%))→ 売上 68 億円・営業利益 34 億円。残高0.72兆円(名目)× 率0.95%、利益率50%
- 手数料(預かり資産・ソリューション):数量 1.0(預かり資産・取扱高(兆円))× 価格 0.5%(実効手数料率(%))→ 売上 50 億円・営業利益 13 億円。残高1.0兆円(名目)× 率0.50%、利益率26%
倍率:10年後のROE2.1%(純利益41億円÷自己資本1,977億円)はk8.5%を大きく下回り、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍が上限。構造的に負けた姿で、上限の約7.6割の9.0倍に置いた。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。銀行の資産は預金の裏づけのある貸出と債券で、売って現金にできる事業外の資産が乏しいため、床は稼ぐ力で測った。
確率:2025年の運用損失の再来、首都圏貸出の焦げ付き、足利銀行・ネット銀行への顧客流出が10年のどこかで重なる想定。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
栃木県内の中小企業・事業性融資と、首都圏の法人向け貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 1.0% | 155 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 1.5% | 279 | 117 |
取り方:貸出残高2.45兆円のうち、法人・事業性向けを約6割の1.55兆円と置いた(内訳は推定)。利ざやは1.0%。預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を40%と置くと、短期金利が今の1%前後から2%へ上がる間に、中立の利ざやは10年で+0.45%広がる。利ざやは率なので物価では上がらない。残高はお金の量なので名目で伸びる:中立で年2.2%(物価3%に対し、会社の計画の年1%程度と県の人口減を引いた実質-0.8%)。営業利益の欄は経常利益ベースの配分で、与信費用は全社の調整に入れた。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+45%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 0.9% | 77 | 14 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 1.3% | 137 | 44 |
取り方:貸出残高の残り約4割を個人向け0.90兆円と置いた(内訳は推定)。利ざやは0.85%。固定金利が多く上昇の波及は遅いが、預金ベータ40%で中立の利ざやは10年で+0.40%広がる。残高は県の人口減を入れて名目で年2.0%(物価3%、実質-1.0%)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+47%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場運用(預け金・有価証券)
預金の余剰資金を日銀預け金・国債などで運用する部門。貸出より預金が約0.7兆円多い構造が前提。
| 数量運用資金残高(兆円) | 価格調達コスト控除後の運用利回り(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 0.9% | 65 | 30 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.4% | 129 | 80 |
取り方:預金3.17兆円と貸出2.45兆円の差0.7兆円を運用資金とみて、調達コスト控除後の利回りを0.90%とした(有価証券4,203億円と預け金の合計で推定)。2025年3月期の債券売却と入れ替えで低利回りの債券は減っており、金利が上がれば再投資の利回りが上がる。預金の利払いも増えるので、10年で+0.50%程度の広がりとした。残高は預金の増加(名目で年2.5%)に合わせる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+56%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
手数料(預かり資産・ソリューション)
投資信託・保険の販売、事業承継・M&A仲介、決済などの役務収益。
| 数量預かり資産・取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.7% | 70 | 22 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 0.7% | 102 | 35 |
取り方:預かり資産と法人ソリューションの取扱高を合わせて約1.0兆円、実効の手数料率を0.70%と置いた(役務収益は推定)。預かり資産はNISAの定着と相続で名目の伸びが大きく、中立で年3.8%。手数料率は率なので物価では上がらず、低コスト商品への流れで横ばいとした。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。率は10年でほぼ横ばい。二重がけなし)
リスクと懸念
与信費用の正常化と景気の悪化
今の与信費用はほぼゼロで、正常な水準に戻るだけで年に数十億円の負担になる。直近は貸出が1年で12%増えており、急いで積んだ貸出の質は景気が崩れて初めて分かる。純利益が100億円前後の銀行には重い。
債券運用の再失敗
2025年3月期は、低利回りの債券を前倒しで売り、200億円を超える純損失を出した。方針は短期債中心に改めたが、金利が急に動く局面で評価損が出れば、自己資本比率の薄さが一気に表面化する。
経費の重さと投資の回収
中計はAI・DX90億円、人的資本30億円、店舗120億円の投資を見込む。経費は物価でも増えるため、利ざやの広がりが投資の回収を上回らなければ、ROEは資本コストに届かない。過去10年のROEの中央値1.6%が、経費の重さを物語る。
首都圏貸出の競争
中計は首都圏で400億円の貸出増を掲げるが、東京近郊は都市銀行や大手地銀が厚い。利ざやを削って量を取りにいけば、収益に結びつかないまま与信リスクだけを抱える。
預金の取り合いによる利ざやの縮み
預金が貸出より約7,000億円多い構造は、金利上昇の恩恵になる。ただし、足利銀行やネット銀行との預金競争で預金金利が先に上がれば、その恩恵は薄まる。預金ベータ(預金金利が付いていく割合)が想定より高ければ、10年の利益は大きく下振れする。
自己資本の薄さと再編からの取り残し
自己資本比率は国内基準で9.9%と、貸出の急増で下がった。中計は10%台後半を目指すが、貸出を増やしながら資本を厚くするには還元を抑えるしかない。筑波銀行・東和銀行との連携が統合に進まなければ、単独で経費を減らせない。
エクイティ投資の損失
中計はエクイティ投資の約束額を109億円から200億円程度へ広げる。上振れの余地はあるが、市況が悪化すれば損失が出る。債券運用で一度失敗した経営が、リスクの大きい資産を増やす点は慎重に見る。
今後の分かれ目
- 短期金利が2%へ計画より速く上がり、預金金利の上昇が遅れたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出と運用の利ざやの広がりを決算で確認する。
- 与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観に重みを移す。首都圏の貸出で増えたのか、県内中小企業で増えたのかを見る。
- 筑波銀行・東和銀行との連携が統合の協議に進んだら
- 経費の圧縮が見込めるので、楽観側の確率を上げる。条件が買収される形に近ければ、価値の分け方も見直す。
- 有価証券の評価損が再び大きくなったら
- 自己資本の薄さが表面化するとして、悲観側の確率を上げる。運用方針の説明も確認する。
- コア業務純益が中計の200億円に向けて計画より速く増えたら
- 経費の改善が進んでいるとみて、ROEの前提を引き上げる。ただし金利の効果と経費の効果を分けて見る。
- 首都圏貸出の増加が計画を上回りつつ、与信費用が抑えられたら
- 東京近郊の営業が機能しているとみて、法人貸出の数量を上方修正する。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・預金ベータ(預金金利が付いていく割合)
- コア業務純益と経費率(OHR)の推移
- 与信費用の推移と首都圏貸出の質
- 自己資本比率(国内基準)と有価証券の評価損益
- 筑波銀行・東和銀行との連携の進展
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10年後の中立のROEは7.5%で、k 8.5%に届かないので、PERは1÷k=11.8倍が上限になる。その8.5割の10.0倍に置いた。強気側はROEが8.6〜9.8%でk付近のため、正当化PERの式と下限1÷kのうち大きい方の11.8〜12.0倍とした。やや悲観・悲観はROEがkを大きく下回り、構造的に稼ぐ力が落ちた姿なので、上限の約8割にあたる9.0倍に置いた。悲観の床は稼ぐ力(純利益÷k)で見て、帳簿の純資産や過去の底値からは置いていない。kが1%高い(9.5%)と、中立のPERは約9倍に下がる。新リース会計基準(2028/03期から)で営業費用の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.53 倍・中立 PER 10→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.0%を足してk 8.5%(決まりv2)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(債券運用の再失敗・首都圏貸出の質・エクイティ投資)はkに足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せは0。同じ領域の福井銀行(+0.8%)より、規模と収益力の弱さを反映して0.2%上に置いた。