結論
しずおかフィナンシャルグループは、静岡銀行を中核に、静岡県内の法人メインバンクシェア35.48%、主要7業種すべて首位という、東海地方で最も厚い顧客基盤を持つ地方銀行だ。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額(約16,578億円)に対し10年で−32.9%、やや割高と見る。資本コストは8.25%で、10年後の利益だけで測っている。
稼ぎの源は貸出の利ざやだ。短期金利が2%へ向かう間に、貸出の金利は早く上がり、預金の金利は遅れてついてくる。静岡県は人口減が地方の中では緩やかで、県内の貸出量は名目で伸びる。第2次中期経営計画は、2028年度に連結経常利益1,700億円以上、ROE9.5%程度を掲げ、前の計画の8.5%から上積みした。
気になるのは値段だ。2026年3月期の純利益は905億円、ROEは7.3%と、資本コストを下回る。自己資本が1.2兆円と厚く、10年後も中立でROEは8%台にとどまる。事業の質は高いが、資本コストを大きくは超えず、値段に安全域は見えない。
名古屋銀行との経営統合は2028年4月の予定で基本合意したが、最終契約は2027年3月の見込みで、交換比率は未定だ。この分析は今のしずおかFGだけで書いている。統合が成立すれば、今の株主の取り分は薄まる。その見方は、リスクと分かれ目の欄に書いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、事業は好ましい。静岡県内で築いた顧客基盤が、金利の上昇に伴う利ざやの拡大を、ほとんど自動的に利益へ変える。大きな設備投資は要らず、稼いだ利益の半分を株主に返す方針も明確だ。
気になるのは資本効率だ。自己資本が1.2兆円と厚く、ROEは7.3%と資本コストを下回る。利益が育っても、自己資本の積み上がりが重く、10年後のROEは8%台にとどまる。還元を厚くする余地はあるが、会社の目標は配当性向50%以上までで、資本を大きく戻す計画ではない。
予測のしやすさは中程度だ。利ざやは読みやすいが、与信費用と有価証券の評価損は、景気しだいで大きく振れる。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し−32.9%で、今の値段は本質価値を明確に上回り、安全域は無いと見る。良い事業を、安全域の無い値段で持つことになる。
名古屋銀行との統合は、成立すれば規模は得られるが、資本効率の低い銀行を株式交換で取り込む重さがある。その見方は統合が決まってから置き直す。
何で稼ぐ会社か
しずおかフィナンシャルグループは、中核子会社の静岡銀行による静岡県内の法人・個人向け融資と預金業務が収益の土台だ。県内企業のメインバンクシェアは35.48%(約1万5,500社)で、主要7業種すべてで首位を保つ。県内には消費者ローン・不動産融資に強いスルガ銀行や、地域に根付いた清水銀行が競合として存在するが、静岡銀行は規模・取引社数の両面で2位以下を大きく上回る。
法人向けは中小企業の事業性融資を主軸に、上場・大企業向けには証券子会社の静銀ティーエム証券等を通じたM&Aアドバイザリーやソリューション営業を提供する。個人向けは住宅ローンを中心に、資産形成層・相続を控える層まで幅広い顧客基盤を持つ。連結の貸出金は11兆6千億円超、預金は12兆1千億円超(2025年3月末)と、地方銀行の中でも最大級の規模だ。資産運用・ソリューションは、投資信託・保険の販売やNISA関連の預かり資産、法人のM&A・事業承継支援を担う。
2022年に持株会社体制に移行した。名古屋銀行との株式交換による経営統合は2028年4月の予定で基本合意しているが、まだ最終契約前で成立していない。この分析は今のしずおかFG単独で測っている。
優良さと弱いところ
静岡県という大きな経済圏で、法人メインバンクシェア35.48%、主要7業種すべて首位という顧客基盤の厚さが最大の堀だ。県内の信用金庫の存在感が強まる中でも、静岡銀行の優位は崩れていない。いったん決まった取引は簡単には動かず、預金の集めやすさにもつながる。
弱点は資本効率だ。自己資本比率は単純指標で7.7%と地方銀行の中では厚いが、その分ROEは7.3%(2026年3月期)にとどまり、資本コストを下回る。利益が伸びても、自己資本の積み上がりが重く、10年後も中立で8%台だ。人口は2050年に2020年比で約22%減る見通し(社人研)で、地方の中では緩やかだが、県内の貸出量は伸びにくい。
経営の規律は改善傾向にある。第2次中期経営計画「Xover2.0」でROE目標を8.5%程度から9.5%程度へ上積みし、配当性向は2027年度までに累進的に50%以上へ引き上げる方針だ。政策保有株式も縮減を進めるが、千葉銀行のような期限付きの数値目標は開示されていない。
筆者は、この堀を10年先も続く強みと見る。ただ、堀の広さと、払う値段の安全域は別の話だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は、長い低金利が終わり、2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」に入った初期段階にある。短期金利が2%へ上がる過程で、預金の金利は遅れてついてくるため、預貸ざやは構造的に広がる。量が伸びにくい地方銀行にとって、価格で稼ぎを増やせる数十年ぶりの追い風だ。
地方銀行の最大の構造要因は再編だ。「1県1行」への動きが進み、千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行が経営統合で基本合意した。静岡県は東海地方の中でも製造業の集積が厚く、人口減のペースは比較的緩やかだが、長期では他の地域と同様に減っていく。成長の軸は、利ざやと、資産運用・事業承継といった手数料収益に移る。
NISAの拡充と高齢化に伴う相続需要は、資産運用の分野の追い風だ。県内では、スルガ銀行や清水銀行との競争、信用金庫の健闘も続くが、静岡銀行の規模とブランド力は当面揺るがないと見る。ネット銀行や証券会社との預金の取り合いは、強まる方向にある。
10年後は短期2%・長期3%が定着する。その中で地方銀行の差は、利ざやの広がりと、人口減で縮む量をどこで補うかで決まる。
資本政策と M&A
株主還元は、2027年度までに配当性向を累進的に50%以上へ引き上げ、2028年度以降も50%以上を維持する方針だ。2026年度の年間配当は前年度から増配を予定する。これに加えて、自社株買いを機動的に実施している。政策保有株式も縮減する方針だが、具体的な数値目標は開示資料ごとに異なる。
名古屋銀行とは、しずおかFGを完全親会社、名古屋銀行を完全子会社とする株式交換で基本合意した(2026年3月)。日程は、2027年3月に最終契約、2027年12月に名古屋銀行の臨時株主総会、2028年4月1日に効力発生の予定だ。交換比率は未定で、成立していない。成立すれば、名古屋銀行の株主に新しい株が渡り、今の株主の取り分は薄まる。名古屋銀行は自己資本比率が4.8%、ROEが5%程度で、しずおかFGより低い。この分析は統合を織り込まず、単独で測っている。
TOB(株式公開買い付け)の標的になる可能性は低いと見る。しずおかFGは再編を主導する側に立つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に向かう過程で、法人・個人の貸出利ざやは構造的に広がる。しずおかFGは2026年3月期に純利益905億円と過去最高益を更新し、2027年3月期はさらに増える見込みだ。第2次中期経営計画が掲げる2028年度の連結経常利益1,700億円以上・ROE9.5%程度は、前の計画の8.5%からの上積みで、この勢いを延ばせば射程に入る。
静岡県内で法人メインバンクシェア35.48%、主要7業種すべて首位という顧客基盤は、スルガ銀行・清水銀行や信用金庫の追随を許さない水準だ。静銀ティーエム証券を通じたM&A・資産運用ソリューションの拡大は、手数料収益を後押しする。
配当性向50%以上への累進的な引き上げと、機動的な自社株買いで、株主への還元も厚くなる。静岡県は東海地方の中でも人口減が緩やかで、貸出の量が名目で伸び続ける余地がある。地方銀行の中で最大級の規模と、最も確立した地域基盤を持つことは大きい。再編が進む業界で、規模と地盤を両方持つ側に立てる。
慎重な見方
金利が上がる過程は、利ざやの拡大と同時に、県内の中小企業の資金繰りを厳しくし、与信費用を押し上げる副作用も伴う。世界的な信用収縮が来れば、有価証券の評価損と与信費用が重なり、資本とROEが一時的に大きく傷む。
問題は資本効率だ。自己資本が1.2兆円と厚く、ROEは7.3%と資本コストを下回る。利益が育っても、自己資本の積み上がりが重く、10年後のROEは8%台にとどまる。ROEが資本コストの近辺にある限り、利益の伸びは1株の価値に届きにくい。
静岡県内の貸出需要は、人口減少と企業の内部留保志向で伸びが鈍い。利ざや拡大の効果が一巡すれば、成長の軸は手数料収益に移るが、東海地方では証券会社やデジタル専業銀行との競争も強まっている。
今の株価は、県内首位という既知の強みと、中期経営計画の順調な進みをすでに織り込んでいる。金利正常化のペースが計画より遅れるだけでも、割高に見える値段である。
手数料も安心できない。事業承継やM&Aの助言は景気に左右され、案件の数は読みにくい。投資信託や保険の販売は、市況が悪くなれば一気に細る。利ざや、手数料、売却益のどれもが、いまの追い風に乗った数字だと見るのが慎重な見方である。
どちらに重みを置いたか
金利正常化の恩恵が、県内の厚い顧客基盤にほぼ自動的に効く点は、強気の見方のほうが説得力がある。一方で、ROEが資本コストの近辺にとどまること、人口減で量が伸びないこと、利益が景気と金利の追い風に乗っていることは、慎重な見方の指摘が重い。事業の質は高いが、値段は利益の伸びと自己資本の厚さで決まる。中立に最も重みを置き、悪い側(やや悲観と悲観の合計)を10年で35%とした。統合の成否は確率に入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,144 円1.63 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,153 円5,997 億円)。 今の値に割り戻すと 2,199 円1.14 兆円、今との差 −25.5%、 期待の年率 +3.8%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,828 円3.03 兆円 | 1,631 円8,478 億円 | +152.6% | +9.7% | 746 円3,877 億円 |
| やや楽観 | 24% | 4,573 円2.38 兆円 | 1,437 円7,473 億円 | +103.6% | +7.4% | 1,443 円7,499 億円 |
| 中立 | 31% | 3,385 円1.76 兆円 | 1,247 円6,482 億円 | +56.9% | +4.6% | 1,436 円7,465 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,736 円9,023 億円 | 999 円5,195 億円 | −7.4% | −0.8% | 602 円3,128 億円 |
| 悲観 | 13% | 254 円1,319 億円 | 300 円1,561 億円 | −81.2% | −15.4% | 72 円374 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,144 円1.63 兆円 | 1,153 円5,997 億円 | +45.6% | +3.8% | 4,298 円2.23 兆円 |
今の株価時価総額 2,953 円1.53 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 金利が高く定着し、静岡の地盤と手数料がともに伸びる 利益 2,178 億円 · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 5,828 円3.03 兆円
短期金利2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは高い水準で安定する。静岡県内で法人メインバンク35%、主要7業種すべて首位という基盤が、その差をそのまま利益に変える。静銀ティーエム証券を通じた事業承継やM&A、資産運用の手数料が育ち、非金利収益が貸出に並ぶ柱になる。政策保有株の縮減で浮いた資本は、配当性向50%以上の還元に加えて自社株買いに回る。与信費用は低いまま。純利益は2,180億円ほどに育ち、ROEは11%台に届く。名古屋銀行との統合の有無は、この筋書きの前提に入れていない。単独でも、地方銀行の中で資本効率の高い側に立つ姿だ。
- 法人貸出:数量 11.1(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 2.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 2,413 億円・営業利益 1,460 億円。単体:残高等 11.1 兆円 × 率 2.17%、利益率 60%
- 個人貸出:数量 7.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,357 億円・営業利益 795 億円。単体:残高等 7.2 兆円 × 率 1.88%、利益率 59%
- 資産運用・ソリューション:数量 9.0(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 826 億円・営業利益 496 億円。単体:残高等 9.0 兆円 × 率 0.92%、利益率 60%
倍率:事業の純利益 2,178 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.9 倍。全体の PER 13.91 倍、時価総額 30,296 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が高く定着し、手数料も伸びる上振れ。静岡の人口減がある中で全部がそろう筋書きは起きにくく、10%にとどめる。
やや楽観 24% 利ざやが広がり、手数料の柱が県内の細りを補う 利益 1,812 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 4,573 円2.38 兆円
金利は想定どおりに上がり、貸出の利ざやは広い水準が続く。静岡県は人口減が緩やかな地域で、県内の貸出量は名目で伸びる。法人向けの役務と預かり資産の手数料は、NISAの定着と相続需要を取り込んで着実に伸びる。経費は物価並みに抑えられ、与信費用は平時の水準。政策保有株の縮減は終わり、自社株買いが続く。純利益は1,810億円ほど、ROEは9%台後半。第2次中期経営計画が掲げる2028年度のROE9.5%程度を、その先も保つ姿である。地盤の厚さは変わらず、静岡銀行のブランドと取引の深さが10年先も顧客をつなぎ止める。大きな上振れ要因は少ないが、崩れる要素も少ない。
- 法人貸出:数量 10.3(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,916 億円・営業利益 1,169 億円。単体:残高等 10.3 兆円 × 率 1.86%、利益率 61%
- 個人貸出:数量 6.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,090 億円・営業利益 633 億円。単体:残高等 6.8 兆円 × 率 1.61%、利益率 58%
- 資産運用・ソリューション:数量 8.2(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 750 億円・営業利益 441 億円。単体:残高等 8.2 兆円 × 率 0.92%、利益率 59%
倍率:事業の純利益 1,812 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.12 倍、時価総額 23,773 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が想定どおりに進み、県内の地盤が保たれる。地方銀行の標準よりやや良い筋書きとして24%を置く。
中立 31% 金利は定着し、人口減が量を抑えて利益は緩やかに伸びる 利益 1,452 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,385 円1.76 兆円
10年のあいだに短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは高めの水準で安定する。静岡県の人口は減るが、減り方は地方の中では緩やかで、貸出は名目で年2.5〜3%伸びる。与信費用は景気を1〜2周してならした水準に戻る。政策保有株の縮減は終わり、売却益は繰り返せない一時の利益として外れる。純利益は1,450億円ほど、ROEは8%強で、資本コストとほぼ並ぶ。県内シェア首位の地盤は崩れないが、伸びは物価並みにとどまる。名古屋銀行との統合が成立した場合の姿は、この筋書きに含めていない。統合は成立すれば効果も摩擦も別に生まれるので、別の話として扱う。
- 法人貸出:数量 9.4(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,505 億円・営業利益 879 億円。単体:残高等 9.4 兆円 × 率 1.60%、利益率 58%
- 個人貸出:数量 6.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 878 億円・営業利益 481 億円。単体:残高等 6.3 兆円 × 率 1.40%、利益率 55%
- 資産運用・ソリューション:数量 7.4(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 681 億円・営業利益 385 億円。単体:残高等 7.4 兆円 × 率 0.92%、利益率 56%
倍率:事業の純利益 1,452 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 17,598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気をならした水準に戻る。人口減で量は伸びない。最も重みを置く中心の筋書きで31%。
やや悲観 22% 預金競争と人口減が、利ざやの拡大を食う 利益 827 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 1,736 円9,023 億円
金利の正常化は進むが、静岡県内の人口減が想定より速く、貸出量の伸びが鈍る。ネット銀行や証券会社との預金の取り合いが強まり、預金金利が貸出金利に追いつく速さも速い。県境を越えた愛知・東海への展開も、デジタル専業の銀行や証券会社に阻まれる。与信費用は平均より高めに推移する。純利益は830億円ほど、ROEは5%台に落ちる。地盤は守られ危機にはならないが、優良とは呼べない水準にとどまる。資産運用の手数料も市況の悪化で鈍る。配当は維持するが、自社株買いに回す余力は小さい。県内の地盤が崩れるわけではなく、メインバンクとしての取引は続く。翌年度以降に立て直す土台は残る。
- 法人貸出:数量 8.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 981 億円・営業利益 456 億円。単体:残高等 8.0 兆円 × 率 1.22%、利益率 46%
- 個人貸出:数量 5.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 585 億円・営業利益 283 億円。単体:残高等 5.5 兆円 × 率 1.07%、利益率 48%
- 資産運用・ソリューション:数量 6.2(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 549 億円・営業利益 273 億円。単体:残高等 6.2 兆円 × 率 0.88%、利益率 50%
倍率:10年後のROE5.2%(純利益827億円÷自己資本15782億円)はk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「預金競争と人口減が、利ざやの拡大を食う」。上限の9割に置き、10.91倍。
確率:預金競争と人口減で利ざやの拡大が目減りし、与信費用も重い。構造的に負けるほどではないが、22%を置く。
悲観 13% 人口減で貸出需要が縮み、利ざやも与信費用に食われる 利益 136 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 254 円1,319 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、静岡県内の与信費用が急増する。人口減が想定を超えて加速し、貸出需要そのものが縮む。有価証券の評価損も重なり、利益はほとんど消える。純利益は140億円まで落ち、ROEは1%前後になる。減配や資本の積み上げを迫られ、再編の相手を探す立場に戻る。県内シェア首位の地盤は残るが、収益力は資本コストを大きく下回る。10年の途中までは利益が出て配当も払われるが、終盤には優良な地方銀行とは見られなくなる。還元の合計は、危機前までの内部留保と政策保有株の売却で払った分を含み、単年の純利益では支えられない。
- 法人貸出:数量 7.2(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 282 億円・営業利益 43 億円。単体:残高等 7.2 兆円 × 率 0.39%、利益率 15%
- 個人貸出:数量 4.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 164 億円・営業利益 21 億円。単体:残高等 4.8 兆円 × 率 0.34%、利益率 13%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.0(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.3%(実効手数料率等(%))→ 売上 150 億円・営業利益 28 億円。単体:残高等 5.0 兆円 × 率 0.30%、利益率 19%
倍率:10年後のROE1.1%(純利益136億円÷自己資本12800億円。有価証券の評価損と与信費用で自己資本は流れより低い)はk8.25%以下なので、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「人口減で貸出需要が縮み、利ざやも与信費用に食われる」。稼ぐ力が細っていく構造から上限の8割に置き、9.70倍。今の自己資本12,318億円に対する倍率は約0.11倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:人口減の加速と景気悪化が重なる構造的な負けの筋書き。静岡の人口減は地方の中では緩やかなので、13%を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
静岡県内の中小企業向け事業性融資と、上場・大企業向けのM&Aアドバイザリー・ソリューション関連の貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.0 | 1.2% | 805 | 480 |
| 10 年後 中立 | 9.4 | 1.6% | 1,505 | 879 |
取り方:連結貸出金11兆6千億円超のうち法人・事業性向けを約6割の7.0兆円とおき、利ざやを1.15%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.27%、10 年で +0.45% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.0%(物価 3% + 実質 +0.0%)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+39%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。資産形成層・相続を控える層への対応も含む。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.9 | 1.0% | 490 | 290 |
| 10 年後 中立 | 6.3 | 1.4% | 878 | 481 |
取り方:貸出金残高の残り約4割を個人向け4.9兆円とおき、住宅ローン中心の利ざやを1.0%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.24%、10 年で +0.40% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 2.5%(物価 3% + 実質 -0.5%、地元の人口減を含む)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+40%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
資産運用・ソリューション
投資信託・保険等の預かり資産業務と、静銀ティーエム証券等を通じたM&Aアドバイザリー・事業承継支援の非金利収益。
| 数量預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 0.9% | 460 | 270 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 0.9% | 681 | 385 |
取り方:預かり資産残高とM&A・事業承継等の取扱高合計を5.0兆円、実効手数料率を0.92%とおいた。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.0%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。(点検 2026-10-19・R23b:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。手数料率は値上げの開示がないので、10 年を通して中立・楽観とも 0.92% の横ばいに置いた(やや悲観・悲観は競争で下がる)。二重がけなし)
リスクと懸念
資本効率の低さ(ROEが資本コストの近辺)
自己資本が1.2兆円と厚く、ROEは7.3%(2026年3月期)で資本コストの8.25%を下回る。利益が育っても、自己資本の積み上がりが重く、10年後もROEは8%台にとどまる。還元を厚くしない限り、利益の伸びは1株の価値に届きにくい。
与信費用と有価証券の評価損
金利が上がる局面では、取引先の返済負担が増え、与信費用が上がりやすい。世界的な信用収縮や金利の急上昇で評価損が出れば、自己資本が削られ、配当や自社株買いに響く。与信費用は今が低い「いい時期」で、平常に戻るだけでも利益は減る。
今期の利益に追い風が重なっている
2026年3月期の純利益905億円は過去最高で、2027年3月期はさらに増える予想だ。金利の上昇が想定より早く進み、政策保有株の売却益も加わっている。売却益は繰り返せない。今期の水準をそのまま続く利益と見ると、先の利益を高く見積もってしまう。
県内の人口減少と貸出需要の縮小
静岡県の人口は、2050年に2020年比で約22%減る見通し(社人研)。減り方は地方の中では緩やかだが、住宅ローンや中小企業の資金需要の量は伸びにくい。伊豆などの地域では減少が深刻で、利ざやの拡大の果実が量の減少で目減りする。
預金の競争
利ざやは、預金金利が貸出金利にどれだけ遅れて付いてくるかで決まる。ネット銀行や証券会社、信用金庫との預金の取り合いが強まれば、利ざや拡大の果実は預金者に流れる。預金の確保に費用がかかる。
名古屋銀行との統合(成立すれば)
名古屋銀行との株式交換は、最終契約が2027年3月の見込みで、交換比率は未定だ。成立すれば、新しい株が名古屋銀行の株主に渡り、今の株主の取り分は薄まる。名古屋銀行は自己資本比率4.8%、ROE5%程度としずおかFGより低く、資本効率の低い銀行を取り込むことになる。この分析は統合を織り込んでいないので、成立すれば筋書きを置き直す。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%に向けて想定より速く上げたら
- 貸出の利ざやが早く広がるので、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし預金の競争も強まるので、預金金利の付き方を同時に確かめる。
- 静岡県内の与信費用が急に増え始めたら
- やや悲観・悲観の確率に重みを移す。利益の落ち込みが配当と自社株買いに早く響く。
- 名古屋銀行との最終契約で交換比率が公表されたら
- 名古屋銀行の自己資本・利益・交換比率から、今の株主の取り分を計算し直す。単独の筋書きは使えなくなる。資本効率の低い銀行を取り込む希薄化と、統合の費用を確かめてからだ。
- 配当性向が50%を大きく超える水準へ引き上げられたら
- 自己資本の積み上がりが抑えられ、ROEが上がる。利益の伸びが同じでも、10年後の見方が変わるので、筋書きを置き直す。
- 2028年度の連結経常利益1,700億円以上・ROE9.5%程度の目標を前倒しで達成したら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただし売却益や金利の追い風で達成していないか、ならした利益で確かめる。
- 地銀の再編が加速し、競合が広域の大型統合を次々に発表したら
- 規模の差が広がり、統合に乗った会社と乗らなかった会社の二極化が進む。単独での預金・貸出の競争力が保てるかを注視する。
見ておくもの
- 貸出の利ざや、預金金利の付き方(資金利益の伸び)
- 与信費用、有価証券の評価損益、自己資本比率
- 配当性向・自社株買いの水準と、自己資本の積み上がり(ROEの推移)
- 第2次中期経営計画(2028年度の経常利益1,700億円以上・ROE9.5%程度)の進み
- 名古屋銀行との最終契約(2027年3月見込み)と交換比率の公表
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。ROEがk(8.25%=基本7.5%+quality +0.75%)を超える楽観・やや楽観は、g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を出し、その9.5・9.2割、下限の1÷k=12.1倍を割らない範囲に置いた。中立(ROE8.2%でkをわずかに割る)・やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その9.9・9・8割に置いた。悲観の利益は、貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、ROE約1%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。名古屋銀行との統合は未成立なので織り込んでいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.22→13.91 倍・やや楽観 PER 12.07→13.12 倍・中立 PER 11.99→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスクは k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。