結論
豊和銀行は、大分市に本店を置く第二地方銀行だ。貸出は 4,395 億円、預金は 5,626 億円。2026 年 3 月期の純利益は 8.2 億円だった。筆者は、普通株の本質価値は今の時価総額 28.6 億円を大きく下回ると見る。
最大の理由は優先株だ。純資産 278 億円のうち 220 億円は、公的資金を含む 3 種類の優先株が占める。優先株は、普通株より先に配当と残余財産を受け取る。しかもいずれも 2029〜2034 年に普通株へ替わる定めがあり、その時に普通株は大きく薄まる。会社全体の利益が増えても、普通株主に届くのは一部にすぎない。
二つ目は稼ぐ力だ。金利が上がれば貸出の利ざやは広がり、会社全体の純利益は 10 年で 15 億円前後まで増える。それでも ROE(自己資本利益率)は 4% 台で、資本コスト 8.5% に届かない。
三つ目は資産の質だ。不良債権比率は 5.4% と高く、国内基準の自己資本比率は 1 年で 10.7% から 8.4% に落ちた。公的資金の残り 90 億円を 2029 年 3 月までに返す約束が、資本の余裕をさらに食う。
この銀行を、筆者は「悪い銀行」とは見ない。地元に根を張り、コア業務純益も計画を超えた。ただ、普通株の持ち主が受け取れる分は、優先株が先に取った後の残りだ。今の値段は、その残りを高く見積もりすぎている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えるが、普通株主にとっては見かけほど安くない株だ。普通株の時価総額は 28.6 億円で、1 株純資産に対する倍率は約 0.5 倍。しかし純資産 278 億円の 8 割は優先株のものだ。
普通株主の取り分は、会社全体の価値から優先株の取り分を引いた残りになる。純利益 8 億円に妥当な倍率を掛けても、会社全体の価値は 100 億円前後。優先株の額面 220 億円を下回る。優先株が先に取り、残りが普通株に届く形なので、普通株は小さなオプションに近い。
オーナーとして持ち続けたい事業ではない。地域に根ざしてはいるが、ROE は資本コストの半分にも届かず、稼ぎは優先株の返済に回り続ける。優先株の整理が済み、コア業務純益が 25 億円を超えて初めて、普通株を検討する価値が出る。それまでは安全域がない。
ただし、悲観ばかりでもない。金利が上がる間は利益が伸び、コア業務純益はすでに計画を超えている。優先株の返済が順調に進み、薄まりが小さく済むなら、普通株の価値は今の見積もりより大きくなる。筆者はその確率を、楽観側の 25% 前後と見ている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、大分県の中小企業への貸出だ。貸出 4,395 億円のうち、事業性と公共向けが約 8 割、個人が約 2 割を占める。業種別では不動産業向けが 28.5% で最大、各種サービス業が約 20% で続く。2026 年 3 月期は事業性貸出が 139 億円増え、個人ローンは 28 億円減った。
預金は 5,626 億円と貸出を上回り、余った資金は有価証券 1,128 億円と日銀預け金に回す。中身は国債・地方債・社債が中心で、株式は 49 億円と小さい。預金の調達費用は 3.4 億円から 11.1 億円へ 3 倍になった。金利上昇の恩恵と同時に、預金を守るコストも出ている。
手数料は薄い。役務取引等収益は 13.1 億円あるが、保証料などの費用を引くと 2.1 億円しか残らない。本業の稼ぎは、ほぼ貸出の利ざやだと言ってよい。
2026 年 3 月期は、経常収益が 120 億円、経常利益が 12.1 億円、純利益が 8.2 億円だった。経常利益は株式等の売却益 7.6 億円に支えられ、債券の売却損 4.5 億円と、貸倒関連の費用 12.8 億円がそれを削った。本業の利益を示すコア業務純益は 18.5 億円で、中期計画の 16.2 億円を上回った。2027 年 3 月期の純利益は 8.3 億円の予想だ。
預金の中身は、普通預金などの流動性預金が 3,345 億円、定期預金などが 2,114 億円。従業員は 509 人で、経費は 68 億円。収益の 8 割近くが経費に消える体質が、この銀行の最大の課題で、中期計画の柱も経費率の引き下げに置かれている。
優良さと弱いところ
良さは、地元への根の深さと、返済を急ぐ姿勢だ。大分県を中心に 40 前後の店舗を持ち、経営改善の支援(Vサポートと応援ファンド)を営業の軸に据える。コア業務純益は計画を超えた。公的資金 160 億円のうち 70 億円は、2025 年 8 月に前倒しで返した。
弱さは三つある。一つ目は資本の薄さだ。単純な自己資本比率は 4.7%、国内基準でも 8.4% に下がった。二つ目は資産の質だ。危険債権は 213 億円あり、貸倒引当金 49 億円の 4 倍を超える。三つ目は規模の小ささだ。県内には貸出 2.5 兆円規模の大分銀行がいて、豊和は二番手以下として貸出の金利を競う側に回る。
資本の配分は、普通株に厳しく、優先株に手厚い。普通配当は純利益の 1 割台にとどまる。自社株買いに使った 70 億円は、普通株でなく公的資金の優先株の買い戻しだった。強い堀と呼べるものはない。
株主の顔ぶれも特徴だ。普通株は、従業員持株会、福岡銀行、南日本銀行、宮崎太陽銀行など九州の銀行や地元企業が分け持つ。九州の第二地銀どうしが持ち合う構図で、積極的に買収に動く株主は見当たらない。経営の独立は保たれるが、市場から規律をかける力も弱い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、2024 年の政策金利の解除で「金利のある世界」に入った。短期金利が 2% へ上がる間、貸出の金利は先に上がり、預金の金利は遅れて追う。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、貸出の利ざやは今より 0.3% ほど広い水準で安定する。豊和は手形貸付と当座貸越だけで 630 億円あり、短期の金利の上昇を取り込みやすい。ただし預金の取り合いで、広がりの半分近くは預金金利に消える。
大分県の人口は約 106 万人。国の推計では 2050 年に 84 万人と、2020 年から 25% 減る。貸出需要は名目でも伸びにくい。観光の回復は追い風だが、貸出の伸びは年 2〜3% が精一杯だ。
競争は、県内の寡占と県境を越える再編の二つだ。県内では大分銀行が首位に立つ。豊和の B 種優先株を持つ西日本シティ銀行は九州で提携を広げ、福岡の大手地銀も貸出を狙う。九州でも広域の再編が進み、小さな単独行は選択を迫られる。
循環の位置は、与信費用が低い時期の終わりに近い。物価高と人手不足で中小企業の業績が悪化し、豊和でも貸倒関連の費用が前期の 6 億円から 13 億円へ増えた。10 年のうちに、景気の山と谷を 1〜2 回は経験すると見るのが自然だ。
同じ九州の第二地銀では、南日本銀行と宮崎太陽銀行が 2022 年に公的資金を早めに返した。いずれも新しい優先株を発行して返しており、豊和の 2024 年の F 種の発行も同じ型だ。優先株で優先株を返す手は、資本の厚みを保つ代わりに、普通株の取り分を後ろへ回す。
資本政策と M&A
資本の使い方は、優先株の整理が最優先で、普通株には厚くしない形だ。普通配当は据え置きで、総額は 0.6 億円、純利益の 1 割台。一方、優先配当は年 4 億円近くで、2027 年 3 月期は 4.1 億円に増える見込みだ。
優先株は 3 種類ある。B 種(30 億円、西日本シティ銀行が保有)は配当が 0.8% で、2029 年 9 月までに請求がなければ普通株へ替わる。D 種(90 億円、公的資金で整理回収機構が保有)は 2029 年 3 月が返済期限で、配当は市場金利に連動して上がる。F 種(100 億円、2024 年に発行)は配当 1.85% で、2034 年 2 月に普通株へ替わる。
2025 年 8 月に、D 種 160 億円のうち 70 億円を現金で返した。その結果、自己資本は 340 億円から 278 億円に減り、国内基準の比率は 2 ポイント余り下がった。残る 90 億円も同じ道なら、資本はさらに薄くなる。再編や TOB の話は、今のところ出ていない。筆者は、返済の資金をどう作るかを重く見る。新しい優先株で借り換えれば、薄まりは先送りされるだけだ。
普通株の主な保有者は従業員持株会や九州の銀行で、自社株買いは行っていない。株主還元の優先順位は、優先配当、普通配当の順で、普通株の増配は当面見込みにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
豊和銀行の利益は、これから金利で底上げされる。短期金利が 0.75% から 2% へ上がれば、短期の貸出の金利は先に上がる。手形貸付と当座貸越だけで 630 億円あり、利ざやの広がりを取りやすい。コア業務純益はすでに計画を超えた。2026 年 3 月期の 18.5 億円から、2028 年 3 月期には 22.7 億円へ伸ばす計画で、足もとの進み方は計画より速い。
経費率は 66% から 60% へ下げる計画だ。拠点の統合とデジタル化が進めば、人口が減っても利益は守れる。貸出は事業性が 139 億円伸び、経営改善の支援先も取引先の 9% まで広がった。
公的資金は 70 億円を返し終え、残りは 90 億円。2029 年の期限に向けて、返済の道筋は見えている。優先株が片づけば、利益は普通株へ戻り、普通株の価値は一気に回復する。株価が 1 株純資産の半分という見方は、その回復をまだ織り込んでいない。
九州では、南日本銀行や宮崎太陽銀行が公的資金を早めに返した。豊和も同じ道をたどれる。西日本シティ銀行が B 種を持ち続けているのは、豊和を支える意思の表れだと読める。
慎重な見方
利益が増えても、普通株には届かない。純資産 278 億円のうち 220 億円は優先株で、配当だけで年 4 億円を超える。純利益 8 億円の半分は、優先株の持ち主に出ていく。普通株に帰属する利益は 4 億円で、配当は据え置かれたままだ。
転換の条件も重い。F 種は 2034 年に、下限のある価格で普通株へ替わる。下限は今の普通株の価格より低く、株価が下がるほど、新しく出る株は多くなる。普通株の持ち分は、悪ければ 1 割を切る。
資産の質も心配だ。危険債権は 213 億円で、貸倒引当金は 49 億円しかない。不動産業向けが貸出の 28.5% を占める。国内基準の自己資本比率は 8.4% に落ち、最低基準の 4% との余裕は 4 ポイント台になった。大分銀行が首位に立つ県で、人口は 2050 年までに 25% 減る。10 年後の純利益が 15 億円まで伸びても、ROE は 4% 台にとどまる。
預金のコストも重い。預金利息は 1 年で 3 倍になり、定期預金は 2,100 億円を超える。金利が上がるほど、預金の取り合いで利ざやの広がりは削られる。増益の見通しは、預金金利の追随が遅いという前提に頼っている。
どちらに重みを置いたか
優先株の重さと薄い ROE が、金利の追い風を上回ると見る。中立の 10 年後、会社全体の時価総額は 116 億円。優先株が転換した後の普通株の取り分は約 1 割で、普通株の価値は 11 億円ほどだ。今の時価総額 28.6 億円を下回る。確率は、楽観を金利と経費の改善が計画を大きく超える道に限って 8% にとどめ、悲観を資産の質の悪化と優先株の借り換えの失敗が重なる道として 12% と厚めに置いた。強気の見方が突く金利の追い風と計画超えの進み方は本物だが、普通株主に届く前に優先株が先に取る。利益の伸びより、取り分の薄まりの方が大きい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 287 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 93 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 189 円11 億円、今との差 −60.2%、 期待の年率 −2.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 875 円52 億円 | 169 円10 億円 | +120.3% | +8.2% | 84 円5 億円 |
| やや楽観 | 17% | 480 円28 億円 | 116 円7 億円 | +25.7% | +2.3% | 101 円6 億円 |
| 中立 | 38% | 288 円17 億円 | 92 円5 億円 | −19.7% | −2.2% | 145 円9 億円 |
| やや悲観 | 25% | 77 円5 億円 | 76 円4 億円 | −67.8% | −10.7% | 38 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 55 円3 億円 | 49 円3 億円 | −78.0% | −14.0% | 13 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 287 円17 億円 | 93 円5 億円 | −19.8% | −2.2% | 380 円22 億円 |
今の株価時価総額 474 円28 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:金利の追い風と経費の圧縮が計画を超え、純利益が 28 億円へ 利益 28 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 875 円52 億円
短期金利 2% が定着し、事業性貸出の利ざやが今より 0.35% ほど広がる。経営強化計画の経費率 60% が達成され、拠点の統合とデジタル化で経費の伸びは物価の半分ほどに収まる。貸出は名目で年 3% 伸び、事業性貸出は 4,900 億円、個人向けは 920 億円になる。
与信費用は貸出の 0.2% 前後と低位で、不動産市況も崩れない。会社全体の純利益は 28 億円、ROE は 7% 台に乗る。D 種の公的資金は、利益の積み上げと新しい優先株で期限までに片づく。優先株が普通株へ替わっても、利益の水準が高いので、普通株の持ち分は 16% 近くまで保たれる。配当は、優先配当に加えて普通配当も増える。大分県内では、豊和が事業承継や M&A の仲介で存在感を高め、手数料の収益が今の 2 倍に育つ。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 105 億円・営業利益 24 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。n
- 有価証券・資金運用:数量 0.2(有価証券+預け金の残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 13 億円・営業利益 10 億円。n
- 手数料・その他収益:数量 0.7(預金・譲渡性預金の残高(兆円))× 価格 0.00(預金残高あたりの手数料・その他収益率)→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。n
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 330 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の追い風が強く、経費率の改善が計画を超え、与信費用も低位で済む三つが重なる例外の道。小さな第二地銀では難しく、8% に置いた。
やや楽観 17% やや楽観:中期計画のコア業務純益 22.7 億円を達成し、純利益が 21 億円に 利益 21 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 480 円28 億円
2028 年 3 月期にコア業務純益 22.7 億円を達成し、以後は金利の追い風と貸出の伸びで増益が続く。貸出は名目で年 2.7% 伸び、事業性貸出は 4,790 億円、個人向けは 900 億円になる。利ざやは今より 0.30% ほど広がる。
経費は物価と賃金で増えるが、経費率は 60% 台前半へ下がる。与信費用は貸出の 0.25% 前後で、不良債権比率は 4% 台に下がる。D 種は期限までに、現金か借り換えで整理される。会社全体の純利益は 21 億円、ROE は 6% 近く。優先株は 2034 年までに普通株へ替わるが、利益が伸びる分、普通株の持ち分は 11% 台で踏みとどまる。経営改善の支援先が広がり、手数料と取引先の売上が貸出の伸びを支える。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 101 億円・営業利益 17 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・資金運用:数量 0.2(有価証券+預け金の残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 12 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・その他収益:数量 0.7(預金・譲渡性預金の残高(兆円))× 価格 0.00(預金残高あたりの手数料・その他収益率)→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。n
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 248 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:コア業務純益が 2028 年 3 月期に 22.7 億円の計画へ届き、その後も金利の追い風で伸びる道。足もとが計画を上回っているので、17% を置いた。
中立 38% 中立:利ざやの回復で純利益は 15 億円まで伸びるが、ROE は 4% 台にとどまる 利益 15 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 288 円17 億円
短期金利 2%・長期 3% が定着し、貸出の利ざやは今より 0.25% 前後広い水準で落ち着く。ただし預金の取り合いで、広がりの半分近くは預金金利に消える。貸出は名目で年 2.5% の伸びにとどまり、事業性貸出は 4,680 億円、個人向けは 870 億円になる。
経費は物価と賃金で 10 年に 1.34 倍に増え、経費率は 70% 台まで下がる程度だ。与信費用は貸出の 0.27% で、今より少し重い。有価証券の売却益は剥げるので、利益には入れない。会社全体の純利益は 15 億円、ROE は 4.4%。D 種は 2029 年に普通株へ替わり、B 種も続く。F 種は 2034 年に下限で転換する。普通株の持ち分は 1 割を切る水準まで下がる。配当は優先配当が先で、普通配当は小幅の増配にとどまる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 96 億円・営業利益 10 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。n
- 有価証券・資金運用:数量 0.2(有価証券+預け金の残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 8 億円。n
- 手数料・その他収益:数量 0.7(預金・譲渡性預金の残高(兆円))× 価格 0.00(預金残高あたりの手数料・その他収益率)→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。n
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 175 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の追い風と、人口減・預金競争・与信費用が拮抗する標準の道。足もとの資産の質と優先株の重さを踏まえ、最も重く 38% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:預金競争と与信費用が利ざやの回復を食い、純利益は 7 億円どまり 利益 7 億円 · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 77 円5 億円
大分銀行や西日本シティ銀行が預金の金利で攻め、豊和は預金を守るために金利を上げ続ける。貸出の利ざやは今より 0.15% ほどしか広がらない。貸出は名目で年 1.5% の伸びで、事業性貸出は 4,390 億円、個人向けは 810 億円になる。
不動産業向けの貸倒が増え、与信費用は貸出の 0.4% を超える。経費は人員の削減で物価ほど増えないが、収益の減りを埋めきれない。純利益は 7 億円で、優先配当と普通配当を払うと、自己資本はほとんど増えない。公的資金の返済は借り換えで先送りされ、普通株の持ち分は優先株の転換で 1 割まで下がる。配当は優先配当を守るのがやっとで、普通配当は据え置きになる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。n
- 有価証券・資金運用:数量 0.2(有価証券+預け金の残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 9 億円・営業利益 6 億円。n
- 手数料・その他収益:数量 0.6(預金・譲渡性預金の残高(兆円))× 価格 0.00(預金残高あたりの手数料・その他収益率)→ 売上 3 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の ROE は 2.4%(純利益 7.3 億円 ÷ 自己資本 309 億円)。k 8.50%、g 3%、残る割合 1/2 で RONIC は 5.4%、式の PER は 8.1 倍(ROE が k 以下なので上限は 1÷k = 11.8 倍)。やや悲観は構造的な負けの稼ぐ力で測り、式の 8 割弱の 6.4 倍に置いた。
確率:資産の質が弱く、預金の取り合いが続く小さな銀行の、標準的な悪い道。不良債権比率 5.4% を踏まえ、25% を置いた。
悲観 12% 悲観:不動産向けの貸倒と預金の流出が重なり、自己資本が 235 億円へ減る 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 55 円3 億円
構造的に負ける筋書き。不動産の市況が崩れ、不動産業向けの貸倒が膨らむ。与信費用は貸出の 0.5〜0.6% に達する。預金は大分銀行などへ流れ、貸出は名目でも減る。事業性貸出は 3,650 億円で横ばいから縮み、個人向けは 690 億円に減る。
経費は拠点の閉鎖で抑えても、物価の分を吸収できない。純利益は赤字に落ち、債券の評価損も出て、自己資本は 235 億円へ減る。国内基準の比率は最低基準の 4% に近づき、公的資金の返済は先送りされる。優先株は下限で転換し、普通株の持ち分は 1 割を切る。再編は救済に近い形になり、普通株に不利な比率で決まる。優先配当は非累積のため、利益が出ない年は止まりうる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 64 億円・営業利益 −6 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 11 億円・営業利益 −3 億円。n
- 有価証券・資金運用:数量 0.1(有価証券+預け金の残高(兆円))× 価格 0.00(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 6 億円・営業利益 3 億円。n
- 手数料・その他収益:数量 0.6(預金・譲渡性預金の残高(兆円))× 価格 0.00(預金残高あたりの手数料・その他収益率)→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。n
倍率:悲観の床は、今の自己資本 278 億円に 0.12 を掛けた 33 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、自己資本の 8 割が優先株で、普通株に届く稼ぐ力がほぼ無いため。純利益は赤字なので、床は純利益 ÷ k に頼らない。
確率:危険債権の多さと薄い資本、優先株の借り換えの失敗が重なる構造的な負けを、12% に置いた。同業の標準 10% より厚めにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
事業性貸出(中小企業・不動産・地方公共団体)。大分県が中心で、福岡・熊本にも拠点がある。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 0.02 | 66 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 0.02 | 96 | 10 |
取り方:貸出 4,395 億円(2026 年 3 月末)から、個人向けの「その他」741 億円を除いた 3,654 億円を、法人・公共向けとした。貸出金利息 86.3 億円を貸出の平均残高で割った利回りは約 2.0%、預金の調達費用は約 0.2%。利ざやは 1.8% と置いた。経費 54.5 億円と与信費用 8.1 億円を、貸出の規模に応じて割り振った。【推定】開示のセグメントは銀行業の単一で、内訳は開示されていない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の経常利益 12.07 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・消費者ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.02 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.02 | 16 | 0 |
取り方:個人向けは、業種別貸出の「その他」741 億円(住宅ローン・消費者ローン)。利ざやは競争が厳しく 1.7% と置いた。経費 10.0 億円と与信費用 2.4 億円を割り振ると、ほぼ利益が出ない。【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の経常利益 12.07 億円に合わせた。
有価証券・資金運用
国債・地方債・社債・株式・投信の運用と、日銀預け金など。
| 数量有価証券+預け金の残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 10 | 7 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 11 | 8 |
取り方:有価証券 1,128 億円と、日銀預け金などの現預金約 340 億円を合わせて 1,468 億円。2026 年 3 月期は、株式等売却益 7.6 億円と債券売却損 3.8 億円を含めて、運用の収益は 10.0 億円。売買損益を除く運用の利ざやは約 0.4%、含めた率は 0.68%。10 年後は売買損益が剥げた水準へ戻して置く。【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の経常利益 12.07 億円に合わせた。
手数料・その他収益
為替・投信・保険の手数料と、償却債権の取立益などの収益。
| 数量預金・譲渡性預金の残高(兆円) | 価格預金残高あたりの手数料・その他収益率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 0.00 | 3 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 0.00 | 5 | 3 |
取り方:預金・譲渡性預金 5,626 億円に対する手数料・その他収益。役務取引等収益 13.1 億円から、保証料などの役務費用 11.0 億円を引いた純額は 2.1 億円と薄い。償却債権取立益 2.2 億円などその他経常収益の一部 1.1 億円を足して 3.2 億円。【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の経常利益 12.07 億円に合わせた。
リスクと懸念
優先株の転換による薄まり
B・D・F の 3 種の優先株は、2029〜2034 年に普通株へ替わる定めがある。転換の下限の価格が低く、転換後の株数は今の 10 倍に膨らみうる。会社全体の利益が増えても、普通株の持ち分は 1 割前後まで薄まる。D 種は毎月、直近の株価で取得価額が見直される。
公的資金の返済の資金
D 種の残り 90 億円は、2029 年 3 月までに返す約束だ。内部留保だけでは足りず、新しい優先株で借り換えれば薄まりが先送りされるだけになる。現金で返せば自己資本が 90 億円減り、国内基準の比率は 6% 近くまで下がる。2025 年 8 月の 70 億円の返済では、比率が 2 ポイント余り下がった。
資産の質
金融再生法の開示債権は 238 億円で、比率は 5.38%。危険債権は 213 億円で、貸倒引当金 49 億円の 4 倍を超える。不動産業向けが貸出の 28.5% を占め、地価や景気が悪化すれば与信費用は 10 億円台から跳ねる。2026 年 3 月期の貸倒関連の費用は 12.8 億円で、前期の 2 倍超だった。
預金金利の上昇
預金利息は 3.4 億円から 11.1 億円へ 3 倍になった。預金を守るために金利を上げ続ければ、貸出の利ざやの広がりを食う。大分銀行や西日本シティ銀行と預金を取り合う小さな銀行は、立場が弱い。定期預金は 2,114 億円あり、金利が上がるたびに借り換えの負担が増える。
一過性の利益
2026 年 3 月期の経常利益は、株式等の売却益 7.6 億円に支えられた。繰り返せる利益ではない。債券の売却損も 4.5 億円出ており、その他有価証券の評価差額金は 12.8 億円の赤字だ。金利がさらに上がれば、国債・地方債の評価損が自己資本を削る。
人口減
大分県の人口は、2050 年に 84 万人と 2020 年から 25% 減る見通しだ。貸出需要が縮み、拠点などの固定費が重くなる。経営強化計画の経費率 60% の達成が遅れれば、利益は計画に届かない。経費の 8 割近くは人件費と店舗など動かしにくい費用だ。
再編での立場
九州では広域の再編が進む。単独の第二地銀は、統合で弱い立場に置かれやすい。普通株の持ち分が薄い中で統合の比率が決まれば、普通株主にはさらに不利になる。九州の大手地銀が、小さな第二地銀を単独で支えるとは限らない。
今後の分かれ目
- コア業務純益が 25 億円を超える
- 中期計画の 22.7 億円を上回る進み方で、優先株の借り換えや返済が現実味を帯びる。楽観側の重みが 8% から 15% 前後へ上がる。
- D 種の残り 90 億円を、新しい優先株で借り換える
- 返済の期限は守られるが、薄まりが先送りされるだけになる。新しい優先株の転換の下限が低ければ、普通株の持ち分は下がる。
- 与信費用が 15 億円を超える年が続く
- 不動産業向けの貸倒が本格化している証拠で、悲観の確率が 12% から 20% 前後へ上がる。
- 国内基準の自己資本比率が 7% を割る
- 配当の継続と公的資金の返済が危うくなる。増資や統合の話が出やすく、普通株には不利な条件になりやすい。
- 西日本シティ銀行など九州の大手が、資本支援や統合を提案する
- 優先株の整理が進めば、普通株の不安は減る。ただし統合の比率次第で、普通株の持ち分は小さくなる。
- 短期金利が 2% を超えて上がり、預金の追随が遅れる
- 貸出の利ざやが想定より広がり、純利益が 20 億円台に乗る道が開く。やや楽観の確率が上がる。
見ておくもの
- コア業務純益と、業務粗利益経費率(中期計画の 22.7 億円・60%)
- 国内基準の自己資本比率(今は 8.4%)
- 金融再生法の開示債権比率と与信費用
- D 種優先株の返済の方法と、新しい優先株の発行の有無
- 預金利息の増え方と、貸出の利ざや
倍率と資本コストの決め方
会社全体の利益を、貸出・運用・手数料の数量 × 価格で積み上げ、PER は ROE と k から式で決めた。優先株 220 億円が普通株に先立つ点は、既存株主の取り分の係数で別に表し、倍率には混ぜていない。今の PBR 0.5 倍や同業の PER は市場の見方で、比較に使うだけで置き場にはしていない。起点の経常利益 12.1 億円には株式等の売却益 7.6 億円が入っているので、10 年の利益には織り込まなかった。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた(新リース会計基準は店舗の賃借が小さい銀行では影響が軽い)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.1→11.76 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 7.8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスク(資産の質・優先株・再編)は k に足さず、筋書きと既存株主の取り分の係数で表した。事業は傾いていないので上乗せは 0。