結論
秋田銀行は、秋田県で企業の過半が主力行に選ぶ県内首位の地方銀行である。預金は3.2兆円、貸出は2.1兆円。2026年10月には岩手銀行・青森みちのく銀行との3行統合の協議に入った。筆者の結論は、事業の足場は固いが、金利上昇の恩恵を先取りした値段で、割高寄りというものだ。
稼ぎの源は預金の使い道にある。預かった預金のうち貸出に回らない1兆円ほどを、日銀への預け金や債券で運用する。短期金利が2%へ上がれば、この運用利回りが先に上がり、預金金利は遅れて追う。2026年3月期の純利益77億円は、10年後の中立で150億円ほどまで伸びると見る。
伸びを抑えるのは人口である。秋田県の人口は2050年に56万人まで減り、減少率は全国で最も大きい。貸出の量は名目でも年2%台にとどまる。経費は物価で毎年膨らむ。
利益が倍近くになっても、自己資本も積み上がる。10年後のROEは6%前後で、資本コスト8.25%に届かない。ROEが資本コストを下回る会社では、ためた利益は額面を下回る価値しかない。ここが割高と見る一番の理由だ。
3行統合は上振れの材料だが、統合比率は決まっていない。効果は半分だけ数え、持ち分が薄まる可能性は筋書きに入れた。10年後の価値は今の時価総額を3割弱下回ると見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、秋田銀行は事業の質が悪いわけではないが、オーナーとして持ち続ける理由が薄い銀行だ。
良い点は、県内で顧客を握っていることだ。企業の過半が主力行に選ぶ関係は簡単には崩れない。金利が上がれば、預金の運用だけで利益が増える。大きな設備投資も要らない。
気がかりは、そこで稼いだ利益が資本の中に溜まりやすいことである。10年で純利益が倍になっても、規制の自己資本比率を保つために自己資本が積み上がり、ROEは6%前後で止まる。資本コストに届かない会社が利益を溜めても、株主の価値は増えにくい。
経営の姿勢には前向きな面がある。政策保有株の縮減、累進配当、3行統合の協議はどれも、資本効率を上げる方向の動きだ。ただ、統合の中身はこれから決まる。比率が決まるまでは、持ち分が減る危険も同じだけ抱えている。
安全域の判断は、確率で重みづけした本質価値が今の時価総額の6割台半ばにとどまる、というものだ。値段に余裕はない。人口減の県で10年先の稼ぎを正確に読むのは難しく、確信度は高くない。
何で稼ぐ会社か
秋田銀行は1879年に前身が創業した秋田市の地方銀行で、持株会社を持たない単体に近い形で営む。預金は3兆2,136億円、貸出は2兆1,328億円(2026年3月末)。預貸率は66%と低く、預金が貸出より1兆円あまり多い。
稼ぎ方は4本に分けて見るとわかりやすい。1本目は法人・公共向けの貸出で、中小企業と県・市町村への貸出が柱になる。2本目は住宅ローンなどの個人貸出。3本目は投資信託・保険・事業承継などの預かり資産と役務。4本目は、貸出に使い切れない預金の運用だ。
4本目が、金利上昇でいちばん効く。日銀への預け金や債券の利回りが上がれば、利益はほぼそのまま増える。2026年3月期のコア業務純益が前の期から6割増え180億円になったのは、この効果が出たためだ。
県内での存在感は大きい。帝国データバンクの2024年調査で、県内企業の52.9%が秋田銀行を主力行に選んだ。2位は北都銀行の29.4%で、この2行で県内企業の約8割を占める。
提携の相手も広い。2021年から岩手銀行と包括業務提携「秋田・岩手アライアンス」を結び、青森みちのく銀行とも共同のビジネスネットを持つ。2026年10月、3行は2028年4月の経営統合を目指して協議に入った。持株会社の下に3行が並ぶ形で、合併はしない。持株会社の本社は盛岡市に置く方向である。
優良さと弱いところ
この銀行の堀は、県内の顧客の厚みにある。企業の過半が主力行に選ぶということは、預金口座、給与の振込、運転資金の貸出が1社でまとまっていることを意味する。こうした関係は他行が奪いにくい。
堀の幅には限りがある。人口減が全国で最も速い県に、同じ顔ぶれの顧客を抱え続けるからだ。貸出需要そのものが細る地域で、シェアを守ることと稼ぎを増やすことは別の話である。
資本効率は低い。過去10年のROEは1.5〜4.3%、中央値は2.5%。2026年3月期にようやく4.3%へ上がった。会社の計画も、2027年度にROE4.5%、2030年度に5%以上とつつましい。資本コストに届く計画ではない。
資本の使い方は改善している。政策保有株は純資産比で3.9%(2028年3月末の見込み)まで縮める。配当性向は30%以上で、累進的に引き上げる方針だ。ただ、自己資本比率の簡易値は5%、規制上の連結の比率は11%程度で、厚みがあるわけではない。還元を急げる余裕は小さい。
弱点は、収益が金利に偏ることだ。債券の評価損が出れば利益も自己資本も揺れる。2026年3月期は国債等債券損益と株式等関係損益が悪化している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、30年続いた低金利を抜けて、金利のある世界に入った。日銀が政策金利を上げるたび、貸出と預け金の利回りが先に上がり、預金金利は遅れて追う。地銀はこの時間差で利ざやを広げる。2026年3月期に地銀各社が過去最高益を出した背景である。
短期金利は2%で止まる前提だ。預金の払い金利が貸出の利回りに追いつくまで、あと1%分ほどは利ざやの追い風が続く。ただし預金の獲得競争は激しくなる。ネット銀行や大手が高い金利で預金を取りにくるからだ。
秋田県の事情はさらに厳しい。人口は2050年に56万人まで減り、2020年からの減少率は全国最大とされる。貸出の相手になる企業の数も減る。量は伸びず、価格で稼ぐ構図になる。
競争の形は県内の2強だ。秋田銀行と北都銀行で企業の主力行の8割を占める。北都銀行はフィデアHDの傘下で、2027年に荘内銀行と合併し「フィデア銀行」になる予定である。2026年3月期は7期ぶりの減益だった。
再編は北東北に及ぶ。秋田・岩手・青森みちのくの3行が統合すれば総資産13兆円で東北最大になる。県をまたぐ貸出の機会は広がるが、店舗や人員の見直しは当面しないとされ、費用削減の効果は読みにくい。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向だ。配当性向は30%以上を目安に、減らさない配当(累進配当)を掲げる。自社株買いは数値目標がなく、機動的に行うとだけ示している。
自己資本は、規制上の連結比率で11%程度を保つ方針である。貸出などリスクの大きい資産を増やすほど自己資本が要るので、還元に回せる額は利益の伸びと表裏になる。筆者は、直近5年の総還元性向(4割弱、自社株買いはほぼない)と配当性向30%以上の方針を踏まえ、10年で純利益の4割を還元に回す姿を中立に置いた。
政策保有株は縮める。純資産に対する割合を2028年3月末に3.9%まで下げる見込みだ。売却益は利益の振れ幅になるが、方向としては資本の効率を高める。
M&Aの中心は、岩手銀行・青森みちのく銀行との3行統合である。比率は決まっておらず、秋田銀行の株主の持ち分がどうなるかはわからない。統合の効果は半分だけ数え、持ち分が薄まる場合は筋書きで表した。kabufuの試算では、10年以内にTOBや買収を受ける確率は19%と、地銀の中ではやや高めである。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利のある世界の入口に、いちばん得をする形で立っている銀行だ。預貸率は66%で、預金の3分の1は貸出に回らず、日銀の預け金や債券に置かれている。短期金利が2%まで上がれば、この運用の利回りが丸ごと上がる。2026年3月期のコア業務純益が6割増になったのは、まだ序の口にすぎない。
県内の足場は崩れない。企業の53%が主力行に選び、2位の北都銀行は荘内銀行との合併の準備に追われている。県内の競争では、秋田銀行がいちばん落ち着いて戦える。
3行統合はさらに大きな上振れの種だ。総資産は13兆円で東北最大になる。システム費用の共通化、AIや防犯対策の人材の共有、青森・岩手の企業への貸出の広がりで、費用の伸びは物価を下回りうる。政策保有株の縮減と累進配当で資本の使い方も変わる。
今の時価総額は自己資本を下回る。ROEが5%、6%と上がっていけば、市場は倍率を見直すはずだ。10年後にROE9%近くまで行く姿は、決して夢物語ではない。
慎重な見方
稼ぎは金利に乗って増えても、ROEは資本コストに届かない。会社の目標でさえ、2027年度のROE4.5%、2030年度の5%だ。株主が求める8%台には遠い。ROEが資本コストを下回る会社が利益を溜めても、価値は額面を下回る。
人口減は避けられない。秋田県の人口は2050年に56万人、減少率は全国最大とされる。貸出の相手が減る県で、貸出量を伸ばすのは難しい。預金の獲得競争も、ネット銀行や大手が金利を上げる中で厳しくなる。預金の払い金利が貸出の利回りに追いつけば、いまの追い風は止まる。
3行統合も手放しでは喜べない。比率が決まっておらず、秋田銀行の株主の持ち分が薄まるかもしれない。持株会社の本社は盛岡で、県外に置かれる不安の声がすでに出ている。店舗や人員の見直しは当面しないというから、費用削減の効果も読みにくい。システムの統合費用だけが先に出る恐れがある。
さらに、債券と株式の評価損だ。2026年3月期にも国債等債券損益と株式等関係損益は悪化した。金利がさらに上がれば、保有債券の含み損が自己資本を削る。自己資本比率の簡易値は5%と薄く、評価損への耐性は高くない。今の値段は、この不確実さを織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
預金の運用で利益が増えるという強気の筋は強く、確率の中心を軽く見ることはできない。一方、ROEが資本コストを超えられないという慎重な見方は、数字が裏づけている。過去10年のROEは最高でも4.3%で、10年後の中立でも6%前後だ。
確率は慎重側に寄せた。人口減の速さと、統合比率が未定という不確かさを重く見たためだ。統合の効果は中立で半分しか数えず、上振れは楽観に回した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,724 円1,540 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 521 円465 億円)。 今の値に割り戻すと 1,131 円1,010 億円、今との差 −18.7%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 2,931 円2,618 億円 | 688 円615 億円 | +160.2% | +10.0% | 326 円291 億円 |
| やや楽観 | 23% | 2,429 円2,170 億円 | 588 円525 億円 | +116.8% | +8.0% | 694 円620 億円 |
| 中立 | 31% | 2,035 円1,818 億円 | 508 円454 億円 | +82.8% | +6.2% | 788 円704 億円 |
| やや悲観 | 24% | 977 円873 億円 | 571 円510 億円 | +11.3% | +1.1% | 372 円332 億円 |
| 悲観 | 13% | 282 円252 億円 | 224 円200 億円 | −63.6% | −9.6% | 66 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,724 円1,540 億円 | 521 円465 億円 | +61.4% | +4.9% | 2,245 円2,006 億円 |
今の株価時価総額 1,391 円1,243 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 9% 楽観:3行統合が費用を削り、金利上昇も満額で取る10年 利益 216 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,931 円2,618 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、預金は決済口座の粘りで金利の追随が緩やかに済む。秋田銀行は預金の運用で稼ぎを大きく積み上げ、貸出の利ざやも0.5%近く広がる。
3行統合は2028年4月に実現し、システムの共通化、AIや防犯対策の専門人材の共有、青森・岩手の企業への貸出で、費用の伸びは物価を下回る。統合比率は秋田銀行の株主にとって納得のいく形に収まる。
政策保有株の売却と累進配当で資本の回転が上がり、純利益は200億円を超える。ROEは8%強に乗るが、資本コストの8.5%にはなお届かない。北東北で最も効率の高いグループの一角になる。
それでも秋田の人口は減り続ける。貸出の量は名目で年3%台前半にとどまり、利益の伸びの大半は利ざやと費用の削減から来る。
- 法人・公共貸出:数量 2.2(法人・公共貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 333 億円・営業利益 153 億円。残高2.15兆円(名目)× 利ざや1.55%、利益率46%
- 個人貸出:数量 0.8(個人貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 110 億円・営業利益 37 億円。残高0.76兆円(名目)× 利ざや1.45%、利益率34%
- 預かり資産・役務:数量 1.6(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 120 億円・営業利益 41 億円。残高1.6兆円(名目)× 手数料率0.75%、利益率34%
- 預金運用・市場:数量 1.7(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.2%(運用利ざや(%))→ 売上 198 億円・営業利益 87 億円。運用残高1.65兆円(名目)× 運用利ざや1.20%、利益率44%
倍率:事業の純利益 216 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,618 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%の定着、預金金利の追随が緩やかなこと、3行統合の効果が満額出ること、秋田・岩手・青森の県境をまたぐ貸出の広がり、がすべて重なる必要があり、確度は高くない。人口減が全国最大の県であること、ROEが過去10年で資本コストに一度も届いていないことから、同領域の楽観より低い9%とした。
やや楽観 23% やや楽観:中計どおりに利益が伸び、統合の効果も半分出る 利益 179 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,429 円2,170 億円
短期金利は2%に届き、貸出と預け金の利回りの上がり方が、預金金利の上がり方を上回る状態が続く。預金の獲得競争はあるが、利ざやは今より0.4%ほど広がる。
3行統合は2028年4月に実現し、システムの共通化が少しずつ効く。店舗の統廃合は限られるが、本部の人員は成長分野に回せる。預かり資産は岩手銀行・青森みちのく銀行の顧客にも広がり、手数料は堅調に伸びる。
与信費用は景気を1〜2周してならした水準に戻る。純利益は180億円近くに乗り、ROEは7%強。資本コストにあと一歩届かない水準で、会社の長期目標を上回る10年になる。
秋田の人口は減るが、県内2強の構図は保たれ、貸出の量は名目で年2%台後半を保つ。
- 法人・公共貸出:数量 2.1(法人・公共貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 303 億円・営業利益 130 億円。残高2.05兆円(名目)× 利ざや1.48%、利益率43%
- 個人貸出:数量 0.7(個人貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 104 億円・営業利益 32 億円。残高0.74兆円(名目)× 利ざや1.40%、利益率31%
- 預かり資産・役務:数量 1.5(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 108 億円・営業利益 33 億円。残高1.5兆円(名目)× 手数料率0.72%、利益率31%
- 預金運用・市場:数量 1.6(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.2%(運用利ざや(%))→ 売上 184 億円・営業利益 74 億円。運用残高1.6兆円(名目)× 運用利ざや1.15%、利益率40%
倍率:事業の純利益 179 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利が2%に届く基本の道筋で、貸出利息の増加が預金利息の増加を上回る状態が続く。会社の計画(2027年度に純利益80億円以上)はすでに近い水準で、上振れの余地がある。統合の効果を半分織り込み、中立の次に厚い確率とした。同領域のやや楽観とほぼ同じ。
中立 31% 中立:利ざや拡大は定着、人口減が天井になる10年 利益 150 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,035 円1,818 億円
短期金利2%が定着し、貸出の利ざやは今より0.4%ほど広がる。預金は決済口座の粘りで追随が緩やかだが、獲得競争で調達コストは上がり続ける。秋田の人口が減る中、貸出の量は名目で年2%台前半にとどまる。
3行統合は2028年に実現するが、持株会社の下で3行が並ぶ形で、費用削減は緩やかに効く程度。統合の準備と、システム費用が利益を押し下げる年もある。預かり資産は大きく伸びるが、手数料率は低下する。
経費は物価に合わせて増える。利益は10年で2倍近くになるが、自己資本も4割ほど積み上がり、ROEは6%前後で止まる。県内首位の地位は守るが、資本効率で抜け出せない銀行のままである。
- 法人・公共貸出:数量 2.0(法人・公共貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 281 億円・営業利益 112 億円。残高1.98兆円(名目)× 利ざや1.42%、利益率40%
- 個人貸出:数量 0.7(個人貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 97 億円・営業利益 29 億円。残高0.71兆円(名目)× 利ざや1.36%、利益率30%
- 預かり資産・役務:数量 1.4(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 98 億円・営業利益 29 億円。残高1.4兆円(名目)× 手数料率0.70%、利益率30%
- 預金運用・市場:数量 1.6(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.1%(運用利ざや(%))→ 売上 170 億円・営業利益 65 億円。運用残高1.55兆円(名目)× 運用利ざや1.10%、利益率38%
倍率:事業の純利益 150 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,818 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%・長期3%が定着し、与信費用が景気を1〜2周してならした水準に戻る、最も重みを置く中心の筋書き。ROEが資本コストに届かない実績と、人口減の速さが重く、慎重側に寄せて最大の確率とした。統合は比率未定のため効果を半分だけ数えた。
やや悲観 24% やや悲観:預金競争で利ざやが伸びず、統合費用が重い10年 利益 97 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 977 円873 億円
短期金利は2%まで上がるが、預金の獲得競争で調達コストが先に上がり、利ざやの拡大は想定の半分ほどにとどまる。秋田の人口は想定を超えて減り、貸出の量は名目でも年1%台半ばの伸びに鈍る。
3行統合は実現するが、システムの統合費用が重く、費用削減は小さい。持株会社が県外に置かれることで、県内の地域密着が弱まり、貸出の機会を逃す面も出る。北都銀行(フィデア銀行)との県内の預金の奪い合いも続く。
与信費用は景気の谷で増え、債券の評価損も重なる。純利益は100億円に届かず、ROEは4%台。資本コストに大きく届かない、稼ぐ力の弱い銀行になる。会社が掲げるROE5%の目標も、10年のあいだ達成が難しい。
- 法人・公共貸出:数量 1.8(法人・公共貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 220 億円・営業利益 79 億円。残高1.8兆円(名目)× 利ざや1.22%、利益率36%
- 個人貸出:数量 0.6(個人貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 76 億円・営業利益 18 億円。残高0.64兆円(名目)× 利ざや1.18%、利益率24%
- 預かり資産・役務:数量 1.2(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 74 億円・営業利益 16 億円。残高1.2兆円(名目)× 手数料率0.62%、利益率22%
- 預金運用・市場:数量 1.5(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 0.9%(運用利ざや(%))→ 売上 130 億円・営業利益 42 億円。運用残高1.45兆円(名目)× 運用利ざや0.90%、利益率32%
倍率:10年後のROE約4.5%(純利益97億円÷自己資本2,150億円)はk 8.25%以下なので、PERは1÷k=11.8倍までが上限。人口減と預金競争で稼ぎが資本コストに届かない構造から、稼ぐ力に見合う9.0倍に置いた(上限の7割へは引き上げない)。
確率:預金の獲得競争が激しく、利ざやの拡大が想定の半分ほどにとどまる筋書き。秋田の人口減が全国最大で、統合後もシステム費用が重いまま削減が小さい。10年という期間では十分に起こりうるので、中立に次いで厚くした。
悲観 13% 悲観:人口減と信用収縮で稼ぐ力を失い、再編でも持ち分が薄まる10年 利益 28 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 282 円252 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、秋田の中小企業の与信費用が急増する。人口減は想定を超えて速まり、県内の貸出需要そのものが縮む。預金は金利を払って守るしかなく、利ざやは県内の競争で削られる。
債券と政策保有株の評価損で、自己資本は大きく傷む。簡易値で5%と薄い自己資本比率では、耐える余裕が小さい。
3行統合は、システム投資の負担だけが先に出て、期待した効果が出ない。統合比率も秋田銀行の株主に不利に決まり、持ち分は薄まる。10年の終わりには、さらなる再編の相手を探す立場になっている。
純利益は30億円を割り、ROEは2%を大きく下回る。地方銀行としての存在意義が問われる。
- 法人・公共貸出:数量 1.6(法人・公共貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 132 億円・営業利益 26 億円。残高1.55兆円(名目)× 利ざや0.85%、利益率20%
- 個人貸出:数量 0.5(個人貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 44 億円・営業利益 4 億円。残高0.52兆円(名目)× 利ざや0.85%、利益率10%
- 預かり資産・役務:数量 0.9(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.4%(実効手数料率(%))→ 売上 38 億円・営業利益 2 億円。残高0.85兆円(名目)× 手数料率0.45%、利益率5%
- 預金運用・市場:数量 1.2(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 0.7%(運用利ざや(%))→ 売上 80 億円・営業利益 16 億円。運用残高1.15兆円(名目)× 運用利ざや0.70%、利益率20%
倍率:10年後のROE約1.7%(純利益28億円÷自己資本1,650億円)はk 8.25%以下で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。信用収縮と人口減で稼ぎが資本コストを大きく下回る構造的な負けで、稼ぐ力の弱さから9.0倍に置いた。債券・株式の評価損で自己資本を今より減らしている。稼ぐ力は28億円÷8.5%=約330億円で、そこを上回る価値は置いていない。
確率:リーマン級の信用収縮に、秋田の人口減の加速、債券と株式の評価損、預金流出が10年のどこかで重なる複合の悪材料。さらに統合比率が不利になり持ち分が薄まる可能性も重なる。自己資本比率が薄く、評価損への耐性が低いことから、同領域より厚めの1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共貸出
秋田県内の中小企業・事業性貸出と、県・市町村向けの公共貸出。県内企業の過半が主力行に選ぶ関係が土台になる。
| 数量法人・公共貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 1.1% | 163 | 52 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1.4% | 281 | 112 |
取り方:貸出金2.13兆円(2026年3月末、会社の決算発表)のうち、個人ローンを約0.58兆円と推定し、残る1.55兆円を法人・公共とした(セグメント別の開示はなく、内訳は推定)。利ざやは公共向けの薄さと事業性の厚みを平均して1.05%とおいた。営業利益率は3割強。預金ベータ(預金金利が政策金利に付いていく割合)は地銀共通の40%。残高は名目の金額なので物価で伸びるが、秋田の人口減を入れて年2.5%(中立)とした。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+35%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローン・消費者ローン。人口減で新規の需要は細るが、金利が上がる局面では残高が積み上がりにくい。
| 数量個人貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 1.0% | 58 | 12 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 1.4% | 97 | 29 |
取り方:貸出残高の約27%と推定して0.58兆円(開示は貸出の増加要因に個人ローンを挙げるのみで、残高は推定)。固定金利の住宅ローンが多く利ざやは1.0%とした。営業利益率は2割。残高は名目で年2.0%(中立)。預金ベータ40%を前提にした。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+36%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預かり資産・役務
投資信託・保険・事業承継・ビジネスマッチングなどの手数料。NISA拡充と相続を背景に伸びる分野。
| 数量預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.8% | 71 | 16 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 0.7% | 98 | 29 |
取り方:個人の預かり資産と法人向けソリューション(事業承継・M&A・私募債など)の取扱高を合わせて約0.95兆円と推定(開示の残高から丸めた推定で、会社の数字ではない)。実効手数料率は0.75%とおいた。営業利益率は2割強。預かり資産はお金の量なので名目で年4%(中立)、手数料率は率なので物価では上げず、低コスト商品への流れで緩やかに下げる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で-7%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預金運用・市場
貸出に回らない預金を、日銀の預け金や債券・株式などで運用する部門。金利上昇でいちばん効く。
| 数量貸出に回らない預金(兆円) | 価格運用利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 1.0% | 110 | 33 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 1.1% | 170 | 65 |
取り方:預金3.21兆円から貸出2.13兆円を引いた1.08兆円を1.1兆円とした(預貸率66%)。運用利ざやは、預け金・債券・株式配当の平均利回りから預金の払い金利を引いて1.0%とおいた。営業利益率は3割。短期金利が2%へ上がる間、運用側はほぼ全部、預金側は40%分だけ上がるので、利ざやは中立で10年に+0.1%ほど広がるとおいた(債券は借り換えのたびに利回りが上がるが、評価損の可能性は悲観側に入れる)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+10%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
リスクと懸念
秋田県の人口減
秋田県の人口は2050年に56万人まで減り、2020年からの減少率は全国最大とされる。貸出の相手になる企業と世帯が減るので、シェアが5割を超えていても貸出の量は伸びにくい。預金も減るため、金利が上がっても県内だけでは稼ぎの天井が低い。
3行統合の比率と実行
統合比率は決まっておらず、秋田銀行の株主の持ち分がどう変わるかはわからない。持株会社の本社は盛岡市で、県外に置かれることへの不安の声が県内から出ている。店舗や人員の見直しは当面しないとされ、費用削減の効果も読みにくい。システムの統合費用が先に出る恐れもある。
預金金利の追随と預金流出
短期金利が2%まで上がる過程で、預金の払い金利が貸出の利回りに追いつけば、今の追い風は止まる。ネット銀行や大手が高い金利で預金を取りにくる中、秋田銀行は預金が貸出より1兆円あまり多く、預金を守るコストが利益を直接削る。
債券・株式の評価損
2026年3月期にも国債等債券損益と株式等関係損益は悪化した。金利がさらに上がれば保有債券の含み損が増え、自己資本を削る。自己資本比率の簡易値は5%と薄く、規制上の連結の比率も11%程度で、評価損への余裕は大きくない。
与信費用の反転
2026年3月期は与信関係費用が減り、利益を押し上げた。低金利の間に延命してきた中小企業が、金利上昇と人口減の中で行き詰まれば、与信費用は急に増える。県内に代わりの産業が乏しいことも、担保の回収を難しくする。
県内の競争と北都銀行の再編
北都銀行は荘内銀行と2027年に合併し、フィデア銀行になる予定である。県内の2強の構図は残るが、合併後の北都銀行が貸出と預金で攻勢に出れば、秋田銀行の利ざやは削られる。2026年3月期は北都銀行が減益だったため、当面は守りの姿勢とも考えられる。
今後の分かれ目
- 3行統合の統合比率が秋田銀行の株主にとって有利に決まった時
- 持ち分が守られる形で統合効果を満額近く数えられるので、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。持株会社の本社が盛岡でも、県内の地域密着が保たれるかを見る。
- 統合比率が秋田銀行の株主に不利で、持ち分が大きく薄まる時
- 10年後の価値のうち秋田銀行の株主に帰る部分が減るので、悲観側の確率を上げ、中立の価値も下げる。
- 日銀が政策金利を想定より速く2%へ引き上げ、預金金利の追随が緩やかな時
- 預金運用と貸出の利ざやが想定より早く広がり、やや楽観の確率を上げてよい。2027年度の中計目標(純利益80億円)の前倒しを確認する。
- 預金の獲得競争が激しくなり、預金金利が貸出の利回りに早く追いついた時
- 利ざやの拡大が想定の半分にとどまるやや悲観に重みを移す。
- 金利の上昇で保有債券の含み損が膨らみ、自己資本比率が大きく下がった時
- 還元の余力が減り、悲観側の確率を上げる。評価損が実現すれば、自己資本は今の水準を割る。
- 北都銀行(フィデア銀行)が合併後に県内の貸出と預金で攻勢に出た時
- 県内シェアの低下と利ざやの圧縮が起きるので、慎重側に寄せる。
見ておくもの
- 3行統合の基本合意と統合比率(2028年4月予定)
- 短期金利の水準と預金金利の追随の速さ、預貸率の変化
- 債券・株式の評価損益と、規制上の連結自己資本比率(目標11%程度)
- 2027年度の中計目標(純利益80億円以上・ROE4.5%以上・OHR65%未満)の達成度
- 北都銀行・荘内銀行の合併(2027年)後の県内競争
- 秋田県の人口動態と与信関係費用
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。k は 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%、g は 4.0%。10年後の中立・やや楽観は ROE(6.0%・7.1%)が k 以下なので PER は 1÷k=11.8倍が上限で、その8.5割・9割の10.0倍・10.6倍に置いた。楽観も ROE が8.1%で k をわずかに下回り、1÷k=11.8倍の約10割の11.7倍。やや悲観・悲観は ROE が k を大きく下回る構造的な負けで、稼ぐ力の弱さから9.0倍に置いた(悲観は28億円÷k=約330億円の内側)。過去の PBR(今は0.8倍弱)や今の PER(約18倍)、同業の倍率は根拠にしていない。今の株価が倍でも半分でも、10年後の中立の倍率は動かない。k を1%上げて9.5%にすると、PER の上限は1÷k=10.5倍に下がり、中立は8.9倍ほどになる。悲観の PBR が0.15倍と低いのは、銀行の自己資本の大半が規制上の資本として事業に縛られ、売って現金にできる資産ではないため、床を帳簿でなく稼ぐ力で置いた結果である。3行統合は統合比率が決まっておらず、中立では効果を半分だけ数え、持ち分の薄まりは悲観側の筋書きに書いた。銀行は店舗を借りて営むが、リースの影響は軽く、新リース会計(2028年3月期から)による数字の形の変化は10年後の数字に入れていない。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない)。同じ地方銀行の東邦(福島)・岩手より寿命を0.25%厚くしたのは、秋田の人口減が全国最大と見られるため。個別のリスク(3行統合の比率、債券の評価損)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので extra は 0。