結論
鳥取銀行は、鳥取市を本店とする貸出残高 9,170 億円の地方銀行だ。2026 年 3 月期は 4 期連続の増収増益で、純利益は 16 億円だった。筆者の見方では、10 年の本源価値は今の時価総額を下回る。
理由は二つある。一つ目は利ざやの薄さだ。総資金利鞘は 0.06% で、貸出金利回 1.27% から預金の利回りと経費率を引くと、ほとんど残らない。二つ目は資本コストだ。中立の 10 年後も ROE は 3.9% で、資本コスト 8.25% に遠く届かない。純利益は 16 億円から 25 億円へ伸び、PBR 0.33 倍の割安さも支えになるが、期待の年率は資本コストを下回る。
重しは三つある。鳥取県の人口が 2050 年に 3 割近く減ること、債券の評価損が 50 億円あること、県内に有力な競合が重なり値決めの力が弱いことだ。
筆者なら、値段が今より 3 割ほど安く、利ざやの広がりが数字で確かめられた時に買う。再編の話は、条件を読んでから動く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安いが稼ぐ力が弱く、割安さが罠になりかねない銀行だ。
PBR 0.33 倍、PER 11 倍弱は、見た目には割安だ。自己資本比率が 8.95% と規制に余裕があり、配当を 3 割で守る方針も堅実だ。
一方で、事業の儲け口は広がらない。総資金利鞘は 0.06% で、利ざやが広がっても経費が同じだけ増えれば利益は残らない。鳥取県の人口は 2050 年に約 27% 減る。ROE は 10 年後も資本コストに届かず、内部留保を増やしても株主にとっての価値は薄い。
筆者なら、利ざやの広がりが決算で確かめられ、経費率が下がり始めるまで待つ。値段が自己資本の 2 割に近づくほどの下落があれば、評価損が縮む前提を確かめたうえで買う。
逆に、利ざやの回復が想定より速く進む形も十分にありうる。値段が今より 3 割ほど安ければ、待つ間の配当も含めて資本コストに届く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、鳥取県内の貸出と、預金で集めたお金の運用だ。
貸出残高は 9,170 億円(2026 年 3 月末、単体)で、個人ローンが約 3 割、残りが中小企業と地方公共団体向けだ。預金は 1 兆 455 億円で、個人預金が 7 割を占める。預金のうち貸出に回らない分は、有価証券 1,287 億円で運用する。債券は 50 億円の含み損、株式は 20 億円の含み益がある。
預かり資産は約 3,000 億円で、投資信託が 940 億円、年金保険等が 2,020 億円だ。役務取引等利益は 19 億円と小さく、手数料は本業の柱ではない。
2026 年 3 月期の連結経常利益は 22.4 億円、純利益は 15.8 億円だった。資金利益が 112 億円、役務利益が 19 億円、経費が 102 億円で、収益のほとんどが経費に消える。総資金利鞘(運用利回りから預金の利回りと経費率を引いた値)は 0.06% しかない。
会社の戦略は、鳥取県内の中小企業支援と、個人向けの預かり資産の拡大だ。2027 年 3 月期の予想は経常利益 23 億円、純利益 16 億円で、与信費用の動きを見て保守的に見込んでいる。
自己資本比率(国内基準)は 8.95% と、規制の最低(4%)を大きく上回る。純資産は 510 億円、単純な自己資本比率は 4.4%。株主は分散していて、特定の大株主はいない。
優良さと弱いところ
良さは県内の顧客基盤にあり、弱さは利ざやの薄さにある。
良い点は、鳥取県内の貸出と預金の厚さだ。貸出残高と預金残高が期末として過去最高になり、4 期連続で増収増益を続けた。不良債権比率は 1.13% と低く、自己資本比率(国内基準)は 8.95% で余裕がある。配当は前期と同額を維持し、配当性向は約 3 割だ。
弱い点は三つある。一つ目に、総資金利鞘が 0.06% と極端に薄く、経費率 0.99% が利益を食う。二つ目に、債券の含み損が 50 億円あり、金利が上がれば広がる。三つ目に、県内に山陰合同銀行をはじめ有力な競合が重なり、貸出の値決めの力は弱い。
地盤の鳥取県は、全国で最も人口が少ない県で、2050 年に人口が約 27% 減る見通しだ。貸出の伸びは名目でも物価に届かない年が出る。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 0%、借金 0%(単純な自己資本比率は 4.4%、評価差額金の赤字は自己資本の 1.4%)、寿命 +0.25%(人口減 27%)の合計 +0.75%、k は 8.25% とした。PBR 0.33 倍は、利ざやの薄さと人口減に対する市場の値引きだと筆者は見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行の「金利のある世界」は、2024 年の政策金利の解除から始まった。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、地銀の貸出の利ざやは今より 0.4〜0.5% ほど高い水準で安定する。
一方で、国債や外債などの債券は、金利が上がると評価損が出る。鳥取銀行は債券に 50 億円の含み損があり、今後の金利の道筋次第で広がる。満期まで持てば元本が戻る。
貸出の需要は、人口の減る地方では名目で物価並みにしか伸びない。鳥取県は人口が全国で最も少なく、2050 年に約 27% 減る。県内には山陰合同銀行、信用金庫、信用組合、ネット銀行が重なり、貸出の利ざやは競争が決める。
再編は構造の変化だ。山陰では広域の再編が進み、小さな銀行はシステム費用の負担から単独では ROE が上がりにくい。10 年の見立てでは、利ざやで利益は伸びるが、規模の小さな単独行の ROE は 4% 前後にとどまる。分かれ目は、再編や提携に乗るか、単独で費用を抑え切るかだ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、配当を 3 割前後で守りつつ、資本の積み増しを優先する形だ。
配当は 2 期続けて同額を維持し、2026 年 3 月期の配当性向は 29.5%。翌期の予想も同額で、増益の分は内部留保に回る。自己資本比率(国内基準)は 8.95% と余裕があるが、単純な自己資本比率は 4.4% と薄い。自社株買いは行っていない。
資本の重しは、債券の評価損だ。その他有価証券の評価差額金の赤字は約 7 億円と小さいが、債券だけで見ると約 50 億円の含み損がある。株式の含み益 20 億円で相殺されている。金利が上がれば株式の含み益が目減りし、債券の損が広がる。
株主の面では、特定の大株主はおらず、従業員持株会や保険会社などに分かれている。TOB の確率は市場の見方で約 2 割とされるが、会社が再編に動くという具体的な動きは確認できていない。筆者は、再編が起きる時は救済に近い形になりやすい点を重く見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利ざやは今より広がる。短期金利が 2% に定着し、変動金利の貸出は全部が上がる。預金は個人預金が 7 割を占める厚い基盤で、預金金利の上がり方は遅れる。総資金利鞘は 0.06% と底に近く、広がる余地は大きい。2026 年 3 月期の純利益は 16 億円、10 年後は中立で 25 億円、楽観では 38 億円に伸びる。今の PBR は 0.33 倍と、自己資本の 3 分の 1 の値段で、ROE が 4% 台に乗るだけで自己資本に対する値段は大きく戻る。不良債権比率は 1.13% と低く、自己資本比率(国内基準)は 8.95% で余裕があり、配当を増やす余地はある。債券の含み損は満期で縮む。債券の元本は戻るので、金利が落ち着けば自己資本は 50 億円分の追い風を受ける。県内の再編や提携が進めば、システムと本部の費用を分け合え、小さな銀行の最大の弱みが消える。4 期連続の増収増益の勢いは、利ざやの回復で当面続く。
慎重な見方
利ざやが広がっても、経費が同じだけ増えれば利益は残らない。総資金利鞘は 0.06% で、経費率 0.99% が収益のほとんどを食う。鳥取県の人口は 2050 年に約 27% 減り、貸出は名目でも物価並みにしか伸びない。県内には山陰合同銀行をはじめ有力な競合が重なり、貸出の値決めの力は弱い。10 年後の ROE は中立でも 3.9% で、資本コスト 8.25% の半分に届かない。ためた利益は額面ほどの価値がない。債券には 50 億円の含み損があり、株式の含み益 20 億円で相殺されている。金利がさらに上がれば、株価の下落と債券の損が重なる。統合や再編が動いても、救済に近い形なら、比率は少数株主に不利に出る。さらに、システム費用は小さな銀行ほど重い。与信費用が景気の谷で急増すれば、数年分の利益が一度に消える。PBR 0.33 倍は割安ではなく、薄い利ざやに対する市場の正当な値引きだ。配当を 3 割で守る方針も、増益が続く時だけの約束だ。
どちらに重みを置いたか
利ざやの回復で利益と配当は伸びるが、ROE が資本コストに届かず、本源価値は今の時価総額を下回る。評価損と薄い利ざや、人口減が下振れの幅を広げる。悲観に 10%、やや悲観に 25% を置き、期待の年率は資本コストを下回る水準とした。決算の経費率の動きと、利ざやの広がりの速さが、確率を動かす。値段が今より 3 割ほど安ければ、買い手の側に回ってよい。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,693 円252 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 646 円60 億円)。 今の値に割り戻すと 1,653 円155 億円、今との差 −4.8%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,947 円463 億円 | 1,122 円105 億円 | +249.4% | +13.3% | 486 円45 億円 |
| やや楽観 | 17% | 3,885 円364 億円 | 855 円80 億円 | +172.9% | +10.6% | 806 円75 億円 |
| 中立 | 40% | 3,225 円302 億円 | 673 円63 億円 | +124.4% | +8.4% | 1,559 円146 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,088 円102 億円 | 481 円45 億円 | −9.7% | −1.0% | 392 円37 億円 |
| 悲観 | 10% | 748 円70 億円 | 214 円20 億円 | −44.6% | −5.7% | 96 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,693 円252 億円 | 646 円60 億円 | +92.2% | +6.8% | 3,339 円312 億円 |
今の株価時価総額 1,737 円163 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:利ざやが大きく広がり、県内の再編や提携で費用が下がる 利益 38 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,947 円463 億円
短期金利が 2% に定着し、変動金利の貸出の利ざやが広がる。預金金利は遅れて追うが、預金の厚い個人預金が支えになり、調達コストの上昇は想定を下回る。鳥取県内の貸出は年 3.5% 近く伸び、事業性貸出は 0.95 兆円まで増える。県内外の地銀との提携や再編が進み、システムと本部の費用が分け合える。有価証券は評価損が満期で薄れ、運用の収益が戻る。手数料は投信・保険の預かり資産とともに伸びる。経費は物価と賃金の上昇で増えるが、提携の効果で率は下がる。与信費用は景気の山と谷を均した低めの水準に収まる。純利益は 38 億円に届き、配当は 3 割台後半へ引き上がる。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.0(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 147 億円・営業利益 29 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 55 億円・営業利益 7 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.02(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 26 億円・営業利益 13 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.5(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 41 億円・営業利益 6 億円。n
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 463 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復に再編の効果が重なる形。実績の乏しい筋書きなので 8% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:利ざやの広がりが想定どおり出て、ROE が 4% 台に乗る 利益 30 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,885 円364 億円
利ざやは短期金利 2% の定着で広がり、預金金利も遅れて追うが、広がりの大半は銀行に残る。事業性貸出は年 3% 前後、個人貸出は 2.5% 前後で伸び、貸出残高は 1.2 兆円を超える。有価証券の評価損は時間とともに縮み、債券の売却損が出る年は減る。手数料は預かり資産とともに緩やかに増える。県内の再編は進まず、単独の経営が続く。経費は物価で増え続けるため、利益率の改善は小さい。純利益は 30 億円、配当は 3 割台前半を保つ。人口減は織り込み済みで、住宅ローンの競争は続くが、与信費用は低位にとどまる。自己資本は利益の積み増しで厚みを増す。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.9(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 131 億円・営業利益 22 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 50 億円・営業利益 5 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 24 億円・営業利益 11 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.4(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 38 億円・営業利益 5 億円。n
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 364 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の標準的な改善が出る筋書き。実績の裏づけがあるので楽観より厚く置いた。
中立 40% 中立:利ざやは広がるが、薄い利ざやと人口減が伸びを抑える十年 利益 25 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,225 円302 億円
短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。鳥取県の人口は 2050 年に 3 割近く減る見通しで、貸出は名目で年 2.5% ほどの伸びにとどまる。事業性貸出は 0.82 兆円、個人貸出は 0.35 兆円まで増える。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。有価証券は評価損が満期で縮むが、金利の上昇は新たな評価損も生む。経費は物価と賃金の上昇で増え、システム更新も続く。与信費用は景気の山と谷を均した水準に戻る。純利益は 25 億円。配当は純利益の 3 割前後で増え、残りは自己資本の積み増しに回る。県内の再編は大きなものは起きず、単独の経営が続く。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.8(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 119 億円・営業利益 18 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 46 億円・営業利益 4 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 22 億円・営業利益 10 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.4(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。n
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 302 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と鳥取県の人口減が相殺する、地銀の標準的な筋書き。最も重く 40% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:金利上昇が評価損と預金流出を呼び、利益が今を下回る 利益 13 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 1,088 円102 億円
金利の上昇で、国債・外債の評価損が膨らむ。債券は含み損がすでに 50 億円あり、さらに金利が上がれば、売却を先送りして運用の収益が伸びない。預金金利は競争で上がり、利ざやの広がりは想定の半分に削られる。事業性貸出は年 1% 台の伸びにとどまり、個人貸出は住宅ローンの競争で薄利のまま横ばいになる。与信費用は鳥取県内の中小企業の業況悪化で上振れする。経費は物価で増え続けるため、利益率は下がる。純利益は 13 億円まで下がり、配当は 3 割前後を保つが、増配は難しい。自己資本は評価損の拡大で 500 億円に減る。県内の再編の恩恵もない。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.8(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 95 億円・営業利益 10 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 5 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.4(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の ROE は 2.7% と k を大きく下回る。正当化 PER は 8.6 倍で、1 ÷ k(12.1 倍)の上限より低い。構造的に利益率が落ちるので、正当化 PER の 9 割ほどの 7.6 倍に置いた。
確率:評価損と人口減の重なりは、今の延長でも十分に起こりうるので 25%。
悲観 10% 悲観:評価損と与信費用が重なり、利益がほとんど出ない 利益 3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 748 円70 億円
構造的に負ける筋書き。金利が速く上がり、保有債券の評価損が自己資本を大きく削る。人口減で鳥取県内の貸出が縮み、与信費用が急増して利益はほとんど出ない。預金が上位行・ネット銀行へ流れ、調達コストが上がる。配当は 3 割の目安を下回り、自己資本は 430 億円まで減る。自己資本比率の低下で、再編や増資を迫られる。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になる。値段は、今の自己資本に対して 1 割台の床で決まる。事業の稼ぐ力そのものが、この床を下回る。景気が戻っても、人口減の地盤では貸出が戻らない。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.7(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 69 億円・営業利益 2 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 27 億円・営業利益 0 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.3(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、含み益込みの今の自己資本(508 億円)に掛け目 0.14 を掛けた 70 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、利ざやが 0.06% と薄く、利益の水準が自己資本の 1 %台まで落ちるため。純利益 ÷ k は 30 億円で、これを上回る床にはしない。
確率:構造的な負けは、人口減の地方の小さな銀行では実際に起きうる。10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
鳥取県内の中小企業・事業性融資と、地方公共団体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 0.01 | 67 | 10 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 0.01 | 119 | 18 |
取り方:単体の貸出金残高は 9,173 億円(2026 年 3 月末、決算説明資料)。個人ローン比率 30.56% を除いた約 7 割の 6,370 億円を、事業性・公共向けと置いた。貸出金利回 1.27% から預金等利回 0.22% を引いた約 1.05% を利ざやとした。経費配分後の利益率は 15%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 22.4 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・個人ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 27 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.01 | 46 | 4 |
取り方:個人ローンは貸出の 30.56%、約 2,800 億円(決算説明資料)。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやを 0.95% と事業性より薄く置いた。経費配分後の利益率は 9%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 22.4 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信・株式などの運用。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 17 | 8 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 22 | 10 |
取り方:有価証券残高は 1,287 億円(2026 年 3 月末、決算短信)。運用利回り 1.50% から調達を引き、株式等の売却益 5.3 億円と債券の売却損 5.0 億円の差し引きを含めて 1.3% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 22.4 億円に合わせた。
手数料・預かり資産
投信・保険の販売、為替・振込、ローン関連の手数料。
| 数量預かり資産残高(兆円) | 価格実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 26 | 3 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.01 | 34 | 3 |
取り方:預かり資産は約 3,028 億円(投信 944 億・年金保険等 2,022 億・公共債 62 億、決算説明資料)。役務取引等利益は単体で 19.2 億円。為替・ローン手数料を含めた総額を預かり資産で割った見かけの率 0.86%。利益率は人件費の比重が高く 10%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 22.4 億円に合わせた。
リスクと懸念
利ざやの薄さと経費
総資金利鞘は 0.06% で、経費率 0.99% が収益を食う。物価と賃金の上昇で経費が先に増えれば、利ざやが広がっても利益は残らない。
鳥取県の人口減
2050 年の人口は 2020 年比で約 27% 減る見通し。貸出は名目でも物価並みにしか伸びず、預金も細る。住宅ローンの競争は薄利のまま続く。
債券の評価損
債券に約 50 億円の含み損がある。金利が上がれば広がり、株式の含み益も目減りする。自己資本比率の低下は配当と再編の交渉力に響く。
預金の流出と調達コスト
上位行・ネット銀行・信用金庫との預金集めの競争で、預金金利の引き上げ圧力が強まる。広がるはずの利ざやが削られる。
与信費用の上振れ
不良債権比率は 1.13% と低いが、県内の中小企業の業況が悪化すれば与信費用が急増し、数年分の利益が一度に消える。
再編が少数株主に不利な形で進む
小さな銀行は単独の経営が難しくなる。再編が救済に近い形で進めば、比率は少数株主に不利に出る。
今後の分かれ目
- 県内外の地銀と提携や統合の発表があり、比率が公正に近い
- 再編の恩恵が確率に入り、楽観側の重みが 8% から 20% 前後へ上がる。
- 経費率が 0.9% を割って下がり始める
- 利ざやの広がりが利益に残る証拠になり、中立側の利益の見方が上がる。
- 債券の含み損が 25 億円を割って縮む
- 自己資本が厚くなり、配当の増額余地が広がる。やや悲観側の確率を下げる。
- 預金金利が貸出金利の上昇に追いつき、利ざやの広がりが止まる
- 利益の伸びが鈍り、やや悲観側の確率が上がる。
- 与信費用が純利益の 3 割を超える年が続く
- 悲観側の確率を上げ、配当方針の見直しを疑う。
見ておくもの
- 総資金利鞘と経費率の推移
- 債券の含み損と評価差額金
- 預金金利の上がり方と預金残高
- 与信費用の水準と不良債権比率
- 県内外の地銀との提携・再編の動き
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から自己資本と ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の PBR 0.33 倍・PER 11 倍弱は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。総資金利鞘が 0.06% と薄い点は、PBR の割安さを割り引く理由として悲観側の床に入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→12.12 倍・やや楽観 PER 9→12.12 倍・中立 PER 8.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。個別のリスク(再編・評価損)は k に足さず、筋書きと確率で表した。