結論
おきなわフィナンシャルグループは、沖縄銀行を中核にする県内最大級の地方銀行グループだ。県内の貸出シェアは3割台半ばを占める。筆者の結論は、今の値段は本質価値をやや上回り、やや割高というものだ。理由は、金利の追い風と沖縄の需要の強さを、資本の薄さと観光への偏りがほぼ打ち消すからだ。\n追い風は本物だ。短期金利が2%へ上がる間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。利益は10年で2倍に近づく。2026年3月期の純利益は113億円で、中期計画の最終年度の目標を1年早く超えた。\n弱みは2つある。1つは自己資本比率が5.5%と薄いことだ。もう1つは、観光と建設に偏った県経済だ。景気の谷が来ると、与信費用が一気に膨らむ。県内は琉球銀行・沖縄海邦銀行との3行体制で、貸出金利は競争で決まる。堀は普通だ。\n10年後の中立の姿は、ROE8%台前半だ。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を約18%下回る。安全域は薄い。筆者が注目するのは、利益が伸びた後に、この会社が資本をどう配るかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を買い増したくなる点が2つある。県内の取引の厚みと、金利上昇がそのまま利益になる仕組みだ。事業は預金で集めて貸す単純な仕組みで、10年先の姿も読みやすい。観光と建設で伸びる県の需要が、貸出の数量を支える。
気になる点もある。自己資本比率が低く、観光に偏った経済は一度崩れると傷が深い。堀も強いとは言えず、金利競争で利ざやを失う余地がある。利益が2倍になる間に、どれだけ株主へ戻すか。使い道を決める経営の姿勢は、まだ試されていない。筆者は、利益が伸びた後に資本をどう配るかを、いちばん注意して見たい。
本質価値の置き方は割り切っている。10年後の利益と自己資本から、稼ぐ力に見合う値段を出した。県内の寡占の安定感と、資本の薄さ・観光への偏りを、確率で相殺している。県内の寡占は利益が続くという意味では強みだが、地域が小さいという意味では上限にもなる。
最後の安全域の判断は、確率で重みづけた本質価値と今の時価総額の差で見る。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し約−6%で、値段に見合う程度だ。安全域は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
おきなわフィナンシャルグループ(OFG)は、2021年10月に発足した沖縄銀行の持株会社だ。稼ぎの大部分は沖縄銀行の預金と貸出にある。預金は2.7兆円前後、貸出は2兆円前後と見られる。残りは預金で集めたお金を国債・社債・株式などで運用する有価証券の利息配当だ。
貸出は法人向けと個人向けに分かれる。法人は県内の中小企業と観光・建設・不動産が中心で、国や自治体向けも含む。個人は住宅ローンやカードローンなど、生活に近い貸出だ。県内の貸出シェアは3割台半ばと、格付会社の資料にある。琉球銀行、沖縄海邦銀行との3行体制で、県内の地銀はこの3つだけだ。
銀行以外の柱もある。おきぎんリース、クレジットカードの会社、日本M&Aセンターと組んだ事業承継の会社、地域商社のみらいおきなわがグループにいる。手数料やリースの収益は、貸出の利ざやが薄い時代に会社を支えてきた。ただ人手のかかる事業で、利益に残る割合は小さい。
第2次中期経営計画(2024年4月〜2027年3月)の柱は3つだ。県内の事業者の資本づくりを支える。人材に投資する。窓口の事務を3割減らし、浮いた人を法人営業に振り向け、営業担当者を倍にする。2026年3月期の純利益は113億円。計画の最終年度の目標110億円を、1年早く超えた。
もう一つ、地域の中での立ち位置がある。沖縄は離島が多く、銀行は金融だけでなく、販路づくりや人材支援まで頼られる。OFGは持株会社になってから、非金融の支援を広げると話してきた。収益の柱になるのは当面、利ざやだ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは県内の取引の厚みだ。貸出シェアは3割台半ばで、県内に張った店舗網と、県内の事業者との長い付き合いが土台になる。観光で潤う県の経済と一緒に、貸出も預金も名目で伸びやすい。筆者はここをいちばん評価している。
ただし堀は強くない。県内には琉球銀行と沖縄海邦銀行がいて、中小企業向けの貸出金利は競争で決まる。沖縄振興開発金融公庫のような公的な貸し手も、低い金利で大きな案件に入る。値決めの力は普通だ。借り手の事情で金利が決まる部分が多く、堀は普通と見る。
資本の厚みは薄い。連結の自己資本比率(純資産÷総資産)は5.5%で、同業の中でも低い方だ。ROEは7%まで来たが、10年前は3〜4%台だった。利益が出る体質に変わったのは、ここ2年の金利上昇が大きい。利益の伸びの多くは外の金利が運んだもので、自前の強みで稼いだと言える段階にはまだない。
経営は堅実だ。配当は下限を決めた累進の方針で、利益に見合う還元を機動的に行うとしている。事務の効率化で浮かせた人を法人営業へ回す手は、理にかなう。一方、大株主には県内の電力会社や不動産会社、生命保険会社が並び、持ち合いの色が濃い。政策保有株の圧縮の方針は、確認できなかった。資本の使い方で、まだ磨く余地がある。
もう一つ、収益の持久力を見ておきたい。2022年3月期から4期続けて、純利益は50億〜80億円台にとどまった。収益の体質は、ここ1〜2年でようやく変わり始めたばかりだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の銀行は、金利のある世界に入った。日銀が短期金利を2%へ上げていく間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。この差が利益になる。2026年11月には、沖縄銀行も琉球銀行も、普通預金金利と短期プライムレートを引き上げる。
沖縄は全国の中でも需要が強い。観光客は戻り、県内の景気は好調で、県内3行の2026年3月期の純利益の合計は220億円と、過去10年で最高だった。人口は全国で最も緩やかに減るか、当面は横ばいで、貸出の数量も他地域より伸びやすい。国の沖縄振興の予算も、建設や観光の投資を支える。
同時に、この需要は偏りも抱える。観光と建設への依存が高く、台風・感染症・為替・国際情勢で観光客が減ると、取引先の資金繰りが一気に悪くなる。沖縄は県民所得が低く、中小企業の体力も弱い。好況期の与信費用が小さいのは、景気が良いからだ。
再編の相手は限られる。県内は3行だけで、3行が合流すれば県内の貸出の大半を一社が占める。公正取引の面で難しく、実現は遠い。県外の銀行が沖縄へ入る動きもある。OFGは2026年8月、台湾系の東京スター銀行と地域経済の活性化で連携協定を結んだ。競争の形は、県内の3行から、県外や海外の資金を巻き込む形へ少しずつ動いている。
銀行業全体では、再編と資産運用の拡大が続く。投資信託の残高は過去最高で、NISAの広がりが手数料収益を押し上げる。沖縄は県民の金融資産が少なく、この流れの恩恵は本土より小さい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2027年3月期の配当は、前期より増やす計画で、総額は利益の4割弱に当たる。下限を決めた累進配当の方針だ。自社株買いを実際に行ったかは、確認できなかった。利益が2倍に近づく間、還元率を上げるかどうかが、資本効率の分かれ目になる。
自己資本の比率は低く、利益がたまれば比率は自然に上がる。会社は株主資本コストを8%程度と見て、ROE6%程度を目標にしてきた。実績は7%を超え、目標を先に越えた。次の計画で目標をどこに置くかが、市場の見方を決める。
M&Aは小さい。日本M&Aセンターと組んだ事業承継の会社を立ち上げ、地域商社のみらいおきなわを持つ。大型の買収で資本を使う計画は見当たらない。県内の再編は規制と競争の面から難しく、買収される側になる確率も、kabufuの推定で10年以内18%程度と低い。
大株主は信託口のほか、沖縄土地住宅、沖縄電力、住友生命、日本生命と、県内外の持ち合いが目立つ。外国人の持ち株は16%で、2026年8月にMSCIの小型株指数に採用され、海外の資金が入りやすくなった。持ち合いが厚いまま資本効率の改善を求められる局面が、これから増える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
沖縄は全国で最も勢いのある地域経済の一つだ。観光客は戻り、人口の減り方は全国で最も緩やかで、県内の貸出需要は強い。県内3行の2026年3月期の純利益の合計は過去10年で最高になり、OFGの純利益も中期計画の最終年度の目標を1年早く超えた。会社の今期予想は純利益120億円で、さらに上積みされた。
利益の伸びは、金利で決まる。短期金利が2%まで上がる間、貸出金利はほぼ全部が追随し、預金金利は4割だけ付いてくる。預貸の利ざやは構造的に広がる。2026年11月の預金金利と短期プライムレートの引き上げは、その入り口だ。有価証券も、安い利回りの債券が満期を迎えるたびに高い利回りへ入れ替わる。
事務の自動化で浮いた人を法人営業へ回し、営業担当者を倍にする計画は、貸出のシェアをさらに押し上げる。事業承継、地域商社、東京スター銀行との協定は、県内の需要を取り込む手段だ。県内に強い競合は2行だけで、県外の銀行が入る余地も狭い。
資本は利益で厚くなり、配当と自社株買いの余地が広がる。ROEが10%を超える10年は、十分にありうる。筆者は、強気の見方の骨格は、数字の裏付けのある金利の話だと見ている。
慎重な見方
今の利益は景気の良さと金利の上昇が重なった結果で、続く保証はない。沖縄は観光に頼る度合いが高く、台風、感染症、国際情勢の緊張で観光客が止まると、取引先の宿泊・飲食・小売の資金繰りが一気に悪化する。好況期の与信費用は小さく出るものだ。景気が普通に戻れば、与信費用は今の何倍にもなりうる。
金利上昇の恩恵も、そのまま残るとは限らない。県内には琉球銀行と沖縄海邦銀行がいて、貸出金利は競争で決まる。預金でも、他行や県外のネット銀行との争いで、預金金利を引き上げる幅は想定より大きくなりうる。利ざやが広がる幅は、競争で削られる。
自己資本比率は5.5%と薄い。債券の含み損や与信費用で資本が傷むと、貸出の余力がすぐに縮む。大株主には持ち合いの色が濃い企業・保険会社が並び、資本の使い方を磨く圧力は弱い。10年のどこかで景気の山と谷が1回は来る。今の利益の水準を、そのまま10年先に持ち込むのは危うい。株式市場は、金利上昇の追い風を織り込みやすい。追い風が止まった時の落差は、地方の小さな銀行ほど大きい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の方が筋は通る。金利上昇の恩恵が数量と価格の両面で効き、県内の需要も強いからだ。ただし慎重な見方が突く、観光への偏りと資本の薄さは、悲観側の確率に入れた。中立に最も重みを置き、楽観側と悲観側はほぼ同じ厚みにした。やや悲観をやや厚めにしたのは、景気の谷が10年のうちに1回は来るためだ。確率を寄せた先は、楽観ではなく、景気の谷を一度は通る中立のやや下の筋書きだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,614 円2,105 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,008 円659 億円)。 今の値に割り戻すと 6,375 円1,396 億円、今との差 −8.0%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 16,423 円3,597 億円 | 4,187 円917 億円 | +197.4% | +11.5% | 2,061 円451 億円 |
| やや楽観 | 23% | 13,602 円2,979 億円 | 3,685 円807 億円 | +149.5% | +9.6% | 3,976 円871 億円 |
| 中立 | 30% | 11,179 円2,448 億円 | 3,238 円709 億円 | +108.0% | +7.6% | 4,325 円947 億円 |
| やや悲観 | 24% | 5,206 円1,140 億円 | 2,333 円511 億円 | +8.8% | +0.8% | 1,809 円396 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,849 円405 億円 | 1,621 円355 億円 | −49.9% | −6.7% | 451 円99 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,614 円2,105 億円 | 3,008 円659 億円 | +82.1% | +6.2% | 12,623 円2,764 億円 |
今の株価時価総額 6,930 円1,518 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 観光と金利の追い風に、営業強化が重なる10年 利益 269 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 16,423 円3,597 億円
観光と建設の好調が10年続き、県内の貸出需要は他の地方より強く伸びる。短期金利が2%に定着する間、預金金利の引き上げは小さく済み、利ざやは広がり続ける。事務の自動化で浮いた人材が法人営業に回り、営業担当者の倍増が貸出のシェアを押し上げる。
有価証券は、低利の債券が満期を迎えるたびに高い利回りへ入れ替わり、運用ざやが大きく伸びる。事業承継と地域商社の収益も育ち、手数料の比率が上がる。政策保有株の圧縮と自社株買いが進み、自己資本の比率は薄いまま、ROEは10年後に10%台へ上がる。
県外や台湾系の東京スター銀行との連携が、県内の需要を呼び込む。県内の再編は動かないが、競争は穏やかなまま収益性が高まる、10年の中でも最も良い姿だ。県内の人口と観光客の厚みが、貸出と手数料の両方を押し上げる。
- 法人貸出:数量 1.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 265 億円・営業利益 175 億円。残高 1.68 兆円(名目)× 率 1.58%、利益率 66%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 150 億円・営業利益 89 億円。残高 1.07 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 59%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.3%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 132 億円・営業利益 121 億円。残高 1.03 兆円(名目)× 率 1.28%、利益率 92%
- 手数料・リース・カード:数量 2.5(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 1.0%(手数料率等(%))→ 売上 251 億円・営業利益 96 億円。残高 2.46 兆円(名目)× 率 1.02%、利益率 38%
倍率:事業の純利益 269 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.37 倍、時価総額 3,596 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:観光と建設の好調が10年続き、預金金利の引き上げも小さく済み、営業強化が成果になる。条件が重なる必要があり、確度は高くない。
やや楽観 23% 県内の需要が続き、利ざやの拡大が定着 利益 234 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 13,602 円2,979 億円
県内の需要が当面強く、貸出は名目で年3%ほど伸びる。短期金利が2%で落ち着き、預金金利は4割が付いてくる。利ざやの拡大は計画の方向どおりで、利益は10年で2倍に近づく。
法人営業の増員は一定の成果を出し、手数料やリースの収益も少しずつ増える。与信費用は景気の山谷を一度は経験するが、傷は小さい。還元は配当と自社株買いで利益の4割台後半まで上がり、自己資本の比率は今とあまり変わらない。
競争は穏やかで、琉球銀行・沖縄海邦銀行との均衡は大きく崩れない。派手さはないが、金利の追い風を着実に取り込む10年になる。県内の寡占の安定感は、そのまま10年続く。
- 法人貸出:数量 1.6(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 250 億円・営業利益 159 億円。残高 1.64 兆円(名目)× 率 1.52%、利益率 64%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 142 億円・営業利益 81 億円。残高 1.05 兆円(名目)× 率 1.35%、利益率 57%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 125 億円・営業利益 114 億円。残高 1.02 兆円(名目)× 率 1.23%、利益率 91%
- 手数料・リース・カード:数量 2.4(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 1.0%(手数料率等(%))→ 売上 239 億円・営業利益 83 億円。残高 2.41 兆円(名目)× 率 0.99%、利益率 35%
倍率:事業の純利益 234 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.73 倍、時価総額 2,979 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:県内の需要が当面続き、利ざやの拡大がおおむね計画どおり定着する。上位の見通しだが、無理のない範囲。
中立 30% 中立:金利は定着し、県内3行の均衡が続く 利益 202 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 11,179 円2,448 億円
短期金利は2%で定着し、貸出金利の上がりに預金金利が4割付いてくる。県内の貸出残高は名目で年3%弱の伸びとなり、利ざやは広がる。県内3行の競争は今の均衡のまま続く。
与信費用は、景気の山と谷を一度ずつ経験してならした水準に戻る。人件費は賃上げで年4%ほど上がり、利益率は利ざや拡大の分だけ上がる。手数料やリースは堅調に伸びるが、人件費に食われ利益は小さい。利益は10年で2倍に近づく。
還元は利益の4割台半ばで、自己資本は貸出の伸びと同じ速さで増える。ROEは8%前後に上がり、県内の寡占の安定感が10年続く。特別な上振れも下振れもない姿だ。県内の需要と競争の均衡が、10年を通して大きくは崩れない。
- 法人貸出:数量 1.6(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 234 億円・営業利益 143 億円。残高 1.61 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 61%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 134 億円・営業利益 72 億円。残高 1.03 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 54%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 121 億円・営業利益 110 億円。残高 1.01 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 91%
- 手数料・リース・カード:数量 2.4(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 1.0%(手数料率等(%))→ 売上 230 億円・営業利益 73 億円。残高 2.37 兆円(名目)× 率 0.97%、利益率 32%
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,448 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が定着し、与信費用が景気循環をならした水準に戻り、県内3行の競争が今の均衡で続く。最も重みを置く中心の筋書き。
やや悲観 24% 競争が利ざやを削り、観光の谷が一度来る 利益 114 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 5,206 円1,140 億円
金利上昇は進むが、県内3行の預金競争と、県外のネット銀行への預金の流出で、預金金利の上げは想定より大きくなる。貸出も競争で金利が上がりにくく、利ざやの広がりは中立の半分ほどにとどまる。
観光の谷が10年のうちに一度来る。台風や感染症、国際情勢で観光客が減り、宿泊・飲食・小売の与信費用が膨らむ。人件費は賃上げで増え続け、経費の負担は重い。法人営業の増員は、競争の中で成果が出にくい。
利益は今の水準から1割ほど増えるにとどまり、ROEは6%を下回る。配当は守るが、自社株買いは抑えられ、強みの薄い地銀として市場の評価は上がらない。金利の追い風も、競争で削られた分だけ小さな恩恵にとどまる。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 205 億円・営業利益 114 億円。残高 1.52 兆円(名目)× 率 1.35%、利益率 56%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 118 億円・営業利益 56 億円。残高 0.97 兆円(名目)× 率 1.21%、利益率 47%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.1%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 106 億円・営業利益 95 億円。残高 0.96 兆円(名目)× 率 1.10%、利益率 90%
- 手数料・リース・カード:数量 2.2(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 0.9%(手数料率等(%))→ 売上 202 億円・営業利益 45 億円。残高 2.19 兆円(名目)× 率 0.92%、利益率 22%
倍率:10年後のROE5.1%(純利益114億円÷自己資本2,247億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。PERは1÷k=約12.1倍が上限で、観光の谷が一度来た利益の質の低さから、約8割強に置いた。上限の8.2割に置き、10倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:景気の谷が10年のどこかで一度来て、与信費用が増え、競争で預金金利・貸出金利の差が縮む。観光への偏りがあるため、やや厚めに置く。
悲観 13% 構造的に負け、観光の谷と競争で資本が傷む10年 利益 45 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,849 円405 億円
観光への偏りが裏目に出る。長引く観光の落ち込みで、取引先の宿泊・飲食・小売の与信費用が大きく膨らみ、貸出の質が崩れる。県内の競争は激しく、貸出金利は下がり、預金の流出を食い止めるため預金金利を引き上げる。利ざやの拡大はほとんど残らない。
自己資本比率の薄さが、貸出の余力をすぐに縮める。有価証券の含み損も重なり、貸出の量は名目でも伸びなくなる。事務の自動化は進むが、人件費の上昇が利益を食い続ける。
利益は今の4割ほどに落ち、ROEは2〜3%台。もう優良な地銀ではなく、資本の薄い県内の一銀行として、配当を守るのが精一杯の10年になる。資本が薄い分、立て直しの余力も乏しい。
- 法人貸出:数量 1.4(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 160 億円・営業利益 67 億円。残高 1.35 兆円(名目)× 率 1.18%、利益率 42%
- 個人貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 94 億円・営業利益 31 億円。残高 0.87 兆円(名目)× 率 1.08%、利益率 33%
- 有価証券運用:数量 0.9(有価証券残高(兆円))× 価格 1.0%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 90 億円・営業利益 79 億円。残高 0.90 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 88%
- 手数料・リース・カード:数量 2.0(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 0.9%(手数料率等(%))→ 売上 166 億円・営業利益 6 億円。残高 1.95 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 4%
倍率:10年後のROE2.2%(純利益45億円÷自己資本2,058億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。上限の7.4割に置き、9倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:観光の長期の落ち込みと、県内競争の激化、資本の薄さによる貸出の縮みが重なる。10年という期間では1割強の確率は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
沖縄県内の中小企業・観光・建設・不動産・自治体向けの法人貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 1.1% | 132 | 70 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 1.5% | 234 | 143 |
取り方:貸出は2兆円前後と見て、そのうち法人・事業性向けを約6割の1.2兆円とおき、預金で集めたお金との差の利ざやを1.1%とした。預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)は40%。短期金利が今の1%前後から2%へ上がる間に、変動金利の貸出はほぼ全部上がり、預金は4割だけ上がる。県内は3行で競争が強く、7186の横浜より少し狭めて、中立の利ざやは10年で+0.35%広がると置いた。貸出残高はお金の量なので名目で伸ばす:中立で年3.0%(物価3%と、観光・建設の実需の伸び。人口の減りは緩やか)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1.0% | 80 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.3% | 134 | 72 |
取り方:個人向けを貸出の約4割の0.8兆円とおき、住宅ローンの利ざやを1.0%とした。住宅ローンは固定金利の割合が高いと見て、金利上昇の波及は法人より遅いとした。預金ベータ40%のもとで、中立の利ざやは10年で+0.30%広がると置いた。残高は名目で伸び、中立で年2.6%(物価3%と、人口の緩やかな減り)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
有価証券運用
預金の運用先である国債・社債・株式・投資信託などの有価証券の利息配当。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 0.9% | 67 | 60 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.2% | 121 | 110 |
取り方:貸出より預金が多い銀行なので、預金のうち約0.75兆円を有価証券で運用しているとおいた(開示の実数は取れず推定)。預金コストを引いた後の運用ざやを0.9%とした。利回りの低い債券が満期を迎えるたびに、金利が上がった後の利回りへ入れ替わるので、中立の運用ざやは10年で+0.30%広がると置いた。残高は預金とともに名目で年3.0%伸びる。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
手数料・リース・カード
投資信託・保険・決済・為替の手数料、リース、クレジットカード、事業承継のコンサルなど。
| 数量手数料・リース・カード等の取扱高(兆円) | 価格手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.6 | 1.0% | 152 | 45 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1.0% | 230 | 73 |
取り方:役務取引、おきぎんリース、カード、事業承継などの取扱高の合計を1.6兆円、実効手数料率を0.95%とおいた(営業収益の概算)。人件費の割合が大きく、営業利益は小さい。預かり資産・取扱高はお金の量なので名目で伸び、中立で年4.0%(物価3%と、資産形成と事業承継の需要)。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
観光への偏りと与信費用
沖縄の経済は観光と建設への依存が高く、台風・感染症・国際情勢で観光客が止まれば、宿泊・飲食・小売の取引先の資金繰りが一気に悪化する。好況期の与信費用は小さく出がちだ。景気が普通に戻れば、与信費用は今の何倍にもなりうる。
預金金利の引き上げ幅と預金の流出
利ざやの拡大は、預金金利の上げが4割で済むことが前提だ。県内の他行や県外のネット銀行との競争で、この比率が高まれば、利益の伸びは大きく削られる。2026年11月の預金金利の引き上げ後の、預金の動きを確認したい。
自己資本比率の薄さ
連結の自己資本比率は5.5%と低い。債券の含み損や与信費用で自己資本が傷むと、貸出の余力が一気に縮む。ROEは上がったが、資本の厚みで見ると、耐える力は同業の優良行に見劣りする。
県内競争の激化
県内は琉球銀行・沖縄海邦銀行との3行体制で、貸出金利は競争で決まる。県外の銀行や、台湾系の東京スター銀行との連携のように外の資金が入る動きもあり、競争の形が変わる可能性がある。県内の公的な貸し手も、低い金利で大型案件に入る。
人件費の上昇
沖縄銀行とOFGは4年連続の5%の賃上げを行った。賃上げが続けば、経費は物価を上回って増える。事務の自動化で人を法人営業へ回す計画の成否が、利益率に直結する。
持ち合いと資本の使い方
大株主に県内の企業や生命保険会社が並ぶ。政策保有株の圧縮の方針は確認できず、利益が増えても自社株買いなど資本の使い方が磨かれない可能性がある。資本効率の改善が、利益の伸びより遅れる恐れがある。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速く上げ、預金金利の上げが4割以内に収まったら
- 利ざやの拡大は想定より大きくなる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 沖縄の観光客数が大きく落ち込み、宿泊・飲食の与信費用が増え始めたら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。与信費用が貸出のどの業種で増えたかを決算で確認する。
- 預金金利の引き上げ後に、預金が県外のネット銀行へ流れ始めたら
- 預金ベータが想定より高く、利ざやの拡大が削られる。中立の利益を引き下げる。
- 次の中期経営計画でROEの目標が8%を超え、自社株買いの数値が示されたら
- 資本効率の改善が速いとみて、楽観側の確率をやや上げる。
- 県内の銀行どうしの経営統合や資本提携が報じられたら
- 経費率の改善と競争の緩和で利益は増えるが、規制の審査と統合費用がかかる。数字を見直す。
- 政策保有株の売却と自己資本比率の改善が示されたら
- 資本の厚みが増し、悲観の傷が浅くなる。悲観側の確率を下げる。
見ておくもの
- 沖縄の観光客数・県内景気と、県内3行の与信費用の推移
- 預金金利の引き上げ後の預金残高と預金ベータ
- 貸出残高と貸出利ざやの推移(OFGの四半期決算)
- 次の中期経営計画のROE目標と株主還元の数値
- 連結の自己資本比率と有価証券の含み損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は、10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality 0.75%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その約9.5割・9割・8.5割に置いた。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERの上限は1÷k=約12.1倍で、そこから下げた。悲観の利益は、競争で利ざやが縮み、与信費用が重い構造から出した。悲観の値は稼ぐ力(利益÷k)より下で、床は自己資本の何割とは置いていない。kが1%高い(9.25%)と、10年の中立のPERは10.5倍から9.4倍に下がる。
リース会計は、新リース会計基準(2028/03期から)で営業費用の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ家賃を営業費用に入れた形でそろえた。店舗の賃借が少ない銀行業で、影響は小さいと見る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.88→13.37 倍・やや楽観 PER 11.62→12.73 倍・中立 PER 10.74→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、預金ベータで利ざやを決めた。個別のリスク(観光への偏り・県内競争・資本の薄さ)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行の領域の会社と同じ物差しで、差は quality の4部品だけで出した。