結論
山陰合同銀行は、島根と鳥取を地盤に、山陽・関西・東京まで貸出を広げた広域地方銀行である。筆者の結論は、今の値段はやや割高寄りだ。利ざやが広がる追い風は本物だが、地盤の人口減と有価証券の含み損が、その分を打ち消すからである。
強みは経費の軽さにある。経費率は46%台で、地銀の平均を大きく下回る。同じ収益でも手元に残る利益が厚い。山陰では預貸金で首位に立ち、鳥取銀行と島根銀行との間には「一強二弱」の差がある。
貸出の伸びを支えるのは、地盤の外だ。東京の貸出は1兆円を超え、クロスボーダーローンや不動産のノンリコースローンが中心になる。ここは利ざやが厚い代わりに、与信の目利きを問われる。
会社は10年後に純利益400億円・ROE8%以上を掲げる。短期金利が2%へ向かえば貸出の利ざやは広がり、名目の世界ではこの目標を超える利益も見込める。ただし自己資本の厚みは、含み損のぶん見かけより薄い。
10年後の利益は、中立で430億円前後に育つ。そこでのROEは8%台半ばで、資本コストにほぼ並ぶ程度だ。倍率を上乗せできるほどの余裕はなく、価値は今の値段と近いところに落ち着く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この銀行をずっと持ち続けたいかと問うてみる。答えは、条件つきの「はい」だ。
良い点は、経費が軽く、利益の質が高いことだ。山陰で首位に立ち、競合は少ない。利ざやが広がる時代には、固定費の軽さがそのまま株主の利益になる。
気になる点は二つある。一つは、成長の源泉が地盤の外にあることだ。伸びる貸出は東京と関西にあり、他行も狙う競争の激しい市場である。与信の傷は、景気が悪くなって初めて表に出る。もう一つは、資本の薄さだ。含み損を引くと、自己資本の余裕は見かけの数字より小さい。
資本の配分は、改善の途中と見る。配当性向40%への切り替えと、政策保有株の縮減は正しい方向だ。ただ、自社株買いは小さい。余った資本を積極的に株主へ返す姿勢は、まだ見えない。
安全域でいえば、今の値段は本質価値をやや上回る。大きく割高とまでは言えないが、安全域は無い。筆者は、この銀行を「良い会社だが、値段が安全域を与えない会社」と見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、山陰両県と山陽・関西・東京での貸出だ。預金を個人と地元企業から集め、貸出と有価証券で運用して、金利の差を得る。貸出の平均残高は約5.2兆円。うち法人・自治体向けが4兆円弱、個人ローンが1.4兆円を占める。
法人向けは二つの顔を持つ。山陰では、地元の中小企業を支える基盤の事業だ。山陽・関西では、融資と経営コンサルを組み合わせた営業で取引先を広げている。東京はクロスボーダーローンと不動産のノンリコースローンが中心で、残高は1兆円を超えた。
個人向けは住宅ローンが柱だ。ただし金利競争が激しく、残高の伸びは鈍っている。給与振込や年金の口座を増やし、預金の基盤を守る狙いがある。
手数料の事業は小さいが、伸びしろがある。役務取引等の利益は約120億円。2019年に野村證券と組み、預かり資産は1.25兆円まで増えた。当初の目標を約2年早く超えた。法人向けには、M&Aやファイナンスの助言を売る。
有価証券は約1.9兆円あり、運用の稼ぎは大きい。いま会社は、固定利付債中心の運用を、金利変動に強いアセットスワップ中心へ切り替えている。含み損が1,000億円を超えたため、この入れ替えを前倒しで進める。
グループには、再エネの電力契約を扱うごうぎんエナジーと、ベンチャー投資のごうぎんキャピタルがある。利益の柱にはまだ遠いが、地域の課題を事業にする試みだ。
優良さと弱いところ
最大の堀は、山陰での顧客基盤と、軽い経費構造である。島根・鳥取の企業と自治体との取引が厚く、地盤での競合は鳥取銀行と島根銀行の2行に限られる。鳥取県の指定金融機関を務める関係は、他行がすぐには崩せない。
経費率は46%台と低い。人員は2018年の3,100人台から約2,800人まで減らし、店舗の統廃合と事務の効率化を進めてきた。利ざやが広がる局面では、固定費の軽い銀行ほど、増えた収益を利益に変えやすい。
弱みは三つある。第一に、地盤の人口減だ。山陰は全国平均より人口が減る。第二に、有価証券の含み損だ。1,000億円を超え、自己資本を見かけより薄くしている。第三に、県外の貸出だ。伸ばした分だけ、与信の目利きが試される。格付会社も、山陰の外での与信管理には留意が要るとみている。
資本の使い方は、改善の途中にある。還元の目安を総還元性向40%から配当性向40%へ改め、累進的に配当を増やす方針だ。自社株買いはまだ小さい。政策保有株は、2030年までに連結純資産比で10%未満へ減らす。筆者は、経営が資本の質を意識し始めた点を評価する。
堀は強いが、広くはない。山陰の外では、メガバンクや他の地銀と同じ土俵で戦っている。10年先に超過の稼ぎがどれだけ残るかは、普通の堀と見るのが妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行は、金利のある世界に入った。短期金利が2%へ上がれば、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金の金利は、その4割ほどしか上がらない。この差が利ざやの拡大になる。地銀の法人向けでは、10年で0.45ポイント前後広がるのが妥当な見立てだ。
量は逆に細る。山陰は人口減が速く、地元の貸出需要は伸びにくい。山陰合同銀行が県外へ貸出を広げるのは、この壁を越えるためだ。広島・岡山・兵庫・大阪・東京は市場が厚い。そのぶん、メガバンクや各地の地銀との競争になる。
再編の波も無視できない。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行の統合合意に見るとおり、1県1行へ向かう流れは続く。山陰は3行が並ぶが、預貸金は一強二弱の形で、山陰合同銀行は束ねる側に近い。ただし同行の統合を示す報道は見つからなかった。
信用コストは、低い水準が長く続いてきた。景気が一巡すれば、平均的な水準へ戻る。山陰は中小・零細の比率が高く、営業エリアでは倒産が増えている。同行は予兆の管理で抑えているが、この先は慎重に見たい。
有価証券の含み損は、業界に共通の課題だ。金利が上がるほど評価損は膨らむ。だが債券は満期が近づけば元に戻る。時間が味方になる損である。一方、利息の入りは、買い替えのたびに高くなる。
資本政策と M&A
還元は、総還元性向40%から配当性向40%へ軸を移した。累進的に配当を増やし、自社株買いは機動的に行う。2026年5月には30億円の自社株買いを決めたが、規模は小さい。
自己資本比率は11.85%で、中計が掲げる11%程度を上回る。ただ有価証券の評価損を織り込むと9.65%へ下がる。余裕は見かけほど厚くない。会社は、貸出の伸びが想定を超えても11%程度を保つとする。成長に回せる資本は限られ、還元を急に厚くする余地も大きくない。
政策保有株は、2030年までに連結純資産比10%未満へ縮める。前期は取得原価で17億円を減らした。売却で得た資金は、貸出か還元に回る。
会社が自ら見る資本コストは、2025年10月に6%から7%へ引き上げた。投資家の目線に近づく動きだ。会社はPBR1倍の実現を掲げている。
M&Aでは、買う側にも買われる側にもなっていない。10年の長さでは、山陰の再編に関わる可能性は残る。kabufuの推定では、10年以内にTOBや買収が起きる確率は15%である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
山陰合同銀行は、地方銀行で最も効率のよい部類に入る。経費率は46%台で、同じ貸出から残る利益が違う。短期金利が2%へ向かえば、変動金利の貸出の利ざやは広がる。軽い経費構造が、その広がりをほぼそのまま利益に変える。
貸出の伸びは、地盤の外で続く。東京の貸出は1兆円を超え、クロスボーダーローンと不動産ノンリコースローンで利ざやが厚い。山陽・関西では、融資と経営コンサルを組み合わせた営業が効いている。山陰の人口減は、県外の貸出で十分に補える。
有価証券の含み損は、時間が解消する。債券は満期が近づけば額面に戻り、買い替えのたびに利息の入りは高くなる。アセットスワップへの切り替えで、金利の変動にも強くなった。
資本政策も良い方向にある。配当性向40%への引き上げと累進配当、政策保有株の縮減が進む。純利益は27年3月期に255億円、28年3月期に280億円と、会社予想はすでに上方に動いた。10年後の名目の利益は、会社が掲げる400億円を超えると見てよい。
慎重な見方
利ざやの拡大は、業界の全員が受ける追い風だ。山陰合同銀行だけの強みではない。しかも預金の競争が激しくなれば、預金の金利は想定より早く上がり、利ざやの広がりは小さくなる。
地盤の山陰は、人口が全国平均より速く減る。県外へ貸出を広げるのは苦肉の策とも言える。東京や関西は、メガバンクと有力地銀がひしめく市場で、後から入る銀行は条件の悪い案件をつかみやすい。ノンリコースローンは、不動産の価格が崩れると損が直接出る。格付会社も、山陰の外の与信管理に留意を求めている。
有価証券の含み損は1,000億円を超え、自己資本は見かけより薄い。自己資本比率は評価損を織り込むと9.65%へ下がる。還元を厚くすれば、成長に使う資本が足りなくなる。自社株買いが30億円にとどまるのは、その余裕のなさの表れでもある。
経費率の低さは強みだが、すでに削れるところは削った。人員は約2,800人まで減り、これ以上の効率化は難しい。10年後にROEが資本コストを大きく超える姿は描きにくい。
どちらに重みを置いたか
どちらの言い分にも根拠がある。強気の見方は、経費の軽さと県外の貸出の伸びという事実を持つ。慎重な見方は、地盤の人口減と、含み損による資本の薄さという事実を持つ。
決め手は、利ざやの拡大の分を誰が取るかだ。業界全体で広がる分は、競争で預金や貸出に削られやすい。筆者は、軽い経費を持つ山陰合同銀行は他行よりは残せるが、超過の利益を長く残せるほどではないと見る。
確率は、中立に最も重みを置いた。慎重な側の根拠は、県外の与信と人口減という10年の間に実際に起こりうる事柄だ。このため悲観側の確率を、楽観側よりわずかに厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,831 円4,218 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 969 円1,443 億円)。 今の値に割り戻すと 1,896 円2,825 億円、今との差 −9.6%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,465 円6,652 億円 | 1,287 円1,918 億円 | +174.3% | +10.6% | 575 円857 億円 |
| やや楽観 | 23% | 3,880 円5,781 億円 | 1,166 円1,737 億円 | +140.6% | +9.2% | 1,161 円1,729 億円 |
| 中立 | 30% | 3,394 円5,057 億円 | 1,059 円1,577 億円 | +112.3% | +7.8% | 1,336 円1,990 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,613 円2,403 億円 | 769 円1,145 億円 | +13.5% | +1.3% | 571 円851 億円 |
| 悲観 | 13% | 670 円998 億円 | 536 円799 億円 | −42.5% | −5.4% | 157 円234 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,831 円4,218 億円 | 969 円1,443 億円 | +81.2% | +6.1% | 3,800 円5,661 億円 |
今の株価時価総額 2,097 円3,124 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:県外の貸出が伸び続け、利ざやの広がりが利益に直結する 利益 525 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 4,465 円6,652 億円
短期金利2%への上昇で貸出の利ざやが広がり、軽い経費がそれを利益に変える。東京の貸出は引き続き1兆円台で伸び、山陽・関西の融資とコンサルの一体営業が定着する。与信費用は景気の山谷をならして低い水準にとどまり、含み損は債券の満期とともに解消する。アセットスワップへの入れ替えが早く進み、運用の稼ぎも安定する。配当性向40%の累進配当に自社株買いが加わり、自己資本の増え方は抑えられる。会社が掲げる10年後の純利益400億円は、名目の世界では大きく超える。山陰の人口減は県外の伸びに埋もれ、地銀の中で効率の良い広域銀行として評価される10年になる。
- 法人貸出:数量 5.6(法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 877 億円・営業利益 465 億円。残高5.55兆円(名目)× 率1.58%、利益率53%
- 個人貸出:数量 1.9(個人ローン平残(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 270 億円・営業利益 130 億円。残高1.9兆円(名目)× 率1.42%、利益率48%
- 手数料・預かり資産:数量 2.3(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.1%(実効手数料率(%))→ 売上 242 億円・営業利益 106 億円。残高2.3兆円(名目)× 率1.05%、利益率44%
- 有価証券運用:数量 2.4(有価証券残高(兆円))× 価格 1.5%(運用ざや(%))→ 売上 341 億円・営業利益 283 億円。残高2.35兆円(名目)× 率1.45%、利益率83%
倍率:事業の純利益 525 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.67 倍、時価総額 6,652 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:県外の貸出が計画どおりに伸び、与信費用も低く保たれ、預金の競争も穏やかな、すべてが揃う筋書き。10年の間に揃う確率は1割にとどめた。
やや楽観 23% やや楽観:利ざやは広がり、県外の伸びが人口減を上回る 利益 475 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,880 円5,781 億円
利ざやは業界の見立てどおりに広がり、県外の貸出は年3.7%ほどで伸びる。山陰は人口減で細るが、東京と関西の伸びがそれを補う。経費率は45%台を保ち、含み損は買い替えで徐々に消える。与信費用は景気の一巡で平均並みに戻るが、大きな傷にはならない。還元は配当性向40%に自社株買いを足し、政策保有株の売却資金も回る。10年後の純利益は会社が掲げる400億円を上回り、ROEは9%強に乗る。ただし資本コストを大きく超える稼ぎが続くほどの堀はなく、倍率は伸びない。野村證券との銀証連携で預かり資産の手数料も育ち、収益の柱が貸出だけに偏る形は少しずつ和らぐ。
- 法人貸出:数量 5.4(法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 832 億円・営業利益 428 億円。残高5.4兆円(名目)× 率1.54%、利益率52%
- 個人貸出:数量 1.9(個人ローン平残(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 259 億円・営業利益 120 億円。残高1.865兆円(名目)× 率1.39%、利益率46%
- 手数料・預かり資産:数量 2.2(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 217 億円・営業利益 91 億円。残高2.15兆円(名目)× 率1.01%、利益率42%
- 有価証券運用:数量 2.3(有価証券残高(兆円))× 価格 1.4%(運用ざや(%))→ 売上 321 億円・営業利益 265 億円。残高2.29兆円(名目)× 率1.40%、利益率82%
倍率:事業の純利益 475 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.17 倍、時価総額 5,781 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの拡大と県外の貸出の伸びは、会社の足元の実績が裏づけている。会社予想もすでに上方に動いており、中立より少し上の筋書きに2割強を置いた。
中立 30% 中立:利ざやは広がるが、人口減と競争が利益の伸びを削る 利益 430 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,394 円5,057 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは今より高い水準で安定する。山陰の貸出は人口減でほぼ横ばいだが、東京・関西・広島の貸出が名目で伸び、全体では年3%強で増える。預金の競争で預金金利は預金ベータ40%のとおり上がり、利ざやの広がりは業界並みにとどまる。経費率は物価に沿って上がる人件費を、店舗の統廃合と事務の効率化で吸収し、45%前後を保つ。与信費用は景気が一巡して平均的な水準に戻る。含み損は債券の満期とともに解消し、政策保有株は予定どおり縮む。10年後の純利益は430億円前後。会社が掲げる400億円には届くが、大きくは超えない。
- 法人貸出:数量 5.3(法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 790 億円・営業利益 395 億円。残高5.27兆円(名目)× 率1.50%、利益率50%
- 個人貸出:数量 1.8(個人ローン平残(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 247 億円・営業利益 111 億円。残高1.83兆円(名目)× 率1.35%、利益率45%
- 手数料・預かり資産:数量 2.0(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 1.0%(実効手数料率(%))→ 売上 196 億円・営業利益 78 億円。残高2.0兆円(名目)× 率0.98%、利益率40%
- 有価証券運用:数量 2.2(有価証券残高(兆円))× 価格 1.4%(運用ざや(%))→ 売上 301 億円・営業利益 247 億円。残高2.23兆円(名目)× 率1.35%、利益率82%
倍率:事業の純利益 430 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 5,057 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの拡大と、人口減・預金競争・与信費用の正常化が拮抗する、最も確からしい中心の筋書き。10年の長さでは、どちらの極にも偏らないと見て3割を置いた。
やや悲観 24% やや悲観:預金競争と県外の与信費用が利ざやの広がりを食う 利益 250 億円 · PER 9.6 倍 · 株価時価総額 1,613 円2,403 億円
預金の獲得競争が激しくなり、預金金利が想定より早く上がって、利ざやの広がりは業界の見立ての6割ほどにとどまる。東京や関西の貸出は伸びるが、ノンリコースローンなどで与信費用が出て、利益を削る。山陰は人口減が加速し、地元の貸出はほぼ横ばいから減少に向かう。経費率は50%台へ上がる。含み損は解消するが、その間に自己資本の余裕が薄く、還元は抑えられる。10年後の純利益は250億円前後にとどまり、ROEは5%前後で資本コストに届かない。会社が掲げた400億円の目標には届かず、中期経営計画の次の改定で、目標の引き下げと資本政策の見直しを迫られる。山陰の中では首位を保つが、広域化の成果は期待を下回る10年になる。
- 法人貸出:数量 5.0(法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 675 億円・営業利益 290 億円。残高5.0兆円(名目)× 率1.35%、利益率43%
- 個人貸出:数量 1.8(個人ローン平残(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 219 億円・営業利益 83 億円。残高1.75兆円(名目)× 率1.25%、利益率38%
- 手数料・預かり資産:数量 1.8(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率(%))→ 売上 161 億円・営業利益 53 億円。残高1.75兆円(名目)× 率0.92%、利益率33%
- 有価証券運用:数量 2.1(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用ざや(%))→ 売上 242 億円・営業利益 184 億円。残高2.1兆円(名目)× 率1.15%、利益率76%
倍率:10年後のROE5.0%(純利益250億円÷自己資本4,965億円)。ROEはk8.5%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。筋書きは「やや悲観:預金競争と県外の与信費用が利ざやの広がりを食う」。上限の8.2割に置き、9.61倍。還元を会社の方針(48%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:県外の貸出は伸びた分だけ与信費用が出やすく、預金競争も10年のどこかで激しくなる。実際に起こりうる筋書きとして、2割台半ばを置いた。
悲観 13% 悲観:県外の与信が崩れ、人口減で地盤も縮み、資本効率が戻らない 利益 106 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 670 円998 億円
10年のどこかで景気が後退し、不動産の価格が崩れる。東京のノンリコースローンとクロスボーダーローンで損が出て、与信費用が急増する。山陰の人口減は想定を超えて加速し、地元の貸出は縮む。預金の競争で利ざやの広がりは小さく、広がった分も与信費用で消える。経費の削減は限界に達し、経費率は60%台へ上がる。有価証券の含み損は景気後退の局面で再び膨らみ、自己資本比率は目標の11%を割る。還元は絞られ、純利益は100億円前後にとどまる。もう優良な広域地銀ではなく、資本効率の戻らない地方銀行になっている。他行との統合を持ちかけられても、条件は厳しく、株主の取り分は薄まる。経営は守りに入り、新しい事業への投資も止まる。
- 法人貸出:数量 4.3(法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 507 億円・営業利益 167 億円。残高4.3兆円(名目)× 率1.18%、利益率33%
- 個人貸出:数量 1.6(個人ローン平残(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 170 億円・営業利益 48 億円。残高1.55兆円(名目)× 率1.10%、利益率28%
- 手数料・預かり資産:数量 1.4(預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率(%))→ 売上 119 億円・営業利益 26 億円。残高1.4兆円(名目)× 率0.85%、利益率22%
- 有価証券運用:数量 2.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.0%(運用ざや(%))→ 売上 195 億円・営業利益 127 億円。残高1.95兆円(名目)× 率1.00%、利益率65%
倍率:10年後のROE2.3%(純利益106億円÷自己資本4,611億円)。ROEはk8.5%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。筋書きは「悲観:県外の与信が崩れ、人口減で地盤も縮み、資本効率が戻らない」。上限の8.0割に置き、9.41倍。還元を会社の方針(48%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:景気後退で東京・関西の不動産ローンに傷が出て、地盤の人口減も重なる複合の筋書き。10年の長さと、県外の貸出が積み上がっている事実から、1割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
山陰の中小企業向けと、山陽・関西・東京の法人向け貸出(東京はクロスボーダーローンと不動産ノンリコースローンが中心)。自治体・金融機関向けを含む。
| 数量法人・自治体・金融向け貸出平残(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.8 | 1.1% | 401 | 190 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 1.5% | 790 | 395 |
取り方:総貸出の平均残高5.23兆円から個人ローン1.41兆円を引いた3.82兆円とした。利ざやは1.05%と推定した(東京の利ざやが厚い分、山陰の地元貸出は薄い)。残高はお金の量なので名目で伸び、中立で年3.3%(物価3%+実質0.3%、山陰の人口減を県外の伸びが上回る)。利ざやは預金ベータ40%で、短期金利が2%へ上がる間に10年で+0.45ポイント広がると置いた(率なので物価では上がらない)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。給与振込・年金口座の獲得とあわせて預金基盤を守る。
| 数量個人ローン平残(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 1.0% | 134 | 62 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 1.4% | 247 | 111 |
取り方:個人ローン残高は1兆4,100億円(会社開示)。利ざやは住宅ローンの金利競争を踏まえて0.95%と推定した。残高は名目で中立年2.7%(物価3%、地元の人口減で実質は減る)。利ざやは預金ベータ40%で10年で+0.40ポイント広がると置いた。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
手数料・預かり資産
野村證券との提携による投信・保険などの預かり資産と、法人向けのM&A・ファイナンス助言などの手数料。
| 数量預かり資産+法人ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.0% | 119 | 40 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1.0% | 196 | 78 |
取り方:役務取引等利益119億円(会社開示)を、個人の預かり資産残高1.25兆円で割った実効率0.95%で置いた(法人手数料を含む概算)。預かり資産はお金の量なので名目で伸び、中立で年4.8%(物価3%+NISA定着などの資産形成)。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
有価証券運用
国債・外債・ファンドなどの運用による利息・配当の稼ぎ(調達コスト控除後)。固定利付債からアセットスワップ中心へ入れ替え中。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 0.9% | 158 | 130 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 1.4% | 301 | 247 |
取り方:有価証券残高1兆8,583億円(会社開示)に、調達コストを引いた運用ざや0.85%と推定して置いた。含み損が大きく、低い利回りの債券を抱えている。残高は貸出の伸びより緩やかに年1.8%で増える。運用ざやは債券の買い替えで10年で+0.5ポイント上がると置いた。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
県外の与信の傷
東京のクロスボーダーローンと不動産ノンリコースローンは、利ざやが厚い代わりに、景気や不動産の価格が崩れると損が直接出る。伸ばした残高が大きいほど、その傷も大きくなる。格付会社も、山陰の外での与信管理に留意を求めている。
山陰の人口減
山陰は全国平均より人口が速く減る。地元の貸出需要は伸びにくく、預金の基盤も細りやすい。県外の貸出で埋め合わせられるうちは問題が表に出ないが、県外の伸びが止まれば一気に重くなる。
有価証券の含み損と資本の薄さ
含み損は1,000億円を超え、自己資本比率は評価損を織り込むと9.65%へ下がる。債券は満期で元に戻るが、景気後退と金利の急変が重なれば、還元や貸出の伸びに回せる資本が足りなくなる。
預金の競争
預金金利は、競争が激しくなると、想定の預金ベータ40%より早く上がる。ネット銀行や他の地銀との預金の奪い合いが強まれば、利ざやの広がりは業界の見立てより小さくなる。
再編の遅れ
全国で地銀の統合が続く中、山陰合同銀行は単独で進む。システム費や人材の確保で、規模の大きい統合グループに劣る恐れがある。一方、統合に動けば、統合の費用や相手との文化の違いという別の負担が出る。
還元の小ささ
配当性向40%への切り替えは前進だが、自社株買いは30億円と小さい。自己資本の余裕が見かけより薄いこともあり、資本を株主に返すスピードは、還元に積極的な同業に劣る。
今後の分かれ目
- 短期金利が2%に届かず、1%台で止まったら
- 貸出の利ざやの広がりは業界の見立てより小さくなる。中立から、やや悲観へ確率を移す。経費の軽さが救いになるが、利益の伸びは10年を通して鈍る。
- 東京や関西の貸出で、大きな不良債権が出たら
- 県外の貸出が成長の主役であるだけに、利益と資本の両方が傷む。悲観の確率を上げる。同行の目利きの力を再評価する必要が出る。
- 預金の競争が激しくなり、預金金利の追随が早まったら
- 利ざやの広がりが想定の6割程度にとどまる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 会社が自社株買いを大きく増やし、配当性向を引き上げたら
- 自己資本が膨らまず、ROEが資本コストを大きく超える。やや楽観〜楽観の確率を上げてよい。
- 山陰の再編で、同行が他行を取り込む側に回ったら
- 地盤での寡占が強まり、経費も下がる。ただし統合の費用と文化の違いがあり、効果が出るまで数年かかる。
- 有価証券の入れ替えが予定より早く進み、含み損が解消したら
- 自己資本の薄さが和らぎ、還元を厚くする余地が生まれる。資本の使い方の評価が上がる。
見ておくもの
- 政策金利の推移と、貸出・預金の利回りの差
- 東京・山陽・関西の貸出残高の伸びと、与信費用
- 有価証券の含み損の推移と、自己資本比率(評価損込み)
- 配当性向・自社株買いの規模と、政策保有株の縮減の進み
- 次の中期経営計画が示す、10年後の純利益400億円への道筋
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.5%(基本7.5%+quality +1%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.6・9.7・9.8割に置いた(下限は1÷k=11.8倍)。やや悲観・悲観はROEがk(8.5%)以下なので、PERは1÷k=11.8倍が上限で、その8.2・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.5%)と10年の中立のPERは11.5倍から10.3倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.14→12.67 倍・やや楽観 PER 11.78→12.17 倍・中立 PER 11.49→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1% を足して k 8.5%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。県外の与信など個別のリスクは k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せは0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、百五銀行と同じ +0.75% に置いた。