結論
大分銀行は大分県内の企業の半数をメインバンクとして抱える、地元随一の地方銀行である。筆者の結論は、今の値段は割高寄りだというものだ。稼ぎは金利の上昇で大きく伸びるが、それでも10年後のROEが資本コストに届かないからである。
稼ぎが伸びる理由は、金利のある世界への移行にある。貸出の金利は先に上がり、預金の金利は後から上がる。この差が毎年の利益を押し上げる。2026年3月期の純利益は105億円と過去最高を更新し、今期は122億円を見込む。中立の筋書きでは、10年後に純利益が2倍を超える。
ただし、稼ぎの伸びと値打ちは別の話だ。大分銀行は純資産が総資産の5%台と薄いわりに、有価証券を1兆円超も抱える。金利が上がる局面では、債券の含み損が資本を削るおそれがある。
経営は変わり始めている。総還元性向の目標を35%以上へ引き上げ、政策保有株は4割減らす。法人営業の拠点も県内で74から23へ集約する。人口が減る県で、地盤の厚みを使い切れるかが問われている。
筆者がいちばん気にしているのは、資本の薄さと債券の含み損という守りの弱さだ。稼ぎの伸びに目を奪われると、そこを見落とす。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、大分銀行は事業の質はよいが、買い値次第の会社である。
良い点から言う。県内企業の半数がメインバンクにしている首位で、狭い市場では代わりが利かない。預金を安く集められ、貸出も値段で競わなくてすむ。目標を前倒しで達成する実行力もある。
気になる点は2つある。1つめは資本の薄さで、純資産が総資産の5%台しかない。含み損や与信費用が重なれば、傷みが一気に資本へ及ぶ。2つめは、債券を1兆円超も持つ点だ。持ち主として、安心して眠れる構えとは言いにくい。
10年後の中立の姿は、純利益が2倍を超え、ROEは6%台後半まで上がる。それでも資本コストの8%強に届かない。ためた利益が額面未満の価値しか持たない会社に、高い倍率は払えない。
安全域は薄い。確率をかけた10年後の価値が今の時価総額を下回るなら、買う理由にならない。筆者は、薄い資本の上に載った稼ぎの伸びを、割り引いて見るべきだと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、貸出の利ざや、債券などの運用、手数料の3つである。
貸出残高は2026年3月末で約2.5兆円。大分県内の中小企業と個人が中心で、営業の拠点は県内に集中している。大分県は企業の半数が大分銀行をメインバンクにしている県だ。ライバルは第二地銀の豊和銀行、大分みらい信用金庫、県外の銀行である。
預金は約3.6兆円と、貸出を大きく上回る。余った預金は有価証券に回る。残高は約1.3兆円で、貸出の半分ほどに達する。国債、地方債、社債に加え、投資信託や株式も持つ。利息と配当がこの銀行の稼ぎの大きな柱になっている。
手数料は、投資信託や保険などの預かり資産、事業承継やM&Aの仲介から入る。野村證券と金融商品の仲介で提携し、資産運用の相談を強めている。収益全体に占める割合は小さいが、貸出が伸びにくい県で数少ない成長の分野だ。
最近の変化は営業体制にある。2026年度から、県内の法人営業の拠点を74から23へ集約した。人を厚く配って営業の質を上げ、経費も抑える狙いだ。本部組織の改編と約20年ぶりの人事制度の改定も同時に進めた。
単純に言えば、県内の預金を集め、貸出と債券で運用する商売である。差益の大きさは金利で決まり、金利が上がる今は追い風が吹いている。
優良さと弱いところ
最大の強みは、県内での地位が抜きん出ていることだ。帝国データバンクの調査では、県内企業の50.9%が大分銀行をメインバンクにしている。値段で他行と競わなくても貸出が集まりやすい。預金の集めやすさにもつながり、金利が上がる局面で調達コストの上昇を抑える力になる。
次の強みは、直近の収益の勢いだ。コア業務純益は前期に5割増え、会社は中期経営計画の財務目標を前倒しで達成した。目標を引き上げ続ける姿勢は評価できる。
弱みは3つある。1つめは資本の薄さだ。純資産は総資産の5%台で、薄い部類に入る。2つめは債券の含み損である。会社は含み損を四半期ごとに開示している。金利の上昇は債券の価値を下げ、資本を削る。3つめは過去の傷だ。20年ほどの間に、赤字の年が2度あり、増資で株主の持ち分が薄まった年もある。
経営の資本の使い方は改善途上にある。総還元性向は2026年3月期に33.7%。35%以上へ引き上げる方針だが、ROEの底上げには、まだ足りない。ROEの10年の中央値は2.9%と低い。
修正OHR、つまり経費が収益を食う割合は、単体で65%程度を目標にしている。県内シェアの高さが、そのまま利益率に表れているとは言いにくい。拠点の集約と賃上げで、経費をどこまで抑えられるかが利益率を左右する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は今、金利のある世界の初期にいる。長い低金利が終わり、短期金利は2%へ向かう。貸出の金利は先に上がり、預金の金利は後から上がるので、利ざやが広がる。貸出の量が伸びにくい地方では、数少ない追い風である。
一方で、地方の貸出需要は人口減で細る。大分県の人口は、国の推計で2035年に約98万人まで減り、2050年には84万人になる。県内の企業数も減る。金利の追い風が吹いているうちに、量の減りを補う手を打てるかが分かれ目になる。
再編も進む。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行など、基本合意が相次ぐ。九州でも広域の再編が進んでおり、規模を取った銀行が県境を越えて貸出を狙ってくる。大分県でも、福岡の大手地銀や県内の豊和銀行、信用金庫との競争は避けられない。
預かり資産は追い風である。新NISAで投資信託の残高が伸びている。ただ、手数料率は低コストの商品へ向かうので下がる。
循環の位置は、与信費用が歴史的に低い水準にある点だ。景気が悪くなれば費用は増える。10年のうちに景気の山と谷を1〜2回は経験すると見るのが自然である。
銀行の収益を決める変数は、貸出の量、利ざや、経費、与信費用、有価証券の運用の5つ。人口が減る県では、量が逆風になる。残る4つで稼ぐほかない。
資本政策と M&A
還元は強まっている。総還元性向の目標を、2027年3月期から30%以上から35%以上へ引き上げた。2026年3月期は33.7%で、配当を大きく増やした。2026年4月には1株を5株に分割し、2027年度から株主優待も始める。個人株主を広げる動きだ。
資本は薄い。純資産が総資産に占める割合は5%台。会社は連結自己資本比率を9.5%程度に保つと説明する。稼いだ利益の多くを内部に残さないと、貸出の伸びを支えにくい。
政策保有株の縮減は進む。2027年3月末までに、2023年3月末と比べて簿価で約4割減らす計画だ。当初は約3割だった。縮減額は50億円台と大きくない。
再編の動きは報じられていない。県内で企業の半数がメインバンクにしている首位で、買われる側になる可能性は低い。ただ、地域の再編が進めば、受け皿としての役を求められる立場にある。買う側の実績はなく、当面は単独で規模を取る道を選ぶ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利のある世界は、大分銀行にとって大きな追い風になる。短期金利が2%に上がれば、貸出の利ざやが広がる。すでに2026年3月期の純利益は、前の期の4割増となる105億円まで伸びた。コア業務純益は5割増である。今期は122億円を見込み、さらに伸びる。
県内の地位が盤石である。企業の半数がメインバンクにしているため、貸出の金利競争に巻き込まれにくい。預金の集めやすさも、利ざやを守る。
有価証券の運用にも伸びしろがある。低い利回りで買った債券が、満期を迎えて高い利回りへ入れ替わる。入れ替えが進むほど、運用の稼ぎは積み上がる。
経営の姿勢も変わった。中期計画の目標は前倒しで達成し、ROE8%の中長期目標を掲げた。総還元性向は35%以上へ引き上げ、政策保有株も4割減らす。営業拠点を74から23へ集約して経費を絞り、約20年ぶりに人事制度を改めた。
資本政策が動けば、ROEも倍率も変わる。県内の貸出は人口減で細っても、預かり資産の伸びと金利の上昇が穴を埋めてお釣りが出る。10年後の純利益は、今の3倍を超える。
慎重な見方
人口が減る県の地方銀行に、高い倍率を払う理由はない。大分県の人口は2050年に84万人まで減る。貸出の量は構造的に細り、利ざやの拡大も最初のうちだけだ。
金利の上昇は、預金の調達コストも押し上げる。他行やネット銀行へ預金が流れるのを防ぐには、預金金利を上げざるをえない。利ざやの広がりは、思うほど長続きしない。
資本の薄さが最大の弱みだ。純資産は総資産の5%台しかなく、債券を1兆円超も持つ。金利が急に上がれば含み損が膨らみ、資本を削る。会社は含み損を四半期ごとに開示せざるをえない状況にある。
過去の傷も忘れてはならない。20年ほどの間に赤字の年が2度あり、増資で株主の持ち分が薄まった年もある。今の与信費用は異常に低い。景気が悪化すれば、直近の最高益はすぐに消える。
ROEが資本コストに届かないなら、純利益が2倍になっても倍率は高く置けない。今の値段は、金利の追い風を織り込みすぎている。
地方銀行の再編も、大分銀行に逆風になりうる。規模を取った広域の銀行が県境を越えて貸出を狙えば、単独の銀行は経費率で見劣りする。県内の首位という看板も、人口が減れば守る市場そのものが小さくなる。
どちらに重みを置いたか
県内の地位と金利の追い風は本物だ。ただ、強気の見方の核である高い倍率は、ROEが資本コストを下回るなら成り立たない。資本の薄さと債券の含み損という守りの弱さも、軽くは見られない。慎重な見方が強い。確率は、やや悲観と悲観に寄せた。一方で、県内シェアの厚みと金利の追い風は簡単には崩れない。そのため悲観は1割台にとどめ、楽観は1割に抑え、中立は3割に置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,406 円2,579 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 958 円725 億円)。 今の値に割り戻すと 2,229 円1,688 億円、今との差 −17.7%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,129 円4,641 億円 | 1,426 円1,080 億円 | +178.8% | +10.8% | 756 円572 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,782 円3,621 億円 | 1,203 円911 億円 | +120.9% | +8.2% | 1,377 円1,042 億円 |
| 中立 | 30% | 3,929 円2,975 億円 | 1,022 円774 億円 | +82.7% | +6.2% | 1,485 円1,125 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,836 円1,390 億円 | 726 円550 億円 | −5.5% | −0.6% | 589 円446 億円 |
| 悲観 | 14% | 657 円498 億円 | 462 円350 億円 | −58.7% | −8.5% | 157 円119 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,406 円2,579 億円 | 958 円725 億円 | +61.0% | +4.9% | 4,364 円3,304 億円 |
今の株価時価総額 2,710 円2,052 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 県内の首位と運用の入れ替えが噛み合い、ROEが9%台に乗る10年 利益 344 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 6,129 円4,641 億円
金利は2%で落ち着き、貸出の利ざやは大きく広がる。県内の法人貸出は設備投資に支えられて実質で小さく増え、福岡など県外の貸出も上積みになる。低い利回りで買った債券は満期を迎えるたびに高い利回りへ入れ替わり、運用の稼ぎが最も大きく伸びる。
預かり資産はNISAの定着で実質1.5倍に近づく。営業拠点の集約と人事制度の改定が効いて経費の伸びは物価の内に収まり、経費率は50%を切る。
資本政策も進む。政策保有株を計画どおり減らし、還元は利益の5割近くになる。資本が薄いままでも、稼ぐ力が上回り、ROEは9%台半ばになる。与信費用は低く、債券の含み損も金利の上昇が穏やかで膨らまない。県内の首位という強みが、最も良い形で花開いた姿である。
- 法人・事業性貸出:数量 1.8(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.5%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 446 億円・営業利益 205 億円。県内の法人貸出が実質で増える。利ざやの拡大は大きい
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 162 億円・営業利益 49 億円。個人は横ばい。住宅ローンの利ざやが広がる
- 預かり資産・手数料:数量 1.4(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 158 億円・営業利益 63 億円。NISAの定着で預かり資産が実質で3割強増える
- 有価証券運用:数量 1.4(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.5%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 344 億円・営業利益 255 億円。債券の入れ替えが進み、運用の利回りが大きく上がる
倍率:事業の純利益 344 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.49 倍、時価総額 4,641 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%の定着、債券の入れ替えによる利回りの切り上がり、預かり資産の拡大、資本政策の前進が、そろって起きる前提。人口が減る県の銀行なので、全部がそろう確度は高くない。
やや楽観 23% 会社計画を上回る利ざやで、ROEが8%台へ 利益 286 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 4,782 円3,621 億円
県内の貸出は人口減でじわじわ細るが、法人向けは設備投資や事業承継の需要に支えられ、全体では実質で小さく増える。短期金利は2%に定着し、貸出の利ざやは広がる。債券の入れ替えは着実に進む。
預かり資産は実質で4割ほど増える。手数料率は低下するが、残高の伸びがそれを上回る。経費は営業拠点の集約で物価並みの伸びに収まる。
還元は利益の半分ほどで、資本の増え方は貸出の伸びと同じ速さに落ち着く。ROEは8%台まで上がり、資本コストにほぼ並ぶ。経営が中期計画の目標を連続で達成し、資本効率が評価される姿である。与信費用は低めの水準を保つ。
- 法人・事業性貸出:数量 1.7(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.4%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 420 億円・営業利益 176 億円。法人貸出が県内の減りを県外の増加で補い、実質で小さく増える
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 156 億円・営業利益 42 億円。個人は人口減でわずかに減る
- 預かり資産・手数料:数量 1.2(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 141 億円・営業利益 51 億円。預かり資産が実質で2割強増える
- 有価証券運用:数量 1.3(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.4%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 322 億円・営業利益 225 億円。運用の利回りが着実に上がる
倍率:10年後のROE8.2%(純利益286億円÷自己資本3,489億円)。k8%・g4.0%、残る割合1/2でRONIC=k+残る割合×(ROE−k)=8.1%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=12.7倍(下限は1÷k=12.5倍)。上限の10.0割に置き、12.66倍。還元を会社の方針(46%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:経営計画の方向が10年おおむね維持され、利ざや拡大が予想をやや上回る想定。会社自身が中長期のROE8%を掲げており、手が届く範囲にある。
中立 30% 中立:利ざやは広がるが、ROEは資本コストに届かない 利益 238 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,929 円2,975 億円
短期金利2%、長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは今より広がる。大分県内の貸出は人口減で実質の量が細るが、県外の貸出が増え、全体は横ばいを保つ。債券の入れ替えが進み、運用の稼ぎも伸びる。
預かり資産は実質で15%ほど増えるが、手数料率の低下がその恩恵を削る。経費は営業拠点の集約で抑えるものの、賃上げで物価を少し上回って伸びる。
純利益は10年で2倍強になる。それでも自己資本が貸出の伸びに合わせて物価の分だけ膨らむため、ROEは6%台後半にとどまる。資本コストには届かない。薄い資本が、稼ぎの伸びをそのまま資本効率の改善へつなげることを許さない。
- 法人・事業性貸出:数量 1.7(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 399 億円・営業利益 152 億円。法人貸出は県内の減りを県外で埋めて横ばい
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 150 億円・営業利益 36 億円。個人は人口減で実質は3%減
- 預かり資産・手数料:数量 1.2(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.1%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 129 億円・営業利益 41 億円。預かり資産は実質で15%増、手数料率は低下
- 有価証券運用:数量 1.3(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 305 億円・営業利益 201 億円。運用の利回りが上がり、残高は実質で横ばい
倍率:事業の純利益 238 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,975 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、県内の縮みを預かり資産と県外貸出で補う中心の筋書き。会社の計画の純利益は今期122億円で、そこから金利の追い風と物価の分が上乗せされる姿を最も重く見る。
やや悲観 23% 人口減が計画より速く、利ざやの追い風が相殺される 利益 139 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,836 円1,390 億円
県内の人口と事業所の減りが想定より速く、貸出は実質で1割近く細る。県外の貸出は伸びるが、福岡の大手地銀などとの金利競争で利ざやが薄い。預金は他行やネット銀行へ一部が流れ、調達コストが上がる。
債券の入れ替えは、含み損を抱えたまま進むので遅れる。運用の利回りの改善は、想定の6割ほどにとどまる。経費は賃上げで膨らみ、経費率は60%を超える。
与信費用は景気の悪化で増え、どこかの年度で利益を大きく削る。ROEは4%台にとどまる。再編の波に乗り遅れた単独の地方銀行が、規模の経済で劣後する姿である。
県内の貸出の細りは、預かり資産の伸びでは埋まらない。手数料は残高が増えても、率の低下で伸びが鈍る。筋書きの核は、利ざやの追い風が競争と預金コストで半分ほど相殺される点にある。
- 法人・事業性貸出:数量 1.6(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 345 億円・営業利益 104 億円。法人貸出は県内の縮みが県外の増加を上回る
- 個人貸出:数量 0.6(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 129 億円・営業利益 22 億円。個人は実質で1割弱減る
- 預かり資産・手数料:数量 1.0(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.1%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 111 億円・営業利益 28 億円。預かり資産は伸びるが手数料率が下がる
- 有価証券運用:数量 1.2(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 265 億円・営業利益 154 億円。運用の利回りの改善が遅れる
倍率:10年後のROE4.4%(純利益139億円÷自己資本3,150億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「人口減が計画より速く、利ざやの追い風が相殺される」。上限の8割に置き、10.00倍。今の自己資本2,449億円に対する倍率は0.57倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:大分県の人口と企業数の減りが想定より速く、競合との金利競争で利ざやの拡大が想定の半分にとどまる想定。10年ならありうる範囲として、やや厚めに置く。
悲観 14% 構造的に負け、県内の縮小に債券の傷みと与信費用が重なる10年 利益 53 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 657 円498 億円
大分県の人口と企業数の減りが加速し、貸出は実質で2割近く縮む。景気の悪化で中小企業の貸出が傷み、与信費用が利益を食う。金利が急に上がる局面では債券に含み損が出て、入れ替えが進まない。
純資産が総資産の5%台と薄いため、含み損の一部を損失として確定させる必要が出て、自己資本が削られる。規制の資本比率を保つために配当を絞り、増資の議論が浮かぶ。
短期金利が上がっても、預金の流出と金利競争で利ざやはほとんど広がらない。経費は賃上げと拠点の維持で下がらない。再編に乗れず、規模の経済で劣後した銀行が、資本コストを大きく下回る稼ぎにとどまる姿である。
- 法人・事業性貸出:数量 1.3(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 265 億円・営業利益 64 億円。県内の縮みと与信費用で量も利益も落ちる
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 98 億円・営業利益 12 億円。個人は2割強減る
- 預かり資産・手数料:数量 0.9(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.0%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 88 億円・営業利益 14 億円。預かり資産が伸びず手数料率も低い
- 有価証券運用:数量 1.1(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 192 億円・営業利益 86 億円。債券の評価損と低い利回りの固定で運用の稼ぎが細る
倍率:10年後のROE2.0%(純利益53億円÷自己資本2,600億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、県内の縮小に債券の傷みと与信費用が重なる10年」。上限の7.5割に置き、9.39倍。今の自己資本2,449億円に対する倍率は0.20倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:リーマン級の信用収縮に、人口減の加速、薄い資本の上に載った債券の含み損が10年のどこかで重なる想定。資本が薄い分、傷みが資本に及びやすいので、やや厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・事業性貸出
大分県内の中小企業向けを中心に、地方公共団体向けを含む法人向けの貸出。
| 数量法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.7 | 1.3% | 218 | 65 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 2.3% | 399 | 152 |
取り方:貸出残高は2026年3月末で2.47兆円、年度の平均はやや低い2.4兆円とみて、うち個人ローンと思われる0.72兆円を除いた1.68兆円を法人・公共向けとおいた(開示の内訳ではなく推定)。預金の運用益込みの粗利益率を1.30%、経費の割り振り後の営業利益率を30%とし、営業利益65億円とした。残高は今の値段のままの実質で置き、物価の分は価格の指数(10年1.34倍)に入れる。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約55%だけ追うので、中立の率は10年で1.30%→1.75%(+0.45ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.2% | 86 | 16 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 2.1% | 150 | 36 |
取り方:個人ローンの内訳は確かめていない。貸出の約3割にあたる0.72兆円と推定した。住宅ローンは利ざやが薄いので粗利益率を1.20%、営業利益率を18%とし、営業利益16億円とした(開示の数字ではない)。大分県の人口減で、残高は実質で縮む前提。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約60%だけ追うので、中立の率は10年で1.20%→1.60%(+0.40ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
預かり資産・手数料
投資信託・保険などの預かり資産、事業承継・M&A、ファイナンスの組成から得る手数料。
| 数量預かり資産残高+取扱高(兆円・実質) | 価格基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 0.9% | 81 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 1.1% | 129 | 41 |
取り方:役務収益の内訳は決算短信で確かめていない。そこで基礎残高0.90兆円に手数料率0.90%を当て、粗利益約81億円、営業利益率25%で約20億円と推定した(開示の数字ではない)。投資信託の解約益は含めない。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
有価証券運用
国債・地方債・社債・株式・投資信託などの運用。預金と運用の差で稼ぐ。
| 数量運用資産の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.4% | 182 | 100 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 2.3% | 305 | 201 |
取り方:有価証券残高は2026年3月末で1.29兆円。利息・配当から預金の調達費用を引いた純のキャリーを1.40%と推定し、収益182億円、営業利益率55%で約100億円とした(開示の数字ではない)。調整の欄は与信費用と債券の売却損益で、前期のコア業務純益201億円と経常利益147億円の差から−54億円とおいた。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ、長期金利が3%へ上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ換算で約65%だけ追うので、中立の率は10年で1.40%→1.75%(+0.35ポイント)。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
リスクと懸念
債券の含み損と資本の薄さ
有価証券は1兆円超で、貸出の約半分に達する。純資産は総資産の5%台と薄い。金利が急に上がると債券に含み損が出て、資本が削られる。会社は含み損を四半期ごとに開示している。含み損を確定させれば、配当や自社株買いの余力を失う。
人口減と県内企業の減少
大分県の人口は国の推計で2035年に約98万人、2050年に84万人まで減る。貸出の量は構造的に細る。県内の首位という地位は、市場が縮めば価値も縮む。想定より速い縮みが来れば、貸出の量と利益の両方が落ちる。
与信費用の反転
与信費用は今、歴史的に低い水準にある。景気が悪化すれば、費用は大きく跳ね上がる。会社自身も、イラン情勢の長期化で地元経済が冷え込む懸念を挙げている。10年のうちに景気の山と谷を1〜2回は経験する。
預金金利の上昇と預金の流出
短期金利が2%へ上がると、預金を守るために金利を引き上げる必要が出る。預金が他行やネット銀行へ流れる懸念もある。預金の上がり方が想定より早ければ、利ざやの拡大は小さくなる。
資本政策の遅れ
ROEの10年の中央値は2.9%と低い。総還元性向は2026年3月期に33.7%。35%以上へ引き上げるが、資本効率の底上げには足りない。政策保有株の縮減も50億円台と小さく、速度は遅い。
競合と再編の波
県内の豊和銀行、信用金庫に加え、福岡の大手地銀が県境を越えて貸出を狙う。九州でも広域の再編が進めば、規模を取った銀行が経費率で優位に立つ。大分銀行が単独のまま残れば、システム費などで劣後するおそれがある。
営業体制の変更の痛み
2026年度から法人営業の拠点を74から23へ集約し、人事制度も約20年ぶりに改めた。人が動けば、取引先との関係が薄れる恐れがある。狙いどおりに経費が下がらず、営業力だけが落ちる懸念がある。
今後の分かれ目
- 短期金利が計画より速く2%へ上がったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。ただ預金金利の上がり方も同時に見ること。貸出と預金の差が実際に広がるかを、決算の利回りの動きで確かめる。
- 景気が悪化し、与信費用が急に増えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。資本が薄いので、利益の減りがそのまま資本の傷みになる。配当と自社株買いの余力を、先に見直す必要が出る。
- 債券の含み損が大きく膨らんだら
- 自己資本の評価が下がる。含み損の確定で資本が削られ、還元が絞られる。悲観側の確率を上げ、中立のROEも下方に見直す。
- 政策保有株の縮減を加速し、自社株買いを大きく増やしたら
- ROEが上がる道が開ける。10年後の自己資本が減り、中立のROEが資本コストを超えれば、倍率を引き上げて考えてよい。
- 他の地方銀行から経営統合の打診を受けたら
- 経費率の改善が見込める一方、持ち分が薄まる可能性もある。統合比率と統合後の資本政策を見て判断する。TOBの形なら、価格が本質価値を上回るかが分かれ目になる。
- 大分県内の貸出残高が実質で減り始めたら
- 県内の縮みが想定より速い兆しである。県外や預かり資産で穴埋めできているかを確かめ、できていなければ悲観側に寄せる。
見ておくもの
- 短期金利の水準と、貸出・預金・有価証券の利回りの推移
- 四半期ごとの有価証券の含み損益と、自己資本比率
- 与信費用の推移と、県内の倒産・事業所数
- 政策保有株の縮減の進み方と、総還元性向35%以上の達成度
- 次期経営計画(2027年4月〜)のROE目標と、経費率(OHR)の推移
- 大分県内の人口と貸出残高の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality +0.5%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・10割に置いた(下限は1÷k=12.5倍)。中立・やや悲観・悲観はROEがk(8%)以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その8.5・8・7.5割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは10.6倍から9.4倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.82→13.49 倍・中立 PER 10.62→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(債券の含み損、資本の薄さ、県外への展開の遅れ)はkに足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せは0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。