結論
宮崎銀行は、宮崎県を地盤とする地方銀行である。県内の預金の太い部分を握り、第二地銀の宮崎太陽銀行を大きく引き離す。筆者の結論はやや割高だ。利ざやが広がる追い風は本物だが、今の値段はその果実を先取りしすぎている。
2026年3月期の純利益は141億円で、前の期より44%増えた。貸出利息が18%増え、株式の売却益も乗った。会社は今期145億円を見込む。ただ、この増益の一部は一度きりの売却益で、毎年続く稼ぎではない。
地盤の宮崎県は、人口が100万人ほどで減り続ける。貸出の量は伸びない。稼ぎの伸びは、短期金利が2%に向かって上がる中での利ざやの拡大と、債券の入れ替えによる運用利回りの上昇が支える。10年で営業利益はおよそ1.7倍と置いた。それでも自己資本が総資産の5%台と薄く、自己資本利益率(ROE)は10年後でも6〜7%台にとどまる。資本コストの8%には届かない。
届かない会社の価値は、ためた利益より小さい。利益を積んでも、積んだ分の価値にならないからだ。この点が割高の中身である。再編で統合効果が出る道もあるが、相手も時期も見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、銀行は読みにくい事業だ。利益の中身は、与信費用と債券の評価損益という、景気と金利で大きく振れる部分に左右されるからだ。筆者はこの点を重く見る。
まず、10年後も存在するかと問えば、答えは是だ。宮崎県の暮らしと企業に預金口座と貸出は欠かせない。ただ、今より強いかと問うと、答えは変わる。人口が減る県で、量を伸ばせない事業が強くなる理屈は立てにくい。
次に、オーナー利益である。利益のうち株主が自由にできる分は、還元の約3割だけだ。残りは薄い自己資本を厚くするために積む。積んだお金の稼ぎ(ROE)が資本コストの8%を下回る限り、利益を積むほど株主の持ち分の価値は薄まる。
資本の使い方は改善の途上にある。累進配当と自社株買いは前向きだが、還元の水準はまだ低い。
安全域は見当たらない。確率で重みづけた本質価値は今の時価総額を約30%下回る。優良な銀行を正当な値段で持つのとは違い、ROEの低い銀行を、利ざやの追い風が全部続く前提の値段で持つことになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は3つある。県内の貸出と、預かり資産の手数料と、債券などの運用だ。
貸出は宮崎県内の中小企業と自治体向けが中心で、預金に払う金利との差、つまり利ざやが収益になる。貸出残高は2.5兆円ほどと見られる。個人は住宅ローンが主役で、残高の3割弱を占める。企業向けは金利に連動する貸出が多く、短期金利が上がれば利ざやも広がりやすい。
運用も大きい。有価証券の利息・配当は年に224億円あり、貸出利息の359億円に次ぐ。低利回りの債券を満期のたびに高い利回りに入れ替えるほど、この部分は増える。預金は3.2兆円で、地元の個人と企業の口座が仕入れの元になる。
手数料は投資信託・保険の販売と、事業承継やファイナンスの組成で稼ぐ。ここはまだ小さいが、利ざやに頼らない柱として会社が育てたい分野だ。
子会社にリース業があり、経常利益は5億円ほどにとどまる。銀行の業績にはほとんど響かない。
店舗は県内に60か所ほどと、県外にも十数か所ある。人口が減る県で店舗網を維持する費用は重く、集約が経費を左右する。収益の多くは預金と貸出の差に頼り、手数料の比重はまだ低い。
優良さと弱いところ
筆者が見る宮崎銀行の強みは、地元での存在感だ。県内の企業と個人にとって、最初に相談する銀行である。預金3.2兆円という仕入れの元は、競合の宮崎太陽銀行の4倍を超える。この厚みが、貸出金利を安売りせずに済む余地を生む。
弱みは三つある。一つ目は資本の薄さだ。自己資本は総資産の5%台で、債券の含み損益が資本を大きく動かす。二つ目は地盤だ。県の人口は減り続け、大都市の銀行のように量で伸ばす道がない。三つ目は規模だ。経費を薄めて稼ぐ力は、再編を済ませた大手地銀に及ばない。
資本の使い方は、以前は慎重すぎた。今は変わってきている。2024年に累進配当と自社株買いを組み合わせ、総還元性向30%を目標に掲げた。2026年3月期の実績は、純利益の約24%を戻した水準だ。ただ、残り7割は自己資本に積み上がる。積んだ分が資本コストを超える稼ぎを生まなければ、積むほど価値は薄まる。
堀は普通と見る。宮崎県の外へ出ても通用する強みは確かめられなかった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行業は、長い低金利の時代が終わり、金利のある世界に入っている。短期金利が2%へ向かう間、貸出の金利はすぐに上がるが、預金の金利は遅れてついてくる。この時間差が利ざやを広げる。宮崎銀行の貸出利息が1年で18%増えたのは、その表れだ。
追い風は続くが、永遠ではない。預金の金利は、競争が進むほど貸出に追いつく。筆者は、預金の金利が政策金利の上げの4割ほどまでついていく前提で、10年で利ざやが0.4〜0.5ポイント広がると見る。
逆風は人口だ。宮崎県は人口が100万人ほどで、減る速度は全国より速い部類に入る。貸出の量は実質で横ばいか、少し縮むと置いた。企業の数が減れば、貸出先の選別も厳しくなる。
再編は大きな論点だ。地銀の1県1行化が進み、県内には宮崎太陽銀行がある。宮崎銀行は同行の増資を最大額で引き受けた株主でもある。過去には福岡FGや九州FGとの統合が取りざたされたが、今のところ具体的な動きは確かめられていない。統合が進めば経費は下がるが、相手の資本の質と統合の費用が代償になる。
競合は県内の宮崎太陽銀行のほか、鹿児島銀行を持つ九州FGなど県外の勢力、ネット銀行の住宅ローンである。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いの組み合わせだ。今期の配当予想は純利益の約3割にあたる(2026年4月に1対5の株式分割)。2026年3月期は配当24億円と自社株買い9億円で、純利益の約24%だった。会社は総還元性向30%を目標に掲げる。
中期経営計画「First Call Bank」は、2025年度にROE5%以上・経常利益140億円以上、2032年度にROE8%以上・経常利益250億円以上を目標にする。2025年度の目標はすでに超えた。2032年度のROE8%は、10年中立のROE6.8%より高い。筆者は会社の目標に届かない置き方をしている。
株式の売却益が足元の利益を押し上げた。今後も売却が進めば資本は厚くなるが、売却益は繰り返し出る稼ぎではない。
再編では、宮崎太陽銀行の株主であることが選択肢になる。ただし統合の話は具体的に確かめられなかった。kabufuの推定では、10年以内に買収される確率は約20%だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利ざやの拡大は、これから本格化する。短期金利が2%へ上がる間に、貸出の金利は先に動き、預金の金利は遅れてついてくる。2026年3月期の貸出利息は18%増え、経常利益は42%増えた。この勢いはまだ序盤だ。会社の2032年度の目標である経常利益250億円は、足元の水準からそう遠くない。
運用も効く。有価証券の利息・配当は年に224億円ある。低い利回りの債券が満期を迎えるたびに、3%の長期金利に近い利回りへ入れ替わる。残高が同じでも、この部分は年々増える。
県内の地盤は固い。預金は3.2兆円で、第二地銀の宮崎太陽銀行の4倍を超える。企業と個人が最初に頼る銀行の地位は、簡単には崩れない。
さらに、再編の選択肢がある。宮崎太陽銀行の最大の引受株主として、県内の1県1行化を主導できる位置にいる。統合が決まれば、経費の削減と資本の厚みで、ROEは10%に迫る。累進配当と自社株買いも、利益の伸びとともに増える。
慎重な見方
一度きりの利益に惑わされてはいけない。2026年3月期の純利益141億円には、株式の売却益が大きく入っている。今期の予想145億円も、同じ前提の上にある。
資本が薄い。自己資本は総資産の5%台で、債券の含み損が出れば、すぐ資本を食う。金利が上がる局面は、債券の評価損が膨らむ局面でもある。
県の人口は減り続ける。貸出の量は伸びない。利ざやの拡大は、預金の競争が強まれば縮む。ネット銀行や他県の銀行が、預金の金利を引き上げる動きは止められない。
ROEは、10年後でも資本コストに届かない。会社自身が掲げる2032年度のROE8%は、今の利益の伸び方では遠い。届かない会社は、帳簿の自己資本より低い価値しか持たない。
それでも今の値段は、利ざやの追い風が全部続く前提を含んでいる。再編も、相手も時期も不明だ。実現しない夢に値段をつけるべきではない。
加えて、会社の総還元性向は30%どまりで、利益の7割は自己資本に積まれる。積んだ分が資本コストを超える稼ぎを生まない限り、利益が増えても1株ごとの価値は増えにくい。県内の首位という強みは、すでに今の収益と値段に反映されている。
どちらに重みを置いたか
どちらも一理あるが、強いのは慎重な見方だ。利ざやの拡大は事実だが、10年後でもROEが資本コストに届かない点は、強気の見方でも崩せない。確率は中立に3割を置き、悲観側(やや悲観と悲観)を合わせて4割弱に厚くした。再編で統合効果が出る道は楽観側に残したが、相手も時期も見えないので、楽観は1割に満たない水準にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,051 円2,560 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 699 円587 億円)。 今の値に割り戻すと 1,889 円1,585 億円、今との差 −19.8%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,773 円4,845 億円 | 1,068 円896 億円 | +190.4% | +11.2% | 616 円517 億円 |
| やや楽観 | 23% | 4,305 円3,613 億円 | 884 円742 億円 | +120.3% | +8.2% | 1,194 円1,002 億円 |
| 中立 | 30% | 3,471 円2,913 億円 | 735 円617 億円 | +78.5% | +6.0% | 1,262 円1,059 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,692 円1,420 億円 | 557 円467 億円 | −4.6% | −0.5% | 540 円453 億円 |
| 悲観 | 14% | 671 円563 億円 | 324 円272 億円 | −57.8% | −8.3% | 139 円117 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,051 円2,560 億円 | 699 円587 億円 | +59.2% | +4.8% | 3,750 円3,147 億円 |
今の株価時価総額 2,356 円1,977 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 再編の統合効果と運用の入れ替えが噛み合い、ROEが10%に迫る10年 利益 357 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 5,773 円4,845 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは大きく広がる。低利回りの債券は満期のたびに高い利回りへ入れ替わり、運用の稼ぎは目に見えて増える。宮崎太陽銀行を含む県内の再編が進み、重複する店舗とシステムの経費が減る。統合に見合う資本が厚くなり、累進配当と自社株買いが増える。
預かり資産は新NISAの定着で実質3割強増え、手数料が育つ。宮崎県の人口減は続くが、再編と利ざやの拡大がそれを覆い、貸出は実質で小さく増える。
それでもROEは10%を超えない。銀行は規制資本と競争で、高いROEが長続きしにくいからだ。地方銀行として、最も理想に近い10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.8(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.5%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 450 億円・営業利益 207 億円。県内の再編で貸出が増える。利ざやの拡大が大きい
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 154 億円・営業利益 49 億円。個人は横ばい。住宅ローンの利ざやが広がる
- 預かり資産・手数料:数量 1.1(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.4%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 158 億円・営業利益 66 億円。新NISAの定着で預かり資産が3割強増える
- 有価証券運用:数量 1.3(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.8%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 363 億円・営業利益 261 億円。債券の入れ替えが進み運用の利回りが大きく上がる
倍率:事業の純利益 357 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.57 倍、時価総額 4,844 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%の定着、債券の入れ替え、預かり資産の拡大、宮崎県内の再編による経費の削減が、10年の間にそろって起きる前提。人口が減る県の銀行なので、全部がそろう確度は高くない。
やや楽観 23% 会社の計画をやや上回る利ざやで、ROEが8%台へ 利益 289 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,305 円3,613 億円
短期金利2%への定着が計画どおり進み、貸出の利ざやは高めの水準で安定する。債券の入れ替えも着実に進み、運用の利回りは年々上がる。宮崎太陽銀行との関係は強まるが、本格的な統合までは進まない。
預かり資産は実質で2割強増え、手数料が利ざやの穴を埋める。個人の住宅ローンは人口減でわずかに減る。与信費用は、景気の波を一回経てならした水準に収まる。
純利益は10年で2倍ほどになり、ROEは8%台まで上がる。県内の首位という地盤が、人口減の逆風を和らげる。経費の集約も効き、本業の稼ぎは安定する。会社の2032年度の目標に届く姿だが、資本コストの8%にはまだ届かない。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.8(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.4%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 413 億円・営業利益 173 億円。法人貸出は県内の減りを県外で補い横ばい
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 143 億円・営業利益 40 億円。個人は人口減でわずかに減る
- 預かり資産・手数料:数量 1.1(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.3%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 138 億円・営業利益 51 億円。預かり資産が実質で2割強増える
- 有価証券運用:数量 1.3(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.6%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 330 億円・営業利益 228 億円。運用の利回りが着実に上がる
倍率:事業の純利益 289 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 3,612 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経営計画の方向が10年おおむね維持され、利ざや拡大が予想をやや上回る想定。会社自身が2032年度にROE8%を掲げており、手が届く範囲にある。
中立 30% 中立:利ざやは広がるが、ROEは資本コストに届かない 利益 233 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,471 円2,913 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは今より高い水準で安定する。県の人口は減り、貸出の量は実質で横ばいか少し縮む。法人貸出は微減、個人は1割弱の減少と置く。
運用の入れ替えは進むが、預金の金利も競争でついてくるため、運用の稼ぎは緩やかにしか上がらない。預かり資産は実質で15%増える。
与信費用は景気の波を経てならした水準に戻る。株式の売却益のような一度きりの利益は、10年のならした姿には入れない。
純利益は10年で1.6倍ほどになり、233億円まで増える。ただ、自己資本も同じように積み上がり、ROEは7%に届かない。稼ぎは増えても、稼ぐ効率は変わらない10年になる。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.7(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 384 億円・営業利益 146 億円。法人貸出は県内の減りを県外で補い、実質で3%減
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 135 億円・営業利益 34 億円。個人は人口減で実質は7%減
- 預かり資産・手数料:数量 1.0(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.3%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 122 億円・営業利益 40 億円。預かり資産は実質で15%増、手数料率は競争で低下
- 有価証券運用:数量 1.2(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.5%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 300 億円・営業利益 198 億円。運用の利回りが上がり、残高は実質で横ばい
倍率:事業の純利益 233 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,912 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、県内の縮みを預かり資産と運用の改善で補う中心の筋書き。会社の今期の予想(純利益145億円)から、金利の追い風と物価の分が上乗せされる姿を最も重く見る。
やや悲観 24% 人口減が計画より速く、利ざやの追い風が相殺される 利益 142 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,692 円1,420 億円
県内の人口と企業の数が想定を超えて減る。貸出の量は実質で1割ほど縮み、貸出先の選別が厳しくなって与信費用が増える。他県の銀行やネット銀行が預金の金利を上げ、利ざやの拡大は想定の半分にとどまる。
債券の入れ替えは進むが、含み損を抱える間は売却を急げず、運用の稼ぎが伸びない。預かり資産は増えるが、手数料率が競争で下がる。
純利益は今とほぼ同じ水準にとどまり、自己資本が積み上がる分だけROEは4%台に下がる。再編は進まず、統合の効果も得られない。県内の首位という強みだけでは、成長の鈍さを埋めきれない10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.6(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 334 億円・営業利益 104 億円。法人貸出は県内の縮みが県外の増加を上回る
- 個人向け貸出:数量 0.6(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 116 億円・営業利益 22 億円。個人は実質で1割強減る
- 預かり資産・手数料:数量 0.9(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 98 億円・営業利益 26 億円。預かり資産は伸びるが手数料率が下がる
- 有価証券運用:数量 1.1(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 264 億円・営業利益 153 億円。運用の利回りの改善が遅れる
倍率:10年後のROE4.5%(純利益142億円÷自己資本3,170億円)。ROEはk8%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「人口減が計画より速く、利ざやの追い風が相殺される」。上限の8.0割に置き、10倍。還元を会社の方針(33%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:宮崎県の人口と企業の数が想定より速く減り、預金の金利競争で利ざやの拡大が想定の半分にとどまる想定。10年ならありうる範囲として、やや厚めに置く。
悲観 14% 構造的に負け、県内の縮小に債券の傷みと与信費用が重なる10年 利益 60 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 671 円563 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、県内の与信費用が急に増える。同じ時期に金利の急上昇で債券の含み損が膨らみ、薄い自己資本を直撃する。売却して損を確定すれば、資本の比率がさらに下がる。
県の人口は想定を超えて減り、貸出の量は実質で2割強縮む。県外の銀行が預金を奪い、預金の金利が貸出に追いつく。利ざやの拡大は追い風どころか、荷物に変わる。
再編は相手が見つからず、単独で経費を薄める道もない。会社の目標のROE8%は遠のき、ROEは2%ほどに沈む。地方銀行としての存在意義が問われる、苦しい10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.4(法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 253 億円・営業利益 66 億円。県内の縮みと与信費用で量も利益も落ちる
- 個人向け貸出:数量 0.5(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数)→ 売上 83 億円・営業利益 12 億円。個人は3割近く減る
- 預かり資産・手数料:数量 0.7(預かり資産残高+取扱高(兆円・実質))× 価格 1.0%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 67 億円・営業利益 13 億円。預かり資産が伸びず手数料率も低い
- 有価証券運用:数量 1.0(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 189 億円・営業利益 94 億円。債券の評価損と低い利回りの固定で運用の稼ぎが細る
倍率:10年後のROE2.1%(純利益60億円÷自己資本2,858億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、県内の縮小に債券の傷みと与信費用が重なる10年」。上限の7.5割に置き、9.38倍。今の自己資本2,222億円に対する倍率は0.25倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:リーマン級の信用収縮に、人口減の加速、薄い資本の上に載った債券の含み損が10年のどこかで重なる想定。資本が薄い分、傷みが資本に及びやすいので、やや厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
宮崎県内の中小企業と地方公共団体向けを中心にした貸出。
| 数量法人・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.8 | 1.4% | 236 | 78 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 2.3% | 384 | 146 |
取り方:貸出残高は2.5兆円ほどと推定した(2023年3月末は2.25兆円。最新の残高は確かめていない)。貸出利息358.7億円を貸出の平均残高の約2.45兆円で割ると利回りは約1.46%。そのうち個人向けを0.70兆円とし、残る1.75兆円を法人・公共向けとおいた(開示の内訳ではなく推定)。預金の運用益込みの粗利益率を1.35%、経費の割り振り後の営業利益率を33%として営業利益78億円とした。残高は今の値段のままの実質で置き、物価の分は価格の指数(10年1.34倍)に入れる。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約66%だけ追うので、中立の率は10年で1.35%→1.69%(+0.34ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
個人向け貸出
住宅ローンを中心とする個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの粗利益率(利ざや+預金の運用益、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.3% | 88 | 19 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 2.1% | 135 | 34 |
取り方:個人ローンの内訳は確かめていない。貸出の約3割にあたる0.70兆円と推定した。住宅ローンは利ざやが薄いので粗利益率を1.25%、営業利益率を22%とし、営業利益19億円とした(開示の数字ではない)。宮崎県の人口減で、残高は実質で縮む前提。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約70%だけ追うので、中立の率は10年で1.25%→1.55%(+0.30ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
預かり資産・手数料
投資信託・保険の販売と、事業承継・ファイナンスの組成から得る手数料。
| 数量預かり資産残高+取扱高(兆円・実質) | 価格基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.9 | 1.0% | 85 | 25 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.3% | 122 | 40 |
取り方:役務取引の内訳は決算短信で確かめていない。基礎残高0.85兆円に手数料率1.00%を当て、粗利益約85億円、営業利益率30%で約25億円と推定した(開示の数字ではない)。投資信託の解約益は含めない。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
有価証券運用
国債・地方債・社債・株式・投資信託などの運用。預金との差で稼ぐ。
| 数量運用資産の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 1.7% | 204 | 126 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 2.5% | 300 | 198 |
取り方:有価証券の利息・配当金は223.8億円。残高は1.2兆円前後と推定した(総資産4.08兆円から貸出と現金を引いた概算で、開示の数字ではない)。利息・配当から預金の調達費用を引いた純のキャリーを1.70%とし、営業利益率62%で営業利益126億円とした。調整の欄は与信費用・経費の割り振りの残りと株式の売却益などで、経常利益198億円に合わせて−50億円とおいた。売却益は一度きりの分を含み、今の水準をそのまま続くとは見ていない。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
リスクと懸念
債券の含み損と薄い自己資本
自己資本は総資産の5%台と薄く、有価証券は1兆円を超えると見られる。金利が急に上がれば、債券の評価損が資本を直接削る。含み損を抱えると売却を急げず、運用の入れ替えも遅れる。資本の薄さは、悪い局面で貸出の姿勢を縮ませる。
宮崎県の人口減少
人口は100万人ほどで、減る速度は全国より速い部類に入る。企業の数も減り、貸出の量は伸びない。他の地域に出て行って量を取る手もあるが、県外では宮崎銀行の地盤の強みは通用しにくい。
一度きりの利益の反動
2026年3月期の純利益141億円には、株式の売却益が入っている。今期予想の145億円も、その水準を前提にしている。売却益が出なくなれば、利益の伸びは見かけより小さくなる。政策保有株の残高や縮減の方針は確かめられなかった。
預金の金利競争
貸出の金利は先に上がるが、預金の金利は競争で遅れてついてくる。ネット銀行や他県の銀行が高い金利で預金を集めれば、地元の預金の粘りも崩れうる。預金の金利が貸出に追いつく速さが、利ざやの拡大を左右する。
再編の相手と時期が見えない
県内の1県1行化や九州FGなどとの統合は、過去に取りざたされたが、具体的な動きは確かめられていない。統合すれば経費は減るが、相手の資本の質と統合の費用が代償になる。待つ間にも、人口減は進む。
与信費用の正常化
今は与信費用が低く、利益を押し上げている。景気の波が来れば、県内の中小企業の貸倒れが増え、費用が膨らむ。地盤が一つの県に集中している分、一つの産業の不振が、貸出全体に響きやすい。
還元の水準が低い
純利益のうち株主に戻すのは約3割で、残りは自己資本に積む。積んだお金がROEで資本コストを超えなければ、積むほど株主の持ち分の価値は薄まる。累進配当と自社株買いの枠が広がるかどうかが、資本の使い方の質を決める。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ計画より速く上げ、預金の金利が追いつかなかったら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出の利ざやの広がりを四半期の決算で確かめる。
- 県内の与信費用が四半期で急に増えたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。どの業種で増えたかを確かめる。
- 宮崎太陽銀行などとの統合が正式に決まったら
- 経費の削減幅と統合の費用、資本の厚みを見直し、楽観側の筋書きの確率を上げる。統合比率が不利なら逆に下げる。
- 債券の評価損が膨らみ、自己資本比率が一段と下がったら
- 資本の薄さが貸出を縮める筋書きに重みを移し、悲観側を厚くする。
- 総還元性向を30%から大きく引き上げたら
- 資本の使い方が改善したとみて、ROEの見通しを上げる。ただし自己資本の薄さが増す点も見る。
- 株式の売却益が出ない期でも純利益が140億円を保ったら
- 稼ぐ力が上がったとみて、中立の純利益を上方に直す。
見ておくもの
- 日銀の政策金利と宮崎銀行の貸出利ざやの推移
- 預金金利の上がり方と県内の預金の増減
- 有価証券の含み損益と自己資本比率
- 株式の売却益を除いた本業の利益
- 宮崎太陽銀行を含む県内の再編の動き
- 総還元性向と自社株買いの枠
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality +0.5%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9割に置いた(下限は1÷k=12.5倍)。中立・やや悲観・悲観はROEがk(8%)以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その8.5・8・7.5割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは10.6倍から9.4倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.89→13.57 倍・やや楽観 PER 11.25→12.5 倍・中立 PER 10.62→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(再編の相手と時期、債券の含み損、株式売却益の反動)はkに足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せは0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。