結論
百五銀行は、三重県で預金と貸出の首位に立つ地方銀行である。愛知県でも店を増やし、名古屋圏の企業と個人を取り込もうとしている。筆者の結論を先に言うと、今の値段は本質価値を上回る。利上げの追い風は本物だが、稼ぐ力がまだ資本の厚みに追いついていない。
追い風の大きさは数字に出ている。2026年3月期の純利益は前の期の1.5倍の268億円になり、2027年3月期の予想は289億円だ。会社は中期経営計画の目標を、2029年3月期の純利益340億円以上、ROE6%以上へ引き上げた。短期金利が2%へ向かえば、貸出の利ざやはさらに広がる。
それでも筆者が慎重なのは、ROEが資本コストに届かないからだ。2026年3月期のROEは5%台で、資本コストは7.9%前後と見る。資本コストを下回る稼ぎに資本を寝かせたままでは、倍率は伸びにくい。
三重県は人口が減り続ける。貸出の量は実質で縮む前提に立つ。その穴を、利ざやの拡大と、愛知での貸出、預かり資産の手数料で埋められるかが分かれ目だ。大株主に地銀株専門のファンドが入ったことは、資本の使い方が変わる芽として悪くない。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額(約5,552億円)に対し10年で−33.2%、「割高」と見る(資本コスト8.25%、10年の筋書きだけで測る)。割高に寄る結論だ。ただし資本が余っていて、自社株買いに回せば景色は変わる。そこが上振れの鍵になる。
バリュー投資の観点から
筆者がこの会社を見る時、いちばん気にするのは、稼ぎに対して資本が多すぎる点だ。自己資本5,166億円に対し、純利益は268億円。地域の首位という堀は本物だが、その堀から出る利益が、預けられた資本の価値に見合っていない。
オーナーの目で見れば、持ち続ける価値は利ざやの拡大がどこまで続くかにかかる。利上げは追い風だが、人件費も物価で上がる。預金の金利も、競争で上がっていく。追い風は永遠には続かず、最後に残るのは県内の厚みと、愛知での新しい稼ぎである。
資本の使い方は、方向は正しいが歩みが遅い。政策保有株を減らし、還元を増やすのは良い。ただ、ROEが資本コストを下回る間は、自己資本を積み上げるより、株主に返すほうが価値は上がる。配当性向を40%以上へ上げ、自社株買いを厚くできるかを、筆者は見ている。
安全域の点では、今の値段は余裕が薄い。本質価値は今の時価総額を下回り、悲観の筋書きでは自己資本の4割まで沈む。三重の首位という守りは確かだが、払う値段に見合う安さではない。
何で稼ぐ会社か
百五銀行の稼ぎの土台は、三重県内の貸出と預金である。津市に本店を置き、預金は6兆円台、貸出は5兆円規模で、県内ではどちらも首位とされる。県内の中小企業、自治体、住宅ローンの個人客を広く抱え、預金は低い金利で集まる。この預金の安さが、利ざやを稼ぐ元手になる。
稼ぎ方は4本ある。1本目は法人・事業性の貸出だ。県内の中小企業と自治体が主な顧客で、愛知県でも取引先を増やしている。2本目は個人向けの貸出で、住宅ローンが中心になる。3本目は投資信託や保険の販売、法人向けの相談、決済で入る手数料である。4本目は債券などの有価証券運用で、貸出で使い切れない預金の運用先になる。
子会社には百五証券、百五リース、百五みらい投資などがある。証券とリースで取引先の資金需要を広く受け止め、みらい投資で地元企業に資本も出す。
近年は、貸出に頼る従来の形から、預かり資産と法人向けの相談へ軸足を移している。円建ての債券を中心に、運用の組み直しも進めている。中期経営計画の名は「KAI-KAKU150 FINAL STAGE」で、創立150周年に向けた最後の計画にあたる。
預金の安さの理由は、地元に根を張った店舗網と、給与振込や公共料金の引き落としといった日常の取引にある。これは金利で簡単に動かない預金で、銀行にとって最も安い仕入れである。利上げ局面では、この預金の粘りが利ざやの拡大を支える。
三重県は、津市、四日市市、松阪市、伊勢市と、複数の中核都市に人口が分かれている。県内に大きな一極がないぶん、全県に店を持つ百五銀行の網が価値を持つ。一方、名古屋に近い北部では、愛知の銀行との競争が日常的に起きている。
優良さと弱いところ
百五銀行の堀、つまり他社がまねしにくい強みは、三重県での預金と貸出の厚みである。県内に張りめぐらせた店舗網と、長年のつきあいがある取引先は、他行が簡単には奪えない。預金が安く集まるので、利上げ局面でも預金金利の上がり方を抑えやすい。
弱さもはっきりしている。稼ぐ効率が低い。2015年からの10年余り、ROEは3%前後が続いた。2026年3月期にようやく5%台へ乗ったが、資本コストの7〜8%にはまだ遠い。自己資本比率は6.8%と、連結ベースの単純な見方では薄い。ただし銀行は規制上の自己資本比率で見る。単体は約11%で、ここは余裕がある。
舞台の三重県は人口が減る。名古屋圏と大阪圏にはさまれ、県内の需要は細りやすい。愛知への進出は正しい手だが、名古屋では地元の大手地銀や、メガバンクと競うことになる。
経営の規律は改善の途上にある。政策保有株は、時価を連結純資産の20%未満へ下げる方針で、4年で200億円以上減らす計画だ。2029年3月期に配当性向40%以上を目指す。目標を上方修正した点は評価できる。ただ、資本をどこまで還元に回すかは、まだ会社の腹づもり次第である。
愛知への進出で、顧客層は名古屋の製造業やその取引先へ広がる。ここで安く貸すだけでは稼げないので、手数料を取れる相談業務をどこまで厚くできるかが、堀を広げられるかの分かれ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、30年続いた低金利の終わりを迎えている。政策金利が上がると、貸出の金利はすぐ動くが、預金の金利は遅れてついていく。この時間差が利ざやを広げる。百五銀行の場合、利上げの恩恵は2026年3月期の純利益1.5倍という形で出た。短期金利が2%へ向かえば、恩恵はもう一段広がる。
一方、地域の資金需要は細っている。人口と事業所が減り、貸出の量は実質で伸びない。地銀は量で稼ぐ時代から、利ざやと手数料で稼ぐ時代へ移った。物価が年3%で上がる世界では、残高そのものは名目で増えても、中身の量は縮む。
再編が進んでいる。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行が統合で基本合意した。東海では、三十三フィナンシャルグループとあいちフィナンシャルグループの統合話が2026年9月に解消された。地銀の統合は簡単ではない。
百五銀行は単独のまま、愛知への出店と預かり資産の強化で伸びようとしている。再編に乗った同業は、システムの共通化で経費率が下がる。単独の百五が同じ効果を出せるかが、10年後の差になる。
競争相手は、地元の十六フィナンシャルグループや名古屋銀行、メガバンク、ネット銀行である。住宅ローンでは、ネット銀行の低金利に押される。法人では、愛知の取引先の奪い合いが続く。
利上げ後の地銀の差は、預金をどれだけ安く保てるかで決まる。県内に強い基盤を持つ銀行は預金が動きにくい。逆に都市部のネット銀行は、預金金利を前面に出して預金を奪いにくる。三重の百五銀行は、県内ではまだ前者の立場にある。
資本政策と M&A
資本政策は、余裕を使い切れていないというのが筆者の見立てだ。単体の自己資本比率は約11%で、会社はこれを2029年3月期に10%程度へ下げる計画を持つ。下げた分は還元か成長に回る。2027年3月期の総還元性向は43%程度の計画で、自社株買いは25億円と控えめだ。配当性向は2029年3月期に40%以上を目指す。
政策保有株は、連結純資産に対する時価比率を2027年3月期までに20%未満へ下げる。4年で時価200億円以上を減らす計画で、時価残高は2027年3月期に1,078億円になる見込みだ。売った資金は債券運用や貸出に回る。
株主には、地銀株に絞って投資するありあけキャピタルが5.9%入っている。目的は純投資を基本としつつ、資本政策などの提案をする可能性も書かれている。2026年に入って持ち分を増やしており、還元の強化を求める圧力になりうる。
大きな買収の予定は見当たらない。子会社は証券、リース、投資などの周辺業務である。自社が買われる側になる確率は、kabufuの推定で10年以内15.5%。単独で愛知へ広げる道を選んでいる以上、再編に自ら動くかどうかも、資本の使い道を左右する。
【実行済み分の扱い】2026/5/12 決議の上限 25 億円の自社株買いは、6 月初めに約 25 億円(127.75 万株)を取得して終了し株数に反映ずみ。10 年の還元には入れていない(2027/3 期の計画額の分を除く)。自己資本の起点は 2026/3 期末から 25 億円引いた 5,141 億円。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利上げは、まだ序盤である。2026年3月期の純利益は前の期の1.5倍の268億円になり、2027年3月期の第1四半期は前年同期の2.1倍の80億円だった。短期金利が2%まで上がれば、預金の金利が追いつかないぶん、利ざやはもう一段広がる。会社は目標を340億円へ引き上げたが、これは慎重な数字だ。
三重県の預金と貸出の首位という足場は、県内の中小企業と個人を長く囲い込んでいる。預金が安く集まるので、貸出利ざやの拡大が利益へそのまま流れる。愛知県での出店と法人取引は、県内の人口減を補う新しい畑になる。
資本にも余裕がある。単体の自己資本比率は約11%で、10%程度へ下げる計画だ。下げた分は自社株買いに回せる。地銀株に特化した投資ファンドが5.9%の株主に入っており、還元の強化へ背中を押す力が働く。政策保有株の売却で浮く資金も、貸出や債券運用で収益に変わる。
預かり資産の手数料も伸びる。新しいNISAや相続の需要で、投資信託や保険の販売は厚みを増す。貸出が量で伸びなくても、利ざやと手数料で利益は積み上がる。ROEは10年後に9%台へ届き、資本コストを上回れば、倍率は大きく切り上がる。
10年の視野で見れば、愛知の取引先が積み上がる効果は大きい。1社ずつ口座と貸出を取り、その社員の給与や個人の資産運用まで広げていけば、手数料の厚みは今の想像を超える。
慎重な見方
利上げの追い風は、すでに決算に出尽くしつつある。会社の予想は2027年3月期に289億円まで伸びるが、そこから先は預金の金利が競争で上がり、利ざやの拡大は鈍る。人件費も物価で上がる。追い風が一巡した後に残るのは、人口が減る三重県の細る貸出需要である。資本コストは7.9%前後だから、資本を寝かせるほど稼ぎが追いつかない。会社が目標を340億円、ROE6%に引き上げても、まだ資本コストを下回る。今の値段は、ROEが9%に届くことを織り込んだ水準に見える。
愛知への進出は前向きだが、名古屋は地元の有力地銀とメガバンクの激戦区だ。簡単にシェアは取れず、値引きの競争になれば利ざやを削る。住宅ローンもネット銀行の低金利に押され、個人貸出の利ざやは広がりにくい。
最後に景気の山と谷がある。信用コストは今が低すぎる。リーマン級の不況が来れば、与信費用が膨らみ、債券と株の評価損で自己資本が削られる。過去の株価は、PBR0.2倍台まで沈んだ時期がある。再編に乗り遅れた単独の地銀は、10年後に構造的に負ける道もある。
さらに、資本の使い方の遅さも問題だ。自社株買いは今期25億円と、純利益の1割にも満たない。ROEが資本コストを下回る会社が、資本を積み上げ続けることは、株主にとって価値の目減りである。
どちらに重みを置いたか
追い風の強さと足場の確かさは、強気の見方に分がある。だが決め手は、ROEが資本コストに届くかどうかだ。10年後も、中立のROEは資本コストの下にある。この点では慎重な見方が強い。
確率は、中立に3割を置いた。楽観側は10年で3割強に抑え、やや悲観を2割台半ばまで厚くした。人口減の三重を舞台にしながら、資本の厚い会社だからだ。ありあけキャピタルの存在と自社株買いの余地は、上振れの確率に入れたが、決め手とは見なさなかった。
今の値段は、ROEが資本コストを超える姿をすでに織り込んでおり、その前提が崩れる筋書きの重みを軽くは置けなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,303 円5,560 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 855 円2,065 億円)。 今の値に割り戻すと 1,618 円3,906 億円、今との差 −22.5%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,637 円8,780 億円 | 1,218 円2,939 億円 | +132.4% | +8.8% | 485 円1,172 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,017 円7,283 億円 | 1,049 円2,531 億円 | +94.6% | +6.9% | 894 円2,159 億円 |
| 中立 | 30% | 2,651 円6,399 億円 | 926 円2,235 億円 | +71.2% | +5.5% | 1,073 円2,590 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,663 円4,015 億円 | 659 円1,590 億円 | +11.2% | +1.1% | 580 円1,401 億円 |
| 悲観 | 13% | 498 円1,203 億円 | 465 円1,123 億円 | −53.9% | −7.4% | 125 円302 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,303 円5,560 億円 | 855 円2,065 億円 | +51.2% | +4.2% | 3,159 円7,625 億円 |
今の株価時価総額 2,089 円5,043 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 愛知と手数料が育ち資本効率が資本コストを超える10年 利益 679 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,637 円8,780 億円
短期2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは高い水準で安定する。愛知での取引先が積み上がり、名古屋圏の法人貸出が三重の減少を補う。預かり資産と法人向けの手数料は、新NISAと相続の流れで実質の残高が4割以上増える。政策保有株の売却は終わり、浮いた資本は継続的な自社株買いに回る。自己資本の増え方が抑えられ、ROEは9%台に届く。再編に乗らなくても単独で規模の効果を出せることを、この10年で示す。人口減の三重では、貸出の量は実質で縮む。そのぶんを愛知の法人取引と手数料で埋め、利益は500億円台後半へ届く。資本の使い方が株主向けに変わったことで、自己資本の増え方が抑えられ、ROEは資本コストを大きく超える。
- 法人・事業性貸出:数量 3.3(事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.3%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 747 億円・営業利益 433 億円。残高 3.30 兆円(実質)× 率 2.27%(物価込み)、利益率 58%
- 個人貸出:数量 1.8(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 392 億円・営業利益 212 億円。残高 1.80 兆円(実質)× 率 2.17%(物価込み)、利益率 54%
- 預かり資産・手数料:数量 2.9(預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質))× 価格 1.3%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 369 億円・営業利益 214 億円。残高 2.90 兆円(実質)× 率 1.27%(物価込み)、利益率 58%
- 有価証券運用:数量 1.7(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 298 億円・営業利益 268 億円。残高 1.65 兆円(実質)× 率 1.81%(物価込み)、利益率 90%
倍率:事業の純利益 679 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.93 倍、時価総額 8,780 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:愛知での拡大、手数料の伸び、自社株買いの3つが10年間すべて噛み合う。ROEが資本コストを大きく超える想定で、確度は高くない。
やや楽観 22% 利ざやの定着と還元強化で安定成長 利益 596 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 3,017 円7,283 億円
利ざやは高い水準で定着し、会社の目標を上回る利益が続く。愛知の出店は着実に実を結び、預かり資産の残高も実質で3割ほど伸びる。還元は配当性向50%超まで高まり、自社株買いも継続する。三重の人口減で貸出の量は実質で縮むが、利ざやと手数料が補い、ROEは8%台で資本コストをわずかに上回る。預金の金利競争は激しくなるが、県内の預金の粘り強さが調達コストを抑える。信用コストは景気循環を経てならした水準に戻る。ありあけキャピタルの求める還元の強化にも応え、配当と自社株買いの合計は純利益の6割近くに届く。県内の貸出の量は実質で縮み続けるが、手数料と利ざやの厚みがそれを埋める。
- 法人・事業性貸出:数量 3.2(事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.2%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 703 億円・営業利益 394 億円。残高 3.20 兆円(実質)× 率 2.20%(物価込み)、利益率 56%
- 個人貸出:数量 1.8(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 369 億円・営業利益 192 億円。残高 1.77 兆円(実質)× 率 2.09%(物価込み)、利益率 52%
- 預かり資産・手数料:数量 2.7(預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 337 億円・営業利益 185 億円。残高 2.70 兆円(実質)× 率 1.25%(物価込み)、利益率 55%
- 有価証券運用:数量 1.6(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 274 億円・営業利益 244 億円。残高 1.57 兆円(実質)× 率 1.74%(物価込み)、利益率 89%
倍率:事業の純利益 596 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.22 倍、時価総額 7,283 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやが高い水準で定着し、還元が厚くなる。中期経営計画の方向が10年維持される上位レンジ。
中立 30% 中立:利ざやは定着するが資本の重さが残る 利益 528 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,651 円6,399 億円
短期2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは高めに落ち着く。三重の人口減で、事業性貸出と個人貸出の量は実質で5〜8%縮む。愛知の拡大と預かり資産の伸びがその分を補い、純利益は500億円台まで増える。ただし配当と自社株買いの合計が純利益の5割台半ばにとどまるため、自己資本が積み上がり、ROEは7%台で資本コストに届かない。三重の首位という守りは変わらず、特別な上振れも下振れもない10年である。愛知は伸びるが、名古屋圏の厚い競争のなかで、取れるシェアは小さい。預かり資産の手数料は伸び、物価で単価も上がるが、人件費も同じペースで上がるため、利益率の改善は限られる。再編には乗らず、単独のまま経費率の改善を粘り強く進める姿である。
- 法人・事業性貸出:数量 3.1(事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.1%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 666 億円・営業利益 360 億円。残高 3.13 兆円(実質)× 率 2.12%(物価込み)、利益率 54%
- 個人貸出:数量 1.7(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 351 億円・営業利益 176 億円。残高 1.75 兆円(実質)× 率 2.01%(物価込み)、利益率 50%
- 預かり資産・手数料:数量 2.6(預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 321 億円・営業利益 167 億円。残高 2.60 兆円(実質)× 率 1.23%(物価込み)、利益率 52%
- 有価証券運用:数量 1.5(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 251 億円・営業利益 221 億円。残高 1.50 兆円(実質)× 率 1.68%(物価込み)、利益率 88%
倍率:事業の純利益 528 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 6,399 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、人口減のなかで利ざやと手数料が貸出の量の減りを補う中心シナリオ。ROEは資本コストにほぼ並ぶ。
やや悲観 25% 人口減と競争で稼ぎが伸びない 利益 368 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 1,663 円4,015 億円
三重の人口減が計画より速く進み、法人貸出も個人貸出も実質で1割以上縮む。愛知では地元大手とメガバンクの壁に阻まれ、利ざやを削る競争が続く。預金は金利競争で調達コストが上がり、利ざやの拡大は想定の半分で止まる。再編に乗れず、経費率も思うように下がらない。ROEは5%台で資本コストを大きく下回り、会社が掲げる6%にも届かない10年になる。新しい利益の源である愛知と手数料が計画どおり育たず、利益は今の1.4倍にとどまる。自己資本は積み上がるのに利益が伸びないため、ROEは低いまま長く続く。株主は、さらなる還元や統合を求めるようになる。
- 法人・事業性貸出:数量 3.0(事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 2.0%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 579 億円・営業利益 290 億円。残高 2.97 兆円(実質)× 率 1.95%(物価込み)、利益率 50%
- 個人貸出:数量 1.6(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.8%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 300 億円・営業利益 138 億円。残高 1.63 兆円(実質)× 率 1.83%(物価込み)、利益率 46%
- 預かり資産・手数料:数量 2.2(預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質))× 価格 1.2%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 266 億円・営業利益 125 億円。残高 2.20 兆円(実質)× 率 1.21%(物価込み)、利益率 47%
- 有価証券運用:数量 1.4(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.5%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 214 億円・営業利益 186 億円。残高 1.43 兆円(実質)× 率 1.50%(物価込み)、利益率 87%
倍率:10年後のROE5.4%(純利益368億円÷自己資本6,781億円)は k8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。競争や統合の遅れで稼ぐ力が鈍る姿。上限の9.0割に置き、10.91倍。今の自己資本5,166億円に対する倍率は0.78倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:人口減が加速し、愛知で苦戦し、預金金利の競争で利ざやが縮む。10年では停滞の年が相応に混ざる。
悲観 13% 構造的に負け、資本が寝たまま沈む10年 利益 124 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 498 円1,203 億円
10年のどこかでリーマン級の不況が来る。与信費用が急増し、債券と株の評価損で自己資本が削られる。人口減は想定を超えて速く、三重の貸出需要は実質で2割以上縮む。愛知への展開も実らない。再編に乗れず、システムや店舗の費用が重いまま、経費率は下がらない。利益は資本に対して小さく、ROEは2%程度に沈む。PBR0.4倍の優良でない銀行になっている。三重の首位という看板は残るが、稼ぐ力は資本の重さに見合わない。10年後には、再編の波に乗った同業と、単独で苦しむ同業の差が決定的になっている。株主から統合や資本の抜本的な見直しを迫られる局面もありうる。
- 法人・事業性貸出:数量 2.6(事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.7%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 437 億円・営業利益 184 億円。残高 2.64 兆円(実質)× 率 1.65%(物価込み)、利益率 42%
- 個人貸出:数量 1.5(個人向け貸出の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.5%(残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数)→ 売上 226 億円・営業利益 81 億円。残高 1.48 兆円(実質)× 率 1.53%(物価込み)、利益率 36%
- 預かり資産・手数料:数量 1.7(預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質))× 価格 1.1%(基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数)→ 売上 195 億円・営業利益 62 億円。残高 1.70 兆円(実質)× 率 1.15%(物価込み)、利益率 32%
- 有価証券運用:数量 1.3(運用資産の平均残高(兆円・実質))× 価格 1.2%(残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数)→ 売上 159 億円・営業利益 124 億円。残高 1.32 兆円(実質)× 率 1.21%(物価込み)、利益率 78%
倍率:10年後のROE2.2%(純利益124億円÷自己資本5,614億円)は k8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の8.0割に置き、9.70倍。今の自己資本5,166億円に対する倍率は0.23倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。悲観の利益は、貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%(純利益124億円)に置いた。
確率:リーマン級の不況に加え、再編に乗れず経費率が下がらないまま規模の経済が働かない構造的な負け。10年では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・事業性貸出
三重県内の中小企業・自治体向け貸出と、愛知県などの取引先への事業性貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.3 | 1.3% | 429 | 180 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 2.1% | 666 | 360 |
取り方:貸出残高は2025年3月期で約5.05兆円(第三者の集計)。2026年3月期は約5.2兆円と見て、法人・事業性・公共向けを約3.3兆円、個人向けを約1.9兆円に分けた(開示の内訳ではなく推定)。法人貸出の預金運用益込みの利ざやを1.30%、経費の割り振り後の営業利益率を42%とし、180億円とした。残高は今の値段のままの実質、物価の分は価格の指数(3年1.09倍・10年1.34倍)に入れる。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+22%。数量が名目でないので二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりの純利ざや+手数料(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 1.2% | 228 | 82 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 2.0% | 351 | 176 |
取り方:個人向け貸出を約1.9兆円と推定し、住宅ローンの低い利ざやを1.20%、経費の割り振り後の営業利益率を36%とした(推定)。三重の人口減とネット銀行の低金利で、残高は実質で縮む前提。残高は実質、物価は価格の指数に入れる。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+25%。数量が名目でないので二重がけなし)
預かり資産・手数料
投資信託・保険・証券の販売と、法人向けの相談・決済で得る手数料。
| 数量預かり資産+法人取引高の基礎残高(兆円・実質) | 価格基礎残高あたりの手数料率(%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1.0% | 190 | 86 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 1.2% | 321 | 167 |
取り方:役務取引等の収益と預かり資産の残高は、決算の開示を確かめていない。そこで連結の手数料収益を約190億円と置き、基礎残高2.0兆円に対して率0.95%という推定にした(開示の内訳ではない)。営業利益率は45%程度とし86億円。預かり資産は新NISAと相続の流れで実質の残高が伸びる。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で-3%。数量が名目でないので二重がけなし)
有価証券運用
債券・投資信託などの有価証券運用(政策保有株を除く)。
| 数量運用資産の平均残高(兆円・実質) | 価格残高あたりのキャリー収益率(調達費用控除後、%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 1.0% | 150 | 125 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 1.7% | 251 | 221 |
取り方:預貸の差を運用する債券などを約1.5兆円と推定し、調達費用を引いたあとの収益率を1.00%、営業利益率を83%とした(推定)。保有債券の入れ替えが進み、金利が上がるほど利回りが切り上がる。政策保有株の売却益などの一度きりの利益は、全社の調整に含める。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+25%。数量が名目でないので二重がけなし)
リスクと懸念
三重県の人口減と貸出需要の縮小
県内の人口と事業所は減り続け、貸出の量は実質で縮む。県内の首位という強みも、市場そのものが細れば価値は目減りする。愛知での拡大で補えなければ、利益は利ざやの拡大分だけで頭打ちになる。県内の中小企業の数が減れば、貸出の取引先そのものが減る。
預金金利の競争と利ざやの伸び悩み
利上げ局面の追い風は、預金の金利が遅れて上がるから生まれる。ネット銀行や他の地銀が預金金利を先に上げれば、利ざやの広がりは想定より小さくなる。今の増益の勢いがそのまま続くとは限らない。預金を集める力は、銀行にとって最大の仕入れの強さである。この強みが薄れる局面を警戒する。
信用コストの正常化と景気後退
与信費用は好況期に低く出やすい。景気が悪化すれば、三重・愛知の中小企業の倒産が増える。リーマン級の不況では、債券と政策保有株の評価損も重なり、自己資本が削られる。谷の年の損失は、数年分の利益を消すことがある。
愛知での競争と実行の難しさ
名古屋圏は地元の有力地銀とメガバンクが厚く構える。後発の百五銀行が取引先を取るには、値引きが必要になりやすい。出店を増やしても、利益になるまでには時間がかかり、経費が先行する。店舗や人への先行投資は、数年は利益を押し下げる。
資本の使い方の遅さ
ROEが資本コストを下回る間、自己資本を積み上げるほど価値は薄まる。還元の拡大が計画より遅れれば、倍率は上がらない。ありあけキャピタルのような株主が、強く働きかけてくる可能性もある。株主との対話の中身が、倍率を左右する。
今後の分かれ目
- 短期金利が計画より速く2%へ近づき、預金金利の上がり方が遅いままなら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出と預金の利回りの差を決算で確認する。
- 与信費用が四半期で急に増えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。どの業種で増えたかを確認する。
- 配当性向が40%を超え、自社株買いが数百億円の規模になったら
- 資本の使い方が変わったとみて、中立と楽観の確率を上げてよい。ROEの上がり方も合わせて見る。
- 愛知での貸出残高と取引先が計画を上回って増えたら
- 三重の人口減を補えるとみて、10年の上振れ側を厚くする。
- ありあけキャピタルが株主提案や公開の要請に動いたら
- 還元強化か資本の見直しが進む芽とみて、上振れ側の確率を少し上げる。
- 同業との統合や提携が発表されたら
- 統合の条件と効果を見て、経費率が下がるなら楽観側、条件が悪ければ悲観側へ重みを移す。
見ておくもの
- 政策金利と、貸出・預金の利回りの差の推移
- 与信費用と、大口先・愛知の取引先の状況
- 配当性向・自社株買いの規模と、単体の自己資本比率
- 愛知での貸出残高と、預かり資産の手数料
- 政策保有株の売却の進み具合(時価残高1,078億円の計画)
- ありあけキャピタルの持ち分の変化と、株主の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality)・g 0.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=12.1倍。資本の余裕を還元に回しても ROE は7%台にとどまる)。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その9割・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造からROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは10.3倍から9.9倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.28→12.93 倍・やや楽観 PER 11.15→12.22 倍・中立 PER 10.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β 0.87 × 5% + 規模 0.50%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(厚い自己資本を使い切れないことによる低い ROE)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。