結論
山形銀行は、山形県内で預金・貸出とも最大の地方銀行である。預金は約2.8兆円と、荘内銀行のおよそ2倍ある。
筆者の結論は、今の値段は10年先の価値を上回る、というものだ。利ざやの拡大で稼ぎは2倍前後に育つが、それでも自己資本に対する利益は資本コストに届かないと見る。
追い風ははっきりしている。短期金利が2%へ上がり、貸出の利ざやが広がる。2026年3月期の純利益は65億円と、前の期から5割近く増えた。会社は2027年3月期に75億円を見込む。
逆風も重い。山形は人口が減る県だ。2035年には県の人口が2020年より約17%減る。貸出の数量は伸びにくく、稼ぎは利ざやと経費でしか増やせない。有価証券の運用も、債券の含み損が前の計画を狂わせた。
2027年1月には、荘内銀行と北都銀行が合併してフィデア銀行になる。本店は山形市だ。県内最大手の地位は変わらないが、競争は確実に厳しくなる。
中立の10年後はROE7%弱。筆者は、資本コストを超えられない銀行に高い値段は付けられないと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が見るのは、この銀行を一生持ち続けたいかどうかだ。筆者の答えは、今の値段では持ちたくない、である。
事業の質を見る。県内最大手で、預金という安い資金を大量に持つ。これは本物の強みだ。利ざやが広がる10年に、この強みは稼ぎに変わる。
ただし、稼ぎは資本に見合っていない。自己資本約1,500億円に対して、過去10年の純利益は年20〜75億円にとどまった。10年後の中立でもROEは7%弱で、資本コスト8.3%に届かない。ためた利益は、積んだ額より小さな価値しか持たない。
経営の資本の使い方は改善の途上にある。配当性向の引き上げ、自己株買い、政策保有株の削減は正しい方向だ。一方、有価証券では債券の含み損で何度も利益を振らせた。長期の金利が上がる局面で、この部門をどう扱うかを注視したい。
安全域は見当たらない。楽観の筋書きでも、資本コストで割り引いた価値は今の時価総額に届かない。
筆者は、この銀行が悪い会社だと言っているのではない。値段が先に走りすぎている、と言っている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は、山形県内の企業と住民への貸出である。預金で集めたお金を貸し、その金利の差で稼ぐ。預金は約2.8兆円、貸出は2兆円近く。いずれも県内に本店を置く主な銀行で最大で、荘内銀行のおよそ2倍の規模がある(2023年3月末)。店舗は84か店だ。
事業は4つに分けて見られる。法人貸出は県内の中小企業や地方公共団体が相手で、地元の事業会社が取引先になる。個人貸出は住宅ローンが中心で、固定金利が多く、金利上昇の波及は遅い。
3つ目は役務、つまり手数料の収入である。投資信託・保険・証券仲介のほか、法人向けのコンサルティングにも力を入れる。2022年には、地域の課題解決を担うやまがた協創パートナーズを設立した。
4つ目は有価証券の運用で、約1兆円を国債・外債・株式・投信で運用する。この部門は利益を大きく振らせてきた。前の中期計画が未達に終わったのも、市場部門の運用悪化が原因だった。
現在の長期経営計画「Pro-Act」(2024〜2026年度)は、専門人材の増強、DX、金利上昇局面での本業利益の拡大、有価証券の円債中心への組み替えを6本柱に置く。2026年度の純利益は50億円、2030年度は75億円を目標にしたが、2027年3月期の会社予想がすでに75億円で、計画は実績に追い越されつつある。
優良さと弱いところ
最大の強みは、県内最大手という地位だ。預金も貸出も、県内に本店を置く主な銀行の中でいちばん大きい。84の店舗と取引先の数は、新しく参入する銀行が簡単に再現できるものではない。
ただし、強い地位がそのまま高い収益につながってこなかった。過去10年のROEは1.5〜4.5%の間で、中央値は2.6%。資本コストを大きく下回り続けた。理由は3つある。貸出金利が低いまま競争で上がらなかったこと、経費率が高いこと、有価証券の運用で損が出たことだ。
直近は変わり始めた。2025年9月中間期のコアOHR、つまり本業の収益に対する経費の比率は64%と、1年で6.5ポイント下がった。2026年3月期は経常利益が4割近く伸びた。
弱点は資本の薄さだ。連結の自己資本は約1,500億円で、貸出と預金の規模に比べて小さい。規制上の自己資本比率は単体で9.75%(2025年9月)と、目標の9%以上は満たすが、余裕は大きくない。債券の含み損が膨らめば、貸出も還元も絞らざるをえない。
経営の規律は改善している。政策保有株を純資産の12.8%(2024年度末)から2028年度までに10%未満へ縮める。配当性向の目標を35%から40%へ上げ、2026年2月には自己株買いも実行した。ただ、薄い資本で還元を厚くすれば、貸出の伸びか資本比率のどちらかを削ることになる。筆者はこの綱引きをいちばん気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行業は「金利のある世界」の初期にいる。長い低金利が終わり、短期金利は2%へ向かう。変動金利の貸出は先に上がり、預金は遅れて追う。このずれが貸出の利ざやを広げる。筆者は、これが地銀にとって10年で最大の追い風になると見る。
一方、地方の数量は伸びない。山形県の人口は2020年の106.8万人から2035年に88.6万人へ、約17%減る推計だ(社人研)。企業の数も減る。全国銀行の貸出は5%台で伸びているが、それは大企業・都市部の話で、山形の貸出は名目で年2%台がやっとだろう。
県内の競争は2027年に一段変わる。荘内銀行と北都銀行(秋田)が1月に合併し、フィデア銀行になる。本店は山形市に置く。東北で初めての県境をまたぐ広域地銀だ。新銀行の預金は約2.7兆円と、山形銀行に並ぶ。ただし半分は秋田の北都銀行の分で、山形県内で向き合う規模は荘内銀行の1.2兆円ほど(2023年3月末)だ。それでも、秋田の収益力と人材を山形に回せる点で、これまでの荘内銀行とは違う。
全国では再編が続く。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行が統合に動いた。山形銀行に統合の報道はなく、単独で規模と効率を磨く道を歩んでいる。店舗とシステムの重複を解く機会がない分、経費率の改善は自力で進めるしかない。
預金の競争も見逃せない。山形銀行は2026年に定期預金と普通預金の金利を引き上げた。信用金庫やネット銀行が追えば、利ざやの広がりは小さくなる。
資本政策と M&A
還元は厚くなる方向にある。2026年2月に配当性向の目標を35%から40%へ引き上げ、景気と金利の環境が続く間は累進的に増やす方針も示した。2027年3月期の年間配当は前の期より増やす予定だ。同じ月に約12億円の自己株買いを実行し、5月にも上限5億円の枠を決めた。
政策保有株は、純資産の12.8%(2024年度末)から2028年度までに10%未満へ縮める。売却した資金は貸出と有価証券の組み替えに回る。
M&Aは、この会社の選択肢にあまり入っていない。むしろ事業を絞ってきた。2024年に木の実管財を解散し、2026年3月にはやまぎんキャピタルの解散を決めた。本業に集中する姿勢がうかがえる。
買われる側の可能性は低くない。時価総額は1,500億円ほどで、地銀の中では小さめだ。kabufuの推定では10年以内にTOB・買収を受ける確率は16%ほどある。大株主は信託口や生保などで、支配株主はいない。筆者は、対等な再編に加わる選択肢は残っているが、今は表に出ていないと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
山形銀行は、金利のある世界の勝ち組になれる。
預金は県内で最大、2.8兆円の安い資金を持つ。短期金利が2%へ上がれば、貸出金利は先に上がる。預金は店舗網の厚みで、他行ほど金利を上げなくて済む。2026年3月期の純利益は65億円と前の期から5割近く伸び、2027年3月期は75億円を見込む。第1四半期の純利益は前の年の1.65倍だった。伸びは始まったばかりだ。
経費も下げられる。コアOHRは1年で6.5ポイント改善し、64%になった。DXと店舗の見直しで、さらに下がる。
有価証券は円債中心に組み替え、運用の振れを減らす。政策保有株の売却で得た資金は貸出に回る。
フィデア銀行の誕生は脅威に見えるが、統合の作業に数年を取られる。その間に山形銀行は優良な取引先を固める。
純利益が今の2倍半になれば、ROEは8%台後半に届く。そのとき、配当性向40%の還元が、自己資本の厚みと合わさって株主に戻る。
預金の安さは、金利が上がるほど価値を増す。山形銀行の強みは、地域の預金を安く集められることだ。これは規制と店舗網に守られた、他行が真似しにくい資産である。
慎重な見方
利ざやの追い風は、すでに利益の予想に織り込まれている。
山形の人口は2035年までに約17%減る。貸出の残高は伸びず、取れる顧客は取り尽くしている。利益の伸びは、利ざやと経費でしか作れない。ところが預金の競争は始まっている。山形銀行も2026年に預金金利を引き上げた。信用金庫とネット銀行が追えば、利ざやの広がりは半分になる。
有価証券は約1兆円ある。長期金利が上がれば、含み損がまた膨らむ。前の中期計画は、運用の悪化で純利益が未達に終わった。
資本は薄い。連結の自己資本は約1,500億円、規制上の比率は単体で9.75%。評価損が出れば、還元より先に自己資本を守る必要が出る。
フィデア銀行は山形市に本店を置き、秋田の収益力と人材を山形に回せる。県内の優良な法人を奪い合う相手が現れる。
過去10年のROEの中央値は2.6%。中立でも7%弱では資本コストに届かず、利益をためるほど価値が薄まる。
政策保有株の売却も、資本の薄さを根本から解く手ではない。売却益は一度きりで、10年の稼ぐ力を変えない。成長の道具が少ない会社に、高い倍率は付けにくい。
どちらに重みを置いたか
資本コストに届かないROEが、結論を決める。利ざやの追い風は本物で、稼ぎは2倍前後に育つと見る。ただ、それでもROEは7%弱にとどまり、資本コスト8.3%を下回る。強気の筋書きでも、割り引いた価値は今の時価総額に届かない。
確率は、有価証券の振れ、過去の実績の弱さ、フィデア銀行の誕生を重く見て、やや悲観と悲観に合わせて4割を置いた。楽観は8%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,240 円1,311 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,337 円414 億円)。 今の値に割り戻すと 2,808 円868 億円、今との差 −34.2%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,266 円2,247 億円 | 1,941 円600 億円 | +115.6% | +8.0% | 737 円228 億円 |
| やや楽観 | 21% | 6,041 円1,868 億円 | 1,617 円500 億円 | +79.3% | +6.0% | 1,608 円497 億円 |
| 中立 | 31% | 5,456 円1,687 億円 | 1,455 円450 億円 | +61.9% | +4.9% | 2,143 円662 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,358 円729 億円 | 1,100 円340 億円 | −19.0% | −2.1% | 864 円267 億円 |
| 悲観 | 15% | 728 円225 億円 | 776 円240 億円 | −64.8% | −9.9% | 226 円70 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,240 円1,311 億円 | 1,337 円414 億円 | +30.6% | +2.7% | 5,577 円1,724 億円 |
今の株価時価総額 4,270 円1,320 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 合併ドミノの外で県内の主導権を固め、利ざやも乗る10年 利益 184 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 7,266 円2,247 億円
フィデア銀行の誕生は、県内の競争をかえって落ち着かせる。統合の作業に追われる相手は、数年のあいだ貸出の値引きどころではない。山形銀行は法人の取引先を取り込み、貸出の利ざやは1.45%まで広がる。
短期金利は2%に定着し、預金の追随も4割にとどまる。預金は県内で最大の店舗網に支えられ、金利競争に巻き込まれにくい。
役務収益は、コンサルティングと資産形成の相談で育つ。有価証券は円債を中心に組み直され、含み損に悩まされない。
純利益は今の3倍近くに増え、ROEは8%台後半に届く。資本コストをわずかに超える水準だが、人口の減る県で到達できる最良の姿だ。
- 法人貸出:数量 1.6(法人・公共向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 229 億円・営業利益 92 億円。残高等 1.58 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 40%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 131 億円・営業利益 37 億円。残高等 1.05 兆円(名目)× 率 1.25%、利益率 28%
- 預かり資産・手数料:数量 2.2(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 143 億円・営業利益 53 億円。残高等 2.20 兆円(名目)× 率 0.65%、利益率 37%
- 市場運用:数量 1.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 159 億円・営業利益 99 億円。残高等 1.35 兆円(名目)× 率 1.18%、利益率 62%
倍率:事業の純利益 184 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.30% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.21 倍、時価総額 2,247 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:県内の競争が落ち着き、利ざやの拡大と経費の圧縮、有価証券の安定がすべてそろう前提。人口の減る県で全部が良い方向にそろう必要があり、確率は低い。
やや楽観 21% 利ざやの広がりと経費の圧縮が計画を上回る10年 利益 155 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 6,041 円1,868 億円
短期金利の上昇で利ざやは10年で0.4%近く広がり、経費の圧縮も進む。コアOHR、つまり本業の収益に対する経費の比率は、今の64%から50%台前半まで下がる。
荘内銀行と北都銀行の合併で県内の競争は強まるが、山形銀行の顧客基盤を切り崩すところまでは行かない。法人貸出の残高は年2.8%ほどで伸びる。
政策保有株は純資産の10%未満へ縮み、その資金は貸出と有価証券の組み替えに回る。含み損の痛手は小さくなる。
純利益は今の2.4倍ほどになる。ROEは7%台前半で、資本コストには届かない。山形銀行にとっては、計画を上回る良い10年だが、それでも資本の稼ぐ力は資本コストに届かないという結論は変わらない。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・公共向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 214 億円・営業利益 79 億円。残高等 1.52 兆円(名目)× 率 1.41%、利益率 37%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 122 億円・営業利益 29 億円。残高等 1.02 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 24%
- 預かり資産・手数料:数量 2.1(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 130 億円・営業利益 44 億円。残高等 2.10 兆円(名目)× 率 0.62%、利益率 34%
- 市場運用:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 146 億円・営業利益 88 億円。残高等 1.30 兆円(名目)× 率 1.12%、利益率 60%
倍率:事業の純利益 155 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 1,868 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画を上回って利ざやが乗り、経費も下がる姿。会社自身が2027年3月期に計画の2030年度の目標を前倒しで達成しそうな勢いにあり、この筋書きは軽くない。
中立 31% 利ざやで稼ぎは伸びるが、人口減と新しい競争相手が頭を抑える10年 利益 140 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,456 円1,687 億円
短期金利が2%に定着し、貸出の利ざやは広がる。法人は1.35%、個人は1.12%まで上がるが、預金の金利も追いかけるので、広がりの一部は削られる。
山形の人口は10年で1割以上減る。貸出の残高は名目で年2%台の伸びにとどまる。県内最大手でも、取れる顧客はすでに取っている。
荘内銀行と北都銀行がフィデア銀行になり、山形市に本店を置く。山形銀行は法人の優良な取引先で、値引き競争に付き合わされる場面が増える。
経費は物価で上がるが、店舗の見直しとDXで一部を吸収する。純利益は今の2倍強になり、ROEは7%弱で落ち着く。会社の計画より上だが、資本コストには届かない。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・公共向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 198 億円・営業利益 73 億円。残高等 1.47 兆円(名目)× 率 1.35%、利益率 37%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 111 億円・営業利益 24 億円。残高等 0.99 兆円(名目)× 率 1.12%、利益率 22%
- 預かり資産・手数料:数量 2.0(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 118 億円・営業利益 39 億円。残高等 2.03 兆円(名目)× 率 0.58%、利益率 33%
- 市場運用:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 131 億円・営業利益 79 億円。残高等 1.25 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 60%
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.30% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.05 倍、時価総額 1,687 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%の定着で利ざやは広がるが、人口減とフィデア銀行の誕生、有価証券の振れが頭を抑える。最も重みを置く中心の姿。
やや悲観 25% 預金競争と有価証券の損失で、稼ぎが伸び悩む10年 利益 81 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 2,358 円729 億円
預金の獲得競争が激しくなる。フィデア銀行、信用金庫、ネット銀行が預金金利を引き上げ、山形銀行の預金ベータは4割から6割へ上がる。貸出の利ざやの広がりは、想定の半分ほどにとどまる。
景気は10年のうちに一度悪化する。県内の中小企業の業績が落ち、与信費用が数年にわたって利益を削る。
有価証券では、金利の上昇でまた含み損が膨らむ。前の中期計画が運用の悪化で未達に終わったことを思えば、起こりえない話ではない。
純利益は今の1.2倍ほどで足踏みする。ROEは4%台にとどまり、自己資本の厚みを生かせない。県内の人口減が重しになり、貸出の量でも利ざやでも、挽回の手がかりが乏しい10年になる。
- 法人貸出:数量 1.4(法人・公共向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 166 億円・営業利益 50 億円。残高等 1.38 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 30%
- 個人貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 92 億円・営業利益 15 億円。残高等 0.92 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 16%
- 預かり資産・手数料:数量 1.8(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.01(実効の手数料率)→ 売上 95 億円・営業利益 26 億円。残高等 1.80 兆円(名目)× 率 0.53%、利益率 27%
- 市場運用:数量 1.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 109 億円・営業利益 57 億円。残高等 1.15 兆円(名目)× 率 0.95%、利益率 52%
倍率:10年後のROEは約4.2%で k 8.3% を大きく下回る。稼ぐ力が資本コストに届かない姿で、PER の上限 1÷k=約12.0倍の7.5割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 729 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:預金競争と景気の悪化、有価証券の損失が重なる。この銀行は過去10年のROEの中央値が3%に届かず、利益の振れも大きかった。10年に一度はこの種の局面が来る。確率はやや厚めに置く。
悲観 15% 県内の地盤が縮み、資本が削られる10年 利益 25 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 728 円225 億円
人口減が加速し、山形県の企業と世帯の数は目に見えて減る。貸出の残高は縮み、県内最大手という看板は、縮む市場の中の最大手に変わる。
フィデア銀行との顧客の奪い合いで貸出の利ざやは薄くなり、預金は広域の銀行とネット銀行へ流れる。預金ベータは7割へ上がる。
景気の悪化と債券・株式の評価損が重なり、自己資本は削られる。規制上の自己資本比率の余裕が小さい山形銀行は、貸出も還元も絞る。増資や再編への参加を迫られる。
純利益は今の半分以下に落ち、ROEは2%を割る。自己資本は評価損の分だけ1,300億円まで減る。
- 法人貸出:数量 1.2(法人・公共向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 113 億円・営業利益 23 億円。残高等 1.15 兆円(名目)× 率 0.98%、利益率 20%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円・名目))× 価格 0.01(預貸の利ざや(率))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。残高等 0.75 兆円(名目)× 率 0.88%、利益率 8%
- 預かり資産・手数料:数量 1.4(手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円))× 価格 0.00(実効の手数料率)→ 売上 63 億円・営業利益 9 億円。残高等 1.40 兆円(名目)× 率 0.45%、利益率 15%
- 市場運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(調達コスト控除後の運用利回り(率))→ 売上 78 億円・営業利益 33 億円。残高等 0.95 兆円(名目)× 率 0.82%、利益率 42%
倍率:10年後の純利益は約25億円でROEは約2%。稼ぐ力は25億円÷k=約300億円で、構造的に負けた姿としてその7.5割ほど(約9.0倍・約225億円)に置いた。銀行は預金が仕入れで、売れる資産は預金に見合う貸出債権と有価証券であり、事業と別に売って株主に戻せる資産の床は置けない。稼ぐ力から出した値で、過去の最低の評価からは置いていない。今の自己資本に対する倍率は約0.15倍と低いが、構造的な負けと評価損で資本が削られた姿を前提にしている。
確率:人口減の加速、預金の流出、評価損による自己資本の毀損が重なる。連結の自己資本は貸出と預金の規模に比べて薄く、評価損の余裕が小さい。同業の中でもこの尾を厚めに置く(質の差は k でなく確率で表す)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
山形県内の中小・中堅企業、事業会社、地方公共団体向けの貸出。
| 数量法人・公共向け貸出残高(兆円・名目) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 0.01 | 115 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 0.01 | 198 | 73 |
取り方:連結の貸出金は約1.95兆円(2024年版の中期計画の業容目標)。法人・事業性と地方公共団体向けを約6割の1.15兆円と置いた(内訳は推定)。預貸ざやは1.00%(推定)。貸出金利回り0.99%に対し、預金の調達費用が低いので差し引き1%前後と見た。預金金利が政策金利に付いていく割合(預金ベータ)は4割。短期金利が1%前後から2%へ上がる間に、10年で約+0.35%広がるとした。残高はお金の量なので名目で伸ばすが、山形は人口が2035年までに2割近く減るため年2.5%と、地銀の中心値よりやや低め。営業利益の欄は経常利益ベース(銀行に営業利益は無い)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+35%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円・名目) | 価格預貸の利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 0.01 | 68 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 0.01 | 111 | 24 |
取り方:個人向けを約0.8兆円と置いた(住宅ローン中心、内訳は推定)。利ざやは0.85%で、競争が激しく法人より薄い。固定金利が多く上昇の波及は遅いので、10年で約+0.27%の広がり。残高は山形の人口減を入れて名目で年2.2%。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+32%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預かり資産・手数料
投信・保険・証券仲介の販売手数料、決済、法人向けのコンサルティング料から入る役務収益。
| 数量手数料の対象となる取扱高(預かり資産・決済・助言など。兆円) | 価格実効の手数料率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 0.01 | 77 | 22 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 0.01 | 118 | 39 |
取り方:預かり資産・決済・助言の取扱高を合わせて約1.4兆円、実効の手数料率を0.55%と置いた(役務収益は推定)。中期計画はコンサルティングと人的資本を柱に据え、専門人材を5割増やす。残高は資産形成の広がりを入れて名目で年3.8%、手数料率は10年で小幅に上がる。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+5%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
市場運用
国債・外債・株式・投信などの有価証券の運用収益(調達コスト控除後)。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格調達コスト控除後の運用利回り(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.01 | 90 | 38 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 0.01 | 131 | 79 |
取り方:有価証券残高を約1.0兆円(中期計画の平残9,832億円)、調達コスト控除後の利回りを0.90%と置いた(推定)。この部門は過去に債券の含み損と売却損で利益を大きく振らせており、前の中期計画の未達の原因になった。円債中心への組み替えと再投資の利回り上昇で、10年で+0.15%程度とした。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+17%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
リスクと懸念
有価証券の含み損・売却損
約1兆円の有価証券は、前の中期計画の未達の原因になった。長期金利が想定より上がれば、債券の含み損が膨らみ、自己資本と還元の余力を削る。円債中心への組み替えが進むまで、この振れは残る。
預金競争で利ざやが広がらない
貸出金利が上がっても、預金の金利を引き上げざるをえなければ、利ざやは広がらない。フィデア銀行、信用金庫、ネット銀行が預金の獲得を強めれば、預金ベータが4割から6割へ上がり、増益の半分が消える。
フィデア銀行との県内競争
荘内銀行と北都銀行は2027年1月に合併し、本店を山形市に置く。山形県内の貸出と預金で、同じ土俵に立つ相手が現れる。優良な法人向けの貸出で値引きの圧力が強まる。
人口減による貸出の縮小
山形県の人口は2035年に2020年比で約17%減る推計だ。企業の数も減り、貸出の実質の量は伸びない。県内最大手でも、取れる顧客はすでに取っており、シェアで補う余地は小さい。
自己資本の薄さ
連結の自己資本は約1,500億円で、貸出と預金の規模に対して小さい。規制上の自己資本比率は単体で9.75%(2025年9月)。評価損や与信費用が重なれば、貸出も還元も絞ることになる。
政策保有株の縮減と株価の変動
政策保有株は純資産の12.8%(2024年度末)を、2028年度までに10%未満へ縮める。株式市場が崩れれば、売却前に評価損が自己資本を削る。売却益は一時的な押し上げにとどまる。
今後の分かれ目
- 預金金利の引き上げが信用金庫・ネット銀行に広がり、預金ベータが6割を超える
- 貸出の利ざやの広がりが想定の半分になり、増益の勢いが弱まる。やや悲観・悲観の筋書きの確率が高まる。
- 長期金利が急上昇し、有価証券の評価損が自己資本の1割を超える
- 貸出と還元が絞られ、自己資本比率の回復が最優先になる。悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- フィデア銀行が統合を終え、山形県内で貸出の値引きを始める
- 法人の優良な取引先を巡る競争が強まり、利ざやの上昇が鈍る。中立より下の筋書きの確率が高まる。
- コアOHRが55%台まで下がり、単体の純利益が100億円を超える
- 経費の圧縮と利ざやの拡大が計画を上回る。中立より上の筋書きの確率が高まる。
- 山形銀行が他行との経営統合や資本提携を発表する
- 規模の経済と経費の圧縮が見込める一方、持ち分が薄まる。統合の条件次第で、筋書きの確率を組み直す。
- 政策保有株の縮減が前倒しで進み、売却資金が貸出と円債に回る
- 資本の質が改善し、有価証券の振れも小さくなる。やや楽観側の確率が高まる。
見ておくもの
- コアOHRと単体・連結の自己資本比率の推移
- 預金金利の改定と預金ベータ(定期・普通)
- 有価証券の評価損益と円債への組み替えの進み具合
- フィデア銀行の統合後の山形県内での貸出の動き
- 配当性向40%と自己株買いの実施
- 政策保有株の縮減(2028年度までに純資産の10%未満)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10年後のROEと k 8.3%(基本7.5%+quality 0.8%)・g 4.0%から、利益ベースの正当化PERの上限(ROEが k 以下の中立では 1÷k=約12.0倍)を出し、上限の8.5割(中立)・8.7割・8.9割に置いた。やや悲観・悲観は構造的に稼ぐ力が落ちた姿から9.0倍で、今のPERや過去の底値から置いていない。悲観の床は稼ぐ力から出した。銀行は預金が仕入れのため、新リース会計基準の影響は小さい。k が1%高いと中立のPERは約1倍下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.21 倍・やや楽観 PER 10.5→12.05 倍・中立 PER 10.2→12.05 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足して k 8.3%(決まり v2。内訳は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず利ざやで扱う。有価証券の損失・自己資本の薄さ・フィデア銀行との競争など個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていない(2026年3月期は黒字・増益)ので上乗せは 0。同じ領域の福井銀行・大垣共立銀行(+0.8%)と同じ物差し。