結論
四国銀行は、高知県を地盤に徳島・大阪・東京へも店を構える地方銀行だ。筆者の結論は、今の値段は本質価値より高いというものだ。金利上昇の追い風は確かだが、人口が細る高知で、資本コストを超える稼ぎが10年続く姿は描きにくい。
2026年3月期の純利益は過去最高の174億円だった。しかし経常利益140億円を上回っており、一過性の利益が混じる。会社が今期を88億円と見ているのが、実力に近い数字だ。
追い風は本物だ。貸出金は1年で6%増えて2兆2,320億円になり、貸出の利ざやも広がり始めた。一方で、低利回りの債券を売って入れ替える途上にあり、その損失が利益を削っている。経費率も5割台後半と軽くない。
中計(2026〜28年度)が掲げる目標は、2029年3月期に純利益120億円以上、ROE6%以上だ。会社自身が、資本コストを下回るROEを当面のゴールに置いている。
中立の筋書きでは、短期金利2%が定着し、10年後の純利益は174億円、ROEは7%台になる。それでも資本コストには届かず、帳簿の自己資本の7割ほどの値打ちにとどまる。
分かれ目は再編だ。隣の愛媛では伊予銀行と愛媛銀行が統合へ動いた。四国銀行が組む側に回れば上振れ、独り残れば下振れる。確率は慎重な側にやや寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、四国銀行は「景気が良い時に良く見える、普通の地方銀行」だ。
まず、10年後もこの銀行は存在する。高知県の預金と貸出の中心にいて、潰れる心配は小さい。問題は、存在することと、株主にとって良い投資であることは別だという点だ。銀行は、集めた預金を貸し出して稼ぐ。貸出が伸びない地域では、稼ぎが資本コストを超えにくい。
次に、オーナー利益(株主が自由に使える利益)を見る。貸出が伸びると規制上の資本を食うため、利益の一部は資本の積み増しに回る。還元に回せるのは利益の6割ほどだ。今の配当と自社株買いを足しても、投資家に返る金額は大きくない。
経営の資本の使い方は、可もなく不可もない。債券の入れ替えで損を出して将来の利息を取りにいく判断は、筋が通る。一方、経費率を下げる具体策や、政策保有株の売却の道筋は見えない。
安全域は薄い。ROEが資本コストを下回る銀行の帳簿は、額面どおりの価値を持たない。足元の利益が一過性で膨らんだ分を差し引くと、今の値段には安全域がない。逆に言えば、再編でROEが9%台を超える見通しが立てば、評価は大きく変わる。それまでは見送る側に立つ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの土台は、高知県を中心とした預金と貸出だ。預金は3兆円を超え、貸出は2兆2千億円。預金が貸出を大きく上回る「預金余り」の銀行で、余った資金は国債・社債などの有価証券で運用している。
貸出は大きく二つに分かれる。地元の企業や自治体向けの法人貸出と、住宅ローンなどの個人貸出だ。高知県の指定金融機関で、店舗数でも同じ県内の高知銀行(第二地方銀行)を上回る。徳島、大阪、東京にも拠点があり、県外で貸出を伸ばしてきた。
三つ目の柱が有価証券の運用だ。預金から集めた資金のうち貸し出せない分を、国債・社債・株式・投資信託に回す。金利が低い間は利回りが薄く、2025年度は低利回りの債券を損を出して売る入れ替えを進めた。入れ替え後の債券は新しい高い金利で回るため、来期以降の利息が増える仕込みの期間にあたる。
四つ目が手数料収入だ。振込・為替、投資信託や保険の販売、事業承継やM&Aの支援などで、役務取引等利益は73億円ある。利益全体に占める割合はまだ小さい。
このほか、リース会社の四銀総合リースなどのグループ会社を持つ。人材・システムの共通化や運用は、伊予銀行・百十四銀行・阿波銀行と結ぶ四国アライアンスの枠組みで進めてきた。ただし、各行は経営の独立を保つ約束で、統合ではない。
利益の源は、貸出と債券の利息から預金に払う利息を引いた「利ざや」だ。短期金利が上がると、貸出の金利は早く上がり、預金の金利は遅れて上がる。この時間差が、いまの増益の正体だ。
優良さと弱いところ
筆者は、四国銀行の堀を「地元で最大の銀行という立場」と見ている。高知県の指定金融機関として公金の取引を担い、法人・個人の取引先との長い付き合いがある。高知で銀行を替えるのは手間がかかる。この粘りが、預金と貸出の安定を支える。
ただし、堀の外側が細っている。高知県の人口は約64万人を割り、2050年には45万人台へ減るとの県推計がある。企業の数も貸出の需要も縮む。地元の個人預金が減っているとの報道もある。同じ県内には高知銀行がいて、貸出を奪い合う。
収益力は同業の中では弱い方だ。過去10年のROEの中央値は4%台で、資本コストを大きく下回ってきた。中計の目標も、最終年度でROE6%以上にとどまる。経費率は56%から60%程度へ上げる計画だ。AIやデジタルで人手を省くと言いながら、新本部棟の建設など固定費もかさむ。
自己資本は薄めだ。会社の自己資本比率(規制上の指標)は8%台前半で、前の期より下がった。貸出を伸ばすと、そのぶん資本を食う。信用コストが膨らむ局面や、保有債券の含み損が膨らむ局面では、余裕が小さい。
株主への姿勢は良くなってきた。配当性向の目標を30%以上から40%以上へ引き上げた。ただ、自社株買いの額の目安はなく、政策保有株の売却計画も確かめられていない。筆者は、資本の使い方がまだ「普通」の水準だと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行の今のテーマは、金利と再編の二つだ。
金利は追い風だ。短期金利が2%へ向かう間、貸出の金利はほぼ全部が上がり、預金の金利は一部だけが上がる。預金余りで預貸率が7割台の四国銀行は、運用する資金が多く、この追い風を受けやすい。ただし、預金を取られないよう預金金利を上げる競争は避けられない。四国の地銀も定期預金の金利を引き上げている。
成長は難しい。貸出の量は、人口と企業数に縛られる。全国では大企業と都市部の貸出が伸びているが、高知のような地方では量が伸びない。地方銀行の貸出は、人口減少を織り込めば年に数%の名目成長が限度だ。量が伸びない分は、利ざやと手数料で補うしかない。
再編が進んでいる。2026年7月、伊予銀行を持ついよぎんHDと愛媛銀行が、2027年4月の統合に向けて基本合意した。東海でも統合が相次ぎ、東北でも3行が協議入りした。統合した銀行は、システム費と本部の人手を減らして経費率を下げられる。再編に乗れない銀行は、規模の不利を抱えたまま、価格競争を戦うことになる。
地銀再編を後押しする国の特例法の期限は、あと数年で来る。駆け込みの統合が起きれば、四国銀行にも声がかかる可能性はある。四国の4行は2016年から四国アライアンスを組むが、統合に進む約束はない。
競争相手は同業だけではない。ネット銀行、メガバンク、信用金庫が、住宅ローンや預金で地方の顧客を奪いに来る。個人の資産運用では、ネット証券が最大の相手になる。
資本政策と M&A
還元は強まりつつある。2026年4月に、配当性向の目標を30%以上から40%以上へ上げた。2026年3月期の年間配当は前の期から大きく増える見込みだ。一方、自社株買いは「柔軟に実施する」という方針だけで、額の約束はない。
資本の厚みは、制約になる。規制上の自己資本比率は8%台前半で、貸出が増えれば資本を使う。中計は最終年度も8%台前半を保つ計画で、還元を厚くする余地は大きくない。
政策保有株には、含み益が眠る。含み益は純資産に取り込み済みだが、売れば利益が出て資本の入れ替えに使える。同業の多くが縮減方針を公表している中、四国銀行の方針は確かめられなかった。
再編の観点では、買う側にも買われる側にもなりうる。時価総額は1,700億円台と小さく、統合の「中核」にはなりにくい。隣の愛媛の統合で四国の地銀の序列が変わり、四国アライアンスの枠組みの中でも、組む相手の選択が迫られる。TOBや統合の確率は、kabufuの推計で10年以内に約19%だ。
リース子会社、事業承継・M&A支援は、手数料を増やす狙いの投資だ。ただし規模は小さく、利益を変えるほどではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利が2%で定着すれば、四国銀行の利ざやは、構造的に広がる。預金が貸出を1兆円近く上回る預金余りの銀行は、金利上昇の恩恵が最も大きい型だ。今期に入れ替えた債券は、新しい高い利回りで10年近く回り続ける。中計の目標120億円は、この追い風だけで超えられる水準だ。
貸出は伸びている。2026年3月期は1年で6%増えた。大阪・東京・徳島の県外貸出と、事業承継・M&A支援で地元の優良企業を囲い込めば、人口減の高知でも貸出残高は名目で伸びる。個人の住宅ローンも、金利のある世界では借り換え需要が生まれる。
再編は上振れの最大の材料だ。隣の愛媛で伊予銀行と愛媛銀行が統合へ動いた。次は四国アライアンスの4行、特に四国銀行や阿波銀行、百十四銀行が組み合わさるとの見方がある。統合できれば、システム費と本部の人件費を共通化し、経費率が大きく下がる。買われる側になる場合でも、TOBの上乗せで株主は報われる。
配当性向を40%以上に引き上げた。経営が資本効率を意識し始めた証拠だ。政策保有株の売却と自社株買いが加われば、ROEは一段上がる。AIで事務を省き、営業にかける時間を増やせば、手数料収入も増える。10年後にROE10%を超える地方銀行は、すでに複数ある。四国銀行がそこへ入れない理由はない。
慎重な見方
2026年3月期の最高益は、一過性の利益で膨らんでいる。経常利益は140億円で、会社は今期を88億円に落ちると見る。市場が見ているのは、実力の倍の数字だ。中計の目標も、最終年度でROE6%以上という低い水準だ。会社自身が、資本コストを稼げないと認めている。
金利上昇は、敵でもある。預金が貸出を大きく上回る銀行は、預金を守るために預金金利を上げるしかない。四国の地銀はすでに定期預金の金利を引き上げている。預金の流出が始まれば、調達コストが利ざやの拡大を食う。
高知は、人口が減り続ける県だ。2050年には45万人台へ減る。貸出需要と企業数が縮み、同じ県内の高知銀行との奪い合いで、貸出の利ざやは思うほど広がらない。個人預金の減少も報じられている。
債券の入れ替えは、もう一度やらされる可能性がある。2025年度は国債等の売却損が88億円出た。金利がさらに上がれば含み損が膨らみ、薄い自己資本比率を圧迫する。信用コストが上がれば、さらに重い。
再編からも取り残される恐れがある。愛媛が統合した後、四国で規模を持たない銀行は、システム費の負担が重くなる。統合の話が来ても、四国銀行は小さく、条件の良い相手とは限らない。今の値段は、一過性の利益を実力と見ている。
どちらに重みを置いたか
筋の通った主張が両側にある。ただ、勝っているのは慎重な見方だ。強気の見方の中心は、金利と再編だ。金利の追い風は本物だが、中計の目標が、資本コストを下回る水準で止まっている。会社自身が控えめに見ている以上、上振れを厚く置く根拠は弱い。再編は上振れの大きな材料だが、実現の時期も相手も決まっていない。
確率は、中立に3割を置き、やや悲観と悲観の合計を4割近くにした。楽観は1割弱にとどめた。やや楽観は2割強に置いた。再編と金利の上振れを一定の重みで残すためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,060 円1,701 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,629 円683 億円)。 今の値に割り戻すと 2,879 円1,206 億円、今との差 −20.8%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 7,494 円3,140 億円 | 2,635 円1,104 億円 | +178.7% | +10.8% | 912 円382 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,838 円2,446 億円 | 2,026 円849 億円 | +116.4% | +8.0% | 1,730 円725 億円 |
| 中立 | 30% | 4,884 円2,046 億円 | 1,862 円780 億円 | +85.6% | +6.4% | 2,024 円848 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,998 円837 億円 | 1,074 円450 億円 | −15.5% | −1.7% | 799 円335 億円 |
| 悲観 | 13% | 893 円374 億円 | 835 円350 億円 | −52.5% | −7.2% | 225 円94 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,060 円1,701 億円 | 1,629 円683 億円 | +56.5% | +4.6% | 5,689 円2,383 億円 |
今の株価時価総額 3,635 円1,523 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 再編に乗り、経費率を下げて10年間追い風を取り切る 利益 249 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 7,494 円3,140 億円
地銀再編が進み、四国銀行が統合の中核か受け皿として加わる筋書き。10年を通じて金利が2%・3%に定着し、入れ替えた債券が高い利回りで回り続ける。統合でシステム費と本部の人手を共通化し、経費率が下がる。大阪・東京の県外貸出と事業承継・M&A支援が伸び、地元優良企業の囲い込みも進む。政策保有株を縮め、自社株買いを厚くする。規制資本を保ちながら還元を増やせるため、ROEは10%に届く。地方銀行として最良の10年だが、再編の相手と時期は今は決まっていない。純利益は年々積み上がり、10年後には中計の目標の倍を超える。県外貸出と手数料の比重が高まり、高知の人口減への依存が下がる。配当性向は40%を大きく超え、投資家に返る金額も増える。
- 法人・自治体貸出:数量 2.0(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 350 億円・営業利益 133 億円。残高 2.00 兆円(名目)× 率 1.750%、利益率 38%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 146 億円・営業利益 50 億円。残高 0.97 兆円(名目)× 率 1.500%、利益率 34%
- 有価証券運用:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 1.6%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 205 億円・営業利益 152 億円。残高 1.28 兆円(名目)× 率 1.600%、利益率 74%
- 役務・手数料:数量 5.4(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 113 億円・営業利益 52 億円。残高 5.40 兆円(名目)× 率 0.210%、利益率 46%
倍率:事業の純利益 249 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.61 倍、時価総額 3,140 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:再編の成立、金利の定着、経費率の低下の三つがそろう前提で、確度は高くない。
やや楽観 22% 単独のまま、金利の追い風を着実に取る 利益 208 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,838 円2,446 億円
四国アライアンスの枠内で連携を深めるが、統合には進まない。短期金利2%が定着し、債券の入れ替え効果で運用の利ざやが広がる。貸出は県外と法人向けが伸び、高知の人口減を一部補う。経費率は中計の想定どおり60%程度で、AIやデジタルによる省人化が一定の効果を出す。配当性向40%超に加え、自社株買いを小刻みに続ける。ROEは8%台まで上がるが、資本コストにはわずかに届かない。会社の中計をおおむね達成し、さらに少し上を行く姿だ。再編の話は出ても、条件が合わず見送る。信用コストは低めに保たれ、不良債権も大きく増えない。10年後の純利益は中計の目標を大きく上回るが、規模の不利は残る。
- 法人・自治体貸出:数量 1.9(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 313 億円・営業利益 109 億円。残高 1.93 兆円(名目)× 率 1.620%、利益率 35%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 130 億円・営業利益 40 億円。残高 0.95 兆円(名目)× 率 1.370%、利益率 31%
- 有価証券運用:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 188 億円・営業利益 135 億円。残高 1.25 兆円(名目)× 率 1.500%、利益率 72%
- 役務・手数料:数量 5.2(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 101 億円・営業利益 43 億円。残高 5.20 兆円(名目)× 率 0.195%、利益率 42%
倍率:事業の純利益 208 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 2,446 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標をほぼ達成し、金利の追い風を計画以上に取れる上位の想定。会社目標が控えめなため、一定の確率を置く。
中立 30% 中立:金利は定着するが、高知の人口減が利益を押さえる 利益 174 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,884 円2,046 億円
短期金利2%・長期3%が10年続き、貸出と債券の利ざやは広がる。一方、高知県の人口は減り、貸出の量は法人で年2〜3%、個人で年2%程度の名目成長にとどまる。預金は金利競争で調達コストが上がり、利ざや拡大の一部を食う。経費は物価に沿って増え、AIによる省人化で相殺する。信用コストは景気循環をならした水準に戻る。再編は四国で動くが、四国銀行は独立のまま。配当と自社株買いで利益の6割弱を返す。ROEは7%台で、資本コストには届かない。債券の入れ替えは1度で済み、追加の売却損は出ない。不良債権は緩やかに増減しながら、全体では横ばいに近い。銀行としては安定するが、投資家にとっては物足りない水準にとどまる姿だ。
- 法人・自治体貸出:数量 1.9(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 283 億円・営業利益 93 億円。残高 1.89 兆円(名目)× 率 1.500%、利益率 33%
- 個人貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 116 億円・営業利益 33 億円。残高 0.93 兆円(名目)× 率 1.250%、利益率 28%
- 有価証券運用:数量 1.2(有価証券残高(兆円))× 価格 1.4%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 171 億円・営業利益 120 億円。残高 1.22 兆円(名目)× 率 1.400%、利益率 70%
- 役務・手数料:数量 5.0(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 90 億円・営業利益 34 億円。残高 4.98 兆円(名目)× 率 0.180%、利益率 38%
倍率:事業の純利益 174 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 2,046 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利は定着するが、人口減と預金競争で利ざやの広がりが押さえられる。10年の中心となる想定。
やや悲観 26% 取り残され、金利の追い風が預金競争に消える 利益 93 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,998 円837 億円
隣の愛媛が統合して規模を持つ一方、四国銀行は単独で残る。預金の流出を防ぐために預金金利を上げ続け、調達コストが利ざやの広がりを食う。高知の人口減が加速し、貸出の量はほぼ伸びない。高知銀行や県外の銀行との貸出競争も厳しく、貸出金利は伸びにくい。システム費の負担が重く、経費率は6割を超えて下がらない。信用コストは徐々に上がる。結果として、過去10年と同じ4%前後のROEが続く。会社は存続するが、資本コストを稼げない銀行のままだ。債券の入れ替えは完了するが、預金コストの上昇で効果の多くが消える。統合を持ちかけられても、条件が合わず断る場面が続く。株主還元は配当性向40%の枠にとどまり、自社株買いの余力は小さい。
- 法人・自治体貸出:数量 1.7(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 217 億円・営業利益 48 億円。残高 1.67 兆円(名目)× 率 1.300%、利益率 22%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 90 億円・営業利益 14 億円。残高 0.82 兆円(名目)× 率 1.100%、利益率 15%
- 有価証券運用:数量 1.1(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 129 億円・営業利益 77 億円。残高 1.12 兆円(名目)× 率 1.150%、利益率 60%
- 役務・手数料:数量 4.4(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 75 億円・営業利益 22 億円。残高 4.40 兆円(名目)× 率 0.170%、利益率 30%
倍率:10年後のROE3.9%(純利益93億円÷自己資本2,364億円)はk8.5%を大きく下回り、ためた利益は額面を割る価値になる。PERは1÷k=11.8倍が上限で、稼ぐ力が弱く利益が景気に振れるので上限の7.6割に置き9.0倍。今の自己資本1,909億円に対する倍率は0.44倍。
確率:再編に乗れず、預金競争と人口減で利ざやが広がらない。過去10年の実績に近い姿で、10年では起こりやすい。
悲観 13% 構造的に負け、債券の損と信用コストで資本が痛む 利益 43 億円 · PER 8.7 倍 · 株価時価総額 893 円374 億円
世界的な信用収縮と金利の急変が重なる。債券の含み損が膨らんで売却損が続き、高知・四国の中小企業の倒産で信用コストが急増する。預金はネット銀行やメガバンクへ流れ、貸出も縮む。統合の話は条件が悪く、単独で資本不足に近づく。経費は固く、利益はほぼゼロになる。減損と評価損で自己資本が減り、配当を絞る。地元のインフラとしては残るが、稼ぐ力は大きく損なわれる。10年のうち数年は赤字に近い年が出て、回復までに時間がかかる。会社は公的資金や増資に頼らない形で乗り切るが、株主の取り分は大きく減る。県外に広げた貸出が真っ先に傷み、撤退で規模も縮む。人口減は止まらず、貸出の需要は戻らない。
- 法人・自治体貸出:数量 1.3(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 124 億円・営業利益 21 億円。残高 1.30 兆円(名目)× 率 0.950%、利益率 17%
- 個人貸出:数量 0.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。残高 0.62 兆円(名目)× 率 0.800%、利益率 8%
- 有価証券運用:数量 0.9(有価証券残高(兆円))× 価格 1.0%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 81 億円・営業利益 48 億円。残高 0.85 兆円(名目)× 率 0.950%、利益率 60%
- 役務・手数料:数量 3.3(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 49 億円・営業利益 12 億円。残高 3.30 兆円(名目)× 率 0.150%、利益率 25%
倍率:ROE 2.3% が k 8.50% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 11.8 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.27 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 6.4 倍になる。ただし利益が出て配当を続ける筋書きで、自己資本の 0.2 倍を割る値(倒産に近い時のもの)にはしない。0.2 倍に相当する 8.7 倍を下限とし、8.7 倍に置いた。やや悲観の 9.0 倍より低い。減損後の自己資本 1,850 億円に対し純利益 43 億円と薄く、構造的に負けた姿。稼ぐ力から出した値で、帳簿の底値からは置いていない。
確率:リーマン級の信用収縮、債券の損、預金流出、再編からの取り残しが10年のどこかで重なる想定。10年という期間では、相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・自治体貸出
高知県を中心とした地元の企業・自治体向けの貸出と、大阪・東京・徳島の県外貸出。
| 数量法人・自治体向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 1.2% | 167 | 47 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 1.5% | 283 | 93 |
取り方:貸出2兆2,320億円のうち、法人・自治体向けを約65%の1.45兆円と推定した(内訳は未開示のため推定)。利ざやは預金などの調達コストを引いた後の率で1.15%と置いた。セグメント利益は経費と信用コストの配賦後で、貸出の利ざや拡大の途上にあるため今は薄い。残高は金額(名目)で伸びる:中立で年2.7%(物価3%に高知の人口減を織り込む)。利ざやは地銀の法人で10年+0.35%の広がりと置いた(利ざやは率で、物価では上がらない)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+30%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人貸出
住宅ローン・マイカーローンなどの個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1.0% | 74 | 16 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 1.3% | 116 | 33 |
取り方:貸出の残り約35%を個人向け0.78兆円と推定した。利ざやは0.95%。住宅ローンは変動金利が多く、短期金利の上昇で利ざやが広がる。中立の残高は年1.8%(地元の人口減とネット銀行との競争を織り込む)、利ざやは10年+0.30%と置いた。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+32%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
有価証券運用
預金のうち貸出に回らない分の運用。国債・社債・株式・投資信託。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利ざや(調達コスト控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 1.2% | 115 | 63 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 1.4% | 171 | 120 |
取り方:預金3兆円に対し貸出が2.2兆円で、残りの余資を有価証券と日銀預け金で運用している。有価証券は約1.0兆円と推定した(残高は未確認)。2025年度は低利回りの債券を売って損を出す入れ替えを進めた(国債等債券関係損益は単体で-88億円)。今のセグメント利益はその売却損を含み、利益率は低い。入れ替え後の債券が高い利回りで回る分は、10年の利ざやの広がりに入れた。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+22%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ換算で約75%だけ追うので、中立の率は10年で1.15%→1.40%(+0.25ポイント)。
役務・手数料
振込・為替、投資信託・保険の販売、事業承継・M&A支援などの手数料。
| 数量預金と預かり資産の基盤残高(兆円) | 価格役務収益率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.9 | 0.2% | 73 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 0.2% | 90 | 34 |
取り方:預金約3.0兆円に預かり資産を約0.9兆円(推定)足して3.9兆円とし、役務取引等利益73億円(単体)を基盤残高で割った率を0.187%とした。預かり資産はNISA定着で名目4%超の伸びを見込み、預金は1〜2%と置く。手数料率は物価では上がらない。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。率は10年でほぼ横ばい。二重がけなし)
リスクと懸念
預金金利の競争と預金の流出
預金が貸出を大きく上回る銀行は、預金を守るための金利競争で調達コストが上がりやすい。四国の地銀はすでに定期預金の金利を引き上げている。ネット銀行や他地域の銀行へ預金が流れれば、利ざやの広がりが想定より小さくなる。個人預金の減少も報じられている。
高知県の人口減少
高知県の人口は約64万人で、2050年には45万人台へ減る推計がある。企業の数と貸出の需要が縮み、県内の地盤だけで貸出を伸ばすことは難しい。県外貸出で補っているが、大阪・東京は競争が厳しく、利ざやの確保にも限度がある。
債券の入れ替えと評価損
2025年度は低利回りの債券を損を出して売り、国債等の売却損が単体で88億円出た。金利がさらに上がれば含み損が膨らみ、再び売却損を迫られる。会社の自己資本比率は8%台前半と薄く、評価損は資本の余裕を直接削る。
信用コストの増加
金利の上昇は、地元の中小企業の資金繰りを圧迫する。不良債権(金融再生法開示)はすでに558億円あり、1年で増えた。景気の悪化と金利上昇が重なれば、信用コストが急増し、利益を一気に削る。
再編に乗れない恐れ
隣の愛媛で伊予銀行と愛媛銀行が統合へ動いた。統合した銀行は経費率を下げ、規模の利益を取る。四国銀行が組む相手を見つけられなければ、システム費の負担が重いまま単独で戦うことになる。四国アライアンスは独立を保つ約束で、統合の保証にはならない。
経費の硬さ
中計は経費率を56%から60%程度へ上げる計画だ。AIで生産性を上げるとしているが、新本部棟の建設など固定費も増える。物価3%の世界では人件費も上がり、収益が伸びなければ経費率は下がらない。
一過性の利益の読み違い
2026年3月期の純利益174億円は、経常利益140億円を上回っている。一過性の利益を実力と読むと、割安に見えてしまう。会社が今期を88億円と予想している点が、実力に近い数字だ。
今後の分かれ目
- 短期金利が2%を超えて上がり、預金の流出が目立ち始めたら
- 預金金利の競争で調達コストが上がる。やや悲観側に確率を移し、預金残高の動きを四半期ごとに確かめる。
- 四国銀行が他行と統合協議に入ったら
- 経費率の低下を見込めるため、楽観・やや楽観の確率を上げる。買われる側なら、株主へのTOB上乗せも考える。相手と条件を見て判断する。
- 四国アライアンスの他行(阿波・百十四)が別の相手と統合したら
- 四国銀行が取り残される形になり、やや悲観側に確率を移す。
- 債券の売却損がさらに大きくなったら
- 自己資本の余裕が減り、還元を絞る可能性が出る。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 信用コストが急増し、不良債権が増えたら
- 悲観側の筋書きに重みを移す。どの業種・どの地域で増えたかを確認する。
- 中計を上回る自社株買いや政策保有株の売却が示されたら
- 資本効率の改善が速いとみて、やや楽観の確率を少し上げる。
見ておくもの
- 預金残高と預金金利の動き(定期預金の金利改定)
- 貸出金の伸びと貸出利ざや(法人・個人別)
- 有価証券の評価損益と国債等債券関係損益
- 金融再生法開示の不良債権と与信費用
- 四国の地銀の統合・提携の動き(伊予・愛媛の統合後の動き、四国アライアンス)
- 配当性向40%以上の実施と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。k 8.5%(基本7.5%+quality 1.0%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PERの上限を出した。楽観は10年後のROEがkを超えるので正当化PER12.6倍の上限の9.4割、やや楽観・中立はROEがk未満なので1÷k=11.8倍が上限で、その9.2割・8.5割に置いた。やや悲観・悲観は稼ぐ力が弱いので上限の7〜8割に収めた。悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で置き、過去のPBRの底は使っていない。悲観の PER は ROE÷k に比例して目減りさせた値(上限 × ROE÷k × 0.9。自己資本の 0.2 倍相当を下限)で、8.7 倍(やや悲観の 9.0 倍より低い)。2026年3月期の純利益174億円は一過性を含むので、流れの起点は会社予想の88億円にした。今の株価が倍でも半分でも、この数字は動かない。kが1%高い(9.5%)と中立のPERは10.0倍から約9倍に下がる。10年後の数字は、リース会計の新基準前の形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。銀行の貸出・預金の残高は金額(名目)で、利ざや・手数料率は率で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。再編に乗れないリスクや債券の入れ替えは k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は0。同じ地方銀行どうしで、差は quality の4部品だけで出した。