結論
福島銀行は、福島市を本拠に福島県内で営業する第二地方銀行だ。貸出は 5,900 億円、預金は 7,600 億円で、2026 年 3 月期の純利益は 7 億円。前の期は 13 億円の赤字だった。筆者は、10 年の本源価値は今の時価総額を下回ると見る。
理由は三つある。一つは収益が薄いことだ。10 年後の ROE は 4% 前後で、資本コスト 9.0% に届かない。二つ目は、赤字の履歴だ。過去 10 年で 3 回赤字を出し、自己資本は 330 億円から 238 億円へ減った。三つ目は、福島県の人口が 2050 年に 32% 減ることだ。
新しい材料は株主だ。2026 年 6 月、SBI 地銀ホールディングスの保有分 34% が SBI 新生銀行へ移り、福島銀行は同行の持分法適用関連会社になった。連携の深まりは追い風になるが、利益に結びつくのはこれからだ。
筆者なら、純利益が 13 億円を超えて 2 期続き、赤字が出ないと確かめられるまで待つ。単純な自己資本比率が 3.0% という薄さも見ておきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えるが、順番を待つ株だ。
時価総額は 128 億円で、自己資本 238 億円の 0.54 倍。PER は 17 倍と高く見える。これは直近の純利益 7 億円が、赤字の履歴の谷にあるためだ。ならした利益では、さらに低い。
事業の儲け口は広がらない。福島県の人口は 32% 減り、貸出の金利は東邦銀行などの競争で決まる。ROE は 10 年後も 4% 前後と、資本コストの半分に届かない。
筆者なら、赤字が出ないと確かめられるまで待つ。例えば、純利益が 13 億円を超えて 2 期続き、単純な自己資本比率が上向けば、見方は変わる。逆に、再編の条件が少数株主に不利に決まる道には注意したい。安全域は今の値段に十分にはない。赤字の履歴は、経営の規律を試す材料でもある。長く続けて報われる事業かどうかは、利益の安定で決まる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、福島県内の貸出と、預金で集めたお金の運用だ。
連結の貸出は 5,877 億円で、前の期より 135 億円増えた。地方公共団体向けと個人向けが伸びた。単体の住宅ローンは 2,152 億円。預金は譲渡性預金を含めて 7,587 億円で、公金預金が減って前の期より 168 億円減った。余った資金は有価証券 1,611 億円で、主に国債で運用する。
手数料は投信の窓販が 7.4 億円、保険の窓販が 4.7 億円。経常収益は 152 億円で 13% 増え、経常利益は 6.9 億円、純利益は 7.4 億円だった。前の期は次世代バンキングシステムの更新費用で赤字になった。2027 年 3 月期は純利益 9 億円、2028 年 3 月期は 11 億円を見込む。
中期経営計画は、2029 年 3 月期に単体の本業収益 20 億円以上、当期利益 13 億円以上、自己資本比率 8% 以上を掲げる。実績は 2026 年 3 月期で本業収益 12 億円、当期利益 7 億円、自己資本比率 8.77% だ。
優良さと弱いところ
良さは再建の途中にあることで、弱さは赤字の履歴と薄い資本にある。
良い点は、赤字から黒字へ戻り、貸出の利息収入が増えていることだ。国内基準の自己資本比率は連結 9.18% と、最低基準の 4% を倍以上上回る。SBI グループが 2019 年の資本業務提携以来の大株主で、2026 年 6 月から SBI 新生銀行が株主になった。システムの共同化や運用商品で、単独の銀行には難しい投資を分担できる。
弱い点は三つある。一つ目に、過去 10 年で 2018 年・2021 年・2025 年の 3 回赤字を出し、利益の安定性に欠ける。二つ目に、単純な自己資本比率は 3.0% と薄く、評価損に弱い。三つ目に、福島県の人口は 2050 年に 32% 減る。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 +0.25%(東邦銀行が首位)、借金 +0.25%(単純比率 3.0%)、寿命 +0.5%(人口 32% 減)の合計 +1.5%、k は 9.0% とした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、2024 年の政策金利の解除で「金利のある世界」に入った。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、貸出の利ざやは今より 0.4% ほど高い水準で安定する。債券は金利が上がると評価損が出るが、満期まで持てば元本は戻る。
福島県は東日本大震災と原発事故の影響が長く続き、人口が 2050 年に 32% 減る見通しだ。復興の事業と公共工事の貸出は一巡し、これからは人口の減る県で貸出を維持する段階に入る。福島市・郡山市・いわき市に需要が集まる一方、周辺の町は細る。
競争の構図は、県内最大の東邦銀行、東日本銀行を傘下に持つコンコルディア FG、七十七銀行などの広域行が、福島県内で貸出を伸ばしている。福島銀行は第二地銀として、小口の事業性貸出と個人ローンに強みを持つ。SBI の「第 4 のメガバンク」構想は、地銀の連携を広げる動きで、福島銀行はその一つに数えられる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、配当を低く抑え、自己資本の維持を優先する形だ。
配当性向は 24% ほど。自社株買いは行っていない。単体の自己資本比率は 8.77% で、中計の目標 8% を上回る。
株主の面では、2019 年に SBI グループと資本業務提携を結び、SBI 地銀 HD が 34% を持つ筆頭株主だった。2026 年 6 月 30 日、SBI 地銀 HD の保有分が SBI 新生銀行へ移り、福島銀行は同行の持分法適用関連会社になった。この取引は 5% 以上を取得する際の「公開買付けに準ずる行為」の届出を伴うが、TOB ではなく、上場は続く。
公的資金の優先株は、A 種優先株 130 億円を 2022 年 11 月に完済している。今の優先株はない。
筆者は、SBI 新生銀行が筆頭株主になった点を、再編の可能性を高める材料と見る。ただ、少数株主に有利な条件になるとは限らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
福島銀行は、赤字から黒字へ戻り、収益の回復の途中にある。2027 年 3 月期の純利益は 9 億円、2028 年 3 月期は 11 億円を見込み、短期金利 2% の定着で貸出の利ざやが広がれば、中計の 13 億円は届く水準だ。次世代システムの更新費用は一巡し、経費の増加は落ち着く。SBI 新生銀行という金融機関が筆頭株主になり、システム、運用商品、事業承継の支援を共有できる。国内基準の自己資本比率は 9% 台で、貸出を増やす余力がある。時価総額は自己資本の 0.54 倍と安く、SBI グループの地銀連携が広がれば、再評価の余地が大きい。赤字の原因だった一過性費用が消えれば、利益は一段と読みやすくなる。再編の観点でも、SBI グループと組んだ地銀が増えれば、福島銀行は連携の先頭に立てる。福島県内の復興需要の裾野は、郡山市やいわき市で今も続き、中小企業の設備投資が貸出を支える。県内で第二地銀として小口の取引に強いことも、利ざやの面で武器になる。
慎重な見方
過去 10 年で 3 回赤字を出した銀行に、安定した利益を期待するのは難しい。純利益は自己資本の 3% 前後で、資本コスト 9.0% の 3 分の 1 にすぎない。単純な自己資本比率は 3.0% と薄く、債券の評価損が出れば貸出を絞らざるをえない。福島県の人口は 2050 年に 32% 減り、県内最大の東邦銀行に預金と優良な貸出先を取られ続ける。SBI の関与は、少数株主の利益と一致するとは限らない。再編が進んだとき、小さな側に不利な比率で統合される道もある。金利が上がると、預金金利が先に上がり、貸出の金利が遅れる局面で利ざやは圧迫される。評価損の再来が、赤字の再発につながりやすい。回復が一度でも途切れれば、株主の信頼も、預金者の信頼も揺らぐ。福島県では、他県の大手行も貸出を伸ばしており、優良な取引先ほど金利で選ばれる。経費を削る余地も、システムの共同化が進んだ後は小さい。地銀の再編が進む東北では、小さな銀行ほど選択の余地が狭くなる。
どちらに重みを置いたか
薄い収益と赤字の履歴が、SBI の関与による改善の期待を上回ると見る。中立の 10 年後の時価総額は 96 億円、ROE は 4.1%。今の時価総額 128 億円を下回る。悲観の確率は、3 回の赤字の実績を踏まえて地銀の標準より高い 13% に置き、やや悲観を 26% と厚めにした。楽観は、連携が収益に結びつく道に限り 7% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 325 円113 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 72 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 184 円64 億円、今との差 −46.3%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 698 円243 億円 | 126 円44 億円 | +140.2% | +9.2% | 58 円20 億円 |
| やや楽観 | 16% | 516 円180 億円 | 100 円35 億円 | +79.7% | +6.0% | 99 円34 億円 |
| 中立 | 38% | 398 円139 億円 | 86 円30 億円 | +41.2% | +3.5% | 184 円64 億円 |
| やや悲観 | 26% | 121 円42 億円 | 49 円17 億円 | −50.5% | −6.8% | 44 円15 億円 |
| 悲観 | 13% | 83 円29 億円 | 14 円5 億円 | −71.6% | −11.8% | 13 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 325 円113 億円 | 72 円25 億円 | +15.8% | +1.5% | 397 円139 億円 |
今の株価時価総額 343 円120 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:SBI との連携が収益に変わり、経費率が下がって純利益が 20 億円を超える 利益 22 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 698 円243 億円
SBI 新生銀行が筆頭株主になった後、システムの共同利用、運用商品、個人向けサービスの連携が収益に変わる。経費率が下がり、貸出の利ざやの拡大がそのまま利益に残る。貸出は福島県内で 7,500 億円まで伸び、短期金利 2% の定着で事業性貸出の利ざやが広がる。預り資産の手数料は、投信と保険の窓販で 7 割増える。与信費用は平常の水準に収まる。純利益は 22 億円。配当は性向 3 割に引き上げられるが、赤字の再発を避けるため、自己資本比率の維持を優先する。10 年の間に不祥事やシステムの失敗が起きないことが前提になる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 62 億円・営業利益 9 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 23 億円・営業利益 5 億円。n
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 243 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:度重なる赤字(2018 年・2021 年・2025 年)の後で、ここまで改善する道は例外に近い。7% に置いた。
やや楽観 16% やや楽観:中計の純利益 13 億円を超え、16 億円台で安定する 利益 16 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 516 円180 億円
次世代バンキングシステムの更新費用が一巡し、経費が落ち着く。福島県の人口は減るが、郡山市・福島市を中心に事業性貸出は名目で年 3% 台後半伸びる。地方公共団体向けの貸出が増え、利ざやは薄いが残高の下支えになる。債券は評価損が満期で縮み、運用の利回りは緩やかに上がる。純利益は 16 億円で、中計の目標をほぼ達成する。配当は性向 3 割を保ち、赤字の再発はない。SBI との連携は、運用と事業承継の分野で徐々に成果が出る。預り資産の手数料が広がり、経費の増加を一部補う。県内の自治体向けの貸出は、利ざやは薄いが残高を下支えする。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 7 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 19 億円・営業利益 3 億円。n
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 180 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計(2029 年 3 月期に単体の当期利益 13 億円以上)を達成し、その後も緩やかに伸びる道。16% を置いた。
中立 38% 中立:利ざやは広がるが、薄い収益と人口減で ROE は 4% 前後にとどまる十年 利益 13 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 398 円139 億円
短期金利 2%・長期 3% が定着し、貸出の利ざやは今より 0.4% ほど広い水準で落ち着く。福島県の人口は 2050 年に 32% 減る見通しで、貸出は名目で年 2.5% 前後の伸びにとどまる。事業性貸出は 3,800 億円、個人向けは 3,250 億円まで増える。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。経費は物価と賃金で増え、SBI との連携による削減がその一部を打ち消す。与信費用は景気の山と谷を均した水準に戻る。純利益は 12.5 億円で、赤字の期が時々混じる。配当は性向 3 割。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 18 億円・営業利益 6 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 17 億円・営業利益 3 億円。n
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 139 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と福島県の人口減が相殺し、赤字の再発も一定程度ある地銀の標準的な筋書き。最も重く 38% を置いた。
やや悲観 26% やや悲観:東邦銀行など県内の大手に押され、赤字の期が混じる 利益 6 億円 · PER 6.6 倍 · 株価時価総額 121 円42 億円
県内最大の東邦銀行が事業性貸出の金利を下げて取りにくる。福島銀行は預金を集めるために金利を上げざるをえず、利ざやの改善は経費の増加に食われる。債券の評価損が再び膨らみ、自己資本比率の低下で貸出を絞る。貸出は名目で年 1.2% しか伸びない。与信費用は人口減の地域で高止まりし、数年に一度は赤字になる。純利益は 6 億円で、配当は性向を保てず削る。SBI の関与はあっても、収益の改善にはつながらない。預金を集める金利競争が続き、利ざやの広がりは限られる。数年に一度の赤字が配当の余力を削り、自己資本の積み上がりも遅い。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 14 億円・営業利益 4 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の ROE は 2.2%(純利益 6.4 億円 ÷ 自己資本 290 億円)。k 9.00%、g 3%、残る割合 1/2 で式の PER は 7.7 倍(ROE が k 以下なので上限は 1÷k = 11.1 倍)。式の 85% の 6.6 倍に置いた。
確率:過去 10 年で 3 回の赤字を出しており、利益が伸びない道の確率として 26% を置いた。
悲観 13% 悲観:人口減の加速と信用コストの急増で、自己資本が削られ続ける 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 83 円29 億円
構造的に負ける筋書き。福島県の人口減が加速し、貸出が名目でも縮む。預金がネット銀行や大手行へ流れ、調達コストだけが上がる。取引先の倒産で与信費用が急増し、利益はほとんど出ず、赤字の期が続く。債券の評価損が自己資本を削り、国内基準の 4% の最低基準が近づく。配当は止まり、自己資本は 160 億円まで減る。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になる。筆頭株主の SBI 新生銀行が支えても、少数株主の持ち分は薄まる。貸出の縮小と利ざやの低下が重なり、純損益は赤字に沈む。経営の立て直しが遅れ、取引先の信頼も揺らぐ。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 21 億円・営業利益 −1 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、今の自己資本(238 億円)に 0.12 を掛けた 29 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、単純な自己資本比率が 3.0% と薄く、過去 10 年で自己資本が 330 億円から 238 億円へ減ってきたため。この筋書きの純利益は赤字で、稼ぐ力は床にならない。
確率:2018 年 3 月期に 31 億円、2021 年 3 月期に 17 億円の赤字を出した実績があり、構造的な負けの再来を 13% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
福島県内の中小企業・事業性融資と自治体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 27 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.01 | 49 | 4 |
取り方:連結の貸出は 5,877 億円(2026 年 3 月末)。単体の住宅ローンが 2,152 億円で、個人向けを約 2,850 億円と置き、残りの約 3,030 億円を事業性・公共向けとした。利ざやは 0.88% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 6.9 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・個人ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 0.01 | 37 | 3 |
取り方:住宅ローン 2,152 億円に個人ローン約 700 億円を足して約 2,850 億円と置いた。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやは 0.8% と事業性より薄い。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 6.9 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信・株式などの運用。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 0.01 | 14 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 18 | 6 |
取り方:有価証券は 1,611 億円(2026 年 3 月末、主に国債)。運用利回りから調達コストを引き、0.85% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 6.9 億円に合わせた。
手数料・預り資産
投信・保険の販売、為替・ローン関連の手数料。
| 数量預り資産残高(兆円) | 価格手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 13 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 17 | 3 |
取り方:投信窓販手数料 7.4 億円と保険窓販手数料 4.7 億円(2026 年 3 月期)に為替・ローン関連を加えた額から、残高を 1,400 億円と置いた。手数料率は 0.9%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 6.9 億円に合わせた。
リスクと懸念
赤字の再発
過去 10 年で 2018 年・2021 年・2025 年の 3 回、赤字を出した。与信費用、評価損、システムの更新費用のいずれかで赤字に戻りうる。
自己資本の薄さ
単純な自己資本比率は 3.0% と薄く、債券の評価損が出れば貸出を絞る圧力になる。国内基準の比率に余裕はあるが、利益で積み上げる力は弱い。
人口減と東邦銀行の存在
福島県の人口は 2050 年に 32% 減る。県内最大の東邦銀行が貸出の金利を決める位置にあり、福島銀行は価格を受け入れる側に立つ。
再編で不利な条件になる
SBI 新生銀行が筆頭株主になった後の再編は、少数株主に不利な比率で行われる可能性がある。持ち分が薄まる道も想定が要る。
金利上昇による預金コスト
預金金利が先に上がり、貸出の金利が遅れる局面では利ざやが圧迫される。預金を集めるための金利競争が経費を押し上げる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の純利益が予想の 9 億円を超える
- 中計の 13 億円が現実味を帯び、楽観側の重みが 7% から 15% 前後へ上がる。
- 赤字の期が再び出る
- 悲観の確率が 13% から 25% 近くへ上がり、中立の価値は 2 割ほど下がる。
- SBI 新生銀行が福島銀行の追加取得や経営統合を発表する
- 条件次第で少数株主の取り分が大きく変わる。比率が不利なら下振れ、プレミアムが付けば上振れる。
- 短期金利が 2% に届かず 1% 台前半で止まる
- 貸出の利ざやが広がらず、純利益は 9 億円前後にとどまる。中立の価値は 1 割ほど下がる。
- 債券の評価差額金の赤字が自己資本の 2 割を超える
- 貸出を絞って利益が落ち、赤字の確率が上がる。
見ておくもの
- 純利益と経常利益の予想との差
- 単純な自己資本比率と評価差額金
- SBI 新生銀行との連携の成果
- 与信費用の水準
- 福島県内の再編の動き
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から自己資本と ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の PBR 0.54 倍や同業の PER は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。SBI の筆頭株主入れ替えは TOB ではなく、再編の期待は倍率に混ぜず、確率の配分で表した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.7→11.11 倍・やや楽観 PER 8.6→11.11 倍・中立 PER 7.7→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。個別のリスク(赤字の再発・SBI の関与)は k に足さず、筋書きと確率で表した。