結論
愛媛銀行は、松山市に本店を置く第二地方銀行である。預金は約2.6兆円、貸出は約2兆円。県内では伊予銀行を傘下に持ついよぎんホールディングスに次ぐ。
筆者の結論は、今の値段は本質価値より高い、というものだ。金利上昇の追い風は確かだが、人口が減る愛媛で、資本コストを超える稼ぎが10年続く姿は描きにくい。
2026年3月期の純利益は72億円で、過去10年の中心だった50億円台を大きく上回った。会社は今期を65億円と見ている。実力はこの間にある。
短期金利が2%に定着すれば、貸出と債券の利ざやが広がり、10年後の純利益は今の2倍近くになる。ただし自己資本も積み上がるので、ROEは6%台半ばにとどまる。資本コストには届かない。
2026年7月、いよぎんHDとの経営統合が基本合意された。2027年4月をめどに完全子会社となり、株主はいよぎんHD株を受け取る見込みだ。交換比率は決まっておらず、今の株主の持ち分がどうなるかは分からない。
統合は経費と預金集めに効くが、その効果は上振れの材料にとどまる。分かれ目は、金利の追い風を経費の伸びが食うかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、愛媛銀行は、持ち続けたい会社ではない。理由は、稼ぐ力が資本コストを下回り続ける構造にあるからだ。
銀行の本質は、預金という安い仕入れで、貸出という売り物を作ることだ。金利が上がると、この差は広がる。ただ、その差を広げる力は、県内の首位行ほど強くない。第二位の銀行は、価格を市場に合わせるほかなく、利ざや拡大の相当部分を預金金利の上昇に取られる。
10年後の中立のROEは6%台半ばで、資本コスト8.5%に届かない。ためた利益が、額面を下回る値打ちしか持たない計算だ。自己資本の7割ほどが、妥当な値段になる。
安全域の点でも物足りない。連結の自己資本は約1,440億円と薄く、与信費用が重なる谷では、利益が一気に消える。過去に赤字の期もあり、2007年には増資で株が薄まっている。
統合は、この事業の質を変えるものではない。経費は軽くなるが、稼ぐ力が資本コストを超えるほどの変化は見込みにくい。
それでも、追い風を否定はしない。金利の効果は本物で、今の72億円が50億円台に戻るとも考えにくい。ただ、今の値段は、その追い風をほぼ全部織り込んだ水準に見える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、預金を集めて貸し出し、債券で運用する利ざやである。愛媛県の中小企業と個人が主な客で、貸出の約3分の2が法人・自治体向け、残りが住宅ローンなどの個人向けと見られる。
貸出の残高は約2兆円で、ここ1年はほぼ横ばいだった。有価証券は約6,000億円あり、低利回りの債券を整理して高い利回りに乗り換える作業を進めてきた。日本格付研究所はこの整理で収益力が改善したと評価し、格付はA−を保っている。
手数料の収入は、投資信託・保険の販売と、事業承継・M&Aの支援が柱だ。会社は預かり資産をストックとして積み上げる方針で、役務の収益を年55億円規模にする目標を掲げてきた。ただ手数料は貸出の利ざやに比べて小さく、全体の稼ぎを変えるほどの大きさではない。
愛媛は造船・海運の集積地でもある。今治を中心とする船舶向け融資は、愛媛銀行が力を入れる分野だ。山口フィナンシャルグループとは、船舶向け融資と地方創生のノウハウを共有する提携を結んでいる。
中期経営計画(第18次)は、金融サービスにコンサルティングを足して収益力を高める、強い経営基盤をつくる、の2本柱だ。純利益は70億円台、ROEは5%前後を目標にしており、会社自身が資本コストを下回る水準をゴールに置いている。配当性向は30%以上を目安とする。
優良さと弱いところ
堀は、あるにはあるが、厚くない。県内の企業と個人との長い取引が土台で、預金の約2.6兆円も地元に根を張っている。しかし県内には、貸出の過半を握ると見られる伊予銀行がいる。愛媛銀行は、その隣で価格を市場に合わせるしかない立場だ。
資本効率は弱い。過去10年のROEの中央値は4%台で、資本コストを大きく下回る。利益は10年のあいだ50億円台で動かず、72億円という今期は、金利上昇と債券整理の結果である。
経営の規律は改善している。低利回りの債券を損を出して入れ替え、政策保有株を縮める方針も出した。数字を急いで作るより、将来の利ざやを取りにいく選択で、評価できる。
弱点は規模だ。自己資本は約1,400億円と、地銀の中でも小さい部類で、統合や大きな貸出の余力は限られる。システム費用も単独で負うため、経費率が重い。
県の人口は2060年に約65万人へ減る推計があり、貸出の需要は構造的に細る。優れた要素は、造船・海運向け融資の専門性と、松山の経済圏の厚さだ。いずれも利益を大きく変えるほどではない。
いよぎんHDとの統合が実現すれば、システムと本部の経費は軽くなる。ただ、愛媛銀行の名前と店は残り、独自の収益力が上がる保証はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、量が伸びず、価格が広がる業界である。貸出の量は、人口が減る地域では名目でも年1〜3%程度にとどまる。一方で短期金利が2%へ上がれば、貸出の利ざやは広がる。量の停滞を価格で補う構図が、10年の軸になる。
愛媛でもこの構図は同じだ。県内は伊予銀行が圧倒的な首位で、愛媛銀行は第2位、そこに信用金庫と信組が続く。貸出の需要は伸びないので、金利の上がる局面では、預金を取り合う競争が激しくなる。調達コストが先に上がれば、利ざやの拡大は想定を下回る。
再編は地銀全体の流れだ。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFGと名古屋銀行など、県をまたぐ統合が相次ぐ。愛媛では、第一地銀のいよぎんHDが、第二地銀の愛媛銀行を完全子会社にする。両行を合わせた県内シェアは、預金で52.6%、貸出で51.0%とされ、独占禁止法の特例法の適用を申請する方針だ。
この統合は、四国の他の銀行にも波及しうる。高知の四国銀行、徳島の阿波銀行は、単独で生き残るのか、組む側に回るのか、選択を迫られる。
再編が進んだグループは、システムの共通化と店舗の見直しで経費率が下がる。取り残された単独の銀行は、規模の経済が働かず、人口減の地域で貸出が縮む。この二極化が、10年の筋書きの分かれ目になる。
愛媛銀行は、統合で組まれる側に回ることで、後者の道を避けた。代わりに、独自の経営判断の幅を失う。
資本政策と M&A
還元は、利益が小さいため控えめだ。配当性向は30%以上を目安にし、自社株買いは機動的に行う方針である。自己資本が薄いので、貸出を増やせば資本が要り、厚い還元と成長の両立は難しい。
政策保有株は、10%以上縮める目標で、売却益と配当の振れは利益の揺れ幅として残る。
最大の話は、いよぎんHDによる完全子会社化だ。2026年7月24日に基本合意し、同年12月に最終契約と株式交換契約を結ぶ予定である。いよぎんHDは2027年6月に商号を変え、伊予銀行と愛媛銀行の2行が並ぶ体制になる。
交換比率は示されていない。愛媛銀行の株主が、いまの持ち分より厚くなるのか薄くなるのかは分からない。株主の利益は、統合後のいよぎんHDの稼ぎと、比率の割増しの有無で決まる。
統合の効果は、経費と預金集めに出る。ただ、県内で5割を超えるシェアは、貸出金利を下げにくくする一方、公正取引委員会や地域の目も厳しくする。効果は、中立の筋書きで半分だけ数えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の追い風は、想定より長く、強く吹く。短期金利は2%に定着し、愛媛銀行の貸出利ざやは、法人で0.5%近く広がる。預金は、決済口座と給与・年金口座の粘りで、金利の追随が遅れる。
愛媛は造船・海運の集積地で、船舶向け融資の専門性が、県外の貸出にも広がる。山口FGとの提携が実を結び、西瀬戸の船舶金融で独自の地位を築く。手数料は、事業承継とM&A支援で伸びる。
いよぎんHDとの統合は、最も効く形で進む。システムは1つに統合され、本部の経費は大きく減る。店舗の重なりは整理され、人員は成長分野へ回る。交換比率にも割増しがつき、株主は統合後のいよぎんHDの稼ぎを、厚い持ち分で受け取る。
10年後、愛媛銀行の部分の純利益は190億円ほどになり、ROEは9%近くに達する。資本コストを超える稼ぎが、10年続く銀行に変わる。
人口が減っても、愛媛は松山を中心に経済圏が崩れず、貸出は名目で年3%台後半まで伸びる。この見方では、愛媛銀行は、再編の最大の受益者の1つだ。
慎重な見方
利益は、金利の追い風を、すぐ別の力が食う。預金の獲得競争が激しくなり、調達コストが先に上がる。愛媛銀行は、県内で第2位の立場にあるため、金利を上げて預金を守るしかない。貸出利ざやの拡大は、想定の半分ほどにとどまる。
愛媛の人口は、2060年に65万人へ向けて減り続ける。貸出の需要そのものが縮み、量は名目でも年1%台にとどまる。経費は物価で年3%増える。収益が伸びないのに、費用だけが伸びる。
統合にも、疑いがある。株式交換の比率は公表されておらず、愛媛銀行の株主が不利な比率を受け入れるかもしれない。統合後も2つの銀行が並ぶ形では、システムと店舗の整理は進みにくい。統合のための費用は先に出て、効果は遅れる。
過去を見ても、利益は10年のあいだ50億円台で動かなかった。72億円は、債券の整理や運用益が重なった結果で、実力はその下にある。会社自身が、今期を65億円と見ている。
ROEは10年たっても5%を超えない。資本コストを大きく下回る銀行に、今の値段は高すぎる。
どちらに重みを置いたか
2つの主張のうち、慎重な見方が強い。金利の追い風は両者が認める事実だが、それが資本コストを超える稼ぎにつながるかは、第二地銀の立場と人口減が決める。ここでは、慎重な側が正しいと考える。
統合の効果は、上振れの確率を少し押し上げる。ただ、交換比率が未定なので、中立では効果を半分だけ数え、持ち分が薄まる可能性は筋書きに入れた。
確率は、悲観を12%、やや悲観を22%と、慎重な側に寄せた。楽観は、統合が最も良い形で進んだ場合に限り、11%にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,154 円1,232 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 927 円362 億円)。 今の値に割り戻すと 2,011 円786 億円、今との差 −40.9%、 期待の年率 +1.8%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 5,738 円2,242 億円 | 1,280 円500 億円 | +106.1% | +7.5% | 772 円302 億円 |
| やや楽観 | 25% | 4,299 円1,680 億円 | 1,100 円430 億円 | +58.6% | +4.7% | 1,350 円528 億円 |
| 中立 | 30% | 3,404 円1,330 億円 | 1,024 円400 億円 | +30.0% | +2.7% | 1,328 円519 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,479 円578 億円 | 717 円280 億円 | −35.5% | −4.3% | 483 円189 億円 |
| 悲観 | 12% | 845 円330 億円 | 384 円150 億円 | −63.9% | −9.7% | 147 円58 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,154 円1,232 億円 | 927 円362 億円 | +19.8% | +1.8% | 4,080 円1,594 億円 |
今の株価時価総額 3,405 円1,331 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 11% 楽観:金利が定着し、統合が最も良い形で進む 利益 190 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,738 円2,242 億円
短期金利は2%に定着し、貸出の利ざやは法人で0.5%近く広がる。預金は決済口座の粘りで、金利の追随が遅れる。愛媛銀行は船舶向け融資で県外へ広がり、山口FGとの提携も実を結ぶ。
いよぎんHDとの統合は、最も効く形で進む。システムは1つになり、本部の経費は物価の伸びを大きく下回る。店舗の重なりは整理され、人員は事業承継やM&A支援へ回る。交換比率にも割増しが付く。
与信費用は景気の山で低く抑えられ、債券の入れ替えも1度で済む。10年後の純利益は190億円ほどになり、ROEは8%台後半に達する。
愛媛は人口が減っても、松山を中心に経済圏が崩れず、貸出は名目で年3%台後半まで伸びる。愛媛銀行は、再編の最大の受益者として、資本コストを超える稼ぎを手にする。
- 法人・自治体貸出:数量 1.8(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.7%(貸出利ざや(%))→ 売上 298 億円・営業利益 130 億円。残高 1.75 兆円(名目)× 率 1.700%、利益率 44%
- 個人貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 123 億円・営業利益 50 億円。残高 0.85 兆円(名目)× 率 1.450%、利益率 41%
- 有価証券運用:数量 0.8(有価証券残高(兆円))× 価格 1.7%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 129 億円・営業利益 76 億円。残高 0.78 兆円(名目)× 率 1.650%、利益率 59%
- 役務・手数料:数量 4.2(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 92 億円・営業利益 28 億円。残高 4.20 兆円(名目)× 率 0.220%、利益率 30%
倍率:統合が最も良い形で進み、金利の追い風が長く続く。10年後のROE8%台後半(純利益190億円÷自己資本2,250億円)は k 8.5% を超える。k8.5%・g4.0%、残る割合1/2 で RONIC=k+1/2×(ROE−k)=8.6%、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=11.9倍(下限は1÷k=11.8倍)。統合の効果と預金の粘りが続く最良の形で、上限にほぼ一致させ11.8倍に置いた。
確率:統合が最良の形で進み、11%。金利の追い風と経費の削減が重なる場合に限る。
やや楽観 25% やや楽観:利ざやが広がり、統合の効果が一部出る 利益 160 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 4,299 円1,680 億円
短期金利が2%に届き、貸出利息の増加が預金利息の増加を上回る状態が続く。法人貸出の利ざやは0.4%ほど広がる。
統合は計画どおり進み、システムの共通化と本部の統合が、経費を少しずつ軽くする。店舗の整理は限られるが、人員は業務の見直しで成長分野へ回る。交換比率は、ほぼ対等に近い形に収まる。
与信費用は景気を1〜2周してならした水準に戻る。預かり資産はNISAの定着で名目5%台の伸びを保ち、手数料も厚くなる。
純利益は160億円ほどに乗り、ROEは7%台半ば。資本コストに近づくが、まだ届かない。会社の長期目標を上回る、悪くない10年になる。
預金の獲得競争は続くが、決済口座の粘りで、預金金利の追随は緩やかに抑えられる。
- 法人・自治体貸出:数量 1.7(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 275 億円・営業利益 115 億円。残高 1.70 兆円(名目)× 率 1.620%、利益率 42%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 114 億円・営業利益 41 億円。残高 0.83 兆円(名目)× 率 1.370%、利益率 36%
- 有価証券運用:数量 0.8(有価証券残高(兆円))× 価格 1.6%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 120 億円・営業利益 69 億円。残高 0.76 兆円(名目)× 率 1.580%、利益率 58%
- 役務・手数料:数量 4.0(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 81 億円・営業利益 23 億円。残高 3.95 兆円(名目)× 率 0.205%、利益率 28%
倍率:10年後のROE7.4%(純利益160億円÷自己資本2,170億円)は k 8.5% にやや届かない。上限は1÷k=11.8倍で、RONIC が k をわずかに下回るため式の値は11倍台前半。利益は金利の追い風に頼る質なので、その約9割の10.5倍に置いた。
確率:金利の追い風が続き、統合の効果が一部出る。中立の上の確かな上振れ。
中立 30% 中立:金利は定着するが、人口減と経費が利益を押さえる 利益 133 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 3,404 円1,330 億円
短期金利2%が定着し、貸出と債券の利ざやは今より0.3%前後広がる。預金は決済口座の粘りで追随が緩やかだが、獲得競争で調達コストは上がり続ける。愛媛の人口が減るなか、貸出の量は名目で年2%台にとどまる。
いよぎんHDとの統合は2027年に実現するが、2つの銀行が並ぶ形で、経費の削減は半分ほどしか進まない。交換比率はほぼ対等で、今の株主の持ち分は大きくは変わらない。
経費は物価に合わせて増える。利益は10年で2倍近くになるが、自己資本も5割ほど積み上がり、ROEは6%台半ばで止まる。県内第2位の地位は守るが、資本効率で突き抜けられない銀行のままである。
与信費用は景気循環をならした水準に戻り、債券の入れ替えは1度で済む。配当と自社株買いで、利益の4割ほどを返す。
- 法人・自治体貸出:数量 1.7(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 256 億円・営業利益 100 億円。残高 1.65 兆円(名目)× 率 1.550%、利益率 39%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 107 億円・営業利益 33 億円。残高 0.82 兆円(名目)× 率 1.300%、利益率 31%
- 有価証券運用:数量 0.7(有価証券残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 110 億円・営業利益 62 億円。残高 0.73 兆円(名目)× 率 1.500%、利益率 56%
- 役務・手数料:数量 3.7(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 70 億円・営業利益 18 億円。残高 3.70 兆円(名目)× 率 0.190%、利益率 26%
倍率:10年後のROE6.4%(純利益133億円÷自己資本2,065億円)は k 8.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。人口減で貸出が伸びず、利益は金利の追い風に頼る質。上限の8.5割に置き10.0倍。
確率:金利は定着するが、人口減と預金競争で利ざやの拡大は限られる。最も重みを置く中心の想定。
やや悲観 22% やや悲観:預金競争で利ざやが伸びず、統合の効果も遅れる 利益 68 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,479 円578 億円
短期金利は2%まで上がるが、預金の獲得競争で調達コストが先に上がり、利ざやの拡大は想定の半分ほどにとどまる。愛媛の人口は想定を超えて減り、貸出の量は名目でも年1%台に鈍る。
統合は実現するが、システムの統合費用が重く、経費の削減は小さい。2つの銀行が並ぶ体制は動かず、愛媛銀行の取り分も、主導権の弱さから目減りする。
与信費用は景気の谷で増え、債券の評価損も重なる。純利益は70億円弱にとどまり、ROEは3%台に下がる。
会社は2033年度のROE5%を、10年のあいだ一度も守れない。配当は保つが、自社株買いは控え、自己資本の積み増しに回る。経費率は70%近くから下がらず、資本コストに遠く届かない銀行になる。
- 法人・自治体貸出:数量 1.5(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 192 億円・営業利益 62 億円。残高 1.50 兆円(名目)× 率 1.280%、利益率 32%
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 80 億円・営業利益 16 億円。残高 0.74 兆円(名目)× 率 1.080%、利益率 20%
- 有価証券運用:数量 0.7(有価証券残高(兆円))× 価格 1.3%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 85 億円・営業利益 40 億円。残高 0.68 兆円(名目)× 率 1.250%、利益率 47%
- 役務・手数料:数量 3.3(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 56 億円・営業利益 6 億円。残高 3.30 兆円(名目)× 率 0.170%、利益率 11%
倍率:10年後のROE3.7%(純利益68億円÷自己資本1,860億円)は k 8.5% を大きく下回る構造的な負け。稼ぐ力(純利益÷k=約800億円)の内側に収め、PERは8.5倍とした。今の自己資本に対する倍率は0.4倍。
確率:預金競争と人口減が想定を超え、統合の効果も遅れる。慎重な見方が強いので、やや厚く置く。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、統合の効果も持ち分も薄まる 利益 30 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 845 円330 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、地元の中小企業の与信費用が急増する。人口減が想定を超えて速まり、愛媛の貸出需要そのものが縮む。預金は金利を払って守るしかなく、利ざやは県内の競争で削られる。
統合は交換比率や主導権をめぐって難航し、愛媛銀行の持ち分は薄まる。システム投資の負担だけが先に出て、効果は届かない。債券と政策保有株の評価損で、自己資本も傷む。
費用は物価で増え続けるのに、収益は伸びない。純利益は30億円ほどに落ち、ROEは2%台になる。地方銀行としての存在意義が問われ、再編の次の相手を探す立場になる。
預かり資産や事業承継の手数料も伸びず、船舶向け融資の専門性も、他行との競争で優位を保てない。
- 法人・自治体貸出:数量 1.2(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 109 億円・営業利益 30 億円。残高 1.15 兆円(名目)× 率 0.950%、利益率 28%
- 個人貸出:数量 0.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 47 億円・営業利益 6 億円。残高 0.60 兆円(名目)× 率 0.780%、利益率 13%
- 有価証券運用:数量 0.5(有価証券残高(兆円))× 価格 1.0%(運用利ざや(調達コスト控除後・%))→ 売上 52 億円・営業利益 24 億円。残高 0.52 兆円(名目)× 率 1.000%、利益率 46%
- 役務・手数料:数量 2.7(預金と預かり資産の基盤残高(兆円))× 価格 0.2%(役務収益率(%))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。残高 2.70 兆円(名目)× 率 0.150%、利益率 10%
倍率:10年後のROE1.9%(純利益30億円÷減損後の自己資本1,550億円)。資本コスト8.5%を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は約350億円で、その内側の11.0倍とした(純利益が薄いので倍率は高めでも額は小さい)。今の自己資本1,441億円に対する倍率は0.23倍。稼ぐ力から出した値で、帳簿の底値からは置いていない。
確率:リーマン級の信用収縮や、統合の難航、人口減の加速が10年のどこかで重なる。10年という期間では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・自治体貸出
愛媛県内の中小企業・自治体向けの貸出と、船舶向け融資など県外の貸出。
| 数量法人・自治体向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.3% | 161 | 45 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 1.6% | 256 | 100 |
取り方:貸出1.98兆円のうち法人・自治体向けを約65%の1.29兆円と推定した(内訳は未開示のため推定)。利ざやは調達コストを引いた後の率で1.25%と置いた。残高は名目で伸びる:中立で年2.5%(物価3%に愛媛の人口減を織り込む)。利ざやは10年で+0.30%の広がりと置いた(率なので物価では上がらない)。
個人貸出
住宅ローン・マイカーローンなどの個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.1% | 72 | 15 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1.3% | 107 | 33 |
取り方:貸出の残り約35%を個人向け0.69兆円と推定した。利ざやは1.05%。住宅ローンは変動金利が多く、短期金利の上昇で広がるが、ネット銀行との競争で法人より狭い。中立の残高は年1.7%、利ざやは10年+0.25%と置いた。
有価証券運用
預金のうち貸出に回らない分の運用。国債・社債・株式・投資信託。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利ざや(調達コスト控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 1.3% | 78 | 45 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 1.5% | 110 | 62 |
取り方:有価証券は約0.60兆円(2025年9月末)。低利回りの債券を整理して入れ替える途上にあり、入れ替え後の債券が高い利回りで回る分を10年の利ざやの広がりに入れた。中立の残高は年2%、利ざやは10年+0.20%と置いた。
役務・手数料
投資信託・保険の販売、事業承継・M&A支援、振込・為替の手数料。
| 数量預金と預かり資産の基盤残高(兆円) | 価格役務収益率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 0.2% | 54 | 10 |
| 10 年後 中立 | 3.7 | 0.2% | 70 | 18 |
取り方:預金約2.57兆円に預かり資産を約0.43兆円(推定。開示を確認できていない)足して3.0兆円とし、役務収益を基盤で割った率を0.18%とした。預かり資産はNISA定着で名目5%超、預金は1〜2%の伸びと置く。手数料率は物価では上がらない。
リスクと懸念
金利の追い風が預金競争で薄まる
短期金利が2%へ上がっても、預金集めの競争で調達コストが先に上がれば、利ざやの拡大は想定を下回る。愛媛銀行は県内第2位で、金利を上げて預金を守る立場にあり、拡大の相当な部分を預金金利に取られるおそれがある。
愛媛県の人口減少
県の人口は2060年に約65万人へ減る推計がある。企業の数と貸出の需要が縮み、地元の地盤だけで貸出を伸ばすことは難しい。県外貸出は競争が厳しく、利ざやの確保にも限度がある。
統合比率と持ち分の希薄化
いよぎんHDによる完全子会社化では、株式交換の比率がまだ示されていない。愛媛銀行の株主の持ち分が、統合後のいよぎんHDの中で薄まる可能性がある。最終契約は2026年12月の予定で、それまで確かなことは言えない。
統合の費用と遅れ
システムの共通化や店舗の整理には、先に費用が出る。統合後も2つの銀行が並ぶ体制では、本部とシステムの経費を減らすのに時間がかかり、効果が計画より遅れるおそれがある。
信用コストと債券の評価損
金利上昇の過程で、地元中小企業の資金繰りが悪化すれば、与信費用が増える。有価証券が約6,000億円と大きく、金利の変動で評価損が出れば、薄い自己資本が傷む。自己資本が小さいため、同じ損でも影響が大きい。
自己資本の薄さ
連結の自己資本は約1,440億円で、地銀の中では小さい。大きな損失や、貸出を増やす成長には資本が足りなくなりやすく、還元を厚くする余地も限られる。過去には増資で株が薄まった期もある。
独占禁止法の特例と地域の目
統合後は県内シェアが預金で5割を超えるため、独占禁止法の特例法の適用を申請する。認められない、または条件が付く場合、統合の効果が小さくなる。貸出金利を上げにくくなる影響もありうる。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%まで計画どおりに上げ、預金金利の追随が遅れたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出の利ざやの拡大を決算で確認する。
- いよぎんHDとの最終契約で、交換比率に割増しが付いたら
- 株主の持ち分が厚くなる。中立の見立ては変わらないが、上振れの確率を上げる材料になる。
- 交換比率が愛媛銀行に不利に決まったら
- 持ち分が薄まる分、受け取る価値が減る。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 独占禁止法の特例法の適用が認められなかったら
- 統合の効果が小さくなり、愛媛銀行は単独で、経費と利ざやの両面で苦しい立場に戻る。
- 貸出の残高が、金利が上がる局面でも前年を下回り続けたら
- 人口減と競争で量が縮んでいる証拠になる。中立の確率を下げ、悲観側へ寄せる。
- 与信費用が景気の谷で急増し、債券の評価損も重なったら
- 薄い自己資本が傷み、悲観の筋書きに近づく。統合の効果の議論では済まなくなる。
見ておくもの
- 日銀の政策金利と、愛媛県内の貸出利ざや・預金金利の動き
- いよぎんHDとの最終契約(2026年12月予定)での株式交換の比率
- 愛媛県内の貸出残高の推移(前年比)
- 有価証券の入れ替えの進み方と評価損益
- 独占禁止法の特例法の適用の可否
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。k は 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%、g は 4.0%。10年後の中立は ROE が6%台で k 以下なので、PER は 1÷k の11.8倍までが上限で、その8.5割の10.0倍に置いた。やや楽観は ROE が7%台で上限近くの9割、楽観は ROE が k を超えて正当化 PER の約11.9倍にほぼ一致させた。やや悲観・悲観は ROE が k を大きく下回る構造的な負けで、稼ぐ力から8.5倍・11倍に置いた(悲観は利益が小さいので倍率は高めでも時価総額は稼ぐ力÷k の内側)。過去のPBRや今の倍率、同業の倍率は根拠にしていない。統合は交換比率が未定のため、中立では効果を半分だけ数えた。k を1%上げて9.5%にすると、中立の PER の上限は10.5倍に下がる。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。統合比率や再編の実行リスクは k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は0。同じ地方銀行どうしで、差は quality の4部品だけで出した。