結論
プロクレアホールディングスは、青森県内企業の約7割が主力行に選ぶ青森みちのく銀行の持株会社である。預金は5兆円、貸出は3.5兆円。2026年10月に岩手銀行・秋田銀行との3行統合の協議に入った。筆者の結論は、足場は固いが資本が薄く、10年後の価値は今の時価総額を3割弱下回る、というものだ。
稼ぎの源は預金の使い道にある。預金の3割ほどは貸出に回らず、日銀預け金や債券で運用される。短期金利が2%へ上がれば、運用利回りが先に上がり、預金金利は遅れて追う。2026年3月期の純利益は38億円と低いが、10年後の中立では170億円ほどまで伸びると見る。
足を引っ張るのは三つある。青森の人口は全国で2番目の速さで減る。連結の純資産比率は2.7%と薄く、満期保有の債券だけで含み損が約118億円ある。第1次中計の目標も未達だった。
利益が数倍になっても、自己資本も積み上がる。10年後のROEは8%近くで、資本コスト8.5%に届かない。ROEが資本コストを下回る会社では、ためた利益は額面を下回る価値しかない。ここが割高寄りと見る一番の理由だ。
3行統合は上振れの材料だが、比率は決まっていない。効果は半分だけ数え、持ち分が薄まる可能性は悲観側に入れた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を持ち続けたいかを問う。答えは、条件付きで慎重、というものだ。
堀は本物である。企業の7割が主力行に選ぶ状況は、他の地域でもまず見られない。金利のある世界では、この預金の厚さが利益に変わる。
ただし、その堀の中で稼げる額が小さい。純利益は10年中立で170億円ほどになるが、今は38億円で、過去の実績はそのまま信用しにくい。資本は薄く、含み損を抱え、第1次中計は未達だった。経営の資本の使い方は改善の途上にあり、安全域を厚く取る必要がある。
オーナー利益の面では、利益のうち株主に回る分が少ない。薄い資本を保つために、利益の5割強は自己資本の積み上げに回る。ROEが資本コストに届かない限り、積み上げた分は額面を下回る価値しか持たない。
払う値段の安全域はどうか。今の時価総額は、10年中立の姿の割引値と近いが、そこに至る道は統合の比率・金利の動き・人口減の速さに大きく左右される。わからない要素が多い事業で、確信度は高くない。筆者は、10年後の価値を今の時価総額より3割弱低いと見る。
何で稼ぐ会社か
青森みちのく銀行が稼ぎの全てを握る単純な構造の会社である。2022年に青森銀行とみちのく銀行が持株会社の下に入り、2025年1月に両行が合併して、県内唯一の地方銀行になった。
貸出は3.5兆円。中小企業と自治体向けが中心で、個人は住宅ローンが主力になる。預金は5兆円を超え、預貸率は70%ほどと低い。貸出に回らない1.5兆円ほどは、日銀預け金と債券で運用する。債券は低金利の時期に買ったものが多く、満期保有の分だけで含み損が約118億円ある。
手数料の稼ぎは小さい。投信と保険の販売、決済、企業向けのコンサルティングが柱で、預かり資産と決済の取扱高あたりの手数料率は0.6%ほどと見積もる。会社は地域商社の機能に力を入れ、観光地の経営会社の設立や、ねぶた祭への運行団体としての参入のような、貸出の外の事業にも踏み出している。
経費の重さが最大の弱みになる。コア業務粗利益に対する経費の比率は7割を超え、同業より重い。会社は店舗を約100店舗まで減らし、人員も5年で400人以上減らす計画で、合併のシナジーを積み上げる。2027年度のネットのシナジーは約50億円とされる。
短期金利が上がる局面では、預金の厚さが武器になる。運用側の利回りが先に上がり、預金金利は4割ほどしか追わない。この差が、10年の稼ぎを押し上げる。
優良さと弱いところ
強みは県内の支配的な地位である。企業の7割が主力行に選び、合併後に取引行を変えた企業は1割に満たない。県内には競合する大手行がなく、貸出の値決めにはやや強みがある。
弱みは三つある。第一に、自己資本が薄い。連結の純資産は1,628億円、総資産の2.7%で、規制上の自己資本比率の目標は8%程度と、同業の多くより低い。含み損を抱えたまま、貸出を増やす余力が限られる。第二に、人口減が速い。社人研の推計で、青森は2050年までの減少率が全国で2番目に大きい。貸出の需要と預金の双方が痩せる。第三に、収益の実績が弱い。ROEは過去4年で0.8%から2.3%にとどまり、第1次中計の主要な目標は未達だった。
経費の面では、合併後の統廃合で改善の余地が大きいが、物価で毎年膨らむ人件費との競争になる。
資本の使い方は、評価が分かれる。安定配当を守りながら、2027年3月期から配当性向40%を目標に掲げた点は評価できる。一方、低利の債券を長く抱え込んだ過去の運用の失敗は、資本を傷めた。バリュー投資家の目では、堀は広いが、その堀の中で稼げる額がまだ小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、金利のある世界に入って稼ぎが回復している。短期金利が上がると、貸出と預け金の利回りが先に上がり、預金金利は遅れて追う。この差で利ざやが広がる局面にある。
ただし、この追い風を人口減が相殺する。東北は全国に先駆けて人口が減り、青森は2050年までに大きく減る見通しだ。企業の数も減り、後継者のいない廃業が貸出先と決済取引を同時に消す。親世代の預金は、相続で都市部の子世代へ動く。
再編が進むのは、この圧力のためである。2026年10月、プロクレアは岩手銀行・秋田銀行と、2028年4月の経営統合に向けた協議に入った。持株会社の下に3行が並ぶ形で、総資産は合計13兆円を超え、仙台の七十七銀行を抜く東北最大の地銀グループになる。岩手と秋田は2021年から業務提携を続けてきた。
ただし、3行は同じ北東北の人口減に直面し、岩手銀行・秋田銀行のROEも4%台にすぎない。大きくなって規模の経済が働くかは、システムと店舗をどこまで共通にできるかで決まる。システムの統合は予定がないとも報じられている。
競争の相手は、県内の信用金庫・信用組合に加え、ネット銀行と大手行のオンライン商品になる。預金の獲得競争が長引けば、預金金利の追随の割合が上がり、利ざやの広がりを削る。
資本政策と M&A
還元の姿勢は改善しているが、まだ控えめである。2026年3月期の配当は安定配当を維持し、総還元は約17億円、純利益の4割台だった。会社は2027年3月期から配当性向40%を目標に掲げ、配当は倍の水準へ引き上げる計画で、中計は自己資本比率を8%程度に保つ前提を置く。薄い資本のまま利益を厚く出す方針に、筆者は不安を感じる。
M&Aの中心は、3行の経営統合である。合併ではなく持株会社方式で、社名・役員・本社は未定とされ、盛岡市に置く方向と報じられている。比率が決まっていないため、プロクレアの株主の取り分が増えるか減るかはまだ分からない。純利益と自己資本の双方でプロクレアが三つの中で最も弱く、比率の決め方次第で結果が大きく変わる。
過去の資本の動きでは、2023年3月期の純利益の大半が合併に伴う負ののれんで、それを除くと約18億円にすぎなかった。利益の質の見方はこの点を押さえる必要がある。
統合のうわさとは別に、kabufuの推計では10年以内に買収される確率は17.5%とされる。ただし、3行統合の協議が進む間は、別の買い手の出る余地は小さいと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利のある世界は、この銀行にとって最大の追い風である。預金は5兆円を超え、貸出に回らない1.5兆円は預け金と債券で運用される。短期金利が2%へ上がれば、運用側は借り換えのたびに利回りが上がり、預金側は4割ほどしか追わない。この差だけで、純利益は今の数倍に伸びる。会社自身も2027年3月期に純利益70億円、2030年度に130億円を掲げており、金利が2%に届く世界ではそれを超える余地が大きい。
足場も固い。青森県内で企業の7割が主力行に選び、合併後に取引行を変えた企業は1割に満たない。他に大手行がいないので、貸出の値決めにも強みがある。
統合の材料もある。岩手銀行・秋田銀行との3行統合は、総資産13兆円超の東北最大の地銀グループを生む。システムの共通化・本部機能の集約・県境を越えた企業支援で、経費率の改善が期待できる。純利益と自己資本でプロクレアが最も弱いので、比率が自己資本や時価総額を基準に決まれば、プロクレアの株主は取り分が増える。合併に伴う店舗の統廃合も進み、約100店舗への縮小と人員の自然減で、経費の伸びは物価を下回る。
慎重な見方
どれだけ利益が伸びても、元の資本が薄すぎる。連結の純資産は総資産の2.7%で、規制上の自己資本比率も8%台にとどまる。満期保有の債券だけで含み損が約118億円あり、純利益の9倍を超える。金利の追い風は、運用の入れ替えで損失を実現する過程と引き換えになる。利益を厚く出すほど、配当と自社株買いに回せる余裕が減り、自己資本は積み上がる一方で、ROEは資本コストに届かない。
実績も弱い。ROEは過去4年で0.8%から2.3%、第1次中計の主要な目標は未達だった。2023年3月期の大きな純利益は合併の負ののれんで、それを除けば約18億円である。
人口減は青森が全国で2番目に速い。貸出と預金の双方が痩せ、相続で動く預金は都市部へ流れる。預金金利の追随が4割を超えれば、利ざやの広がりは削られる。
3行統合も、期待ほどの力は無い。3行ともROEは4%台以下で、同じ人口減に直面している。システムの統合は予定がなく、費用だけが先に出る恐れがある。比率が利益の大きさで決まれば、純利益の最も小さいプロクレアの株主は持ち分が薄まる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。金利の追い風は本物だが、薄い自己資本・含み損・未達の実績・人口減の速さが、資本効率を資本コストの下に押さえ込む。統合は比率が未定で、中立では効果を半分だけ数え、持ち分が薄まる可能性は悲観側に入れた。確率は楽観9%・やや楽観20%・中立30%・やや悲観26%・悲観15%とし、悲観側に厚く寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,795 円1,641 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,466 円415 億円)。 今の値に割り戻すと 3,538 円1,002 億円、今との差 −9.8%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 11,308 円3,202 億円 | 2,430 円688 億円 | +250.5% | +13.4% | 1,236 円350 億円 |
| やや楽観 | 20% | 8,567 円2,426 億円 | 1,971 円558 億円 | +168.8% | +10.4% | 2,108 円597 億円 |
| 中立 | 30% | 7,143 円2,023 億円 | 1,667 円472 億円 | +124.7% | +8.4% | 2,643 円748 億円 |
| やや悲観 | 26% | 3,083 円873 億円 | 1,070 円303 億円 | +5.9% | +0.6% | 1,080 円306 億円 |
| 悲観 | 15% | 795 円225 億円 | 498 円141 億円 | −67.0% | −10.5% | 194 円55 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,795 円1,641 億円 | 1,466 円415 億円 | +85.2% | +6.4% | 7,261 円2,056 億円 |
今の株価時価総額 3,920 円1,110 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 3行統合が満額で効き、金利の追い風も長く続く10年 利益 249 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 11,308 円3,202 億円
政策金利が2%に届き、貸出利息の増加が預金利息の増加を大きく上回る。青森みちのく銀行が低利で抱えてきた債券は借り換えのたびに高い利回りへ入れ替わり、評価損は満期で解消に向かう。
3行統合は2028年に実現し、システムと本部機能の共通化、店舗の統廃合が計画を上回って進む。統合比率も青森側に不利にならず、効果を満額で受け取る。県境を越えた企業支援と事業承継のあっせんで、法人の貸出と手数料が伸びる。
与信費用は景気を1〜2周してならした低めの水準にとどまる。純利益は250億円に乗り、ROEは10%台半ばに達する。県内で企業の7割が主力行に選ぶ地位が、資本効率の高い銀行への変身を支えた姿である。
- 法人・公共貸出:数量 2.6(法人・公共貸出平残(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 395 億円・営業利益 174 億円。残高 2.60 兆円 × 率 1.52%、利益率 44%
- 個人貸出:数量 1.5(個人貸出平残(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 192 億円・営業利益 58 億円。残高 1.50 兆円 × 率 1.28%、利益率 30%
- 預かり資産・手数料:数量 1.6(手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.7%(実効の手数料率(%))→ 売上 113 億円・営業利益 43 億円。残高 1.55 兆円 × 率 0.73%、利益率 38%
- 預金の運用(貸出に回らない預金):数量 1.8(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.3%(運用利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 231 億円・営業利益 120 億円。残高 1.75 兆円 × 率 1.32%、利益率 52%
倍率:事業の純利益 249 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.86 倍、時価総額 3,202 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%の定着、債券の借り換えによる利回り向上、3行統合の効果が満額、与信費用の低位、の4つが10年を通してそろう必要がある。第1次中計の目標が未達だった実績を踏まえ、1割を切る確率にとどめた。
やや楽観 20% 金利の追い風に統合が半分効き、中計の2030年目標を超える 利益 202 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 8,567 円2,426 億円
短期金利2%が定着し、貸出の利ざやは今より0.5%ほど広がる。債券の入れ替えが進み、評価損は3年ほどで目立たなくなる。
3行統合は2028年4月に持株会社の下で実現し、システムの共通化と店舗の統廃合がおおむね計画どおり効く。統合の費用が先に出る年もあるが、5年目には経費の伸びが物価を下回る。青森みちのく銀行の店舗は約100店舗まで減り、人員の自然減も続く。
与信費用は正常化するが、青森の中小企業の体力は強くない。純利益は200億円を超え、ROEは8%台後半に乗る。資本コストをようやく上回る水準で、第2次中計の延長線上にある10年である。
- 法人・公共貸出:数量 2.5(法人・公共貸出平残(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 363 億円・営業利益 149 億円。残高 2.50 兆円 × 率 1.45%、利益率 41%
- 個人貸出:数量 1.5(個人貸出平残(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 180 億円・営業利益 49 億円。残高 1.46 兆円 × 率 1.23%、利益率 27%
- 預かり資産・手数料:数量 1.5(手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.7%(実効の手数料率(%))→ 売上 103 億円・営業利益 36 億円。残高 1.45 兆円 × 率 0.71%、利益率 35%
- 預金の運用(貸出に回らない預金):数量 1.7(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.3%(運用利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 213 億円・営業利益 102 億円。残高 1.70 兆円 × 率 1.25%、利益率 48%
倍率:事業の純利益 202 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.0 倍。全体の PER 12.01 倍、時価総額 2,426 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2030年度に純利益130億円という会社の目標を、金利の追い風が上回る基本の道筋。統合は比率未定のため効果を半分だけ数え、中立の次に厚い確率とした。青森は人口減が重く、確率は同領域より薄めにした。
中立 30% 中立:金利で稼ぎは倍以上になるが、資本効率はkに届かない 利益 172 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 7,143 円2,023 億円
短期金利2%が定着し、貸出の利ざやは今より0.4%ほど広がる。預金は決済口座の粘りで追随が緩やかだが、獲得競争で調達コストは上がり続ける。青森の人口は年1%を超えるペースで減り、貸出の量は名目で年1%にとどまる。
3行統合は2028年に実現するが、持株会社の下で3行が並ぶ形で、費用削減は緩やかに効く程度とみる。統合の効果は半分だけ数える。店舗の削減と人員の自然減で、経費の伸びは物価より低く抑える。
利益は10年で4倍強になるが、今の純利益38億円が低すぎる出発点でもある。自己資本は3割ほど積み上がり、ROEは8%近くで資本コストに届かない。県内首位の地位は守るが、資本効率で突き抜けられない銀行のままである。
- 法人・公共貸出:数量 2.4(法人・公共貸出平残(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 335 億円・営業利益 134 億円。残高 2.43 兆円 × 率 1.38%、利益率 40%
- 個人貸出:数量 1.4(個人貸出平残(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 166 億円・営業利益 42 億円。残高 1.41 兆円 × 率 1.18%、利益率 25%
- 預かり資産・手数料:数量 1.4(手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.7%(実効の手数料率(%))→ 売上 95 億円・営業利益 31 億円。残高 1.40 兆円 × 率 0.68%、利益率 33%
- 預金の運用(貸出に回らない預金):数量 1.7(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.2%(運用利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 198 億円・営業利益 89 億円。残高 1.65 兆円 × 率 1.20%、利益率 45%
倍率:事業の純利益 172 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 2,023 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用が景気を1〜2周してならした水準に戻る、最も重みを置く中心の筋書き。ROEが資本コストに届かない実績と青森の人口減が重く、慎重側に寄せて最大の確率とした。統合は比率未定のため効果を半分だけ数えた。
やや悲観 26% 統合が遅れ、人口減と預金の流出で成長が鈍る 利益 97 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,083 円873 億円
短期金利は2%に届くが、預金の獲得競争が強まり、預金金利の追随は4割を超える。ネット銀行と大手行に、若い世代の口座と相続で動く預金を奪われる。
3行統合は2029年以降にずれ込むか、条件がまとまらない。システム費用が先に出て、青森側の取り分も主導権の弱さから小さくなる。店舗の統廃合は進むが、顧客の離反で収益の減りがそれを打ち消す。
与信費用は人口減で増え、純利益は100億円に届かない。ROEは5%にとどまり、資本コストを大きく下回る。債券の入れ替えで実現した損失の穴を、金利の追い風がようやく埋める程度である。
- 法人・公共貸出:数量 2.3(法人・公共貸出平残(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 283 億円・営業利益 85 億円。残高 2.28 兆円 × 率 1.24%、利益率 30%
- 個人貸出:数量 1.3(個人貸出平残(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 135 億円・営業利益 20 億円。残高 1.32 兆円 × 率 1.02%、利益率 15%
- 預かり資産・手数料:数量 1.2(手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.6%(実効の手数料率(%))→ 売上 69 億円・営業利益 15 億円。残高 1.15 兆円 × 率 0.60%、利益率 22%
- 預金の運用(貸出に回らない預金):数量 1.5(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 1.0%(運用利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 150 億円・営業利益 57 億円。残高 1.50 兆円 × 率 1.00%、利益率 38%
倍率:10年後のROE5.0%(純利益97億円÷自己資本1,957億円)。ROEはk8.5%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。上限の7.7割に置き、9倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:統合が比率や主導権をめぐって遅れ、費用だけが先に出る想定。青森は人口減の速さが全国で2番目で、預金の流出と与信費用の上昇が重なる。第1次中計の未達の実績と薄い自己資本比率から、同領域より厚めの確率にした。
悲観 15% 構造的に負け、統合も実らず資本が細るまま沈む10年 利益 25 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 795 円225 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、青森の中小企業の与信費用が急増する。人口減は想定を超えて速まり、県内の貸出需要そのものが縮む。預金は金利を払って守るしかなく、利ざやは競争で削られる。
満期保有の債券の含み損は金利上昇で膨らみ、売れば損失、売らなければ運用の足かせになる。自己資本比率は規制の目標である8%台を割り込み、配当は絞られ、株主還元より資本の維持が優先される。
3行統合は統合比率が青森側に不利に決まって持ち分が薄まるか、頓挫してシステム投資だけが残る。費用は物価で増えるのに収益は伸びず、純利益は25億円ほどにとどまる。ROEは1%台で、地方銀行としての存在意義が問われる。
- 法人・公共貸出:数量 1.8(法人・公共貸出平残(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 149 億円・営業利益 22 億円。残高 1.75 兆円 × 率 0.85%、利益率 15%
- 個人貸出:数量 1.0(個人貸出平残(兆円))× 価格 0.7%(貸出利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。残高 1.00 兆円 × 率 0.70%、利益率 3%
- 預かり資産・手数料:数量 0.8(手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円))× 価格 0.4%(実効の手数料率(%))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。残高 0.80 兆円 × 率 0.40%、利益率 3%
- 預金の運用(貸出に回らない預金):数量 1.2(貸出に回らない預金(兆円))× 価格 0.7%(運用利ざや(預金調達費用控除後・%))→ 売上 84 億円・営業利益 21 億円。残高 1.20 兆円 × 率 0.70%、利益率 25%
倍率:10年後のROE1.7%(純利益25億円÷自己資本1,509億円)。ROEはk8.5%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿として約8割の9.0倍。上限の7.7割に置き、9倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:世界的な信用収縮、青森の人口減の加速、債券の評価損の実現、預金の流出、3行統合の頓挫のうちいくつかが10年のどこかで重なる想定。連結の純資産比率が2.7%と薄く、規制上の自己資本比率も8%台で評価損への耐性が低いため、同領域より厚い1割台半ばとした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共貸出
青森みちのく銀行による県内の中小企業・事業者・自治体向け貸出。県内企業のおよそ7割が主力行に選ぶ。
| 数量法人・公共貸出平残(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達費用控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.2 | 1.0% | 209 | 60 |
| 10 年後 中立 | 2.4 | 1.4% | 335 | 134 |
取り方:貸出金3.54兆円(銀行単体、2026年3月末)のうち個人ローンを約1.34兆円と推定し、残る2.2兆円を法人・公共とした(セグメント別の開示は無く内訳は推定)。利ざやは預金で調達した資金との差で0.95%とおいた。営業利益は経費と与信費用を割り振った後で、利益率は3割弱。預金ベータ(預金金利が政策金利に付いていく割合)は地銀共通の40%。残高は名目の金額なので物価で伸びるが、青森の人口減を入れて年1%とした。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。固定金利が多く、金利上昇の波及が遅い。
| 数量個人貸出平残(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達費用控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 0.8% | 107 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 1.2% | 166 | 42 |
取り方:個人向け貸出を約1.34兆円と推定(内訳の開示は無い)。利ざやは住宅ローンの競争で薄く0.80%。店舗網と人手がかかるため営業利益率は1割ほど。残高は青森の世帯減を入れて名目で年0.5%の伸びとした。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ40%(業種共通の置き方・同じ会社の他のセグメントと同じ)だけ追うので、中立の率は10年で0.80%→1.18%(+0.38ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。
預かり資産・手数料
投信・保険の販売、決済、コンサルティングなどの役務収益。地域商社の機能も手掛ける。
| 数量手数料の対象取扱高(預かり資産・決済など。兆円) | 価格実効の手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.6% | 62 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 0.7% | 95 | 31 |
取り方:預かり資産と決済・助言の取扱高をあわせて1.0兆円、実効の手数料率0.62%とおいた(役務収益は決算の内訳を確かめていない推定)。人件費が重く利益率は低い。預かり資産は新NISAの広がりで名目で年3.5%の伸びとした。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
預金の運用(貸出に回らない預金)
預金のうち貸出に回らない分を、日銀への預け金や債券で運用する。預貸率は約70%。
| 数量貸出に回らない預金(兆円) | 価格運用利ざや(預金調達費用控除後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 1.1% | 161 | 64 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 1.2% | 198 | 89 |
取り方:預金5.07兆円から貸出3.54兆円を引いた1.53兆円。運用利ざやは預け金・債券・配当の平均利回りから預金の払い金利を引いて1.05%とおいた。低利の債券を長く抱え、満期保有の債券だけで含み損は約118億円(2026年3月末)。短期金利が2%へ上がる間、運用側は借り換えのたびに利回りが上がり、預金側は40%分だけ追う。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
薄い自己資本と債券の含み損
連結の純資産は総資産の2.7%で、規制上の自己資本比率の目標も8%程度と低い。満期保有の債券だけで含み損が約118億円ある。金利がさらに上がれば含み損は膨らみ、売れば損失になる。貸出を増やす余力と、配当に回せる額の両方が限られる。
青森の人口減
青森は2050年までの人口の減少率が全国で2番目に大きいとされる。貸出の相手になる企業と世帯が減り、預金も相続で都市部へ流れる。県内で7割のシェアがあっても、パイそのものが縮めば稼ぎの天井は低くなる。
3行統合の比率と実行
統合は2028年4月を目指す協議の段階で、比率・社名・役員が決まっていない。純利益と自己資本でプロクレアが最も弱く、比率次第で持ち分が薄まる。システムの統合は予定が無いとも報じられ、費用だけが先に出る恐れがある。
預金金利の追随
短期金利が上がる局面で、利ざやの広がりは預金金利の追随の割合が決める。ネット銀行や大手行の高金利預金に対抗して追随の割合が4割を超えれば、10年の稼ぎの伸びは大きく削られる。
与信費用の上昇
金利が上がるほど、体力の弱い青森の中小企業の返済負担は重くなる。後継者のいない廃業も増える。与信費用は今の低い水準から正常化するだけでも、純利益の大きな部分を食う。
利益の実績の弱さ
ROEは過去4年で0.8%から2.3%にとどまり、第1次中計の主要な目標は未達だった。2023年3月期の大きな純利益は合併の負ののれんによるもので、除くと約18億円だった。会社の予想を鵜呑みにしにくい。
今後の分かれ目
- 3行統合の比率が、プロクレアの株主に有利に決まった時
- 持ち分が守られる形で統合効果を満額近く数えられるので、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。持株会社の本社が盛岡でも、青森の地域密着が保たれるかを見る。
- 統合の比率が純利益の大きさで決まり、プロクレアの株主に不利になった時
- 持ち分が薄まるので、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 短期金利が2%に向けて計画より速く上がり、預金金利の追随が3割台にとどまった時
- 利ざやの広がりが想定を上回るので、楽観・やや楽観の確率を上げる。債券の含み損の縮小も合わせて確認する。
- 満期保有の債券の含み損が膨らみ、自己資本比率が8%を割りそうになった時
- 配当や自社株買いが絞られ、貸出も伸ばせなくなる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 2027年度の純利益70億円を超え、2030年度の130億円を前倒しで達成した時
- 実績の弱さという慎重側の根拠が薄まるので、中立からやや楽観へ確率を移す。
- 青森の貸出残高が人口減にもかかわらず名目で年2%を超えて伸びた時
- 量の見通しが厚くなるので、法人貸出の数量を上方に直す。
見ておくもの
- 3行統合の基本合意と統合比率(2028年4月予定)
- 短期金利の水準と預金金利の追随の速さ
- 満期保有債券の含み損と、規制上の連結自己資本比率(目標8%程度)
- 2027年度の中計目標(純利益80億円・ROE4.0%以上)の達成度
- 青森の貸出残高・預金残高と店舗統廃合の進み
- 与信費用の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。k は 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%、g は 4.0%。10年後の中立はROEが8%近くで k 以下なので PER は 1÷k=11.8倍が上限で、その8.5割の10.0倍。やや楽観はROE9%台で正当化PER(約12.2倍)の約9割、楽観は11%で13.1倍の9.5割。やや悲観・悲観は構造的な負けとして9.0倍(悲観は25億円÷k=約290億円の内側)。今のPERは約34倍、PBRは0.8倍だが、これらは倍率の根拠にしていない。k を1%上げて9.5%にすると、中立のPERの上限は1÷k=10.5倍に下がる。3行統合は比率が決まっておらず、中立では効果を半分だけ数え、持ち分の薄まりは悲観側に書いた。銀行は店舗を借りて営むが、リースの影響は軽く、新リース会計の形の変化は10年後の数字に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.26→12.86 倍・やや楽観 PER 10.67→12.01 倍・中立 PER 10→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2。β・規模は使わない)。同じ北東北の秋田銀行と同じ値にした。秋田は人口減が全国最大で寿命が厚く、プロクレアは人口減で秋田に及ばない代わりに自己資本が薄く借金の欄で厚くした。個別のリスク(3行統合の比率、債券の評価損)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は0。