結論
じもとホールディングスは、仙台銀行(宮城)ときらやか銀行(山形)を傘下に持つ地方銀行グループだ。2026 年 3 月期の純利益は 26 億円、2027 年 3 月期の予想は 36 億円まで戻る。筆者の見方では、10 年の本源価値は今の時価総額を大きく下回る。
理由は資本の構造にある。会社の純資産 877 億円のうち、普通株に帰属するのは約 94 億円で、残る 780 億円は国(整理回収機構)が持つ公的資金の優先株だ。優先株は普通株に先立つ請求権で、返せなければ市場価格に連動した価格で普通株に替わる。会社全体の価値が 780 億円を下回る限り、既存の普通株主に残るのは 1 割ほどだ。
中立の 10 年後も、会社全体の ROE は 3.5% で資本コスト 8.75% に届かない。利ざやの回復と SBI との連携が追い風だが、評価差額金の赤字が自己資本の 26%、山形県の人口が 2050 年に 3 分の 1 減ることが重しになる。
筆者なら、優先株の整理の道筋(返済か、転換の条件の変更)が示されるまで買わない。今の値段は、整理がうまく進む場合だけを織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、一見安いが、優先株が先にいる順番の悪い株だ。
普通株の PER は 7 倍弱で、見た目は割安だ。しかし、会社全体の純資産 877 億円に対して、普通株の取り分は 94 億円にすぎず、時価総額 163 億円は普通株の純資産の 1.7 倍に当たる。会社全体で見ると、純資産の 2 割に満たない値段で、優先株が先に請求する。
事業の儲け口は広がらない。山形県の人口は 2050 年に 3 分の 1 減り、ROE は 10 年後も資本コストに届かない。利益が増えても、優先株の請求が先なので、普通株主の取り分は薄いままだ。
筆者なら、優先株の整理の道筋が示されるまで待つ。例えば、国が優先株を割り引いて売却する、SBI が優先株を買い取る、返済の原資が積み上がる、といった動きが確かめられれば、見方は変わる。
逆に、整理が早く進み、転換が起きずに済む形も十分にありうる。その時は、普通株の取り分は今の見積もりより大きくなる。今の値段は、その良い場合の期待を先に織り込んでいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、宮城県と山形県の貸出と、預金で集めたお金の運用だ。
連結の貸出残高は 1 兆 9,410 億円(2026 年 3 月末)で、仙台銀行が 9,932 億円、きらやか銀行が 9,509 億円。預金は譲渡性預金を含めて 2 兆 2,859 億円で、個人預金が中心になる。貸出に回らない分は有価証券 3,496 億円で運用し、評価損の解消に中長期で取り組んでいる。
手数料は役務取引等利益で 26 億円、本業の柱ではない。経費は 224 億円で、収益の大半が経費に消える。
2026 年 3 月期の経常利益は 31.6 億円、純利益は 25.8 億円だった。2027 年 3 月期の予想は経常利益 40 億円、純利益 36 億円で、利ざやの回復を見込む。
グループの歴史は重い。2023 年 3 月期と 2024 年 3 月期に、取引先の倒産とコロナ後の与信費用、債券の評価損で、2 期合計 300 億円を超える赤字を出した。2023 年に、コロナ特例の公的資金 180 億円(E 種優先株)を受け、SBI グループが追加の資本参加をした。
会社の戦略は、中小企業支援の深化、業務変革(DX)、経営管理で、SBI グループとの資本業務提携を軸にする。目指す姿は「黒字回復、復配、公的資金の返済」で、返済の時期は見直しの協議中だ。
株主の面では、整理回収機構が優先株のすべてを持ち、SBI 地銀ホールディングスが普通株のおよそ 3 割強を持つ筆頭株主になっている。
優良さと弱いところ
良さは回復の勢いにあり、弱さは資本の構造にある。
良い点は、2025 年 3 月期に黒字へ戻り、2026 年 3 月期にさらに増益だったことだ。金利のある世界の恩恵で貸出の利息収入が増え、預金利息の増加を上回った。仙台銀行は貸出を伸ばしており、宮城は人口の減りが比較的小さい。SBI グループとの連携で、システムやサービスの導入が進む。
弱い点は三つある。一つ目に、純資産のうち普通株に帰属するのは約 94 億円で、残りの 780 億円は優先株。普通株の取り分は薄く、利益の増減が少し動くだけで株価が大きく振れる。二つ目に、その他有価証券の評価差額金の赤字が 233 億円と、自己資本の 26% に達する。三つ目に、山形県の人口は 2050 年に約 33% 減り、きらやか銀行の地盤は細る。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 +0.25%(仙台は七十七銀行、山形は山形銀行などに次ぐ 2 番手)、借金 +0.25%(単純な自己資本比率 3.5%、評価差額金の赤字が 15% 超)、寿命 +0.25%(2 県の人口減は貸出の加重で約 27%)の合計 +1.25%、k は 8.75% とした。公的資金の優先株による希薄化は、k に足さず、既存株主の取り分の係数で表した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行の「金利のある世界」は、2024 年の政策金利の解除から始まった。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、地銀の貸出の利ざやは今より 0.4〜0.5% ほど高い水準で安定する。
一方で、国債や外債などの債券は、金利が上がると評価損が出る。じもとホールディングスは評価差額金の赤字が 233 億円あり、今後の金利の道筋次第で広がる。満期まで持てば元本が戻るので、時間とともに縮む。
貸出の需要は、人口の減る地方では名目で物価並みにしか伸びない。山形県は 2050 年に人口が約 33% 減り、宮城県は約 20% 減る。仙台は東北の中心で比較的底堅いが、七十七銀行が最大手として厚い。山形では山形銀行、荘内銀行などと競り合い、貸出の利ざやは競争が決める。
再編は構造の変化だ。東北では北東北の地銀 3 行が統合へ向かい、SBI グループは地銀との提携を広げている。小さな銀行は、システム費用の負担から単独では ROE が上がりにくい。10 年の見立てでは、利ざやで利益は伸びるが、規模の小さなグループの ROE は 3〜5% にとどまる。分かれ目は、SBI との連携が収益に変わるか、公的資金の整理が進むかだ。
資本政策と M&A
資本の使い方は、普通株の配当を低く抑え、公的資金の優先株への配当を定款どおり払う形だ。
普通株の配当は 2025 年 3 月期に復配し、その後は年間の配当を据え置いている。配当性向は 5% 台と低い。優先株の配当は、預金保険機構が公表する資金調達コスト(0.23%)に連動しており、2027 年 3 月期は金利の上昇につれて増える見込みだ。
資本の重しは二つある。一つは評価差額金の赤字で、前期末の 253 億円から 233 億円に縮んだ。もう一つが優先株 780 億円で、返済の時期は見直しの協議中だ。きらやか銀行の公的資金 200 億円の返済は、2024 年に予定していたが困難と判断され、期日が延びた。
優先株は、市場価格に連動した価格で普通株に替えられる。転換の価格には下限があり、株価が下限を大きく下回ると、普通株の数が一気に増える。B 種・C 種・E 種の下限は、今の転換価格のおよそ 4〜5 割だ。E 種の取得請求期間は 2048 年 9 月末まで続く。
筆者は、普通株主が優先株の整理に応じるか、条件が少数株主に不利になるかを重く見る。SBI は普通株の約 3 割強を持ち、整理の主導権を握るが、その利害は少数株主と同じとは限らない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
収益は回復途上にあり、まだ伸びる。2026 年 3 月期の経常利益は 31.6 億円、2027 年 3 月期の予想は 40 億円で、金利のある世界が地銀の利ざやを広げる。2023 年と 2024 年の大幅な赤字は、取引先の倒産とコロナ後の与信費用、債券の評価損による一時の損失で、すでに処理が進んでいる。評価差額金の赤字は前期末の 253 億円から 233 億円に縮み、満期で戻る。SBI グループは普通株の約 3 割強を持つ筆頭株主として、システム、半導体工場、資金面で支援する。公的資金の優先株は、普通株の配当を低く抑えたままでも定款どおり配当が払われ、国が急いで取り立てる動きはない。転換の価格は市場価格に連動するので、株価が上がれば新株の数は減る。経営が安定し、評価損が解消に向かえば、国は返済を受け入れ、普通株の取り分は大きく残る。時価総額は 163 億円と、会社全体の純資産のわずか 2 割弱だ。期待どおり整理が進めば、普通株の値段は今より上にある。
慎重な見方
資本の順番が悪い。会社全体の純資産 877 億円のうち、普通株は 94 億円で、残り 780 億円は国の優先株だ。優先株は市場価格に連動した価格で普通株に替わり、下限は今の転換価格の 4〜5 割にとどまる。会社全体の価値が 780 億円を下回ると、新株が一気に増え、普通株主に残るのは 1 割ほどになる。10 年後の会社全体の ROE は中立でも 3.5% で、資本コスト 8.75% に届かず、ためた利益は額面ほどの価値がない。評価差額金の赤字は自己資本の 26% で、金利がさらに上がれば広がる。山形県の人口は 2050 年に 3 分の 1 減る。きらやか銀行の公的資金の返済は、2024 年の予定が困難と判断され、期日が延びた。優先配当は金利につれて増え、普通株の取り分をさらに削る。SBI は整理の主導権を握るが、少数株主の利益とは限らない。2023 年からの大幅な赤字は、同じ構造が再び来うることを示している。時価総額は優先株が転換した後の姿を織り込んでおらず、今の株価は優先株の影響を見落としている。
どちらに重みを置いたか
利ざやの回復で収益は伸びるが、優先株 780 億円が普通株に先立つため、本源価値は今の時価総額を大きく下回る。転換後の取り分を全筋書きで 1 割と置き、悲観に 10%、やや悲観に 25% を置いた。優先株の整理の道筋(国の割引売却、SBI による買い取り、返済の原資)が示されれば、取り分の係数を上げて見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 139 円37 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 35 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 83 円22 億円、今との差 −85.1%、 期待の年率 −11.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 285 円76 億円 | 52 円14 億円 | −39.6% | −4.9% | 27 円7 億円 |
| やや楽観 | 17% | 208 円56 億円 | 45 円12 億円 | −54.6% | −7.6% | 43 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 162 円43 億円 | 37 円10 億円 | −64.2% | −9.8% | 80 円21 億円 |
| やや悲観 | 25% | 49 円13 億円 | 28 円8 億円 | −86.2% | −18.0% | 19 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 37 円10 億円 | 13 円4 億円 | −90.9% | −21.3% | 5 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 139 円37 億円 | 35 円9 億円 | −68.8% | −11.0% | 174 円47 億円 |
今の株価時価総額 558 円149 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:金利の追い風と SBI 連携が重なり、収益が計画を大きく超える 利益 67 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 285 円76 億円
短期金利が 2% に定着し、変動金利の貸出の利ざやが広がる。預金は仙台と山形の個人預金が支え、調達コストの上昇は想定を下回る。事業性貸出は仙台を中心に年 3.5% 近く伸び、1.85 兆円まで増える。SBI の半導体工場の誘致や資金提供の連携が、宮城と山形の取引先の業況を押し上げる。有価証券は評価損が満期で縮み、運用の収益が戻る。手数料は預かり資産とともに伸びる。経費は物価と賃金の上昇で増えるが、システム統一と店舗再編の効果で率は下がる。与信費用は景気の山と谷を均した低めの水準に収まる。会社全体の純利益は 66 億円に届く。優先株の一部が現金で返されても、その分は会社の価値から引かれるので、既存株主の取り分の係数は変わらない。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.9(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 315 億円・営業利益 63 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 115 億円・営業利益 14 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 38 億円・営業利益 13 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.5(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 41 億円・営業利益 5 億円。n
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 760 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復に SBI との連携の効果が重なる形。実績の乏しい筋書きなので 8% にとどめた。
やや楽観 17% やや楽観:利ざやの広がりが想定どおり出て、会社の計画に近づく 利益 49 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 208 円56 億円
利ざやは短期金利 2% の定着で広がり、預金金利も遅れて追うが、広がりの大半は銀行に残る。事業性貸出は年 2.5% 前後、個人貸出は 2% 前後で伸び、貸出残高は 2.4 兆円を超える。有価証券の評価損は時間とともに縮み、債券の売却損が出る年は減る。手数料は預かり資産とともに緩やかに増える。県内の再編は進まず、2 行体制が続く。経費は物価で増え続けるため、利益率の改善は小さい。純利益は 49 億円まで伸び、優先配当と普通株の配当は少しずつ増える。人口減は織り込み済みで、仙台は底堅いが山形は細る。与信費用は低位にとどまる。自己資本は利益の積み増しで厚みを増す。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.7(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 275 億円・営業利益 47 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 101 億円・営業利益 10 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 33 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.4(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。n
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 557 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027 年 3 月期の予想(純利益 36 億円)が実績の裏づけを持つので、楽観より厚く置いた。
中立 40% 中立:利ざやは広がるが、薄い収益と人口減で ROE は資本コストに届かない十年 利益 38 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 162 円43 億円
短期金利 2%・長期金利 3% が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。山形県の人口は 2050 年に 3 分の 1 減り、宮城県でも 2 割減る見通しで、貸出は名目で年 2% ほどの伸びにとどまる。事業性貸出は 1.6 兆円、個人貸出は 0.68 兆円まで増える。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。有価証券は評価損が満期で縮むが、金利の上昇は新たな評価損も生む。経費は物価と賃金の上昇で増え、システム更新も続く。与信費用は景気の山と谷を均した水準に戻る。会社全体の純利益は 38 億円。公的資金の優先株は返済されず、優先配当は金利の上昇につれて増え、普通株の配当は少しずつしか増えない。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.6(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 243 億円・営業利益 37 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 87 億円・営業利益 8 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 30 億円・営業利益 8 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.4(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 33 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 433 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と宮城・山形の人口減が相殺する、地銀の標準的な筋書き。最も重く 40% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:金利上昇が評価損と預金流出を呼び、利益が頭打ちになる 利益 20 億円 · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 49 円13 億円
金利の上昇で、国債・外債の評価損がさらに膨らむ。含み損は今すでに 230 億円を超え、売却を先送りすれば運用の収益が伸びない。預金金利は競争で上がり、利ざやの広がりは想定の半分に削られる。事業性貸出は年 1% 台の伸びにとどまり、個人貸出は住宅ローンの競争で薄利のまま横ばいになる。山形の中小企業の業況悪化で与信費用が上振れする。経費は物価で増え続けるため、利益率は下がる。会社全体の純利益は 20 億円まで下がり、優先配当は増えるが普通株の配当は据え置かれる。自己資本は評価損の拡大で 960 億円に減る。優先株の返済は遠のき、SBI との連携の効果も出ない。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 196 億円・営業利益 20 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.3(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.3(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。n
倍率:会社全体の ROE は 2.1% と k を大きく下回る。正当化 PER は 7.8 倍で、1 ÷ k(11.4 倍)の上限より低い。構造的に利益率が落ちるので、正当化 PER の 8 割ほどの 6.4 倍に置いた。会社全体の価値に、優先株の転換後の既存株主の取り分(0.10)を掛ける。
確率:評価損と人口減の重なりは、今の延長でも十分に起こりうるので 25%。
悲観 10% 悲観:評価損と与信費用が重なり、資本が再び削られる 利益 3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 37 円10 億円
構造的に負ける筋書き。金利が速く上がり、保有債券の評価損がさらに自己資本を削る。山形の人口減で貸出が縮み、与信費用が急増して利益はほとんど出ない。預金が上位行・ネット銀行へ流れ、調達コストが上がる。配当は普通株も優先株も削られ、会社全体の自己資本は 700 億円まで減る。自己資本比率の低下で、再編や増資を迫られる。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になる。値段は、会社全体で今の自己資本のおよそ 1 割という床で決まる。事業の稼ぐ力そのものが、この床を下回る。景気が戻っても、2 県の人口減の地盤では貸出が戻らない。
- 法人・公共向け貸出:数量 1.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 144 億円・営業利益 3 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.3(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。n
- 手数料・預かり資産:数量 0.3(預かり資産残高(兆円))× 価格 0.01(実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、会社全体の今の自己資本(876 億円)に掛け目 0.114 を掛けた 100 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、自己資本比率が 3.5% と薄く、評価差額金の赤字が自己資本の 26% に達し、優先株が普通株に先立つため。純利益 ÷ k は 31 億円で、これを上回る床にはしない。会社全体の価値に、優先株の転換後の既存株主の取り分(0.10)を掛ける。
確率:2023 年から 2024 年の大幅な赤字(2 期で 300 億円超)が実際に起きており、再発の確率として 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
宮城県(仙台銀行)と山形県(きらやか銀行)の中小企業・事業性融資、地方公共団体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 0.01 | 178 | 21 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 0.02 | 243 | 37 |
取り方:連結の貸出金残高は 1 兆 9,410 億円(2026 年 3 月末、決算短信。きらやか 9,509 億円、仙台 9,932 億円)。個人向けを約 3 割と置き、事業性・公共向けを 1.37 兆円と推定した。貸出金利息 276 億円から預金利息を引いた貸出の利ざやを 1.3% と置き、経費配分後の利益率は 12%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 31.6 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・アパートローン・カードローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 0.01 | 62 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 0.01 | 87 | 8 |
取り方:決算短信は消費者ローン(住宅ローン等)の増加を貸出増の要因に挙げる。個人向けを約 5,700 億円と推定し、競争が厳しい住宅ローン中心なので利ざやを 1.08% と薄く置いた。経費配分後の利益率は 6%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 31.6 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信などの運用と日銀預け金。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 26 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.01 | 30 | 8 |
取り方:有価証券残高は 3,496 億円(2026 年 3 月末、決算短信。前期末比 129 億円減)。有価証券利息配当金 15.8 億円と預け金利息 11.0 億円から国債等の売却損を引いた分を、運用の収益 0.75% と置いた。評価差額金の赤字は別に自己資本の側で数える。経費配分後の利益率は 20%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 31.6 億円に合わせた。
手数料・預かり資産
投信・保険の販売、為替・振込、ローン関連の手数料。
| 数量預かり資産残高(兆円) | 価格実効手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預かり資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 26 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.01 | 33 | 2 |
取り方:役務取引等利益は 25.7 億円(決算短信、役務取引等収益 64.8 億円から費用 39.1 億円を引いた額)。預かり資産を約 3,000 億円と推定して見かけの率 0.86% とした。人件費の比重が高く経費配分後の利益率は 5%。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 31.6 億円に合わせた。
リスクと懸念
公的資金の優先株の転換
優先株 780 億円は、普通株に先立つ請求権。市場価格に連動した価格で普通株に替わり、下限は今の転換価格の 4〜5 割。会社の価値が 780 億円を下回る限り、既存株主の取り分は 1 割ほどに削られる。
評価差額金の赤字が広がる
保有債券の評価損は、金利が上がると広がる。2026 年 3 月期で約 233 億円の赤字は自己資本の 26%。資本が薄いため、配当や整理の交渉力に響く。
山形県の人口減
2050 年の人口は 2020 年比でおよそ 33% 減る見通し。きらやか銀行の貸出は名目でも物価並みにしか伸びない。
SBI との利害
SBI は普通株の約 3 割強を持つ筆頭株主で、整理の主導権を握る。その利害は少数株主と同じとは限らない。
与信費用の再発
2023 年から 2024 年は、取引先の倒産と与信費用で 2 期合計 300 億円を超える赤字を出した。同じ構造が再び起きれば、資本が削られ、優先株の影響が大きくなる。
預金の流出と調達コスト
上位行・ネット銀行・信用金庫との預金集めの競争で、預金金利の引き上げ圧力が強まる。広がるはずの利ざやが削られる。
今後の分かれ目
- 国が優先株を割り引いて売却する、または SBI が買い取る方針が示される
- 普通株の取り分の係数が上がり、本源価値は大きく上へ動く。筋書きを組み直す。
- 評価差額金の赤字が 150 億円を割って縮む
- 自己資本比率が上向き、配当の増額余地が広がる。やや悲観側の確率を下げる。
- 普通株の株価が優先株の下限の転換価格を大きく超えて上がる
- 転換で出る新株の数が減り、既存株主の取り分の係数が上がる。
- 預金金利が貸出金利の上昇に追いつき、利ざやの広がりが止まる
- 利益の伸びが鈍り、やや悲観側の確率が上がる。
- 与信費用が純利益の 5 割を超える年が続く
- 悲観側の確率を上げ、優先配当と普通株の配当の見直しを疑う。
見ておくもの
- 優先株の整理(返済・割引売却・転換条件の変更)の発表
- 評価差額金の赤字と自己資本比率の推移
- 貸出の利ざやと預金金利の上がり方
- 与信費用の水準と山形県の倒産件数
- SBI グループとの連携の成果
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から会社全体の自己資本と ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の普通株の PER 7 倍弱、会社全体の PBR 0.19 倍は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。優先株 780 億円が普通株に先立つ点は、既存株主の取り分の係数(0.10)で別に表し、倍率に混ぜていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.3→11.43 倍・やや楽観 PER 8.5→11.43 倍・中立 PER 7.8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。優先株による希薄化と評価損は k に足さず、筋書きと既存株主の取り分の係数で表した。