結論
東和銀行は、群馬県を地盤に埼玉・栃木にも店を持つ地方銀行だ。貸出は1.6兆円、預金は2.2兆円。筆者の結論は、今の値段は稼ぐ力に比べてやや高い、というものだ。
2026年3月期は、保有債券の入れ替えで売却損を約360億円出し、純損益は245億円の赤字になった。含み損をすでに抱えていた債券を損として確定させただけで、自己資本はほぼ変わらず約900億円を保った。今期は純利益55億円に戻る計画だ。
強みは、群馬という工業の厚い県で、地元の中小企業に深く入っていることだ。県内には群馬銀行という巨大な首位がいて、東和は2番手の立場になる。金利が上がる局面では貸出の利息が増えるが、東和は預金も多く、利ざやの伸びは限られる。
弱みは資本の薄さだ。単純な自己資本比率は3.5%で、自己資本比率(国内基準)は6.6%。還元に回せる余力は小さい。SBIグループとの提携と、北関東の銀行との費用の共同化が、収益力を引き上げる唯一の大きな手がかりになる。筆者は買収や再編の期待は値段に織り込まず、事業の稼ぐ力だけで測った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この銀行を「資本を稼ぐ力に変えるのが苦手な会社」として見るかどうかが分かれ目になる。
良い点は、群馬という工業県に、2番手でも深く入っていること、PBR0.57倍と自己資本の厚みに比べて値段が安いこと、債券の入れ替えで金利上昇の傷を先に出し切ったことだ。会社は計画を上げ、今期は黒字に戻す構えだ。
悪い点は、ROEが過去10年の中央値3.2%と低く、資本コストを継続して稼いだ実績が乏しいことだ。目標を出して外す癖もある。自己資本比率が薄く、成長にも還元にも使える余裕が小さい。県内の首位が統合で大きくなる中、価格を決める力は弱い。
筆者の判断は、安い理由が資本効率の低さにある以上、割安とは言えない、というものだ。確率は、中立に3割、悲観側を合わせて4割を置いた。再編の期待は織り込んでいない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、群馬県内の中小企業向けの貸出だ。製造業、運輸業、不動産業が主な取引先で、貸出全体は1.65兆円ある。そのうち事業性の貸出と地方公共団体向けを合わせて約1.05兆円、個人向けの住宅ローンなどを約0.6兆円と、筆者は推定した(開示の内訳ではない)。
預金は2.17兆円で、貸出を大きく上回る。余った預金は国債・外債・投資信託などで運用する。その有価証券は、期末に0.41兆円と、1年前より0.12兆円減った。入れ替えで残高が縮んだためだ。この運用が、金利上昇期には貸出と並ぶ稼ぎの柱になる。
手数料の収入は、投資信託・保険の販売、法人向けの決済・為替・コンサルティングが中心だ。全国の地銀と同じく、NISAの拡充で預かり資産は増えているが、1件あたりの手数料率は競争で下がりやすい。
地盤は群馬県だが、埼玉県北部(熊谷・深谷・本庄など)と栃木県南部にも店を持つ。県境をまたぐ工業地帯は、人口が減る中でも製造業の集積が厚い。会社自身は、経費率(OHR)を中期経営計画の最終年度に65%まで下げ、中期の目標を2027年3月期のコア業務純益67億円(5月に63億円から引き上げ)と置いている。
優良さと弱いところ
堀は、ある。ただ、広くはない。
群馬県には店舗網と顔の見える取引という地盤がある。県内の事業所数が多く、製造業の資金需要が途切れにくいことも支えになる。ただ、県内の貸出シェアは群馬銀行が圧倒的な首位で、東和は2番手の位置にある。貸出の金利は首位に引きずられ、自分では決めにくい。さらに首位の群馬銀行は、第四北越FGとの統合を決めており、広域で規模を持った相手と戦う局面が続く。
経営の動きは、積極的だ。2020年にはSBIグループと資本・業務の提携を結び、持分は最大で1%と小さいが、地銀連合の5行目という位置づけを得た。経費の共同化も、北関東の銀行との間で動いている。一方、中期経営計画の前の期はコア業務純益の目標を外している。目標を出して外す癖が、今の計画にも続くかは、数字で確かめる必要がある。
資本は、薄い。2026年3月の債券の入れ替えで、自己資本比率(国内基準)は9.75%から6.77%に下がった。単純な自己資本比率は3.7%で、2026年6月には3.5%になった。筆者はこの薄さを、k(資本コスト)の借金の項目ではなく、筋書きの中の還元の少なさと悲観側の確率で表した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行は「金利のある世界」の入り口にいる。短期金利が2%に向けて上がる間は、変動金利の貸出の利息が先に増え、預金の利息は遅れて増える。短期2%・長期3%で落ち着けば、広がった利ざやは今より高い水準で定着する。
東和が戦う群馬県の貸出市場は、首位の群馬銀行が圧倒的で、その下に東和、足利銀行、信用金庫が並ぶ。県の人口は2050年にかけて2割ほど減る見通しで、貸出の伸びは名目で物価並みか、やや下にとどまる。製造業の集積があるため、東京や埼玉に近い南部の需要は残る。
再編は、東和の最大の変数だ。群馬銀行は第四北越FGとの統合が決まっており、北関東・甲信越に大きな規模のグループが生まれる。東和の側にも、SBIグループを軸にした提携の選択肢がある。統合の相手と条件によって、経費の削減余地が大きく変わる。
システム投資と人件費は、毎年約3%ずつ上がる世界では、規模の小さい銀行ほど重い。東和は経費の共同化で対応するが、効果が出るまで数年かかる。AIの活用で窓口と事務の人手が減る点は、地銀全体の追い風になる。
資本政策と M&A
資本は、この銀行の価値を決める最大の変数だ。2026年3月に債券の入れ替えで売却損を約360億円出した。その損は、以前から評価損として自己資本に入っていたもので、確定させても自己資本の総額はほぼ変わらなかった。ただ自己資本比率(国内基準)は9.75%から6.77%に下がり、会社の想定の7%程度をやや下回った。
配当は、2026年3月期の水準から今期は約4割増やす計画だ(配当性向32%)。株主還元は自社株買いを含めて30%以上が方針で、今期の配当総額は約18億円になる。
自己資本は853億円(2026年6月)で、時価総額は488億円だ。PBRは0.57倍で、市場は稼ぐ力を自己資本の6割弱でしか見ていない。会社は、ROE目標を3.7%から6.4%に引き上げたが、資本コスト(会社は7%と認識)にはまだ届かない。
増資の可能性は、今の自己資本比率では高くない。ただ、悲観の筋書きで与信費用が膨らめば、配当の削減か資本の補強が必要になる。筆者はこれを悲観の確率と、還元の少なさで織り込んだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期は赤字だが、中身は将来に持ち越すはずだった傷を先に出しただけだ。債券の入れ替えで、金利上昇の傷を一度に出し切った。残りの債券は利回りの高いものに替わり、今期から運用の収益が戻る。会社の計画では、純利益55億円(前期は245億円の赤字)、ROE6.4%だ。
金利が上がる局面では、預金の多い銀行ほど貸出と運用の両方で利息が増える。東和の預貸ざやは、2020年代前半までの異常な低さから、数年で正常に近づく。
SBIグループとの提携と、北関東の銀行との経費の共同化が動き出している。人口が減る群馬でも、製造業の集積は厚い。PBR0.57倍は、自己資本の厚みに比べて安い。仮に今期の計画どおり55億円を稼げば、時価総額488億円の1割強を1年で稼ぐ計算になる。再編の選択肢が複数あることも、株主には追い風になりうる。経費の共同化が実れば、売上が伸びなくても利益は伸びる。配当を計画どおり増やせれば、市場の見方も変わる。
慎重な見方
過去10年の自己資本利益率の中央値は3.2%で、資本コストを稼いだことがほとんどない。今期の黒字転換も、債券の入れ替えで利回りを高めた効果が大きく、本業の力が上がったとは言い切れない。
自己資本比率は薄く、成長にも還元にも使える余裕が小さい。景気が悪化して与信費用が増えれば、配当の削減か増資を迫られる。県内の首位が統合で大きくなる中、東和は貸出の金利を自分で決められない。
中期経営計画の目標を外してきた実績もある。今の値段が安く見えるのは、安いだけの理由があるからだ。再編や提携への期待で上がった株価は、期待が外れれば元に戻る。県内の人口は減り、住宅ローンの競争は厳しい。金利の追い風も、預金金利が追いつけば一巡する。資本効率の低い銀行は、追い風が止まると評価が戻りやすい。債券の入れ替えで利回りを上げた分は、金利が逆に動けば同じ形で傷になる。貸出の伸びも、人口減の県では物価に届かず、実質では縮む。利益の増加を、配当ではなく資本の補強に回す期間が長引くことになる。
どちらに重みを置いたか
金利の追い風と、入れ替えで傷を出し切った点では、強気の見方に分がある。一方、資本効率の低さと、首位との競争で価格を決められない弱みは、慎重な見方のほうが具体的だ。
確率は、中立に3割を置き、楽観側を合わせて3割、悲観側を合わせて4割とした。悲観を軽くしなかった理由は、資本の薄さが景気の悪化と重なったときの傷の深さだ。楽観を大きくしなかった理由は、10年の実績に資本コストを稼いだ年がほとんどないことだ。
結果は「やや割高」。再編や買収の期待は織り込んでいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,729 円615 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 847 円301 億円)。 今の値に割り戻すと 1,328 円472 億円、今との差 +5.9%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,222 円1,145 億円 | 1,294 円460 億円 | +260.1% | +13.7% | 406 円144 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,617 円930 億円 | 1,125 円400 億円 | +198.4% | +11.6% | 786 円279 億円 |
| 中立 | 30% | 2,170 円772 億円 | 928 円330 億円 | +147.1% | +9.5% | 930 円330 億円 |
| やや悲観 | 24% | 673 円239 億円 | 675 円240 億円 | +7.5% | +0.7% | 324 円115 億円 |
| 悲観 | 16% | 480 円171 億円 | 338 円120 億円 | −34.8% | −4.2% | 131 円46 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,729 円615 億円 | 847 円301 億円 | +105.4% | +7.5% | 2,576 円916 億円 |
今の株価時価総額 1,254 円446 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 提携の効果で経費率が下がり、ROEが資本コストに迫る十年 利益 96 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,222 円1,145 億円
SBIグループとの提携と北関東の銀行との共同化が実り、システムと本部の費用が大きく下がる。経費率(OHR)は今の65%から50%台前半に向かい、物価で経費が上がる世界でも利益の伸びが売上の伸びを上回る。
短期金利は2%で落ち着き、貸出の利ざやは今より広いまま定着する。群馬の製造業の設備投資と、埼玉・栃木の需要を取り込み、法人貸出は名目で年3.3%ほど伸びる。住宅ローンは競争が厳しいが、利ざやは物価並みに上がる。
債券は高い利回りに入れ替わったあと、満期までの利息が積み上がる。手数料は預かり資産とともに伸びる。与信費用は平常の水準にとどまり、純利益は100億円近くまで増える。自己資本が薄いまま配当性向を5割台に上げられるため、ROEは9%近くに届く。
- 法人貸出:数量 1.4(事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 170 億円・営業利益 82 億円。残高 1.45 兆円(名目)× 利ざや 1.17%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 73 億円・営業利益 26 億円。残高 0.76 兆円(名目)× 利ざや 0.97%
- 有価証券・市場運用:数量 0.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.8%(運用利回り-調達(%))→ 売上 36 億円・営業利益 27 億円。残高 0.47 兆円(名目)× 運用ざや 0.75%
- 手数料・資産運用:数量 1.2(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 76 億円・営業利益 27 億円。残高 1.16 兆円(名目)× 手数料率 0.65%
倍率:事業の純利益 96 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.93 倍、時価総額 1,145 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:提携と経費の共同化が計画どおりに実り、金利も追い風になる姿。計画を外してきた実績と資本の薄さから、確率は9%にとどめた。
やや楽観 21% 金利の追い風が定着し、経費の削減が着実に進む十年 利益 79 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,617 円930 億円
短期金利が2%で落ち着き、預貸ざやは今より広い水準で保たれる。群馬の製造業は堅調で、法人貸出は名目で年3.1%、個人貸出は年2%ほど伸びる。債券の運用利回りも上がり、運用の収益が貸出と並んで利益を支える。
経費の共同化は一部しか進まないが、本部機能の集約とデジタル化で、経費の伸びを物価の3%より低く抑えられる。経費率は50%台後半に下がる。与信費用は平常で、純利益は80億円近くに増える。
還元は配当性向を4割前後まで高められるが、自己資本比率を保つために、成長に使う分も要る。ROEは7%台後半まで上がるが、資本コストには届かない。東和は普通の地銀として、着実に稼ぐ十年になる。
- 法人貸出:数量 1.4(事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 167 億円・営業利益 73 億円。残高 1.43 兆円(名目)× 利ざや 1.17%
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 70 億円・営業利益 22 億円。残高 0.74 兆円(名目)× 利ざや 0.95%
- 有価証券・市場運用:数量 0.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.7%(運用利回り-調達(%))→ 売上 33 億円・営業利益 25 億円。残高 0.46 兆円(名目)× 運用ざや 0.72%
- 手数料・資産運用:数量 1.1(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 73 億円・営業利益 23 億円。残高 1.12 兆円(名目)× 手数料率 0.65%
倍率:事業の純利益 79 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 930 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近く、金利の追い風が着実に実る姿。楽観側のなかでは最も起こりやすく、2割強を置いた。
中立 30% 利ざやは定常化し、東和は平均的な地銀として稼ぐ十年 利益 66 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,170 円772 億円
短期金利2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。群馬県の人口は減るため、法人貸出は名目で年2.5%、個人貸出は年2%と、物価の3%を下回る伸びにとどまる。実質では貸出は縮む。
広がった利ざやの一部は、預金金利の引き上げと、首位の群馬銀行に引きずられた貸出金利の競り合いで消える。経費は物価と賃金に合わせて上がるが、共同化とデジタル化で、経費率は60%前後まで下がる。与信費用は平常で、年30億円台前半が続く。
純利益は65億円ほどまで増える。自己資本はこれに合わせて厚くなるが、還元は3割台に抑えざるをえない。ROEは6%強で、資本コストに届かない。東和は傾かないが、資本を稼げない地味な十年になる。
- 法人貸出:数量 1.4(事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 161 億円・営業利益 64 億円。残高 1.41 兆円(名目)× 利ざや 1.14%
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 68 億円・営業利益 18 億円。残高 0.73 兆円(名目)× 利ざや 0.93%
- 有価証券・市場運用:数量 0.5(有価証券残高(兆円))× 価格 0.7%(運用利回り-調達(%))→ 売上 33 億円・営業利益 23 億円。残高 0.45 兆円(名目)× 運用ざや 0.72%
- 手数料・資産運用:数量 1.1(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 70 億円・営業利益 20 億円。残高 1.09 兆円(名目)× 手数料率 0.64%
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 772 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も確からしい姿として最大の確率を置いた。過去10年のROEの低さと会社の計画の両方を反映した。強い堀は無いので、3割にとどめた。
やや悲観 24% 群馬の競争と人口減で、利ざやが思ったほど残らない十年 利益 34 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 673 円239 億円
群馬銀行の統合が済み、規模の差が広がる。貸出の金利は首位に引きずられ、東和は新規の貸出を取るために値引きを強いられる。預金金利の追随も早く、預貸ざやの拡大は期待の半分にとどまる。
法人貸出は名目で年2.5%に届かず、人口減の影響で個人貸出はほぼ横ばいになる。経費の共同化は進むが、人件費とシステム費の上昇に消え、経費率は60%台前半で止まる。与信費用は景気の谷で膨らみ、年40億円を超える年が出る。
純利益は30億円台前半にとどまり、ROEは4%に届かない。配当性向は6割台に上げても、配当額は計画より小さい。自己資本の厚みは保てるが、稼ぐ力は伸びず、市場は自己資本の3割ほどでしか評価しない。
- 法人貸出:数量 1.3(事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 142 億円・営業利益 47 億円。残高 1.34 兆円(名目)× 利ざや 1.05%
- 個人貸出:数量 0.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 60 億円・営業利益 13 億円。残高 0.69 兆円(名目)× 利ざや 0.88%
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.7%(運用利回り-調達(%))→ 売上 27 億円・営業利益 18 億円。残高 0.41 兆円(名目)× 運用ざや 0.66%
- 手数料・資産運用:数量 1.0(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 59 億円・営業利益 13 億円。残高 0.97 兆円(名目)× 手数料率 0.60%
倍率:10年後のROE3.5%(純利益34億円÷自己資本984億円)。ROEはk8.5%以下で、ためた利益は額面を大きく下回る価値になる。PERの上限1÷k=11.8倍に対し、7.0倍に置いた。
確率:東和の競争力が地元で弱まり、利ざやが伸びない姿。群馬の人口減と首位の統合は現実の動きなので、やや楽観と同じく2割台前半を置いた。
悲観 16% 競争に負けて与信費用が膨らみ、稼ぐ力がほぼ消える十年 利益 6 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 480 円171 億円
景気の悪化と地元製造業の不振が重なり、与信費用が年60億円を超える年が続く。貸出は伸びず、量を保つために金利を下げる。債券の評価損が再び膨らみ、薄い自己資本を削る。
経費の共同化も実らず、経費率は70%近くに戻る。配当は無配に近づくまで削られ、純利益は10億円に満たない。自己資本比率(国内基準)が規制の4%に近づくと、増資や他行との統合を迫られる。そのとき株主は、薄まる形での条件を受け入れることになる。
本業の稼ぐ力が消えるため、価値は事業の純利益ではなく、今の自己資本に掛け目をかけた水準まで落ちる。売れる資産が自己資本を上回っても、少数株主は清算を求められない。ROEは1%を割り、市場は自己資本の2割でしか評価しない。
- 法人貸出:数量 1.2(事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 108 億円・営業利益 26 億円。残高 1.21 兆円(名目)× 利ざや 0.89%
- 個人貸出:数量 0.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 46 億円・営業利益 7 億円。残高 0.60 兆円(名目)× 利ざや 0.77%
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(有価証券残高(兆円))× 価格 0.6%(運用利回り-調達(%))→ 売上 22 億円・営業利益 13 億円。残高 0.37 兆円(名目)× 運用ざや 0.60%
- 手数料・資産運用:数量 0.8(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.6%(実効手数料率(%))→ 売上 48 億円・営業利益 8 億円。残高 0.82 兆円(名目)× 手数料率 0.58%
倍率:10年後のROEは0.6%(純利益6億円÷自己資本916億円)で稼ぐ力から価値は置けない。今の自己資本853億円に0.2倍を掛け、171億円とした(地銀の悲観の目安0.45倍を、薄い資本と貸倒の厚みで下げた)。さらに、純利益÷kの68億円より高く、事業の稼ぐ力ではなく資産で値が付く姿として置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.19 倍・時価総額 170 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:構造的な負けに景気の悪化が重なる姿。資本が薄く、前の中期計画を外した実績もあるため、1割台後半を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
群馬・埼玉北部・栃木南部の中小企業、不動産業、地方公共団体への貸出。
| 数量事業性貸出+公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 0.8% | 85 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 1.1% | 161 | 64 |
取り方:貸出1.65兆円(2026年3月末)のうち、事業性と公共向けを約1.05兆円と推定した(開示の内訳ではない)。預金調達を引いた利ざやを0.81%と置き、経費配分後の利益率は24%。4区分の営業利益の合計を、2027年3月期の経常利益予想50億円に合わせた。数量は名目で、率は物価を掛けていない。
個人貸出
住宅ローン・カードローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.6 | 0.7% | 42 | 5 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 0.9% | 68 | 18 |
取り方:貸出の残りの約0.6兆円を個人向けと推定した(開示の内訳ではない)。住宅ローンは競争が厳しく利ざやは0.70%と事業性より薄い。経費配分後の利益率は12%。数量は名目、率は物価を掛けていない。
有価証券・市場運用
国債・外債・投資信託などの運用。預金のうち貸出に回らない分の運用先。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 0.6% | 24 | 16 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 0.7% | 33 | 23 |
取り方:有価証券は2026年3月末で0.41兆円(前年から0.12兆円減)。入れ替えで利回りの高い債券に替わり、運用ざやを0.60%と推定した。利益率は経費が小さいため67%。金利が上がれば再投資の利回りは上がるが、預金金利も付いていくため、10年のざやの広がりは小さく置いた。数量は名目。
手数料・資産運用
投資信託・保険の販売、法人向けの決済・為替・コンサルティング。
| 数量預かり資産+取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 0.7% | 48 | 9 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 0.6% | 70 | 20 |
取り方:投資信託・保険の預かり資産と、決済・為替などの取扱高を合わせて約0.75兆円、実効手数料率を0.65%と推定した(開示の内訳ではない)。手数料収入は約48億円で、利益率は19%。預かり資産はお金の量なので名目で伸び、手数料率はデジタル化と低コスト商品の広がりで緩やかに下がる。数量は名目。
リスクと懸念
資本の薄さと与信費用
単純な自己資本比率は3.5%、自己資本比率(国内基準)は6.6%と薄い。景気が悪化して与信費用が増えれば、配当を削るか、資本を補うことになる。再生法開示債権は397億円(2.39%)と、地銀の中でも低くはない。
群馬県内の首位との競争
県内の首位の群馬銀行は第四北越FGとの統合を決めており、規模と経費の面で差が広がる恐れがある。貸出の金利は首位の水準に引っ張られ、東和は値決めの余地が小さい。
預金金利の追随と預金流出
短期金利が2%に向けて上がる間、預金金利を上げる速度が想定を超えれば、利ざやの拡大は小さくなる。預金が貸出より多い構造は、この影響を大きくする。
保有債券の評価損
入れ替えで評価損は出し切ったが、残りの債券は金利の上昇で再び評価損が出る。薄い自己資本を直接削るので、資本の余力を左右する。
中期経営計画の未達
前の中期計画ではコア業務純益の目標を外した。今回は目標を引き上げたが、金利の追い風と債券の入れ替えの効果が剥がれれば、計画との差が出る。
再編・提携の方向
SBIグループとの提携や北関東の銀行との経費の共同化は、成功すれば収益を押し上げる。他方、統合の条件次第では、東和の株主に不利な形も起こりうる。
今後の分かれ目
- 四半期の貸出利回りと預金利回りの差が、計画より速く広がったら
- 利ざやの拡大が想定より早く出ているので、楽観側の確率を上げてよい。決算短信の利回りの推移で確かめる。
- 与信費用が計画の約17億円を大きく超えたら
- 資本の薄さが現実の傷になる。悲観側へ重みを移し、中立の確率を下げる。
- 自己資本比率(国内基準)が6%を割り込んだら
- 配当の維持が難しくなり、増資や提携による資本の補強が視野に入る。悲観の確率を上げる。
- SBIグループや北関東の銀行との提携が、資本や経費の共同化を伴う形で進んだら
- 経費率の改善が前倒しになるので、やや楽観・楽観の確率を上げる。条件が東和に不利なら、中立の価値を見直す。
- 次の中期経営計画で、ROE目標と還元の方針が示されたら
- ROEが資本コストを超え、還元が厚ければ中立の価値を押し上げる。目標が低ければ、資本効率の低さが続く見立てを強める。
- 群馬銀行と第四北越FGの統合後、県内の貸出金利が下がり始めたら
- 価格を決める力が弱いという見方が裏づけられる。やや悲観・悲観側の確率を上げ、利ざやの拡大幅を下方修正する。
見ておくもの
- 貸出利回りと預金利回りの差(預貸ざやの推移)
- 与信費用と保有債券の評価損益
- 自己資本比率(国内基準)と単純な自己資本比率
- SBIグループ・北関東の銀行との提携の進み具合
- 第四北越FGとの統合後の群馬銀行の貸出金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は、10年後のROEとk8.5%(基本7.5%+quality+1.0%)から、ROEがkを下回るため上限を1÷k=11.8倍に置き、その85%・81%・72%に当たる10.0・9.5・8.5倍とした。やや悲観は7.0倍とした。悲観は事業の稼ぐ力が消えるため、今の自己資本853億円に0.2倍を掛けた171億円に置いた。今の値段は、今期の純利益計画55億円の8.9倍で、10年の筋書きとは独立に置いた。新リース会計基準の影響は店舗を借りる分だけで小さく、10年後の数字も今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.93 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%を足してk8.5%。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。薄い自己資本、再編・提携の行方といった個別のリスクはkに足さず、筋書きと確率で表した。同じ地銀の東京きらぼしFG(k8.3%)よりやや高いのは、地盤の人口減と2番手の位置のため。