結論
琉球銀行は、沖縄県に本店を置く3つの地域銀行の一つで、県内最大級の預金と貸出を持つ。筆者の結論は、今の値段は本質価値の範囲内で、割安とも割高とも言い切れない、というものだ。金利の追い風と沖縄の強い需要を、薄い資本と観光への偏りが打ち消すからだ。
追い風は本物だ。短期金利が2%へ向かう間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。2026年3月期の純利益は91億円と前期の5割増しで、最高益を更新した。会社は次の期も100億円を見込む。
弱みは3つある。自己資本比率が4.7%と薄いこと。観光と建設に偏った県経済であること。経費がまだ重く、効率が地銀の上位に届かないことだ。県内は沖縄銀行・沖縄海邦銀行との3行体制で、貸出金利は競争で決まる。堀は普通だ。
10年後の中立の姿は、純利益が今の2倍近く、ROEは7%台後半だ。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額を数%下回る。安全域は薄い。筆者が見たいのは、利益が伸びた後の経費の削り方と資本の配り方だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を手元に置きたくなる点が2つある。県内の取引の厚みと、金利の上昇がそのまま利益になる仕組みだ。事業は預金で集めて貸す単純な仕組みで、10年先の姿も読みやすい。
気になる点も2つある。1つは資本の薄さだ。自己資本比率4.7%は、景気の谷で与信費用がふくらんだ時の余裕が小さい。もう1つは効率だ。利益が2倍になっても、経費が同じ速さで増えれば、ROEは資本コストにほとんど届かない。
本質価値の置き方は割り切っている。10年後の利益と自己資本から、稼ぐ力に見合う値段を出した。ROEが資本コストの手前にとどまる姿では、ためた利益は額面を下回る価値しか持たない。筆者が重く見るのは、この点だ。
最後の安全域は、確率で重みづけた本質価値と今の時価総額の差で見る。差は小さく、値段に見合う程度だ。安全域は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
琉球銀行は、沖縄県内に本店を置く3つの地域銀行の一つだ。稼ぎの大部分は預金と貸出にある。預金は3兆円近く、貸出は2兆円前後と見られる。残りは、預金で集めたお金を国債・社債・株式・投資信託などで運用して得る、有価証券の利息配当だ。
貸出は法人向けと個人向けに分かれる。法人は県内の中小企業と、観光・建設・不動産、自治体向けが中心だ。個人は住宅ローンとカードローンなど、生活に近い貸出になる。県内には政策金融の沖縄振興開発金融公庫もあり、大きな案件では低い金利で入ってくる。
銀行の外にも事業がある。リース、クレジットカード、信用保証、システムの子会社を抱え、手数料やリースの収益は、貸出の利ざやが薄かった時代に会社を支えた。ただ人手がかかり、利益に残る割合は小さい。2026年3月期は、カードや信用保証の収益が前期を下回った。
中期経営計画「Empower 2025」(2025年4月〜2028年3月)の柱は4つだ。預貸金と有価証券運用の強化。個人・法人のコンサルティングやキャッシュレスなど、地域課題の解決。人への投資。グループの連携と他社との提携だ。2027年度の単体コア業務純益90億円、経費率(コアOHR)70%以下を掲げ、貸出は2.2兆円まで増やす考えだ。
沖縄は離島が多く、銀行は金融だけでなく、販路づくりや人材の面でも頼られる。ただ収益の柱は、当面は預貸の利ざやだ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、県内の取引の厚みだ。県内の預金・貸出とも最大級で、店舗網と、県内の事業者との長い付き合いが土台になる。観光で潤う県の経済と一緒に、貸出も預金も名目で伸びやすい。筆者はここをいちばん評価している。
ただし堀は強くない。県内には沖縄銀行と沖縄海邦銀行がいて、中小企業向けの貸出金利は競争で決まる。公的な貸し手が低い金利で大型案件に入ることもある。値決めの力は普通だ。
資本は薄い。自己資本比率(純資産÷総資産)は4.7%で、同業の中でも低い方だ。債券の含み損や与信費用の悪化に、耐える余力が小さい。ROEは6%まで来たが、10年前は9%台、その後の長い間は4%台だった。利益が出る体質に変わったのは、ここ2年の金利上昇の力が大きい。
経費の重さも気になる。2026年3月期の経費は前期比7%増の307億円で、収益の伸びに追われる形だ。会社は経費率を70%以下へ下げる計画だが、賃上げが続く中で下げ切れるかは分からない。
経営は還元に前向きだ。配当性向40%以上を目安に、自社株買いは機動的に行うとしている。株主は信託口や投資ファンドが目立ち、県内企業との持ち合いは薄い。資本の使い方を磨く圧力は、他の地銀より強い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の銀行は、金利のある世界に入った。日銀が短期金利を2%へ上げていく間、貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れて付いてくる。この差が利益になる。2026年6月には、日銀の追加利上げを受けて、琉球銀行と沖縄銀行が普通預金金利と短期プライムレートを引き上げた。
沖縄は全国でも需要が強い。観光客は戻り、県内の景気は堅調で、人口の減り方は全国で最も緩やかだ。国の沖縄振興の予算が、建設や観光の投資を支える。貸出の数量は他の地域より伸びやすい。
同時に、この需要は偏りも抱える。観光と建設への依存が高く、台風・感染症・為替・国際情勢で観光客が減ると、取引先の資金繰りが一気に悪くなる。県民所得は低く、中小企業の体力も弱い。好況期の与信費用が小さいのは、景気が良いからだ。2026年3月期の貸倒引当金の繰入額は1億円弱と、極めて小さかった。
県内の貸出は、地銀・第二地銀が約7割、政策金融が約2割を占める。県内に本店を置く地域銀行は、琉球銀行・沖縄銀行・沖縄海邦銀行の3行だけだ。3行が合流すれば県内の大半を一社が占めるため、公正取引の面で難しい。再編の動きは県外の銀行から来る可能性が高い。
全国では、再編と資産運用の拡大が続く。ただ、沖縄は県民の金融資産が少なく、投資信託などの恩恵は本土より小さい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当性向40%以上を目安に、維持か増配を目指す方針で、自社株買いは財務の状況を見て機動的に行うとしている。中期計画では総還元性向40%程度を掲げる。利益が2倍に近づく間、この比率を上げるかどうかが、資本効率の分かれ目になる。
自己資本比率が薄いことが、還元の上限を決める。利益をためれば比率は上がるが、貸出が伸びれば元に戻る。会社は株主資本コストを6〜8%と見て、地銀の最高水準のROEを目指すと言う。実績のROEは6%で、目標との差は大きい。
政策保有株は、取締役会が毎年、採算を点検する。売却の意向を示した株主を妨げないとも明記している。圧縮を急ぐとは言っていないが、株主構成に県内企業の持ち合いが少ないことは、資本の使い方を問われやすい形だ。
大型のM&Aは見当たらない。県内の再編は規制と競争の面で難しい。kabufuの推定では、10年以内に買収される確率は18%ほどと、低めだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
沖縄は全国で最も勢いのある地域経済の一つだ。観光客は戻り、人口の減り方は全国で最も緩やかで、県内の貸出需要は強い。琉球銀行の純利益は2026年3月期に最高益を更新し、2027年3月期も100億円と、さらに上積みする計画だ。第1四半期の純利益は前年を16%上回った。
利益の伸びは、金利で決まる。短期金利が2%まで上がる間、貸出金利はほぼ全部が追随し、預金金利は4割だけ付いてくる。預貸の利ざやは構造的に広がる。2026年3月期に貸出利息は22%、有価証券の利息配当は68%増えた。安い利回りの債券が満期を迎えるたびに、高い利回りへ入れ替わる。
資本が増えれば、配当と自社株買いの余地が広がる。会社は総還元性向40%以上を掲げ、地銀最高水準のROEと、PBR1倍超を目標にする。経費率を70%以下へ下げる計画が実を結べば、ROEは10%を超える。
県内に強い競合は2行だけで、県外の銀行が入る余地も狭い。キャッシュレスや事業承継で県内の需要を取り込めば、手数料の稼ぎも育つ。筆者は、強気の見方の骨格を、数字の裏付けのある金利の話だと見ている。
慎重な見方
今の利益は、景気の良さと金利の上昇が重なった結果で、続く保証はない。沖縄は観光に頼る度合いが高く、台風、感染症、国際情勢の緊張で観光客が止まると、取引先の資金繰りが一気に悪化する。2026年3月期の貸倒引当金の繰入は1億円弱と、極めて小さい。景気が普通に戻れば、与信費用は今の何倍にもなりうる。
金利上昇の恩恵も、そのまま残るとは限らない。県内には沖縄銀行と沖縄海邦銀行がいて、貸出金利は競争で決まる。2026年3月期は預金利息が3倍になった。預金金利の上げ幅は、他行や県外のネット銀行との争いで、想定より大きくなりうる。
自己資本比率は4.7%と薄い。債券の含み損や与信費用で資本が傷むと、貸出の余力がすぐに縮む。経費は前期比7%増と重く、中期計画の経費率70%は、賃上げが続く中で届くか分からない。ROEは中立でも資本コストに届かない。
10年のどこかで景気の山と谷は1回は来る。株式市場は、金利上昇の追い風を織り込みやすい。追い風が止まった時の落差は、地方の小さな銀行ほど大きい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の方が筋は通る。金利の上昇は数量と価格の両面で効き、県内の需要も強いからだ。ただし慎重な見方が突く、資本の薄さと経費の重さは、10年のROEが資本コストの手前にとどまる形で、中立に織り込んだ。
確率は、中立に最も重みを置き、やや悲観をやや厚めにした。景気の谷が10年のうちに一度は来て、観光への偏りと4.7%の資本が傷を深くするからだ。悲観は1割台半ばとした。楽観は、条件がそろう必要があるため1割にとどめた。確率を寄せた先は、楽観ではなく、谷を一度は通る中立のやや下の筋書きだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,236 円1,738 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,317 円540 億円)。 今の値に割り戻すと 2,803 円1,150 億円、今との差 +1.4%、 期待の年率 +7.2%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,015 円3,289 億円 | 1,959 円804 億円 | +260.9% | +13.7% | 997 円409 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,096 円2,501 億円 | 1,643 円674 億円 | +180.0% | +10.8% | 1,702 円699 億円 |
| 中立 | 30% | 4,785 円1,963 億円 | 1,387 円569 億円 | +123.3% | +8.4% | 1,851 円760 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,241 円920 億円 | 1,019 円418 億円 | +17.9% | +1.7% | 782 円321 億円 |
| 悲観 | 14% | 859 円352 億円 | 707 円290 億円 | −43.4% | −5.5% | 219 円90 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,236 円1,738 億円 | 1,317 円540 億円 | +100.9% | +7.2% | 5,553 円2,279 億円 |
今の株価時価総額 2,764 円1,134 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 観光と金利の追い風に、営業強化が重なる10年 利益 244 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 8,015 円3,289 億円
県内の景気が10年にわたって強く、貸出は他の地方より伸びる。短期金利が2%に定着するなか、預金の流出は起きず、預金金利の上げは小さく済む。利ざやは広がり続ける。
中期計画が掲げた営業人員の厚みと、キャッシュレス・事業承継の取り込みが実を結ぶ。経費率は計画の70%を割り、手数料の稼ぎも育つ。低利の債券が満期を迎えるたびに高い利回りへ入れ替わり、有価証券の運用ざやも伸びる。
自社株買いが配当に加わり、還元は利益の5割弱(総還元性向40%程度の方針を少し上回る)になる。それでも自己資本比率は今の4.7%から大きくは動かない。県内の競争は穏やかなまま、ROEは10%台へ上がる。10年の中でいちばん良い姿だ。
- 法人貸出:数量 1.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 267 億円・営業利益 176 億円。残高 1.73 兆円(名目)× 率 1.55%、利益率 66%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 155 億円・営業利益 90 億円。残高 1.12 兆円(名目)× 率 1.38%、利益率 58%
- 有価証券運用:数量 1.1(有価証券残高(兆円))× 価格 1.3%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 142 億円・営業利益 130 億円。残高 1.12 兆円(名目)× 率 1.26%、利益率 92%
- 手数料・リース・カード:数量 2.4(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 1.0%(手数料率等(%))→ 売上 238 億円・営業利益 62 億円。残高 2.43 兆円(名目)× 率 0.98%、利益率 26%
倍率:事業の純利益 244 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.48 倍、時価総額 3,289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:観光と建設の好調が10年続き、預金金利の引き上げも小さく済み、営業強化が成果になる。条件がそろう必要があり、確度は高くない。
やや楽観 22% 県内の需要が続き、利ざやの拡大が定着 利益 199 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 6,096 円2,501 億円
県内の景気が堅調に続き、貸出は名目で年3%台半ばの伸びとなる。短期金利は2%で落ち着き、預金金利は4割が付いてくる。利益は10年で2倍を超える。
経費の改善は計画の途中まで届く。営業人員の増強は県内の中小企業の取り込みに一定の成果を出し、手数料やリースの収益も少しずつ増える。景気の山谷は一度経験するが、与信費用の傷は小さい。
還元は配当と自社株買いで利益の4割台後半に上がる。沖縄銀行・沖縄海邦銀行との均衡は崩れない。派手さはないが、金利の追い風を着実に取り込む10年になる。
県内の人口は緩やかに減るが、観光と建設が貸出の数量を支える。資本は貸出の伸びに合わせて増え、自己資本比率は4%台後半から5%前後で保たれる。
- 法人貸出:数量 1.6(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 245 億円・営業利益 154 億円。残高 1.63 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 63%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 144 億円・営業利益 79 億円。残高 1.07 兆円(名目)× 率 1.34%、利益率 55%
- 有価証券運用:数量 1.1(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 129 億円・営業利益 117 億円。残高 1.06 兆円(名目)× 率 1.21%、利益率 91%
- 手数料・リース・カード:数量 2.3(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 1.0%(手数料率等(%))→ 売上 221 億円・営業利益 53 億円。残高 2.33 兆円(名目)× 率 0.95%、利益率 24%
倍率:事業の純利益 199 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.57 倍、時価総額 2,501 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:県内の需要が当面続き、利ざやの拡大がおおむね会社の計画の方向で定着する。上位の見通しだが、無理のない範囲。
中立 30% 中立:金利は定着し、県内3行の均衡が続く 利益 162 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 4,785 円1,963 億円
短期金利は2%に定着し、貸出金利の上がりに預金金利が4割付いてくる。貸出残高は名目で年3%ほど伸び、利ざやは広がる。県内3行の競争は今の均衡のまま続く。
与信費用は、景気の山と谷を一度ずつ経験してならした水準に戻る。人件費は賃上げで毎年増え、経費率の改善は計画ほど進まない。利益は10年で2倍に近づく。
還元は総還元性向40%程度の方針に沿って利益の4割台半ばで、自己資本は貸出の伸びと同じ速さで増える。ROEは7%台後半にとどまる。県内最大級の取引基盤が崩れない代わりに、効率で他行を引き離すこともない。特別な上振れも下振れもない姿だ。
有価証券は、安い利回りの債券が入れ替わる分だけ稼ぎが増える。手数料の収益は人件費に食われ、利益への寄与は小さいままだ。観光の谷は10年のうちに一度来るが、与信費用は平均でならして見る。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 224 億円・営業利益 135 億円。残高 1.55 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 60%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 139 億円・営業利益 72 億円。残高 1.03 兆円(名目)× 率 1.35%、利益率 52%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券残高(兆円))× 価格 1.2%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 116 億円・営業利益 104 億円。残高 1.01 兆円(名目)× 率 1.15%、利益率 90%
- 手数料・リース・カード:数量 2.2(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 0.9%(手数料率等(%))→ 売上 204 億円・営業利益 45 億円。残高 2.22 兆円(名目)× 率 0.92%、利益率 22%
倍率:事業の純利益 162 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 1,963 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利が定着し、与信費用が景気循環をならした水準に戻り、県内3行の競争が今の均衡で続く。最も重みを置く中心の筋書き。
やや悲観 24% 競争が利ざやを削り、観光の谷が一度来る 利益 95 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 2,241 円920 億円
金利は上がるが、県内3行の預金競争と県外のネット銀行への資金流出で、預金金利の上げは想定より大きい。貸出も競争で金利が上がりにくく、利ざやの広がりは中立の半分ほどにとどまる。
観光の谷が10年のうちに一度来る。台風や感染症、国際情勢で観光客が減り、宿泊・飲食・小売の与信費用が膨らむ。賃上げは続き、経費の負担が利益を削る。営業強化は競争のなかで成果が出にくい。
利益は今の水準をわずかに上回る程度。ROEは5%台で、自己資本比率の薄さが貸出の伸びを抑える。配当は守るが、自社株買いは見送られる。
県内の3行が横並びで預金を取り合い、中小企業の貸出も金利の下げ圧力が続く。利ざやの広がりは、金利の上昇分の半分しか利益に残らない。
- 法人貸出:数量 1.5(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 190 億円・営業利益 103 億円。残高 1.47 兆円(名目)× 率 1.29%、利益率 54%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 115 億円・営業利益 52 億円。残高 0.98 兆円(名目)× 率 1.18%、利益率 45%
- 有価証券運用:数量 0.9(有価証券残高(兆円))× 価格 1.1%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 98 億円・営業利益 87 億円。残高 0.94 兆円(名目)× 率 1.05%、利益率 88%
- 手数料・リース・カード:数量 2.0(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 0.9%(手数料率等(%))→ 売上 178 億円・営業利益 27 億円。残高 2.02 兆円(名目)× 率 0.88%、利益率 15%
倍率:10年後のROE4.8%(純利益95億円÷自己資本1,967億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「競争が利ざやを削り、観光の谷が一度来る」。上限の8.0割に置き、9.68倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:景気の谷が10年のどこかで一度来て、与信費用が増え、預金競争で利ざやの広がりが半分ほどに縮む。観光への偏りと薄い資本を考え、やや厚めに置く。
悲観 14% 構造的に負け、観光の谷と競争で資本が傷む10年 利益 38 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 859 円352 億円
観光への偏りが裏目に出る。落ち込みが長引き、取引先の宿泊・飲食・小売の与信費用が大きく膨らむ。県内の競争は激しく、貸出金利は下がり、預金の流出を止めるために預金金利を上げる。利ざやの広がりはほとんど残らない。
自己資本比率の薄さが貸出の余力をすぐ縮める。有価証券の含み損も重なり、貸出は名目でもほとんど伸びない。人件費の上昇が利益を食い続ける。
利益は今の4割ほどに落ち、ROEは2%台。もう優良な地銀ではなく、資本の薄い県内の一銀行として、配当を守るのが精一杯の10年になる。立て直しの余力も乏しい。
- 法人貸出:数量 1.3(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 142 億円・営業利益 68 億円。残高 1.26 兆円(名目)× 率 1.12%、利益率 48%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率))→ 売上 86 億円・営業利益 33 億円。残高 0.84 兆円(名目)× 率 1.02%、利益率 38%
- 有価証券運用:数量 0.8(有価証券残高(兆円))× 価格 1.0%(運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率))→ 売上 75 億円・営業利益 64 億円。残高 0.79 兆円(名目)× 率 0.95%、利益率 86%
- 手数料・リース・カード:数量 1.7(手数料・リース・カード等の取扱高(兆円))× 価格 0.8%(手数料率等(%))→ 売上 132 億円・営業利益 11 億円。残高 1.65 兆円(名目)× 率 0.80%、利益率 8%
倍率:10年後のROE2.3%(純利益38億円÷自己資本1,640億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、観光の谷と競争で資本が傷む10年」。上限の7.6割に置き、9.27倍。還元を会社の方針(45%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:観光の長期の落ち込みと、県内競争の激化、資本の薄さによる貸出の縮みが重なる。自己資本比率が4.7%と薄いため、1割台半ばの確率は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
沖縄県内の中小企業・観光・建設・不動産・自治体向けの法人貸出。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.2 | 1.0% | 115 | 62 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 1.5% | 224 | 135 |
取り方:貸出は2兆円前後と見て(2024年度の1.91兆円から中期計画で2.18兆円へ)、法人・事業性向けを約6割の1.15兆円とおき、預金で集めたお金との差の利ざやを1.0%とした(開示の実数は取れず推定)。預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)は40%。変動金利の貸出はほぼ全部上がり、預金は4割だけ上がる。同じ県のおきなわFG(7350)と同じ物差しで、中立の利ざやは10年で+0.45%広がると置いた。貸出残高はお金の量なので名目で伸ばす:中立で年3.0%(物価3%と、観光・建設の実需の伸び。人口の減りは緩やか)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%、経費を引く前の資金利益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1.0% | 76 | 36 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.4% | 139 | 72 |
取り方:個人向けを貸出の約4割の0.8兆円とおき、住宅ローンの利ざやを0.95%とした。固定金利の割合が高いと見て、金利上昇の波及は法人より遅いとした。預金ベータ40%のもとで、中立の利ざやは10年で+0.40%広がると置いた。残高は名目で伸び、中立で年2.6%(物価3%と、人口の緩やかな減り)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
有価証券運用
預金の運用先である国債・社債・株式・投資信託などの有価証券の利息配当。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用の利ざや(%、預金コストを引いた後の収益率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 0.9% | 64 | 55 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.2% | 116 | 104 |
取り方:預金が貸出より約1兆円多い銀行なので、預金のうち約0.75兆円を有価証券で運用していると見た(開示の実数は取れず推定)。2026年3月期の有価証券の利息配当は52億円で、預金コストを引いた後の運用ざやを0.85%とした。低い利回りの債券が満期を迎えるたびに高い利回りへ入れ替わるので、中立の運用ざやは10年で+0.30%広がると置いた。残高は預金とともに名目で年3.0%伸びる。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
手数料・リース・カード
投資信託・保険・決済・為替の手数料、リース、クレジットカード、信用保証、システムなど。
| 数量手数料・リース・カード等の取扱高(兆円) | 価格手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 0.9% | 135 | 28 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 0.9% | 204 | 45 |
取り方:役務取引、リース、カード、信用保証などの取扱高の合計を1.5兆円、実効手数料率を0.9%とおいた(営業収益の概算)。人件費の割合が大きく、営業利益は小さい。2026年3月期はカード・信用保証・システムの収益が前期を下回った。取扱高はお金の量なので名目で伸び、中立で年4.0%(物価3%と、資産形成と事業承継の需要)。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
観光への偏りと与信費用
沖縄の経済は観光と建設への依存が高く、台風・感染症・国際情勢で観光客が止まれば、宿泊・飲食・小売の取引先の資金繰りが一気に悪化する。2026年3月期の貸倒引当金の繰入は1億円弱で、好況期の小ささは続かない。景気が普通に戻れば、与信費用は今の何倍にもなりうる。
預金金利の引き上げ幅と預金の流出
利ざやの拡大は、預金金利の上げが4割で済むことが前提だ。2026年3月期は預金利息が3倍になった。県内の他行や県外のネット銀行との競争で、この比率が高まれば、利益の伸びは大きく削られる。利上げ後の預金の動きを確認したい。
自己資本比率の薄さ
自己資本比率は4.7%と低い。債券の含み損や与信費用で資本が傷むと、貸出の余力が一気に縮む。純利益は増えたが、資本の厚みで見ると、耐える力は同業の優良行に見劣りする。還元を上げるほど、この薄さは重くなる。
経費の重さと人件費
2026年3月期の経費は前期比7%増の307億円で、収益の伸びに追われる形だ。賃上げが続けば、経費は物価を上回って増える。中期計画の経費率70%以下が届かなければ、利益の伸びは金利分で止まり、ROEは資本コストに届かない。
県内競争の激化
県内は沖縄銀行・沖縄海邦銀行との3行体制で、貸出金利は競争で決まる。政策金融の沖縄公庫が低い金利で大型案件に入る。県外の銀行や外資が入る動きもあり、競争の形が変わる可能性がある。
有価証券の含み損益
預金の運用先である有価証券は、金利が上がると債券の時価が下がる。自己資本比率が薄いため、評価損の影響は大きい。低い利回りの債券が高い利回りへ入れ替わる利益と、含み損の負担の両方を見る必要がある。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速く上げ、預金金利の上げが4割以内に収まったら
- 利ざやの拡大は想定より大きくなる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 沖縄の観光客数が大きく落ち込み、宿泊・飲食の与信費用が増え始めたら
- やや悲観・悲観側に重みを移す。与信費用がどの業種で増えたかを決算で確認する。
- 預金金利の引き上げ後に、預金が県外のネット銀行へ流れ始めたら
- 預金ベータが想定より高く、利ざやの拡大が削られる。中立の利益を引き下げる。
- 次の中期経営計画で経費率70%の達成が見え、自社株買いの数値が示されたら
- 資本効率の改善が速いとみて、楽観側の確率をやや上げる。
- 県外の銀行との資本提携や経営統合が報じられたら
- 経費率の改善で利益は増えるが、統合の費用と株式の薄まりがある。数字を見直す。
- 自己資本比率が5%台後半へ上がり、有価証券の含み損が縮んだら
- 資本の厚みが増し、悲観の傷が浅くなる。悲観側の確率を下げる。
見ておくもの
- 沖縄の観光客数・県内景気と、県内3行の与信費用の推移
- 預金金利の引き上げ後の預金残高と預金ベータ
- 貸出残高と貸出利ざやの推移(四半期決算)
- 経費率(コアOHR)の推移と、次の中期経営計画のROE目標・還元の数値
- 自己資本比率と有価証券の含み損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality +0.75%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・9割に置いた(下限は1÷k=12.1倍)。やや悲観・悲観はROEがk(8.25%)以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その8・7.6割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約3%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは10.9倍から9.7倍に下がる。
リース会計は、新リース会計基準(2028/03期から)で営業費用の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ家賃を営業費用に入れた形でそろえた。店舗の賃借が少ない銀行業で、影響は小さいと見る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.82→13.48 倍・やや楽観 PER 11.32→12.57 倍・中立 PER 10.88→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、預金ベータ40%で利ざやを決めた。個別のリスク(観光への偏り・県内競争・資本の薄さ)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ県のおきなわFG(quality 0.75%)との差は、借金の部品(資本の薄さ)だけ。