結論
島根銀行は、松江市に本店を置く総資産 5,600 億円の地方銀行だ。2019 年から SBI グループと組み、2026 年 6 月には SBI 新生銀行が議決権の 2 割を持つ大株主になった。
筆者の結論は、いまの値段は割高ということだ。株主資本の厚みは 2 つの理由で見かけより薄い。1 つは、保有する債券の含み損が 126 億円あり、純資産とほぼ同じ大きさであること。もう 1 つは、優先株が合計で 170 億円に膨らみ、普通株主より先に利益と資産の配分を受けることだ。
2026 年 10 月の発表は、その 2 つを一度に動かした。SBI 新生銀行に 100 億円の優先株を出し、含み損のある債券 600 億円を売って 65 億円の損失を確定する。自己資本比率は改善するが、普通株主への配当の源は、優先株の配当を払ったあとの利益だけになる。
筆者がいちばん気にしているのは、10 年後に普通株に残る利益が、優先株の配当を払ってもなお資本コストに見合うかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「資本の入れ替えで生き延びる小さな銀行」だ。10 年後も島根県の銀行は要るが、島根銀行が独立した銀行のまま残るかは分からない。堀は浅い。
オーナー利益、つまり株主に残る現金は、いまは小さい。純利益 3.7 億円のうち、優先株の配当に 1.2 億円が出て、普通株主の分は 2.5 億円だ。10 月の発表のあと、優先株の配当は年 4 億円ほどに増える。
経営は、損失を確定させて金利リスクを下げる決断をした。この点は評価できる。含み損を放置して資本を細らせるよりよい。ただ、不動産業向け貸出の偏りは残る。
安全域は薄い。普通株の自己資本は 54 億円で、債券の含み損の残りが 61 億円ある。筆者は、優先株の配当を払ったあとに普通株へ残る利益が、安定して出るのを見るまで、高い値は付けにくいと考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、島根県内の中小企業と自治体への貸出だ。貸出残高は 3,900 億円で、業種別では不動産業・物品賃貸業が 35%、地方公共団体が 12% を占める。不動産への偏りが大きいことが、この銀行の特徴だ。
預金は 5,250 億円で、貸出より多い。余った資金は有価証券で運用し、残高は 1,300 億円にのぼる。国債や地方債、外債が中心で、金利の上昇で含み損が膨らんだ。
個人向けの住宅ローンや、投資信託・保険の販売は、まだ小さい。役務取引等の利益は 0.5 億円しかなく、手数料で稼ぐ力は弱い。
従業員は 316 人で、本店のほか支店が 20、出張所が 13 ある。2025 年 7 月には、SBI のグループと共同で使う次世代の勘定系システムを動かし始めた。費用の削減が見込まれる。
中期経営計画は 2028 年 3 月期までだ。2026 年 3 月期の当期純利益は 3.7 億円、そのうち普通株主に残ったのは 2.5 億円だった。
島根県内の貸出は、地元の中小企業や不動産の賃貸業が中心だ。県外の大都市圏への貸出は少ない。
優良さと弱いところ
優良さは「並」より下と筆者は見る。島根県内では山陰合同銀行が圧倒的な首位で、島根銀行は貸出の金利を競う 2 番手以下の立場だ。値決めの力は弱い。
堀、つまり他社がまねできない強みは、地域の中小企業との取引と、松江を中心とした店舗網だ。ただ、人口が減る島根県で、貸出を大きく伸ばせる見込みは薄い。
資本の効率は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 2% 台、純利益は年 3〜6 億円の水準が長く続いた。2020 年 3 月期には 23 億円の赤字を出している。
自己資本比率は国内基準で 7.4% あり、最低の 4% は上回る。ただ、債券の含み損が 126 億円あり、単純な自己資本比率は 2% 台だ。不良債権は貸出の 2% 台で、与信費用の増減が利益を大きく左右する。
経営は、SBI との提携で資本と人材を取り込む道を選んだ。中期計画は未達が続いたが、10 月の発表で目標を改めた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、金利のある世界の入口に立っている。貸出金利が先に上がり、預金金利が遅れて追う間は、利ざやが広がる。島根銀行も、貸出の利回りが調達の利回りを上回る幅は、今後広がると見込まれる。
一方で、島根県は人口が全国でも早く減る県の 1 つだ。企業の数も減るので、貸出の残高は名目で物価並みにしか伸びない。実質ではほぼ横ばいか減る。
再編の動きも早い。地方銀行は 1 県 1 行へ向かう流れにあり、SBI は提携する地銀を束ねる構想を進めている。島根銀行もその輪の中にいる。
金利の上昇は、地銀にとって諸刃の剣だ。利ざやは広がるが、保有する債券の値が下がる。島根銀行は含み損が自己資本に近い大きさになり、その整理に今回踏み切った。
10 年で見ると、中立では貸出の残高が名目で 3 割ほど伸び、利ざやが 0.4% ほど広がる。ただ、経費も物価で上がるので、利益率の改善は限られる。
地方の銀行どうしの競争は、貸出の金利の引き下げという形で表れやすい。預金を集める力の差も、利ざやを左右する。
デジタル化で店舗の役割も変わり、無人の窓口が増える。
資本政策と M&A
資本政策の中心は SBI だ。2019 年に A 種優先株を 9 億円、2022 年に B 種優先株を 60 億円発行した。2026 年 6 月には、SBI 地銀ホールディングスが持つ普通株を SBI 新生銀行に譲渡し、同行が議決権の 20.9% を持つ。
2026 年 10 月に発表した C 種優先株は 100 億円で、SBI 新生銀行が引き受ける。議決権は無い。5 年は普通株に転換できず、2036 年 12 月以降に会社が金銭で買い取る方針だ。転換されれば、普通株の数が大きく増える。
優先株の配当は、普通株の配当より先に払う。A 種と B 種で年 1.2 億円、C 種が加わると年 4 億円ほどになる。
普通株の配当は年 0.8 億円で据え置く。配当性向は 3 割ほどだ。
このほか、債券 600 億円を売って損失 65 億円を確定し、短い期間の国債に入れ替える。実行は 2027 年 1〜3 月だ。経営陣は 2027 年 1〜3 月の月額報酬を 3 割減らす。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SBI の資本が入ったことで、最悪の局面は過ぎた。100 億円の優先株で自己資本比率は 8.5% に上がり、債券の含み損を整理すれば、金利が上がっても資本が削られる心配は小さい。
債券 600 億円を、損失を出して売り、短い国債に入れ替える。いまの利回りの低い債券が高い利回りに替わるので、利益が増える。会社は、当期純利益 12 億円を 2028 年 3 月期に目指す。
貸出の利ざやは、短期金利が 2% へ上がる間に広がる。島根県の中小企業の貸出は金利が先に上がりやすく、島根銀行の利ざやは同業より速く改善する。100 億円の資金を事業性の貸出に回せば、残高も伸びる。
次世代のシステムで経費も下がる。SBI と組むことで、住宅ローンや預かり資産の販売も広がる。普通株は低い配当で据え置かれ、利益は自己資本として積み上がる。
SBI の新生銀行が議決権の 2 割を持つ大株主になったことで、経営の安定感も増した。
慎重な見方
優先株の重さが、普通株主の取り分を削る。優先株は合計 170 億円で、普通株の時価総額 41 億円の 4 倍に達する。優先株の配当は年 4 億円で、純利益 5 億円を食ってしまう。
債券を売って損失を確定しても、含み損の残りは 61 億円あり、金利がさらに上がれば新しい含み損が出る。不動産業・物品賃貸業向け貸出が 35% と偏り、不良債権も 93 億円ある。景気が崩れれば与信費用が一気に増える。
C 種優先株は、5 年後に転換を請求できる。転換価額の下限は低く、全部が下限で転換されれば、普通株の議決権は 3 倍近くになる。潜在的な希薄化は大きい。
そもそも、利ざやの改善は競争で奪われやすい。山陰合同銀行が県内の首位を守り、島根銀行は金利で競る 2 番手のままだ。人口が減る県で、100 億円の資金を安全に貸し出せる先は多くない。
これらの重なりで、普通株主に残る利益は思ったほど増えない可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
資本の重さと稼ぐ力では、慎重な見方が強い。SBI の支援で当面の危機は遠のいたが、優先株の配当を払ったあとに普通株へ残る利益は薄く、10 年先まで資本コストに届かない。中立に 38%、悲観側の合計に 37%、楽観側に 25% を置いた。SBI という後ろ盾を評価して、悲観を 12% にとどめた。 優先株の転換による希薄化は、ここでは優先株を借金のような先取りの権利として扱い、普通株の利益と自己資本から引いて表した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 629 円52 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 118 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 350 円29 億円、今との差 −28.5%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,506 円124 億円 | 243 円20 億円 | +257.7% | +13.6% | 140 円12 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,001 円82 億円 | 195 円16 億円 | +144.5% | +9.4% | 203 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 737 円61 億円 | 146 円12 億円 | +80.6% | +6.1% | 336 円28 億円 |
| やや悲観 | 25% | 197 円16 億円 | 36 円3 億円 | −52.2% | −7.1% | 58 円5 億円 |
| 悲観 | 12% | 78 円6 億円 | 6 円1 億円 | −82.8% | −16.2% | 10 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 629 円52 億円 | 118 円10 億円 | +52.8% | +4.3% | 747 円61 億円 |
今の株価時価総額 489 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:利ざやが想定より広がり、優先株の資金が貸出に回って稼ぐ 利益 10 億円 · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 1,506 円124 億円
短期金利が 2% へ上がる間に、貸出の利ざやが大きく広がる筋書きだ。100 億円の優先株の資金が事業性の貸出に回り、残高は 10 年で 5 割近く伸びる。
債券は短い国債に入れ替わり、運用の利回りが上がる。含み損の戻りで資本の質も改善し、新たな評価損を避ける。
SBI との次世代システムで経費が下がり、利益率が上がる。普通株に残る利益は優先株の配当を引いても 10 億円台に乗る。
ROE は 10% を超え、資本コストを上回る。ただ、人口が減る県で、この水準が長く続くかは分からない。
優先株の転換も、この筋書きでは避けられ、金銭での買い取りが進む。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 68 億円・営業利益 12 億円。貸出 46% 増。利ざや 0.53% 拡大
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。貸出 28% 増。利ざや 0.45% 拡大
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 5 億円。短い国債に入れ替え
- 手数料・預かり資産:数量 0.7(預金残高(兆円))× 価格 0.00(預金あたりの役務取引等収益(率))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。預金 24% 増
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍。全体の PER 12.26 倍、時価総額 124 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:含み損の整理で利益が戻り、SBI との共同システムで経費も下がる形。実績の乏しい筋書きなので 8%。
やや楽観 17% やや楽観:利ざやが広がり、優先株の配当を払っても ROE が 8% 台 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,001 円82 億円
貸出の利ざやが想定どおり広がる筋書きだ。残高は 10 年で 4 割近く伸び、短い国債に入れ替えた運用も利益に貢献する。
経費は物価で上がるが、次世代システムの効果で一部を吸収する。経常の利益率は今より大きく上がる。
優先株の配当は年 4 億円ほどで、これを払っても普通株に 7 億円ほどが残る。配当は 3 割ほどを払い、残りが自己資本に積み上がる。
ROE は 8% 台で、資本コストに近づく。ただ、人口減の影響は残り、成長は物価並みにとどまる。
含み損の残りは満期に近づくにつれて縮み、資本の質も少しずつ改善する。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 61 億円・営業利益 10 億円。貸出 37% 増
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。貸出 19% 増
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。入れ替えの効果
- 手数料・預かり資産:数量 0.6(預金残高(兆円))× 価格 0.00(預金あたりの役務取引等収益(率))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。預金 18% 増
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利上昇が想定どおり進み、含み損の整理と新システムの効果が出る標準的な改善。経営計画の純利益 12 億円の延長線なので 17%。
中立 38% 中立:利ざやは広がるが、経費と優先株の配当で普通株の取り分は薄い 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 737 円61 億円
貸出の利ざやは広がるが、島根県の人口減と競争が伸びを抑える筋書きだ。貸出は 10 年で 3 割ほど伸び、運用の利回りは短い国債への入れ替えで上がる。
経費は物価で毎年増える。次世代システムの削減効果は、その増えの一部を吸収する程度にとどまる。
優先株の配当は年 4 億円ほどで、利益の 3 分の 1 を超える。普通株に残る利益は 5 億円台だ。配当は 3 割ほどで、残りは自己資本に積み上がる。
ROE は 6% 台で、資本コストには届かない。債券の含み損の残りは、満期とともに縮むが、金利がさらに上がれば新しい含み損も出る。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 55 億円・営業利益 8 億円。貸出 28% 増。利ざや 0.40% 拡大
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。貸出 12% 増
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 16 億円・営業利益 3 億円。残高は横ばい
- 手数料・預かり資産:数量 0.6(預金残高(兆円))× 価格 0.00(預金あたりの役務取引等収益(率))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。預金 14% 増。率は緩やかに低下
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と島根県の人口減が相殺し、優先株の配当が普通株の取り分を削る。地銀の標準的な筋書きに優先株の重さを加え、最も重い 38%。
やや悲観 25% やや悲観:与信費用が増え、優先株の配当で普通株の利益が消える 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 197 円16 億円
島根県の人口減が速まり、貸出が伸びない筋書きだ。与信費用が増え、競争で利ざやの広がりも限られる。
経費は物価で上がり、利益率は今の水準にとどまる。純利益は 3 億円台で、優先株の配当を引くと普通株には赤字が残る。
配当は据え置きが難しくなり、優先株の配当を先に払うため、普通株の配当は減る。
SBI の支援は続くが、普通株の取り分を守る約束ではない。
新しい勘定系システムの削減効果は出るが、与信費用の増えがそれを打ち消す。
不動産業向けの貸出の延滞が増え、担保の評価も下がる。
会社は経費の削減と店舗の見直しで利益を守ろうとするが、人口減の県では効果が限られる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 41 億円・営業利益 3 億円。貸出 7% 増にとどまる
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。貸出横ばい
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。残高縮小
- 手数料・預かり資産:数量 0.5(預金残高(兆円))× 価格 0.00(預金あたりの役務取引等収益(率))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。預金の流出
倍率:普通株に残る利益は赤字で稼ぐ力は無い。床はその筋書きの普通株の自己資本 58 億円(今の 53.6 億円とほぼ同じ)に 0.28 倍を掛けた約 16 億円。地銀の悲観の目安 0.45 より低いのは、優先株が先に配当を受けるため。
確率:不動産業向けの貸出が 35% を占め、不良債権は貸出の 2% 台。景気の悪化で与信費用が増えれば、優先株の配当で普通株の利益が消える。十分ありうるので 25%。
悲観 12% 悲観:与信費用の急増と債券の再評価損で、普通株の取り分が細る 利益 −7 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 78 円6 億円
景気の悪化で不動産業向けの貸出が傷み、与信費用が急増する筋書きだ。金利がさらに上がり、債券にも新しい評価損が出る。
純利益は赤字になり、優先株の配当を払うために自己資本が削られる。普通株の配当は止まる。
SBI の支援で銀行は存続するが、普通株は優先株の後ろに回る。C 種優先株の 100 億円は、転換を請求できる 5 年後を過ぎても、価値を保つ。
普通株主の値打ちは、事業の稼ぎでなく、残る自己資本の一部で決まる。
再編の協議が進んでも、普通株の交換比率は不利になりやすい。
経営陣の報酬カットや店舗の統廃合で経費を絞るが、収益の落ち込みを埋めるには足りない。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。貸出横ばい。与信費用が急増
- 個人向け貸出:数量 0.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。貸出縮小
- 有価証券・市場運用:数量 0.1(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。評価損の再発
- 手数料・預かり資産:数量 0.5(預金残高(兆円))× 価格 0.00(預金あたりの役務取引等収益(率))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。預金の流出
倍率:稼ぐ力は無く、床はその筋書きの普通株の自己資本 28 億円に 0.23 倍を掛けた約 6.4 億円。やや悲観より低い。優先株が先に資産の配分を受けるため。
確率:2020 年 3 月期は 23 億円の赤字を出した。不動産向けの貸出が 35% で、人口の減りも重なれば構造的に起こりうるので 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
島根県内の中小企業・不動産業向けの事業性貸出と、地方公共団体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.01 | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 0.02 | 55 | 8 |
取り方:貸出金残高は 3,897 億円(2026 年 3 月末)。個人向けを約 28% と推定し、事業性・公共向けを 2,807 億円とした。【推定】開示の内訳ではない。貸出利回り約 1.4% から預金等の調達利回り 0.30% を引いた約 1.1% を利ざやとした。4 つのセグメントの利益の合計を、連結経常利益 4.17 億円に合わせた。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや。
個人向け貸出
住宅ローン・個人ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.01 | 17 | 2 |
取り方:貸出金 3,897 億円のうち約 28%(1,090 億円)を個人向けと推定した。【推定】開示の内訳ではない。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやは事業性より薄い約 1.0% とした。経費配分後の利益は薄い。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信などの運用。2027 年 1〜3 月に 600 億円を売却して入れ替える。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.01 | 16 | 3 |
取り方:有価証券残高は 1,308 億円(2026 年 3 月末、有価証券報告書)。運用利回りから調達を引き、売却損・評価損の処理を含めた実質の利ざやを約 0.7% と置いた。【推定】開示の内訳ではない。
手数料・預かり資産
為替・振込・ローン関連の手数料、投信・保険の販売手数料。
| 数量預金残高(兆円) | 価格預金あたりの役務取引等収益(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 0.00 | 11 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 0.00 | 11 | 1 |
取り方:役務取引等収益は連結で 10.54 億円、費用 10.02 億円で利益は 0.51 億円(有価証券報告書)。預金残高 5,252 億円あたりの収益率 0.20% で置いた。【推定】預かり資産の開示が見つからないため、預金を土台にした。
リスクと懸念
優先株の重さと希薄化
優先株は合計 170 億円で、普通株の時価総額の 4 倍に達する。配当は普通株より先に払われ、C 種は全部が下限の価額で転換されると、普通株の議決権が 3 倍近くに増える。
債券の含み損と金利の再上昇
債券の含み損は 126 億円。600 億円を売って 65 億円の損失を確定しても、残りは 61 億円ある。金利が上がれば、新しい含み損が出る。
不動産向け貸出の偏り
貸出の 35% が不動産業・物品賃貸業。不良債権は 93 億円で貸出の 2% 台あり、景気や地価が崩れれば、与信費用が一気に増える。
島根県の人口減
島根県は人口の減りが全国でも早い県の 1 つ。企業の数も減り、貸出を伸ばせる先が限られる。100 億円の資金を安全に貸し出せるかが問われる。
SBI への依存と再編
資本も経営の方向も SBI に依存する。再編で普通株の交換比率が不利になる可能性や、SBI の方針の変更で戦略が変わる可能性がある。
経費と競争
従業員は 316 人で経費は重い。山陰合同銀行との競争で、貸出の利ざやの改善が奪われる可能性がある。
今後の分かれ目
- 普通株に残る利益が 2 期続けて 5 億円を超える
- 利ざやの改善が本物とみて、やや楽観以上の確率を上げる。
- 与信費用が年 10 億円を超える
- 貸出の質の悪化とみて、悲観側の確率を上げる。
- 債券に新しい含み損が自己資本の 2 割を超える
- 金利リスクの管理が不十分とみて、悲観側の確率を上げる。
- SBI が追加の資本や完全子会社化を示す
- 普通株の交換比率や希薄化を見直す。
- C 種優先株の転換を請求できる時期が近づく
- 普通株の希薄化の大きさを織り込み直す。
見ておくもの
- 普通株に残る利益と優先株の配当
- 債券の含み損と売却の進み方
- 不良債権と与信費用
- 貸出の残高と利ざや
- 自己資本比率と SBI との関係
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が全筋書きで k 8.75% を下回るか近いので、上限 1÷k の 11.4 倍を基準に、利益の質で 8.0〜11.5 倍に置いた。今の PBR や同業の PER は見ていない。優先株(A・B・C)は借金に近い先取りの権利として、普通株の利益から配当を引き、自己資本も普通株の分だけで流した。債券の含み損が満期で戻る分は、金利が再び上がる可能性と相殺して数えない。新リース会計基準による数字の形の変化は、今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.26 倍・やや楽観 PER 10→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.25% = 8.75%。優先株の重さや希薄化は k に足さず、普通株の利益と自己資本の取り方で表した。