結論
めぶきフィナンシャルグループは、2016年に常陽銀行(茨城県)と足利銀行(栃木県)が経営統合して発足し、合併を伴わない2ブランド体制のまま10年を経て、システム統合によるコスト削減と金利正常化の追い風で過去最高益を更新している。茨城・栃木で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%、メインバンク数28,607社と地銀上位5社・グループの中で2位の規模を持つ。第4次中期経営計画(2025〜2028年度)は2028年3月期の連結純利益900億円以上・ROE9.0%以上を公式目標に置くが、短期金利上昇と有価証券運用の改善が計画を上回るペースで効き、会社自身の業績予想は2027年3月期純利益1,050億円(ROE9.8%相当)・2028年3月期1,170億円(ROE10.9%相当)まで上方修正されている。ここでは法人貸出・個人貸出・資産運用ソリューションの3つを数量×価格で積み上げ、その時点のROEと資本コストから倍率を決めて株価を出した。千葉銀行・横浜フィナンシャルグループ・しずおかフィナンシャルグループと物差しを揃えたが、めぶきFGは統合が10年前に完了済みで新規の統合シナジーという上振れ材料が乏しい一方、北関東の製造業(自動車・電機)比重の高さと、積極的に入れ替えてきた有価証券運用が独自の振れ幅になる。含み益は純資産に入済み)。中立は10年後にROE10.0%・PER11.2倍(k 8.25%の正当化PERの上限の8.5割)に置いた。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、統合から10年を経て大きな一回限りの統合コストが既に消化されており、金利上昇に伴う利ざやの拡大と有価証券運用の改善がほぼそのまま株主のものになる利益の押し上げにつながりやすい構造にある点を、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、茨城・栃木で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%という広域かつ厚い顧客基盤と、地銀上位5社・グループの中で2位という規模を評価する一方、北関東の製造業(自動車・電機)への依存は、千葉県のような相対的に多様化した首都圏経済と比べてグローバルな景気サイクルへの感応度を高める固有のリスクである。経営陣の資本配分については、総還元性向63.9%という高い株主還元と、秋野社長が語る「500億円規模の買収」への意欲を併せて評価する必要があり、次の再編・買収が価値を生むか壊すかは経営の実行力次第という未知数を抱える。最後の安全域の判断では、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し−20.1%で、今の値段は本質価値をやや上回り、安全域は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
めぶきフィナンシャルグループは、茨城県地盤の常陽銀行と栃木県地盤の足利銀行を傘下に持つ持株会社で、両行は合併せずそれぞれのブランドと営業基盤を維持したまま、システム統合・事務共通化・人員配置の最適化を持株会社レベルで進めている。法人向けは茨城・栃木を中心に自動車・電機関連の製造業サプライチェーンに連なる中小企業への事業性融資を主軸に、公共向け貸出(地方公共団体等)も厚い。個人向けは住宅ローンを中心に、高齢化に伴う資産形成・相続関連の需要を取り込む。貸出金は2026年3月末に13兆9,976億円(前年度末比7,945億円増)、預金等は18兆1,079億円に達し、茨城・栃木両県で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%の第1位、メインバンク数28,607社を抱え地銀上位5社・グループの中で2位の規模を持つ。資産運用・ソリューション部門は投資信託・保険の販売、事業承継・M&Aアドバイザリーを担い、両行共通のグループ戦略として非金利収益の拡大を進めている。有価証券運用も収益の重要な柱で、2023年3月末から有価証券残高を約8,000億円積み増し、過去に計上した外国債の売却損(評価損処理)を経て、現在は国内株式の益出しと低利回り国内債の入替えを進める運用改善フェーズにある。
優良さと弱いところ
茨城・栃木という北関東の2県で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%・メインバンク数28,607社という広域かつ厚い顧客基盤が最大の堀で、地銀上位5社・グループの中で2位の規模を持つ。統合から10年を経て、経営陣は「1+1=10」になったと評価するシステム統合・店舗最適化の効果が既に業績に表れており、2025年度は過去最高益を更新した。弱点は、自己資本比率が単純指標で5.1%と低く、kabufuの脆さスコアでは千葉銀行(5.9%)と同様に資本の余裕が乏しいと判定される点で、信用サイクルの悪化局面では資本が傷みやすい。経営の規律という点では、政策保有株式を2028年3月末までに2023年3月末比で時価300億円削減する目標を掲げ、3年間で49銘柄・時価357億円の削減を進めたが、株価上昇で時価572億円増加した結果、差し引きでは2023年3月末比215億円の増加にとどまっており、削減ペースが株高に負けている状態が続く。社外取締役比率は41%とガバナンス体制は一定の水準にある。秋野哲也社長は統合10年の実績を背景に「500億円規模の買収も視野」と次なる再編に意欲を示しており、守りだけでなく攻めの資本配分に動く可能性がある点は、千葉銀行のような受け身の統合完遂とは異なる固有の論点である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は長い低金利時代を経て、2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」に入った初期段階にあり、短期金利が2%に向けて上がる過程で預貸ざやが構造的に拡大する追い風は、めぶきFGにも同じく及んでいる。茨城・栃木の貸出需要そのものは人口減少で伸びが鈍いが、北関東は自動車・電機関連の製造業集積地であり、グローバルな需給・サプライチェーンの変動が地域経済の振れ幅を千葉県・神奈川県よりやや大きくする固有の要因になる。地方銀行最大の構造要因である再編は、めぶきFGにとっては2016年の常陽・足利統合という形で既に10年前に実現済みであり、千葉銀行の千葉興業銀行統合やしずおかフィナンシャルグループの名古屋銀行統合のような「これから実現するシナジー」という上振れ材料は乏しい。その代わり、統合済みの規模(貸出金14兆円・地銀上位5社・グループで2位)を土台に、有価証券運用の積極的な入替え(金利上昇を見込んだポートフォリオ見直し)という独自の収益レバーを持つ。第4次中期経営計画はROE9.0%以上を公式目標とするが、実際の業績予想はこれを上回るペースで上方修正されており、金利正常化の恩恵がどこまで持続するかが今後の軸になる。
資本政策と M&A
株主還元は2024年度の年間総還元額358億円(配当158億円+自己株式取得200億円)・総還元性向63.9%と高水準で、配当性向は2027年度までに40%以上への到達を目指す。2025年度の新中期経営計画スタートに合わせて自己株式取得(最大230億円、発行済株式総数の4.57%に相当する4500万株を上限)を実施するなど、機動的な資本配分を継続している。政策保有株式は2028年3月末までに2023年3月末比で時価300億円削減する目標を掲げ、3年間で49銘柄・357億円の削減を進めたが、株価上昇の影響でネットでは215億円の増加にとどまっており、削減の実効性には時間がかかる。M&A面では、2016年の常陽・足利統合という大型再編を既に完遂済みで、秋野哲也社長は統合10年の実績を背景に「500億円規模の買収も視野」と次なる再編・買収に意欲を示しており、絶対に譲れない条件があると語るなど、受け身ではなく攻めの再編・資本配分に動く可能性を含む。SBIホールディングスの「第4のメガバンク構想」のような外部連合には加わらず、独自路線を維持している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
常陽銀行と足利銀行の統合は10年を経て完全に消化され、経営陣自身が「1+1=10」と語るほどのシステム統合・店舗最適化の効果が既に業績に表れており、2025年度は過去最高益を更新した。短期金利が2%に向けて上がる過程で、茨城・栃木の法人・個人向け貸出利ざやは構造的に拡大し、第4次中期経営計画が公式目標として置く2028年3月期ROE9.0%以上を、会社自身の業績予想はすでに2027年3月期ROE9.8%相当・2028年3月期ROE10.9%相当まで上方修正している。有価証券運用も、過去の外国債売却損を経て金利上昇を見込んだポートフォリオの入替えが進み、株式の益出しと合わせて収益の追加の柱になっている。政策保有株式の削減と総還元性向63.9%という高水準の株主還元は資本効率の改善を支え、秋野哲也社長が語る「500億円規模の買収も視野」という次なる再編への意欲は、茨城・栃木で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%という広域基盤をさらに強化する上振れ材料になりうる。地銀上位5社・グループの中で2位という規模と、統合効果が既に実証済みという確度の高さは、千葉銀行のようにこれから統合を実行するリスクを負う会社より一段進んだ位置にある。
慎重な見方
北関東は自動車・電機関連の製造業集積地であり、茨城・栃木の地域経済はグローバルな需給・サプライチェーンの変動に千葉県・神奈川県よりも感応しやすく、世界的な景気減速が来れば法人向け貸出の信用コストが急増しやすい。めぶきFGの自己資本比率は単純指標で5.1%と低く、千葉銀行(5.9%)と同様に資本の余裕が乏しい中、保有する有価証券(過去に外国債で売却損を計上した経緯がある)の評価損リスクも重なれば、資本とROEが一時的に大きく傷む。統合は10年前に完了済みであり、千葉銀行の千葉興業銀行統合のような新規シナジーという上振れ材料は既になく、成長の軸は金利サイクルと有価証券運用の巧拙に依存する度合いが強い。政策保有株式の削減は3年間で357億円進めたものの、株価上昇で時価は差し引き215億円増加しており、削減の実効性は株価次第で遅れやすい。秋野社長が語る「500億円規模の買収」が実現しても、割高な買収やのれんの減損リスクを伴う可能性があり、守りに徹した方が良い場面で攻めに出れば価値を損なう懸念も残る。茨城・栃木の人口減少・事業所数の減少という構造要因も、他の地方銀行と同様に長期的な貸出需要の重荷になる。
どちらに重みを置いたか
統合効果が既に実証済みで、金利上昇と有価証券運用の改善がともに会社予想の上方修正という形で裏付けられている点を評価する強気の見方に分があるが、北関東の製造業比重の高さによる景気サイクルへの感応度と、自己資本比率の低さという慎重な見方の指摘も軽くない。確率は中立に最も重みを置きつつ、統合済みという確度の高さと業績予想の上方修正の継続を踏まえて楽観側をやや厚めに置いたが、千葉銀行・横浜フィナンシャルグループと比べると、製造業サイクルと有価証券運用の振れ幅を反映して悲観・やや悲観の尾をやや厚めに残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,891 円1.78 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 735 円6,896 億円)。 今の値に割り戻すと 1,350 円1.27 兆円、今との差 −8.6%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 3,432 円3.22 兆円 | 1,060 円9,954 億円 | +204.0% | +11.8% | 494 円4,639 億円 |
| やや楽観 | 24% | 2,627 円2.47 兆円 | 920 円8,634 億円 | +140.0% | +9.2% | 851 円7,990 億円 |
| 中立 | 30% | 2,087 円1.96 兆円 | 805 円7,555 億円 | +95.7% | +6.9% | 867 円8,144 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,024 円9,612 億円 | 596 円5,598 億円 | +9.7% | +0.9% | 356 円3,346 億円 |
| 悲観 | 13% | 247 円2,318 億円 | 189 円1,778 億円 | −70.5% | −11.5% | 57 円533 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,891 円1.78 兆円 | 735 円6,896 億円 | +77.7% | +5.9% | 2,626 円2.47 兆円 |
今の株価時価総額 1,478 円1.39 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 11% 北関東製造業の高付加価値化と有価証券運用力が結実する10年 利益 2,158 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 3,432 円3.22 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、茨城・栃木の貸出利ざやは構造的に高い水準で安定する。北関東の自動車・電機関連の製造業は高付加価値化(電動化・半導体関連投資等)が進み、輸出サイクルへの耐性が増し、法人向け事業性融資の質も高まる。有価証券運用は10年間の入替えの成果が定着し、国内株式・外債の両方で安定した収益貢献を続ける。政策保有株式の削減もほぼ完了して浮いた資本は大規模な自社株買いに回り、総還元性向は高水準を維持する。秋野社長が視野に入れた再編・買収も複数実現し、茨城・栃木を越える広域展開が進んで地銀上位5社・グループの中でさらに規模を広げ、地方銀行として最も理想的な10年になる。
- 法人貸出:数量 11.9(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 2.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 2,464 億円・営業利益 1,802 億円。残高 11.9 兆円(名目)× 利ざや 2.08%、利益率 73%
- 個人貸出:数量 8.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,493 億円・営業利益 1,085 億円。残高 8.5 兆円(名目)× 利ざや 1.75%、利益率 73%
- 資産運用・ソリューション:数量 9.0(預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円))× 価格 0.7%(実効利回り・手数料率等(%))→ 売上 629 億円・営業利益 454 億円。残高 9.0 兆円(名目)× 率 0.70%、利益率 72%
倍率:事業の純利益 2,158 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.93 倍、時価総額 32,219 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定常化、北関東の製造業が高付加価値化で輸出サイクルの耐性を高め、有価証券運用力も結実する前提で、10年間すべて噛み合う想定のため確度は高くない。
やや楽観 24% 金利定常化と非金利収益拡大が安定成長を支える10年 利益 1,755 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 2,627 円2.47 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、茨城・栃木の貸出利ざやは高水準で安定する。北関東の製造業は輸出サイクルの波を受けながらも全体として成長を続け、有価証券運用・資産運用ソリューションの非金利収益も着実に積み上がる。政策保有株式の削減はほぼ完了し、株価上昇に負けないペースで進む結果、自社株買いが継続して資本効率の改善が定着する。統合から10年以上を経た安定した経営基盤のもとで、地銀上位5社・グループの中で2位という規模を活かし、茨城・栃木を核にしつつ周辺県にも緩やかに広がる成長が続く10年になる。
- 法人貸出:数量 11.3(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.8%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,982 億円・営業利益 1,430 億円。残高 11.3 兆円(名目)× 利ざや 1.76%、利益率 72%
- 個人貸出:数量 8.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,187 億円・営業利益 831 億円。残高 8.0 兆円(名目)× 利ざや 1.47%、利益率 70%
- 資産運用・ソリューション:数量 8.7(預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円))× 価格 0.7%(実効利回り・手数料率等(%))→ 売上 612 億円・営業利益 434 億円。残高 8.7 兆円(名目)× 率 0.70%、利益率 71%
倍率:事業の純利益 1,755 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.05 倍、時価総額 24,658 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第4次中期経営計画以降も会社予想の上方修正傾向が概ね維持され、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:短期2%・長期3%の定常化のもとで緩やかな成長が続く10年 利益 1,483 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 2,087 円1.96 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、茨城・栃木の貸出利ざやは高めの水準で安定する一方、両県の人口減少で貸出の量そのものは伸び悩む。与信費用も北関東の製造業の景気循環を1〜2周してならした水準に戻り、特段の急増も急減もない。有価証券運用・資産運用ソリューションの非金利収益はNISA定着後の標準的な成長軌道に乗り、収益の一定の柱として定着する。政策保有株式の削減は株価の上下に揺れながらも最終的に完了し、茨城・栃木で貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%という広域基盤は変わらず維持される、特別な上振れも下振れもない10年になる。
- 法人貸出:数量 10.8(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,613 億円・営業利益 1,124 億円。残高 10.8 兆円(名目)× 利ざや 1.50%、利益率 70%
- 個人貸出:数量 7.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 960 億円・営業利益 643 億円。残高 7.7 兆円(名目)× 利ざや 1.25%、利益率 67%
- 資産運用・ソリューション:数量 8.1(預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円))× 価格 0.7%(実効利回り・手数料率等(%))→ 売上 570 億円・営業利益 398 億円。残高 8.1 兆円(名目)× 率 0.70%、利益率 70%
倍率:事業の純利益 1,483 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.21 倍、時価総額 19,590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、北関東の与信費用も製造業の景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 22% 北関東の人口減少と製造業の構造変化が成長を抑える10年 利益 881 億円 · PER 10.9 倍 · 株価時価総額 1,024 円9,612 億円
国内の金利正常化は進むが、茨城・栃木の人口減少・事業所数の減少が計画より加速する。北関東の製造業は海外移転・電動化対応の遅れ等で構造変化に苦しみ、サプライチェーンに連なる中小企業の業績も伸び悩み、法人向け貸出の量の伸びがさらに鈍る。有価証券運用も市場環境の変化で収益貢献が計画より鈍化し、過去の外国債売却損のような評価損が再び顔を出す場面もある。政策保有株式の削減は完了するが、与信費用の増加分を自社株買いの抑制で吸収する場面も出る。茨城・栃木という広域基盤だけでは成長の鈍さを十分に補えない10年になる。
- 法人貸出:数量 9.2(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,033 億円・営業利益 684 億円。残高 9.2 兆円(名目)× 利ざや 1.12%、利益率 66%
- 個人貸出:数量 6.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.0%(貸出利ざや(%))→ 売上 655 億円・営業利益 417 億円。残高 6.6 兆円(名目)× 利ざや 0.99%、利益率 64%
- 資産運用・ソリューション:数量 6.9(預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円))× 価格 0.8%(実効利回り・手数料率等(%))→ 売上 515 億円・営業利益 314 億円。残高 6.9 兆円(名目)× 率 0.75%、利益率 61%
倍率:10年後のROE6.4%(純利益881億円÷自己資本13,786億円)。ROEはk8.25%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。競争や統合の遅れで稼ぐ力が鈍る姿。上限の9.0割に置き、10.91倍。還元を会社の方針(65%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:茨城・栃木の人口減少が計画より加速し、北関東の製造業が構造変化(海外移転・電動化対応の遅れ等)で停滞する想定。製造業比重の高さを踏まえ千葉銀行よりやや重めの確率を置く。10年という期間では停滞する年も相応に混ざる。
悲観 13% 構造的に負け、信用収縮と製造業の空洞化が重なる10年 利益 239 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 247 円2,318 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、北関東の自動車・電機関連の製造業の空洞化(海外移転の加速)が進んで与信費用が急増する。人口減少が想定を超えて加速し、茨城・栃木の貸出需要そのものが縮小する。有価証券運用も金利の急変動で評価損を繰り返し、過去の外国債売却損のような事例が再発する。秋野社長が語った再編・買収も実を結ばず、政策保有株式の売却で資本は確保するものの、自己資本比率5.1%という元々低めの資本バッファのもとで、広域基盤という強みだけでは資本効率の低さを補えず、地方銀行としての存在意義そのものが問われる苦しい10年になる。
- 法人貸出:数量 7.3(法人・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 283 億円・営業利益 130 億円。残高 7.3 兆円(名目)× 利ざや 0.39%、利益率 46%
- 個人貸出:数量 5.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 164 億円・営業利益 65 億円。残高 5.0 兆円(名目)× 利ざや 0.33%、利益率 39%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.5(預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円))× 価格 0.3%(実効利回り・手数料率等(%))→ 売上 137 億円・営業利益 53 億円。残高 5.5 兆円(名目)× 率 0.25%、利益率 39%
倍率:10年後のROE2.2%(純利益239億円÷自己資本10,782億円)は k8.25% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.1倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の8.0割に置き、9.70倍。今の自己資本10,771億円に対する倍率は0.22倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。悲観の利益は、貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%(純利益239億円)に置いた。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、北関東の製造業の空洞化(海外移転の加速)、有価証券運用の失敗、茨城・栃木の人口減少の加速といった複合的な悪材料が10年のどこかで重なる想定。製造業比重の高さを踏まえ千葉銀行よりやや重めの確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
茨城県・栃木県の中小企業向け事業性融資(自動車・電機関連の製造業サプライチェーンを含む)と公共向け貸出。
| 数量法人・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 1.1% | 840 | 500 |
| 10 年後 中立 | 10.8 | 1.5% | 1,613 | 1,124 |
取り方:貸出金残高14.0兆円のうち法人・公共向けを約57%の8.0兆円とおき、利ざやを1.05%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.27%、10 年で +0.45% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 3.0%(物価 3% + 実質 +0.0%)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。資産形成・相続関連の需要も含む。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 0.9% | 510 | 300 |
| 10 年後 中立 | 7.7 | 1.3% | 960 | 643 |
取り方:貸出金残高の残り約43%を個人向け6.0兆円とおき、住宅ローン中心の利ざやを0.85%とした。 2026-10-18 の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を 40% と置いた。短期金利が今の 1% 前後から 2% へ上がる間に、変動金利の貸出の金利はほぼ全部上がり、預金の金利は 40% だけ上がるので、固定金利の住宅ローンや定期預金の遅れも含めて中立の利ざやは 3 年で +0.24%、10 年で +0.40% 広がると置いた(利ざやは率なので物価では上がらない)。 残高はお金の量なので名目経済に合わせて伸びる:中立で年 2.5%(物価 3% + 実質 -0.5%、地元の人口減を含む)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
資産運用・ソリューション
投資信託・保険等の預かり資産業務、事業承継・M&Aアドバイザリー、および有価証券運用(自己運用)の収益を含む非金利・運用収益。
| 数量預かり資産残高+有価証券運用規模(兆円) | 価格実効利回り・手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.5 | 0.7% | 385 | 200 |
| 10 年後 中立 | 8.1 | 0.7% | 570 | 398 |
取り方:預かり資産残高と自己運用の有価証券(2023年3月末から約8,000億円積み増し)の収益貢献を合わせて5.5兆円、実効利回り・手数料率を0.7%とおいた。 預かり・受託資産はお金の量なので名目で伸びる:中立で年 4.0%(物価 3% + 実質の資産形成)以上。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の10年の上昇を支える値上げの開示・金利などの事業の理由を、具体的な数字や出典つきで書けないので、楽観・やや楽観・中立は現在の0.7%の横ばいにした。やや悲観・悲観は据え置き。)
リスクと懸念
北関東の製造業サイクルへの感応度
茨城・栃木は自動車・電機関連の製造業集積地であり、グローバルな需給・サプライチェーンの変動に千葉県・神奈川県など首都圏地銀よりも感応しやすい。世界的な景気減速が来れば、製造業サプライチェーンに連なる中小企業の与信費用が急増しやすい。
自己資本比率の低さ
自己資本比率は単純指標で5.1%とkabufuの脆さスコアでは低めに判定される。千葉銀行(5.9%)と同様に資本の余裕が乏しく、信用サイクルの悪化局面や保有有価証券の評価損が重なれば、資本とROEが一時的に大きく傷みやすい。
有価証券運用の巧拙
2023年3月末から有価証券残高を約8,000億円積極的に積み増し、過去には外国債で売却損を計上した経緯がある。現在は国内株式の益出しと低利回り国内債の入替えで収益を支えているが、金利変動への対応を誤れば評価損が再発するリスクがあり、収益の重要な柱である分、他の地方銀行より振れ幅も相対的に大きい。
統合シナジーの一巡
常陽・足利の経営統合は2016年に実現し10年が経過しており、千葉銀行の千葉興業銀行統合やしずおかフィナンシャルグループの名古屋銀行統合のような「これから実現する」新規シナジーという上振れ材料に乏しい。成長の軸は金利サイクルと有価証券運用、次なる再編の実行力に依存する。
政策保有株式削減の実効性
2028年3月末までに2023年3月末比で時価300億円削減する目標を掲げるが、3年間で357億円削減したにもかかわらず株価上昇で572億円増加し、差し引きではネットで215億円の増加にとどまっている。削減ペースが株高に負け続けるリスクがある。
次なる再編・買収の実行リスク
秋野哲也社長は「500億円規模の買収も視野」と次なる再編・買収への意欲を語っており、守りだけでなく攻めに出る可能性がある。実行すれば割高な買収やのれんの減損リスクを伴う可能性があり、価値を生むか壊すかは経営の実行力次第という未知数を抱える。
茨城・栃木の人口減少
茨城・栃木は他の地方と同様に人口減少・事業所数の減少が続いており、法人・個人向け貸出の量の伸びは長期的に鈍い。貸出金シェア39.7%・預金シェア49.1%と既に高い水準にあるため、さらなるシェア拡大の余地は限られ、成長の軸は利ざやと非金利収益にますます依存する。
今後の分かれ目
- 会社の業績予想が2027〜2028年3月期の上方修正ペースを維持したら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。決算ごとの通期業績予想の修正状況を確認する。
- 北関東の自動車・電機関連の製造業で輸出が急減したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。茨城・栃木の与信費用の四半期ごとの動きを確認する。
- 有価証券運用で大きな評価損・売却損が再発したら
- やや悲観側に重みを移す。有価証券の構成(国内債・外債・株式)とその時点の評価損益を決算説明会で確認する。
- 秋野社長が語る「500億円規模の買収」が具体化したら
- 買収先・価格・のれんの規模を確認し、割安な買収であれば楽観側、割高であれば慎重に評価する。
- 政策保有株式の削減が株価上昇を上回るペースで進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率をやや上げる。
- 茨城・栃木の人口減少が想定より速く進んだら
- やや悲観側に重みを移す。両県の貸出需要・事業所数の推移を確認する。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・茨城栃木の貸出利ざやの推移
- 会社の通期業績予想の修正状況(上方修正の継続性)
- 北関東の製造業(自動車・電機)の輸出・生産動向
- 有価証券運用の構成と評価損益の推移
- 政策保有株式の削減進捗(2028年3月末に2023年3月末比300億円削減)
- 秋野社長が語る次なる再編・買収の具体化
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.25%(基本7.5%+quality)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9・8.5割に置いた(下限は1÷k=12.1倍。利ざや拡大が続き統合の経費削減も積み上がる)。やや悲観・悲観はROEがk以下なので、PERは1÷k=12.1倍が上限で、その9割・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造からROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.25%)と10年の中立のPERは11.2倍から9.5倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.19→14.93 倍・やや楽観 PER 12.64→14.05 倍・中立 PER 11.23→13.21 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β 0.67 × 5% + 規模 0.25%。基本7.5%に quality +0.75% を足して k 8.25%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(統合地銀の経費削減の実行)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。
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- めぶきFG秋野社長「500億円規模の買収も視野」、次なる再編へ絶対に譲れない2つの条件(ダイヤモンド・オンライン)
- コーポレート・ガバナンスに関する報告書(めぶきフィナンシャルグループ)
- 4行・グループが純利益増 めぶきFGなど北関東地銀の25年3月期(日本経済新聞)