結論
大光銀行は、新潟県長岡市に本店を置く第二地方銀行だ。貸出は1.2兆円、預金は1.5兆円。筆者の結論は、10年で見れば今の値段は割安寄りだが、安全域が厚い銀行ではない、というものだ。
今の稼ぎは低い。2026年3月期の純利益は約28億円で、ROEは3.5%にとどまる。貸出の利ざやが薄い時代が長く、経費に食われて利益が残らなかった。短期金利が2%へ上がると、貸出の金利が先に動き、預金の金利はあとから付いていく。この時間差が、薄い利益を厚くする。
本質の問いは、利ざやの改善がどこまで株主に残るかだ。県内には第四北越銀行という大きな競合がいて、預金の取り合いも続く。人口は2050年に今の7割強まで減る見通しで、貸出の量は伸びにくい。それでも、経費の伸びを物価並みに抑えれば、10年後の純利益は今の2倍半に届く。
弱点は資本の薄さだ。単純な自己資本比率は4%台で、債券の含み損が資本を削る。配当は増やしているが、積み上げる余裕は大きくない。筆者は、統合や買収の期待を値段に織り込まず、事業が稼ぐ力だけで測っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この銀行は「安いが、まだ強くない会社」と映る。
良い点は三つある。県内に根づいた店舗網と取引先の関係がある。金利が上がるほど、薄い利ざやが厚くなる構造がある。経営が増配など、株主に向き合う姿勢を見せ始めた。
気になる点も三つある。ROEが資本コストに遠く届かず、いまは資本を食う側の銀行だ。県内で最大手の競合に価格を決められる。人口減が構造的で、貸出の量では勝ちにくい。
筆者が重く見るのは、利ざやの改善がどれだけ株主に残るかだ。経費が物価並みに伸びれば、利益の増加は半分ほど消える。そこで、経費の伸びを物価の範囲に抑えられるかを中立の置き所にした。
今の値段は純資産の3分の1で、稼ぎが戻る前提が織り込まれていない。ただ、ROEが資本コストに届かない銀行の純資産は、額面どおりの価値ではない。安全域はあるが、厚いとは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、新潟県内の貸出だ。中小企業、自治体、個人から預金を集め、貸し出して、その金利の差を得る。貸出残高は1.19兆円、預金は1.50兆円。預金のうち貸出に回らない分は、国債・社債・投資信託・株式などで運用する。
店舗は71。うち県内が62、県外が8で、従業員は892人。前身は地域で資金を融通し合う無尽会社で、「身近でちょうどいい銀行」という看板を掲げる。大手にない小回りと対面の営業で、中小企業の資金繰りや事業承継の相談に乗ることを軸にしている。
手数料の稼ぎは小さい。役務の利益は約15億円で、銀行の粗利益の1割に届かない。中期経営計画は、法人向けのコンサルティングと預かり資産の販売を伸ばすとするが、まだ途上だ。2022年にはSBIグループと資本業務提携を結んだ。2025年度の提携の効果は約5.8億円で、純利益の2割ほどにあたる。
運用面では、2026年3月期に有価証券関係の損失が約13億円出た。債券の含み損を整理する局面で、2027年3月期は約7億円まで減る計画だ。株式の含み益は約110億円あり、政策投資株の時価は約98億円で純資産の12%になる。
優良さと弱いところ
堀はある。ただ、薄い。
県内の店舗網の厚みと、地元の中小企業との長い付き合いが強みだ。第四北越銀行と比べれば規模は小さいが、「小さいからこそ相談しやすい」という位置を取る。筆者は、営業現場の熱量と、取引先との対話の量を数字で追っている点を評価している。
弱みは三つある。第一に、値段を自分で決められない。県内の貸出は大きな競合と、信金・信組、ネット銀行が重なる市場で、金利は競争が決める。第二に、経費が重い。経費が粗利益に占める割合は約69%で、地銀の中でも高い。第三に、規模が小さく、システムや人への投資負担が重い。
資本の効率は悪い。ROEは3.5%で、会社自身が株主資本コストを8%程度と認識しているのに、届いていない。中計の目標も、ROE4%以上、純利益30億円以上と控えめだ。
経営は誠実で、配当を2025年度に前年から4割近く、2026年度はさらに2割ほど増やす計画だ(配当性向は30%台)。ただ、自社株買いの実績はなく、資本の使い方で株主に報いる動きはまだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行は「金利のある世界」の入口にいる。短期金利が2%へ上がる間、変動金利の貸出はほぼそのまま利回りが上がり、預金は預金金利が付いていく分だけ遅れて上がる。短期2%・長期3%で落ち着けば、広がった利ざやは定着する。
新潟県は、競争の構図がはっきりした県だ。第四銀行と北越銀行が2018年に統合して第四北越銀行が生まれ、貸出の規模では大光銀行を大きく上回る。大光は第二地銀の位置を取るが、優良な大口の取引は第四北越に流れやすい。県内にはほかに信用金庫・信用組合・JAも多い。
最大の課題は人口だ。新潟県の人口は1997年の249万人をピークに減り続け、2050年には152万人、今の73%まで減ると推計される。高齢化率は34.3%で、全国より高い。事業所数も減るため、貸出の量は名目で物価並みにも伸びにくい。
開業率も2.5%と全国平均の3.9%を下回り、新しい貸出先が生まれにくい。人口減の中で稼ぎを守るには、事業承継のM&A、DXの提案、預かり資産の販売といった、貸出以外の収益が欠かせない。地銀の再編が全国で進むなか、新潟では第四北越が県内の再編の中心にあり、大光は単独のまま残る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。年間配当に下限(2022〜2024年3月期の水準)を置き、利益の水準に応じて増やす方針で、2026年3月期は性向30%、2027年3月期は同31%を見込む。自社株買いは、自己資本の充実を見ながら検討するとしているだけで、実績はない。
資本は薄い。単純な自己資本比率は4%台で、規制上の比率は8.6%。債券の含み損は約120億円ある一方、株式の含み益は約110億円で、差し引きの評価損益は約40億円のマイナスだ。純資産の12%を占める政策投資株は、純投資に移した銘柄から売却を進めている。
提携では、SBIグループとの2022年の資本業務提携が柱だ。SBI側は3%を上限に株を持ち、大株主には第四北越銀行(2.35%)、SBI地銀ホールディングス(2.81%)が並ぶ。この関係は、買われる側になる可能性と、提携の効果の両方を意味する。
筆者は、買収や統合の期待を価値に入れない。事業が稼ぐ力に、資本の薄さを織り込んで測る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利上昇の恩恵は、薄い利益の銀行ほど大きい。今のROEは3.5%と低く、利ざやが少し広がるだけで純利益は大きく動く。会社の2027年3月期の予想は純利益33億円だが、日銀の追加の利上げは織り込んでいない。短期金利が2%へ進めば、貸出の金利は上がり、預金の金利は遅れて追う。この差だけで、利益は上積みされる。
経費の改善余地もある。経費が粗利益の約69%を占めるのは、店舗網と人員が過去の低金利に合わせて重いからだ。業務改革とAIの活用で、人員を減らしながら対面営業の質を上げる計画が動いている。物価で人件費が上がっても、人員の減と店舗の見直しで相殺できる。
手数料の伸びも大きい。SBIとの提携は年に約6億円の効果を出し、法人のM&A仲介や事業承継の相談が増えている。新潟の中小企業は後継者不足を抱え、需要は底堅い。
さらに、資本が薄いのは見方を変えれば、同じ利益でROEが高く出るということだ。ROEは10年で資本コストを超え、配当も増やせる。
慎重な見方
人口が減る県で、貸出を増やして稼ぐ道は細い。新潟県の人口は2050年に今の73%まで減る。開業率は全国平均を大きく下回り、新しい貸出先は育たない。貸出の量が物価並みに伸びるという前提すら甘い。
県内最大の第四北越銀行が、優良な大口を押さえている。大光に残るのは、金利を下げないと取れない先と、貸倒れのリスクが高い先だ。預金でも、ネット銀行や大手が高い金利を出せば、預金を守るために金利を上げざるを得ない。預金金利が付いていく割合は、想定の4割を超える。
経費の改善も楽観できない。賃上げは毎年3%を超え、システム投資は地銀共通の負担だ。経費が粗利益に占める割合は、10年たっても今と大差ない可能性がある。
資本も薄い。債券の含み損は約120億円ある。景気が悪化して与信費用が増えれば、配当を削って資本を守るしかない。今の純利益28億円は、有価証券の整理損を引いたあとの数字だが、これは1回限りで終わるとも限らない。
どちらに重みを置いたか
金利の追い風という点では、強気の見方に分がある。ただ、人口減と県内の競合、資本の薄さは、慎重な見方のほうが具体的だ。
確率は、中立に3割、楽観側に3割、悲観側に4割を置いた。やや悲観を楽観側より厚くしたのは、利益を増やす経路が預金金利と競争に左右されるうえ、薄い資本が景気の悪化に弱いからだ。悲観を軽くしなかった理由も同じで、資本が薄い銀行は、悪い方向の傷が深い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,334 円695 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,123 円201 億円)。 今の値に割り戻すと 4,656 円441 億円、今との差 +64.6%、 期待の年率 +12.8%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 15,200 円1,441 億円 | 3,460 円328 億円 | +559.6% | +20.8% | 1,679 円159 億円 |
| やや楽観 | 21% | 11,660 円1,105 億円 | 2,806 円266 億円 | +411.3% | +17.7% | 3,038 円288 億円 |
| 中立 | 30% | 9,055 円859 億円 | 2,331 円221 億円 | +302.5% | +14.9% | 3,416 円324 億円 |
| やや悲観 | 26% | 2,468 円234 億円 | 1,698 円161 億円 | +47.3% | +3.9% | 1,083 円103 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,139 円108 億円 | 580 円55 億円 | −39.2% | −4.9% | 241 円23 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,334 円695 億円 | 2,123 円201 億円 | +234.3% | +12.8% | 9,457 円897 億円 |
今の株価時価総額 2,829 円268 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 手数料と経費改革が実り、利ざやが株主に厚く残る十年 利益 114 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 15,200 円1,441 億円
手数料と経費の改革がそろい、利ざやの改善が株主に厚く残る。SBIとの提携とM&A仲介、預かり資産の販売が計画を超え、手数料収入は今の1.6倍を超える。
短期金利は2%で定着し、法人貸出の利ざやは今より0.5%ほど広い水準で落ち着く。預金は、店舗網と地元の信頼を生かして低い金利で守る。貸出は、事業承継のM&Aと設備投資の需要を取り込み、人口減の中でも物価をやや上回って伸びる。
経費は、人員の減と店舗の見直しで、物価の伸びを大きく下回る。与信費用は低位で、債券の含み損は満期と償還で解消に向かう。資本は十分に積み上がり、配当に加えて自社株買いも実施される。県内2番手の地銀が、収益力を取り戻した十年だ。
- 法人・自治体貸出:数量 1.1(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 176 億円・営業利益 101 億円。残高1.10兆円(名目)× 利ざや1.60%
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 66 億円・営業利益 25 億円。残高0.48兆円 × 利ざや1.38%
- 有価証券・市場運用:数量 0.5(運用残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利回り-調達(%))→ 売上 75 億円・営業利益 72 億円。残高0.50兆円 × 運用ざや1.50%
- 手数料・コンサルティング:数量 1.5(手数料の対象となる取扱高(兆円))× 価格 0.2%(実効手数料率(%))→ 売上 25 億円・営業利益 12 億円。取扱高1.5兆円 × 手数料率0.17%
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.64 倍、時価総額 1,441 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:SBI提携と法人コンサルが計画を超え、経費も抑えられる筋書き。会社自身が10年後のROEの目標を資本コスト以上に置くので起こりうるが、人口減と最大手の競合を考えると、確度は高くない。
やや楽観 21% 利ざやが定着し、経費を物価並みに抑える十年 利益 94 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 11,660 円1,105 億円
金利のある世界が定着し、利ざやが広がったまま残る。短期金利は2%で落ち着き、貸出の金利は上がり、預金の金利は4割ほど遅れて追う。この差が10年を通して利益を押し上げる。
貸出の量は、新潟の人口減のなかでも名目で物価に近い伸びを保つ。第四北越と競り合う大口は取れないが、中小企業の事業承継や設備の資金需要は残る。手数料は、預かり資産の増加とSBI提携で緩やかに伸びる。
経費は物価と賃上げで増えるが、人員の減と店舗の見直しで、物価よりやや低い伸びにとどまる。与信費用は平均的な水準に戻る。配当は少しずつ増え、自己資本も積み上がる。派手な上振れはないが、薄かった稼ぎが資本コストの近くまで戻る十年だ。
- 法人・自治体貸出:数量 1.1(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 164 億円・営業利益 86 億円。残高1.06兆円 × 利ざや1.55%
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 63 億円・営業利益 21 億円。残高0.47兆円 × 利ざや1.34%
- 有価証券・市場運用:数量 0.5(運用残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利回り-調達(%))→ 売上 69 億円・営業利益 65 億円。残高0.47兆円 × 運用ざや1.46%
- 手数料・コンサルティング:数量 1.4(手数料の対象となる取扱高(兆円))× 価格 0.2%(実効手数料率(%))→ 売上 23 億円・営業利益 10 億円。取扱高1.4兆円 × 手数料率0.16%
倍率:事業の純利益 94 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、利ざやが広がったまま残る筋書き。金利の動きは確かで、2025年度の増配と純利益の改善という実績もある。楽観側のなかでは最も起こりやすい。
中立 30% 利ざやは定着するが、経費と競争に半分を取られる十年 利益 73 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 9,055 円859 億円
金利のある世界が定着し、利ざやは今より0.4%ほど広い水準に落ち着く。ただし、広がった分の一部は、預金金利の引き上げと貸出の値引きに消える。預金金利が付いていく割合は45%と、地銀の標準の40%より高めに置いた。県内の最大手とネット銀行に挟まれ、預金の取り合いが続くためだ。
貸出の量は、人口減と物価の上昇を合わせて、名目で年に2.4%ほど伸びる。実質ではほぼ横ばいだ。手数料は、預かり資産の増加で伸びるが、率は上がらない。
経費は、人件費が物価と賃上げで増えるため、10年で1.3倍になる。システムの償却は、既存の分は取得時の値段のままだが、更新の投資で新しい分が足される。与信費用は平均で貸出の0.14%に戻る。中計の目標は超えるが、ROEは資本コストには届かない。薄い資本が足かせとなる、中程度の十年だ。
- 法人・自治体貸出:数量 1.0(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 153 億円・営業利益 73 億円。残高1.02兆円(名目)× 利ざや1.50%
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 59 億円・営業利益 16 億円。残高0.455兆円 × 利ざや1.30%
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(運用残高(兆円))× 価格 1.4%(運用利回り-調達(%))→ 売上 62 億円・営業利益 56 億円。残高0.44兆円 × 運用ざや1.42%
- 手数料・コンサルティング:数量 1.3(手数料の対象となる取扱高(兆円))× 価格 0.2%(実効手数料率(%))→ 売上 20 億円・営業利益 7 億円。取扱高1.34兆円 × 手数料率0.15%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 858 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、経費が物価並みに増える筋書き。強い堀があるとは言えず、県内2番手の位置も変わらないので、中心の確率は3割にとどめた。
やや悲観 26% 人口減と競争で、利ざやの改善が経費に消える十年 利益 36 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 2,468 円234 億円
人口減と競争で、利ざやの改善が経費に消える。新潟の人口減は想定を上回り、法人の貸出は物価に届かない伸びにとどまる。第四北越は優良な大口を押さえ、大光には金利を下げないと取れない先が残る。預金は、ネット銀行や大手に流出し、預金金利を上げて守らざるを得ない。
手数料は、競合との値引きと低コスト商品の広がりで率が下がる。経費は賃上げとシステム投資で10年で1.34倍に膨らみ、人員の減では追いつかない。与信費用は、景気の後退を一度挟んで貸出の0.2%まで上がる。
純利益は今の1.3倍にとどまり、ROEは3%台に張り付く。配当は維持するが、自己資本は増えない。株主からの圧力はあっても、打てる手が少ない苦しい十年だ。
- 法人・自治体貸出:数量 1.0(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 133 億円・営業利益 47 億円。残高0.95兆円 × 利ざや1.40%
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 52 億円・営業利益 6 億円。残高0.43兆円 × 利ざや1.20%
- 有価証券・市場運用:数量 0.4(運用残高(兆円))× 価格 1.4%(運用利回り-調達(%))→ 売上 54 億円・営業利益 45 億円。残高0.40兆円 × 運用ざや1.35%
- 手数料・コンサルティング:数量 1.2(手数料の対象となる取扱高(兆円))× 価格 0.1%(実効手数料率(%))→ 売上 17 億円・営業利益 4 億円。取扱高1.2兆円 × 手数料率0.14%
倍率:10年後のROE3.7%(純利益36億円÷自己資本967億円)。ROEはk8.5%を大きく下回るので、ためた利益は額面未満の価値になる。RONICは6.1%に薄まり、正当化PERは7.7倍。稼ぐ力は構造的に細り、6.5倍に置いた。今の自己資本806億円に対しては約0.3倍。
確率:人口減が想定より速く、第四北越に優良な取引先を取られ、利ざやの改善が経費に消える筋書き。足もとの預金競争と賃上げの流れは、すでに現実に起きている。
悲観 14% 県内の競争に負け、貸出が縮み、統合でも買い叩かれる十年 利益 5 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 1,139 円108 億円
県内の競争に負け、貸出が縮む。第四北越とネット銀行に優良な取引先を取られ、大光に残るのは採算の低い貸出と、貸倒れの危うい先だ。預金は流出し、金利を上げて守るため、利ざやは今から広がらない。
10年のどこかで景気が大きく悪化し、中小企業の倒産が増える。与信費用は貸出の0.3%近くまで膨らみ、債券と株式にも評価損が出て、薄い自己資本が傷つく。配当は削られ、資本を守る経営になる。
店舗と人員を急いで減らして経費を抑えるが、収益の減少のほうが速い。外部との提携や統合の話も、条件が悪く、資本を足して延命する形になる。構造的に稼ぐ力を失い、純利益がほぼゼロに近づく十年だ。
- 法人・自治体貸出:数量 0.9(法人・自治体向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 110 億円・営業利益 23 億円。残高0.88兆円 × 利ざや1.25%(競争と預金金利で広がらず)
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 41 億円・営業利益 −4 億円。残高0.39兆円 × 利ざや1.05%
- 有価証券・市場運用:数量 0.3(運用残高(兆円))× 価格 1.3%(運用利回り-調達(%))→ 売上 42 億円・営業利益 32 億円。残高0.34兆円 × 運用ざや1.25%(評価損を含む)
- 手数料・コンサルティング:数量 1.1(手数料の対象となる取扱高(兆円))× 価格 0.1%(実効手数料率(%))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。取扱高1.05兆円 × 手数料率0.125%
倍率:10年後のROEは0.6%でk8.5%を大きく下回る。稼ぐ力(純利益5億円÷k)は約60億円で、株主の取り分としては小さい。値は稼ぐ力ではなく、売れる資産(株式の売却手取り、税引き後)の約108億円に置いた。今の自己資本806億円に対するPBRは約0.13倍。やや悲観の6.5倍より低い。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.134 倍・時価総額 108 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:県内の競争に構造的に負け、景気の悪化と薄い資本が重なる筋書き。資本が薄い銀行は悪い方向の傷が深く、人口減も重なるので、1割を超えて置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・自治体貸出
県内の中小企業・自治体・事業承継向けの貸出が中心。事業性の貸出全体を含む。
| 数量法人・自治体向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 1.1% | 88 | 34 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.5% | 153 | 73 |
取り方:貸出残高1.19兆円(2026年3月末、決算概要)から個人向け0.39兆円を引いた0.80兆円を、法人・自治体向けとした(開示の中小企業向け5,345億円と、大企業・自治体などの合算)。資金利益170億円(有価証券利息を含む)を、貸出と運用に配分した推定で、貸出の利ざやは1.1%と置いた。経費配分は推定で、配分後の利益率は約39%。数量は残高なので名目。利ざやは率なので、物価は掛けていない。
個人貸出
住宅ローン、アパートローン、カードローンなどの個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1.0% | 37 | 8 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 1.3% | 59 | 16 |
取り方:個人向け貸出残高3,932億円(2026年3月末、決算概要)を使用。うち住宅ローンは3,652億円。住宅ローンは競争が激しく、利ざやは法人より薄い0.95%と置いた。経費配分後の利益率は約21%と薄い。数量は名目、率に物価は掛けていない。
有価証券・市場運用
預金のうち貸出に回らない分の運用。国債・地方債・社債・投資信託・株式・外債など。
| 数量運用残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1.3% | 46 | 30 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1.4% | 62 | 56 |
取り方:その他有価証券の貸借対照表計上額3,087億円と満期保有債券・株式を合わせ、運用残高を約0.35兆円と推定した(ディスクロージャー2026)。資金利益170億円から貸出分を引いた残りが運用の稼ぎで、運用ざやは1.3%。2026年3月期の有価証券関係損失13.5億円は、ここの損益に含めた。経費は小さい。
手数料・コンサルティング
為替・ローン等の役務、投信・保険の販売、法人のコンサルティングとM&A仲介、SBI提携の効果。
| 数量手数料の対象となる取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 0.2% | 15 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 0.2% | 20 | 7 |
取り方:役務取引等利益15.3億円(2026年3月期)を、対象取扱高1.02兆円(預かり資産・為替・ローン実行などの合算の推定)と実効手数料率0.15%に分けた。開示の内訳ではなく推定。人件費の比重が高く、経費配分後の利益率は約33%。
リスクと懸念
薄い資本と評価損
単純な自己資本比率は4%台で、債券の含み損は約120億円。株式の含み益と差し引きで約40億円の評価損が出ている。景気の悪化で与信費用が増えれば、配当を削って資本を守るしかない。
県内最大手との競争
新潟県の貸出では第四北越銀行が圧倒的な地位にある。優良な大口は第四北越に流れやすく、大光は金利を下げて量を確保する側に回る。ここで利ざやの改善が消えると、ROEは4%前後にとどまる。
人口減の速さ
新潟県の人口は2050年に今の73%まで減る見通しで、高齢化率も全国より高い。開業率は全国平均を大きく下回り、新しい貸出先が生まれにくい。貸出の量が実質で縮めば、固定費の重い店舗網が負担になる。
預金金利の追随と流出
短期金利が2%まで上がる間、預金金利が付いていく割合が想定の4割を超えれば、利ざやの改善は小さくなる。ネット銀行や大手が高い金利を出せば、預金の流出か金利の引き上げを迫られる。
経費の重さ
経費が粗利益に占める割合は約69%で、会社の計画でも70%以下が目標だ。賃上げは毎年続き、システム投資も地銀共通の負担になる。人員の減と店舗の見直しが遅れれば、利益の増加は経費に吸われる。
統合・提携の行方
SBIグループが3%、第四北越銀行が2.35%を持つ。統合や買収の話が出たとき、買われる側として条件が悪ければ、少数株主の取り分が小さくなる。逆に、統合が実らなければ、単独で投資を背負う。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%まで引き上げ、預金金利の追随が遅いまま推移したら
- 貸出利回りと預金利回りの差が早く広がるので、楽観側の確率を上げてよい。決算の資金利益の伸びで確かめる。
- 預金金利が付いていく割合が5割を超えたら
- 利ざやの改善が目減りするため、中立の純利益を下げ、やや悲観側の確率を上げる。県内の預金残高の動きが目印になる。
- 第四北越銀行が県内の大口取引や預金で攻勢を強めたら
- 価格を決める力が弱いという見方が裏づけられる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 法人のM&A仲介や預かり資産の手数料が、計画を超えて伸びたら
- 利益の質が金利依存から手数料へ移る。楽観側へ重みを移し、正当化PERの上限に近い倍率を置ける。
- 景気が悪化して与信費用が急増し、配当が削られたら
- 資本の薄さが現実の傷になる。悲観側へ重みを移し、自己資本比率が回復するまで中立の確率を下げる。
- 次の中期経営計画で、ROEの目標と自社株買いを含む還元の方針が示されたら
- 目標が資本コスト8%に近く、還元も厚ければ、中立の価値を押し上げる。控えめな目標なら、今の見方を保つ。
- SBIや他行からの出資の拡大、統合の提案が正式に出たら
- 条件次第で価値は大きく変わる。買われる値段が資本コストを上回る水準なら楽観側へ、薄まる形なら中立の価値を見直す。
見ておくもの
- 資金利益と、貸出利回り・預金利回りの差の推移
- 経費が粗利益に占める割合(会社の目標は70%以下)
- 与信費用と、債券・株式の評価損益
- 自己資本比率と、次の中期経営計画(2027年4月開始)のROE・還元の目標
- SBIグループ・第四北越銀行の保有比率と、統合・提携の発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は、10年後のROEとk8.5%(基本7.5%+quality+1.0%)・g4.0%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)を出し、その9.5・9・8割に置いた。やや悲観は稼ぐ力から6.5倍、悲観は売れる資産の手取り約108億円に置いた。今の株価が倍になっても半分になっても、この数字は動かない。今の純利益は有価証券の整理損で低く出ているので、10年の筋書きは今の倍率と独立に置いた。リース会計(新リース会計基準)の影響は、店舗を借りる影響が銀行では小さいので、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。同じ領域の北日本銀行・山形銀行と比べると、やや悲観の確率を厚く置いた点は同じで、中立のROEは6.8%と近い水準になった。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.64 倍・やや楽観 PER 10.5→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.0%を足してk8.5%。銀行は預金が仕入れなので、利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。資本の薄さ、統合や買収の可能性などの個別のリスクはkに足さず、筋書きと確率で表した。同じ領域の横浜FG・千葉銀行(+0.5%)より高く、筑波銀行・北日本銀行(+1.0%)と同じにしたのは、県内2番手で人口減が速いため。