結論
三十三フィナンシャルグループは、三重県第 2 位の三十三銀行を持つ地方銀行グループだ。筆者の結論は、10 年の価値は今の値段を2割余り下回る、つまりやや割高というものである。
金利が上がる追い風は本物だが、同業のすべてに吹いている。三十三の弱みは、県内首位の百五銀行に規模で劣ること、自己資本が薄いこと、単独では経費率を下げる余地が限られることだ。
稼ぎの土台は、三重と愛知の中小企業向け貸出である。貸出は約 3 兆円で、約 8 割が中小企業向けだ。短期金利が 2% に上がれば利ざやは広がり、純利益は今の 124 億円から、10 年後の中立で 234 億円まで増える。ただ、自己資本も積み上がり、ROE は 6% 台にとどまる。資本コストの 8% には届かない。
2026 年 5 月に基本合意したあいちフィナンシャルグループとの統合は、9 月に白紙へ戻った。規模を取りにいく手が 1 つ消えた形だ。社長は再統合を否定しておらず、次の相手探しが 10 年のいちばんの分かれ目になる。
強気の姿は、統合か提携で経費率が下がり、ROE が 8% 台に届く。弱気の姿は、保有債券の評価損と信用費用が薄い資本に直撃する。確率は中立に厚く、悲観側にやや寄せた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、三十三は「良い会社をそこそこの値段で買う」対象ではなく、「普通の会社を安全域つきで買う」かどうかの対象になる。筆者が見るのは 3 点だ。
まず、10 年後もこの事業は残るか。銀行は地域に根づく規制業種で、消えない。ただし堀は広がらない。人口が減り、預金の競争が強まる中で、2 位の位置を保つだけで精一杯だ。
次に、株主が持ち帰れる利益はいくらか。純利益が増えても、自己資本比率が 5% と薄いため、利益の多くは資本を厚くするために使われる。10 年の ROE は 6% 台で、資本コストに届かない。ためた利益は、額面通りの価値にならない。
最後に、払う値段に安全域があるか。強気の筋書きでも、10 年の利回りは資本コストをわずかに上回る程度だ。悲観の筋書きは、今の時価総額の 4 分の 1 ほどまで沈む。上と下の幅に対して、確率で加重した価値は今の値段を下回る。
経営の資本の使い方は、改善の途上にある。還元は増え、政策保有株は減る。ただ、統合の失敗は、10 年かかる宿題が手つかずで残ったことを意味する。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、三重県と愛知県の中小企業・個人への貸出だ。三十三銀行は、2018 年に持株会社の下で一緒になった三重銀行と第三銀行が、2021 年に合併して生まれた。三重では百五銀行に次ぐ 2 位で、愛知にも店を持つ。
貸出は約 3 兆円で、中小企業向けが約 8 割を占める。貸出先は製造業と地場の事業者が中心だ。預金を集めて貸し出し、その金利の差が利益の柱になる。
貸出のほかに、有価証券の運用が大きい。保有は約 1 兆円で、国債や外債などの債券と株式からなる。低い利回りで買った債券が入れ替わるにつれ、運用収益が切り上がっていく。
手数料の稼ぎは、投資信託・保険・事業承継やM&Aの仲介だ。非金利収益は年 120 億円ほどで、中計はソリューション手数料を 60 億円から 70 億円へ伸ばす目標を置く。傘下に三十三リースがあるが、三重総合信用は 2025 年に全国保証へ譲渡して連結から外した。
本書では、これを法人貸出・個人貸出・有価証券運用と手数料の 3 つに分けて見る。それぞれ残高が実質でどう動き、率がどう変わるかが、10 年後の利益を決める。
優良さと弱いところ
堀は薄くはないが、厚くもない。三十三銀行は三重で 2 位の地位があり、地元企業との取引が長い。ただ、県内首位の百五銀行は貸出と預金で 4 割超を握り、優良な取引先ほど百五が先に取る。貸出の値段は競争で決まり、値決め力は普通だ。
資本は薄い。単純な自己資本比率は 5% で、同業の中でも低い方に入る。規制上の比率は 8% 台を保つが、保有債券や株式の評価が崩れると余裕は小さい。政策保有株は純資産の 2 割ほどで、2028 年度末までに 2 割未満へ減らす計画だ。
経営の力点は、効率と還元に置かれている。総合店への集約、事務量の 3 割減、銀行職員の自然減による経費の圧縮が進む。配当性向 30% を目安に、安定配当の下限も設けた。ただ、自社株買いの計画は中計の資料に見当たらない。
筆者が弱みと見るのは、規模の小ささだ。システムや本部の費用を割る人数が少なく、単独では経費率を大きく下げにくい。あいちFG との統合が白紙に戻ったのは、この弱みが残ったままという意味でもある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行にとって、いまは 30 年ぶりの追い風だ。日銀が利上げを進め、短期金利は 2% へ向かう。貸出の利ざやが広がり、これまで赤字に近かった貸出も収益が上がる。ただし預金の金利も上がり、広がった分の一部は預金者に渡る。
一方で、地域経済の縮みは止まらない。三重は人口減が続き、貸出の量は実質で増えにくい。愛知は製造業の資金需要があるが、愛知銀行・中京銀行の合併を始め、再編が進んだ強い銀行が待ち構えている。
業界は再編の最中だ。千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかFG と名古屋銀行が統合に動き、「1 県 1 行」へ収束していく。再編した銀行は、システムの共通化と店舗の統廃合で経費率を下げる。単独のまま残る銀行は、規模の経済が働かず、二極化が進む。
三十三はこの分かれ目にいる。あいちFG との統合が白紙に戻り、次の相手が決まるかどうかで、10 年後の姿が変わる。決まれば強気の筋書き、決まらなければ中立か慎重な筋書きに近づく。
東海の同業では、百五銀行が三重で首位、あいちFG が愛知で単独を選んだ。名古屋圏の需要を取り込むには、競争相手の強さを前提にせざるを得ない。
資本政策と M&A
還元は少しずつ厚くなっている。2026 年 3 月期の配当性向は 30% で、安定配当の下限を設けつつ、今期も配当を上方修正した。自社株買いは今の中計に計画が見当たらず、還元の余地は残っている。
政策保有株は、2024 年度末の残高が 473 億円で、純資産の約 2 割だ。2028 年度末までに 2 割未満へ下げる計画で、売却益は資本の厚みに戻る。ただ、これは評価益を取り崩す動きでもあり、利益の質は割り引いて見る必要がある。
再編の動きは、資本政策の最大の論点だ。あいちFG との統合は、2026 年 5 月の基本合意から 4 か月で白紙に戻った。持株会社の方向性の違いが理由とされる。社長は、理想の姿に近づく話なら再び統合を検討する余地があると述べた。
小さな銀行が、買われる側に回るか、組む側に回るかは、まだ決まっていない。筆者は、条件のよい相手が現れるまでは単独で経費を詰める時期が続くと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の上昇は、地方銀行の稼ぎの構造を変える。短期金利が 2% に上がれば、中小企業向けの貸出は利ざやが広がり、有価証券の入れ替えも収益を押し上げる。三十三は貸出の約 8 割が中小企業向けで、金利に素直に反応する。
中計の見直しでも、純利益の目標は 110 億円から 135 億円に上がり、今期の経常利益の予想も 245 億円へ上方修正された。会社はまだ上積みを見せている段階だ。
統合が白紙になったのは、悪い話だけではない。条件の悪い統合で価値を壊すより、白紙に戻して次の相手を探す方が、資本の使い方としては正しい。社長は再統合を否定しておらず、東海の再編は続くので、相手は必ず現れる。
政策保有株の削減と配当性向の引き上げが進めば、ROE は 8% 台に乗る。資本コストを超える銀行になれば、倍率も 12 倍に近づく。今の時価総額は、10 年後の姿を安く見ている。
三重と愛知は、製造業の厚みで見れば日本でも強い地域だ。愛知側で取引先を広げられれば、人口減の三重を補って余りある。事業承継や M&A の仲介、新 NISA に向く預かり資産のように、利ざや以外の稼ぎも育っている。金利が上がる 10 年は、地銀が長い低迷から抜ける最初の 10 年になる。
慎重な見方
利益の増え方には天井がある。広がった利ざやの一部は、預金金利の上昇で消える。三重は人口が減り、貸出の量は実質で縮む。県内首位の百五銀行が優良な取引先を先に取り、愛知は強い銀行ばかりだ。
自己資本比率 5% の薄さが、最大の弱点である。保有債券や株式の評価が崩れれば、利益の何年分もが一度に消える。金利が上がる局面は、債券の含み損が出やすい局面でもある。
統合の白紙は、単独で経費率を下げる道が残らなかったことを意味する。職員の自然減や店舗の集約は、どの銀行もやっている。規模の差は、そこでは埋まらない。
10 年後の ROE が 6% 台なら、資本コストの 8% を下回る。資本コストに届かない銀行は、ためた利益に額面通りの価値がつかない。今の PBR が 1 倍を下回っていても、割安とは限らない。
東海は再編の主戦場でもある。しずおかFG と名古屋銀行が組み、あいち銀行と中京銀行は合併を済ませた。規模の大きい銀行が増えるほど、小さい 2 位は価格でも人材でも不利になる。統合が破談した直後の交渉力は弱く、次の相手には条件を譲らざるを得ない。社長が再統合を否定しなくても、それは時間が味方しないことの裏返しだ。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が、わずかに強い。利益が増えること自体は両者とも認めている。分かれるのは、増えた利益が資本コストを超える ROE になるかどうかで、ここは 7% 前後にとどまる見方の根拠が厚い。
統合の白紙は、強気にとっては待ちの理由、慎重にとっては宿題が残った理由だ。10 年の時間では、どちらにも転ぶ。確率は中立に 3 割を置き、やや悲観と悲観の合計を 38% と、やや楽観と楽観の合計 32% よりわずかに厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,460 円2,553 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 653 円678 億円)。 今の値に割り戻すと 1,584 円1,644 億円、今との差 −13.9%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,117 円4,273 億円 | 954 円990 億円 | +175.8% | +10.7% | 507 円526 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,396 円3,525 億円 | 810 円841 億円 | +128.8% | +8.6% | 925 円961 億円 |
| 中立 | 30% | 2,818 円2,925 億円 | 689 円715 億円 | +90.7% | +6.7% | 1,052 円1,092 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,606 円1,667 億円 | 523 円543 億円 | +15.8% | +1.5% | 511 円530 億円 |
| 悲観 | 14% | 501 円520 億円 | 338 円351 億円 | −54.4% | −7.6% | 117 円122 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,460 円2,553 億円 | 653 円678 億円 | +69.3% | +5.4% | 3,113 円3,231 億円 |
今の株価時価総額 1,839 円1,909 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 統合か提携で規模を取り、ROE が資本コストを超える10年 利益 337 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 4,117 円4,273 億円
統合か提携が実を結び、規模の弱みが消える。あいちFGとの話は白紙になったが、東海の地銀再編は続いており、次の組み合わせが決まる。システムと本部の費用が薄まり、貸出の営業力も上がる。
短期金利が 2% に定着し、中小企業向けの利ざやは素直に広がる。県外の愛知・名古屋圏で取引先を増やし、貸出は実質で 1 割伸びる。投信・保険・事業承継の手数料も、中計の目標を超えて育つ。
10 年後の純利益は 337 億円、ROE は 8% 台に乗る。資本コストを上回る水準で、ここまで来れば優良な地銀と呼べる。ただし、これは統合の相手と条件がうまくそろった時の姿で、確率は 1 割にとどめる。
- 法人・事業性貸出:数量 2.1(法人・事業性貸出残高(兆円、実質))× 価格 2.1%(貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目))→ 売上 431 億円・営業利益 198 億円。残高 2.10 兆円(実質)× 率 2.05%、営業利益率 46%
- 個人貸出:数量 1.1(個人向け貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.7%(貸出から得る収益率(%、名目))→ 売上 189 億円・営業利益 72 億円。残高 1.10 兆円(実質)× 率 1.72%、営業利益率 38%
- 有価証券運用・預かり資産・手数料:数量 2.7(有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質))× 価格 1.6%(運用収益と手数料の実効率(%、名目))→ 売上 424 億円・営業利益 212 億円。残高 2.65 兆円(実質)× 率 1.60%、営業利益率 50%
倍率:事業の純利益 337 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.68 倍、時価総額 4,273 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合・提携の相手が見つかり、経費率が 60% を切って利ざやの追い風が全部利益に残る。1 割は置く。
やや楽観 22% 利ざやが定着し、還元も厚くなる10年 利益 282 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,396 円3,525 億円
統合は実現しないが、単独でも経営の質が上がる。店舗を総合店に集約し、銀行職員は 2,900 人から 2,700 人へ自然に減る。事務量を 3 割減らす計画が進み、経費率は 65% 台に下がる。
金利の追い風は貸出の利ざやに素直に出る。貸出の量は、人口減が続く三重で実質横ばいに近い。愛知側の伸びがそれを補う。預かり資産は、新 NISA と相続の流れで伸びる。
純利益は 282 億円、ROE は 7% 台になる。還元は配当性向 30% から総還元 4 割強へ上がり、自社株買いも加わる。それでも資本コストには届かず、倍率は式の上限の 9 割にとどまる。
- 法人・事業性貸出:数量 2.0(法人・事業性貸出残高(兆円、実質))× 価格 2.0%(貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目))→ 売上 394 億円・営業利益 171 億円。残高 2.02 兆円(実質)× 率 1.95%、営業利益率 44%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.7%(貸出から得る収益率(%、名目))→ 売上 173 億円・営業利益 61 億円。残高 1.04 兆円(実質)× 率 1.66%、営業利益率 36%
- 有価証券運用・預かり資産・手数料:数量 2.5(有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質))× 価格 1.6%(運用収益と手数料の実効率(%、名目))→ 売上 381 億円・営業利益 179 億円。残高 2.46 兆円(実質)× 率 1.55%、営業利益率 47%
倍率:事業の純利益 282 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 3,525 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(ROE 6% 超)は達成圏で、経費の効率化も進んでいる。統合が無くても届く姿として 2 割強。
中立 30% 利ざやは広がるが、薄い資本と単独の限界が残る10年 利益 234 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,818 円2,925 億円
金利の追い風は確かだが、利益の増え方は緩やかだ。短期金利が 2% に定着し、中小企業向けの利ざやは広がる。一方で預金の取り合いも強まり、広がった分の一部は預金金利に消える。
貸出の量は、三重の人口減で実質 1 割ほど縮む法人・個人と、愛知側の小さな伸びが相殺する。有価証券は低い利回りの債券が入れ替わり、運用収益が切り上がる。手数料は預かり資産とともに伸びる。
純利益は 10 年で 124 億円から 234 億円になる。中計の最終年度の予想 178 億円の先を、物価並みの伸びで追う形だ。自己資本は厚くなるので、ROE は 6% 台にとどまる。資本コスト 8% に届かない銀行として、倍率は 10 倍前後になる。
- 法人・事業性貸出:数量 1.9(法人・事業性貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.8%(貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目))→ 売上 359 億円・営業利益 147 億円。残高 1.94 兆円(実質)× 率 1.85%、営業利益率 41%
- 個人貸出:数量 1.0(個人向け貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.6%(貸出から得る収益率(%、名目))→ 売上 158 億円・営業利益 52 億円。残高 0.99 兆円(実質)× 率 1.60%、営業利益率 33%
- 有価証券運用・預かり資産・手数料:数量 2.3(有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質))× 価格 1.5%(運用収益と手数料の実効率(%、名目))→ 売上 342 億円・営業利益 150 億円。残高 2.28 兆円(実質)× 率 1.50%、営業利益率 44%
倍率:事業の純利益 234 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 2,925 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの拡大と、人口減・預金競争・薄い資本が拮抗する落としどころ。いちばん厚く置く。
やや悲観 24% 百五と名古屋勢に挟まれ、稼ぎが伸び悩む10年 利益 148 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 1,606 円1,667 億円
百五銀行と名古屋の大手に挟まれ、貸出の利ざやが思うように広がらない。三重では百五が県内の 4 割超を握り、優良な取引先は百五が先に取る。愛知では、再編済みの銀行が価格で攻めてくる。
預金の取り合いで、広がるはずの利ざやの半分近くが預金金利に消える。貸出は実質で 1 割縮み、事務の効率化も計画より遅れる。統合の話が出ない間、経費率は 70% 近くから下がらない。
純利益は 148 億円にとどまり、ROE は 5% を割る。今の水準を少し上回るだけで、金利が上がった意味が薄れる。自己資本は積み上がるのに稼ぎが伸びず、資本が寝た銀行になる。
- 法人・事業性貸出:数量 1.8(法人・事業性貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.7%(貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目))→ 売上 313 億円・営業利益 106 億円。残高 1.84 兆円(実質)× 率 1.70%、営業利益率 34%
- 個人貸出:数量 0.9(個人向け貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.5%(貸出から得る収益率(%、名目))→ 売上 135 億円・営業利益 35 億円。残高 0.90 兆円(実質)× 率 1.50%、営業利益率 26%
- 有価証券運用・預かり資産・手数料:数量 2.1(有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質))× 価格 1.4%(運用収益と手数料の実効率(%、名目))→ 売上 287 億円・営業利益 109 億円。残高 2.05 兆円(実質)× 率 1.40%、営業利益率 38%
倍率:10年後のROE4.4%(純利益148億円÷自己資本3,347億円)。ROEはk8%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「百五と名古屋勢に挟まれ、稼ぎが伸び悩む10年」。上限の9.0割に置き、11.26倍。還元を会社の方針(40%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:県内で百五に劣る 2 位であり、統合も白紙に戻った。経費率が下がらず、稼ぎが伸び悩む可能性を中立よりわずかに薄く置く。
悲観 14% 債券の損と信用費用で資本が痛み、優良ではなくなる10年 利益 52 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 501 円520 億円
構造的に負け、優良な銀行ではなくなる。地元の中小企業の倒産が続いて信用費用が膨らみ、金利が上がった後の保有債券の評価損も重なる。自己資本は薄く、損が出れば体力を一気に削られる。
貸出は人口減と競争で実質 2 割縮む。利ざやは広がらず、個人向けはほとんど稼げなくなる。県内 2 位の看板は残るが、百五と他県の大手に顧客を取られ続ける。
純利益は 52 億円、ROE は 2% 前後まで落ちる。減損で自己資本が減り、還元も細る。再編の相手としても、条件の悪い側に回る。
経費は物価で上がり続けるのに、収益の率は競争で上がらない。店舗を畳んでも、粗利が先に細る。10 年かけて静かに沈む姿である。
- 法人・事業性貸出:数量 1.6(法人・事業性貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.5%(貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目))→ 売上 237 億円・営業利益 47 億円。残高 1.60 兆円(実質)× 率 1.48%、営業利益率 20%
- 個人貸出:数量 0.8(個人向け貸出残高(兆円、実質))× 価格 1.4%(貸出から得る収益率(%、名目))→ 売上 101 億円・営業利益 8 億円。残高 0.75 兆円(実質)× 率 1.35%、営業利益率 8%
- 有価証券運用・預かり資産・手数料:数量 1.7(有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質))× 価格 1.3%(運用収益と手数料の実効率(%、名目))→ 売上 206 億円・営業利益 45 億円。残高 1.65 兆円(実質)× 率 1.25%、営業利益率 22%
倍率:10年後のROE2.0%(純利益52億円÷自己資本2,569億円)。ROEはk8%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「債券の損と信用費用で資本が痛み、優良ではなくなる10年」。上限の8.0割に置き、9.99倍。還元を会社の方針(40%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:自己資本比率 5% と薄く、保有債券の評価損と信用費用が重なると損が資本に直撃する。同業の悲観と同じ 1 割半に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・事業性貸出
三重・愛知の中小企業を中心とした事業性貸出と、地方公共団体向け。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円、実質) | 価格貸出から得る収益率(%、預金運用益込み・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1.2% | 230 | 87 |
| 10 年後 中立 | 1.9 | 1.8% | 359 | 147 |
取り方:貸出金は約 3.1 兆円(2025 年 9 月末 3.09 兆円)。中小企業向けが約 81% と開示されているので、法人・事業性・公共向けを約 2.0 兆円、個人向けを約 1.1 兆円と推定した(内訳は開示ではない)。収益率は預金運用益込みで 1.15%、経費割り振り後の営業利益率は 38%(推定)。残高は実質で置き、物価の分は率の指数に入れる。10 年は、短期金利が 2% に定着して貸出の収益率が広がる一方、預金金利の上昇で広がりの半分近くが消える前提。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円、実質) | 価格貸出から得る収益率(%、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 1.1% | 116 | 35 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.6% | 158 | 52 |
取り方:個人向け貸出を約 1.1 兆円と推定した(開示ではない)。住宅ローンは固定が多く収益率が薄いので 1.05%、営業利益率は 30%。残高は三重の人口減とネット銀行との競争で実質で縮む前提。物価は率の指数に入れる。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。 (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約86%だけ追うので、中立の率は10年で1.05%→1.19%(+0.14ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
有価証券運用・預かり資産・手数料
約 1 兆円の有価証券の運用、投信・保険の預かり資産、ソリューション手数料。
| 数量有価証券と預かり資産の残高の合計(兆円、実質) | 価格運用収益と手数料の実効率(%、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 1.2% | 219 | 92 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 1.5% | 342 | 150 |
取り方:有価証券 0.98 兆円(2025 年 9 月末)と、投信・保険などの預かり資産(開示が乏しく約 0.9 兆円と推定)を合わせて 1.9 兆円。実効率は運用収益と非金利収益(年約 120 億円)から 1.15% と推定した。営業利益率は 42%。債券の入れ替えで運用利回りが切り上がり、預かり資産は新 NISA と相続で実質で伸びる。 【2026-10-19 確認】数量は実質、価格は率×物価指数(1.34倍)で置く。物価は数量でなく価格側にだけ入れ、二重がけなし。
リスクと懸念
薄い自己資本と保有債券の評価損
単純な自己資本比率は 5% と薄い。金利が上がる局面は、保有債券の含み損が出やすい局面でもある。評価損が積み上がれば、規制上の余裕が減り、還元や貸出の拡大にブレーキがかかる。悲観の筋書きは、ここから始まる。
統合の白紙と単独の限界
あいちFG との統合は 2026 年 9 月に白紙へ戻った。単独では経費率を下げる余地が限られ、規模の差は職員の自然減や店舗集約では埋まらない。次の相手が決まらない期間が長引くほど、中立から慎重な筋書きに寄る。
百五銀行との競争
三重では百五銀行が県内の 4 割超を握る。優良な取引先、公金の預かり、個人の給与口座で、三十三は百五に先を取られやすい。貸出の値段は競争で決まり、預金の取り合いでも劣位に立つ。
預金金利の上昇が利ざやを食う
短期金利が 2% へ上がると、貸出の利ざやは広がるが、預金金利も上がる。ネット銀行やメガバンクが預金を取りにくれば、広がった分の大半が預金者に渡る。純利益の増え方は、この取り合いで決まる。
地域経済の縮みと信用費用
三重は人口減が続き、貸出の量は実質で増えにくい。地元の中小企業は、人件費の上昇と金利の上昇で収益を圧迫される。倒産が重なれば、信用費用が一気に膨らみ、利益の半分を飛ばす。
政策保有株の売却と利益の質
政策保有株は純資産の約 2 割で、2028 年度末までに 2 割未満へ減らす。売却益は資本を厚くするが、一度きりの利益だ。株価が崩れれば、評価損が自己資本を直接削る。利益の質は、売却益を除いて見る必要がある。
今後の分かれ目
- 新しい統合・提携の相手が決まる
- 経費率が下がる見込みが立ち、強気の筋書き(ROE 8% 台)の確率が上がる。条件が悪ければ、買われる側として価値が削られる。
- 単純な自己資本比率が 5% を割り込む、または債券の評価損が拡大する
- 還元と貸出の拡大が止まり、慎重から悲観の筋書きに近づく。
- 短期金利が 2% に届かず、1% 台前半で止まる
- 貸出の利ざやの広がりが半減し、中計の目標にも届きにくくなる。
- 自社株買いを含む総還元性向を 50% 超へ引き上げる
- ROE は 8% 台へ上がり、中立よりやや楽観の筋書きに寄る。
- 愛知側の事業性貸出が、中計の目標(1.42 兆円)を超えて伸びる
- 県外で顧客を取れている証拠で、人口減の影響が小さくなる。
- 百五銀行が他行と統合し、三重で圧倒的な 1 位になる
- 三十三は規模の差が広がり、孤立する。条件のよい相手を失い、慎重な筋書きの確率が上がる。
見ておくもの
- 四半期の純利益と、中計の最終年度(2027 年 3 月期)の達成度
- 単純な自己資本比率と保有債券の評価損益
- 貸出の利ざやと預金金利の差
- 地元(三重・愛知)の事業性貸出残高(目標 1.42 兆円)
- 統合・提携の報道と、次の中計の資本政策
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality +0.5%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.7・9割に置いた(下限は1÷k=12.5倍)。中立・やや悲観・悲観はROEがk(8%)以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その8.5・9・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約2%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは10.6倍から9.4倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.34→12.68 倍・やや楽観 PER 11.26→12.5 倍・中立 PER 10.62→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(統合の白紙・薄い自己資本)は k に足さず、筋書きと確率で表す。事業は傾いていないので上乗せは 0。同領域の百五銀行(+0.75%)より、規模の小ささと薄い資本の分だけ高く置いた。