結論
京葉銀行は、千葉県を地盤にする第二地方銀行である。預金は5.6兆円で、約8割が個人。貸出は4.5兆円で、住宅ローンと県内の中小企業向けが柱だ。筆者の結論は、会社の成長は本物だが、今の値段はその先まで織り込んでいる、というものだ。
稼ぐ力は金利で戻っている。貸出の利回りは2026年3月期に1.14%となり、2019年以来初めて1%を超えた。預貸ざやは0.94%まで広がり、純利益は159億円と過去最高になった。会社は今期190億円を見込み、長期ビジョンでは2032年度に350億円以上を掲げる。
ただ、足もとの利益には有価証券の売却損益が混じる。自己資本比率は簡易な計算で約5%と薄く、ROEは4.9%と資本コストに届かない。
最大の不安は地元の再編だ。2027年4月に千葉銀行と千葉興業銀行がひとつの持株会社になる。県内で規模をそろえた巨大グループと、京葉は単独で向き合う。
10年後の中立で、筆者はROEが7%台まで上がると見る。それでも資本コストの8%には届かない。利益の質と資本の薄さを考えると、今の時価総額は高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が見るのは、10年後も持ち続けたいか、そして払う値段に余裕があるかだ。
京葉の事業は分かりやすい。預金を集めて貸す。10年後も残る事業だ。だが堀は強くない。貸出の値段は競争で決まり、県内首位は規模を増していく。
株主が自由に使える利益、つまりオーナー利益は、見かけより小さい。貸出が伸びれば自己資本も増やす必要があり、利益のおよそ半分は事業に張りついたままだ。ROEが資本コストを下回る間は、ためた利益は額面未満の価値しかない。
経営の資本配分は、改善の途上にある。配当を厚くし、自社株買いも始めた。目標を低く置いて超え続けた点は、堅実とも、控えめとも読める。
安全域は、薄い。今の時価総額は、会社が今期見込む純利益の16倍だ。この利益は、金利の追い風が出始めた時点のもので、10年の中立で利益が7割増えても、ROEは資本コストに届かない。
筆者は、悪い会社とは見ない。ただ、良い会社と呼ぶには、資本の効率がまだ足りない。今の値段は、その差を埋めてくれる水準ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、預金を集めて貸し出すという、銀行のごく基本の仕事だ。預金5.6兆円のうち約8割が個人で、粘り強い資金源になっている。対面の相談と手数料の安さで、地元の個人客を引きつけてきた。
貸出は4.5兆円で、柱は2つある。法人向けは千葉県内の中小企業が中心だ。個人向けは住宅ローンが主役で、千葉は東京へ通う世帯が多く、需要が途切れにくい。
3つ目の稼ぎは有価証券の運用だ。国債や外債、株式、投資信託で運用し、利息と配当、売却損益を得る。2026年3月期は、運用の入れ替えで利益が大きく動いた。この部分は毎年ぶれる。
手数料の収入は弱い。投信や保険の販売などで稼ぐ役務取引等の利益は、2025年4〜12月で前年より13%減った。預かり資産ブームの追い風を、まだ取り込めていない。
経費は増えている。システム投資と賃上げで、同じ期間に12%増えた。この増加は物価が3%で進む10年の間、止まらない。
中期経営計画は2024年度から3年で、課題解決型の法人営業を強める内容だ。当初の目標は低く、連結ROE4%、純利益120億円だった。実績が先に超え、目標は190億円まで引き上げられた。目標が低かったことは、素直に差し引いて見る必要がある。
優良さと弱いところ
筆者が気にするのは、堀、つまり他社がまねできない強みの薄さだ。
強みは個人の預金基盤にある。預金の約8割は個人で、金利が上がっても一気には逃げにくい。千葉県は首都圏で人口が減りにくく、住宅ローンの需要が続く。地元密着の営業は、規模の小さい京葉の武器になっている。
弱みは3つある。1つ目は規模だ。県内首位の千葉銀行は、千葉興業銀行まで傘下に入れる。貸出の値付けでも人材の採用でも、規模の差は開く。2つ目は資本の薄さだ。簡易な自己資本比率は約5%で、債券や株式に評価損が出れば、すぐ響く。3つ目は利益の質だ。直近の純利益には有価証券の売却損益が混じり、本業の伸びだけではない。
2026年3月期の中身は悪くない。貸出は4%増え、預貸ざやは0.08ポイント広がった。単体のコア業務純益は31%増の202億円だった。ただ、これは堀の力というより、金利の追い風が出た結果だ。追い風が止まったあとも同じ利益を保てるか。そこが問われる。
資本の使い方は、よくなってきた。配当は利益の40%以上を目安にし、今期は上限110億円の自社株買いも決めた。ただし薄い資本で還元を厚くしすぎれば、貸出を伸ばす余力を削る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、量が伸びにくく、値段で稼ぐ局面に入った。日銀が政策金利を上げ、短期金利は2%へ向かう。貸出金利は先に上がり、預金金利は遅れてついてくる。この差が利ざやを広げる。
全国の銀行の貸出は、2026年に初めて600兆円を超え、前年比で5%を超えて伸びた。ただし伸びは大企業と都市部に偏る。千葉は地方銀行の中では恵まれた地域だが、世帯数がいずれ頭打ちになる点は変わらない。筆者は、地元の貸出の名目の伸びを年3%前後までと見る。
競争の形は変わる。千葉銀行と千葉興業銀行は、2027年4月にちばフィナンシャルグループを作る。総資産は約25兆円で、統合効果は2031年度末に業務純益で年120億〜160億円と見込まれている。同じ県内の京葉は、この規模と戦う。
再編は、京葉にとって脅威でもあり、機会でもある。県内に残る第二地銀は数少なく、統合の相手として価値がある。kabufuの推定では、10年以内にTOBや買収を受ける確率は15.9%だ。自らが相手を探しにいく力は、薄い資本から見て限られる。
資産運用は伸びしろだ。公募投信の残高は、2026年6月末に359兆円と過去最高を更新した。NISAの拡充も続く。だが京葉の手数料収入は減っており、この市場を取り込めていない。
最後に与信費用、つまり貸したお金が返らない損だ。今は歴史的な低水準にある。10年のどこかで景気の悪化を一度は経験し、そのとき中小企業向けの貸出が痛むのは、銀行の宿命である。
資本政策と M&A
資本政策は、この2年で大きく変わった。
還元の方針は、総還元性向40%程度から、配当性向40%以上に改まった。配当そのものを厚くする形だ。加えて、今期は上限110億円の自社株買いを決めた。
資本の薄さを考えると、これ以上は厚くしにくい。簡易な自己資本比率は約5%。貸出を年4%伸ばすなら、自己資本もほぼ同じだけ増やさなければならない。10年の総還元は、純利益の5割台半ばまでが限度だと筆者は見る。
政策保有株、つまり取引先と持ち合う株は、縮減する方針だ。ただ規模と期限は、筆者が確認できなかった。売却益は一時の押し上げで、長くは続かない。
M&Aでは、自ら買う側に回りにくい。論点は、買われる側としての価値だ。ちばフィナンシャルグループの誕生後、県内で残る第二地銀の位置づけは重くなる。ただし買収に応じるかどうかは経営陣の判断で、決めつけられない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の追い風は、まだ半分も出ていない。短期金利が2%へ向かう間に、貸出の金利はほぼ全部が上がる。預金の金利は4割しかついてこない。10年で預貸ざやは0.4ポイント以上広がり、貸出が4.5兆円から6兆円超へ伸びれば、利益は今の2倍を超える。
会社の目標は、いつも実績に抜かれてきた。2024年に掲げた純利益120億円は、190億円まで引き上げられた。長期ビジョンの350億円も、今は無理に見えて、数年後には通過点になる可能性がある。
再編は追い風にもなる。千葉の第二地銀は京葉が数少ない存在で、システムや事務を他行と共同化すれば、経費は下がる。千葉銀行・千葉興業銀行のグループが県内の貸出競争を一巡させたあと、京葉の個人預金基盤が見直される。
資本の薄さも、利益が出れば自然に改善する。自己資本は純利益と評価益で積み上がり、配当性向40%以上と自社株買いを両立させる余裕が生まれる。ROEが9%を超えれば、資本コストを上回る会社になる。
慎重な見方
利益の質に疑いがある。2026年3月期の純利益159億円には、有価証券の売却損益が混じる。本業のコア業務純益は202億円で、そこから与信費用や税を引くと、残る利益はもっと少ない。
金利の追い風は、預金金利が追いつけば終わる。預金は個人が8割で、ネット銀行や他行が高い金利を出せば、預金ベータは4割で済まない。利ざやの拡大は、想定より小さく終わりうる。
手数料は減っている。経費はシステムと賃上げで12%増えた。物価が3%で進む世界では、人件費は毎年重くなる。
最大の問題は規模だ。ちばフィナンシャルグループは、総資産25兆円で2031年度末に業務純益120億〜160億円の押し上げを狙う。同じ県内で、貸出の値付けも人の採用も、京葉は不利になる。
資本は薄い。自己資本比率は約5%で、債券や株式の評価損が出れば、貸出を伸ばす力が落ちる。景気が悪くなって与信費用が増える局面は、10年のどこかで必ず来る。その時、薄い資本で守りきれるかは分からない。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。金利の追い風は本物だが、それで利益は伸びても、資本が薄いままでは、ROEが資本コストに届きにくい。中立でも10年後のROEは7%台にとどまる。
そのため、確率は中立にいちばん重く、やや悲観と悲観を足して3割半ばに置いた。強気の見方には、会社の目標が毎回上回っている事実がある。この点は、楽観とやや楽観に3割台半ばの確率を残して反映した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,109 円3,606 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,084 円1,257 億円)。 今の値に割り戻すと 2,178 円2,526 億円、今との差 −10.8%、 期待の年率 +5.6%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,785 円5,549 億円 | 1,453 円1,685 億円 | +155.4% | +9.8% | 624 円723 億円 |
| やや楽観 | 24% | 4,045 円4,691 億円 | 1,301 円1,509 億円 | +118.9% | +8.2% | 1,283 円1,488 億円 |
| 中立 | 31% | 3,557 円4,125 億円 | 1,160 円1,345 億円 | +93.1% | +6.8% | 1,462 円1,696 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,173 円2,520 億円 | 909 円1,054 億円 | +26.2% | +2.4% | 678 円786 億円 |
| 悲観 | 13% | 612 円710 億円 | 517 円600 億円 | −53.7% | −7.4% | 147 円170 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,109 円3,606 億円 | 1,084 円1,257 億円 | +71.7% | +5.6% | 4,194 円4,864 億円 |
今の株価時価総額 2,442 円2,832 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 金利の追い風が長く続き、再編にも乗る10年 利益 422 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 4,785 円5,549 億円
金利は短期2%・長期3%で定着し、貸出の利ざやは法人で1.5%、個人で1.4%まで広がる。預金は個人の粘り強さが効き、預金金利はあまり上がらない。
貸出は千葉の住宅需要と中小企業の設備投資に支えられ、法人で5割、個人で4割弱増える。有価証券の運用も、新しい債券の高い利回りが乗って伸びる。
経費は、他行とのシステム共同化や事務の集約で、物価の上昇ほどは増えない。千葉銀行・千葉興業銀行のグループとは、貸出の値付けで正面からぶつからず、地域と顧客層で住み分ける。
10年後、純利益は420億円前後。会社が掲げる長期ビジョン(2032年度に350億円以上)を、物価の分を含めて上回る姿だ。自己資本も厚みを増し、ROEは8%台後半と資本コストを超える。
- 法人貸出:数量 3.8(法人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 574 億円・営業利益 271 億円。残高 3.82 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 47%
- 個人貸出:数量 2.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 386 億円・営業利益 166 億円。残高 2.76 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 43%
- 有価証券運用・手数料:数量 1.8(有価証券残高(兆円))× 価格 2.0%(運用利ざや+手数料の率(%))→ 売上 364 億円・営業利益 170 億円。残高 1.82 兆円(名目)× 率 2.00%、利益率 47%
倍率:事業の純利益 422 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.15 倍、時価総額 5,549 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定着、貸出の年4%台の伸び、経費の抑制、ちばFG誕生後の県内競争の落ち着きが、10年のあいだ全部そろう必要がある。会社の目標が毎回上回ってきた実績はあるが、薄い資本と規模の差が重く、確率は1割にとどめる。
やや楽観 24% 金利の追い風が続き、計画を上回って安定する10年 利益 375 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,045 円4,691 億円
金利は定着し、預貸ざやは法人で1.45%、個人で1.35%まで広がる。会社が2026年度に掲げた190億円は通過点になり、10年後もその延長で利益が伸びる。
貸出は法人で4割半ば、個人で3割強増える。千葉の人口は緩やかに減るが、首都圏のベッドタウンとして世帯数は保たれる。有価証券の運用は、金利の上昇で利回りが緩やかに上がる。
経費は物価に合わせて増える。システム投資は重いが、共同化で一部を抑える。千葉銀行・千葉興業銀行のグループは、システム統合で足踏みしている間に、京葉は個人の預金と住宅ローンで差を縮める。
10年後の純利益は375億円前後。ROEは8%ちょうどで資本コストに並ぶ。薄い資本と有価証券損益の揺れを抱えたまま、堅実に積み上げた10年になる。
- 法人貸出:数量 3.7(法人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 536 億円・営業利益 241 億円。残高 3.70 兆円(名目)× 率 1.45%、利益率 45%
- 個人貸出:数量 2.7(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 362 億円・営業利益 148 億円。残高 2.68 兆円(名目)× 率 1.35%、利益率 41%
- 有価証券運用・手数料:数量 1.8(有価証券残高(兆円))× 価格 1.9%(運用利ざや+手数料の率(%))→ 売上 337 億円・営業利益 145 億円。残高 1.76 兆円(名目)× 率 1.92%、利益率 43%
倍率:事業の純利益 375 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.51 倍、時価総額 4,691 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、会社の目標が引き続き実績に抜かれる筋書き。貸出は千葉の需要で年3%台後半伸びる。再編の影響は残るが、個人預金の基盤が守られる。強気の見方に実績の裏付けがあるので、3割弱ではなく2割台半ばに置く。
中立 31% 利ざやは広がるが、規模と資本の薄さが重しになる10年 利益 330 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,557 円4,125 億円
金利は短期2%・長期3%で定着し、預貸ざやは法人で1.4%、個人で1.3%まで広がる。ただし預金金利も遅れて上がるので、広がり方は穏やかだ。
貸出は法人で4割、個人で3割強増える。千葉の人口はゆるやかに減るが、住宅ローンの需要は首都圏のベッドタウンとして残る。投信や保険の手数料は、残高の伸びがあっても手数料率の低下で、大きくは増えない。
経費は物価と賃上げで年4%台のペースで膨らみ、利ざやの拡大の一部を食う。有価証券の損益は平均すれば小さい。与信費用は10年の間に一度景気の悪化を経て、平均で貸出の0.1%台に戻る。
千葉銀行・千葉興業銀行のグループとは、貸出の値付けで差をつけられる場面が増える。それでも個人預金の基盤は大きく崩れない。
10年後の純利益は330億円前後。ROEは7%台前半で、資本コストの8%には届かない。会社の目標は届かないが、今より大きく強い銀行になる。
- 法人貸出:数量 3.6(法人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 500 億円・営業利益 215 億円。残高 3.57 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 43%
- 個人貸出:数量 2.6(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 341 億円・営業利益 130 億円。残高 2.62 兆円(名目)× 率 1.30%、利益率 38%
- 有価証券運用・手数料:数量 1.7(有価証券残高(兆円))× 価格 1.8%(運用利ざや+手数料の率(%))→ 売上 313 億円・営業利益 125 億円。残高 1.69 兆円(名目)× 率 1.85%、利益率 40%
倍率:事業の純利益 330 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 4,125 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用が景気循環を経て平均的な水準に戻る、いちばん重く見る中心の筋書き。貸出は法人で年3.5%・個人で年3.0%伸び、会社の長期ビジョンには届かない。
やや悲観 22% 再編に押され、利ざやの拡大を使い切れない10年 利益 224 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 2,173 円2,520 億円
金利は定着するが、預金を取り合う競争が強まり、預金金利が想定より速く上がる。預貸ざやは法人で1.2%、個人で1.1%までしか広がらない。
千葉銀行・千葉興業銀行のグループが、統合の効果で経費を下げ、貸出の金利を詰めてくる。京葉は法人の大きな案件で負けが増え、貸出は法人で2割半ば、個人で2割弱の伸びにとどまる。
経費は物価に合わせて増えるが、収入の伸びがそれに追いつかない。有価証券の運用では、入れ替えのたびに売却損を出す。与信費用は、中小企業向けの貸出が景気の悪化で傷み、平均より重い水準になる。
10年後の純利益は225億円前後。ROEは5%弱で、資本コストを大きく下回る。今より稼ぐが、再編で規模を増した相手に、じりじり差を広げられていく。
- 法人貸出:数量 3.2(法人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 382 億円・営業利益 146 億円。残高 3.19 兆円(名目)× 率 1.20%、利益率 38%
- 個人貸出:数量 2.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 264 億円・営業利益 87 億円。残高 2.36 兆円(名目)× 率 1.12%、利益率 33%
- 有価証券運用・手数料:数量 1.6(有価証券残高(兆円))× 価格 1.7%(運用利ざや+手数料の率(%))→ 売上 257 億円・営業利益 87 億円。残高 1.56 兆円(名目)× 率 1.65%、利益率 34%
倍率:10年後のROE4.9%(純利益224億円÷自己資本4,536億円)。ROEはk8%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。PERの上限は1÷k=12.5倍。上限の9.0割に置き、11.25倍。還元を会社の方針(55%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:県内の競争で貸出の値付けが厳しくなり、預金金利の上昇も想定より速い筋書き。ちばFGの誕生と京葉の規模の小ささを考えれば、現実味がある。強気より慎重な見方に重みがあるので、やや悲観は2割強に置く。
悲観 13% 構造的に負け、利ざやの拡大を競争に取られる10年 利益 71 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 612 円710 億円
10年のどこかで、世界的な信用収縮が起き、千葉の中小企業の倒産が相次ぐ。与信費用は貸出の0.4%台まで跳ね、薄い資本が一気に削られる。
同じころ、ちばフィナンシャルグループが県内の貸出を押さえ、京葉は優良な取引先を失う。預金はネット銀行と他行に流れ、預金金利を上げざるをえない。預貸ざやは、金利が上がっても今の水準から広がらない。
経費は物価で増え続けるが、収入は増えない。店舗とシステムの縮小を迫られ、リストラの費用も出る。貸出は法人でわずかに増えるだけ、個人は横ばいになる。
10年後の純利益は70億円前後。ROEは2%前後で、もう優良な銀行ではない。稼ぐ力に見合った値段しかつかず、再編の相手になっても、有利な条件は望めない。
- 法人貸出:数量 2.7(法人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 241 億円・営業利益 40 億円。残高 2.68 兆円(名目)× 率 0.90%、利益率 17%
- 個人貸出:数量 2.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出利ざや(%))→ 売上 170 億円・営業利益 25 億円。残高 2.00 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 15%
- 有価証券運用・手数料:数量 1.3(有価証券残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利ざや+手数料の率(%))→ 売上 195 億円・営業利益 40 億円。残高 1.30 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 21%
倍率:10年後のROE2.1%(純利益71億円÷自己資本3,340億円)はk8%以下で、PERの上限は1÷k=12.5倍。構造的に負けて優良でなくなった姿として上限の8割の10倍に置く。悲観の利益は、預貸ざやが今の水準から広がらず、与信費用が重い構造から出した(過去の底値は根拠にしていない)。
確率:10年のどこかで信用収縮が起き、与信費用が急増する。加えて県内の競争で貸出の値付けに負け、預金が流出する、複合的な悪材料が重なる。薄い資本の銀行がこの重なりに耐えられない確率は、1割強ある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
千葉県内の中小企業を中心とする事業性融資。
| 数量法人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 1.0% | 242 | 100 |
| 10 年後 中立 | 3.6 | 1.4% | 500 | 215 |
取り方:貸出残高 4.55 兆円のうち法人・事業性向けを 5 割台半ばの 2.55 兆円と置き、利ざやは全体の 0.94% に近い 0.95% とした(内訳は非開示のため推定)。営業利益は経費と与信費用を引いた後の取り分。残高は名目で動き、中立で年 3.5%(物価 3% + 実質 +0.5%)。預金ベータ 40% で、短期金利が 1% 前後から 2% へ上がる間に変動の貸出はほぼ全部、預金は 4 割だけ上がるので、中立の利ざやは 10 年で +0.45% 広がる(率なので物価では上がらない)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 0.9% | 180 | 62 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 1.3% | 341 | 130 |
取り方:貸出残高の残り 2.0 兆円を個人向け(住宅ローン中心)と置き、固定金利の遅れで法人よりやや薄い 0.90% とした(推定)。残高は中立で年 3.0%(物価 3% + 実質 0%、地元の人口減を含む)。中立の利ざやは 10 年で +0.40% 広がる(預金ベータ 40%)。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
有価証券運用・手数料
国債・外債・株式・投信などの運用収益と、投信・保険販売などの手数料。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利ざや+手数料の率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.5% | 195 | 63 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 1.8% | 313 | 125 |
取り方:総資産 6.65 兆円から貸出 4.55 兆円と現預金を引き、有価証券を約 1.3 兆円と置いた(推定)。率 1.5% は、利息・配当の運用利ざや(約 1.0%)と手数料収入(役務の年 70 億円前後)を残高に対する率で表した値。売却損益は毎年ぶれるので平準化した。残高は名目で中立 年 2.7%。運用は金利が上がるほど新しい債券の利回りが乗るので、率は 10 年で +0.35% 上がるとした。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
リスクと懸念
千葉の再編で規模の差が開く
2027年4月に千葉銀行と千葉興業銀行がひとつの持株会社になる。総資産は約25兆円で、統合の効果は業務純益で年120億〜160億円と見込まれる。貸出の値付け、人材の採用、システム投資のどれでも、京葉は規模で不利になる。
預金金利の上昇が速すぎる
預金は約8割が個人で粘り強いが、ネット銀行や他行が高い金利を出せば、預金金利は想定の4割では済まなくなる。その場合、金利上昇の恩恵は預金に吸われ、預貸ざやの拡大は想定より小さく終わる。
利益に混じる有価証券の損益
2026年3月期の純利益159億円には、有価証券の入れ替えに伴う売却損益が混じる。この部分は毎年ぶれるうえ、本業のコア業務純益の202億円より、実質の稼ぐ力は小さい可能性がある。会社の目標が毎回上方修正されているので、数字の見方に注意がいる。
薄い資本と評価損
簡易な自己資本比率は約5%で、債券や株式の評価損が出ると資本が削られる。金利が上がる局面は債券の評価損を生みやすい。資本が削られれば、貸出を伸ばす力と還元の余力が同時に落ちる。
与信費用が平常に戻る
貸倒れによる損は、今は歴史的に低い。10年のどこかで景気の悪化を一度は経験し、中小企業向けの貸出が傷む。そのとき薄い資本で吸収できるかが、悲観の筋書きの中身になる。
手数料収入が伸びない
投信や保険の販売による役務取引等の利益は、2025年4〜12月に前年より13%減った。公募投信の残高が過去最高を更新する市場で、取り込めていない。非金利収益の育成が遅れると、利ざや頼みの収益構造が続く。
今後の分かれ目
- ちばフィナンシャルグループが貸出の金利を詰めてくる
- 京葉の法人貸出の利ざやの拡大は止まり、中立の想定より利益が下振れる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 預金金利の上昇が貸出金利の上昇に追いつく
- 預貸ざやの拡大が止まる。中立の10年後の利益は3割ほど小さくなり、ROEは5%台にとどまる。
- 有価証券の評価損が大きく出て、自己資本が1割以上減る
- 還元を絞らざるをえず、貸出も伸ばせなくなる。悲観の筋書きの入口になる。
- 県内の再編で、京葉が相手として名前の挙がる
- 買収を受ければ、評価は経営統合の条件で決まる。現在の値段に対する上乗せが付くとは限らない。
- 手数料収入が反転して増え、経費の伸びを下回る
- 利ざや頼みの収益構造が改善し、中立から楽観側に確率が移る。
- 景気の悪化で与信費用が貸出の0.3%を超える
- 純利益は2〜3年のあいだ半分近くに落ちる。ただし、利ざやが広がった後なら、1〜2年で戻る。
見ておくもの
- 預貸ざやと貸出利回りの四半期ごとの動き
- 預金のうち個人の割合と預金金利の上昇ペース
- コア業務純益と、有価証券の売却損益を除いた純利益
- ちばフィナンシャルグループの統合効果の進み具合と、県内の貸出の値付け
- 自己資本比率と、評価損益を含む自己資本の厚み
- 役務取引等の利益(投信・保険の手数料)の増減
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観〜中立は10年後のROEとk8%(基本7.5%+quality 0.5%)・g4%から利益ベースの正当化PERを出し、ROEがk以下の中立は1÷k=12.5倍を上限にその8.5割、上回る楽観側は1÷kの下限を割らせずに置いた。やや悲観・悲観はROEがk以下で、上限の9割・8割。悲観の利益は預貸ざやが広がらず与信費用が重い構造から出し、過去の底値や同業の倍率は根拠にしていない。数量は貸出残高の名目(物価の分を含む)、価格は利ざやの率で置いた。kが1%高い9%だと、10年の中立のPERは10.6倍から9.4倍に下がる。新リース会計は、銀行は店舗賃借の影響が小さく、数字の形は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.46→13.15 倍・やや楽観 PER 12.31→12.51 倍・中立 PER 10.63→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+0.5%を足してk 8%(決まり v2。内訳は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。千葉の再編に飲まれる危険や、有価証券損益の混じる利益の質は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せは0。横浜・千葉と同じ物差しで、差は4部品だけ(京葉は規模と資本が薄いが、それは悲観の確率に入れている)。