結論
紀陽銀行は、和歌山県で預金の7割を握り、貸出の過半は大阪で稼ぐ地方銀行である。筆者の結論は、今の値段は適正の範囲というものだ。金利が上がる恩恵は大きいが、資本が薄く、その恩恵は景気が崩れると一気に削られる。
稼ぎの源泉は単純だ。短期金利が2%へ上がると、貸出の金利はすぐ上がり、預金の金利は遅れて追いかける。この差が利ざやとして残る。会社自身の試算では、政策金利が0.25%上がるごとに純利益が約30億円増える。2026年3月期の純利益は218億円で、今期は250億円を見込む。
弱みは二つある。一つは、本拠の和歌山が人口減の厳しい県であることだ。もう一つは、貸出の主戦場の大阪で、メガバンクや近畿の地銀連合と正面から競うことだ。大阪での貸出シェアは3.9%にとどまる。
10年後の中立は、純利益が約440億円、ROEが12%台である。資本が薄い分、ROEは高く出やすい。ただし、その高さは信用コストが平常に収まる前提で成り立つ。筆者は、強気の見方のほうがやや有利だが、悲観側の尾も軽くないと見る。
再編の面では、近畿で滋賀銀行と池田泉州、京都FGの連合の動きが進む。紀陽は単独のまま取り残される可能性もあれば、統合の相手として選ばれる可能性もある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、紀陽をオーナーとして持ち続けたいかと問うと、答えは条件つきの「はい」になる。和歌山の首位という堀は10年先も残る。そこで集めた安い預金を、成長する大阪で貸し出す構図もうまくできている。
気になるのは資本の薄さだ。ROEが10%を超えるのは、資本が薄いことの裏返しでもある。金利が追い風の間は株主にやさしいが、信用コストが平常に戻るだけで利益は2割削られる。景気後退が重なれば、配当や自社株買いより先に資本を守る局面が来る。
オーナー利益として見ると、利益の約3分の1は貸出の成長を支える資本として内部に残る。株主に自由に渡せるのは残りの3分の2程度だ。その還元の厚さは経営の姿勢として好ましい。
安全域については、確率で重みをつけた本質価値が今の時価総額をわずかに上回るにとどまる。筆者は、割安というほどの余裕はなく、買う側の安全域は厚くないと見る。堀の広さと利益の読みやすさは別問題だと考える。
何で稼ぐ会社か
紀陽銀行の本業は、和歌山県と大阪府を中心にした預金と貸出である。預金等の残高は約5兆円で、その7割が和歌山、3割が大阪にある。県内のメインバンクシェアは63%に達し、和歌山では事実上の公共インフラだ。
貸出残高は約4.3兆円で、構成は預金と逆になる。大阪が5割強、和歌山が3割弱、残りが東京と奈良である。大阪の貸出は2016年3月末の1.4兆円から約2.4兆円へ増えた。預金は地元で集め、貸出は成長する都市で運用する。これが紀陽の骨格だ。
収益は大きく四つに分かれる。法人向け貸出が最大で、中小企業と公共向けが中心だ。個人向けは住宅ローンが主力である。投資信託や保険などの預かり資産の手数料と、法人向けの相談料が第三の柱になる。第四が国債や社債などの有価証券の運用で、利ざやの薄い貸出を補う役割を果たす。
店舗は和歌山に69、大阪に42、奈良に2、東京に1の計114である。勘定系のシステムはBIPROGYのクラウドへ移し、システムの固定費を軽くした。かつて和歌山銀行と持株会社を作り、後に合併して一つの銀行に戻した経緯がある。いまは持株会社を介さず、単体の銀行として動く。
第7次中期経営計画(2024〜26年度)は、ROE8%以上と純利益210億円以上を掲げた。2026年3月期にROE9.0%と純利益218億円を出し、目標を1年早く超えた。中長期の目標はROE10%以上である。
優良さと弱いところ
紀陽の堀、つまり他社がまねできない強みは、和歌山での圧倒的な地位である。県内のメインバンクシェア63%は、法人も個人も取引先を簡単には動かさない状態を意味する。預金の7割がここで集まるため、調達の安さが利ざやを支える。
ただし、堀は県の外では薄い。大阪は人口が多く貸出需要が伸びる市場だが、3メガバンクとりそな系の関西みらい、池田泉州、信用金庫がひしめく。大阪府内の貸出シェアは3.9%で、価格を自分で決められる立場にない。紀陽が大阪で伸びているのは、メガバンクが取りこぼす中堅・中小の需要を拾ってきたからだ。
財務の厚みは平均的な地銀より薄い。自己資本は約2,500億円で、貸出に対する比率は他の大手地銀の6割ほどにとどまる。会社は自己資本比率を10〜11%程度に保つと説明しているが、有価証券の評価損や与信費用が重なると余裕が小さい。利益が出ている間はROEが高く見えるが、そのぶん景気後退に弱い。
経営の規律は改善している。2024年11月に配当性向40%を目安とする累進配当へ切り替え、自社株買いも年70〜90億円の規模で続けた。政策保有株の縮減目標は40億円から100億円へ引き上げ、前倒しで進めている。筆者は、資本配分の姿勢は評価できると見る。足りないのは堀の広さではなく、資本の余裕である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、金利のある世界に入ったばかりだ。短期金利が2%に向かう過程で、預金の金利は遅れて上がる。貸出の約半分が変動金利の紀陽は、この遅れの恩恵を受けやすい。預金金利は0.3%へ引き上げたが、紀陽は南都、池田泉州と足並みを揃えており、極端な預金獲得競争には入っていない。
量は伸びない。和歌山の人口は減り続け、地元の貸出は横ばいが精一杯だ。紀陽の成長は大阪の中堅企業への貸出と、預かり資産の手数料にかかっている。預かり資産は新NISAと相続で追い風だが、ネット証券との競争で手数料率は下がりやすい。
近畿の地銀再編が最大の変数である。2026年4月に、滋賀銀行と池田泉州ホールディングスが株式を持ち合う資本提携に踏み切った。将来の統合を否定していない。京都フィナンシャルグループを含む3行の統合観測も出ている。実現すれば、総資産が20兆円を超える関西最大級の連合が大阪の隣に生まれる。大阪を主戦場とする紀陽にとっては、競争が一段厳しくなる話だ。
一方で、再編は紀陽に選択肢も与える。大阪南部と和歌山の基盤は、統合を狙う側にとって魅力がある。紀陽自身は自力での成長を軸にしているが、10年のうちに提携や統合の相手として動く可能性は十分にある。
信用コストの正常化も避けられない。いまの与信費用は歴史的な低水準にある。景気が一巡すれば、大阪の不動産関連や中小企業向けで増える公算が大きい。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向40%を目安に累進的な配当を続け、自社株買いを機動的に重ねる。2026年3月期は配当性向40.3%で、自社株買いは88億円だった。総還元性向は約8割にのぼる。2026年10月には株式を1対3に分割し、株主優待も新設した。個人株主を厚くする狙いである。
資本の使い道は、貸出の成長が先に来る。自己資本比率を10〜11%程度に保つ方針なので、貸出が伸びれば資本も食われる。還元を厚く保てるかは、利益が計画どおり伸びるかにかかる。
M&Aは小粒だ。紀陽リースを2023年に完全子会社にした。大きな買収の実績はない。むしろ近畿の再編の渦中で、買われる側にも組む側にもなりうる。kabufuの推定では、10年以内にTOBなどで買われる確率は14%ほどである。大株主に突出した持ち分はなく、信託口と従業員持株会が中心で、支配株主の影は見えない。
還元の点検(P3 2026-10-19):配当性向40%目安の累進配当+自社株買い機動的(2026/3期の総還元約8割)。中立の還元は約66%でその範囲。直さず。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利が2%へ上がる過程で、紀陽の利益は構造的に増える。会社の試算では、政策金利が0.25%上がるごとに純利益が約30億円増える。貸出の約半分が変動金利で、預金の7割は和歌山の個人・法人の預金である。金利が上がっても預金金利の追随は遅く、利ざやは広がる。
2026年3月期に純利益218億円、ROE9.0%を出し、第7次中期経営計画の目標を1年早く超えた。今期の予想は純利益250億円で、市場の予想では2028年3月期に300億円台へ進む。
大阪には伸びる余地がある。貸出残高は10年で1.4兆円から2.4兆円へ増えたが、府内のシェアはまだ3.9%だ。メガバンクや大手の地銀が取りにくい中堅企業の需要を、紀陽は着実に拾っている。和歌山の預金という安い調達源と、大阪の成長する貸出を組み合わせた構造は、他の地銀にはまねしにくい。
再編も追い風になりうる。近畿で池田泉州、滋賀、京都の連合が進めば、規模を求める側は大阪南部と和歌山の基盤を欲しがる。統合の相手として高く評価される可能性があり、10年の間に株主が得をする場面は十分にある。還元も厚く、配当と自社株買いで利益の約8割を返している。
慎重な見方
利益が増えているのは金利の追い風であり、事業の力が急に上がったわけではない。追い風が一巡すれば、残るのは人口の減る和歌山と、競争の激しい大阪だ。大阪府内のシェアは3.9%にすぎず、価格を自分で決められない。
自己資本が薄いのも問題だ。有価証券の評価損が出る局面や、大阪の不動産関連・中小企業向けの与信費用が増える局面では、資本の余裕がすぐに小さくなる。ROEが高く見えるのは、分母が小さいからでもある。景気後退が一度来れば、還元より資本の確保が優先され、配当も自社株買いも抑えられる。
近畿の再編は紀陽に不利に働く。滋賀銀行と池田泉州の資本提携、京都を含む3行統合の観測は、大阪での競争相手が大きくなることを意味する。規模が小さいまま取り残されれば、システムや人件費の面で劣後する。預金の争奪も、他行が金利を上げれば紀陽も追わざるをえない。
預かり資産の手数料は、ネット証券との競争で率が下がる。法人貸出は、メガバンクが大阪の中堅層に降りてくれば、利ざやが削られる。10年先に、今の高い成長を前提に株価を測るのは危うい。
どちらに重みを置いたか
金利の追い風が10年のあいだ利益を押し上げる点では、強気の見方が優勢である。和歌山の首位と、会社の目標を超えた実績の裏づけも強い。一方で、資本の薄さと大阪での競争力の弱さは、慎重な見方の指摘どおりで軽くない。中立に最も重みを置き、悲観側にはやや厚めの確率を残した。楽観側は再編で評価される可能性まで含めても、1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,595 円5,014 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,026 円1,984 億円)。 今の値に割り戻すと 1,830 円3,537 億円、今との差 +17.9%、 期待の年率 +8.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,417 円8,536 億円 | 1,470 円2,840 億円 | +279.3% | +14.3% | 589 円1,138 億円 |
| やや楽観 | 24% | 3,788 円7,320 億円 | 1,315 円2,541 億円 | +228.8% | +12.6% | 1,225 円2,367 億円 |
| 中立 | 30% | 3,089 円5,970 億円 | 1,120 円2,165 億円 | +171.2% | +10.5% | 1,263 円2,440 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,200 円2,318 億円 | 709 円1,370 億円 | +23.0% | +2.1% | 439 円848 億円 |
| 悲観 | 13% | 316 円612 億円 | 498 円962 億円 | −47.5% | −6.2% | 106 円205 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,595 円5,014 億円 | 1,026 円1,984 億円 | +133.3% | +8.8% | 3,621 円6,998 億円 |
今の株価時価総額 1,552 円2,999 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 再編で評価され、大阪も伸びる最良の10年 利益 571 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 4,417 円8,536 億円
短期金利2%・長期金利3%が定着し、貸出の利ざやは広がったまま安定する。大阪の中堅・中小向け貸出はメガバンクの隙間を拾い続け、府内のシェアは4%台の半ばまで上がる。預かり資産は新NISAと相続の流れに乗って残高が1.6倍に伸び、手数料が利ざや頼みの構図を和らげる。与信費用も景気が一巡する間、平常の範囲に収まる。政策保有株の売却で浮いた資本は自社株買いに回り、ROEは10年後も高い水準を保つ。近畿の再編では、紀陽が有力な統合の相手として評価され、企業価値がもう一段上がる。和歌山の首位という堀と、大阪の成長がきれいに噛み合う、地方銀行としては最もうまくいく10年になる。
- 法人・公共向け貸出:数量 4.4(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.7%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 753 億円・営業利益 474 億円。残高 4.38 兆円(名目)× 率 1.72%、利益率 63%
- 個人向け貸出:数量 1.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 252 億円・営業利益 144 億円。残高 1.82 兆円(名目)× 率 1.38%、利益率 57%
- 預かり資産・手数料:数量 2.4(預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円))× 価格 0.9%(基礎残高あたりの手数料率(%))→ 売上 219 億円・営業利益 127 億円。残高 2.43 兆円(名目)× 率 0.90%、利益率 58%
- 有価証券運用:数量 1.4(有価証券の平均残高(兆円))× 価格 1.5%(調達費用を引いた後の運用利回り(%))→ 売上 214 億円・営業利益 191 億円。残高 1.43 兆円(名目)× 率 1.50%、利益率 89%
倍率:事業の純利益 571 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.95 倍、時価総額 8,536 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金利の定着、大阪での中堅企業向けの伸び、預かり資産の拡大が10年そろう上位の想定で、確度は高くない。
やや楽観 24% 金利の追い風が定着し、堅実に伸びる 利益 508 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,788 円7,320 億円
金利が2%まで上がり、利ざやは中立より広めの水準で定着する。大阪の貸出は年3%台後半で伸び、紀陽は大阪の中堅市場で一定の地位を築く。預かり資産の手数料も計画どおり伸びる。与信費用は景気の山谷でならせば平常で、大きな損失は出ない。還元は配当性向40%に自社株買いを重ねる形が続き、自己資本は貸出の伸びに合わせて着実に積み上がる。近畿の再編は紀陽に直接関わらないが、競争が極端に厳しくなることもなく、単独の銀行として堅実に稼ぎ続ける。大きな上振れはないが、安定して資本コストを超える利益を出す10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 4.3(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.7%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 707 億円・営業利益 429 億円。残高 4.26 兆円(名目)× 率 1.66%、利益率 61%
- 個人向け貸出:数量 1.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 237 億円・営業利益 129 億円。残高 1.78 兆円(名目)× 率 1.33%、利益率 54%
- 預かり資産・手数料:数量 2.3(預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円))× 価格 0.9%(基礎残高あたりの手数料率(%))→ 売上 202 億円・営業利益 112 億円。残高 2.33 兆円(名目)× 率 0.87%、利益率 55%
- 有価証券運用:数量 1.4(有価証券の平均残高(兆円))× 価格 1.5%(調達費用を引いた後の運用利回り(%))→ 売上 201 億円・営業利益 178 億円。残高 1.38 兆円(名目)× 率 1.46%、利益率 89%
倍率:事業の純利益 508 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.41 倍、時価総額 7,320 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の方向が10年おおむね維持され、利ざやの拡大と還元の厚さが続く上位レンジ。
中立 30% 中立:金利は定着し、和歌山の首位と大阪の拡大が続く 利益 438 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 3,089 円5,970 億円
短期金利は2%、長期金利は3%に定着する。貸出の利ざやは今より広がるが、預金金利が追いつくため、広がりは途中で頭打ちになる。大阪の貸出は年3%台で伸び、和歌山は横ばいである。預かり資産は残高が伸びる一方、手数料率はほぼ横ばいで、収益の柱の一つとして育つ。与信費用は景気が一巡する間に平常の水準まで戻り、今の低さは続かない。還元は利益の約3分の2を配当と自社株買いで返し、残りで貸出の成長を支える。近畿の再編には直接参加せず、単独の銀行として歩む。和歌山の堀と大阪の拡大で、資本コストを上回る利益を出し続ける、特別な上振れも下振れもない10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 4.1(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 654 億円・営業利益 377 億円。残高 4.14 兆円(名目)× 率 1.58%、利益率 58%
- 個人向け貸出:数量 1.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 223 億円・営業利益 115 億円。残高 1.75 兆円(名目)× 率 1.27%、利益率 52%
- 預かり資産・手数料:数量 2.2(預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円))× 価格 0.8%(基礎残高あたりの手数料率(%))→ 売上 184 億円・営業利益 95 億円。残高 2.22 兆円(名目)× 率 0.83%、利益率 52%
- 有価証券運用:数量 1.3(有価証券の平均残高(兆円))× 価格 1.4%(調達費用を引いた後の運用利回り(%))→ 売上 185 億円・営業利益 162 億円。残高 1.32 兆円(名目)× 率 1.40%、利益率 88%
倍率:事業の純利益 438 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.63 倍、時価総額 5,970 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、与信費用も景気一巡でならせば平常に戻る、最も重みを置く中心の筋書き。
やや悲観 23% 大阪の競争に押され、利ざやが伸びない 利益 224 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 1,200 円2,318 億円
金利は上がるが、他行が預金金利を先に上げて預金を奪いに来るため、紀陽も追いかけ、利ざやの広がりは中立の6割ほどにとどまる。滋賀銀行と池田泉州の連合、さらに京都を含む統合が進み、大阪の中堅市場で価格競争が強まる。貸出の伸びは年2%台に鈍る。預かり資産の手数料はネット証券に引きずられて率が下がる。大阪の不動産関連の与信費用が膨らみ、景気の谷では純利益が大きく削られる。自社株買いは抑えられ、還元は利益の約6割にとどまる。和歌山の首位は守るが、成長は大阪の競争に阻まれ、資本コストをやっと超えるかどうかの利益にとどまる10年になる。
- 法人・公共向け貸出:数量 3.7(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 498 億円・営業利益 232 億円。残高 3.66 兆円(名目)× 率 1.36%、利益率 47%
- 個人向け貸出:数量 1.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 166 億円・営業利益 62 億円。残高 1.54 兆円(名目)× 率 1.08%、利益率 37%
- 預かり資産・手数料:数量 1.9(預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円))× 価格 0.7%(基礎残高あたりの手数料率(%))→ 売上 139 億円・営業利益 55 億円。残高 1.88 兆円(名目)× 率 0.74%、利益率 40%
- 有価証券運用:数量 1.2(有価証券の平均残高(兆円))× 価格 1.2%(調達費用を引いた後の運用利回り(%))→ 売上 145 億円・営業利益 123 億円。残高 1.19 兆円(名目)× 率 1.22%、利益率 85%
倍率:10年後のROE6.8%(純利益224億円÷自己資本3,315億円)は k8.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。競争で稼ぐ力が鈍る姿。上限の7.6割に置き、10.35倍。
確率:大阪で近畿の地銀連合とメガバンクに押され、預金金利の競争も激しくなる。10年では停滞する年が相応に混ざる。
悲観 13% 構造的に負け、薄い資本が足かせになる10年 利益 65 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 316 円612 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が起き、大阪の不動産関連と中小企業向けで与信費用が急増する。債券の評価損も重なり、薄い自己資本が大きく傷む。この間、近畿の地銀が統合を進めて規模を増し、紀陽は大阪で価格競争に負けて貸出の伸びを失う。預金はより高い金利を出す他行やネット銀行へ流れ、調達の安さという強みが崩れる。資本を守るため自社株買いは止まり、配当も抑えられる。再編でも有力な相手に選ばれず、単独で縮小均衡に入る。和歌山の首位は残るが、人口減で預金そのものが細り、資本コストに届かない利益しか出せない、構造的に負けた銀行の10年である。
- 法人・公共向け貸出:数量 3.0(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 330 億円・営業利益 91 億円。残高 3.00 兆円(名目)× 率 1.10%、利益率 28%
- 個人向け貸出:数量 1.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.9%(貸出と預金の差による利ざや(%))→ 売上 110 億円・営業利益 16 億円。残高 1.28 兆円(名目)× 率 0.86%、利益率 14%
- 預かり資産・手数料:数量 1.5(預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円))× 価格 0.7%(基礎残高あたりの手数料率(%))→ 売上 99 億円・営業利益 25 億円。残高 1.50 兆円(名目)× 率 0.66%、利益率 25%
- 有価証券運用:数量 1.0(有価証券の平均残高(兆円))× 価格 1.0%(調達費用を引いた後の運用利回り(%))→ 売上 104 億円・営業利益 84 億円。残高 1.04 兆円(名目)× 率 1.00%、利益率 81%
倍率:10年後のROE2.7%(純利益65億円÷自己資本2,428億円)は k8.5% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=11.8倍までが上限。構造的に負けて優良でなくなった姿。上限の6.9割に置き、9.41倍。今の自己資本2,475億円に対する倍率は0.25倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。悲観の利益は、貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、ROE約3%(純利益65億円)に置いた。
確率:リーマン級の信用収縮に、大阪の価格競争、預金流出、近畿の再編での孤立が重なる複合の悪材料。10年という期間で相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
和歌山・大阪の中堅・中小企業と、自治体など公共向けの貸出。紀陽の利益の最大の柱。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出と預金の差による利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 1.3% | 375 | 169 |
| 10 年後 中立 | 4.1 | 1.6% | 654 | 377 |
取り方:貸出残高は約4.35兆円(2026年3月末)。法人・事業性・公共向けを約3.0兆円、個人向けを約1.35兆円に分けた(開示の内訳ではなく推定)。預金運用の益まで含めた利ざやを1.25%、経費を割り振った後の営業利益率を45%とした。10年の中立では、預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を40%と置き、法人の利ざやは約0.35%広がると見た。残高はお金の量なので名目で年3.4%伸びる(大阪の中堅向けが牽引、和歌山は横ばい)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+26%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
個人向け貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出と預金の差による利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.4 | 1.0% | 128 | 45 |
| 10 年後 中立 | 1.8 | 1.3% | 223 | 115 |
取り方:個人向けを約1.35兆円と推定し、住宅ローンの薄い利ざやを0.95%、経費を割り振った後の営業利益率を35%とした。固定金利や定期預金の遅れを含め、中立の利ざやは10年で約0.32%広がると置いた。残高は名目で年2.7%(和歌山の人口減を織り込み、法人より低い)。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+34%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし)
預かり資産・手数料
投資信託・保険・国債の販売と、法人向けの相談・決済の手数料。
| 数量預かり資産と法人取引の基礎残高(兆円) | 価格基礎残高あたりの手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 0.9% | 128 | 64 |
| 10 年後 中立 | 2.2 | 0.8% | 184 | 95 |
取り方:預かり資産の残高と法人向け手数料の基礎を約1.5兆円、手数料率を0.85%と推定した(開示の内訳ではない)。営業利益率は50%。預かり資産は新NISAと相続で残高が名目年4%で伸びるが、ネット証券との競争で手数料率は物価に連れて上がらず、ほぼ横ばいに置いた。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。率は10年でほぼ横ばい。二重がけなし)
有価証券運用
債券・投資信託などの運用(政策保有株を除く)。預貸の差を超える余った資金の運用先。
| 数量有価証券の平均残高(兆円) | 価格調達費用を引いた後の運用利回り(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.1 | 1.1% | 121 | 103 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 1.4% | 185 | 162 |
取り方:有価証券残高を約1.1兆円と推定し、調達費用を引いた後のキャリー収益率を1.10%、営業利益率を85%とした(推定)。債券の入れ替えが進み、利回りは10年で約1.4%まで切り上がる。政策保有株の売却益など一度きりの利益は、全社の調整に含める。(点検 2026-10-19:数量は名目で置き、率に物価は掛けていない。中立の率は10年で+27%(物価倍率1.34倍の掛け算ではなく、事業・金利の置き方)。二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ、長期金利が3%へ上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ40%(業種共通の置き方・同じ会社の他のセグメントと同じ)だけ追うので、中立の率は10年で1.10%→1.40%(+0.30ポイント)。
リスクと懸念
信用コストの正常化
いまの与信費用は歴史的な低水準にある。景気が一巡すれば、大阪の不動産関連や中小企業向けで費用が増える。自己資本が薄いため、同じ費用増でも利益とROEへの響きが他の地銀より大きい。
和歌山の人口減
和歌山県は人口の減りが速い県の一つで、地元の貸出は横ばいが精一杯である。預金の7割をここで集める以上、預金の量も長期では減る方向にあり、調達の安さという強みが細る恐れがある。
大阪での競争と再編
貸出の過半を占める大阪では、3メガバンク、関西みらい、池田泉州、信用金庫と競う。滋賀銀行と池田泉州の資本提携や京都を含む3行統合の観測が進めば、競争相手がさらに大きくなる。紀陽が取り残される筋書きもある。
有価証券の評価損
運用の中心は国内債券で、長期金利が上がると評価損が出る。2024年3月期には評価損益が約200億円のマイナスだった。評価損が自己資本に響くため、資本の薄い紀陽には他行より重い。
預金金利の競争
貸出の約半分が変動金利で、金利上昇の恩恵は大きい。ただし、他行が預金金利を先に上げて預金を奪いに来れば、紀陽も追わざるをえず、利ざやの拡大は想定より小さくなる。預金の移りやすさがネット銀行で増している。
預かり資産の手数料の低下
新NISAと相続で預かり資産は伸びるが、ネット証券の低い手数料に引きずられ、手数料率は下がりやすい。銀行の窓口での販売が主力のため、競争への対応が遅れると取引が流れる。
還元を維持できるか
総還元性向は約8割と高い。貸出が伸びるほど資本が要るため、景気が悪化すれば還元より資本の確保が先になる。自社株買いは機動的に増減する方針で、減らす局面では株価への影響が出やすい。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ計画より速く上げたら
- 楽観寄りに確率を移してよい。貸出利回りと預金利回りの差が決算ごとにどれだけ広がるかで確かめる。
- 大阪の与信費用が四半期で急に増えたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。不動産関連と中小企業のどちらで増えたかで深刻さが変わる。
- 紀陽が近畿の再編で提携や統合の相手として名前が出たら
- 統合の条件次第だが、評価を得る側なら楽観寄り、規模で劣る側なら悲観寄りに見直す。
- 和歌山の預金残高が減少に転じたら
- 調達の安さという強みが崩れ始めているとみて、やや悲観に重みを移す。
- 自己資本比率が10%を割り込み、自社株買いが止まったら
- 還元の前提が崩れる。純利益が残っていても中立の水準を下げて考える。
- 預かり資産の手数料が計画を上回って伸びたら
- 金利に頼らない収益が育っているとみて、やや楽観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 貸出利回りと預金利回りの差(決算ごと)
- 大阪の貸出残高と与信費用
- 和歌山の預金残高の増減
- 自己資本比率と自社株買いの規模
- 滋賀銀行・池田泉州・京都FGの統合の動き
- 預かり資産の残高と手数料
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は10年後のROEとk 8.5%(基本7.5%+quality 1.0%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PERの上限を出し、その9.5・9.2・9割に置いた(下限は1÷k=11.8倍)。中立はROE12%台と高いが、資本が薄いことの裏返しで、ROEが高いことを成長の根拠にはしていない。やや悲観・悲観はROEが k に届かず、PERは1÷kが上限なので、その8.8割・8割に置いた。悲観の利益は、大阪の競争と預金金利の上昇で利ざやが縮み、与信費用と評価損が重い構造から、ROE約3%に置いた。過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9.5%)と、10年の中立のPERは下がり、本質価値の差は小さくなる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.2→14.95 倍・やや楽観 PER 13.26→14.41 倍・中立 PER 12.27→13.63 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(大阪の競争・再編・資本の薄さ)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。