結論
京都フィナンシャルグループ(京都銀行)は、京都府で16年連続首位のメインバンク地位を持つと同時に、任天堂・京セラ・ニデック・村田製作所など京都発祥の優良企業への政策保有株式を1950年代から積み上げ、2026年3月末時点で時価約1.3兆円、自己資本11,360億円に匹敵する規模の含み益を抱える、地方銀行の中でも極めて特異なバランスシートを持つ。2026年3月期は任天堂株の売却益751億円を中心とする株式売却益約1,600億円で純利益が前期比2.6倍の950億円台まで膨らんだが、これは実現益を多く含み、事業の実力利益は2027年3月期・2028年3月期の会社予想(520億・528億)に近い水準とみる。短期金利が2%へ向かう「金利のある世界」では法人・個人の貸出利ざやが構造的に拡大し、第2次中期経営計画(2026~2028年度)はROE(純資産ベース)8%以上・親会社株主帰属利益900億円以上を掲げる。ここでは法人貸出・個人貸出・資産運用ソリューションの3つを数量×価格で積み上げ、残る政策保有株式(98銘柄・時価約1.3兆円)は、会社の売却目標(4年半で3,000億円以上)の資金を株主への還元に足すだけにして、10年後の利益には売却益を入れず、その時点のROEと資本コストから利益ベースの正当化PERで株価を出した。最大の固有リスクは、政策保有株式の中核であるニデック株が2026年の会計不正発覚で株価が最高値比7割程度下落し、含み益のクッションの一角が大きく薄れたことと、自己資本比率9.6%という単純指標の低さが、含み益の目減りに対する耐性の乏しさを示す点である。確率で重みづけた本質価値は、今の時価総額(約11,923億円)に対し10年で−41.3%、「割高」と見る(資本コスト8%、10年の筋書きだけで測る)。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、京都府内で16年連続首位のメインバンク地位という既に確立した顧客基盤を使って、金利上昇に伴う利ざやの拡大がほぼ自動的に利益を押し上げる構造になっており、追加の大きな設備投資を伴わずに資本効率が改善しやすい点を、バリュー投資の観点では評価できる。堀の広さについては、京都の電子部品・精密機器メーカー集積地という地域特性と、1950年代からの出資関係に基づく政策保有株式という他の地銀にはない資産を評価する。しかし銀行業は規制業種であり、信用サイクルの悪化時には自己資本が傷みやすいという構造的な制約は消えず、京都銀行の自己資本比率9.6%という単純指標の低さに加え、政策保有株式の含み益が自己資本の中で大きな比率を占めるため、株式市場が崩れた場合の自己資本の目減りが他の地銀より大きくなりやすい点は、堀の強さと財務の頑健さが別問題であることを示している。資本配分については、政策保有株式の縮減と総還元性向50%以上の方針を評価するが、ニデック株の会計不正・株価急落という想定外の出来事が、含み益というバランスシート上の強みの一角を直接損なった事実は、政策保有株への依存度の高さそのものがリスクであることを示す教訓である。最後の安全域の判断では、確率で重みづけた本質価値は今の時価総額に対し−43.3%で、今の値段は本質価値を大きく上回り、安全域は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
京都銀行による京都府内の法人・個人向け融資と預金業務が収益の土台で、京都・滋賀・大阪・兵庫・奈良・和歌山に174店舗を展開する広域型地方銀行として、京都府メインバンク動向調査では調査開始以来16年連続で首位を維持している。ただし京都市内では京都中央信用金庫、府北部では京都北都信用金庫がそれぞれ首位であり、上位3行庫(京都銀行・京都中央信金・京都信金)で府内シェア7割強を占める構図の中で、京都銀行は単独首位ながら信用金庫との競合が他の地銀トップ行より強く及ぶ。法人向けは京都の伝統産業・観光業に加え、ニデック・村田製作所・京セラ・オムロンなど世界的な電子部品・精密機器メーカーが集積する地域特性を背景にした中小企業向け事業性融資とM&Aアドバイザリーを提供し、個人向けは住宅ローンを中心とする。資産運用・ソリューション部門は投資信託・保険の販売や事業承継支援を担う。京都銀行の最大の特徴は、1950年代から地元の電子部品・精密機器メーカーの創業期に融資と合わせて出資してきた政策保有株式で、2026年3月末時点で任天堂(約5,740億円)・村田製作所(約1,397億円)・ニデック・京セラ・ロームなど98銘柄・時価合計約1.3兆円に達し、自己資本11,360億円に匹敵する規模の含み益を純資産に抱える。この政策保有株式は2023年3月末の137銘柄から3年で約3割削減され、売却資金は成長投資と株主還元に回っている。地銀再編では京都銀行自身が買収される側になる確率は低く(kabufuのTOB・買収確率推定は10年以内14.4%)、独立性を保ったまま広域展開と非金利収益の拡大を進める立場にある。
優良さと弱いところ
京都銀行の堀は、世界的な精密機器・電子部品産業の集積地である京都府で16年連続首位のメインバンク地位を保つ顧客基盤の厚さと、1950年代からの出資で築いた任天堂・ニデック・村田製作所などとの資本関係の深さにある。この資本関係は融資関係の安定だけでなく、政策保有株式の巨額の含み益という財務面の厚いバッファーをもたらしており、他の地銀にはあまり見られない強みである。弱点は、京都市内では京都中央信用金庫、府北部では京都北都信用金庫がそれぞれ首位であり、信用金庫との競合が強く及ぶため、法人メインバンクシェアの一段の拡大余地が限られる点である。財務の面では、自己資本比率は単純指標で9.6%とkabufuの脆さスコアで低めに判定され、政策保有株式の含み益が自己資本の中で大きな比率を占めるため、株式市場が崩れた場合の自己資本の目減りが他の地銀より大きくなりやすい構造的な弱さを抱える。実際、政策保有株式の中核の一つであるニデック株は2026年の会計不正発覚・社長解任・1兆円規模の減損計上を経て株価が最高値比7割程度下落し、京都銀行が保有する含み益の一角が既に大きく縮小したとみられる。経営の規律という点では、政策保有株式の縮減(2023年3月末137銘柄→2026年3月末98銘柄)と総還元性向50%以上の方針、自社株買い枠の拡大(上限270億円)を進めており、資本効率改善への意識は高い。第1次中期経営計画のROE目標を大きく上回る実績(政策保有株売却益込み)を上げた実行力は評価できるが、売却益に頼らない実力利益の伸びは2027・2028年3月期予想(520億・528億)が示す通り緩やかである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の銀行業は2024年の政策金利解除以降「金利のある世界」の初期段階にあり、短期金利が2%に向けて上がる過程で預貸ざやが構造的に拡大している。京都府内の貸出需要そのものは人口減少と企業の内部留保志向で伸びが鈍く、地方銀行は量でなく価格(利ざや)で稼ぐフェーズが続く。地方銀行最大の構造要因は「1県1行」体制への収束を軸とする再編ドミノ(千葉銀行と千葉興業銀行、しずおかフィナンシャルグループと名古屋銀行の経営統合など)だが、京都銀行は京都府内で16年連続首位の地位を確立しているため、再編の当事者として動く必要性は他の地銀より低く、kabufuのTOB・買収確率推定も10年以内14.4%と低めにとどまる。一方で京都府内では京都中央信用金庫・京都北都信用金庫など信用金庫の存在感が強く、上位3行庫で府内シェア7割強という構図は、京都銀行単独のシェア拡大余地を他の地銀トップ行より限定的にしている。京都の地域経済は、西陣織・清水焼などの伝統産業に加え、ニデック・村田製作所・京セラ・オムロン・ロームなど世界的な電子部品・精密機器メーカーの集積地という特異な産業構造を持ち、記録的なインバウンド需要の回復が観光関連の中小企業に追い風を与えている。この産業集積は京都銀行の政策保有株式の原資でもあり、融資と出資の両面で地域の製造業と結びついている。ただしニデックは2026年に会計不正が発覚し、社長解任・1兆円規模の減損計上という大きな混乱を経ており、京都銀行が保有する同社株の含み益は大きく目減りしたとみられる。NISA拡充・高齢化に伴う相続需要は資産運用・事業承継分野の追い風で、首都圏の地銀と同様に京都銀行にとっても非金利収益の拡大余地は大きい。
資本政策と M&A
株主還元は総還元性向50%以上を基本方針とし、2025年度(2026年3月期)は政策保有株式の売却益を背景に特別配当を含む配当を実施したうえで、自社株買いの取得枠を120億円増額して上限270億円・900万株(自己株式を除く発行済み株式の3.16%)に拡大、上限まで買えば27年3月期の総還元性向は79%の見込みとなる。政策保有株式は2023年3月末137銘柄から2026年3月末98銘柄まで3年で約3割削減し、売却資金を成長投資と株主還元の両方に振り向ける方針で、第2次中期経営計画ではこの縮減をさらに加速する方針を明記している。M&Aについては、京都銀行自身が買収される側になる確率は低い(kabufuのTOB・買収確率推定は10年以内14.4%)一方、自ら他行を買収する大型統合の動きは今のところ表明していない。ガバナンスでは、資本配分の規律を高める取り組みとして政策保有株式の縮減目標を明示し、第1次中期経営計画のROE目標を前倒しで上回る実績を上げた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
短期金利が2%に向けて上がる過程で、京都府内の法人・個人向け貸出利ざやは構造的に拡大し、第2次中期経営計画が掲げる2029年3月期のROE(純資産ベース)8%以上・親会社株主帰属利益900億円以上は、第1次中期経営計画のROE目標を大きく上回るペースで達成した実績を踏まえれば射程に入る。京都銀行は京都府内で16年連続首位のメインバンク地位を保ち、ニデック・村田製作所・京セラ・ロームなど世界的な電子部品・精密機器メーカーとの資本関係を背景にした政策保有株式は、2026年3月末時点でも時価約1.3兆円の規模を保っており、任天堂株だけでも約5,740億円に達する。政策保有株式の縮減(2023年3月末137銘柄→2026年3月末98銘柄)で得た売却資金は成長投資と株主還元の両方に回り、総還元性向50%以上の方針と自社株買い枠の拡大(上限270億円)が1株あたりの価値を押し上げる。ニデック株の会計不正・株価急落は既に市場に大きく織り込まれ、むしろ経営体制の立て直しが進めば株価が回復する余地があり、任天堂株のようにゲーム・トレーディングカード事業の好調で時価が増える銘柄もある。京都の電子部品・精密機器メーカーの集積地という地域特性に、観光業のインバウンド需要回復も重なり、法人・個人の両面で地域経済の追い風を取り込める位置にある。
慎重な見方
金利が上がる過程は利ざやの拡大と同時に、京都府内の中小企業の資金繰りを厳しくし信用コストを押し上げる副作用も伴う。京都銀行の自己資本比率は単純指標で9.6%と相対的に低く、世界的な信用収縮が来れば保有する株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷みやすい。しかも京都銀行は政策保有株式の時価が自己資本に匹敵する規模まで積み上がっており、その含み益が自己資本の中で大きな比率を占めるため、株式市場が崩れた場合の自己資本の目減りは他の地銀より深刻になりやすい。実際、政策保有株式の中核の一つであるニデック株は2026年の会計不正発覚・社長解任・1兆円規模の減損計上という想定外の出来事を経て株価が最高値比7割程度下落し、含み益の一角が既に大きく縮小した。これは政策保有株依存のバランスシートの脆さを示す実例であり、今後も同様の個社リスクが政策保有株の中核企業で再発する可能性は否定できない。京都市内では京都中央信用金庫、府北部では京都北都信用金庫がそれぞれ首位であり、上位3行庫で府内シェア7割強という構図の中で、京都銀行単独のさらなるシェア拡大の余地は限られる。2026年3月期の純利益2.6倍という好決算は任天堂株の売却益751億円を中心とする一時的な実現益によるもので、事業の実力利益は2027・2028年3月期予想(520億・528億)が示す通り緩やかな伸びにとどまり、今の株価はこの一時的な好決算を過度に織り込んでいる可能性がある。
どちらに重みを置いたか
金利正常化の恩恵が京都府内の厚い顧客基盤にほぼ自動的に効く点と、1950年代からの出資関係に基づく巨額の政策保有株式という他の地銀にはない資産を評価する見方に分があるが、その含み益がニデック株の会計不正・株価急落で既に大きく目減りした実例は、政策保有株依存のバランスシートの脆さという指摘を軽視できないものにしている。確率は中立に最も重みを置き、京都府内の地盤の確かさと政策保有株の残存規模(98銘柄・時価約1.3兆円)を踏まえて楽観側をやや厚めに置いたが、自己資本比率の低さと政策保有株の集中リスクから、悲観の尾は地方銀行の中でも相応に厚く残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,421 円9,575 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,420 円3,974 億円)。 今の値に割り戻すと 2,551 円7,139 億円、今との差 −38.0%、 期待の年率 +1.6%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,372 円1.50 兆円 | 1,979 円5,538 億円 | +78.7% | +6.0% | 735 円2,057 億円 |
| やや楽観 | 24% | 4,551 円1.27 兆円 | 1,746 円4,886 億円 | +53.1% | +4.4% | 1,511 円4,230 億円 |
| 中立 | 30% | 4,010 円1.12 兆円 | 1,571 円4,396 億円 | +35.7% | +3.1% | 1,674 円4,686 億円 |
| やや悲観 | 24% | 2,138 円5,985 億円 | 1,165 円3,261 億円 | −19.7% | −2.2% | 793 円2,219 億円 |
| 悲観 | 12% | 625 円1,750 億円 | 434 円1,216 億円 | −74.2% | −12.7% | 127 円356 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,421 円9,575 億円 | 1,420 円3,974 億円 | +17.7% | +1.6% | 4,841 円1.35 兆円 |
今の株価時価総額 4,113 円1.15 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 政策保有株式の計画的実現と京都の産業集積の強みが結実する10年 利益 1,184 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 5,372 円1.50 兆円
10年間で短期金利2%・長期金利3%が定着し、京都府内の貸出利ざやは構造的に高い水準で安定する。政策保有株式(98銘柄・時価約1.3兆円)の縮減がほぼ完了し、累計の実現益が成長投資と大規模な自社株買いの原資になる。ニデック株の経営再建が進み含み益の一部が回復し、任天堂株・村田製作所株などの含み益も厚みを増す。京都の電子部品・精密機器メーカー集積という地域特性と、観光業のインバウンド需要の定着が京都府内16年連続首位のシェアをさらに強め、信用金庫との競合にも打ち勝って非金利収益を拡大する、地方銀行として最も理想的な10年になる。
- 法人貸出:数量 7.3(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,139 億円・営業利益 820 億円。残高 7.3 兆円(名目)× 利ざや 1.55%、利益率 72%
- 個人貸出:数量 4.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 609 億円・営業利益 438 億円。残高 4.3 兆円(名目)× 利ざや 1.40%、利益率 72%
- 資産運用・ソリューション:数量 6.0(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 508 億円・営業利益 381 億円。残高 6.0 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 75%
倍率:事業の純利益 1,184 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.7 倍、時価総額 15,037 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%の定常化、政策保有株式(98銘柄・時価約1.3兆円)の縮減完了に伴う継続的な実現益、京都の電子部品・精密機器メーカー集積・観光需要の両方が10年間すべて噛み合う前提で、確度は高くない。
やや楽観 24% 政策保有株の縮減と非金利収益を軸に安定成長 利益 1,019 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,551 円1.27 兆円
短期金利2%・長期金利3%への定常化が進み、京都府内の貸出利ざやは高水準で安定する。政策保有株式の縮減は計画どおり進み、売却資金が自社株買いと成長投資の両方に回る。資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の資産形成の広がりと高齢化に伴う相続需要を取り込みながら安定的に拡大し、事業承継支援の件数も着実に増える。京都府内のリテール基盤と電子部品・精密機器メーカー集積という地域特性を両輪にする体制が定着し、信用金庫との競合には一定の歯止めがかかる。観光業のインバウンド需要も安定的な追い風を与え続ける10年になる。
- 法人貸出:数量 6.7(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 1,002 億円・営業利益 701 億円。残高 6.7 兆円(名目)× 利ざや 1.50%、利益率 70%
- 個人貸出:数量 4.0(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(%))→ 売上 533 億円・営業利益 373 億円。残高 4.0 兆円(名目)× 利ざや 1.35%、利益率 70%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.4(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 462 億円・営業利益 337 億円。残高 5.4 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 73%
倍率:事業の純利益 1,019 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 12,738 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:第2次中期経営計画の方向性(ROE8%以上)と政策保有株式の縮減が10年間おおむね維持され、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:金利は定常化し政策保有株の縮減が緩やかに進む 利益 898 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,010 円1.12 兆円
10年の間に短期金利2%・長期金利3%が定着し、京都府内の貸出利ざやは高めの水準で安定する一方、府内の人口減少と信用金庫との競合で貸出の量そのものは伸び悩む。与信費用も景気循環を1〜2周してならした水準に戻る。政策保有株式の縮減は続くが、ニデック株の含み益回復は限定的で、全体の実現益は中位にとどまる。資産運用・ソリューション業務もNISA定着後の標準的な成長軌道に乗り、事業承継・M&Aアドバイザリーの取扱件数も緩やかに増える。京都府内16年連続首位としての顧客基盤の厚さは変わらず維持される、特別な上振れも下振れもない10年になる。
- 法人貸出:数量 6.1(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(%))→ 売上 880 億円・営業利益 598 億円。残高 6.1 兆円(名目)× 利ざや 1.45%、利益率 68%
- 個人貸出:数量 3.8(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 489 億円・営業利益 333 億円。残高 3.8 兆円(名目)× 利ざや 1.30%、利益率 68%
- 資産運用・ソリューション:数量 5.2(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 440 億円・営業利益 312 億円。残高 5.2 兆円(名目)× 率 0.85%、利益率 71%
倍率:事業の純利益 898 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 11,225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期2%・長期3%が定着し、京都府内の与信費用も景気循環を経て平均的な水準に戻る、最も重みを置く中心シナリオ。
やや悲観 24% 人口減少と信用金庫との競合で成長が鈍る 利益 532 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 2,138 円5,985 億円
国内の金利正常化は進むが、京都府内の人口減少・事業所数の減少が計画より加速し、法人・個人向け貸出の量の伸びがさらに鈍る。信用金庫との競合も強まり、京都銀行単独のシェア拡大は進まず、法人メインバンクシェアもじわりと目減りする。政策保有株式の縮減は続けるが、ニデック株の含み益回復が10年間にわたって遅れ、全体の実現益も伸び悩む。資産運用・ソリューション業務の成長も市場環境の悪化で鈍化し、観光業のインバウンド需要も一時的な落ち込みを挟み、京都府内シェア首位という強みだけでは成長の鈍さを十分に補えない10年になる。
- 法人貸出:数量 5.0(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 599 億円・営業利益 329 億円。残高 5.0 兆円(名目)× 利ざや 1.20%、利益率 55%
- 個人貸出:数量 3.1(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 331 億円・営業利益 182 億円。残高 3.1 兆円(名目)× 利ざや 1.07%、利益率 55%
- 資産運用・ソリューション:数量 4.1(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.9%(実効手数料率等(%))→ 売上 366 億円・営業利益 208 億円。残高 4.1 兆円(名目)× 率 0.90%、利益率 57%
倍率:10年後のROE4.0%(純利益532億円÷自己資本13,359億円)。ROEはk8%以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「人口減少と信用金庫との競合で成長が鈍る」。上限の9.0割に置き、11.25倍。還元を会社の方針(62%)に合わせたため自己資本が厚くなった。
確率:京都府内の人口減少が計画より加速し、信用金庫との競合も強まる一方、ニデック株を含む政策保有株式の含み益回復が10年間にわたって遅れる想定。10年という期間では停滞する年も相応に混ざる。
悲観 12% 構造的に負け、政策保有株の含み益も長期的に剥落する10年 利益 175 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 625 円1,750 億円
10年のどこかで世界的な信用収縮が発生し、京都府内の与信費用が急増する。人口減少が想定を超えて加速し、府内の貸出需要そのものが縮小する。信用金庫との競合に敗れて法人メインバンクシェアが徐々に落ち、政策保有株式(ニデック株を含む)の含み益も長期的に剥落し、自己資本を支えてきた最大のバッファーが縮小する。政策保有株式の売却で資本は確保するものの、自己資本比率9.6%という元々低めの資本バッファのもとで、京都府内シェア首位という強みだけでは資本効率の低さを補えず、地方銀行としての存在意義そのものが問われる苦しい10年になる。
- 法人貸出:数量 3.9(法人・事業性貸出残高(兆円))× 価格 0.7%(貸出利ざや(%))→ 売上 253 億円・営業利益 76 億円。残高 3.9 兆円(名目)× 利ざや 0.65%、利益率 30%
- 個人貸出:数量 2.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.6%(貸出利ざや(%))→ 売上 152 億円・営業利益 46 億円。残高 2.5 兆円(名目)× 利ざや 0.60%、利益率 30%
- 資産運用・ソリューション:数量 2.6(預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円))× 価格 0.4%(実効手数料率等(%))→ 売上 116 億円・営業利益 29 億円。残高 2.6 兆円(名目)× 率 0.45%、利益率 25%
倍率:10年後のROE1.5%(純利益175億円÷自己資本12,000億円)は k8% 以下なので、ためた利益は額面未満の価値で、PERは1÷k=12.5倍までが上限。筋書きは「構造的に負け、政策保有株の含み益も長期的に剥落する10年」。上限の8割に置き、10.00倍。今の自己資本11,360億円に対する倍率は0.15倍。稼ぐ力から出した値で、自己資本の何割という置き方はしていない。
確率:リーマン級の信用収縮に加え、京都府内の人口減少の加速、信用金庫への顧客流出、ニデック株を含む政策保有株式の含み益が長期的に剥落する複合的な悪材料が10年のどこかで重なる想定。含み益への依存度が高い分、10年という期間では相応の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人貸出
京都府内の中小企業向け事業性融資(伝統産業・電子部品・精密機器メーカー集積地の地場企業が中心)と、上場・大企業向けM&Aアドバイザリー。
| 数量法人・事業性貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.3 | 1.0% | 430 | 258 |
| 10 年後 中立 | 6.1 | 1.5% | 880 | 598 |
取り方:総資産11兆7,917億円のうち貸出金を総資産の6割程度・約7.1兆円と推定し、法人・事業性向けを6割の4.3兆円とおいた。利ざやは1.00%とした。2026-10-18の直し:預金ベータ(政策金利の上げに預金金利が付いていく割合)を地銀の標準40%と置いた(千葉銀行と同じ物差し)。短期金利が1%前後から2%へ上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部、預金の金利は40%だけ上がるので、中立の利ざやは3年で+0.27%、10年で+0.45%広がると置いた。残高は名目経済に合わせ中立で年3.5%(物価3%+実質+0.5%)伸びると置いた。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
個人貸出
住宅ローンを中心とする個人向け貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.8 | 0.9% | 252 | 151 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 1.3% | 489 | 333 |
取り方:貸出金残高の残り約4割を個人向け2.8兆円とおき、住宅ローン中心の利ざやを0.90%とした。預金ベータ40%の同じ物差しで、中立の利ざやは3年で+0.24%、10年で+0.40%広がると置いた。残高は名目経済に合わせ中立で年3.0%(物価3%+実質+0.0%、京都府内の人口減込み)伸びると置いた。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。
資産運用・ソリューション
投資信託・保険等の預かり資産業務と、事業承継・M&Aアドバイザリー等の非金利収益。
| 数量預かり資産残高+ソリューション取扱高(兆円) | 価格実効手数料率等(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.5 | 0.9% | 298 | 193 |
| 10 年後 中立 | 5.2 | 0.9% | 440 | 312 |
取り方:預かり資産残高と事業承継・M&A等の取扱高合計を3.5兆円、実効手数料率を0.85%とおいた。預かり・受託資産は名目で伸びる:中立で年4.0%(物価3%+実質の資産形成、NISA拡充・高齢化に伴う相続需要込み)。手数料率は率なので物価では上がらない。 【2026-10-19 確認】数量は名目、率は物価を掛けていない(率は金利・手数料などの事業の理由でだけ動かす)。 (R23c 点検:率の10年の上昇を支える値上げの開示・金利などの事業の理由を、具体的な数字や出典つきで書けないので、楽観・やや楽観・中立は現在の0.85%の横ばいにした。やや悲観・悲観は据え置き。)
リスクと懸念
政策保有株式の評価損・含み益縮小
京都銀行は任天堂・ニデック・村田製作所・京セラなど98銘柄・時価約1.3兆円の政策保有株式を持ち、自己資本11,360億円に匹敵する含み益を抱える。中核の一つであるニデック株は2026年の会計不正発覚・社長解任・1兆円規模の減損計上を経て株価が最高値比7割程度下落し、含み益の一角が既に縮小した。同様のリスクが他の保有銘柄で再発すれば自己資本が大きく傷む。
信用コストの急増
金利上昇が進む過程では京都府内の中小企業の資金繰りが悪化しやすく、与信費用が増える。京都銀行の自己資本比率は単純指標で9.6%と相対的に低く、リーマン級の信用収縮が起きれば保有する株式・債券の評価損も重なり、資本とROEが一時的に大きく傷む。
信用金庫との競合
京都市内では京都中央信用金庫、府北部では京都北都信用金庫がそれぞれ首位であり、上位3行庫で京都府内シェア7割強を占める構図の中で、京都銀行単独の法人メインバンクシェアのさらなる拡大余地は他の地銀トップ行より限られる。
京都府内の人口減少と貸出需要の縮小
京都府も他地域と同様に長期的には人口減少・企業の内部留保志向が続き、法人・個人向け貸出の量の伸びは鈍い。信用金庫との競合もあり、府内シェアが既に高い水準にあるため、さらなるシェア拡大による量の確保も難しく、成長は利ざやと非金利収益、政策保有株式の実現益への依存度が強まる。
財務の脆さ
自己資本比率は単純指標では9.6%とkabufuの脆さスコアで低めに判定される。政策保有株式の含み益が自己資本の中で大きな比率を占めるため、株式市場が崩れた局面での自己資本の目減りは他の地銀より大きくなりやすい。
一時的な好決算の反動
2026年3月期の純利益2.6倍(約950億円台)は任天堂株の売却益751億円を中心とする一時的な実現益が大きく、事業の実力利益は2027・2028年3月期予想(520億・528億)に近い水準である。毎年同規模の売却益が続くとは限らず、反動で利益が落ち込む年が出やすい。
政策保有株式の縮減とガバナンスの実行リスク
政策保有株式は2023年3月末137銘柄から2026年3月末98銘柄まで縮減が進んだが、取引先との関係維持の観点から急には進められない面があり、縮減のペースや市況によって売却収益・自社株買いの原資が計画より振れる可能性がある。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ向けて計画より速いペースで上げたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。京都府内の貸出利ざやの拡大ペースを決算で確認する。
- 京都府内の与信費用が四半期で急増したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。中小企業のどの業種で信用コストが増えたかを確認する。
- ニデック株などの政策保有株式に新たな評価損・含み益の回復が確認されたら
- 回復なら楽観側、新たな評価損なら悲観側に重みを移す。決算の「その他有価証券評価差額金」の推移を確認する。
- 政策保有株式の縮減が2029年目標に向けて計画を上回って進んだら
- 資本効率改善のペースが速いとみて楽観側の確率をやや上げる。
- 京都市内・府北部で信用金庫に対するシェアを明確に取り返す動きが見えたら
- 法人メインバンクシェアの拡大余地を上方修正し、楽観側の筋書きの前提を上方修正する。
- 第2次中期経営計画のROE8%・利益900億円の目標から大きく下振れする決算が続いたら
- やや悲観側に重みを移す。実力利益(売却益を除いた本業の利益)の推移を確認する。
見ておくもの
- 日銀の政策金利・京都府内の貸出利ざやの推移
- 京都府内の与信費用(信用コスト)の推移
- 政策保有株式の縮減進捗(2026年3月末98銘柄)とその他有価証券評価差額金の推移
- ニデック株の経営再建・株価の動向
- 第2次中期経営計画(2026~2028年度、ROE8%以上・利益900億円以上)の進捗
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観は10年後のROEとk 8%(基本7.5%+quality +0.5%)・g 4.0%から利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限を出し、その9.5・9割に置いた(下限は1÷k=12.5倍)。中立・やや悲観・悲観はROEがk(8%)以下なので、PERは1÷k=12.5倍が上限で、その8.7・9・8割に置いた。悲観の利益は貸出の利ざやが競争で縮み与信費用が重い構造から、自己資本に対するROE約1%に置き、過去の底値や今の倍率は根拠にしていない。kが1%高い(9%)と10年の中立のPERは10.9倍から9.7倍に下がる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.06→12.7 倍・やや楽観 PER 11.25→12.5 倍・中立 PER 10.91→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β 0.72 × 5% + 規模 0.25%。基本7.5%に quality +0.5% を足して k 8%(決まり v2。β・規模は使わない。内訳と理由は quality_why)。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。個別のリスク(ニデック株の会計不正による含み益の目減り)は k に足さず、確率と筋書きで表す。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は 0。同じ地方銀行どうしで同じ物差しを使い、差は quality の4部品だけで出している。
同じ業種(銀行業)の AI 分析
読んだ資料
- 京都フィナンシャルグループ 経営計画(第2次中期経営計画 2026~2028年度)
- Kyoto Financial Group Sets Ambitious 2026–2028 Plan to Drive Growth from Kyoto and Kansai
- 「任天堂株」保有の京都銀が含み益トップ、投資で「儲けた銀行」と「損した銀行」(楽待新聞)
- 京都FGの政策保有株100銘柄下回る 26年3月末、3年間で3割削減(日本経済新聞)
- 京都FG株価急伸、26年3月期純利益2.6倍 任天堂などの株売却(日本経済新聞)
- 京都FG、自社株の取得枠拡大 120億円増の最大270億円に(日本経済新聞)
- ニデック株ストップ安、不正会計で1兆円規模の減損損失を計上と報道(Bloomberg)
- 京都府・メインバンク動向調査(2025年)(帝国データバンク)
- 京都銀行 - 保有株の推移(ullet.com)