結論
北日本銀行は、盛岡市に本店を置く第二地方銀行である。岩手県を軸に、宮城県など5県と東京に77店を構える。筆者の結論は、稼ぐ力は上向くが、資本コストには届かないまま10年が過ぎる銀行だ、というものだ。今の値段は、その改善を先取りしていると見る。
稼ぎの源は預金である。預金1.4兆円を、貸出と国債に回した差で食べる。2026年3月期の純利益は44億円で、会社は2027年3月期に45億円を見込む。日銀が政策金利を2%へ上げれば、変動金利の貸出と有価証券の利回りが先に上がり、預金金利は遅れて追う。10年後の中立では、純利益は70億円ほどになる。
伸びを削るのは、人口と費用と競争だ。岩手県の人口は、2040年に96万人ほどへ減る。事業性貸出は足元で減っている。費用は物価で膨らむ。利益が6割増えても自己資本が3割積み上がるため、ROEは5%台で止まる。
再編の波も無視できない。2026年10月、県内首位の岩手銀行が、秋田銀行などと統合協議に入った。北日本銀行は枠の外にいる。規模で劣る銀行が、費用負担と預金競争の両方に耐えられるかが問われる。
確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、北日本銀行は稼ぎの質がまだ足りず、堀も薄い会社だ。10年後も県内に店があり、顧客がいることは確かだ。だが、事業が続くことと、株主の取り分が増えることは別の話である。
銀行は、利益の多くを規制上の自己資本として積み増す必要がある。10年で利益が6割増えても、自己資本も3割増え、ROEは5%台で止まる。積み増しを引いた、株主が自由に使える利益は、見かけの利益より小さい。
資本の使い方は、変わり始めた。配当性向の目安を35%に定め、自社株買いにも動いた。これは評価できる。ただ、規律が成果として数字に表れるには、数年かかる。
再編は、価値を生むことも壊すこともある。単独で費用を背負い続ければ、経費率は下がらない。買われる側として統合するなら、比率と条件が株主の取り分を決める。条件が見えない今、プレミアムを値段に先取りするのは危うい。
最後は安全域だ。確率で重みづけした本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回る。いま払う値段に、安全域はない。
何で稼ぐ会社か
北日本銀行は、岩手県盛岡市に本店を置く。北東北でただ1つ残る第二地方銀行(地方銀行のうち、旧相互銀行の流れをくむ銀行)である。持株会社はなく、銀行本体が上場している。2026年3月末で、預金は1.45兆円、総資産は1.5兆円ほどだ。
店は77ある。内訳は、岩手県に57、宮城県に10、青森県に5、秋田県と福島県に2ずつ、東京に1だ。宮城県の店が多いのは、岩手の外に貸出の場を求めてきた結果である。
稼ぎの柱は4つある。1つ目は、地元の中小企業や自治体への貸出。2つ目は、住宅ローンなど個人向けの貸出。3つ目は、投資信託・保険・為替などの手数料。4つ目は、預金の運用で、集めた預金を国債や株式、日銀預け金に回した差が稼ぎになる。銀行は、預金が仕入れで、貸出と運用が売り物だと考えるとわかりやすい。
足元は、貸出の中身が入れ替わっている。2025年9月の中間期では、事業性貸出が減り、住宅ローンが増えた。貸出全体は1.1兆円で、ほぼ横ばいだ。2026年3月期の増益は、有価証券の運用益と株式の売却益が支えた。
会社は、4年間の中期経営計画「BRANDING THE KITAGIN QUALITY 2027」を進めている。2025年5月に目標を引き上げ、最終年度の2027年3月期に経常利益60億円以上、純利益40億円以上を掲げた。2027年3月期の会社予想は、経常利益66億円、純利益45億円で、この目標をすでに上回る。法人向けのサステナブルファイナンス1,000億円、住宅ローンの実行2,000億円も、行動目標である。
優良さと弱いところ
最大の弱みは、値決め力が弱いことだ。岩手県内は、首位の岩手銀行が貸出の半分近くを握る。北日本銀行は県内で2番手の立場で、貸出の値段は競争で決まりやすい。77店という顧客との接点は財産だが、堀と呼べるほどの強みにはなっていない。
収益力は、首位行に見劣りする。ROEは、過去10年の中央値が3.2%で、資本コストを一度も超えていない。2026年3月期も4.6%だ。経費率の目標も75%未満と高く、費用の重さは構造的である。
財布も薄い。自己資本の総資産に対する単純な比率は6%ほどだ。規制上の自己資本比率は、会社が9.5%以上を目標に積み増している途中である。債券の評価損や与信費用が重なると、余裕は小さい。赤字の期は、2009年3月期と2011年3月期にある。
良い変化もある。2025年9月に株主還元方針を決め、配当性向35%を目安に、2030年3月期までに40%を目指すと示した。2026年8月には約10億円の自社株買いを実行した。資本の使い方は、ようやく株主を向いてきた。
株主は、信託銀行と明治安田生命が上位を占め、支配株主はいない。親会社に守られない代わりに、統合の話が来れば、株主が条件で判断する立場にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北日本銀行が戦う市場は、人口減少と金利上昇が同時に進む岩手県と、その周辺である。
岩手県の人口は、2020年の国勢調査で121万人となり、5年で5.4%減った。2040年には96万人ほどになる見通しだ。貸出の量は、物価の分しか伸びにくい。事業性貸出が足元で減っているのは、その表れだ。復興需要は一巡した。宮城県の10店が、数少ない成長の足がかりになる。
一方、金利は追い風だ。政策金利が2%へ向かえば、変動金利の貸出と有価証券の利回りが先に上がる。預金は遅れて追うので、利ざやが広がる。ただ、預金は金利で動く資金に変わりつつある。ネット銀行や県内他行との獲得競争が、広がる幅を決める。
再編が、県内の競争の形を変える。2026年10月、岩手銀行、秋田銀行、青森みちのく銀行の親会社プロクレアHDが、2028年4月の経営統合を目指すと発表した。総資産は13兆円を超え、東北最大になる。県内の残る2行のうち、東北銀行は、2025年8月にSBIグループと資本業務提携を結んだ。北日本銀行には、目立った動きがない。
統合の目的は、システム費用と専門人材の負担を分け合うことだ。単独の銀行は、同じ投資を自力で背負う。この差は、10年のあいだに経費率の差として表れる。筆者は、規模の差が最も重い課題だと見る。
資本政策と M&A
還元は、厚くなる方向にある。2025年9月に、配当性向を連結純利益の35%とする方針を決め、2030年3月期までに40%を目指すとした。機動的な自社株買いも掲げる。2026年8月には約10億円を立会外で買い付け、10万株の消却も決めた。株式は、1株を3株に分割した。
自己資本は、規制上の比率を高めるために積み増す方針だ。中期経営計画は、自己資本比率の目標を8.5%以上から9.5%以上へ引き上げた。利益の多くは、還元より積み増しに回る。還元の余地は、利益の伸びと表裏になる。
M&Aは、買う側ではなく、買われる側の話になる。県内首位の岩手銀行が統合に動き、東北銀行もSBIと組んだ。独自路線の北日本銀行は、次の再編の相手として名前が挙がりやすい。ただ、支配株主はおらず、公表された範囲では具体的な協議は確かめられていない。
政策保有株式の売却方針と縮減額は、確かめられた範囲では見つからなかった。株式の売却益は、利益の振れ幅として残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の追い風は、数字にすでに出ている。2026年3月期の純利益は44億円と、前期から1割近く増えた。2027年3月期の第1四半期は、純利益が6割近く伸びた。有価証券の運用益と貸出利息が、預金利息の増加を上回っている。政策金利が2%まで上がるなら、会社の予想は保守的だ。
会社の計画は、すでに前倒しで達成が見える。純利益の目標40億円以上に対し、会社予想は45億円だ。目標を2025年5月に引き上げたのに、それでも届く。経営には、数字を作る力がある。
資本政策も変わった。配当性向は35%を目安に、2030年3月期に40%を目指す。自社株買いも実行した。株主を向いた会社は、倍率が上がりやすい。
県内で独自路線を保つことは、強みにもなる。岩手銀行が統合の調整に数年を使う間、北日本銀行は営業に集中できる。県内の取引先と宮城県の拠点を、地道に積み上げられる。
規模の小ささは、買われる時の扱いやすさでもある。SBIや他の地銀が動けば、統合のプレミアムが手に入る。筆者も、この上振れは無視できないと見る。ROEが8%近くに乗れば、10年後の倍率は一段高い。
慎重な見方
金利の追い風は、預金の獲得競争で削られる。預金1.4兆円は、金利で動く資金に変わりつつある。北日本銀行は、預金に払う金利を上げざるを得ない。2027年3月期の第1四半期の増益は、株式の売却益にも支えられた。毎年は繰り返せない。
人口の減る県で、首位の岩手銀行が貸出の半分近くを握る。残りを奪い合う構図で、事業性貸出はすでに減っている。住宅ローンで量を補っても、利ざやは薄い。宮城県の10店は、仙台の有力行との競争にさらされる。
収益力の実績は弱い。ROEは過去10年の中央値が3.2%で、資本コストを一度も超えていない。自己資本は薄く、赤字の期も2度ある。経費率の目標は75%未満と高く、物価で費用は膨らみ続ける。
最後は、再編での孤立だ。岩手銀行は北東北3行で13兆円規模になり、東北銀行はSBIの後ろ盾を得た。システムも人材も、北日本銀行は自力で用意する。統合に乗り遅れると、費用の差が経費率に出る。ROEが資本コストを超えない限り、倍率は上がらない。
どちらに重みを置いたか
金利の追い風は本物で、会社の目標を超える利益が出ている。この点では、強気の言い分に分がある。だが、追い風は預金競争で削られ、人口減と自己資本の薄さも消えない。利益が伸びても、ROEが資本コストに届く姿は、中立でも描けなかった。
買われる側に回る上振れは残るが、条件が見えない段階で中立へ足し込むのは危うい。確率は中立にいちばん厚く置き、ROEの実績と規模の不利を重く見て、慎重側へ寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,829 円674 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 920 円219 億円)。 今の値に割り戻すと 1,863 円444 億円、今との差 −23.3%、 期待の年率 +4.4%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 5,425 円1,294 億円 | 1,426 円340 億円 | +182.2% | +10.9% | 617 円147 億円 |
| やや楽観 | 21% | 4,242 円1,011 億円 | 1,195 円285 億円 | +123.9% | +8.4% | 1,142 円272 億円 |
| 中立 | 30% | 3,453 円823 億円 | 1,007 円240 億円 | +83.7% | +6.3% | 1,338 円319 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,275 円304 億円 | 713 円170 億円 | −18.1% | −2.0% | 517 円123 億円 |
| 悲観 | 14% | 589 円140 億円 | 377 円90 億円 | −60.2% | −8.8% | 135 円32 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,829 円674 億円 | 920 円219 億円 | +54.4% | +4.4% | 3,748 円894 億円 |
今の株価時価総額 2,428 円579 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 9% 有力な相手との統合と金利上昇が重なり、ROEが8%近くに乗る10年 利益 110 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 5,425 円1,294 億円
政策金利は2%に定着し、貸出の利ざやは今より0.5%ほど広がる。預金は決済口座の粘りで、金利の追随が緩やかに済む。
北日本銀行は、有力な相手と統合する。システムの共通化と専門人材の共有で、費用は物価の伸びを大きく下回る。統合の条件は株主に有利で、プレミアムも手に入る。県内2位の顧客基盤と宮城県の拠点は、新しい銀行で厚みを増す。
与信費用は、景気の山で低く抑えられる。住宅ローンと法人の手数料が育ち、役務も厚くなる。10年後の純利益は110億円ほどに達し、ROEは8%近くになる。
それでも、岩手の人口は減り続ける。貸出の量は、実質でほとんど増えない。伸びを生むのは、費用の削減と利ざやの拡大だ。
- 法人・公共貸出:数量 0.7(法人・公共貸出平残(兆円・実質))× 価格 2.2%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 154 億円・営業利益 69 億円。残高 0.71 兆円(実質)× 率 2.17%(物価1.34倍込み)、利益率 45%
- 個人貸出:数量 0.4(個人貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.7%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 71 億円・営業利益 26 億円。残高 0.41 兆円(実質)× 率 1.74%(物価1.34倍込み)、利益率 36%
- 預かり資産・役務:数量 0.4(預かり資産・取扱残高(兆円・実質))× 価格 1.0%(役務利益率(残高比・%)× 物価指数)→ 売上 37 億円・営業利益 11 億円。残高 0.38 兆円(実質)× 率 0.97%(物価1.34倍込み)、利益率 30%
- 預金運用・市場:数量 1.5(預金等平残(兆円・実質))× 価格 0.8%(運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数)→ 売上 122 億円・営業利益 59 億円。残高 1.45 兆円(実質)× 率 0.84%(物価1.34倍込み)、利益率 48%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,294 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:良い相手との統合、政策金利2%の定着、与信費用の低位が重なる必要がある。kabufuの試算でも、10年以内に買収や統合に至る確率は2割ほどで、その多くは条件の良し悪しが分かれる。確度は高くないので最も薄い。
やや楽観 21% 利ざやの拡大が定着し、ROEが6%台へ改善する10年 利益 86 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,242 円1,011 億円
政策金利が2%に届き、貸出利息の増加が預金利息の増加を上回る状態が続く。事業性貸出は、宮城県の拠点が支えて下げ止まる。
住宅ローンの積み上がりと、法人の事業承継・M&A支援の手数料が育つ。システム費用は、他行との協業や外部委託で抑えられる。独自路線は崩れず、県内2番手の地位を保つ。
与信費用は、景気を1〜2周してならした水準に戻る。純利益は85億円ほどに乗り、ROEは6%台になる。それでも資本コストには届かない。
預金の獲得競争は続くが、決済口座と給与・年金口座の粘りで、預金金利の追随は緩やかに抑えられる。株式の売却益に頼らず、本業で稼げる形に近づく。
- 法人・公共貸出:数量 0.7(法人・公共貸出平残(兆円・実質))× 価格 2.0%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 141 億円・営業利益 55 億円。残高 0.69 兆円(実質)× 率 2.04%(物価1.34倍込み)、利益率 39%
- 個人貸出:数量 0.4(個人貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.6%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 65 億円・営業利益 20 億円。残高 0.40 兆円(実質)× 率 1.64%(物価1.34倍込み)、利益率 30%
- 預かり資産・役務:数量 0.4(預かり資産・取扱残高(兆円・実質))× 価格 0.9%(役務利益率(残高比・%)× 物価指数)→ 売上 33 億円・営業利益 8 億円。残高 0.35 兆円(実質)× 率 0.94%(物価1.34倍込み)、利益率 25%
- 預金運用・市場:数量 1.4(預金等平残(兆円・実質))× 価格 0.8%(運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数)→ 売上 108 億円・営業利益 49 億円。残高 1.41 兆円(実質)× 率 0.76%(物価1.34倍込み)、利益率 45%
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,011 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:政策金利2%の定着と、会社の計画どおりの費用管理が重なる筋書き。会社予想がすでに目標を上回る足元の勢いを踏まえ、2番目の厚みに置く。
中立 30% 中立:利ざやは広がるが、人口減と費用が天井になる10年 利益 70 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,453 円823 億円
短期金利2%が定着し、貸出の利ざやは今より0.3%ほど広がる。預金は決済口座の粘りで追随が緩やかだが、獲得競争で調達費用は上がり続ける。岩手の人口が減る中、貸出の量は実質で小さく縮む。
北日本銀行は、単独の道を続ける。システム費用は自力で背負い、経費率は物価に合わせて増える。住宅ローンと手数料は伸びるが、事業性貸出の減りを埋め切れない。宮城県の拠点は、成長の足がかりにとどまる。
利益は10年で6割ほど増える。ただ、自己資本も3割ほど積み上がり、ROEは5%台で止まる。県内2番手の地位は保つが、資本効率で突き抜けられない銀行のままである。
配当性向は40%へ向かい、自社株買いも小さく続く。それでも、規制上の自己資本比率を保つための積み増しが先に立つ。
- 法人・公共貸出:数量 0.7(法人・公共貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.9%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 130 億円・営業利益 47 億円。残高 0.67 兆円(実質)× 率 1.94%(物価1.34倍込み)、利益率 36%
- 個人貸出:数量 0.4(個人貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.6%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 63 億円・営業利益 18 億円。残高 0.39 兆円(実質)× 率 1.61%(物価1.34倍込み)、利益率 28%
- 預かり資産・役務:数量 0.3(預かり資産・取扱残高(兆円・実質))× 価格 0.9%(役務利益率(残高比・%)× 物価指数)→ 売上 30 億円・営業利益 6 億円。残高 0.33 兆円(実質)× 率 0.90%(物価1.34倍込み)、利益率 20%
- 預金運用・市場:数量 1.4(預金等平残(兆円・実質))× 価格 0.7%(運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数)→ 売上 98 億円・営業利益 41 億円。残高 1.38 兆円(実質)× 率 0.71%(物価1.34倍込み)、利益率 42%
倍率:事業の純利益 70 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 823 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:短期金利2%・長期金利3%が定着し、与信費用が景気を1〜2周してならした水準に戻る、最も重みを置く筋書き。ROEが資本コストに届かない実績が重く、慎重側へ寄せたうえで最大の確率とした。
やや悲観 26% やや悲観:預金競争と孤立で、利ざやの果実が費用に消える10年 利益 38 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,275 円304 億円
短期金利は2%まで上がる。だが、預金の獲得競争で調達費用が先に上がり、利ざやの拡大は想定の3分の1ほどにとどまる。岩手の人口は想定を超えて減り、貸出の量も実質で大きく縮む。
県内首位の岩手銀行は統合で費用を下げていく。東北銀行はSBIの後ろ盾で攻勢に出る。北日本銀行は、システム費用を自力で背負い、経費率が下がらない。
与信費用は景気の谷で増え、債券や株式の評価損も重なる。純利益は40億円ほどにとどまり、ROEは3%台になる。
配当性向は保つが、規制上の自己資本比率を守るため、自社株買いは控える。統合を求められる立場に追い込まれても、条件は交渉で弱い。
- 法人・公共貸出:数量 0.6(法人・公共貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.6%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 101 億円・営業利益 27 億円。残高 0.62 兆円(実質)× 率 1.64%(物価1.34倍込み)、利益率 27%
- 個人貸出:数量 0.4(個人貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.4%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 51 億円・営業利益 10 億円。残高 0.36 兆円(実質)× 率 1.41%(物価1.34倍込み)、利益率 20%
- 預かり資産・役務:数量 0.3(預かり資産・取扱残高(兆円・実質))× 価格 0.8%(役務利益率(残高比・%)× 物価指数)→ 売上 24 億円・営業利益 3 億円。残高 0.29 兆円(実質)× 率 0.84%(物価1.34倍込み)、利益率 14%
- 預金運用・市場:数量 1.3(預金等平残(兆円・実質))× 価格 0.5%(運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数)→ 売上 70 億円・営業利益 23 億円。残高 1.30 兆円(実質)× 率 0.54%(物価1.34倍込み)、利益率 33%
倍率:10年後のROE3.2%(純利益38億円÷自己資本1,180億円)は k 8.5% を大きく下回り、正当化PERは約7倍。稼ぐ力(約40億円÷k=約460億円)の内側で、上限の1÷k=11.8倍は使わず8.0倍に置いた。今の自己資本950億円に対する倍率は約0.3倍。
確率:預金金利の追随が早まり、統合の波にも乗れず、費用の負担が重くなる筋書き。10年という期間では十分に起こりうるので、中立に次ぐ厚みに置く。
悲観 14% 悲観:県内に閉じ、費用に押され、救済に近い形で統合する10年 利益 18 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 589 円140 億円
10年のどこかで、世界的な信用収縮が起きる。地元の中小企業の与信費用が急増し、債券と株式の評価損で自己資本も傷む。人口減は想定を超えて速まり、県内の貸出需要が縮む。
預金は、金利を払って守るしかない。岩手銀行を含む北東北の大型グループと、SBIが後ろ盾の東北銀行に挟まれ、利ざやは競争で削られる。システムの更新費用は重く、経費率は下がらない。
純利益は20億円を割り込み、ROEは2%ほどに落ちる。自己資本の積み増しが追いつかず、増資か、不利な条件での統合を迫られる。株主の取り分は、希薄化で小さくなる。
10年の終わりには、独立した銀行としての存在意義が問われている。
- 法人・公共貸出:数量 0.5(法人・公共貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.1%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 59 億円・営業利益 13 億円。残高 0.52 兆円(実質)× 率 1.14%(物価1.34倍込み)、利益率 22%
- 個人貸出:数量 0.3(個人貸出平残(兆円・実質))× 価格 1.1%(貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数)→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。残高 0.32 兆円(実質)× 率 1.14%(物価1.34倍込み)、利益率 12%
- 預かり資産・役務:数量 0.2(預かり資産・取扱残高(兆円・実質))× 価格 0.8%(役務利益率(残高比・%)× 物価指数)→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。残高 0.24 兆円(実質)× 率 0.75%(物価1.34倍込み)、利益率 8%
- 預金運用・市場:数量 1.1(預金等平残(兆円・実質))× 価格 0.3%(運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数)→ 売上 38 億円・営業利益 11 億円。残高 1.12 兆円(実質)× 率 0.34%(物価1.34倍込み)、利益率 28%
倍率:ROE 2.0% が k 8.50% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 11.8 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.24 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 6.4 倍になる。自己資本の 0.2 倍に相当するのは 10.0 倍だが、やや悲観より低く置くため 7.8 倍にとどめた。やや悲観の 8.0 倍より低い。構造的に負けた筋書き。店舗不動産や政策保有株の含み益は、額を確かめられず床に足していない。
確率:リーマン級の信用収縮、人口減の加速、預金の流出、統合の機会の喪失が10年のどこかで重なる複合の悪材料。自己資本が薄く、単独での規模の不利もあるので、他の地銀と同じ1割台前半よりやや厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共貸出
岩手県を中心とした事業性貸出と、県・市町村向けの公共貸出。宮城県の拠点でも貸出を伸ばしてきた。
| 数量法人・公共貸出平残(兆円・実質) | 価格貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.1% | 78 | 24 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 1.9% | 130 | 47 |
取り方:貸出全体は2025年9月で1.10兆円(会社開示)。内訳は非開示のため、事業性貸出が減り住宅ローンが増えているという会社の説明から、法人・公共を0.70兆円と置いた(推定)。価格は預金の調達費用を引いた後の粗利益ベースの利ざやで、率としては1.12%、経常利益63億円への配分を24億円とした。10年後は残高を今の物価のまま(実質)で置き、物価の分は価格の指数に入れた。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+29%。数量が名目でないので二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約67%だけ追うので、中立の率は10年で1.12%→1.45%(+0.33ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
個人貸出
住宅ローンなど個人向けの貸出。給与振込・年金口座を軸にした県内の個人取引。
| 数量個人貸出平残(兆円・実質) | 価格貸出利ざや(粗利益ベース・%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1.0% | 40 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1.6% | 63 | 18 |
取り方:住宅ローン実行額2,000億円を2026年度までの行動目標に掲げる(会社開示)。個人向けの残高は非開示のため0.40兆円と置いた(推定)。利ざやは法人よりやや薄い1.00%とし、10年後は残高を実質で置き、物価の分は価格の指数に入れた。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+20%。数量が名目でないので二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ+1ポイント上がる前提。貸出金利は先に上がり、預金金利は預金ベータ換算で約80%だけ追うので、中立の率は10年で1.00%→1.20%(+0.20ポイント)。住宅ローンは固定が多く広がりは遅い。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
預かり資産・役務
投資信託・保険の販売、為替・公金の手数料、法人向けの手数料収益。
| 数量預かり資産・取扱残高(兆円・実質) | 価格役務利益率(残高比・%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.3 | 0.7% | 21 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.3 | 0.9% | 30 | 6 |
取り方:預かり資産の残高は非開示のため、役務収益が年25億円前後とみて、取扱残高0.30兆円 × 率0.70%=21億円と置いた(推定)。法人役務収益7億円(2026年度の行動目標)を含む。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で-4%。数量が名目でないので二重がけなし)
預金運用・市場
預金1.45兆円を、国債・日銀預け金・株式・投信で運用する部門。預金の安い調達と運用利回りの差、株式の売却益が稼ぎになる。
| 数量預金等平残(兆円・実質) | 価格運用ざや(預金調達費用控除後・%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 0.4% | 51 | 24 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 0.7% | 98 | 41 |
取り方:2026年3月末の預金は1兆4,474億円(会社開示)。有価証券の利息配当、日銀預け金の運用益、株式等の売却益から預金利息を引いた粗利益を率0.35%(約51億円)と置いた(推定)。2026年3月期は株式の売却益が利益を支えた。(点検 2026-10-19:数量は実質、率に物価指数1.34倍を掛ける形(B)。物価を除いた率の動きは10年で+51%。数量が名目でないので二重がけなし) (R23c 点検:率の上昇の理由)短期金利が今の1%前後から2%へ、長期金利が3%へ上がる前提。満期を迎えた低利回りの債券が高い利回りに入れ替わる一方、預金コストは預金ベータ換算で約82%だけ追うので、中立の率は10年で0.35%→0.53%(+0.18ポイント)。物価の分は価格の指数(1.34倍)に別に入れてあり、ここは物価を除いた率の動き。
リスクと懸念
預金の獲得競争で利ざやの取り分が縮む
政策金利が2%へ向かう中で、預金は金利で動く資金に変わる。県内の岩手銀行・東北銀行やネット銀行が預金金利を上げれば、北日本銀行も追わざるを得ない。預金が貸出より大きい銀行では、調達費用の上昇が、貸出利息の増加を打ち消してしまう。2026年3月期の増益も、運用益と売却益の寄与が大きい。
岩手県の人口減少と事業性貸出の減少
岩手県の人口は、2040年に96万人ほどへ減る見通しだ。事業性貸出は、2025年9月の中間期でも減っていた。住宅ローンで量を補っても、利ざやは薄い。県内首位の岩手銀行が貸出の半分近くを握る中、奪えるパイは限られる。宮城県の拠点は、仙台の有力行との競争が厳しい。
再編に乗れず、規模の不利が経費率に出る
岩手銀行を含む北東北3行は、2028年4月の統合を目指す。県内の東北銀行は、SBIグループと組んだ。北日本銀行は、システム費用や専門人材を自力で用意する。経費率の目標は75%未満と、もともと重い。統合に取り残されると、費用の差が収益力の差になる。
与信費用と債券・株式の損益の振れ
物価高、人手不足、金利上昇は、地元の中小企業の借入負担を重くする。有価証券の運用益や株式の売却益は、利益を押し上げたが、毎年は続かない。国債の売却損や評価損が出れば、利益は一気に削られる。赤字の期は、2009年3月期と2011年3月期にある。
自己資本の薄さ
自己資本の総資産に対する単純な比率は6%ほどと薄い。会社は、規制上の自己資本比率の目標を9.5%以上へ引き上げ、積み増しの途中にある。評価損と与信費用が重なれば、増資や不利な条件の統合を迫られる余地がある。その場合、今の株主の持ち分は薄まる。
還元の拡大が積み増しと両立するか
配当性向35%を目安に、2030年3月期までに40%を目指す方針は、前向きな変化だ。ただ、規制上の比率を高めながら還元も増やすには、利益が伸び続ける必要がある。2026年8月の約10億円の自社株買いも、一度きりで終われば、資本効率の改善にはつながらない。
今後の分かれ目
- 日銀が短期金利を2%へ計画より速く引き上げ、資金利益が伸び続けたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。貸出利息の増加が預金利息の増加を上回り続けているか、決算で確かめる。
- 県内の預金金利の引き上げ競争が激しくなり、資金利益が減ったら
- やや悲観・悲観へ重みを移す。預金残高と定期預金の積み上がり方、岩手銀行・東北銀行の預金金利を見る。
- 他行や外部との統合・提携が公表されたら
- 比率と費用削減の目標を見る。株主に有利な条件で、費用が大きく減るなら、楽観側の確率を上げる。持ち分が大きく薄まるなら、価値の見積りを下げる。
- 事業性貸出が増加に転じたら
- 宮城県の拠点が機能し始めた材料として、中立の数量を見直す。減少が続くなら、やや悲観の確率を上げる。
- 与信費用が計画を超えて増え、不良債権比率が上がったら
- 悲観側の確率を上げる。業種別の延滞と、債券・株式の評価損の動きを併せて確認する。
- 配当性向40%の前倒しや、継続的な自社株買いが示されたら
- 資本効率を重んじる姿勢の表れとして、中立の還元の額を上げる。ただし、規制上の比率の積み増しとの両立を確かめる。
見ておくもの
- 日銀の政策金利と、貸出利息・預金利息の増減(資金利益の推移)
- 事業性貸出の残高と、宮城県の拠点の貸出
- 他行との統合・提携の公表と、その比率・費用削減の目標
- 修正OHR(目標75%未満)と、規制上の自己資本比率(目標9.5%以上)
- 有価証券の評価損益と株式の売却益、与信費用の水準
- 配当性向(2030年3月期に40%)と自社株買いの実施
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。k は 7.5% に quality +1.0% を足した 8.5%、g は 4.0%。10年後の中立は、ROEが5%台で k 以下なので、PERは1÷k=11.8倍が上限で、金利への依存と人口減から約8割の9.2倍に置いた。楽観はROE8%近くで上限の9割強、やや楽観は約8.5割。やや悲観・悲観は、ROEが k を大きく下回る構造的な負けとして、稼ぐ力の弱さから8.0倍・7.8倍に置いた(悲観は ROE÷k に比例して目減りさせ、やや悲観より低い 7.8 倍。時価総額は稼ぐ力÷k=約210億円の内側)。過去のPBRや今の倍率、同業の倍率は根拠にしていない。k を1%上げて9.5%にすると、PERの上限は1÷k=10.5倍に下がり、中立は8.2倍ほどになる。銀行は店舗を借りて営む面もあるが、リースの影響は軽く、新リース会計(2028/03期から)の形の変化は10年後の数字に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.8→11.76 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.2→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.0% を足して k 8.5%(決まり v2)。同じ県の岩手銀行(+0.75%)より、値決め力の弱さの分だけ高くした。統合に乗れないリスクなど個別の事情は k に足さず、確率で表した。事業は傾いていないので上乗せ(extra)は0。