結論
フィデアホールディングスは、山形県の荘内銀行と秋田県の北都銀行を傘下に持つ地方銀行グループだ。2027年1月に両行は合併し、フィデア銀行になる。貸出は2.0兆円、預金は2.7兆円。筆者の結論は、今の値段は稼ぐ力に比べてやや高い、というものだ。
2026年3月期は純利益が41億円と5割近く伸びた。預貸ざやの広がりが主因で、貸出の利息は39億円増えた。ただ今期は、合併の一時費用を織り込み、純利益は32億円に戻る計画だ。第6次中期経営計画では、2028年度に純利益60億円、ROE6%以上を掲げる。
強みは、山形の庄内地方と秋田市で、それぞれ首位ではないが根の深い地盤を持つことだ。合併で本部と事務の重複が減り、経費の伸びを抑えられる。弱みは、地盤の人口が全国でも速く減ることと、単純な自己資本比率が3.0%と薄いことだ。県内には秋田銀行・山形銀行という大きな相手がいて、貸出の金利を自分では決めにくい。
筆者は、合併の効果と金利の追い風を認めたうえで、資本効率が資本コストに届かない姿を中心に置いた。他行との再編や買収の期待は、値段に織り込んでいない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この銀行は「稼ぐ力が戻る途上の中堅行」として持てるかが問題になる。
良い点は、公的資金を完済し、債券の評価損を段階的に処理して、傷を先に出してきたことだ。経営は課題を自ら動かし、合併という大きな決断を先に済ませた。PBR0.49倍は、自己資本の厚みに比べて安い。累進配当と配当性向40%の方針も、株主を向いている。
悪い点は、過去10年のROEの中央値が3.4%と、資本コストを継続して稼いだ実績が乏しいことだ。地盤の人口が速く減る県の2番手で、価格を決める力も弱い。単純な自己資本比率が3.0%と薄く、成長にも還元にも使える余裕は小さい。
筆者の判断は、安い理由が資本効率の低さにある以上、割安とは言えない、というものだ。確率は中立に3割強を置き、悲観側を合わせて4割とした。再編や買収の期待は織り込んでいない。
何で稼ぐ会社か
稼ぐ中心は、東北の日本海側の事業性貸出と地方公共団体向けの貸出だ。事業性貸出は0.80兆円、地方公共団体向けは0.46兆円、個人向けは約0.4兆円。ほかに金融業向けの仕組貸出が約0.28兆円ある。荘内銀行は山形県の庄内地方(鶴岡・酒田)、北都銀行は秋田市を中心に、それぞれ県内の中堅行として店を持つ。
預金は2.68兆円で、貸出を大きく上回る。余った預金は国債・地方債・外債・投資信託などで運用する。有価証券は2026年3月末で4,011億円。前期から1,646億円減らした。評価損を段階的に処理し、資産を良質にする方針のためだ。評価損益は145億円の損にまで縮んだ。
手数料の収入は約51億円。投資信託、生命保険、住宅ローン関連、ビジネスマッチングや事業承継・M&Aが柱だが、生命保険の手数料体系の変更で前期から減った。
グループにはリース、証券、地域エネルギーのフィデアエナジーなども含まれる。ただし収益の大半は2行の預貸ざやと運用で、グループ会社の寄与は経常利益で約8億円にとどまる。経費率(OHR)は68.7%と高く、合併後の削減が最大の課題だ。
優良さと弱いところ
堀は、ある。ただ、広くはない。
荘内銀行は庄内地方で、北都銀行は秋田市で、長年の取引と顔の見える営業を築いている。事業承継・M&A、ビジネスマッチングの実績もあり、中小企業の相談相手になれる。ただ山形県の首位は山形銀行、秋田県の首位は秋田銀行で、両行とも県内の貸出で圧倒的な位置にある。フィデアは県内の2番手にとどまり、貸出の金利は首位に引きずられる。
経営は、課題を自ら片づける動きが多い。公的資金は完済し、合併も先に打ち出し、システムと本部の統合を急いでいる。第5次中期計画の純利益の目標は、策定当初の40億円から金利環境の変化と合併を理由に33億円へ引き下げ、結果は41億円で達成した。目標を下げて達成した点は、割り引いて見る必要がある。
資本は、薄い。単純な自己資本比率は3.0%と小さい。国の規制上の自己資本比率は9.85%と、計測手法の変更(FIRB)で上がったが、中期計画は10%を目線にしている。有価証券の評価損益は145億円の損で、自己資本の2割弱に当たる。筆者はこの薄さを、k(資本コスト)の借金の項目で表し、さらに悲観側の確率で表した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
銀行は「金利のある世界」の入り口にいる。短期金利が2%に向けて上がる間は、変動金利の貸出の利息が先に増え、預金の利息は遅れて増える。この時間差がフィデアにも追い風になる。日本銀行の政策金利を、会社は2028年度以降1.50%と想定している。
東北の日本海側は、国内でも人口の減る速度が速い。国の推計では、2050年にかけて山形県は約3割、秋田県は約4割の人口が減る。貸出の量は名目で物価並みに伸ばすのも難しく、実質では縮む。ただ、製造業・再エネ・観光といった地域の特色には、需要が残る。
競争は県内の首位行と信用金庫が中心だ。秋田銀行は岩手銀行・プロクレアHD(青森みちのく銀行)との3行統合協議に入っており、規模を持つ相手が増える。山形でも山形銀行が首位として構える。フィデアは合併による規模拡大で対抗するが、広がった利ざやの一部は預金金利の引き上げと値引きに消える。
システムの統合、人件費の上昇(ベースアップ)、AI投資は、毎年3%ずつ上がる世界で規模の小さい銀行ほど重い。合併の効果が経費に出るのは、2028年度以降になる。
資本政策と M&A
資本政策の山場は、合併だ。荘内銀行を存続会社として北都銀行を吸収合併し、2027年1月1日にフィデア銀行となる。頭取は両行の頭取を兼ねる佐藤敬氏が就く。新銀行の従業員は約990名。合併費用は、今期の純利益32億円の計画に織り込まれている。
自己資本は2026年6月末で916億円、時価総額は448億円だ。PBRは0.49倍で、市場は稼ぐ力を自己資本の半分でしか見ていない。会社の資本コストの認識はCAPMベースで5〜6%と、筆者のk9.0%より低い。ROEは2025年度の5.1%、2028年度の目標は6%以上、2031年度は8%以上だ。
配当性向は2026年3月期で32.7%。2026年度から累進配当を導入し、配当性向を40%程度に引き上げる方針だ。自己資本比率は10%を目線に置き、超える分はリスクテイクに回す。増資の予定は示されていない。
政策保有株は縮減方針で、2行合計の上場株式は銘柄数も時価も年々減っている。売却益は一時的で、資本の質の改善とROEの安定にはなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
金利の追い風と合併の効果が、これから重なる。2026年3月期は預貸ざやの広がりで純利益が41億円に伸びたが、貸出利回りはまだ上がる途中だ。第6次中期計画は2028年度に純利益60億円、ROE6%以上を掲げ、2031年度には8%超を目指す。
合併で、2つの銀行に別々にあった本部とシステムが1つになる。経費率は今の68.7%から下がる余地が大きい。公的資金は完済し、債券の評価損は145億円の損まで縮んだ。PBR0.49倍は、自己資本の厚みに比べて安い。
累進配当と配当性向40%の方針も、株主を向いている。人口が減る地域でも、事業承継やM&Aの需要は残る。ここまで準備した銀行が、金利のある世界で稼ぎ直すだけでも、評価は戻りやすい。合併の準備費用はすでに今期の計画に入っており、来期以降は一時費用が減る分だけ利益が戻りやすい。事業承継やM&Aの手数料は、地方でこそ伸びしろが大きい。預かり資産の増加も、手数料を押し上げる。
慎重な見方
過去10年のROEの中央値は3.4%で、資本コストを稼いだことがほとんどない。今期の41億円も、金利の追い風が大きく、本業の力が上がったとは言い切れない。今期の計画は、合併費用で32億円に戻る。
地盤の山形・秋田は、人口が全国でも速く減る。県内の首位は秋田銀行・山形銀行で、フィデアは2番手にとどまる。首位が統合で大きくなれば、貸出の金利は首位に引きずられる。
単純な自己資本比率は3.0%と薄く、与信費用が増えれば配当の余力が先に消える。合併の費用とシステム統合は、計画より重くなることが多い。第5次の中期計画も、目標を引き下げて達成した。今の値段が安く見えるのは、安いだけの理由があるからだ。合併後も県の人口が減る事実は変わらず、貸出の量では勝てない。経費の削減が計画どおり進んでも、その利益を自己資本が薄いまま株主に回せるかは別の問題になる。北都銀行の純利益はすでに前期比で半分近く減っており、合併前から力の差が出ている。
どちらに重みを置いたか
金利の追い風と合併の効果という点では、強気の見方に分がある。一方、資本効率の低さと、地盤の人口減、価格を決める力の弱さは、慎重な見方のほうが具体的だ。
確率は、中立に3割強を置き、楽観側を合わせて3割、悲観側を合わせて4割とした。悲観を軽くしなかった理由は、資本の薄さが景気の悪化や合併の失敗と重なったときの傷の深さだ。楽観を大きくしなかった理由は、10年の実績に資本コストを稼いだ年がほとんどないことだ。
結果は「やや割高」。再編や買収の期待は織り込んでいない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,458 円621 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,221 円219 億円)。 今の値に割り戻すと 2,254 円405 億円、今との差 −5.2%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,577 円1,181 億円 | 1,838 円330 億円 | +254.0% | +13.5% | 673 円121 億円 |
| やや楽観 | 21% | 5,259 円944 億円 | 1,615 円290 億円 | +189.2% | +11.2% | 1,444 円259 億円 |
| 中立 | 32% | 4,201 円754 億円 | 1,337 円240 億円 | +133.0% | +8.8% | 1,772 円318 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,303 円234 億円 | 947 円170 億円 | −5.3% | −0.5% | 562 円101 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,122 円201 億円 | 501 円90 億円 | −31.7% | −3.7% | 227 円41 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,458 円621 億円 | 1,221 円219 億円 | +96.8% | +7.0% | 4,679 円840 億円 |
今の株価時価総額 2,377 円427 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 合併のコストシナジーが早く実り、ROEが8%に迫る十年 利益 106 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 6,577 円1,181 億円
2027年1月の合併が計画どおり進み、システムと本部機能が1つに統合される。経費率(OHR)は今の68.7%から50%台後半へ向かい、物価で経費が上がる世界でも利益の伸びが売上の伸びを上回る。
短期金利は2%で落ち着き、貸出の利ざやは今より広いまま定着する。庄内の製造業・再エネと、秋田市の法人・公共の資金需要を取り込み、法人貸出は名目で年2.7%ほど伸びる。住宅ローンは競争が厳しいが、利ざやは物価並みに上がる。
債券は評価損を出し切ったあと、利回りの高いものに入れ替わり、運用の収益が積み上がる。手数料は預かり資産とともに伸びる。与信費用は平常で、純利益は100億円ほどまで増える。累進配当で配当性向を4割近くに上げ、自己資本も厚くなり、ROEは8%に届く。
- 法人・公共貸出:数量 1.6(事業性+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.7%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 277 億円・営業利益 78 億円。残高 1.64 兆円(名目)× 利ざや 1.69%
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.3%(貸出利ざや(%))→ 売上 59 億円・営業利益 12 億円。残高 0.46 兆円(名目)× 利ざや 1.28%
- 有価証券・市場運用:数量 0.8(運用残高(兆円))× 価格 1.8%(運用利回り-調達(%))→ 売上 147 億円・営業利益 50 億円。残高 0.82 兆円(名目)× 運用ざや 1.80%
- 手数料・グループ会社:数量 1.1(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 90 億円・営業利益 31 億円。残高 1.12 兆円(名目)× 手数料率 0.80%
倍率:事業の純利益 106 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 1,181 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:合併が計画どおり実り、金利も追い風になる姿。第5次中期計画で目標を引き下げた実績と、資本の薄さから、確率は8%にとどめた。
やや楽観 21% 金利の追い風が定着し、経費の削減が着実に進む十年 利益 85 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 5,259 円944 億円
短期金利が2%で落ち着き、預貸ざやは今より広い水準で保たれる。山形・秋田の人口は減るが、法人貸出は名目で年2.3%、個人貸出は年1%ほど伸びる。債券の運用利回りも上がり、運用の収益が貸出と並んで利益を支える。
合併のコストシナジーは一部が出る。本部機能の統合とデジタル化で、経費の伸びを物価の3%より低く抑えられ、経費率は60%台前半まで下がる。与信費用は平常で、純利益は85億円ほどに増える。
還元は配当性向を4割まで高められる。中期計画の2028年度ROE6%以上は達成されるが、それ以降は自己資本の積み上がりが重く、ROEは7%近くで止まる。資本コストには届かないが、普通の地銀として着実に稼ぐ十年になる。
- 法人・公共貸出:数量 1.6(事業性+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 260 億円・営業利益 65 億円。残高 1.59 兆円(名目)× 利ざや 1.64%
- 個人貸出:数量 0.5(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 57 億円・営業利益 10 億円。残高 0.46 兆円(名目)× 利ざや 1.24%
- 有価証券・市場運用:数量 0.8(運用残高(兆円))× 価格 1.8%(運用利回り-調達(%))→ 売上 140 億円・営業利益 43 億円。残高 0.80 兆円(名目)× 運用ざや 1.75%
- 手数料・グループ会社:数量 1.1(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 85 億円・営業利益 26 億円。残高 1.09 兆円(名目)× 手数料率 0.78%
倍率:事業の純利益 85 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 944 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画に近い姿。楽観側のなかでは最も起こりやすく、2割強を置いた。
中立 32% 利ざやは定常化し、フィデア銀行は平均的な地銀として稼ぐ十年 利益 68 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 4,201 円754 億円
短期金利2%・長期3%が定着し、貸出の利ざやは今より広い水準で安定する。人口が減る山形・秋田では、法人貸出は名目で年2%、個人貸出は年1%強と、物価の3%を下回る伸びにとどまる。実質では貸出は縮む。
広がった利ざやの一部は、預金金利の引き上げと、県内の首位行に引きずられた貸出金利の競り合いで消える。経費は物価と賃金に合わせて上がるが、合併のシナジーとデジタル化で、経費率は60%台半ばまで下がる。与信費用は平常で、年25億円ほどが続く。
純利益は70億円弱まで増える。自己資本はこれに合わせて厚くなるが、累進配当の配当性向4割を守ると、自己資本比率の10%も保てる。ROEは5%台で、資本コストに届かない。傾きはしないが、資本を稼げない地味な十年になる。
- 法人・公共貸出:数量 1.5(事業性+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.6%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 246 億円・営業利益 54 億円。残高 1.54 兆円(名目)× 利ざや 1.60%
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.2%(貸出利ざや(%))→ 売上 54 億円・営業利益 8 億円。残高 0.45 兆円(名目)× 利ざや 1.20%
- 有価証券・市場運用:数量 0.8(運用残高(兆円))× 価格 1.7%(運用利回り-調達(%))→ 売上 135 億円・営業利益 38 億円。残高 0.78 兆円(名目)× 運用ざや 1.73%
- 手数料・グループ会社:数量 1.1(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.8%(実効手数料率(%))→ 売上 82 億円・営業利益 22 億円。残高 1.05 兆円(名目)× 手数料率 0.78%
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 754 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も確からしい姿として最大の確率を置いた。過去10年のROEの低さと、会社の中期計画の両方を反映した。強い堀は無いので、3割強にとどめた。
やや悲観 25% 人口減と首位行の再編で、利ざやが思ったほど残らない十年 利益 36 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,303 円234 億円
秋田銀行などの統合が済み、規模の差が広がる。貸出の金利は首位に引きずられ、フィデアは新規の貸出を取るために値引きを強いられる。預金金利の追随も早く、預貸ざやの拡大は期待の半分にとどまる。
法人貸出は名目で年1.5%、個人貸出は人口減の影響でほぼ横ばいになる。合併のコストシナジーは出るが、人件費とシステム費の上昇に消え、経費率は70%前後から下がらない。与信費用は景気の谷で膨らみ、年40億円を超える年が出る。
純利益は35億円ほどにとどまり、ROEは3%台。配当性向を高く保っても、配当額は計画より小さい。自己資本の厚みは保てるが、稼ぐ力は伸びず、市場は自己資本の5割にも届かない水準でしか評価しない。
- 法人・公共貸出:数量 1.4(事業性+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.5%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 219 億円・営業利益 37 億円。残高 1.45 兆円(名目)× 利ざや 1.51%
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 46 億円・営業利益 5 億円。残高 0.41 兆円(名目)× 利ざや 1.12%
- 有価証券・市場運用:数量 0.7(運用残高(兆円))× 価格 1.6%(運用利回り-調達(%))→ 売上 116 億円・営業利益 28 億円。残高 0.71 兆円(名目)× 運用ざや 1.62%
- 手数料・グループ会社:数量 0.9(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 69 億円・営業利益 14 億円。残高 0.94 兆円(名目)× 手数料率 0.74%
倍率:10年後のROE3.2%(純利益36億円÷自己資本1,131億円)。ROEはk9.0%以下で、ためた利益は額面を大きく下回る価値になる。PERの上限1÷k=11.1倍に対し、6.5倍に置いた。
確率:フィデアの競争力が地元で弱まり、利ざやが伸びない姿。地盤の人口減と首位行の再編は現実の動きなので、2割台半ばを置いた。
悲観 14% 地盤の縮小と与信費用で、稼ぐ力がほぼ消える十年 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,122 円201 億円
景気の悪化と地元産業の不振が重なり、与信費用が年40億円を超える年が続く。貸出は伸びず、量を保つために金利を下げる。債券の評価損が再び膨らみ、薄い自己資本を削る。
合併のシステム統合が遅れ、経費率は70%を超えたままになる。配当は大きく削られ、純利益は5億円に満たない。連結自己資本比率が規制の4%に近づくと、増資や他行との統合を迫られる。そのとき株主は、薄まる形の条件を受け入れることになる。
本業の稼ぐ力が消えるため、価値は事業の純利益ではなく、自己資本に掛け目をかけた水準まで落ちる。売れる資産が自己資本を上回っても、少数株主は清算を求められない。ROEは1%を割り、市場は自己資本の2割強でしか評価しない。
- 法人・公共貸出:数量 1.3(事業性+公共向け貸出残高(兆円))× 価格 1.4%(貸出利ざや(預金調達差引後・%))→ 売上 183 億円・営業利益 22 億円。残高 1.32 兆円(名目)× 利ざや 1.38%
- 個人貸出:数量 0.4(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 1.1%(貸出利ざや(%))→ 売上 40 億円・営業利益 2 億円。残高 0.38 兆円(名目)× 利ざや 1.05%
- 有価証券・市場運用:数量 0.6(運用残高(兆円))× 価格 1.5%(運用利回り-調達(%))→ 売上 92 億円・営業利益 17 億円。残高 0.61 兆円(名目)× 運用ざや 1.50%
- 手数料・グループ会社:数量 0.8(預かり資産+取扱高(兆円))× 価格 0.7%(実効手数料率(%))→ 売上 56 億円・営業利益 7 億円。残高 0.79 兆円(名目)× 手数料率 0.70%
倍率:10年後のROEは0.4%(純利益4億円÷自己資本1,004億円)で稼ぐ力から価値は置けない。2026年3月期末の自己資本857億円に0.235倍を掛け、201億円とした(地銀の悲観の目安0.45倍を、薄い資本と貸倒の厚みで下げた)。純利益÷kの約40億円より大きく、事業の稼ぐ力ではなく資産で値が付く姿として置いた。
確率:構造的な負けに景気の悪化が重なる姿。資本が薄く、目標を下げて達成してきた実績もあるため、1割台半ばを置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共貸出
荘内銀行・北都銀行の事業性貸出と、地方公共団体向けの貸出。
| 数量事業性+公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.3 | 1.3% | 161 | 21 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 1.6% | 246 | 54 |
取り方:2026年3月末の貸出1.99兆円(2行合算)のうち、事業性貸出0.80兆円と地方公共団体向け0.46兆円を合わせて1.26兆円(説明会資料)。預貸金利息差約201億円から、個人分を引いて利ざやを1.28%と置いた。4区分の営業利益の合計を、2026年3月期の連結経常利益54.6億円に合わせた(顧客部門の経常利益29.8億円、市場部門17.2億円、その他子会社約7.6億円)。数量は名目で、率は物価を掛けていない。
個人貸出
住宅ローン・カードローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.4 | 1.0% | 40 | 4 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 1.2% | 54 | 8 |
取り方:個人向け貸出を約0.40兆円とした(説明会資料の残高推移から。開示の内訳と一部推定を含む)。住宅ローン中心で競争が厳しく、利ざやは1.0%と事業性より薄い。経費配分後の利益率は10%。数量は名目、率は物価を掛けていない。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投資信託などの運用と、金融業向けの仕組貸出。預金のうち貸出に回らない分の運用先。
| 数量運用残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.7 | 1.5% | 102 | 17 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 1.7% | 135 | 38 |
取り方:有価証券4,011億円(2026年3月末)に、金融業向けの仕組貸出約0.28兆円を合わせて0.68兆円とした。運用ざやを1.5%と推定した(開示の内訳ではない)。市場部門の経常利益は17.2億円で、利益率は17%。金利が上がれば再投資の利回りは上がるが、預金金利も付いていくため、10年のざやの広がりは小さく置いた。数量は名目。
手数料・グループ会社
投資信託・保険の販売、ビジネスマッチング・M&A、フィデアエナジーなどグループ会社。
| 数量預かり資産+取扱高(兆円) | 価格実効手数料率(%) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 0.8% | 60 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 0.8% | 82 | 22 |
取り方:役務取引等利益は約51億円。投資信託・保険の預かり資産と、決済・住宅ローン関連などの取扱高を合わせて約0.75兆円、実効手数料率を0.80%と推定した(開示の内訳ではない)。グループ会社を含めた経常利益への寄与は12.4億円で、利益率は21%。預かり資産はお金の量なので名目で伸び、手数料率は低コスト商品の広がりで緩やかに下がる。数量は名目。
リスクと懸念
人口減と地盤の縮小
山形県の庄内地方も秋田県も、2050年にかけて人口が3〜4割減る見通しだ。貸出の量を保つには他行から奪うしかなく、価格の競争が避けられない。実質では貸出が縮む恐れがある。
県内の首位行との競争
秋田銀行は3行統合の協議に入り、山形銀行も県内の首位として構える。フィデアは2番手で貸出の金利を決めにくく、広がった利ざやの一部が値引きと預金金利に消える。
合併とシステム統合の失敗
合併費用とシステム統合の費用は、想定を超えることがある。統合の遅れや顧客の離反が出れば、削減できるはずの経費が残り、中期計画の純利益60億円も遠のく。
資本の薄さと与信費用
単純な自己資本比率は3.0%、規制上は9.85%。景気が悪化して与信費用が増えれば、配当や自社株買いの余力が削られる。開示債権比率は1.80%と平時では低めだ。
保有債券・外債の評価損
有価証券の評価損益は145億円の損にまで縮んだが、金利が上がる局面では再び評価損が出る。薄い自己資本を直接削るので、資本の余力を左右する。
預金の流出と預金金利の追随
預金は前期より187億円減った。短期金利が2%まで上がる間、預金金利の引き上げが想定より速ければ、利ざやの拡大は小さくなる。
今後の分かれ目
- 合併後の経費率(OHR)が、2028年度に65%を割り込む方向に動いたら
- 合併のコストシナジーが想定どおり実っているので、楽観側の確率を上げてよい。決算の経費の推移で確かめる。
- 2027年1月の合併のシステム統合が遅れたり、費用が増えたりしたら
- 経費の削減が先送りされるので、やや悲観側の確率を上げる。中期計画の純利益60億円の達成は遠のく。
- 貸出利回りと預金利回りの差が、計画より速く広がったら
- 利ざやの拡大が想定より早く出ているので、楽観側の確率を上げてよい。決算短信の利回りの推移で確かめる。
- 与信関係費用が年20億円を超える水準が続いたら
- 資本の薄さが現実の傷になる。悲観側へ重みを移し、中立の確率を下げる。
- 連結自己資本比率が10%を割り込む状況が続いたら
- 配当方針の維持が難しくなり、資本の補強か提携が視野に入る。悲観の確率を上げる。
- 秋田銀行など県内の首位行の統合が実現し、貸出金利が下がり始めたら
- 価格を決める力が弱いという見方が裏づけられる。やや悲観・悲観側の確率を上げ、利ざやの拡大幅を下方修正する。
見ておくもの
- 預貸金の利回りの差(預貸ざやの推移)
- 合併後の経費率(OHR)とシステム統合の進み具合
- 与信関係費用と有価証券の評価損益
- 連結自己資本比率と、累進配当・配当性向40%の実行
- 秋田銀行・山形銀行など県内の首位行の再編
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。楽観・やや楽観・中立は、10年後のROEとk9.0%(基本7.5%+quality+1.5%)から、ROEがkを下回るため上限を1÷k=11.1倍に置き、その86%・81%・72%に当たる9.5・9.0・8.0倍とした。やや悲観は6.5倍。悲観は事業の稼ぐ力がほぼ消えるため、2026年3月期末の自己資本857億円に0.235倍を掛けた201億円に置いた。今の値段は、2026年3月期の純利益41億円の10.9倍で、10年の筋書きとは独立に置いた。新リース会計基準の影響は店舗を借りる分だけで小さく、10年後の数字も今と同じ形にそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.11 倍・やや楽観 PER 9→11.11 倍・中立 PER 8→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.5%を足してk9.0%。銀行は預金が仕入れなので利払いの式は当てはめず、利ざやで扱う。合併の成否や薄い自己資本といった個別のリスクはkに足さず、筋書きと確率で表した。地銀の目安8.0〜9.0%の上端にしたのは、人口減が速い単独地盤であることと、資本が薄いことのため。