結論
東北銀行は、盛岡市を本拠に岩手県を地盤とする地方銀行だ。貸出は 7,100 億円、預金は 9,200 億円で、2026 年 3 月期の純利益は 17 億円。筆者は、10 年の本源価値は今の時価総額を下回ると見る。
理由は二つある。一つは稼ぐ力に対して自己資本が薄いことだ。単純な自己資本比率は 3.3% で、10 年後も ROE は 5% 前後と、資本コスト 9.0% に届かない。もう一つは、2012 年の震災特例で入った公的資金の優先株 100 億円が、普通株主より先に請求することだ。2037 年に普通株へ一斉に替わる仕組みで、会社の価値が 177 億円を割ると、普通株の持ち分は半分以下に薄まる。
追い風は金利だ。短期金利が 2% に上がれば、純利益は 17 億円から 23 億円まで伸びる。それでも優先株を差し引くと、普通株主に残るのは会社全体の価値のおよそ半分にすぎない。
筆者なら、優先株を現金で買い戻す道筋が見えるまで待つ。北東北の統合で岩手銀行が大きくなる点も、見ておきたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見た目の割安より、順番の悪さが気になる株だ。
時価総額は 144 億円で、自己資本 335 億円に対して 0.43 倍と安く見える。しかし 335 億円のうち 100 億円は優先株で、普通株の純資産は 235 億円しかない。純利益 17 億円のうち 2.3 億円は優先配当に先に回る。
事業の儲け口は広がらない。岩手県の人口は 35% 減り、ROE は 10 年後も資本コストに届かない。利益が増えても、先に出ていくのは優先株だ。
筆者なら、優先株の整理が見えるまで買わない。例えば、純利益が 20 億円を超えて安定し、現金で買い戻す計画が示されれば、見方は変わる。逆に、岩手銀行を含む統合の渦に巻き込まれ、不利な比率を迫られる道には注意したい。安全域は今の値段に十分にはない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、岩手県内の貸出と、預金で集めたお金の運用だ。
連結の貸出は 7,124 億円、預金は譲渡性預金を含めて 9,170 億円(2026 年 3 月末)。預金の 64% は個人で、法人が 35%、自治体の預金は 1% に満たない。余った資金は有価証券 2,109 億円で運用する。預り資産(投信・保険など)は 1,029 億円で、前の期から 144 億円増えた。
子会社でリース業も営むが、売上の 91% は銀行業だ。2026 年 3 月期は、経常利益が 25 億円で 28% 増え、純利益は 17 億円と 58% 増えた。与信費用が減ったのが主因で、利ざやの改善はこれからだ。
中期経営計画は 2028 年 3 月期に、純利益 20 億円、預金 1 兆円、貸出 7,500 億円、自己資本比率 8.5% 以上を掲げる。2025 年度の実績は純利益 16 億円、預金 9,172 億円、貸出 7,160 億円、国内基準の自己資本比率 8.56% で、預金と貸出はいずれも計画の途中にあり、利益の伸びは金利次第という構図だ。
優良さと弱いところ
良さは本業の安定にあり、弱さは資本の構造にある。
良い点は、貸出が前の期より 176 億円増え、預り資産も伸びていることだ。国内基準の自己資本比率は 8.6% と最低基準の 4% を倍以上上回る。預金の個人比率が高く、調達は安定している。
弱い点は三つある。一つ目に、単純な自己資本比率は 3.3% と薄く、金利が上がって債券の評価損が出れば効きやすい。二つ目に、岩手県の人口は 2050 年に 35% 減る。三つ目に、公的資金の優先株 100 億円が普通株より先に請求する。純資産 335 億円のうち、普通株に帰属するのは 235 億円ほどだ。
quality は、循環 +0.5%、値決め力 +0.25%(岩手銀行が首位)、借金 +0.25%(単純比率 3.3%)、寿命 +0.5%(人口 35% 減)の合計 +1.5%、k は 9.0% とした。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
地方銀行は、2024 年の政策金利の解除で「金利のある世界」に入った。
短期金利が 2% に上がる間、変動金利の貸出はほぼ全部が上がる。預金金利は預金ベータ(4 割ほど)の分だけ遅れて追うので、利ざやは広がる。10 年後に短期 2%・長期 3% で落ち着けば、貸出の利ざやは今より 0.4% ほど高い水準で安定する。債券は金利が上がると評価損が出るが、満期まで持てば元本は戻る。
貸出の需要は、人口の減る地方では名目で物価並みにしか伸びない。岩手県は 2050 年に人口が 35% 減る。盛岡市周辺と沿岸の復興需要の後に残る貸出が、地盤の細りを補えるかどうかが分かれ目になる。
競争の構図は変わりつつある。2026 年 10 月に、プロクレア HD(青森みちのく銀行)、岩手銀行、秋田銀行の北東北 3 行が経営統合の協議に入った。東北銀行は 2021 年にフィデア HD との統合を協議したが、成立しなかった。県内の首位行が大きくなると、システムの費用と人材の面で単独の銀行は厳しくなる。分かれ目は、利ざやの回復が経費の増加を上回り続けるかにある。
資本政策と M&A
資本の使い方は、普通株の配当を 3 割弱に抑え、優先株の配当を定款どおり払う形だ。
普通株の配当性向は 29%。優先株の配当は年に約 2.3 億円で、普通株より先に出る。自社株買いは行っていない。
優先株は 2012 年に金融機能強化法の震災特例で入った 100 億円で、2022 年 9 月 29 日から会社の判断で現金による取得ができる。取得しないまま 2037 年 9 月 29 日になると、一斉に普通株へ替わる。最大で 1,236 万株、今の普通株 951 万株の 130% にあたる。
筆者は、自己資本が薄い中で 100 億円の現金を出して買い戻せるかを重く見る。純利益 20 億円の計画を何年も重ねて、初めて道が開ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東北銀行は、岩手県で長く築いた個人預金の基盤を持つ。預金の 64% が個人で、調達は安定している。金利が上がれば、貸出の利ざやは広がり、純利益は 17 億円から 25 億円を超える水準まで伸びる余地がある。預り資産は 1,029 億円まで増えており、新 NISA で手数料の柱が育つ。国内基準の自己資本比率は 8.6% あり、貸出を増やす余力がある。優先株の 100 億円も、利益が積み上がれば現金で買い戻せる。買い戻しが済めば、普通株主は会社全体の利益をそのまま受け取る。時価総額は自己資本の 0.43 倍と安く、再編の観測が出れば、見直し買いも起きうる。岩手県の中小企業との取引の厚さは、短期間では他行に奪われにくい。時間は味方になりうる。金利のある世界では、預金を厚く持つ銀行ほど利ざやの改善を受け取りやすい。優先株の整理が済めば、1 株あたりの利益は大きく跳ねる。地方銀行の再編が進めば、東北銀行にも提携や統合の選択肢が生まれ、優先株を含めた資本の問題が一度に解ける道もある。
慎重な見方
岩手県の人口は 2050 年に 35% 減り、地盤は構造的に細る。純資産に対する純利益は 5% 前後と、資本コスト 9.0% に届かない。単純な自己資本比率が 3.3% と薄く、債券の評価損が出れば貸出を絞らざるをえない。2021 年のフィデア HD との統合は成立せず、2026 年には県内最大の岩手銀行が秋田銀行などと統合協議に入った。単独の銀行は、システムの費用と人材の面で劣勢になる。そして優先株が最大の重しだ。100 億円は普通株主より先に請求され、会社の価値が 177 億円を割れば、普通株の取り分は 43% まで薄まる。優先配当も毎年約 2.3 億円出ていく。利益が増えても、普通株主の取り分は優先株に削られたままだ。再編の波に乗れないまま、時間がたつほど資本の薄さが重くなる。金利が上がる局面は、同時に債券の含み損が膨らむ局面でもある。自己資本の薄い銀行ほど、評価損が貸出の余力を直接削る。優先株の転換は、その苦しい時期に重なりやすい。
どちらに重みを置いたか
資本の構造と人口減が、利ざやの回復を上回ると見る。中立の 10 年後の会社全体の価値は 193 億円だが、優先株を差し引いた普通株の取り分は 0.48 で 93 億円ほどになる。今の時価総額 144 億円を下回る。悲観の確率は、2012 年の公的資金注入という実績を踏まえて 10% に置き、やや悲観を 25% と厚めにした。楽観は、優先株の現金での整理が進む道に限り 8% とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,154 円109 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 407 円39 億円)。 今の値に割り戻すと 752 円71 億円、今との差 −48.8%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,243 円212 億円 | 680 円64 億円 | +99.0% | +7.1% | 234 円22 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,740 円165 億円 | 554 円52 億円 | +56.2% | +4.6% | 390 円37 億円 |
| 中立 | 40% | 1,324 円125 億円 | 436 円41 億円 | +19.8% | +1.8% | 704 円67 億円 |
| やや悲観 | 25% | 507 円48 億円 | 309 円29 億円 | −44.4% | −5.7% | 204 円19 億円 |
| 悲観 | 10% | 227 円22 億円 | 68 円6 億円 | −79.9% | −14.8% | 30 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,154 円109 億円 | 407 円39 億円 | +6.3% | +0.6% | 1,562 円148 億円 |
今の株価時価総額 1,469 円139 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:岩手の貸出が伸び、金利の追い風で ROE が 6% を超える 利益 29 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,243 円212 億円
岩手県内で貸出を取り戻し、中計の貸出 7,500 億円、預金 1 兆円を早めに超える。短期金利 2% の定着で事業性貸出の利ざやが広がり、預り資産の残高も新 NISA で積み上がる。経費は物価と賃金で増えるが、システムの共同化で膨らみ方を抑える。与信費用は景気の山と谷を均した水準に収まる。純利益は 29 億円。公的資金の優先株は、普通株の価格が転換価格の下限を大きく上回るため、2037 年を待たず現金で買い戻される。希薄化は起きず、普通株主には会社全体の価値から優先株の 100 億円を引いた分が残る。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.7(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 110 億円・営業利益 24 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 32 億円・営業利益 15 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 327 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:統合を進める岩手銀行との差が開かず、貸出が計画の 7,500 億円を超えて伸びる道。再編の波と人口減で例外に近いので 8% に置いた。
やや楽観 17% やや楽観:利ざやの回復が計画どおり進み、純利益が 26 億円へ 利益 26 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,740 円165 億円
中計の目標を達成し、以後も貸出が名目で年 3% 台のペースで伸びる。岩手県の人口は減るが、盛岡市と沿岸の復興需要の先に残る事業性貸出が支える。有価証券は評価損が満期で縮み、運用の利回りは緩やかに上がる。預り資産の手数料は新 NISA の定着で 4 割ほど増える。純利益は 26 億円で、配当は性向 3 割台を保つ。優先株は一部が現金で買い戻され、転換による希薄化の心配は和らぐ。純資産に対する利益はまだ k に届かないが、差は縮まる。預金の個人比率が高いため、金利が上がっても調達は崩れにくい。金利の上昇が貸出の利ざやを押し上げ、経費の増加を上回る状態が続く。岩手県内の取引先の倒産は少なく、与信費用は平常の水準に収まる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.7(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.02(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 99 億円・営業利益 21 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.3(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 35 億円・営業利益 3 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 30 億円・営業利益 14 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.2(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 14 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 289 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の純利益 20 億円を達成し、その後も緩やかに伸びる標準より良い道。17% を置いた。
中立 40% 中立:利ざやは広がるが、人口減と優先株の 100 億円が重い十年 利益 24 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,324 円125 億円
短期金利 2%・長期 3% が定着し、貸出の利ざやは今より 0.4% ほど広い水準で落ち着く。岩手県の人口は 2050 年に 35% 減る見通しで、貸出は名目で年 2.3% 前後の伸びにとどまる。事業性貸出は 6,300 億円、個人向けは 2,500 億円まで増える。預金金利は遅れて追い、広がった利ざやの一部は預金集めの競争で消える。経費は物価と賃金で増え、岩手銀行が加わる北東北の統合でシステムの競争力の差も開く。与信費用は平常に戻る。純利益は 23.5 億円。優先株の 100 億円は返せずに残り、2037 年の転換が視野に入る。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.6(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 91 億円・営業利益 19 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 29 億円・営業利益 13 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。n
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.2% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 261 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利ざやの回復と岩手県の人口減が相殺する地銀の標準的な筋書き。最も重く 40% を置いた。
やや悲観 25% やや悲観:預金競争と評価損で利益が伸びず、優先株が重くのしかかる 利益 15 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 507 円48 億円
北東北の大型統合で県内の競争が厳しくなり、貸出の利ざやが広がらないまま預金金利だけが上がる。債券の評価損が再び膨らみ、自己資本比率の低下で貸出を絞る。貸出は名目で年 1.3% しか伸びない。与信費用は人口減の地域で高止まりする。純利益は 15 億円で、優先配当 2.3 億円が先に出ていく。会社全体の価値が 177 億円を下回ると優先株は下限の価格で普通株に転換され、既存株主の取り分は 0.43 まで下がる。県内では、統合で大きくなった競合が事業性貸出を取りにくる。預金を集める費用も上がり、利ざやの改善は経費の増加に食われる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.6(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 73 億円・営業利益 12 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 23 億円・営業利益 9 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 10 億円・営業利益 1 億円。n
倍率:事業の ROE は 3.5%(純利益 15.1 億円 ÷ 自己資本 427 億円)。k 9.00%、g 3%、残る割合 1/2 で式の PER は 8.7 倍(ROE が k 以下なので上限は 1÷k = 11.1 倍)。式の 85% の 7.4 倍に置いた。
確率:東北では再編と預金獲得の競争が進み、小さな銀行は利益が伸びにくい。25% を置いた。
悲観 10% 悲観:人口減の加速と信用コストの急増で、優先株が普通株の過半を奪う 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 227 円22 億円
構造的に負ける筋書き。復興需要が剥げ、岩手県の人口減が加速して貸出が名目でも縮む。取引先の倒産で与信費用が急増し、利益はほとんど出ない。債券の評価損が自己資本を削り、国内基準の 4% の水準が近づく。優先株は返済できず、2037 年に下限の価格で転換されて普通株が 130% 増える。既存の普通株主に残る割合は 0.435。再編は救済に近い形になり、少数株主に不利な比率になりうる。自己資本比率が最低基準に近づくと、配当も止まりうる。利益の水準は純資産の 1 割に届かず、値段は床の資産で決まる。貸出の縮小と利ざやの低下が重なり、純利益は 1 億円前後にとどまる。
- 法人・公共向け貸出:数量 0.5(事業性・公共向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(預金調達差引後・率))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。n
- 個人向け貸出:数量 0.2(個人向け貸出残高(兆円))× 価格 0.01(貸出利ざや(率))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。n
- 有価証券・市場運用:数量 0.2(有価証券残高(兆円))× 価格 0.01(運用利回り-調達(率、売買損益を含む))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。n
- 手数料・預り資産:数量 0.1(預り資産残高(兆円))× 価格 0.01(手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。n
倍率:悲観の床は、会社全体の今の自己資本(335 億円。優先株 100 億円を含む)に 0.15 を掛けた 50 億円。地銀の悲観の目安(0.45)より低いのは、単純な自己資本比率が 3.3% と薄く、優先株が先に請求する構造だから。純利益 ÷ k は 1 億円で、これを上回る床にはしない。会社全体の価値に、優先株の転換後の既存株主の取り分を掛ける。
確率:震災後の復興需要が終わり、人口減が早まる構造的な負けを 10% に置いた。2012 年の公的資金注入が実際にあった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人・公共向け貸出
岩手県内の中小企業・事業性融資と自治体向けの貸出。
| 数量事業性・公共向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(預金調達差引後・率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 0.01 | 52 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.6 | 0.01 | 91 | 19 |
取り方:連結の貸出は 7,124 億円(2026 年 3 月末)。個人ローンの比率は開示で確かめられず、3 割と置いて残りの約 7 割 4,990 億円を事業性・公共向けとした。利ざやは 1.05% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.2 億円に合わせた。
個人向け貸出
住宅ローン・個人ローンなど個人向けの貸出。
| 数量個人向け貸出残高(兆円) | 価格貸出利ざや(率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 0.01 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 32 | 3 |
取り方:貸出の 3 割にあたる約 2,130 億円を個人向けと置いた。住宅ローンは競争が厳しく、利ざやは 0.95% と事業性より薄い。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.2 億円に合わせた。
有価証券・市場運用
国債・地方債・外債・投信・株式などの運用。
| 数量有価証券残高(兆円) | 価格運用利回り-調達(率、売買損益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 0.01 | 25 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 0.01 | 29 | 13 |
取り方:有価証券は 2,109 億円(2026 年 3 月末)。運用利回りから調達コストを引き、売却損益を含めて 1.2% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.2 億円に合わせた。
手数料・預り資産
投信・保険の販売、為替・ローン関連の手数料。
| 数量預り資産残高(兆円) | 価格手数料率(為替・ローン手数料を含む総額÷預り資産) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.1 | 0.01 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.1 | 0.01 | 13 | 2 |
取り方:預り資産は 1,029 億円(公共債・投信・保険、2026 年 3 月末)。為替・ローン手数料を含めた総額を預り資産で割った率を 0.95% と置いた。 【推定】開示の内訳ではない。数量は名目の残高、率は物価を掛けていない利ざや・手数料率で置く。4 つのセグメントの利益の合計を、2026/03 期の連結経常利益 25.2 億円に合わせた。
リスクと懸念
優先株の転換による希薄化
公的資金の優先株 100 億円は、2037 年 9 月に最大 1,236 万株の普通株へ替わる。会社の価値が 177 億円を割ると、普通株の取り分は 43% に下がる。
債券の評価損
金利が想定より速く上がると、有価証券 2,109 億円に評価損が出る。単純な自己資本比率は 3.3% と薄く、貸出を絞る圧力になる。
人口減と地盤の細り
岩手県の人口は 2050 年に 35% 減る。貸出は名目でも伸びにくく、物価と賃金で膨らむ経費を吸収できなくなるおそれがある。
北東北の大型統合
岩手銀行が秋田銀行などと統合すると、県内の競争が厳しくなる。貸出の金利、人材、システムの費用で単独の銀行は劣勢になる。
与信費用の悪化
取引先の倒産が増えると、与信費用が急増して利益が消える。震災後の復興需要が終わった後の貸出先の質に注意が要る。
今後の分かれ目
- 優先株の一部を現金で買い戻す発表が出る
- 希薄化の心配が薄れ、中立の普通株の取り分は 0.5 を超える。楽観側の重みが 8% から 15% 前後へ上がる。
- 短期金利が 2% に届かず 1% 台前半で止まる
- 貸出の利ざやが広がらず、純利益は 18 億円前後にとどまる。優先株の整理は遠のく。
- 岩手銀行との経営統合の協議が表に出る
- 統合の比率次第で、少数株主の取り分が変わる。優先株の扱いも条件に入り、見方は大きく動く。
- 債券の評価損が自己資本の 2 割を超える
- 貸出を絞って利益が落ち、悲観の確率が 10% から 20% 近くへ上がる。
- 純利益が 20 億円を超えて 2 期続く
- 中計が達成され、配当の増額と優先株の整理が現実味を帯びる。
見ておくもの
- 優先株の買い戻しの発表と時期
- 単純な自己資本比率と評価差額金
- 貸出金の残高と利ざや
- 与信費用の水準
- 岩手銀行・北東北の統合の動き
倍率と資本コストの決め方
本源価値は、貸出・有価証券・手数料の利益から会社全体の ROE を式で組み、PER は ROE と k から決めた。今の PBR 0.43 倍や同業の PER は市場の見方であり、比較に使うだけで置き場にはしていない。優先株 100 億円が普通株に先立つ点は、既存株主の取り分の係数で別に表し、倍率に混ぜていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.6→11.11 倍・やや楽観 PER 8.9→11.11 倍・中立 PER 8.2→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。優先株の転換による希薄化は k に足さず、既存株主の取り分の係数で表した。