結論
ゴールドマン・サックスは、世界の M&A 助言・株式と債券の引受・市場業務で首位級の投資銀行を中核に、運用資産(AUS)4.1 兆ドルの資産運用・富裕層部門(AWM)を持つ金融である。2026 年 7〜9 月期は純収益 187 億ドル(前年比 23% 増)、純利益 53 億ドル、ROE 18.7%(9 か月で 20.7%)と記録的で、株式トレーディングは前年比 72% 増の 64 億ドルに達した。2025 年の純利益は約 172 億ドル(ROE 13.7%)。ゴールドマンは 2020 年代に消費者金融(マーカス)から撤退し、アップルカードも JPモルガンへ移管が決まり(約 2 年後に完了)、資本を投資銀行・市場業務とオルタナティブ運用へ集中している。
バリュー投資の観点では、ゴールドマンは事業が優れ、資本の使い方も改善した一方、利益の約 7 割が市場の山谷に連動する点が最大の論点である。2026 年の ROE 20% は市場取引と M&A が同時に強い年の値で、これが続く前提には置けない。景気の平均に近づけた中立の ROE は 14.5% 前後で、資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%。投資銀行と市場業務の山谷 +0.75)・成長 4% から、利益ベースの正当化 PER は約 13.8 倍。振れの大きさからその 8 割の約 11.0 倍が 10 年後の中立で、時価総額は約 2,727 億ドル、今の 2,609 億ドルを少し上回る程度。10 年の還元約 1,470 億ドルを足して割り戻した総合の価値は 2,065 億ドルで、今の時価総額を約 2 割下回る。上振れは AWM のオルタナティブ運用の拡大、下振れは市場業務の正常化が決める。結論は、優良な事業を、やや高い値段で買う形である(やや割高)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。M&A の助言・引受・トレーディングは、危機でも需要が消えず、2008 年に潰れかけながら地位を保ったように、10 年後も存在し、おそらく今と同じ位置にいる。堀はブランドと顧客の信頼、規模と人材にあり、顧客が簡単には乗り換えられない関係の厚さがある。ただし堀は決済・カード・取引所のように制度に守られたものではなく、人と評判に依存するため、モルガン・スタンレーほど広がりは確実でない。
次にオーナー利益。株主に返せる利益は純利益から事業の成長に要る資本を引いた分で、GS は還元がほぼ純利益の全額に近く、資本をぎりぎりまで使う。株式報酬の増発も大きく、見かけの還元の 3 割近くは株数の維持に消える。会計上の純利益ほど、手元に残る利益は大きくない。
安全域では、10 年後の中立の PER は ROE 14.5%・資本コスト 8.75%・成長 4% の式の上限 13.8 倍の 8 割で約 11 倍。確率で重みづけた 10 年後の価値は今の時価総額を約 2 割下回り、期待の年率 +4.6% は資本コスト 8.75% に届かず、安全域は無い。2026 年の ROE 20% は山に近い値で、この水準が続く前提は入れていない。事業の確信度は中、値段はやや割高と見る。予測できない部分(利益の山谷)が大きい分、確信度を下げて見る。
何で稼ぐ会社か
ゴールドマン・サックスは 3 つの部門から成る。グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM)は収益の約 7 割を占め、投資銀行業務(M&A の助言、株式・債券の引受)と市場業務(株式・FICC=債券・為替・商品)から成る。2026 年 7〜9 月期の GBM の純収益は 135 億ドルで、株式 64 億ドル(うちヘッジファンド向けの融資・決済であるプライム・ファイナンスが 96% 増)、FICC 35 億ドル、助言 17 億ドル、債券引受 9 億ドル、株式引受 7 億ドル。株式部門は世界首位級で、顧客はヘッジファンド・年金・保険・事業会社。
資産運用・富裕層(AWM)の純収益は同期 51 億ドルで、運用手数料が 36 億ドル。AUS は 4.097 兆ドル(四半期の純流入 83 億ドル)、そのうちオルタナティブ(プライベート・エクイティ、クレジット、不動産、インフラ)の調達は 2026 年に年 1,250 億ドルを超える見通しで、2030 年にオルタナ AUS 7,500 億ドルを目標にしている。AWM は 3〜5 年で ROE 17〜19% を掲げる。その中に自己資金の投資(投資先の評価益)が入り、年によって大きく振れる。
プラットフォーム・ソリューションズ(収益 1.7 億ドル)は、かつてのアップルカードとマーカスの残りで、アップルカードは JPモルガンへ売却が決まり、2028 年ごろまでに消える。残る企業向けの決済・取引銀行(トランザクション・バンキング)は、手数料型の安定収益として育てる位置づけ。収益の構成は GBM 約 70%、AWM 約 27%、その他 3%。
優良さと弱いところ
優良さは 4 つの柱で見る。第 1 は顧客との関係で、世界の大型 M&A・IPO の主幹事に名を連ね、経営者の信頼が顧客を呼ぶ。第 2 は市場業務の規模で、プライム・ブローカリングと株式トレーディングで世界首位級、顧客の資金調達(引受)と売買が互いを呼ぶ循環になる。第 3 は人材と報酬の仕組みで、トップの人材を集める力がブランドの堀になる。第 4 は資本配分の改善で、消費者金融に数十億ドルを投じて撤退した失敗(マーカス)を認め、利益率の低い事業を切り、AWM のオルタナティブと投資銀行へ集中し、ROE を 2025 年の 15% から 2026 年の 20% へ引き上げた。
資本効率は、2025 年の ROE 15%・ROTE 16%、2026 年 1〜9 月は ROE 20.7%・ROTE 22.4%。会社の中期の水準(ROE 14〜16%)を大きく超えている。弱い所は 3 つ。第 1 に利益の振れが大きいこと(過去 10 年の ROE は 5〜20%)。第 2 に預金などの安定した資金源が JPモルガンやモルガン・スタンレーほど厚くなく、自己資本比率(レバレッジ)は高いこと。第 3 に CET1 が 12.4% まで下がり、規制の最低との余裕が 1 ポイント前後で、還元を続ける余力は限られること。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
投資銀行・市場業務は、JPモルガン、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの 3 社に収益が集中している。バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、欧州のドイツ銀行・バークレイズ・UBS が追う。世界の投資銀行手数料は年 1,000〜1,500 億ドル、大手の市場業務の収益は年 1,700 億ドル前後(推定)。2026 年は AI・データセンター向けの起債と M&A の回復、規制緩和(資本規制の見直し)が追い風で、株式トレーディングはヘッジファンドの高い預かり残高を背景に記録的になった。ただし 2026 年 7〜9 月期の投資銀行のバックログは前期より減り、とくに助言の積み上がりが細った。
ウェルス・運用では、ゴールドマンの AUS 4.1 兆ドルはブラックロック(10 兆ドル超)、バンガード、モルガン・スタンレー(顧客資産約 10.5 兆ドル)より小さいが、オルタナティブでは世界の大手(ブラックストーン、アポロ、KKR、カーライル)と並ぶ。個人投資家へのプライベート資産の開放(401(k) や評価資産型のファンド)が数量の追い風だが、手数料率と流動性の問題で競争が激しい。金利が 3.5〜4% の世界では、プライベート・クレジットの需要が伸びる一方、信用の悪化が表に出やすい。
業界のノートは、投資銀行・ウェルスの塊で ROE 13〜16% を見る。景気循環が最も大きい塊で、悲観は M&A・引受が半減し、トレーディングに評価損が出る展開を下敷きにする。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いで、2025 年は配当 45 億ドルと自社株買い 124 億ドルで純利益のほぼ全額(約 98%)を返した。2026 年 7〜9 月期は自社株買い 30 億ドル、配当 14.9 億ドル、4〜6 月に配当を 25% 増やし、次の四半期も同額の配当を宣言した。ただし CET1 は 12.4%(前期 12.9%)まで下がり、規制の最低との余裕は約 1 ポイント。ここまで資本を絞ると、今後の還元は利益の成長が決める。株式報酬の増発があり、2025 年の株数の減少は 4.7%。正味の還元は、配当と、株数の減少分の合計で置く。
M&A は、消費者向け事業の失敗(マーカス・グリーンスカイの売却・アップルカードの移管)を経て、大型の買収には慎重。オルタナティブ運用では、2025 年にインダストリー・ベンチャーズ(セカンダリー運用)やイノベーター(ETF)の買収、T. ロウ・プライスとの協業など中規模の買収・提携を重ねており、今後も運用・クレジット領域の中規模の買収があり得る。買われる側になる可能性はほぼない。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 120.0 億ドル(2026 年 1〜9 月、1〜6 月は 10-Q の実額 90.0 億ドル・7〜9 月は決算資料の 30.0 億ドル)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ゴールドマンは、投資銀行・市場業務で世界首位級の座を、危機を経るたびに固めてきた。2026 年 7〜9 月期の株式トレーディングは前年比 72% 増の 64 億ドルで、プライム・ファイナンスは 96% 増。ヘッジファンドの運用残高が増え続ける限り、この収益は元に戻らず新しい水準になる。投資銀行手数料は 21% 増の 32 億ドルで、AI・データセンターの資金調達、M&A・IPO の回復はまだ序盤にある。
AWM は、オルタナティブ運用の資金調達が年 1,250 億ドルを超え、2030 年のオルタナ AUS 7,500 億ドルの目標が前倒しで進む。手数料型の収益は安定し、AWM の ROE は 17〜19% へ向かう。個人投資家へのプライベート資産の開放はまだ始まったばかりで、数量の追い風が 10 年続く。アップルカードの移管で資本を食う事業が消え、資本を投資銀行と運用へ回せる。
ROE は 2025 年の 15% から 2026 年に 20% へ上がった。AI で業務の費用(人件費・バックオフィス)が下がり、収益が横ばいでも利益率が改善する。資本規制が緩めば CET1 の余剰が自社株買いに回り、10 年を通じた ROE は 16% 台を保てる。2008 年に倒れかけた会社が、いまは世界の資本市場のインフラになった。
慎重な見方
2026 年の利益は山である。ROE 20%・株式トレーディング 72% 増は、市場の混乱と高い売買と、ヘッジファンドの高いレバレッジが重なった結果で、元に戻る性質のもの。2007 年から 2008 年にかけて株価は 68% 下がり、2022 年も 27% 下がった。過去 12 年の ROE は 5〜20% で、中央値は 10% 未満である。ならした利益は 2026 年より大幅に低く、2025 年の水準(純利益 172 億ドル)でも山に近い。
投資銀行のバックログは 2026 年 7〜9 月期に前期より減り、とくに助言が細った。M&A の件数が伸びないなら、手数料は元に戻る。AWM の自己資金の投資の評価益は年による振れが大きく、プライベート資産の評価の透明性とクレジットの質への疑問が増している。プライベート・クレジットの貸し手が増え、競合(ブラックストーン、アポロ、KKR)の規模も大きい。
そして値段。今の PBR 2.1 倍は、ROE 14〜15% が長く続くことを前提にしている。資本コスト 8.75% では安全域がない。自己資本比率の高さ(レバレッジ)と、預金のような安定した資金源の薄さは、危機で弱さになる。CET1 の余裕は約 1 ポイントしかなく、還元は市場が止まれば止まる。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が強く、確率は楽観・やや楽観の合計 35%、やや悲観・悲観の合計 34%、中立 31% と釣り合わせた。利益の山谷は quality の cycle で資本コストに織り込んだので、確率で重ねて悲観に寄せていない。2026 年の ROE 20% は中立に入れず、14.5% 前後へならした。資本コスト 8.75% では中立の ROE 14.5% に利益ベースの式で PER 11 倍前後が付き、価値は今の時価総額を約 2 割下回る。悲観は構造的な負け(12%)で、式の値が清算に近いので、今の自己資本の半分(PBR 0.5 倍)の床で測った。結論は「優良だが、値段はやや割高」である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 932.21 ドル2,760 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 407.53 ドル1,207 億ドル)。 今の値に割り戻すと 670.85 ドル1,986 億ドル、今との差 −24.7%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 11% | 1,748 ドル5,175 億ドル | 479.57 ドル1,420 億ドル | +149.9% | +9.6% | 245.01 ドル725 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 1,271 ドル3,764 億ドル | 466.06 ドル1,380 億ドル | +94.9% | +6.9% | 416.91 ドル1,234 億ドル |
| 中立 | 31% | 920.94 ドル2,727 億ドル | 455.93 ドル1,350 億ドル | +54.5% | +4.4% | 426.83 ドル1,264 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 564.00 ドル1,670 億ドル | 351.23 ドル1,040 億ドル | +2.7% | +0.3% | 201.35 ドル596 億ドル |
| 悲観 | 12% | 211.04 ドル625 億ドル | 202.63 ドル600 億ドル | −53.6% | −7.4% | 49.64 ドル147 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 932.21 ドル2,760 億ドル | 407.53 ドル1,207 億ドル | +50.3% | +4.2% | 1,340 ドル3,967 億ドル |
今の株価時価総額 891.30 ドル2,639 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 11% 楽観:運用とプライベート資産が柱になり、ROE が 16% を保つ 利益 404 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 1,748 ドル5,175 億ドル
2035 年末、AUS は 12.5 兆ドルへ増え(年 12%)、オルタナ AUS は 2 兆ドルに迫り、AWM の収益は 513 億ドル、利益率 34%。個人投資家へのプライベート資産の開放が数量を押し上げ、手数料型の収益が景気の山谷を吸収する。GBM は世界のプール 6,000 億ドルの 15%(900 億ドル)、利益率 38%。純利益は約 412 億ドル、ROE は 16.5%、10 年の正味の還元は 1,420 億ドル。成長は名目 4% に落ち着いた後でも、式の上限 14.6 倍の 8.8 割で PER 12.8 倍が付く。 AI で業務の費用が下がり、競合の追随は規制と人材のコストで難しく、堀はむしろ広がる。
- グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM):数量 6,000(世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 15.0%(ゴールドマン・サックスのシェア)→ 売上 900 億ドル・営業利益 342 億ドル。プールとシェアが上昇
- 資産運用・富裕層(AWM):数量 125,000(運用資産残高 AUS(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む))→ 売上 512 億ドル・営業利益 174 億ドル。AUS が約 3.2 倍・オルタナで率が上がる
- プラットフォーム・ソリューションズ:数量 11,000(取引銀行・預金の残高(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率)→ 売上 45 億ドル・営業利益 12 億ドル。取引銀行が成長
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 17.2%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 2355 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 13.0%、g 4.0%(資産運用と市場業務の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 14.6 倍で、これが検査の上限になる。投資銀行・市場業務で首位級の優良な金融。利益の山谷が大きい。 上限の 8.8 割の 12.8 倍に置いた。
確率:オルタナの目標の達成、資本規制の緩和、市場業務のシェア維持がそろう。10 年を通じた実現は 1 割強。
やや楽観 24% やや楽観:運用は名目並みに伸び、ROE は 15% を保つ 利益 316 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,271 ドル3,764 億ドル
2035 年末、AUS は 10.5 兆ドル(年 10.3%)、オルタナの比重が上がって手数料率は 0.40% を保ち、AWM の収益は 420 億ドル、利益率 32%。GBM は世界のプール 5,400 億ドルの 14%(756 億ドル)、利益率 36%。景気後退を 1〜2 回挟んでも、運用の手数料型収益の厚みで ROE は 14〜16% を保つ。AI で費用は下がるが、競合も同じ投資をするため利益率の改善は限られる。純利益は約 324 億ドル、10 年の正味の還元は 1,380 億ドル。PER は式の上限 14.2 倍の 8.4 割で 11.9 倍。
- グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM):数量 5,400(世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 14.0%(ゴールドマン・サックスのシェア)→ 売上 756 億ドル・営業利益 272 億ドル。プール年 6%
- 資産運用・富裕層(AWM):数量 105,000(運用資産残高 AUS(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む))→ 売上 420 億ドル・営業利益 134 億ドル。AUS 年 10%
- プラットフォーム・ソリューションズ:数量 10,000(取引銀行・預金の残高(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率)→ 売上 40 億ドル・営業利益 10 億ドル。取引銀行が成長
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 15.8%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 2005 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 12.3%、g 4.0%(資産運用と市場業務の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 14.2 倍で、これが検査の上限になる。投資銀行・市場業務で首位級の優良な金融。利益の山谷が大きい。 上限の 8.4 割の 11.9 倍に置いた。
確率:GBM の地位が保たれ、AWM が目標に近づく。規制も大きく変わらない。起こりやすい。
中立 31% 中立:運用は年 7%、市場業務はシェア横ばい、ROE は 14% 前後 利益 247 億ドル · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 920.94 ドル2,727 億ドル
2035 年末、AUS は 7.8 兆ドル(年 7%)、手数料率は 0.39% でオルタナの比重が上がる分と、パッシブ化・競争の低下が相殺し、AWM の収益は 304 億ドル、利益率 31%。GBM は世界のプール 4,900 億ドルの 13.5%(662 億ドル)、利益率 34%で、投資銀行・株式・FICC の 3 本柱を保つが、シェアは 2026 年の山より下がる。景気後退を 2 回挟み、そのたびに利益は 3〜4 割落ちるが、ならすと年 4% 増。純利益は約 255 億ドル、ROE は 13.8%、10 年の正味の還元は 1,350 億ドル。PER は成熟した優良金融として、式の上限 13.8 倍の 8 割の 11.0 倍。
- グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM):数量 4,900(世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 13.5%(ゴールドマン・サックスのシェア)→ 売上 662 億ドル・営業利益 225 億ドル。シェア横ばい(2026 年の山より下)
- 資産運用・富裕層(AWM):数量 78,000(運用資産残高 AUS(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む))→ 売上 304 億ドル・営業利益 94 億ドル。AUS 年 7%・率は微減
- プラットフォーム・ソリューションズ:数量 10,000(取引銀行・預金の残高(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率)→ 売上 36 億ドル・営業利益 8 億ドル。取引銀行が成長
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 14.5%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 1705 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 11.6%、g 4.0%(資産運用と市場業務の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 13.8 倍で、これが検査の上限になる。投資銀行・市場業務で首位級の優良な金融。利益の山谷が大きい。 上限の 8.0 割の 11.0 倍に置いた。
確率:議論の落としどころ。運用は堅調に伸びるが、市場業務は山谷を平均すると中程度で、利益率は 33% 台。
やや悲観 22% やや悲観:手数料競争とプライベート資産の失速で、ROE は 10% 前後 利益 159 億ドル · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 564.00 ドル1,670 億ドル
2035 年末、AUS は 6.2 兆ドル(年 4.6%)にとどまり、オルタナの資金調達は鈍って手数料率が 0.36% へ下がり、AWM の収益は 223 億ドル、利益率 26%。GBM は世界のプール 4,200 億ドルの 12.5%(525 億ドル)で、JPモルガン・モルガン・スタンレーに押され、利益率 29%。純利益は約 167 億ドル、ROE は 9.8%、10 年の正味の還元は 1,040 億ドル。優良金融から普通の金融に近づき、PER は式の上限 12.2 倍の 8.6 割で 10.5 倍。 競合のブラックストーンやアポロはプライベート資産の個人向け販売で先行し、ゴールドマンの運用はシェアを取れない。投資銀行ではモルガン・スタンレーが助言のシェアを伸ばし、ゴールドマンの利益率は 2026 年の山から 5 ポイント下がる。景気後退を挟んだ年の利益の落ち込みが大きく、ならした成長は年 2〜3% にとどまる。
- グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM):数量 4,200(世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 12.5%(ゴールドマン・サックスのシェア)→ 売上 525 億ドル・営業利益 152 億ドル。シェアを落とす
- 資産運用・富裕層(AWM):数量 62,000(運用資産残高 AUS(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む))→ 売上 223 億ドル・営業利益 58 億ドル。AUS 年 4.6%・率が低下
- プラットフォーム・ソリューションズ:数量 9,000(取引銀行・預金の残高(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率)→ 売上 30 億ドル・営業利益 4 億ドル。取引銀行が伸び悩む
倍率:式 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)。事業の ROE 10.2%(この筋書きの純利益 ÷ 自己資本 1555 億ドル)、残る割合 1/2(普通 1/2)で RONIC 9.5%、g 4.0%(資産運用と市場業務の伸びで長期の名目は 4% 前後。式は g 4% で計算する)。式の値は 12.2 倍で、これが検査の上限になる。投資銀行・市場業務で首位級の優良な金融。利益の山谷が大きい。 上限の 8.6 割の 10.5 倍に置いた。
確率:プライベート資産の評価・流動性への不信と手数料の競争、シェアの低下が重なる展開。起きても不思議はない。
悲観 12% 悲観:構造的に負ける(運用の失速・市場業務のシェア喪失・大きな事故) 利益 57 億ドル · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 211.04 ドル625 億ドル
2035 年末、AUS は 4.8 兆ドルにとどまり、プライベート資産への不信と手数料の崩壊で手数料率は 0.31% まで下がる。GBM は技術投資・人材で他行に及ばず、シェアは 10% に落ち、利益率は 18%。加えてヘッジファンドの破綻か大きな不祥事で顧客の信頼を失う。純利益は約 65 億ドル、ROE は 4.3%。もう優良な金融ではなく、普通の証券会社として PBR 0.5 倍で測る。10 年の正味の還元は 600 億ドル。 一度失った信頼とシェアは戻らず、優秀な人材は競合へ移る。規制当局が資本の上乗せを課し、還元も絞られる。
- グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM):数量 3,400(世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル))× 価格 10.0%(ゴールドマン・サックスのシェア)→ 売上 340 億ドル・営業利益 61 億ドル。シェアを大きく落とす
- 資産運用・富裕層(AWM):数量 48,000(運用資産残高 AUS(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む))→ 売上 149 億ドル・営業利益 24 億ドル。AUS が伸びず率が低下
- プラットフォーム・ソリューションズ:数量 8,000(取引銀行・預金の残高(億ドル))× 価格 0.00(残高あたりの純収益の率)→ 売上 20 億ドル・営業利益 −2 億ドル。取引銀行が縮む
倍率:構造的な低 ROE(純利益 57 億ドル ÷ 自己資本 1,355 億ドル = 4.2%、のれんなどを除く事業の ROE でも 4.4%)で k 8.75% を下回るので、価値は稼ぐ力(純利益 ÷ k = 約 651 億ドル)に近くなる。式の PER では PBR 0.16 倍と清算に近い値まで下がるため、悲観の床は今の普通株の自己資本 1,250 億ドルの半分(PBR 0.5 倍、時価総額 625 億ドル)に置いた。稼ぐ力とほぼ同じ水準で、二重に下げていない。純利益と自己資本は優先配当(年約 8 億ドル)・優先株(約 145 億ドル)を引いた普通株の値(いずれも推定)。検査の EV ÷ 営業利益 87 倍は、顧客の預かり金・レポ・預金で資金を回す証券・銀行では借入が事業の原料なので当てはまらない(有形自己資本の ROE と PBR で見る)。
確率:手数料の崩壊、市場業務のシェア喪失、リスク管理の失敗がそろう確率を 1 割強と置く。2008 年の再現ではなく、構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
グローバル・バンキング&マーケッツ(GBM)
M&A の助言・株式と債券の引受(投資銀行)と、株式・債券・為替・商品の市場業務、プライム・ファイナンス。
| 数量世界の投資銀行・市場業務の収益プール(億ドル) | 価格ゴールドマン・サックスのシェア | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 13.5% | 405 | 170 |
| 10 年後 中立 | 4,900 | 13.5% | 662 | 225 |
取り方:世界の投資銀行手数料(約 1,300 億ドル)と大手の市場業務の収益(約 1,700 億ドル)を合わせて約 3,000 億ドル(推定)と置き、GBM の 2025 年の純収益約 405 億ドル(推定)のシェア 13.5%。営業利益は税引前利益の推定(利益率 42%)。モルガン・スタンレーの ISG のプール(3,000 億ドル)と同じ物差し。競合はモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)・JPモルガン・バンク・オブ・アメリカで、株式の売買・M&A の助言では世界首位級。2026 年は株式の急増でシェアが 16% 前後へ上がったが、山と見てシェアは物価で上げない。プールは名目の取引額とともに伸びるので、物価の分はプールの側に入っている。
資産運用・富裕層(AWM)
運用資産(AUS)の運用手数料、オルタナティブ(PE・クレジット・不動産・インフラ)、富裕層向け助言、自己資金の投資。
| 数量運用資産残高 AUS(億ドル) | 価格残高あたりの純収益の率(運用手数料・自己投資の収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 39,500 | 0.00 | 156 | 46 |
| 10 年後 中立 | 78,000 | 0.00 | 304 | 94 |
取り方:2025 年末の AUS を約 3.95 兆ドルと概算し、AWM の純収益約 156 億ドル(推定)を割った率 0.395%。営業利益は税引前利益の推定(利益率 29%)。ブラックロック(BlackRock)・モルガン・スタンレー・ブラックストーン(Blackstone)・アポロ(Apollo)などと競う。率は名目の AUS に対する割合なので、物価の分は残高(中立で 3 年 1.24 倍・10 年 2.0 倍)の側に入り、率まで物価で上げると二重になる。オルタナの比重が上がると率が上がり、パッシブ化と競争で率が下がる。
プラットフォーム・ソリューションズ
企業向けの取引銀行(決済)、預金、残るアップルカード。アップルカードは JPモルガンへ移管が決まり、約 2 年で消える。
| 数量取引銀行・預金の残高(億ドル) | 価格残高あたりの純収益の率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 0.00 | 22 | 5 |
| 10 年後 中立 | 10,000 | 0.00 | 36 | 8 |
取り方:預金・取引銀行の残高を約 5,000 億ドルと概算し、純収益約 22 億ドル(推定)を割った率 0.44%。営業利益は推定で小さい黒字(アップルカードの貸倒引当の戻りを含む)。アップルカードが消えると収益は減り、企業向けの取引銀行が手数料型の収益として育つと置いた。
リスクと懸念
市場業務と M&A の山谷
GBM の利益は株式・FICC の売買と M&A・引受の山谷で上下する。2026 年の株式部門の 72% 増はヘッジファンドの売買の急増と高い預かり残高が重なった結果で、元に戻る性質のもの。景気後退で投資銀行が半減し、トレーディングに評価損が出れば、純利益は 3〜5 割減る。2008 年に株価は 68% 下がった。 ならした利益で値段を見る必要がある。
ヘッジファンド向け融資の集中
プライム・ファイナンスの記録的な増加は、ヘッジファンドの高いレバレッジに支えられている。2021 年のアルケゴスのような顧客の破綻や、市場の急変による追証の連鎖が起きれば、損失が一気に出る。収益が伸びる局面ほど、リスクも同じ向きに膨らむ。
資本の余裕の薄さ
CET1 は 12.4%(前期 12.9%)まで下がり、規制の最低との余裕は約 1 ポイント。2025 年の還元は純利益のほぼ全額(約 98%)だった。利益が落ちれば、自社株買いが先に絞られ、見かけの還元の持続性は低い。 規制の緩和が進まなければ、成長への投資と還元の両立は難しくなる。
オルタナティブ運用の競争と評価
オルタナ AUS 7,500 億ドルの目標は、ブラックストーン・アポロ・KKR とのシェア争いで、手数料率の低下・資金調達の鈍化・評価益の振れのリスクがある。個人投資家向けのプライベート資産は流動性の問題があり、解約が殺到すれば信頼を失う。プライベート・クレジットの信用悪化が表に出れば、AWM の自己投資に損失が出る。
株式報酬と自社株買いの効率
株式報酬による増発が大きく、2025 年は自社株買い 124 億ドルを使って株数の減少は 4.7%。見かけの還元の約 3 割は株数の維持に消えている。2026 年の自社株買いの平均価格は今の時価総額から見て高く、割高で買い増す面がある。 株式報酬は人材確保の費用であり、実質の利益は会計上の純利益より小さい。
規制・訴訟・経営の継承
資本規制(SCB・バーゼル III)の変更で還元が増減する。過去に 1MDB 事件で巨額の和解金を払ったように、不祥事・規制当局の制裁は利益を傷つける。CEO のソロモン氏とウォルドロン氏の後の経営の継承も長期の不確実性。 消費者事業の撤退で失った資本の教訓を、次の事業拡大で繰り返さない規律が問われる。
今後の分かれ目
- オルタナティブの調達が年 1,250 億ドルを超え、2030 年の 7,500 億ドル目標が前倒しで進んだら
- AWM の規模と手数料型の収益が確認でき、楽観・やや楽観の確率を上げ、PER を 1 倍ほど上げて見る。
- 株式部門の収益が 2026 年 7〜9 月期の水準(64 億ドル)から 3 割以上下がり、ROE が 15% を割ったら
- 山が終わった合図。中立の利益水準を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 資本規制の緩和(SLR・バーゼル III)が確定して、CET1 の余裕が広がったら
- 自社株買いが増え、ROE が 1〜2 ポイント上がり、楽観・やや楽観の確率を上げる。
- M&A のバックログが減り続け、助言の収益が 2 四半期続けて前年を下回ったら
- 投資銀行の回復が止まった合図で、やや悲観の確率を上げ、中立の GBM の利益率を下げる。
- 景気後退が来て投資銀行が半減し、市場業務に評価損が出たら
- 悲観の筋書きに入る。ただし配当は維持でき、悲観の床は今の自己資本の半分(PBR 0.5 倍)。
- ヘッジファンドの破綻や、プライベート・クレジットの大きな損失が表に出たら
- リスク管理の質を疑い、ROE と g を下げて式で倍率を引き直し、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- GBM の株式・FICC の収益と、プライム・ファイナンスの残高
- 投資銀行手数料と M&A・引受のバックログ(助言の積み上がり)
- AWM の純流入とオルタナティブの調達額(2030 年 7,500 億ドルの目標への進み)
- CET1 比率と SCB の更新、自社株買いの規模
- ROE・ROTE(15% を保てるか)
- アップルカードの移管の進み具合とプラットフォーム部門の収益
倍率と資本コストの決め方
今の PER 15.2 倍・PBR 2.09 倍を見る前に、GBM は収益プール × シェア、AWM は AUS × 手数料率、プラットフォームは預金・取引銀行の残高 × 率で利益を積み、ROE・g・k から利益ベースの正当化 PER を出し、その 7〜9 割に倍率を置いた。k は基本 8.0% + quality +0.75% の 8.75%、g は 4%(k − g = 4.75%)。中立の 10 年後 PER 11.0 倍は、式の上限 13.8 倍(ROE 14.5%、RONIC 11.6%)の 8 割。2026 年の ROE 20% は山と見て、中立では 14.5% にならした。過去の中央値や今の値には寄せていない。表の純利益・自己資本は優先株を除く普通株の値。金融の借金は事業の費用に入るため、利払いは別に足していない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%。内訳は cycle +0.75・pricing +0.00・debt +0.00・life +0.00(%)で、理由は quality_why。β は使わない。個別の懸念(市場の山谷・規制資本・訴訟)は k に足さず、筋書きの数量・利益率と確率で表した。