結論
あさひは「サイクルベースあさひ」を全国557店で営む、自転車専門店の最大手だ。国内で売れる自転車の4台に1台を売る。筆者の結論は、今の値段は適正かやや割高というものだ。純現金は時価総額の4割近くあるが、本業の利益率が薄く、10年の稼ぐ力を高く見る材料に乏しい。
2026年2月期は、売上813億円でほぼ横ばい、営業利益は39億円と28%減った。原因ははっきりしている。粗利の薄い電動アシスト自転車が売れ、販売数量が減る中で、賃上げと新店とシステム入れ替えの費用が増えた。
自転車の市場は縮んでいる。2025年の国内向け自転車は483万台で、前年より5%減った。ただ、1台あたりの値段は上がり、金額は横ばいだった。あさひはシェアを25%から26%に引き上げる計画だ。
稼ぎの源は新車ではない。新車の営業利益は薄く、整備とパーツが事業の利益の大半を生む。新車で客を集め、修理で通わせる。このモデルが続くかどうかが分かれ目になる。
10年の中立では、営業利益は56億円前後、率は5%台前半とみる。人件費と家賃の上昇が重く、回復は限られる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、あさひを一言でいえば「規模はあるが、利益の質が薄い会社」だ。自転車という日用品を、全国の店と整備の力で売る事業は、10年先にも残る。
ただ、儲けの質は高くない。粗利の薄い電動アシストが売れるほど、利益率が下がる構造だ。値決めの力も弱い。堀は、店舗網の規模と整備の信頼にとどまり、強いとは言えない。
資本の使い方は堅実だ。借金がなく、現金は厚い。配当性向は35%以上、DOE3%と明示し、2026年2月期は純利益の57%を配当した。ただし、純現金は3年で倍以上に増え、使い道は示されていない。
固定の約束が重い点は見逃せない。年間の家賃が約64億円と、営業利益の1.6倍にのぼる。現金が厚く見えても、事業を続けるには家賃を払い続ける必要がある。純現金の強さは、見かけほどではない。
安全域は、純現金が時価総額の4割近くあることにある。一方、事業そのものの評価は、今の値段にほぼ織り込まれている。筆者がいちばん気にしているのは、粗利の薄い電動アシストの構成比が上がり続ける場合に、整備とパーツの利益だけで賃上げを吸収できるかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
あさひの商売は、自転車の小売りだ。全国に直営539店、フランチャイズ18店を持ち、北海道から九州まで展開する。ネット通販の公式ストアも運営し、2026年2月期はEC売上が143億円、小売の18%を占めた。店舗で見て、ネットで買い、店で受け取る、といった使い方が増えている。
2026年2月期の売上813億円のうち、新車が556億円、パーツ・サービスが230億円、周辺事業が28億円だ。周辺事業は、フランチャイズ店や卸先への商品販売、ロイヤリティ、外商、リユースなどを指す。
新車の中身は、電動アシストが246億円、一般車が124億円、スポーツ車が98億円、子供車が82億円だ。電動アシストは売上の3割を占め、伸び続けている。
商品の約半分は、自社ブランドだ。生産を海外の工場に委託して調達し、売上の47%を占める。仕入れの約4割が輸入で、その大半は中国で作られる。
店は賃借が基本だ。年間の家賃は約64億円にのぼる。従業員は正社員1,826名、臨時雇用が1,687名で、整備の人手が事業の中核になる。
中期経営計画は「VISION2025」が2026年2月期で終わり、次の「VISION2028」が始まった。初年度は準備の年と位置づけ、新規出店10店、改装・移転17店を予定する。
優良さと弱いところ
あさひの強みは、規模と整備の力だ。全国557店の店舗網は、同業のダイワサイクルの約5倍とされ、仕入れの交渉力と自社ブランドの開発力に結びつく。自社ブランドの売上比率は47%と高く、メーカー品より粗利を取れる。
第二に、整備だ。自転車は買って終わりの商品でなく、パンクや点検で何度も店に戻る。パーツ・サービスの売上は230億円で、利益の大半を生む。ネット通販では整備ができないため、ここは通販に奪われにくい。
第三に、財務が堅い。自己資本比率は72%、借金はなく、現金は約123億円ある。
ただし、弱みも多い。まず、値決めが弱い。電動アシストの競争が強まり、ホームセンターやイオンバイクも自社ブランドの電動アシストを出している。次に、電動アシストは粗利が薄く、売れるほど利益率が下がる。さらに、家賃が固定の約束で、年間64億円と営業利益の1.6倍にのぼる。売上が落ちても家賃は落ちない。
利益率は安定とは言えない。2016年から2025年は6〜7%台だったが、2026年2月期は4.8%まで落ちた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自転車の市場は、数量が縮み、金額が横ばいという形だ。自転車産業振興協会によると、2025年の国内向け自転車は483万台で、前年比95%だった。金額は1,327億円で前年比100.5%だった。円安と部材の値上がりで、車体の値段が上がった。
数量が減る理由は三つある。人口が減る。物価高で買い替えを見送る人が増え、買い替えの周期が長くなった。そして、子供車や一般車の需要が細っている。一方、電動アシストは好調で、単価を押し上げる。
競争の形は、専門店とそれ以外に分かれる。あさひのシェアは25%だが、ダイワサイクルなどの専門店、イオンバイクやホームセンター、ネット通販が、それぞれ別の客層を取り合う。
制度の変化も追い風になりうる。自転車の違反に反則金を課す制度が2026年に始まり、安全装備や整備への関心が高まる可能性がある。ただし、効果の大きさはまだ見えない。
業界の収益構造として、新車は集客の役目で、利益は整備とパーツから出る。車体の値段が上がっても、人件費と家賃が同じ率で上がれば、利益率は改善しない。
自転車は雨や気温にも左右されるが、景気の循環は小さい。10年先の需要を決めるのは、人口と、電動アシストへの買い替えの進み方である。
資本政策と M&A
還元は、配当性向35%以上とDOE3%を目安にする。2026年2月期の純利益に対する配当の比率は約57%だった。2027年2月期も同額の配当を予定する。自社株買いは確認できない。
手元の現金は約123億円あり、借金はない。2023年2月期の純現金53億円から、3年で倍以上に増えた。利益の多くは配当に回らず、会社に残っている。
設備投資は、年に25億円ほどだ。新規出店10店、改装16店、移転1店のほか、物流とシステムへの投資が続く。基幹システムは入れ替えたばかりで、運用費が重い。
政策保有株はない。M&Aの実績は目立たない。海外では、中国の現地法人を2025年12月に清算した。
新しい中期経営計画では、都市型店舗の出店、卸やリユースなどの周辺事業、ECとアプリの連携を重点に置く。数値目標は、今回確認できた範囲では公表されていない。
TOBの可能性は、プライム上場で時価総額が小さく、純現金が厚いことから、ゼロではない。ただし、株主構成は未確認だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
あさひは国内の自転車の4台に1台を売り、シェアを26%に引き上げる計画だ。市場が縮む中で、店舗網と自社ブランドの規模が、小さな競合との差を広げる。ダイワサイクルとは店舗数に5倍の差があり、仕入れの交渉力でも有利だ。
2026年2月期の減益は、一時の要因が重なった結果だ。システムの入れ替え費用と新店の立ち上げ費用がかさんだが、これは先行投資で、翌期以降は軽くなる。会社の計画では、2027年2月期の営業利益は43億円と増益に転じる。価格の是正と原価の低減も効いてくる。
利益の源はパーツ・サービスで、売上230億円は前期比で伸びている。整備は店舗でしかできず、ネット通販に奪われにくい。しかも自転車の保有台数は変わらないから、点検や修理の需要は安定する。OMOとCRMの強化で、アプリ会員を修理に呼び込む。
電動アシストの構成比が高まれば、単価が上がり、整備の客単価も高くなる。ECは売上の18%まで育ち、目標を上回った。2026年に始まった自転車の違反への反則金制度は、安全意識を高め、整備の需要を押し上げる。
借金がなく、現金は約123億円ある。配当性向35%以上とDOE3%の方針の下で、還元も続く。
慎重な見方
自転車の市場は構造的に縮んでいる。2025年の国内向け自転車は483万台で、前年比95%だった。人口が減り、買い替えの周期は長くなっている。金額が保たれているのは、円安と部材高で値段が上がったからで、需要が強いわけではない。
あさひの利益は2026年2月期に28%減った。粗利の薄い電動アシストが売上の3割を占め、売れるほど利益率が下がる。会社自身が、計画との差を電動アシストの構成比の上昇と固定費の重さのせいだと説明している。
固定費は重く、削れない。年間の家賃は約64億円で、営業利益の1.6倍にのぼる。人件費は167億円と売上の2割を占め、3期連続の賃上げを予定する。物価が上がるたびに、人件費と家賃は同じ率で増える。
競合は増えている。ホームセンターも自社ブランドの電動アシストを出し、イオンバイクも低価格の折りたたみ式を投入した。ネット通販の安売りも続く。値決めの力は強くない。
純現金は約123億円あるが、これは見かけほど強くない。家賃という固定の約束があり、設備投資も年に25億円かかる。10年先まで見ても、市場の縮小に家賃と賃上げが重なれば、利益は伸びない。
どちらに重みを置いたか
どちらにも根拠がある。ただ、粗利の薄い電動アシストの構成比は上がる一方で、人件費と家賃は物価と同じ率で増える。整備とパーツの伸びがそれを吸収できる程度までが、強気の現実的な上限だ。そこで中立では利益率を5%台前半に置き、確率は中立に厚く、慎重な側も強気の側と同じ厚みに置いた。純現金は支えになるが、事業の評価を押し上げるほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 2,258 円588 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 605 円158 億円)。 今の値に割り戻すと 1,579 円411 億円、今との差 +23.2%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,297 円1,119 億円 | 860 円224 億円 | +302.3% | +14.9% | 516 円134 億円 |
| やや楽観 | 22% | 3,197 円832 億円 | 730 円190 億円 | +206.3% | +11.8% | 864 円225 億円 |
| 中立 | 38% | 2,367 円616 億円 | 622 円162 億円 | +133.2% | +8.8% | 1,136 円296 億円 |
| やや悲観 | 20% | 860 円224 億円 | 480 円125 億円 | +4.5% | +0.4% | 268 円70 億円 |
| 悲観 | 10% | 540 円141 億円 | 261 円68 億円 | −37.5% | −4.6% | 80 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,258 円588 億円 | 605 円158 億円 | +123.4% | +8.4% | 2,864 円746 億円 |
今の株価時価総額 1,282 円334 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% シェアの拡大と整備の囲い込みで、利益率が7%台に戻る 利益 63 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 4,297 円1,119 億円
シェアの拡大と整備の囲い込みで、利益率が7%台に戻る10年だ。自転車の台数は縮むが、あさひは店舗網と自社ブランドの規模で、小さな競合から客を奪い、シェアを29%まで引き上げる。アプリの会員基盤が整備の予約に結びつき、パーツ・サービスの取り込みが4割近く増える。電動アシストの構成比は高まるが、自社ブランドの原価低減が進み、粗利の落ち込みを抑える。都市型店舗と周辺事業(卸・リユース)も育つ。人件費と家賃は物価に合わせて上がるが、整備の増収がそれを上回る。売上は1,300億円台に届き、営業利益率は7%に迫る。
- 新車(自転車):数量 132(新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア)× 価格 6.67(1台あたり売上(万円)。名目)→ 売上 880 億円・営業利益 31 億円。市場-5%・シェア29%
- パーツ・サービス(整備・修理・パーツ):数量 535(あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定))× 価格 0.73(1万台あたり年間売上(億円)。名目)→ 売上 393 億円・営業利益 55 億円。取り込み率が上がる
- 周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース):数量 180(取扱点数(万点、推定))× 価格 0.38(1万点あたり売上(億円)。名目)→ 売上 68 億円・営業利益 9 億円。卸・リユースが拡大
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.7% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 17.3 倍、時価総額 1,119 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場が縮む中で、シェアを2割近く引き上げ、利益率も過去の山に近い7%台まで戻す必要がある。連続して当たる確度は高くないので1割に置く。
やや楽観 22% 電動アシストの値上がりと整備の伸びで、利益率が6%台に回復する 利益 49 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 3,197 円832 億円
電動アシストの値上がりと整備の伸びで、利益率が6%台に回復する10年だ。会社が掲げる価格是正と原価低減が実を結び、2026年2月期に落ちた粗利率は少し戻る。シェアは27%台まで上がる。パーツ・サービスの取り込みも緩やかに増え、アプリ会員の整備利用が定着する。市場は縮むが、1台あたりの単価が上がって売上は保たれる。賃上げと家賃の上昇は続くが、利益の増加がそれを吸収する。営業利益率は6%台前半に戻る。ただし、過去の山の水準には届かない。 新車は1台あたりの単価が上がるぶん台数の減りを補い、アプリ会員の整備利用が毎年の収入として積み上がる。配当は純利益の5割を保ち、現金も静かに積み上がる。
- 新車(自転車):数量 120(新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア)× 価格 6.44(1台あたり売上(万円)。名目)→ 売上 770 億円・営業利益 19 億円。市場-10%・シェア27%台
- パーツ・サービス(整備・修理・パーツ):数量 484(あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定))× 価格 0.73(1万台あたり年間売上(億円)。名目)→ 売上 355 億円・営業利益 48 億円。取り込み率が緩やかに上昇
- 周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース):数量 150(取扱点数(万点、推定))× 価格 0.38(1万点あたり売上(億円)。名目)→ 売上 57 億円・営業利益 7 億円。周辺が拡大
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 16.09 倍、時価総額 826 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画どおりに価格是正と原価低減が効き、整備の取り込みも進む筋書き。2026年2月期の減益が一時的だった場合の姿で、2割強に置く。
中立 38% 市場は縮み、利益率は5%台前半で足踏みする 利益 38 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 2,367 円616 億円
市場は縮み、利益率は5%台前半で足踏みする10年だ。国内の自転車は人口減と買い替え周期の長期化で、台数が15%ほど減る。あさひはシェアを少し引き上げるが、台数は減る。単価は電動アシストへの切り替えで物価並みに上がる。整備とパーツは取り込みが少しずつ増え、全社の利益を支える。ただし、人件費と家賃は物価と同じ率で上がり、粗利の薄い電動アシストの構成比も高まる。このため、営業利益率は5%台前半にとどまる。売上は1,080億円ほど、営業利益は56億円前後になる。配当は純利益の5割を保つ。 新店は都市型を中心に年10店ほど増え、不採算店の入れ替えも続く。会社が掲げる都市型店舗や周辺事業(卸・リユース)は育つが、全体を変えるほどの規模にはならない。
- 新車(自転車):数量 111(新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア)× 価格 6.35(1台あたり売上(万円)。名目)→ 売上 704 億円・営業利益 11 億円。市場-15%・シェア27%
- パーツ・サービス(整備・修理・パーツ):数量 447(あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定))× 価格 0.73(1万台あたり年間売上(億円)。名目)→ 売上 328 億円・営業利益 41 億円。保有台数-5%、取り込み率+12%
- 周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース):数量 130(取扱点数(万点、推定))× 価格 0.38(1万点あたり売上(億円)。名目)→ 売上 49 億円・営業利益 5 億円。周辺が1.3倍
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 14.78 倍、時価総額 597 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場は縮むが値段が上がり、シェアも少し上がる。人件費と家賃の上昇を整備の伸びが吸収しきれず、利益率は5%台前半にとどまる中心の筋書き。
やや悲観 20% 粗利の薄い電動アシストが増え、固定費が重く利益が細る 利益 18 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 860 円224 億円
粗利の薄い電動アシストが増え、固定費が重く利益が細る10年だ。市場は2割以上縮み、シェアは横ばいにとどまる。電動アシストの構成比が上がり続けて粗利率が落ちる一方、賃上げと家賃は物価と同じ率で増える。ホームセンターとネット通販が低価格の電動アシストを広げ、価格是正は進まない。整備の取り込みも伸びず、むしろ細る。営業利益率は3%まで落ち、2026年2月期の落ち込みが一時的でなかったとわかる。配当は性向を上げて維持するが、現金の積み上がりは鈍る。ROEは資本コストを大きく下回る。 新店の出店は抑えられ、閉店が増える。基幹システムの運用費など、削りにくい費用が残り、現金の厚さが事業の弱さを覆い隠す姿になる。
- 新車(自転車):数量 94.2(新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア)× 価格 5.98(1台あたり売上(万円)。名目)→ 売上 563 億円・営業利益 −3 億円。市場-22%・シェア横ばい
- パーツ・サービス(整備・修理・パーツ):数量 386(あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定))× 価格 0.71(1万台あたり年間売上(億円)。名目)→ 売上 275 億円・営業利益 28 億円。取り込み率が低下
- 周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース):数量 100(取扱点数(万点、推定))× 価格 0.37(1万点あたり売上(億円)。名目)→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。横ばい
倍率:事業の純利益18億円・事業ROE 約3.5%は k 以下で、上限は1÷k=12.5倍。利益が谷に近い筋書きで、谷の倍率を重ねず、上限の約7割の8.5倍に置いた。
確率:電動アシストの構成比が上がり続けて粗利率が落ち、賃上げと家賃が物価と同じ率で増える。2026年2月期の落ち込みが続く筋書きで、2割に置く。
悲観 10% 市場の縮小と安売りで、家賃を払うと利益が出なくなる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 540 円141 億円
市場の縮小と安売りで、家賃を払うと利益が出なくなる10年だ。自転車の台数は3分の1以上減り、電動キックボードやシェアサイクルへの切り替えも進む。ネット通販の安売りと海外ブランドが広がり、新車の値段は物価に追いつかない。あさひはシェアを落とし、整備の需要も細る。店舗は年間64億円の家賃を払い続けるため、売上が減っても固定費が残り、営業利益はゼロに近づく。不採算店の閉店と減損が相次ぎ、自己資本が減る。配当は大幅に減る。それでも借金はなく、現金と差入保証金の回収で、清算に近い価値は残る。 最終的に店舗網の整理と人員の削減で固定費を落とすが、そこまでの数年間は赤字に近い状態が続く。
- 新車(自転車):数量 72.2(新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア)× 価格 5.29(1台あたり売上(万円)。名目)→ 売上 382 億円・営業利益 −15 億円。市場-35%・シェア低下
- パーツ・サービス(整備・修理・パーツ):数量 321(あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定))× 価格 0.66(1万台あたり年間売上(億円)。名目)→ 売上 211 億円・営業利益 15 億円。整備も縮む
- 周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース):数量 80.0(取扱点数(万点、推定))× 価格 0.34(1万点あたり売上(億円)。名目)→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。縮小
倍率:今の自己資本402億円に0.35倍を掛けた。事業の純利益がほぼゼロで稼ぐ力に価値は置けない。借金がなく、現金と差入保証金(約52億円)の回収から閉店費用と買掛金を引いた清算に近い価値の床に置いた。
確率:自転車離れと安売り競争が重なり、店舗網の固定費が重荷になる構造的な負け。2026年2月期に利益率が4.8%まで落ちた実績があり、1割に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新車(自転車)
電動アシスト・一般車・スポーツ車・子供車の新車販売。自社ブランドが約半分。店舗とECの両方で売る。
| 数量新車の販売台数(万台)=国内向け自転車の台数 × あさひのシェア | 価格1台あたり売上(万円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 121 | 4.60 | 556 | 5 |
| 10 年後 中立 | 111 | 6.35 | 704 | 11 |
取り方:2026年2月期の新車売上556億円。国内向け自転車483万台(自転車産業振興協会、2025年)に、会社推定のシェア25%を掛けて販売台数を約121万台とし、1台あたり売上を約4.6万円と逆算。営業利益は、全体39.4億円のうち、新車は粗利の薄い電動アシストの比率が高く販管費も重いとみて約5億円と推定(開示は品目別売上のみ)。
パーツ・サービス(整備・修理・パーツ)
パーツ・アクセサリーの販売と整備・点検・修理。ネットでは代替できず、利益の大半を生む。
| 数量あさひが整備・パーツで対応する自転車の台数(万台)=国内の保有台数 × 取り込み率(推定) | 価格1万台あたり年間売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 420 | 0.55 | 230 | 32 |
| 10 年後 中立 | 447 | 0.73 | 328 | 41 |
取り方:2026年2月期のパーツ・サービス売上は約230億円(新車を除く店舗・ECの売上)。国内の自転車保有台数を約7,000万台と仮置きし(根拠は弱い)、あさひが整備・パーツで対応する台数を約420万台、1台あたりの年間売上を逆算。営業利益は約31.5億円と推定。粗利率が高く、全社の利益の大半を生む。
周辺事業(FC・卸・ロイヤリティ・外商・リユース)
フランチャイズ店や卸先への商品販売、ロイヤリティ、外商、リユース。
| 数量取扱点数(万点、推定) | 価格1万点あたり売上(億円)。名目 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 100 | 0.28 | 28 | 4 |
| 10 年後 中立 | 130 | 0.38 | 49 | 5 |
取り方:周辺事業(フランチャイズ・卸・ロイヤリティ・外商・リユースなど)の売上約28億円。取扱点数を約100万点と仮置きし(根拠は弱い)、1点あたりの売上を逆算。営業利益は約3.5億円と推定。
リスクと懸念
電動アシストの構成比上昇と粗利の低下
電動アシストは売上の3割を占め、伸び続けている。粗利が薄いため、売れるほど全体の利益率が下がる。2026年2月期の計画との差も、この構成比の上昇が主因だと会社が説明している。
固定費の重さ
年間の家賃が約64億円と営業利益の1.6倍、人件費は167億円で売上の2割を占める。売上が落ちても家賃は落ちず、賃上げも3期連続で続く。固定費の比率が高く、短期間では削れないと会社自身が認めている。
市場の縮小
2025年の国内向け自転車は483万台で、前年比95%だった。人口減と買い替え周期の長期化で、台数は構造的に減る。単価の上昇が売上を保つが、需要が強いわけではない。
競合の広がり
ホームセンターやイオンバイクが自社ブランドの電動アシストを投入し、ネット通販の安売りも続く。値決めの力は強くなく、価格是正が進まない恐れがある。
為替と輸入
仕入れの約4割が輸入で、自社ブランドの生産委託品は仕入れの約4割を占め、その大半は中国で作られる。為替予約で備えるが、円安や関税、部材高は原価を押し上げる。
新リース会計基準と固定の約束
店舗の家賃は固定の約束で、新リース会計基準が適用される2029年2月期以降は、負債として貸借対照表に載る。営業利益は少し増え、純現金は見かけほど強くないことが数字に出る。
今後の分かれ目
- 2027年2月期に営業利益が計画の43億円を超え、粗利率が改善したら
- 価格是正と原価低減が効いている証拠として、楽観・やや楽観側の確率を上げる。
- 電動アシストの構成比が上がり続け、粗利率が47%を割り込んだら
- 利益率の前提を下げ、やや悲観側に重みを移す。
- パーツ・サービスの売上が二桁の伸びを続けたら
- 整備の囲い込みが進んでいる証拠として、利益の質の評価を上げる。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 余った現金が株主に回る道ができ、戻り方の評価を上げる。
- 家賃や人件費が物価を上回って上昇し、営業利益率が4%を割ったら
- 固定費の負担が重く、悲観側の確率を上げる。
- 国内向け自転車の台数が毎年5%超のペースで減り続けたら
- 市場の縮小が前提より速いとして、数量の前提を下げる。
見ておくもの
- 営業利益率と粗利率(電動アシストの構成比)
- パーツ・サービスの売上と既存店客数
- 国内向け自転車の台数と、あさひのシェア
- 賃上げの率と家賃、新規出店数
- 配当性向・DOE・自社株買い、現金の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEが資本コスト7%を下回る中立では上限1÷k=12.5倍を基準に置き、上限の約8割にした。今のPER 約15倍やPBR 0.8倍は根拠に使っていない。利益率は、過去の山(COVID期の9.9%や2019年の6.8%)でなく、電動アシストの粗利低下と賃上げを織り込み、中立で5%台前半に置いた。店舗は賃借が基本で、年間の家賃64億円は固定の約束として悲観の利益率に残した。新リース会計基準(2029年2月期から)で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→17.3 倍・やや楽観 PER 10.5→16.09 倍・中立 PER 10→14.78 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足した(決まりv2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。