結論
ダイダンは、ビルや工場の空調・給排水・電気設備を設計し、施工する工事会社だ。売上は約 2,600 億円で、高砂熱学工業に次ぐ大手の一角にいる。筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。会社の力は本物だが、利益率が異例の高さにある。
2026 年 3 月期の営業利益率は 13.5% だった。2 年前は 5% 台で、過去 20 年もほぼその水準にいた。受注と繰越工事が過去最高で、短期の見通しは明るい。ただ、この高さが 10 年続くとは置きにくい。
稼ぎの源は、建物や工場が建つたび、また古い設備を替えるたびに受ける工事だ。国内の工事量は人手不足で頭打ちになる。だが、物価の上昇は工事価格に乗る。数量は横ばい、値段は物価並みという地味な成長を、筆者は中心に見る。
財務は厚い。借金を差し引いても 780 億円ほどの現金がある。自己資本比率は 56% だ。ただし、この現金には、顧客から先に受け取る前受金など、工事のために預かっている分が混じる。全部が自由なお金ではない。
中立の筋書きは、利益率が 10 年後に 8〜9% へ戻る姿だ。会社は普通に強い工事会社に評価が移る。今の値段は、その手前の高い利益率を、かなり織り込んでいる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に問うのは、10 年後もこの利益が残るかだ。ダイダンの利益の約半分は、この 2 年で積み上がった分に見える。粗利率が 1 年で 16% から 22% 近くに上がった理由は、選別受注と施工の効率化だ。半分は続き、半分は競争で削られる、と筆者は見る。
次に、稼いだ利益のうち、株主が自由に使える分を考える。工事会社は工場も店舗も持たず、設備投資が小さい。利益の大半を株主に返せる。この点は評価できる。ただ、手元の現金の一部は前受金で、顧客のお金だ。純現金をそのまま株主の価値に足すのは危うい。
経営の資本の使い方は、堅実だ。大型買収で失敗した記録がなく、政策保有株も減らしている。一方、現金が積み上がっても自社株買いは機動的な扱いにとどまり、還元の姿勢は控えめだ。
安全域の面では、今の値段は 10 年先の中立の筋書きの価値をやや上回り、安全域は厚くない。利益率が 12% を保てば妥当、10% に戻れば割高になる。払う値段に余裕はない。
本質価値は、工事の数量が横ばい、価格が物価並み、利益率が平常へ戻るという中心の見立てで決まる。その見立てでは、本質価値は今の時価総額を下回る。ただし事業は健全で、悪い年にも自己資本が守る。割高ではあるが、危うい会社ではない。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は、空調衛生設備と電気設備の工事だ。顧客の建物に空調機、配管、ダクト、電気配線を据え付け、試運転まで引き受ける。受注の約 6 割が新築、約 4 割が既存ビルの改修(リニューアル)で、海外はそのうち約 2 割を占める。
工事の種類は 2 つに分かれる。1 つは事務所・商業施設などの一般建築だ。もう 1 つは工場、研究所、データセンター、物流施設などの産業施設で、温度・湿度・清浄度の管理が厳しく、難度も単価も高い。2026 年 3 月期の産業施設の受注は約 1,300 億円で、大型案件の延期や中止で前の年より減った。
顧客はゼネコンと、工場や施設を持つ発注者だ。ゼネコンの下請けで受ける形が多いため、価格を自分で決めきれない場面は残る。受注から完成まで 1〜2 年かかり、繰越工事高、つまり受注済みで未完成の工事が先行きの売上を決める。この繰越は約 3,550 億円と過去最高で、売上の 1.4 年分にあたる。
海外はシンガポールを中心に 4 か国に拠点を持ち、現地の大型案件や日系の工場を受ける。2024 年にシンガポールの Presico Engineering を追加で取得し、連結に入れた。海外の受注は約 650 億円まで増え、国内より利益率は低い。
再生医療にも手を出している。100% 子会社のセラボヘルスケアサービスが、細胞を培養する施設の設計と装置の販売、細胞の製造受託を手がける。まだ利益を左右する規模ではなく、筆者は小さな芽として見ている。
利益率を押し上げたのは、工場で部材を先に組み立てておく手法と、人員を事業所の間で融通する体制だ。現場の無駄が減り、工事の粗利率は 1 年で約 6 ポイント上がった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、現場の施工力と、顧客との長い付き合いだ。空調工事は、建物の性能を左右する。発注者は安さだけで選ばず、失敗しない相手を選ぶ。その意味で、実績のある上位数社に案件が集まりやすい。
ただ、ダイダンの堀は広くない。売上は高砂熱学の約 6 割で、大型の産業案件では先頭を走る相手に及ばない。強みは「中堅の規模で機動的に動けること」にある。人員を事業所の間で動かし、部材を工場で先に組む仕組みは、同業も追える。
資本効率は、いま高い。ROE は 2 年で 10% 弱から 20% 台へ上がった。ただ、ほとんどは利益率の跳ねによるもので、事業の構造が変わった証拠とは、まだ言い切れない。粗利率は 1 年で約 16% から 22% 近くへ上がった。工事価格の改善と選別受注が効いたが、競争が戻れば削られる部分だ。
経営の姿勢は堅実だ。大きな買収で価値を壊した記録は見当たらない。政策保有株、つまり取引先の株は縮減し、純資産の約 19% まで下げた。財務は無借金で、悪い年を耐える力がある。
弱い点は 3 つある。ゼネコン下請けの構造で、価格を決める力に限りがあること。工事ごとに採算が違い、1 件の失敗が利益を傷めること。そして、いまの利益率が過去に比べて異例な高さにあることだ。筆者が最も気にしているのは 3 つ目である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の空調設備工事は、人口で需要が伸びない成熟市場だ。ただ、需要の中身が変わっている。
1 つは産業用だ。半導体工場とデータセンターは、空調の量も難度も大きい。熊本の TSMC 工場やラピダスのような国内投資が、ここ数年の受注を支えた。ダイダンも産業施設の大型案件を受けている。もう 1 つは更新と省エネだ。1990 年代までに建った多くのビルが、空調の入れ替え時期に入った。電気代を下げる改修は、顧客が投資を回収しやすく、景気の波が小さい。2026 年 3 月期の改修の受注は過去最高だった。
ただし、産業用の投資は止まりやすい。ダイダン自身、産業施設の受注が大型案件の延期と中止で約 320 億円減った。データセンターは米国や中東への投資が目立つ。国内に十分な量が来るかは分からない。
同業は 8 社ほどある。高砂熱学工業、大気社、三機工業、新日本空調、日比谷総合設備などだ。大型の案件は上位数社に集まるが、小さな案件では価格競争が起きる。いまは各社とも利益率が上がっているが、受注が落ち着けば取り合いが戻る。2008〜2011 年度の谷では、各社の粗利率が 1 桁台まで落ちた。
最大の制約は人手だ。技能者の確保が工事量の上限を決める。2026 年 3 月期はベースアップを積み上げ、3 年で約 16% の賃上げをした。人件費は物価並みかそれ以上に上がる。ここで値段を転嫁できるかが、利益率を決める。
筆者は、人手の制約が工事量を横ばいに抑える一方、価格は物価並みに上がると見る。それが中立の置き方だ。
資本政策と M&A
還元の方針は、配当性向 40% 以上と、純資産に対する配当率(DOE)4.8% を下限とする。利益が増えれば配当も増え、利益が落ちても純資産に対する配当率が下限を支える形だ。配当は利益の伸びに合わせて増やす考えだ。
3 年の資金の見通しは、入ってくる現金が約 810 億円で、前の計画より 150 億円増えた。増えた分のうち 50 億円を株主還元に、100 億円を成長投資に回す。自社株買いは、機動的に行うにとどまる。
政策保有株は、連結純資産の 19.4% まで下がった。目標の 20% を 1 期早く達成し、さらに減らす方針だ。売った資金は成長投資に回る。この売却益は、毎年の利益を一時的に押し上げる。
M&A は海外が中心で、規模は小さい。2024 年のシンガポールの Presico の追加取得が代表例だ。再生医療は 100% 子会社で育てている。大型買収で価値を壊した記録はなく、筆者は買収を急がない今の姿勢を堅実と見る。
一点だけ気になる。現金が積み上がったのに、還元が控えめで、配当以外の使い道が見えにくい。ROE が高い今はよいが、利益率が戻ると、この現金は重しになる。株の再編については、kabufu の推計で 10 年以内の TOB・買収の確率は 15% 前後だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注と繰越が過去最高で、2027 年 3 月期の売上は前年から増える。繰越工事は約 4,500 億円まで積み上がる見込みで、向こう 2 年の売上と利益はほぼ決まっている。
利益率の改善は、一時的な値上げではない。工場で部材を先に組む手法と、人員を事業所の間で動かす体制は、会社の仕組みとして定着している。粗利率が 22% 近くに上がった今、同業が追いつくには時間がかかる。
産業施設は、データセンターと半導体の投資が長く続く。国内の更新需要も重なる。ビルの空調は 30 年前後で入れ替わり、1990 年代に建った物件が一斉に時期を迎える。改修の受注は過去最高で、景気の波も小さい。
海外は、シンガポールの大型案件を足場に伸ばせる。現地企業の取得で受注の幅が広がった。再生医療の受託も、まだ小さいが利益の新しい柱になりうる。
財務は無借金で、純現金が厚い。政策保有株を売れば現金はさらに増え、株主還元の余力になる。配当は下限が決まっており、今の水準が守られる。
こうした条件がそろえば、利益率が 12〜13% のまま高止まりし、利益は 10 年で 1.5 倍近くに伸びる。倍率も高いままで、今の値段は割安だ。
慎重な見方
過去 20 年の営業利益率は 4〜5% が中心で、今の 13% は異例に高い。2 年前の 5% 台からの跳ね方が急で、構造の変化というより、受注の好転と工事価格の改善が重なった「山」に見える。山の後には谷が来る。
繰越が厚いことは、2〜3 年の売上を支えるが、そのあとの受注が保証されるわけではない。産業施設の受注は 2026 年 3 月期に約 320 億円減った。大型案件の延期や中止は、ここ数年の投資の熱が冷めたことを示す。
人手不足は、価格を上げる力にも、工事量を縛る力にもなる。ベースアップは 3 年で約 16%。人件費の上昇を価格に移せなければ、利益率は削られる。ゼネコン下請けの構造は、元請けの工事費の抑制を受けやすい。
政策保有株の売却益が、利益を一時的に押し上げている面もある。売却が進めば、この上乗せは消える。
海外と再生医療は、まだ利益の柱ではない。海外は利益率が低く、再生医療は小さい。成長の穴埋めには足りない。
2008〜2011 年度の谷では、粗利率が 1 桁台に落ち、営業利益率は 1% 前後まで下がった。同じ形が来なくても、利益率が 8% に戻れば利益は 4 割減る。そのとき、今の値段は大きく割高になる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。事業が壊れるという意味ではない。2 年前の倍の利益率が、そのまま 10 年続くとは置けない、という意味だ。
確率は、10 年は中立を中心に、やや悲観まで裾を広げた。10 年の悲観は、国内の工事需要が海外へ移り、価格競争だけが残る負け筋で、12% を置いた。繰越の厚さと選別受注の効果は、近い年の売上は支えるが、10 年先の利益を守るものではない。10 年では利益率の平常化の力が勝つ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,695 円4,783 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,084 円1,404 億円)。 今の値に割り戻すと 2,651 円3,432 億円、今との差 −10.2%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,919 円8,956 億円 | 1,405 円1,819 億円 | +181.8% | +10.9% | 583 円754 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,836 円7,555 億円 | 1,279 円1,656 億円 | +140.9% | +9.2% | 1,423 円1,842 億円 |
| 中立 | 35% | 4,394 円5,688 億円 | 1,120 円1,450 億円 | +86.7% | +6.4% | 1,930 円2,498 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,667 円2,158 億円 | 957 円1,239 億円 | −11.2% | −1.2% | 682 円883 億円 |
| 悲観 | 12% | 597 円773 億円 | 744 円963 億円 | −54.6% | −7.6% | 161 円208 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,695 円4,783 億円 | 1,084 円1,404 億円 | +61.8% | +4.9% | 4,779 円6,186 億円 |
今の株価時価総額 2,954 円3,824 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 利益率が高いまま、海外も育つ 利益 388 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 6,919 円8,956 億円
データセンターと半導体の国内投資が 10 年にわたり続き、更新需要も加わる。国内の工事量は今より 1 割ほど増え、価格は物価並みに上がる。
工場での先行組み立てや人員の融通が会社の仕組みとして定着し、営業利益率は 11% 台を保つ。海外は東南アジアとインドで大きく育ち、工事量は 3 倍近くになって、売上の 3 割近くを占める。
利益は 390 億円ほどに伸び、倍率も高く保たれる。ただし、人手不足の中で工事量を増やし続ける難しさがあり、実現の確率は高くない。再生医療の受託が利益に加われば、さらに上振れる。
- 国内の空調・衛生・電気設備工事:数量 4,900(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.68(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 3,328 億円・営業利益 399 億円。国内:工事量 4,900(今の 1.11 倍)× 0.6791 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 12.0%
- 海外の空調衛生設備工事:数量 2,600(施工量(人年・実質))× 価格 0.49(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 1,285 億円・営業利益 116 億円。海外:工事量 2,600(今の 2.89 倍)× 0.4943 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 382 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 21.78 倍、時価総額 8,629 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が 12% 近くで 10 年続き、海外も 3 倍近くに育つ条件が要る。実現は難しいので 7% にとどめた。
やや楽観 20% 更新と産業投資が支える 利益 329 億円 · PER 21.4 倍 · 株価時価総額 5,836 円7,555 億円
産業施設の投資が一巡しても高い水準で残り、改修と省エネの需要が続く。国内の工事量は 7% ほど増え、価格は物価並みに上がる。
営業利益率は 10〜11% で落ち着く。選別受注と施工の効率化の効果の一部が、10 年後も残る形だ。海外は 2 倍ほどに増え、売上の 2 割台になる。
利益は 330 億円ほどと今より 2 割増える。会社は、特別ではないが、強い工事会社として評価される。配当は利益とともに伸び、還元は純利益の半分あまりに達する。
人手不足で工事量を増やせない一方、価格は物価並みに上がる。この組み合わせが続くことが前提だ。ゼネコンが工事費を抑える力は残るが、技術力のある大型の産業案件では、価格を保てる。
- 国内の空調・衛生・電気設備工事:数量 4,700(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.68(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 3,192 億円・営業利益 351 億円。国内:工事量 4,700(今の 1.07 倍)× 0.6791 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 11.0%
- 海外の空調衛生設備工事:数量 2,000(施工量(人年・実質))× 価格 0.49(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 989 億円・営業利益 79 億円。海外:工事量 2,000(今の 2.22 倍)× 0.4943 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 323 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 21.38 倍、時価総額 7,214 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターと更新が 10 年細らず、利益率が 11% 前後を保つ道。上位レンジとして 2 割を置いた。
中立 35% 利益率が平常に戻る 利益 254 億円 · PER 20.4 倍 · 株価時価総額 4,394 円5,688 億円
新築の空調は人口の減少で伸びず、データセンターと半導体の投資も勢いを弱める。それでも古いビルの空調更新と省エネ改修が、需要を下支えする。国内の工事量はほぼ横ばいだ。
価格は物価並みに上がるが、同業との競争で値上げの余地が縮み、営業利益率は今の 13.5% から 8〜9% へ戻る。海外は工事量が 1.8 倍ほどに増え、売上の 2 割を超える。
10 年後には、特別な超過利益が消えた、地味だが堅実な設備工事会社になる。配当は利益とともに推移し、還元は純利益の半分あまりに達する。ROE は 10% 前後に落ち着く。
- 国内の空調・衛生・電気設備工事:数量 4,450(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.68(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 3,022 億円・営業利益 272 億円。国内:工事量 4,450(今の 1.01 倍)× 0.6791 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 9.0%
- 海外の空調衛生設備工事:数量 1,600(施工量(人年・実質))× 価格 0.49(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 791 億円・営業利益 51 億円。海外:工事量 1,600(今の 1.78 倍)× 0.4943 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 248 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)300 億円。全体の PER 20.35 倍、時価総額 5,355 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工事量は横ばいで価格は物価並み、利益率は今の山から 8〜9% へ戻る道。過去の平均より高いまま落ち着く形で、最大の 35% を置いた。
やや悲観 26% 下請けの価格競争が戻る 利益 178 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,667 円2,158 億円
下請けの構造で、元請けの工事費抑制と同業の受注競争が戻る。国内の工事量は 5% ほど減り、価格の転嫁も物価に届かない。
営業利益率は 6% 台へ下がる。過去 20 年の高い側の水準で、利益は今より 3 割ほど減る。
海外は伸びるが、利益率が低く、国内の落ち込みを補えない。自己資本は厚いので、配当は守る。ただし、ROE は資本コストを下回り、倍率は低いところへ落ち着く。人手不足は続き、賃上げの負担だけが残る形だ。
政策保有株の売却益も尽き、利益の上乗せは消える。株主への還元は続くが、成長のない会社として、倍率は低いまま動かない。
- 国内の空調・衛生・電気設備工事:数量 4,200(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.67(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,810 億円・営業利益 183 億円。国内:工事量 4,200(今の 0.95 倍)× 0.6690 億円(今の 1.32 倍)、営業利益率 6.5%
- 海外の空調衛生設備工事:数量 1,300(施工量(人年・実質))× 価格 0.48(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 623 億円・営業利益 31 億円。海外:工事量 1,300(今の 1.44 倍)× 0.4796 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 5.0%
倍率:余った現金 300 億円を分けると、事業の純利益 174 億円(現金の税後利息を除く)・事業の自己資本 2,019 億円・事業の ROE 8.61%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7% + 残る割合 1/2 ×(ROE 8.61% − k)= 8.43%、長期の成長率 g 4% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 12.4 倍。事業の ROE が資本コストと同じ程度で、伸びも堀の持ちも低く見て、上限の 7 割 5 分 の 9.3 倍に置いた。事業 174 億円 × 9.3 倍 + 余った現金 150 億円(帳簿 300 億円 × 戻り方 0.5)で時価総額 1,841 億円。
確率:下請けの価格競争が戻り、利益率が過去 20 年の高い側(6% 台)へ戻る道。山の高さを考えると十分ありうるので、26% と厚めに置いた。
悲観 12% 国内の投資が海外へ移る 利益 77 億円 · PER 8.4 倍 · 株価時価総額 597 円773 億円
データセンターと半導体の投資が海外へ移り、国内には価格競争だけが残る。国内の工事量は 16% ほど減り、価格の転嫁も物価に届かない。
営業利益率は 3% 台に落ちる。加えて、大型案件の失敗や不祥事といった、下請けの典型的な事故も重なる。海外は利益がほぼ消える。
会社は「優良な工事会社」ではなくなる。それでも自己資本は 2,000 億円を超えて厚く、倍率は純資産の 0.5 倍弱が底になる。
2 つの出来事が重なる。1 つは需要の移転で、ゼネコンも海外の工事を優先する。もう 1 つは人材で、賃上げに耐えきれず、技能者が他社や他業種へ流れる。
事業が止まるわけではない。更新と改修の工事が下支えをして赤字にはならないが、稼ぐ力は大きく落ちる。
- 国内の空調・衛生・電気設備工事:数量 3,700(施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量))× 価格 0.63(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 2,325 億円・営業利益 81 億円。国内:工事量 3,700(今の 0.84 倍)× 0.6285 億円(今の 1.24 倍)、営業利益率 3.5%
- 海外の空調衛生設備工事:数量 900(施工量(人年・実質))× 価格 0.44(1 人年あたり完成工事高(億円・名目))→ 売上 398 億円・営業利益 4 億円。海外:工事量 900(今の 1.00 倍)× 0.4427 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 1.0%
倍率:データセンター・半導体の投資が海外へ移り、価格競争だけが残って営業利益率が 3% 台に落ちた構造的な負け筋で、純利益は 77 億円まで細る。ROE が k 7% 以下なので上限は 1÷k = 12.1 倍。悲観は、やや悲観よりさらに構造的に負けた姿なので、倍率をやや悲観(9.3 倍)より高くせず、その 9 割の 8.4 倍に置いた。余った現金は悲観では今の5割に減るとみて、戻り方 0.5 を掛けた 100 億円を含む。時価総額 773 億円(全体の PER に直して 9.4 倍)。
確率:国内の投資が海外へ移り、価格競争だけが残る構造的な負け筋。加えて大型案件の失敗など下請けの典型的な事故も含む。12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の空調・衛生・電気設備工事
オフィス・工場・データセンター・病院などの空調衛生と電気の設備を設計し、施工する本業。売上の約 9 割。
| 数量施工量(人年。技能者と技術者の稼働を今の値段で測った実質の工事量) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,400 | 0.51 | 2,230 | 320 |
| 10 年後 中立 | 4,450 | 0.68 | 3,022 | 272 |
取り方:開示は国内と海外の売上の内訳が細かくないため、海外の売上を 330 億円とみて、残りの 2,230 億円を国内とした。営業利益は全体の 345 億円のうち国内が 320 億円(利益率 14.3%)と推定した。工事は人手が制約になるので、数量は施工にあたる人の稼働(人年)で置き、1 人あたり約 5,000 万円の完成工事高とした。物価の上昇分は、価格に入れる。
海外の空調衛生設備工事
シンガポールを中心に 4 か国で、現地の大型案件や日系の工場の設備を施工する。Presico を連結に含む。
| 数量施工量(人年・実質) | 価格1 人年あたり完成工事高(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 0.37 | 332 | 25 |
| 10 年後 中立 | 1,600 | 0.49 | 791 | 51 |
取り方:2026 年 3 月期の海外の受注は約 650 億円だが、売上は完成までの時間差で遅れる。売上は 330 億円規模、利益率は国内より低い 7% と推定した。現地の人件費が低いため、1 人あたりの完成工事高は国内の約 7 割とした。数量は実物(施工量の人年)で、シンガポールなど海外の拠点・人員の拡大による増加。名目の市場の伸びは置いていない(物価は価格の 1.34 倍だけ)。
リスクと懸念
利益率が平常に戻る
営業利益率は 13.5% と、過去 20 年の中心(4〜5%)を大きく超える。同業の値引きや元請けの工事費の抑制が戻れば、売上が伸びても利益は伸びない。最大の不確実性だ。
2010 年度の谷では 1% 台まで落ちた。戻る方向の力は、常に働いている。
産業施設の受注が細る
データセンターと半導体の投資は、顧客の判断で延期や中止になりやすい。2026 年 3 月期も、産業施設の受注は大型案件の延期と中止で約 320 億円減った。
国内に十分な量が来るかは、世界の投資の立地次第だ。海外へ流れれば、国内の高単価の工事が消える。
人件費が価格に移せない
3 年で約 16% のベースアップをした。人手不足が続けば、賃上げはさらに要る。元請けが工事費を抑えると、人件費の上昇が利益率を直接削る。
人を確保できなければ工事量そのものが伸びない。人手は、売上と利益の両方の上限になる。
大型案件の採算悪化
工事は 1 件ごとに採算が違い、資材高や工期の遅れで赤字になることもある。繰越が過去最高に積み上がった今は、大型案件の数が多い。
1 件の失敗の大きさは、利益率の高い今ほど目立つ。同業の工事会社で、大型の損失を出した例は過去にもある。
政策保有株の売却益の剥落
取引先の株の売却益は、毎年の利益を一時的に押し上げている。純資産比 19.4% からさらに減らす方針で、売却が進むほど、配当収入と売却益の上乗せは薄れる。
営業利益の高さと違い、この部分は続かない前提で見ておく。
現金が重しになる
純現金が約 780 億円あり、時価総額の 2 割を占める。ただし前受金など、工事のために預かっている分が混じる。
還元に回さず積み上げ続ければ、利益率が戻った時に資本効率が下がる。逆に、現金を急いで使う買収に出れば、価値を壊す恐れがある。
今後の分かれ目
- 受注工事高が 2 期連続で前年を下回ったら
- やや悲観の筋書きに確率を寄せる。繰越が薄くなり、利益率の戻りが早まる。
- 営業利益率が 2 年続けて 12% を保ったら
- 利益率は仕組みとして定着したとみて、楽観側に確率を寄せる。
- 産業施設の大型案件(データセンター・半導体)が再び決まりだしたら
- 産業施設の受注が戻れば、売上の谷は浅くなる。やや楽観の筋書きの確率を上げる。
- 海外の売上と利益率が伸びたら
- シンガポールで大型案件を取り続ければ、国内の落ち込みを補う。10 年の楽観側の裾が太くなる。
- 大型案件で赤字が出たら
- 利益率の山が崩れる前触れとなる。やや悲観と悲観に確率を寄せる。
- 現金を使った大型買収が出たら
- 買う相手と値段次第で、価値を壊す恐れがある。本業と離れた買収なら、見方を厳しくする。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注工事高と繰越工事高、受注時の利益率
- 営業利益率(12% 台を保てるか)と完成工事総利益率
- 産業施設(データセンター・半導体)の大型案件の受注の有無
- 海外の売上と利益率、Presico の貢献
- 政策保有株の残高と売却益、次の中期経営計画(2027 年度から)の数値目標と還元方針
倍率と資本コストの決め方
売上は「施工量 × 1 人あたり完成工事高」で積み、物価 3% は価格に入れた。国内の工事量は人手不足と人口で頭打ちとし、中立の 10 年で 1.01 倍とした。倍率は k 7%(基本 7.5% + quality 0.75%)・g 4% 以内の正当化 PER の上限の約 9 割に置き、ROE が k を上回る中立は 1÷k(12.1 倍)の床を割らせない。悲観は稼ぐ力(PER 上限 1÷k)を上限に、やや悲観より高くしない倍率で測り、谷の PBR は使っていない。中立は 11〜12 倍で、今の 14.9 倍には寄せていない。純現金 784 億円は前受金を含むため、事業に要らない余った現金を 400 億円とみて分け、時価総額は(純利益 − 余った現金の利息)× PER + 400 億円で出した。工事会社で店舗や倉庫の賃借は小さく、新リース会計基準(2028/03 期)の影響は小さい。数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえてある。国内と海外の売上の内訳は推定で、利益は合計が開示値に合うようにした。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。理由は quality_why。個別のリスク(不祥事・M&A の実行など)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。