結論
シンプレクスは、証券・銀行・取引所の基幹システムを企画から運用まで一社で請け負う。下請けに丸投げせず元請けで抱えるのが特徴で、営業利益率は25%近い。筆者の結論は割高で、その高い利益率が、エンジニアの人数に高い単価を掛ける仕組みの上に立っていて、AIエージェントが真っ先に狙うことが理由だ。
会社は生成AIで利益率を5ポイント上げると言う。だが同じ道具を発注する銀行や証券会社も使う。工数が減れば、工数に値段を付ける商売は値下げ圧力を受ける。金融向けは売上の67%、数量は今の0.70倍。非金融向けは0.72倍とした。この6年の売上倍増は10年の目安にならない。
中立の売上は今の0.90倍の530億円、純利益は86億円。借金は無く、余った現金は小さい。資本コストは7.5%、本質価値は2,833億円に対して711億円で、差は-75%。やや悲観と悲観の確率は41%。金融一業界と大口顧客への偏りは、悲観で重く効く。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が 10 年後も存在するかを問う。シンプレクスの顧客は金融機関で、システムの更新は続く。事業は残るが、人に値段をつける形が崩れるかどうかが分かれ目だ。
次に、稼いだお金を株主が自由にできるか。この会社は資本をほとんど食わない。利益の大半が株主のものになる。オーナーとして持つ魅力はここにある。
最後に安全域だ。今の時価総額は、中立の筋書きでも 10 年で大きく膨らまなければ報われない水準にある。会社の計画どおりに行けば楽観の筋書きに入るが、その確率は 3 割ほどだ。計画が外れる余地を考えると、払う値段に余裕があるとは言いにくい。
筆者は、会社の質は高く、値段はその質をすでに織り込んでいると見る。だから、結論はやや割高だ。
逆に、AI で人月の形を変えることに成功し、利益率が上がり続けるなら、この見立ては外れる。筆者は、その分かれ目を毎期の 1 人あたり売上で確かめる。
何で稼ぐ会社か
シンプレクスの顧客は、ほとんどが金融機関だ。売上の約 3 分の 2 を占めるのが金融向けで、為替や株式のトレーディング、取引所のシステム、ネット証券の口座まわりなどを作る。最大の顧客は SBI 証券、取引所では東京金融取引所の案件があり、メガバンクや大手証券とも取引が長い。
金融向けの強みは、システムを作って終わりにしないことだ。稼働後の運用保守まで抱えるので、一度入ると繰り返し発注が来る。運用サービスだけで年 140 億円ほどの規模がある。
もう 1 つの柱が、金融以外の分野だ。戦略・DX コンサルティングとエンタープライズ DX が伸びていて、後者は官公庁が約 4 割を占める。コンサルのグループ会社クロスピアが顧客を見つけ、シンプレクスが開発を受ける連携が回り始め、両社で同時に支援する顧客は 23 社に増えた。
会社はもう 1 つ、web3 を使った人手に頼らない事業を育てると言う。ただ収益計画は示されていない。いまのところ、評価に入れるほどの材料はない。
人員は連結で約 1,850 人、期中の平均は常駐パートナーを含め約 2,000 人。毎年 500 人規模の新卒・中途を採る。売上を伸ばせる量は、採って育てられる人数でほぼ決まる。
優良さと弱いところ
優良さの中身は、高い単価と、直接受注の比率だ。多重下請けの上流ではなく、顧客と直接契約して設計から運用まで持つので、下請け構造の取り分の目減りを避けられる。1 人あたり売上は 2,900 万円ほどと高い。
ただ、これを他社が真似できない堀、とまでは言えない。金融システムの知識と、短い期間で作り切る力は財産だが、野村総合研究所や TIS、外資のコンサルも同じ顧客を狙っている。筆者は、堀は普通の強さとみる。
資本効率はすばらしい。自己資本利益率は直近 20% を超え、のれんもほとんど積んでいない。工場もなく、人が稼ぐ。だから投じる資本が小さく、利益の大半を株主に返せる。
弱い所も 2 つある。1 つは創業者で社長の金子英樹氏への依存だ。もう 1 つは、金融という 1 つの業界への偏りだ。取引所や暗号資産に近い案件は景気や規制で振れやすい。2020 年 3 月期に営業利益が 12 億円まで落ちた時期もある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のシステム開発市場は 7 兆円台で、年 6% 前後の成長が続くと見られる。人手不足を背景に、開発の単価は物価より速く上がってきた。シンプレクスはその追い風を最も強く受ける会社の 1 つだ。
金融の領域では、証券・銀行の古い基幹システムの作り替えが続く。取引のデジタル化、私設取引所、暗号資産、決済など、新しい仕組みごとに開発案件が出る。ここで強い開発会社は多くない。
逆風も明らかだ。生成 AI は、設計・コーディング・テストの手間を大きく減らす。人月、つまり人数 × 期間で値段をつける商売は、工数が減ると売上が縮む。会社は AI 前提の開発を新規案件の標準にして、工数が減っても固定価格や成果で受ける形に移すと説明する。
筆者は、移行に成功する会社と失敗する会社が分かれる時期に入ったと見る。顧客の側も AI で内製を増やすから、単価が上がる前提を置きにくい。
競争の形は分散的で、大手数社と多数の中堅が並ぶ。金融に特化して高単価を取る会社は少ないが、人手不足が緩めば、その差も縮む。海外のコンサルやインド系の大手が国内で本格的に攻める動きは、いまのところ限られる。
【AIエージェント代替】金融システムの更新需要は続くが、工数で売る数量は減る。シンプレクスは中立で売上が今の0.90倍とみた。
資本政策と M&A
資本の使い方は素直だ。配当は利益の 4 割を目安に出し、自社株買いは株価を見て機動的に行う。最近は 50 億円を上限に実施した。借金はほぼなく、純現金もごくわずかで、余った現金を別に数える必要はない。
買収で大きくなる会社ではない。会社の目標に買収の効果は入っておらず、人を採って育てる路線だ。のれんの減損という心配はほとんどない。
資本をほとんど食わない事業なので、還元をさらに厚くすれば自己資本利益率は上がる。筆者は、後半の収穫期に還元を増やす余地があると見ている。
大株主には創業者の金子氏と信託口が並ぶ。創業者が大きく持つことは、経営の方向が一貫する長所と、売却が出た時の需給の重しという短所を併せ持つ。親会社も持ち合いもないので、買収される側になる可能性は小さくない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
生成 AI は、シンプレクスにとって追い風になりうる。工数が減っても、顧客は固定価格や成果で払うほうが得なので、会社の取り分は増える。すでに下期から AI 前提の開発を試し、対象工程で工数の削減を確かめた。新規開発はすべてこの方式に切り替える。
需要も強い。FY27 の売上は 19% 増を見込み、会社は 1,000 億円を前倒しで狙う。エンタープライズ DX は 5 割近い伸びで、20 億円超の大型案件も立ち上がる。人を採る力があり、新卒と中途で毎年 500 人を超える。
資本効率が高いので、増えた利益のほとんどが株主に回る。10 年で売上を 3.5 倍にし、利益率を 28〜30% に上げられれば、楽観の筋書きの時価総額は 7,000 億円を超える。
金融だけでなく官公庁にも広がり、顧客の幅は一年ごとに増えている。2 社で同時に支える顧客が 23 社に増えたのは、その証拠だ。
過去の実績も裏付けになる。2023 年に示した FY27 の売上 600 億円という目標を、会社はすでに大きく上回る見通しだ。計画を守り、かつ超える会社だと、市場が評価し直す余地は残っている。
慎重な見方
人月の商売は、工数が減れば売上が減る。顧客の銀行や証券会社も AI を使うので、発注側は値下げを求めるだろう。AI で浮いた工数を、会社が自分の利益にできる保証はない。
国内の人口は減り、金融は成熟している。SBI 証券のような大口が内製や他社へ動けば、売上の穴は大きい。顧客は多重下請けを嫌うが、金融システムには野村総合研究所や TIS のような強い競合もいる。
過去には利益が大きく振れた。2020 年 3 月期の営業利益率は 5% 未満だった。直近の高い利益率は、人手不足で単価が上がる局面の産物かもしれない。創業者への依存も重い。web3 は収益の見通しが示されていない。
中計の売上目標は買収を含まず、人を採って育てる一本道だ。採用が計画に届かなければ、売上の伸びはそのまま鈍る。人員の拡大と単価の維持を両立させる難しさは、数字の見た目より重い。
さらに、今の利益は 20% 台の高い成長と高い利益率を前提にした値段を背負っている。どちらかが崩れただけで、倍率が大きく縮む。人員の拡大と単価の維持を両立させる難しさは、数字の見た目より重い。
どちらに重みを置いたか
強気は元請けの一気通貫と25%近い利益率、会社の言うAIでの利益率向上を言い、慎重は顧客も同じ道具を使うので工数の値段が下がることを言う。高利益率ほど落差が大きく、慎重の言い分を重く取った。やや悲観と悲観の確率は41%、差は-75%。強気が当たるのは、AI開発の利益率向上が決算で数字として確認された時だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 518 円1,159 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 221 円496 億円)。 今の値に割り戻すと 405 円908 億円、今との差 −68.4%、 期待の年率 −5.4%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 869 円1,945 億円 | 291 円651 億円 | −9.6% | −1.0% | 70 円156 億円 |
| やや楽観 | 19% | 720 円1,613 億円 | 257 円576 億円 | −23.7% | −2.7% | 186 円416 億円 |
| 中立 | 34% | 620 円1,389 億円 | 237 円531 億円 | −33.1% | −3.9% | 292 円653 億円 |
| やや悲観 | 26% | 377 円844 億円 | 195 円437 億円 | −55.4% | −7.8% | 149 円333 億円 |
| 悲観 | 15% | 132 円296 億円 | 158 円354 億円 | −77.4% | −13.8% | 43 円97 億円 |
| 加重平均 | 100% | 518 円1,159 億円 | 221 円496 億円 | −42.4% | −5.4% | 739 円1,655 億円 |
今の株価時価総額 1,282 円2,871 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 元請けの強みが効き、AIで利益率を保つ 利益 129 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 869 円1,945 億円
会社の言うとおり、生成AIで開発の利益率を保ち、AIを組み込んだ開発を成果報酬で受ける筋書き。金融向けは数量が今の0.91倍、価格1.37倍、利益率26%。ただしAIを自社の売り物にして金額が出ている開示は確かめられないので、数量は今以上には置かない。 内訳は金融向け=数量0.91倍・価格1.37倍・利益率26.1%、非金融向け=数量0.94倍・価格1.36倍・利益率20.9%。 この筋書きの確率は6%。結果は、売上が今の1.26倍の737億円、営業利益180億円、純利益129億円、自己資本1,038億円、10年の還元651億円、時価総額1,725億円(PER13.33倍)。
- 金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用):数量 1,210(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 4,040(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 489 億円・営業利益 128 億円。数量0.91倍・価格1.37倍・営業利益率26.1%(人月型)
- 非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX):数量 665(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,737(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 248 億円・営業利益 52 億円。数量0.94倍・価格1.36倍・営業利益率20.9%(人月型)
倍率:事業の純利益 129 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.3%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,725 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社はAIで利益率を5ポイント上げると言うが、金額で売上が出た開示は無く、数量は今以下。6%。
やや楽観 19% 証券・銀行の更新が続き、一部が成果報酬へ 利益 102 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 720 円1,613 億円
証券・銀行・取引所のシステム更新が続き、一部が成果報酬へ移る。金融向けは数量0.78倍・価格1.32倍、非金融向けは数量0.81倍・価格1.31倍。エンジニアの数は緩やかに減り、残る仕事の単価は物価並みに上がる。 内訳は金融向け=数量0.78倍・価格1.32倍・利益率24.9%、非金融向け=数量0.81倍・価格1.31倍・利益率20.0%。 この筋書きの確率は19%。結果は、売上が今の1.04倍の612億円、営業利益142億円、純利益102億円、自己資本977億円、10年の還元576億円、時価総額1,365億円(PER13.33倍)。
- 金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用):数量 1,043(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,889(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 406 億円・営業利益 101 億円。数量0.78倍・価格1.32倍・営業利益率24.9%(人月型)
- 非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX):数量 573(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,597(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 206 億円・営業利益 41 億円。数量0.81倍・価格1.31倍・営業利益率20.0%(人月型)
倍率:事業の純利益 102 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,365 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:金融システムの更新が続く筋書き。19%。
中立 34% 基幹開発の一部をAIが肩代わりする 利益 86 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 620 円1,389 億円
金融の基幹開発をAIエージェントが肩代わりし、エンジニアの数が減る。同じ道具を顧客も使うので、単価は物価に届かず利益率も下がる。金融向けは数量0.70倍・価格1.28倍、利益率24.2%。非金融向けも数量0.72倍。SBI証券など大口への偏りは続く。 内訳は金融向け=数量0.70倍・価格1.28倍・利益率24.2%、非金融向け=数量0.72倍・価格1.27倍・利益率19.4%。 この筋書きの確率は34%。結果は、売上が今の0.90倍の530億円、営業利益120億円、純利益86億円、自己資本941億円、10年の還元531億円、時価総額1,149億円(PER13.33倍)。
- 金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用):数量 931(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,776(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 352 億円・営業利益 85 億円。数量0.70倍・価格1.28倍・営業利益率24.2%(人月型)
- 非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX):数量 511(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,493(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 179 億円・営業利益 35 億円。数量0.72倍・価格1.27倍・営業利益率19.4%(人月型)
倍率:事業の純利益 86 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 0.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 1,149 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:基幹開発の一部が置き換わる中心の筋書き。34%。
やや悲観 26% 金融機関の内製化で、元請け案件が減る 利益 52 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 377 円844 億円
顧客の金融機関がAIエージェントで内製し、元請けの案件が減る。金融向けの数量は0.59倍、価格は1.22倍。高い人件費が利益を削り、利益率は18.1%に落ちる。非金融向けの伸びでも穴は埋まらない。 内訳は金融向け=数量0.59倍・価格1.22倍・利益率18.1%、非金融向け=数量0.61倍・価格1.21倍・利益率14.6%。 この筋書きの確率は26%。結果は、売上が今の0.73倍の428億円、営業利益72億円、純利益52億円、自己資本865億円、10年の還元437億円、時価総額696億円(PER13.33倍)。
- 金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用):数量 791(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,587(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 284 億円・営業利益 52 億円。数量0.59倍・価格1.22倍・営業利益率18.1%(人月型)
- 非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX):数量 435(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,318(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 144 億円・営業利益 21 億円。数量0.61倍・価格1.21倍・営業利益率14.5%(人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg0.00%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.5%+-0.00%)=13.33倍(事業のROE6.0%、RONICは使わない)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:金融機関の内製化の筋書き。26%。
悲観 15% AIエージェントが開発の大半を置き換える 利益 22 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 132 円296 億円
AIエージェントが開発の大半を置き換え、売上は今の半分前後に縮む。高い利益率は崩れて10.9%となり、金融一業界への偏りが響く。純現金は小さく、床は稼ぐ力そのものに近い。会社が掲げる利益率の向上は実現せず、人を抱える固定費だけが残る。 内訳は金融向け=数量0.45倍・価格1.13倍・利益率10.9%、非金融向け=数量0.47倍・価格1.12倍・利益率8.7%。 この筋書きの確率は15%。結果は、売上が今の0.52倍の303億円、営業利益31億円、純利益22億円、自己資本798億円、10年の還元354億円、時価総額296億円(PER13.31倍)。
- 金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用):数量 605(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,323(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 201 億円・営業利益 22 億円。数量0.45倍・価格1.13倍・営業利益率10.9%(人月型)
- 非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX):数量 332(エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人))× 価格 3,073(1 人あたり年間売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 9 億円。数量0.47倍・価格1.12倍・営業利益率8.7%(人月型)
倍率:10年より先の名目の伸びg0.00%(人月は0%・席は0〜−1%。実質の縮みは10年の数量に入れ済み)で、利益を全部株主に分ける形の正当化PER=1÷(k−g)=1÷(8.5%+-0.00%)=13.31倍(事業のROE2.8%、RONICは使わない)。AIエージェント代替はgと別に数量・k・確率へ入れ済みで、PERの上に割引は重ねない。
確率:開発の大半が置き換わる筋書き。高利益率ほど落差が大きいので15%、合わせて41%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金融向け(キャピタルマーケット・金融リテール・運用)
証券・銀行・取引所の基幹システムの開発と、稼働後の運用保守。SBI 証券、東京金融取引所、メガバンクなど。
| 数量エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,330 | 2,950 | 392 | 102 |
| 10 年後 中立 | 931 | 3,776 | 352 | 85 |
取り方:全社の売上 587 億円から、戦略・DX コンサル 108 億円とエンタープライズ DX 87 億円(非金融の目安)を引いて 392 億円とした。開示は人数・利益を金融別に出さないため、全社の 1 人あたり売上 2,879 万円から人数を逆算し、営業利益率 26% は推定。数量は実物(エンジニア・コンサルタントの人数)で、採用で人員を増やす事業の事実による。名目の市場の伸びを数量に置いたものではなく、物価は 1 人あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。 【AIエージェント代替の見直し】金融向け(売上392億円、67%)は証券・銀行・取引所の基幹システムの開発と運用保守で、人月型。中立で数量0.70倍・価格1.28倍、利益率は26%から24%へ。
非金融向け(戦略・DX コンサル、エンタープライズ DX)
クロスピアを中心とする戦略・DX コンサルと、官公庁・事業会社の基幹システム。伸びが速い領域。
| 数量エンジニア・コンサルタントの期中平均人数(人) | 価格1 人あたり年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 710 | 2,750 | 195 | 42 |
| 10 年後 中立 | 511 | 3,493 | 179 | 35 |
取り方:戦略・DX コンサル 108 億円とエンタープライズ DX 87 億円の合計 195 億円。全社の平均人数約 2,040 人から金融分を引いて 710 人とした。営業利益率 21.5% は推定(コンサルの粗利率が高く、DX が立ち上がり中で全社平均よりやや低いと置いた)。数量は実物(エンジニア・コンサルタントの人数)で、伸びの速い非金融向けに人員を振り向ける事業の事実による。名目の市場の伸びは置いておらず、物価は 1 人あたり売上の 1.34 倍だけで見ている。 【AIエージェント代替の見直し】非金融向け(売上195億円、33%)は戦略・DXコンサルと官公庁・事業会社の基幹システムで、人月型。中立で数量0.72倍・価格1.27倍。
リスクと懸念
AIエージェント代替(高利益の人月型)
シンプレクスの売上は、エンジニアとコンサルの人数に単価を掛けた人月型で、利益率は25%近い。AIエージェントが基幹開発を肩代わりし、発注する金融機関も同じ道具を使えば、工数に値段を付ける商売は値下げ圧力を受ける。中立の売上は今の0.90倍、悲観では0.52倍とした。
金融 1 業界と大口顧客への偏り
売上の約 3 分の 2 が金融向けで、SBI 証券や東京金融取引所など大口の比重が高い。大口が内製や他社に動いたり、暗号資産・取引所まわりの規制が変わったりすると、売上と稼働率が一度に振れる。
人材の確保と定着
売上の伸びは採用と育成で決まる。毎年 500 人規模を採る計画で、新人の比率が上がると 1 人あたり売上や品質が下がりやすい。賃金の上昇や転職で人が抜けると、単価の高さを保てない。
創業者への依存
創業者の金子英樹氏は社長で大株主でもある。経営の方向が一貫する反面、後継や大口売却の行方が不透明で、需給と意思決定の両面で重しになりうる。
web3 と研究開発の投資が実らない
年 35 億円ほどを生成 AI と web3 に投じる計画だが、web3 の収益計画は示されていない。前半 2 年の投資が収穫期に回収できないと、利益率の目標は届かない。
競合の強さと単価の上昇が止まる
野村総合研究所や TIS、外資系コンサルなど、金融システムに強い競合は多い。人手不足による単価上昇が止まれば、高い 1 人あたり売上は守れなくなる。
今後の分かれ目
- AI 前提の開発で工数が減っても、固定価格や成果型の契約で利益率が上がる
- AI は追い風になり、楽観と中立の確率が増える。1 人あたり売上が物価を超えて伸び、利益率は 28% 超が視野に入る。
- AI による工数削減が顧客への値下げとして出始める
- 人月の商売の構造が崩れる流れで、やや悲観以下の確率が増す。人員は増えても売上は伸びない。
- SBI 証券など大口の発注が内製や他社に移る
- 金融向けの売上に穴が開き、稼働率が落ちる。悲観の筋書きに近づく。
- web3 や非労働集約の事業が、具体的な売上と利益を出し始める
- 人の数に縛られない収益が加わり、利益率の上限が上がる。現時点では評価に入れていない上振れ。
- 後半の収穫期に、還元が厚くなる(配当性向の引き上げや自社株買い)
- 自己資本が増えにくく ROE が高いまま保たれ、株主に回る利益が増える。
- 創業者の大口売却や後継の問題が表に出る
- 需給が悪化し、経営の一貫性にも疑問が出る。事業価値は変わらないが、評価に影響する。
- AIを使った開発で利益率が上がったことが、決算で数字として確認されたら
- 楽観の確率を上げ、利益率の前提を見直す。
- SBI証券など大口顧客の更新計画が縮小・内製化に傾いたら
- やや悲観と悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 四半期ごとの 1 人あたり売上と営業利益率の推移(AI で上がるか)
- エンジニア・コンサルタントの人数と、新卒・中途の採用実績
- 固定価格・成果型の契約の比率と、AI-Native Delivery の対象案件の広がり
- SBI 証券・東京金融取引所など大口顧客の発注の継続
- web3 事業の具体的な収益計画の開示
- エンジニア1人当たり売上と稼働率、大口顧客の発注額
倍率と資本コストの決め方
倍率は10年先の名目の伸びg=0%の式 1÷(k−g) で出し、過去のPERや同業の値付けは使っていない。kは基本7.5%に循環+0.25%・寿命+0.75%(人月の下限寄り)を足した8.50%。AI代替は数量・利益率に主に入れ、確率とgで重ねなかった。今の株価との差は狙っていない。リース会計の形は今と同じ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.76→13.33 倍・やや楽観 PER 11.76→13.33 倍・中立 PER 11.76→13.33 倍・やや悲観 PER 11.76→13.33 倍・悲観 PER 11.76→13.31 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に優良度 +0.25% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。