結論
マクドナルドは、世界 100 か国超に 4.5 万店を持つ世界最大のハンバーガーチェーンで、店舗の約 95% を独立の加盟店が運営し、本社は加盟店からの家賃とロイヤルティ(売上連動)で稼ぐ。2025 年(12 月期)は売上 269 億ドル、営業利益 124 億ドル(営業利益率 46.1%)、純利益 86 億ドル。2026 年 4〜6 月期は、世界の既存店が +1.3%(前年同期 +3.8%)まで鈍り、米国は +0.8%で、7 月はわずかにマイナス。客単価の値上げが、低所得層の客数減(約 2 年、ほぼ 2 桁減)を相殺している状態である。
事業の質は非常に高い。土地・建物の所有と家賃、世界の調達と広告、約 2.2 億人のデジタル会員は、新規の参入者が追いつけない堀になる。ただし本社の利益は加盟店の収益の上に乗っていて、加盟店の利益率が薄くなれば、本社は家賃の軽減(2036 年までに 85 億ドルと報じられる)で支えざるをえない。自己資本はマイナス(自社株買いの累積)で、純負債は 540 億ドルある。
バリュー投資の観点では、事業を理解でき、10 年後も存在し、堀も広い。一方で、利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。土地とブランドの堀が強いので 2/3)に、成長 3.5%・事業の ROE 約 33%(投下資本利益率 約 19% に借入を乗せた値)・資本コスト 7.5%(基本 8.0% から強い堀の下げ 0.5%)を入れると、上限は約 22 倍で、その 9 割が約 20 倍になる。事業ごとに店舗数と 1 店あたりの自社収益から積み上げると、10 年後の中立は純利益 141 億ドル、時価総額は約 2,810 億ドル。今の 1,741 億ドルの 1.6 倍になり、配当を足した年率は +8% で、資本コスト 7.5% を上回る。客数の弱さと加盟店の収益という懸念を確率で厚く織り込んだ総合は、今の値段をやや上回る適正。k − g が 4% と薄めで、倍率は k に敏感な点には注意が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。マクドナルドは、安く、早く、どこでも同じ味で食べられるという習慣を 70 年かけて築いた事業で、わからなさは小さい。不動産・規模・ブランド・デジタルという堀は、10 年後も存在し、むしろ広がる可能性が高い。
次にオーナー利益。純利益 86 億ドルに償却を足し、設備投資(2026 年 37〜39 億ドル)を引いたフリーキャッシュフローは 72 億ドル、株式報酬(約 3 億ドル、推定)を引くと約 69 億ドルで、今の時価総額 1,741 億ドルに対する利回りは約 4.0%で、10 年国債 5% を下回るが、国債の利回りは物価 3.5% を引くと実質 1.5% 前後で、物価に連動して上がる家賃を持つこの事業の実質の利回りは 4.0% + 成長(実質 1〜1.5%)。配当の利回りは約 2.9%で、成長 5% 前後を足して 8〜9% が期待のリターンで、資本コスト 7.5% を上回る。
資本配分は、自己資本をマイナスにするほど自社株買いを積み上げたが、近年は減速し、設備投資も 2027 年以降に下げる方針。良い面は、売上連動の家賃で物価を価格に転嫁できる点。悪い面は、加盟店の収益が薄い中で、本社が家賃の軽減で支えていること。本社の安定した利益は、加盟店の収益という見えにくい土台に乗っている。
安全域は、資本コスト 7.5% で見ても中立の筋書きには余裕がある。ただし k − g の幅が小さく、倍率が k に敏感なので、悲観の筋書き(客数の減少が続き、加盟店の収益が崩れる)を確率で厚くして見る必要がある。わかる事業で、堀は広い。値段は、客数の弱さを織り込んだうえで妥当より安く、大きく買うかどうかは加盟店の収益の動きを見て決める。
何で稼ぐ会社か
マクドナルドの収益は 3 つの地域に分かれる。第 1 は米国(約 1.36 万店、売上 約 109 億ドルと推定)。ほぼ全店が加盟店で、本社は店舗の土地・建物を持ち、加盟店から家賃と売上の約 4〜5% のロイヤルティを受け取る。米国は本社の営業利益の約 5 割弱を稼ぐ中核で、営業利益率は 50% を超える(推定)。第 2 は海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダ・オーストラリア・イタリア・スペイン・ポーランド・オランダなど、約 1.04 万店、売上 約 105 億ドルと推定)。この地域は直営店の売上(2025 年の全社で直営売上は約 98 億ドル)が混じるため、売上は大きいが営業利益率は 40% 台前半に下がる。第 3 は開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど、約 2.1 万店、売上 約 55 億ドルと推定)。現地の事業者にライセンスを与えロイヤルティを取るため、売上は小さいが営業利益率は 55% 前後と高い。
本社の収益構造は、①家賃(加盟店の売上に連動する歩合の家賃。売上のほぼ半分強)、②ロイヤルティ(売上の約 4〜5%)、③直営店の売上(約 5% の店舗)、④その他。営業利益率が 46% と、飲食業とは思えない高さになるのは、仕入れと人件費を加盟店が負い、本社は不動産と商標を貸す事業だから。投資の負担も、店舗の土地・建物(本社が保有する分)に限られる。
2026 年の設備投資は 37〜39 億ドルで、大半が新規の出店。開店は約 2,600 店(純増 約 2,100)。2027〜30 年は年 約 30 億ドルに下げる計画。販管費はシステム売上(加盟店を含む全店の売上)の約 2.2%で、2030 年に約 1.9% を目標にする。セグメントごとの売上・営業利益・店舗数は開示が薄く、how に推定の方法を書いた。
優良さと弱いところ
堀は 5 つある。第 1 は不動産で、店舗の土地・建物の多くを本社が持ち、家賃が売上に連動して物価と一緒に上がる。第 2 は規模で、世界 4.5 万店が仕入れ・広告・技術の費用を分け合い、小さな競合に真似できない。第 3 はブランドと立地で、「迷ったらマクドナルド」の習慣と、好立地の店舗網。第 4 はデジタルで、約 70 市場で会員 約 2.2 億人(直近 90 日に利用)、会員経由の売上は年 400 億ドルを超える。第 5 は加盟店の運営力で、世界約 95% の店が独立の経営者による運営で、本社は人件費と食材費の変動を負わない。
資本効率は非常に高い。営業利益率は過去 12 期で 28.9% から 46.1% へ上がり、2008 年前後の底(22〜27%)より大幅に高い。ROE は自己資本がマイナスで意味がなく、投下資本(純負債 + 自己資本)で見ると、税引き後の営業利益 約 99 億ドル ÷ 約 520 億ドル = 約 19%。経営はクリス・ケンプチンスキーが 2019 年から率い、店舗の全体を「Accelerating the Organization」で再編中。
弱みは 3 つ。(1)低所得層の客数が約 2 年減り、客単価の上昇で穴を埋める形が続く。(2)加盟店の収益が人件費と食材費の上昇で薄く、本社は家賃の軽減と投資の分担で支える(2036 年まで 85 億ドル)。本社の優良さは加盟店の健康に依存する。(3)自己資本がマイナスで、純負債は 540 億ドル。利息の負担は借り換えで増える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の外食・フードサービスの売上は 2026 年に約 1.5 兆ドル(前年比 +4.3%、実質 +0.8%)で、成長の大半は価格。客数は不均一で、運営者の半分超が 2025 年に客数が減ったと答えている。米国の外食価格は USDA が 2026 年に +3.6% を予想する。景気の二極化(K 字)が顕著で、高所得層は旅行・外食を維持する一方、低所得層はガソリン・食料・家賃の値上がりで外食の回数を減らし、同じ四半期にロス・ストアーズの来店は増え、マクドナルドの来店は減る。
ファストフードの競争は、バリュー(安さ)の取り合い。ウェンディーズは米国の既存店 −7%、ウィングストップ −7.5% と同業も苦しむ中で、スターバックスは世界の既存店 +6.2% と立て直し、チポトレは来店 +4.7%。マクドナルドは 2025 年 9 月に Extra Value Meals を全国で再開し、加盟店と費用を折半したが、推奨の 3 ドル未満メニューを実施した店は 6〜7 割にとどまり、一部の加盟店は個別の商品の値段を上げて価値の印象を損ねた。ほかに、チックフィレイ・バーガーキング・サブウェイ・ドアダッシュなど配達アプリの手数料も、加盟店の収益を圧迫する。
循環のどこにいるか:客数は 2 年下がる局面で、景気の底ではない。ただし外食の大手は不況に強く、2008〜09 年にマクドナルドの株価は −15% にとどまった(低価格が逆に客を集めた)。業界ノートの置き方(米国の外食 年 +4.5%、客単価 +3.5%、客数 +0.5〜1%、フランチャイズの営業利益率は 40% 前後で横ばい)を使い(倍率は業界ノートの値でなく式で出す)、マクドナルドを特別に強く・弱くは見ていない。業界ノートは 4〜6 月の米国の来店を −4.5% とし、本社の発表は既存店 +0.8% で、差は客単価の上昇による。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買い。2025 年は配当 51 億ドル、自社株買い 21 億ドルで、純利益 86 億ドルのほぼ全額を戻し、株数は −0.7% の減少にとどまる(2016 年の自社株買い 112 億ドルのころより大きく減速)。配当は 49 年連続の増配を続けている(推定)。自己資本はマイナスで、純負債は 540 億ドル、借り換えで利払いが増える(10 年で −9 億ドル、推定)。
M&A は小さい。2019 年にイスラエルとブラジルの一部で直営を買い戻し、開発ライセンス市場への移行(日本・中国などの持分売却)を進めた。2026 年の Investor Day では、直営から加盟店への移行(約 95% → 2028 年に約 98%)、加盟店支援 85 億ドル(家賃軽減と資本の分担)、設備投資を 2027 年以降 年 約 30 億ドルに下げる計画が示された(第三者の要約)。大型の買収で価値を壊す心配は小さく、むしろ論点は、加盟店への支援がどこまで膨らむか、と、自社株買いを割高な局面で続けていないか。独占禁止法の面で、ほかの外食チェーンを買う余地は小さく、買われる可能性もほぼない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
マクドナルドの客数の落ち込みは、低所得層に偏った景気の問題と、本社が自ら認めた実行の問題(3 ドル未満メニューの実施率 6〜7 割、デジタル販促の絞り込み)で、ブランドの問題ではない。実行は直せる。全国のデジタル販促は再開され、約 2.2 億人の会員は今も +13% で増えている。2026 年 4〜6 月期の既存店は +1.3% と鈍いが、営業利益率は 47.0% と前年とほぼ同じで、加盟店の収益が本社の利益を壊してはいない。
Investor Day で示された目標は、店舗の純増 年 3〜3.5%(2027 年は 4.5% 超)、営業利益率を 2030 年に 50% 台前半へ、本社の管理費は売上比 2.2% → 1.9%、設備投資は 2027 年から年 約 30 億ドルに下がる。これで FCF 転換率は 80% 台半ば〜後半に上がり、配当と自社株買いの原資が増える。米国の 1 店あたり年 約 10 万ドルの効率化(レストラン段階で 250bp)は、加盟店の収益を直接押し上げる。
不動産と家賃は物価に連動して上がり、不況にも強い(2008〜09 年の株価は −15%)。世界の開発ライセンス市場は店舗の純増が続き、ロイヤルティの収入は初期の投資なしで増える。10 年で純利益は今の 1.6〜1.9 倍(年 +5〜6.8%)、倍率が利益ベースで 20 倍前後(g 3.5%・k 7.5%・ROE 33%)なら、配当を足して年率 +8〜10% に届く。
慎重な見方
客数が約 2 年下がり、7 月の既存店はわずかにマイナス。本社は「インフレと客数の横ばいが前提で、変わらない」と認めており、売上は値上げで支えるだけの形になる。低所得層の客数は「ほぼ 2 桁減」で、バリューメニューでも戻らない。2026 年の株価は 52 週安値をつけ、2027 年の EPS 予想の下方修正が続いている。
加盟店の収益が最大の脅威。人件費・食材費の上昇、デジタル配達の手数料、バリューメニューの値引き(本社と加盟店の折半)で、加盟店は薄利になる。2036 年までの家賃軽減(85 億ドル)は、本社の利益を直接削る支出で、会社の営業利益率の目標(2030 年に 50% 台前半、2025 年は 46.9%)と整合しにくい。目標は第三者の要約でもあり、達成が遅れる前科もある(5 万店の目標は 1 年遅れた)。
自己資本がマイナスで、純負債は 540 億ドル。5% の金利が続く世界で借り換えが利益を削る。GLP-1(肥満治療薬)の普及は、1 人あたりの食事量を 3〜5% 下げ、ファストフードに逆風。k − g は 4% と薄めで、k が 0.5 ポイント上がるだけで上限は約 22 倍から 20 倍へ下がる。倍率が k に敏感で、割引を甘く見ていれば本質価値は大きく狂う。
どちらに重みを置いたか
事業の質と堀は強気の見方が強いが、今の客数の傾向と加盟店の収益は慎重な見方が強い。確率は中立を 40% で最も厚くし、楽観・やや楽観を 30%、やや悲観・悲観を 30% とほぼ均等に置いた。10 年の中立は PER 約 20 倍(g 3.5%・ROE 33%〔投下資本利益率 19% に借入 1 倍〕・k 7.5%、利益ベースの上限の 90%。客数の弱さは g と利益率に入れ、式の外では引かない)、年率 +8% 前後で、資本コスト 7.5% を上回る。結論は「優良な事業で、客数の弱さを織り込んでも今の値段はやや安い適正。ただし倍率の前提(k − g の薄さ)に注意」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 365.15 ドル2,616 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 124.57 ドル892 億ドル)。 今の値に割り戻すと 263.94 ドル1,891 億ドル、今との差 +4.5%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 467.14 ドル3,347 億ドル | 153.55 ドル1,100 億ドル | +145.7% | +9.4% | 49.65 ドル356 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 431.43 ドル3,091 億ドル | 142.38 ドル1,020 億ドル | +127.1% | +8.5% | 126.24 ドル904 億ドル |
| 中立 | 40% | 392.64 ドル2,813 億ドル | 131.91 ドル945 億ドル | +107.6% | +7.6% | 209.82 ドル1,503 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 301.55 ドル2,160 億ドル | 106.09 ドル760 億ドル | +61.4% | +4.9% | 81.53 ドル584 億ドル |
| 悲観 | 10% | 154.98 ドル1,110 億ドル | 69.79 ドル500 億ドル | −11.0% | −1.2% | 22.48 ドル161 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 365.15 ドル2,616 億ドル | 124.57 ドル892 億ドル | +93.8% | +6.8% | 489.72 ドル3,508 億ドル |
今の株価時価総額 252.63 ドル1,810 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:Investor Day の目標がほぼ実現し、営業利益率が 50% に近づく 利益 166 億ドル · PER 20.2 倍 · 株価時価総額 467.14 ドル3,347 億ドル
客数が回復し、米国の既存店は年 +4% 台。海外の出店が 2030 年まで年 3〜3.5%、その後 2.5% で、店舗は 2035 年に約 6.1 万店。加盟店の収益が 1 店あたり約 50 万ドルまで戻り(会社の目標)、家賃の軽減は一時的で終わり、米国の営業利益率は 55.5%、本社の管理費は売上比 1.9%。デジタル会員(今は約 2.2 億人)と配達・広告・決済の収益も重なる。営業利益 244 億ドル(営業利益率 49.5%)、純利益 166 億ドル。借り換えで利払いは約 20 億ドル増えるが織り込み。
- 米国(ほぼ全店が加盟店):数量 16,000(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 179 億ドル・営業利益 99 億ドル。米国の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど):数量 13,800(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 202 億ドル・営業利益 93 億ドル。海外直営の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど):数量 31,500(店舗数(店))× 価格 0.00(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 112 億ドル・営業利益 66 億ドル。開発ライセンスの店舗数と 1 店あたり自社収益
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.5%(米国の実質 0.5%+海外の出店 1.0%+価格 3.5%)・事業の ROE 35.3%(ROIC から直した値。帳簿の自己資本は薄く、業界並みの借入 1 倍を乗せた)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 26.0%、10 年目より先の正当化 PER 21.6 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 22.4 倍。利益の質が高く、客数が戻る側なので上限の 90% に置き 20.2 倍。
確率:会社の目標(2030 年に営業利益率 50% 台前半)は第三者の要約で確認が弱く、客数の回復も必要。両方が揃う確率は低く 8%。
やや楽観 22% やや楽観:店舗と客単価で堅実に伸び、利益率は 48% 前後 利益 154 億ドル · PER 20.1 倍 · 株価時価総額 431.43 ドル3,091 億ドル
米国の客数は横ばいから微増、客単価は物価並みで既存店は年 +3.5%。店舗は 2035 年に約 6.0 万店。加盟店支援の家賃軽減は 2036 年までの 85 億ドルの大半を使うが、効率化(レストラン段階で 250bp)で加盟店の収益は保たれる。米国の営業利益率は 53.8%、海外直営 44.8%、開発ライセンス 58%。営業利益 228 億ドル(営業利益率 48.1%)、純利益 154 億ドル。海外直営の英国・ドイツ・フランス・ポーランドなどで出店が続き、開発ライセンスではインドや東南アジアなどの新興国でロイヤルティが増える。借り換えで利払いは約 9 億ドル増える分を引いた。還元は 10 年で 1,020 億ドル。
- 米国(ほぼ全店が加盟店):数量 15,800(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 173 億ドル・営業利益 93 億ドル。米国の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど):数量 13,500(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 194 億ドル・営業利益 87 億ドル。海外直営の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど):数量 30,800(店舗数(店))× 価格 0.00(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 107 億ドル・営業利益 62 億ドル。開発ライセンスの店舗数と 1 店あたり自社収益
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.5%(客数と出店は少し弱く 0.3%+0.7%+価格 3.5%)・事業の ROE 34.2%(ROIC から直した値。帳簿の自己資本は薄く、業界並みの借入 1 倍を乗せた)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 25.3%、10 年目より先の正当化 PER 21.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 22.3 倍。利益の質が高い(需要が安定し景気で利益がほとんど振れない)ので上限の 90% に置き 20.1 倍。
確率:世界最大の外食チェーンで、不動産・規模・デジタルの堀は広がる側と見て、22%。
中立 40% 中立:優良な成熟チェーンとして名目 +5% で伸び、倍率は平常化 利益 141 億ドル · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 392.64 ドル2,813 億ドル
店舗は 2030 年まで年 3% 台、その後 2% 台で 2035 年に約 5.9 万店。1 店あたり自社収益は米国で 10 年 1.33 倍(物価 1.41 倍より低い。家賃軽減とバリュー競争で)、海外直営 1.40 倍、開発ライセンスは小さい市場の比率が高まり 1.30 倍。売上は 456 億ドル、営業利益 212 億ドル(営業利益率 46.5%)、純利益 141 億ドル。借り換えで利払いが約 9 億ドル増え、負債の増加も加わって利払いは約 36 億ドル。還元は純利益の約 8 割強(配当と自社株買い、株式報酬の分を差し引く)で 945 億ドル。
- 米国(ほぼ全店が加盟店):数量 15,600(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 166 億ドル・営業利益 86 億ドル。米国の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど):数量 13,300(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 188 億ドル・営業利益 82 億ドル。海外直営の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど):数量 30,100(店舗数(店))× 価格 0.00(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 102 億ドル・営業利益 58 億ドル。開発ライセンスの店舗数と 1 店あたり自社収益
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.5%(市場の実質 0%+シェア 0%+価格 3.5%)・事業の ROE 32.9%(ROIC から直した値。帳簿の自己資本は薄く、業界並みの借入 1 倍を乗せた)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 24.4%、10 年目より先の正当化 PER 21.4 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 22.2 倍。利益の質が高い(需要が安定し景気で利益がほとんど振れない)ので上限の 90% に置き 19.9 倍。
確率:業界ノートの中立(フランチャイズは店舗 年 +3〜5%、営業利益率 40% 前後で横ばい)に、加盟店への家賃軽減の分を引いた置き方。倍率は業界ノートでなく式で出す。
やや悲観 20% やや悲観:加盟店の収益悪化と GLP-1 で出店が鈍り、利益率が 44% 台へ 利益 114 億ドル · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 301.55 ドル2,160 億ドル
米国の客数が年 −0.5% で、バリュー競争により客単価は物価より低い +2.8%。加盟店の収益が 1 店あたり約 30〜40 万ドルに低下し、出店の純増は年 +2% に落ちて店舗は 2035 年に約 5.7 万店。家賃軽減が加盟店の維持に膨らみ、米国の営業利益率は 48.5%。GLP-1(肥満治療薬)の普及で 1 人あたりの食事量が 3% 減る影響が売上を削る。営業利益 183 億ドル(営業利益率 43.7%)、純利益 114 億ドル。還元は配当が中心で 760 億ドル。加盟店の支援で本社の利益の伸びが止まり、借り換えの利払いも重いが、ロイヤルティと家賃の収入は売上に連動して残る。
- 米国(ほぼ全店が加盟店):数量 15,200(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 152 億ドル・営業利益 74 億ドル。米国の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど):数量 12,900(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 175 億ドル・営業利益 72 億ドル。海外直営の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど):数量 28,800(店舗数(店))× 価格 0.00(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 92 億ドル・営業利益 51 億ドル。開発ライセンスの店舗数と 1 店あたり自社収益
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.3%(客数 −0.5%+出店 0.3%+価格 3.5%)・事業の ROE 30.6%(ROIC から直した値。帳簿の自己資本は薄く、業界並みの借入 1 倍を乗せた)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 22.9%、10 年目より先の正当化 PER 20.4 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 21.1 倍。客数の弱さで成長が鈍る側なので上限の 90% に置き 18.9 倍。
確率:加盟店の利益と低所得層の外食離れは構造に近く、20%。出店の鈍化と利益率の低下が重なる筋書き。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(加盟店の収益が崩れ、GLP-1 と低所得層の離脱で堀が狭まる) 利益 73 億ドル · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 154.98 ドル1,110 億ドル
加盟店の収益が回復せず、閉店が増えて店舗の純増が止まり 2035 年は約 5.3 万店。米国の客数が累積 −15%、GLP-1 の普及で 1 人あたりの食事量が −4〜5% 下がり、ウェンディーズ・バーガーキング・チックフィレイ・ドアダッシュなど宅配との価格競争で客単価は物価を大きく下回る。家賃軽減は 85 億ドルを超えて恒久化し、米国の営業利益率は 42% に下がる。営業利益 135 億ドル、純利益 73 億ドル(今の約 85%)。借金は 600 億ドル前後に増え、利払いは約 40 億ドル。配当は据え置いて自社株買いを止め、還元は 500 億ドル。借金の重さは利払いとして純利益に入れた)。
- 米国(ほぼ全店が加盟店):数量 14,500(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 130 億ドル・営業利益 55 億ドル。米国の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど):数量 12,300(店舗数(店))× 価格 0.01(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 152 億ドル・営業利益 55 億ドル。海外直営の店舗数と 1 店あたり自社収益
- 開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど):数量 26,500(店舗数(店))× 価格 0.00(1 店あたりの本社の収益(億ドル))→ 売上 76 億ドル・営業利益 38 億ドル。開発ライセンスの店舗数と 1 店あたり自社収益
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 2.5%(客数の減少で実質 −1.5%+価格 3.5%+出店 0.5%)・事業の ROE 25.8%(ROIC から直した値。帳簿の自己資本は薄く、業界並みの借入 1 倍を乗せた)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 19.7%、10 年目より先の正当化 PER 17.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 17.9 倍。成長が止まり、加盟店の収益が崩れた側なので上限の 85% に置き 15.2 倍。
確率:10 年の構造変化で優良さを失う確率として 10%。堀(不動産・規模)が厚く、全部が同時に崩れる確率は低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国(ほぼ全店が加盟店)
米国の店舗。本社は家賃とロイヤルティを受け取る。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの本社の収益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13,600 | 0.01 | 109 | 58 |
| 10 年後 中立 | 15,600 | 0.01 | 166 | 86 |
取り方:米国の店舗数 約 1.36 万店(推定)に、本社の売上 約 109 億ドル(推定)を割って 1 店あたり約 80 万ドル。営業利益は本社の費用の配分前で 58 億ドル(営業利益率 53%)と置き、全社の本社費を adjust で引く。開示が薄く推定。
海外直営市場(英国・ドイツ・フランス・カナダなど)
直営店が混じる先進国の市場。売上は大きく、営業利益率は低め。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの本社の収益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10,400 | 0.01 | 105 | 45 |
| 10 年後 中立 | 13,300 | 0.01 | 188 | 82 |
取り方:店舗 約 1.04 万店(推定)に、直営売上を含む本社の収益 約 105 億ドル(推定)を割って 1 店あたり約 101 万ドル。営業利益率 43%(推定)。
開発ライセンス市場(中国・日本・インド・ブラジルなど)
現地事業者へのライセンス。ロイヤルティ中心で資産が軽い。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたりの本社の収益(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 21,000 | 0.00 | 55 | 31 |
| 10 年後 中立 | 30,100 | 0.00 | 102 | 58 |
取り方:店舗 約 2.1 万店(推定)に、ロイヤルティ・その他の収益 約 55 億ドル(推定)を割って 1 店あたり約 26 万ドル。営業利益率 56%(推定)。
リスクと懸念
客数の減少の長期化
低所得層の客数が約 2 年「ほぼ 2 桁減」で、7 月の米国の既存店もマイナス。本社は「変わらない」と見ており、値上げで支える形が続けば、客単価の伸びが限界に当たる。バリューメニューの実施率が 6〜7 割にとどまるなど、実行の問題も重なる。
加盟店の収益の悪化
本社の利益は加盟店の収益の上に乗る。人件費・食材費・配達の手数料・値引きの折半で加盟店が薄利になれば、出店が止まり、本社は家賃軽減(2036 年まで 85 億ドル)で支える。支援が膨らむと営業利益率が下がり、2030 年の目標(50% 台前半)が遠のく。
倍率の縮み
k 7.5%・g 3.5% では k − g が 4% と薄めで、k が 0.5 ポイント変わるだけで上限は約 22 倍 ↔ 20 倍と動く。金利が下がらず市場が高い割引率を求め続ければ、倍率は理論値より低く張り付く。客数の弱さが長引けば成長が 3% 台前半に落ち、倍率は 10 倍台後半へ下がりうる。
純負債と金利
自己資本がマイナスで純負債は 540 億ドル。借り換えのたびに 5.75% 前後に切り替わり、利払いは 10 年で約 9 億ドル増える。自社株買いを借金で続けるほど利払いの負担が重くなる。
GLP-1 と健康志向
肥満治療薬の普及で 1 人あたりの食事量が 3〜5% 下がれば、高カロリーのファストフードの数量に逆風(推定)。メニューの小さい構成や、低カロリー・タンパク質の商品で対応する必要が出るが、客単価の低い商品に偏れば本社の収益(売上連動)も伸びにくい。10 年の悲観の主因の 1 つ。
最低賃金・規制と配達アプリ
最低賃金の引き上げとチップ制の見直しで人件費が年 +4〜6% 上がり、加盟店の収益を圧迫する。ドアダッシュなど宅配アプリの手数料も利益を削る。規制は米国の加盟店の費用を押し上げ、本社の家賃軽減の圧力になる。
今後の分かれ目
- 米国の既存店が客数ベースで 2 四半期続けてプラスになったら
- 実行の問題が解けた証拠で、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。客数がプラスなら値上げの余地も戻り、本社の利益率の改善が現実味を増す。
- 家賃の軽減や資本の分担が 2030 年までの 50 億ドルを超えて追加されたら
- 加盟店の収益の悪化が構造的だったとわかり、やや悲観の確率を上げる。米国の営業利益率を 1〜2 ポイント下げて見る。
- Investor Day の目標(2030 年の営業利益率 50% 台前半)が下方修正されたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。営業利益率が 46% 近辺で止まるなら、10 年の中立の純利益は今の置き方よりやや低い。
- G&A が売上比 1.9% に向かって下がり、設備投資が年 30 億ドルまで減り FCF 転換率が 80% 台半ばに上がったら
- 還元の原資が増え、10 年の還元を厚く置いてよい。ただし客数が戻らない間は、倍率は上げない。
- 景気後退が始まり、米国の失業率が 7% を超えたら
- 客数は −5% 前後、営業利益は −10% 程度(ロイヤルティと家賃は売上連動)。2008〜09 年の株価 −15% が目安で、ならした利益に、景気後退でも続くロイヤルティと家賃の稼ぎを見て倍率を少し縮めた値になる。配当の増額は続く可能性が高い。
見ておくもの
- 米国の既存店売上(客数と客単価の内訳)と低所得層の来店
- バリューメニューの実施率と、加盟店の価格設定
- 加盟店の 1 店あたりのキャッシュフロー(目標は約 50 万ドル)
- 家賃の軽減と資本の分担の累計(2030 年までに 約 50 億ドル)
- 営業利益率と管理費の売上比(目標は 1.9%)
- 店舗の純増(2026 年 約 2,100、2027 年 4.5% 超)
- 純負債の水準と借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
今の PER を見る前に、米国・海外直営・開発ライセンスの 3 つに分け、店舗数 × 1 店あたりの本社の収益で売上を積み上げ、営業利益率で利益を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。土地とブランドの堀が強いので 2/3)に、g 3.5%・ROE 33%(自己資本が薄いので ROIC 19% に業界並みの借入 1 倍を乗せた値)・k 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)を入れ、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) とした上限の 90%(中立 約 20 倍)に置いた。式の外の割り引き・過去の PER・今の倍率への寄せはしていない。結果は今の値段をやや上回る適正で、客数の弱さと加盟店の収益は悲観・やや悲観の確率(合計 30%)と、悲観の深さ(純利益は今の 85%、倍率は成長が止まる前提の式)で厚く見ている。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.5%(強い堀の下げの上限)。外食の最大手で景気に強く、ブランドと土地を持つ加盟店の賃料で値決めに強みがある一方、借金で自社株を買い続け借り換えで利払いが増える。存続は危うくなく上乗せなし。個別のリスク(加盟店の収益悪化・客数の減少)は k に足さず、筋書きと確率で表した。