結論
JD.comは、中国の家電・デジタル製品と日用品を自ら仕入れて売り、出店者の広告と独自物流でも稼ぐ小売企業である。筆者の結論は割安だ。既存小売は十分な営業利益を生んでおり、食配など新規事業の赤字が今の連結利益を覆い隠しているからである。
2025年の連結売上は添付の財務台帳で1,821億ドル、営業利益はわずか5億ドルだった。しかし同年の小売部門の営業利益は開示ベースで約70億ドルあり、新規事業の大幅赤字がその多くを消した。2026年4〜6月期も家電の売上は弱かったが、小売部門は4.6%の営業利益率を保ち、新規事業の損失は前年同期から縮んだ。2025年の大赤字を恒久化するのも、すぐ消えると楽観するのも早計である。
中国の実物商品のネット小売は既に成熟段階に近づき、拼多多、アリババ、抖音との価格競争は避けられない。10年後の数量は市場の実質成長と京東のシェアから考え、商品価格は米国の3.5%物価上昇より低くした。広告は購買の入口がAIに移る危険を引き、外部物流は荷物の増加と顧客数の拡大を利益に変えると見る。
中立では2035年の営業利益が約130億ドル、純利益が約101億ドルに回復するが、新規事業はなお赤字を残す。中国の支配株主、変動持分事業体、欧州買収の不確実性は厳しい悲観とその確率に織り込んだ。今の時価総額約341億ドルに対し、5筋書きの配当・買戻し込みの割引価値は約744億ドルである。見かけの低い企業価値に飛びつくのでなく、既存小売の利益が少数株主に戻るかを見続けたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に問うのは10年後も買い手が京東を必要とするかである。答えは、おそらく必要だ。家電を確実に届けて設置し、壊れれば返品を受ける能力は、AIが買い物を代行する時代にも残る。京東物流の倉庫と配達網は、競合が短期間で複製しにくい実物資産である。
次の問いは、その便利さから誰が利益を取るかである。京東の直販は薄利で、拼多多や阿里巴巴が値下げすれば追わざるを得ない。出店者の広告と物流の外販にこそ、資産を追加せずに収益を伸ばす余地がある。しかし広告は自社アプリへの来訪に依存する。AIが購入の入口を奪えば、配送の便利さは残っても広告の超過利益は落ちる。
オーナー利益は、営業利益から設備投資や配達補助金を賄った後に株主に渡せる現金で測る。2025年は利益が残っても現金の増加が乏しかった。反対に2026年4〜6月の赤字縮小は、食配への支出を調節できる証拠になり始めた。新規事業で再投資利回りが資本コストに届かないなら、撤退や縮小と還元の方が正しい。
純現金は守りになるが、カリブ海の持株会社の株主と中国事業の資産の間には、VIEと議決権の壁がある。だから帳簿上の現金をそのまま安全域と呼ばない。中立の利益回復だけでも今の時価総額と大きな差が生じる一方、構造的に負けると株主の持ち分は帳簿の一部しか回収できない。安く見える理由と安く買える理由を、常に分けて考えるべき企業である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は京東零售(JD Retail)である。家電、携帯、パソコンを自ら仕入れて売る直販は、仕入れ価格と販売価格の差から倉庫・配送費を払う商売だ。2025年の製品売上には家電・電子機器約866億ドル、一般商品約599億ドルが含まれたが、この数字は全社の製品売上であり、小売部門と完全には一致しない。京東健康や京東工業も小売部門に含まれる。製品の真贋と配送の早さは客を呼ぶが、値下げは避けにくい。
次の利益源は、京東の画面で販売する第三者出店者からの取扱手数料と広告収入である。2025年のマーケットプレイス・広告収入は公表換算で約153億ドルだった。商品在庫の負担を持たないため直販より利益率が高いが、広告と出店手数料の内訳別の営業利益は未開示だ。広告を直販から分けるのは、購入者の流入がAIの代理購買に奪われたとき、利益への影響が直販より大きいからである。
京東物流(JD Logistics)は倉庫、在庫管理、配送、設置まで提供する。2025年は倉庫が1,600拠点超、倉庫面積は3,400万平方メートル超で、外部顧客向け売上は約1,368億人民元、うち総合物流の外部顧客は約9.1万社だった。グループ内部の物流請求は連結で消える。そこで内部売上を二重計上せず、外部企業向け総合物流と外部配送・運送に分ける。
新規事業には外食配達の京東外売、京喜、京東産発の不動産、欧州のJoybuyなどが入る。配達の2025年大型セール時の注文は日量2,500万件を超えたが、通年平均ではない。補助金と配達員の人件費が先行し、2025年の同部門は売上を大きく超す営業損失を出した。2026年は即時配達の一部売上を物流側へ付け替えているため、部門別の前年比だけで需要を判断してはいけない。
優良さと弱いところ
京東の堀、つまり競争相手が簡単にはまねできない強みは、正規品への信頼と現物の配送網である。多数の倉庫から自社配送員が素早く届け、壊れやすい家電の設置や返品にも対応する。安値だけを競うサイトにはまねしにくく、直販の顧客が倉庫を埋めるほど外販物流も安くなる。2025年の小売営業利益率4.6%は、2024年の4.0%から改善した。
ただし、値上げを継続して通せる堀ではない。拼多多は低価格、阿里巴巴は出店者の厚み、抖音は動画からの集客で攻める。2026年4〜6月期には京東の家電・電子機器の売上が前年より11.8%減り、マーケットプレイスと広告は8.3%増えた。直販より出店者サービスを育てることは利益に効くが、売上の伸びと価格決定力を混同してはならない。
再投資の質にも明暗がある。倉庫を外部顧客に貸し、配送密度を上げる投資は固定費を薄め、資本コストを上回る余地がある。一方で2025年の外食配達への進出は、既存小売の利益をほぼ消してしまった。良い物流という資産が、必ず良い外食プラットフォームを生むわけではない。
経営を評価する際は、利益より現金と支配権を重く見る。2024年と2025年には大規模な買戻しと配当が実行されたが、創業者の議決権は2026年3月時点で約73%に達する。米国のADS保有者は資産の所有割合に応じた経済的権利を持つ一方、資本配分を止める議決権は乏しい。倉庫という実体の堀は認めても、会社全体を強い独占企業とは扱わない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中国のネット小売は成長産業でありながら、既に消費の中心にある。中国国家統計局によれば2025年の実物商品オンライン売上は13.09兆人民元、前年比5.2%増で、社会消費品小売総額の26.1%を占めた。2026年1〜7月のネット実物商品売上も4.6%増にとどまる。米国ECが急成長するという業界ノートの見通しを、そのまま中国へ当てはめることはできない。人口減少、住宅不況、政府の家電買替え補助の反動も考えるべきだ。
市場シェアは、比較可能な2024年の広義オンライン取扱高による業界推計で、阿里巴巴31.3%、拼多多18.6%、京東14.9%、抖音11.8%、快手5.4%という順だった。政府統計のネット小売額とプラットフォームのGMVは、未決済注文や返品の扱いが違うため合計は一致しない。京東の2025年GMVは公式開示が十分ではなく、数量モデルはこの2024年推計を出発点にした。今後は京東が15%前後を維持できるかを中心に見る。
物流市場は小売より数量が伸びやすい。中国の2025年の宅配便取扱個数は約1,990億件で、前年比13.6%増だった。ただし配送単価は激しく下がる。順豊、極兔、中通、圓通などとの競争に加え、即時配達では美団と阿里巴巴も強い。2026年4〜6月の即時小売の推定シェアは阿里巴巴45.7%、美団45.3%、京東7.7%で、京東はまだ挑戦者である。
AIは二面性を持つ。倉庫内の需要予測や配送経路では費用を減らすが、買い物の指示を受けるAIエージェントが比較・決済を代行すれば、京東アプリの検索広告は効きにくくなる。自前の在庫と配送を持つ事業は残っても、購買の入口から取る料金は削られうる。2035年には中国ネット小売の実質市場が今より三割前後大きくなっても、京東の収益力が比例して上がる保証はない。
資本政策と M&A
資本配分は株主還元と新規事業への投資が綱引きをしている。2024年は自社株買い約36億ドル、配当約12億ドル、2025年も買戻し約30億ドル、配当約15億ドルを実行した。2026年上期の買戻しは10億ドルで、2024年8月に設定した50億ドルの枠は2026年6月末に残り10億ドルとなった。期限は2027年8月であり、その先の恒久的な買戻し額に数字の約束はない。2025年度に対する2026年春の現金配当は約14億ドルだった。
この数年の買戻しは株数を減らし、1株当たりの権利を強めた。しかし2025年のフリーキャッシュフローは台帳で約7億ドルまで細った。利益以上の還元が続くなら、現金を取り崩すだけであり、永久の原資にはならない。見通しについても全社の2035年利益率や株主還元総額を会社は約束していない。
買収には厳しい目を向ける。京東は外部配達網を取り込み、京東物流と京東健康を上場子会社として抱える。ドイツの家電量販店Ceconomyの約25億ドルの買収提案は、2026年10月時点でもEUの外国補助金審査を受け、審査期限は11月4日である。成立前なので同社の売上・利益・買収対価は今回の計算に足していない。成功時の物流との相乗効果より、資本の流出と欧州当局の制約を先に見たい。
中国のVIE契約、配当準備金、外貨送金規制も現金の自由を狭める。2025年末の法定準備金など配当制限を受ける純資産は約112億ドルと開示された。純現金169億ドルを無条件に株主の口座へ振り込めるとは考えず、余剰現金の一部だけを価値に数える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
京東の本業は、2025年にも営業利益を約70億ドル稼いでいた。連結利益が消えた理由は本業の崩壊ではなく、2025年に立ち上げた外食配達への補助金と販促費にある。2026年4〜6月期には新規事業の赤字が前年同期から縮み、小売の利益率はなお4.6%だった。赤字の事業を縮めるだけで株主の取り分が戻るなら、利益回復の難度は新規市場を独占することより低い。
物流網には使うほど安くなる仕組みがある。1,600拠点超の倉庫と設置・返品の体制は、家電のメーカーや外部企業が倉庫管理を任せる理由になる。外部総合物流の顧客は2025年に約9.1万社へ増え、1社当たりの売上もある程度守られていた。外部物流の顧客が増え、広告の取扱高に対する売上比率が上がれば、小売の数量が鈍っても利益は伸びる。
価格決定力は無限ではないが、正規品の保証と配送の信頼は中国の高齢化や地方への配送需要でも役に立つ。京東健康や京東工業の専門的な品ぞろえは、家電の買替え補助金の波に頼らない需要をつくる。新規事業が黒字化しなくても損失を大幅に減らせば、営業利益は従来の水準を大きく超える。
さらに、経営は2024年と2025年に大規模な買戻しを実行した。単なる宣言でなく株式を消却した実績であり、過剰な資金を少数株主へ返す力が全くないわけではない。Ceconomyを無理な条件で取得せず、配達も採算を優先するなら、10年後には物流と広告が利益の質を高める可能性がある。
慎重な見方
京東の弱点は、一番大きい直販が値段を自由に決められないことだ。中国の実物ネット小売の成長は2025年に5.2%まで鈍り、2026年には家電の政府支援の反動が出た。拼多多は低価格、阿里巴巴は品ぞろえと広告、抖音は動画の集客を持つ。京東のシェアが約15%から下がれば、在庫と配送センターの固定費だけが重くなる。
外食配達はもっと厳しい。美団と阿里巴巴が合わせて即時小売の九割前後を握るなか、京東が顧客を取るには補助金と配達員への支出が要る。2025年の新規事業は売上をほぼ使い尽くしたうえ、約65億ドルの営業赤字を生んだ。2026年4〜6月の改善も、黒字化までの道筋を示すものではない。店と顧客の両方が価格に敏感なら、資本を追加するほど損失が膨らむ可能性が残る。
広告の伸びを高く見積もるのも危うい。自社のアプリ内広告は、独自の企業記録や規制に守られたサービスではない。AIエージェントが商品の検索、比較、注文を他社の画面なしで処理するようになれば、検索結果の上位枠に払う広告料は削られる。AIは倉庫効率の改善に役立つが、その利益を上回るほど広告を侵食することもある。
最後に、会社を実際に動かすのはADS投資家ではない。創業者は強い議決権を持ち、VIEと中国の送金規制が現金の出口を絞る。欧州のCeconomy買収も当局の審査が続き、買収代金と投資に現金が消える恐れがある。物流資産があっても、稼いだ現金が株主に戻らなければ帳簿の価値はそのまま株価にはならない。
どちらに重みを置いたか
既存小売の収益力には上向きの証拠があるが、配達の採算と中国の競争を読む難しさは大きい。そこで中立を31%、やや悲観と悲観を合計37%にした。通常の景気後退ではなく、出店者広告の単価低下や新規事業の補助金継続まで見込む厳しい下振れである。
それでも、2025年の赤字負担を少し取り除くだけで連結利益が増える構造は無視できない。中立の10年後価値に割り引いた株主還元を足すと、現在の時価総額を大きく超える。結論は割安。ただし創業者の支配と現金の移転制約がある以上、本業の改善だけで株主価値が必ず実現するとは断言しない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 90.36 ドル1,216 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 23.01 ドル310 億ドル)。 今の値に割り戻すと 55.27 ドル744 億ドル、今との差 +115.2%、 期待の年率 +18.9%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 238.96 ドル3,216 億ドル | 48.29 ドル650 億ドル | +1,018.6% | +32.8% | 28.73 ドル387 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 151.06 ドル2,033 億ドル | 40.12 ドル540 億ドル | +644.5% | +27.2% | 42.06 ドル566 億ドル |
| 中立 | 31% | 91.70 ドル1,234 億ドル | 23.77 ドル320 億ドル | +349.7% | +19.2% | 35.80 ドル482 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 14.64 ドル197 億ドル | 7.06 ドル95 億ドル | −15.5% | −2.0% | 5.42 ドル73 億ドル |
| 悲観 | 12% | 9.57 ドル129 億ドル | 1.86 ドル25 億ドル | −55.5% | −8.3% | 1.37 ドル18 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 90.36 ドル1,216 億ドル | 23.01 ドル310 億ドル | +341.5% | +18.9% | 113.38 ドル1,526 億ドル |
今の株価時価総額 25.68 ドル346 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:直販の信頼を守り、広告と外部物流が複利で育つ 利益 216 億ドル · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 238.96 ドル3,216 億ドル
京東は品質保証と配送の速さを武器に、国内オンライン取扱高のシェアを約17%へ伸ばす。中国のネット小売市場は実質で三割ほど育ち、京東の取扱高は2025年実質換算で7,900億ドルに達する。直販の売価も十年で約36%上がるが、海外への一律の物価転嫁ではなく、家電以外の高品質な日用品が増える結果である。
出店者は購買の直前に京東広告を出し続け、AIによる比較や自動注文も京東の在庫・配送を選ぶ。広告の収益率は改善し、外部総合物流の顧客は18.6万社へ育つ。2025年に巨額の赤字を生んだ食配は補助金を絞り、京喜とJoybuyを合わせた新規事業は黒字化する。新しい欧州買収の利益はまだ加えていない。
物流と直販の設備投資は続くが、在庫管理の改善で増分の利回りは資本コストを超える。2035年の営業利益は約273億ドル、純利益216億ドルへ伸び、期間純利益約1,224億ドルから株式報酬控除後の純還元約650億ドルが株主に戻る。
- 中国直販・専門小売:数量 7,900(京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア))× 価格 0.36(直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604))→ 売上 2,805 億ドル・営業利益 104 億ドル。2025年GMV比1.45倍、シェア約17%、商品売価指数1.36
- 京東内の出店手数料・広告:数量 7,900(京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル))× 価格 0.04(GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744))→ 売上 328 億ドル・営業利益 134 億ドル。自社媒体を保持し、広告率と売価の合計単価1.51倍
- 外部企業向け総合物流:数量 186,000(外部総合物流の有料顧客社数(社))× 価格 0.00(顧客1社当たり年売上(億ドル/社))→ 売上 143 億ドル・営業利益 12 億ドル。外部総合物流18.6万社、単価指数1.41
- 外部配送・宅配・運送:数量 223(配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定))× 価格 1.57(宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個))→ 売上 350 億ドル・営業利益 23 億ドル。宅配換算223億件、単価指数1.46
- 食配・京喜・欧州ほか新規事業:数量 62.0(食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み))× 価格 3.70(等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件))→ 売上 229 億ドル・営業利益 14 億ドル。食配効率化・京喜・海外が黒字化
倍率:ROE24.1%、通常の堀でRONIC16.3%、k8.5%、g3.0%。来期利益に対する正当化PERに1.03を掛けた上限15.3倍の96%を採用。直販と広告の増益が安定しても中国の統治・競争による不確実性を残す。FY2035のGAAP純利益216億ドルから余剰現金140億ドルの税後利息1.4%を除きPERを掛け、現金の戻り方0.5を足す。算式(216−140×0.014)×14.7+140×0.5=3216.39億ドル。純有利子負債は別に二重控除しない。
確率:国内ネット小売市場で京東のシェアが約17%へ上がり、新規事業まで黒字転換するには、競争優位と資本配分が同時に改善する必要があるため1割。将来の純現金評価と2035年の会社全体の時価総額を含めて比較し、基準日の時価総額約341億ドルに確率を寄せていない。
やや楽観 22% やや楽観:食配の赤字が縮み、物流の外販が太る 利益 147 億ドル · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 151.06 ドル2,033 億ドル
京東は中国のネット小売でシェアを約16%へ伸ばすが、家電と携帯には値引き競争が続く。直販数量は実質で約四割増え、名目の直販売上は2,400億ドル台になる。広告は中国の店舗がオンラインへ移る流れを取り込み、取扱高当たりの収益率は小幅に上がる。
物流の外部総合顧客は約15.4万社に増える。順豊や中通との競争は続いても、倉庫から設置まで任せる企業が増え、配送密度によって利益率も改善する。新規事業は食配の補助金を減らすが、Joybuyの拡大費用が残るため小幅赤字にとどまる。AIエージェントによる広告の流入減は部分的で、欧州のCeconomy買収は成立した場合でも投資額と利益を対で見直す。
2035年の営業利益は約183億ドル、純利益は約147億ドルになる。十年の累計利益は約893億ドルと考え、配当と買戻しの正味約540億ドルが株主へ渡る。設備投資のリターンは平均して資本コストを上回るが、全社が独占的な利益率になるわけではない。
- 中国直販・専門小売:数量 7,500(京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア))× 価格 0.33(直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604))→ 売上 2,438 億ドル・営業利益 73 億ドル。取扱高実質1.38倍、シェア約16%、価格1.25倍
- 京東内の出店手数料・広告:数量 7,500(京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル))× 価格 0.04(GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744))→ 売上 285 億ドル・営業利益 105 億ドル。広告の単価と手数料率は合計1.38倍
- 外部企業向け総合物流:数量 154,000(外部総合物流の有料顧客社数(社))× 価格 0.00(顧客1社当たり年売上(億ドル/社))→ 売上 111 億ドル・営業利益 8 億ドル。外部顧客15.4万社、単価1.32倍
- 外部配送・宅配・運送:数量 190(配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定))× 価格 1.43(宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個))→ 売上 272 億ドル・営業利益 15 億ドル。宅配換算190億件、単価1.33倍
- 食配・京喜・欧州ほか新規事業:数量 50.0(食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み))× 価格 3.10(等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件))→ 売上 155 億ドル・営業利益 −5 億ドル。食配改善でも欧州・京喜への投資で小幅赤字
倍率:ROE21.8%、通常の堀でRONIC15.2%、k8.5%、g3%。来期利益ベースの正当化PERを10年目の利益用に直した上限約15.0倍の90%を採用。広告の内製AI対応が進んでも競争価格を織り込む。FY2035のGAAP純利益147億ドルから余剰現金110億ドルの税後利息1.4%を除きPERを掛け、現金の戻り方0.5を足す。算式(147−110×0.014)×13.6+110×0.5=2033.26億ドル。純有利子負債は別に二重控除しない。
確率:既存小売の利益率改善は2025〜2026年にも確認できたため、食配の損失縮小と物流の伸長が両立する可能性は比較的高い。ただし競争は残す。将来の純現金評価と2035年の会社全体の時価総額を含めて比較し、基準日の時価総額約341億ドルに確率を寄せていない。
中立 31% 中立:直販は緩やかに伸び、食配の赤字は残る 利益 101 億ドル · PER 11.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 91.70 ドル1,234 億ドル
中国のネット小売市場は十年で実質三割成長するが、人口減少と価格競争で伸びは鈍くなる。京東の取扱高シェアは約15%を維持し、実質取扱高は7,000億ドルへ育つ。直販の売価は十年で約18%しか上がらない。政府の家電補助がなくなった後も日用品・医薬品・産業調達が補うが、米国並みの値上げを想定しない。
京東広告は取扱高に沿って増えるが、AIエージェントが買い物を代行するほどアプリ内の検索枠の価値は下がり、広告単価上昇は物価に届かない。外部総合物流の顧客は13.5万社へ増える。新規事業は食配の補助金を縮めてもなお約15億ドルの営業赤字を残し、欧州買収による不確実な売上は入れない。
2035年の営業利益は約130億ドル、GAAP純利益は約101億ドルとなる。累計利益は約603億ドル、株式報酬や増資を差し引いた正味の配当・買戻しは約320億ドルとする。新規事業から引き上げた資金が本業の再投資と還元へ回るためROEが改善するが、物流と広告で超過利益が永遠に続くとは考えない。
- 中国直販・専門小売:数量 7,000(京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア))× 価格 0.31(直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604))→ 売上 2,149 億ドル・営業利益 58 億ドル。GMV実質1.29倍、シェア約15%、商品価格1.18倍
- 京東内の出店手数料・広告:数量 7,000(京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル))× 価格 0.03(GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744))→ 売上 238 億ドル・営業利益 81 億ドル。AIが入口を一部代替し単価1.24倍、物価未満
- 外部企業向け総合物流:数量 135,000(外部総合物流の有料顧客社数(社))× 価格 0.00(顧客1社当たり年売上(億ドル/社))→ 売上 95 億ドル・営業利益 7 億ドル。外部顧客13.5万社、単価1.28倍
- 外部配送・宅配・運送:数量 175(配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定))× 価格 1.35(宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個))→ 売上 236 億ドル・営業利益 12 億ドル。宅配換算175億件、単価1.25倍
- 食配・京喜・欧州ほか新規事業:数量 42.0(食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み))× 価格 2.95(等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件))→ 売上 124 億ドル・営業利益 −15 億ドル。食配損失は縮むが黒字化せず
倍率:ROE16.7%、通常の堀でRONIC約12.6%、k8.5%、g3.0%。来期利益に対する式へ1.03を乗じた正当化PER上限14.3倍の約83%を採用。中国直販の競争と広告の入口リスクを残すため、強い堀の扱いはしない。FY2035のGAAP純利益101.2億ドルから余剰現金90億ドルの税後利息1.4%を除きPERを掛け、現金の戻り方0.5を足す。算式(101.2−90×0.014)×11.9+90×0.5=1234.29億ドル。純有利子負債は別に二重控除しない。
確率:2025年の小売営業利益と2026年上期の新規事業の赤字縮小を認める一方、中国ネット小売の低成長と広告のAI代替を織り込んだ中心筋書き。将来の純現金評価と2035年の会社全体の時価総額を含めて比較し、基準日の時価総額約341億ドルに確率を寄せていない。
やや悲観 25% やや悲観:直販の利益を価格競争と食配が食う 利益 17 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14.64 ドル197 億ドル
国内ネット小売の実質市場は伸びても、京東のシェアは約12%へ落ちる。家電と携帯は値引きが常態化し、名目の直販価格はほぼ横ばいになる。取扱高が実質で増えても、在庫と配送費の固定分を吸収できず、直販の営業利益率は1%台前半まで下がる。
出店者は阿里巴巴や抖音へ広告費を移し、AIエージェントも検索の入口を奪う。広告の取扱高当たり収入は大きく下がり、物流は荷物が増えても単価競争で低採算となる。食配の補助金は縮まず、新規事業では約37億ドルの営業損失が残る。Ceconomy買収は実現しないか、実現しても採算に寄与しない。
2035年の営業利益は約22億ドル、純利益は約17億ドルまで落ちる。十年の途中には赤字となる年もあり、累計純利益は約78億ドルにとどまる。還元は初期の配当・買戻しと少額の再開分を合わせ約95億ドルしかなく、帳簿の自己資本は約305億ドルと伸びない。物流の実物網は残るが、資本コストを下回るROEが続く会社になる。
- 中国直販・専門小売:数量 6,000(京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア))× 価格 0.27(直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604))→ 売上 1,602 億ドル・営業利益 19 億ドル。シェア約12%へ低下、直販単価ほぼ据え置き
- 京東内の出店手数料・広告:数量 6,000(京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル))× 価格 0.03(GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744))→ 売上 174 億ドル・営業利益 44 億ドル。AI購買入口移動で広告単価は小幅にしか伸びず
- 外部企業向け総合物流:数量 111,000(外部総合物流の有料顧客社数(社))× 価格 0.00(顧客1社当たり年売上(億ドル/社))→ 売上 69 億ドル・営業利益 3 億ドル。総合物流の顧客11.1万社、単価は伸びない
- 外部配送・宅配・運送:数量 145(配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定))× 価格 1.18(宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個))→ 売上 171 億ドル・営業利益 5 億ドル。配送競争で粗利圧迫、換算145億件
- 食配・京喜・欧州ほか新規事業:数量 37.0(食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み))× 価格 2.50(等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件))→ 売上 93 億ドル・営業利益 −37 億ドル。食配補助金が残り営業赤字37億ドル
倍率:ROE5.6%はk8.5%を下回るため、成長の投下資本が価値を生まない。g3%・通常の堀でRONIC約7.1%の正当化PER上限約10.7倍より低い10.0倍を採用。中立の11.9倍を下回り、景気循環の市場PERは参照しない。FY2035のGAAP純利益17億ドルから余剰現金75億ドルの税後利息1.4%を除きPERを掛け、現金の戻り方0.5を足す。算式(17−75×0.014)×10+75×0.5=197.00億ドル。純有利子負債は別に二重控除しない。
確率:拼多多・阿里巴巴の値下げ、AIによる広告料圧迫、外食配達の固定費という独立した圧力があり、穏やかな不振は四分の一程度あり得る。将来の純現金評価と2035年の会社全体の時価総額を含めて比較し、基準日の時価総額約341億ドルに確率を寄せていない。
悲観 12% 悲観:顧客入口を失い、食配投資が資産価値を壊す 利益 −25 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9.57 ドル129 億ドル
商品比較と注文の入口が他社のAIと動画・値引きプラットフォームへ移り、京東のGMVシェアは約9〜10%まで落ちる。直販は安売りと返品で利益がほぼ消え、検索広告の単価も下がる。物流網は他社に倉庫を貸して生き残るが、配送の値段を決める力はなく、機械と配送員の固定費だけが残る。
外食配達は美団・阿里巴巴から客を奪えず、黒字化を期待して補助金を続ける。新規事業は2035年にも約41億ドルの営業赤字を出し、海外進出も成果に結びつかない。欧州買収での資金流出や中国でのVIE契約・送金規制により、現金と資産がADS保有者へ十分に届かない。会社自体の買収合意や上場廃止ではなく、事業が負ける仮定である。
2035年は営業赤字約35億ドル、純損失25億ドルになる。期間中に積み重なる純損失は約124億ドル、初期の配当などの正味還元は約25億ドルにとどまり、2035年の自己資本は約173億ドルとなる。価値は赤字に利益倍率を掛けず、現在の自己資本に対する売却可能資産の回収力を目安に測る。
- 中国直販・専門小売:数量 4,700(京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア))× 価格 0.24(直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604))→ 売上 1,105 億ドル・営業利益 2 億ドル。JDのGMVシェア9〜10%、商品価格も下落
- 京東内の出店手数料・広告:数量 4,700(京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル))× 価格 0.02(GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744))→ 売上 94 億ドル・営業利益 15 億ドル。AIが購買検索を代替、広告単価は約3割低下
- 外部企業向け総合物流:数量 80,000(外部総合物流の有料顧客社数(社))× 価格 0.00(顧客1社当たり年売上(億ドル/社))→ 売上 44 億ドル・営業利益 0 億ドル。顧客が8万社まで減り物流の採算割れ
- 外部配送・宅配・運送:数量 120(配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定))× 価格 1.05(宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個))→ 売上 126 億ドル・営業利益 1 億ドル。宅配換算120億件、単価下落
- 食配・京喜・欧州ほか新規事業:数量 30.0(食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み))× 価格 2.25(等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件))→ 売上 68 億ドル・営業利益 −41 億ドル。美団・阿里巴巴に敗れ赤字が残る
倍率:営業と純利益が赤字のためPERは使用せずPBR0.40倍で評価する。分母は2035年自己資本173億ドルではなくFY2025の自己資本322億ドル。売れる倉庫・子会社持分と縮小後の純現金から見た回収額が帳簿を大きく下回る構造的な敗北である。過去の谷のPBRは使わない。FY2025帳簿の322億ドル×0.40=128.80億ドル。悲観の資産床80億ドルを上回る。
確率:京東の実物物流網までは消えないため存続不能は中心にしないが、広告を失い食配へ資金を投じ続ける構造的な失敗には1割強の可能性を認める。将来の純現金評価と2035年の会社全体の時価総額を含めて比較し、基準日の時価総額約341億ドルに確率を寄せていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
中国直販・専門小売
自社で在庫を持つ家電・デジタル製品・日用品の販売と、京東健康・工業などの専門商材。低い粗利と在庫・配送の固定費を負担する。
| 数量京東の国内商品取扱高の2025年実質換算額(億ドル。業界市場実質規模×京東GMVシェア) | 価格直販の売上取り込み率×商品売価指数。GMV1ドル当たり直販売上(2025=0.2604) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,430 | 0.26 | 1,414 | 27 |
| 10 年後 中立 | 7,000 | 0.31 | 2,149 | 58 |
取り方:2024年の業界推計では京東のGMV約3.8兆人民元、広義オンライン取扱高シェア14.9%。2025年GMVの公式確報がないため、国内市場規模×シェアの近似として3.8兆元を2025年実質取扱高の代理にし、約7元/ドルで5430億ドルとした。京東の2025年製品売上(公表額1464億ドル)とJD Retailの売上(1611億ドル)を参照し、広告149億ドルと少額の相殺項目を除く。添付factsの全社1821億ドルを正とするため、会計資料のドル換算と2.7%程度の違いを共通の単位換算として調整し、直販1414億ドル・1GMVドル当たり0.2604を算定。直販・広告別の営業利益は未開示なのでJD Retailの公表営業利益約73.5億ドルを台帳に合わせた71.5億ドルから、広告の利益を差し引いて26.5億ドルと推定。2025年中国国家統計局と2025年11月の香港上場企業向け競争調査を参照。
京東内の出店手数料・広告
直販以外の出店者が京東の購買客に接触するために払う手数料・検索広告。自社媒体を売るもので、広告制作の人月請負ではない。
| 数量京東の国内商品取扱高(2025年実質億ドル) | 価格GMV当たり広告・出店手数料売上率×名目単価指数(2025=0.02744) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,430 | 0.03 | 149 | 45 |
| 10 年後 中立 | 7,000 | 0.03 | 238 | 81 |
取り方:2025年の全社マーケットプレイス・広告売上は約153.2億ドル(JD.comの通期決算)。添付factsの換算基準に合わせ149億ドルとした。京東の2024年GMV約5430億ドル相当を2025年の数量代理とし、売上率2.74%を価格単位とする。広告と手数料の内訳・部門利益は未開示であり、営業利益率30.2%は在庫を負担しないサービスという性質を利用した分析上の推定。AIエージェント代替の型は「自社媒体・プラットフォームの広告枠」で、広告制作・運用の工数売りでも席課金ソフトでもない。中立数量1.29倍、単価1.24倍、長期gは自社媒体の許容範囲1〜3%内の3%とし、利用者のアプリ来訪をAIが代替する部分を割り引く。
外部企業向け総合物流
外部企業の在庫・倉庫・配送を一括管理する受託物流。自社物流を第三者へ外販する成長源。
| 数量外部総合物流の有料顧客社数(社) | 価格顧客1社当たり年売上(億ドル/社) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 91,161 | 0.00 | 50 | 2 |
| 10 年後 中立 | 135,000 | 0.00 | 95 | 7 |
取り方:JD Logisticsの2025年年次報告では外部総合物流顧客91,161社、外部総合物流売上359億人民元、顧客単価393,907人民元。公表額約51億ドルをfacts基準へ合わせて49.8億ドルとし、顧客社数×1社当たり約5.46万ドルで検算。営業利益2.2億ドルは公表されない外部部門別利益の推定であり、外部物流の二重計上を避けるためJD Logistics全体の内部向け売上803億人民元は除外。総合物流は現場の在庫・輸送と実物ネットワークを売るので、AIエージェントの人月・席課金型ではない。
外部配送・宅配・運送
外部の出店者・荷主から受ける宅配便、即時配達、貨物輸送など。単価は競争で下がりやすい。
| 数量配送・運送を宅配便に換算した有料取扱個数(億個、推定) | 価格宅配便換算1個当たり売上(億ドル/億個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 130 | 1.08 | 140 | 5 |
| 10 年後 中立 | 175 | 1.35 | 236 | 12 |
取り方:JD Logisticsの外部顧客売上1368億人民元から外部総合物流売上359億人民元を除く外部配送など約1009億人民元が出発点。factsへのドル換算調整後140.2億ドル。荷物個数の会社開示がないので、2025年中国の宅配1989.5億件(国家郵政局)に対する仮の取扱比率約6.5%から130億個の宅配便等価数量を作り、1個当たり1.08ドルと逆算した。貨物や設置も含むため実際の宅配個数ではなく、数量感応度を見る代理変数である。外部物流の営業利益配賦5.1億ドルは推定。
食配・京喜・欧州ほか新規事業
JD Food Delivery、京喜、欧州Joybuy、不動産関連。配達の注文を増やすには補助金と配送人員が必要。
| 数量食配・即時小売に換算した年間の有料取引数(億件、他事業の等価数量込み) | 価格等価取引1件当たり認識売上(億ドル/億件) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28.0 | 2.43 | 68 | −65 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 2.95 | 124 | −15 |
取り方:2025年New Businessesは492.82億人民元の部門売上、466.41億人民元の営業赤字(JD.comの20-F)。添付factsの換算基準で売上68.1億ドル・赤字64.9億ドルとした。京東公表の2025年618セール時の外食配送は日間2500万件超だが通年平均は非開示。通年の等価取引を28億件(約770万件/日)と仮置きして単価2.43ドルを算出した。京喜・不動産・欧州事業も含むため、配達の実際の注文単価ではない。2026年に即時配送サービスの会計区分が物流部門へ移った点を考慮し、将来の数量・単価を保守的に扱う。
リスクと懸念
外食配達の赤字と補助金競争
新規事業の2025年の営業損失は開示のドル換算で約67億ドルだった。2026年4〜6月期は赤字が前年より縮んだが、美団と阿里巴巴には顧客・加盟店網の規模で及ばない。注文数の増加が獲得費用を上回らなければ、倉庫の規模の利益を食い潰す。3年続けて営業損失が大きければ、利益の回復を見込む中立を引き下げる。
価格競争と直販の在庫リスク
京東は自社で家電や携帯を仕入れ、売れ残りと商品更新の損を負担する。拼多多の低価格と抖音の動画集客、政府の買替え補助終了が重なれば、値引きして在庫を減らさなければならない。2026年4〜6月期の家電・電子機器売上は11.8%減だった。10年先の価格を米国の物価上昇率まで上げない理由は、ここにある。
AI エージェント代替
京東が自社アプリの広告枠を売る部分は、買い物を代理実行するAIエージェントが比較と注文の入口を握ると傷む。広告制作請負や人月・席課金の仕事ではないため全社数量を機械的に半減はさせないが、広告の取扱高当たり収入が下がる悲観を独立して考えた。記録の正本としての解約率や法的な乗換障壁の証拠はなく、広告利益を恒久的な独占収入とは扱わない。
創業者の議決権とVIE契約
2026年3月時点で創業者は議決権約73%を行使でき、米国ADS保有者は資本配分を変える力が乏しい。中国の一部事業はVIEという契約支配を通じて連結され、海外持株会社が直接所有する株式とは異なる。法規制や契約が変更されれば、損益の帰属や現金の移転が不利になりうる。余剰現金の回収価値を半分にするのはこの危険への対応である。
欧州Ceconomy買収と外国補助金審査
Ceconomyの提案買収はドイツ・欧州の店舗と物流をつなげる機会だが、EUは2026年に外国補助金の詳細審査を開始した。承認時にも競合へのサービス提供や条件付き運営を課される可能性がある。買収に現金を使っても倉庫の稼働率が上がらなければ、投下資本の利回りは資本コストに届かない。未成立の買収は現行の売上にも現金にも加えていない。
純現金の見かけと資金拘束
添付の2025年末純現金は169億ドルあるが、物流倉庫の借入・賃借、仕入先への支払い、中国子会社の法定準備金がある。2025年のフリーキャッシュフローは約7億ドルと、配当と買戻しに比べ極端に小さかった。短期的な利益の増加が再投資や販促費に吸われれば、純現金があっても株主への現金還元が減る。
上場子会社と少数株主への帰属
JD LogisticsやJD Healthには京東グループ以外の株主がいる。倉庫や医療プラットフォームの売上が伸びても、その利益を京東のADS保有者が全て受け取るわけではない。連結営業利益の予測に子会社利益が入る一方、最終純利益では持分外の利益と税負担を差し引いた。持分の追加取得や上場廃止があれば、対価と将来利益を両方見直す必要がある。
今後の分かれ目
- JD Retailの営業利益率が四半期で4.5%以上を維持し、家電以外の実質販売数量が年5%以上伸びたら
- 直販の安定性を確認できる。中立よりやや楽観へ確率を移すが、政府補助に依存した売上増は除いて判断する。
- 新規事業の四半期営業赤字が二期続けて50億人民元未満となり、2027年以降も縮小したら
- 年間で大きな利益回復が見込める。中立・やや楽観の収益に近づくが、AIへの広告流出と物流設備の投資回収は別に確認する。
- 外部総合物流顧客が15万社を超え、顧客当たりの売上も2025年実質水準を保ったら
- 倉庫の外販による増分資本利益が確認でき、強気側の外部物流の数量と利益率に近づく。
- マーケットプレイス・広告売上のGMV比率が2%台前半を割り、検索流入も減少したら
- AIエージェントなどへの購買入口の流出を疑う。広告の数量と価格を切り下げ、やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- Ceconomy買収が成立し、統合の設備投資・借入額が事前説明を大幅に上回ったら
- 現時点で加えていない売上と取得対価を改めて積み上げる。採算が見えなければ余剰現金の評価と将来還元を下げる。
- 2027年以降に年間30億ドル超の純買戻しと現金配当が続き、純現金も減らなかったら
- 支配権の割引を和らげられる。余剰現金の株主への戻り方を0.5から1.0へ見直す候補になる。
- 中国のVIE規制または米中監査・上場規則が悪化し、利益の海外送金が止まったら
- 本業の利益が残っても少数株主の回収額が減る。悲観の現金の床と還元額を見直す。
見ておくもの
- JD Retailの四半期営業利益率と家電・一般商品の売上数量、政府買替え補助の反動
- マーケットプレイス・広告売上の伸びとGMV当たりの収益率、AI購買代理による流入比率
- New Businessesの四半期損失額と食配の補助金・注文数、京東物流への会計振替
- JD Logisticsの外部総合物流の顧客社数・1社当たり売上、配送単価、倉庫稼働率
- 株式報酬を引いた正味の配当・買戻し、現金と有利子負債、フリーキャッシュフロー
- CeconomyのEU審査の最終判断と支払対価・統合投資の実績
- 創業者の議決権、VIEの制度、配当制限を受ける中国子会社の純資産
倍率と資本コストの決め方
まず中国のEC市場規模・GMVシェア、出店者広告料、外部総合物流顧客、宅配換算個数、食配の取引件数で将来の数量を決め、各事業の単価とGAAP営業利益率を独立に置いた。国内の価格は米国の物価上昇率3.5%を機械的に当てず、中国の需要減速と値下げ競争を反映した。その後に資本コスト8.5%とROE・RONIC・長期g3%から正当化PERを計算し、通常の堀として中立は上限の約83%、強気でも上限内とした。2019〜2026年の市場PERや株価の谷は根拠にしていない。余剰現金は事業利益から1.4%の受取利息を引いて別建てにし、統制・送金制約による帰属率50%を適用した。悲観はFY2025自己資本を分母とするPBRと売却可能資産の床を見比べた。結果は10年期待割引価値約744億ドル、台帳時価総額約341億ドルに対し約+118%で割安。現時点の株価から目標を逆算してはいない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株共通の基本8.0%に、価格決定力の弱さを表すquality+0.5%を足して8.5%。株価βや同業のPERは使わない。VIE、欧州買収、食品配達の競争は利益と筋書きの確率で表す。存続を疑うほどの債務超過ではないためextraは0。