結論
トリップ・ドットコム・グループは、中国最大級の旅行予約会社である。携程、去哪儿、Trip.com、スカイスキャナーを抱え、ホテルと交通機関の予約を仲介する。筆者の結論は、事業の存続力は高いが、2026年の独占禁止法処分を経て従来の高い収益性をそのまま10年先へ持ち込むことはできず、現在の評価はやや割高というものだ。
2025年の売上は87億ドル、営業利益は22億ドルだった。ホテル予約が売上の約42%、交通予約が36%を占める。2025年の純利益46億ドルは営業利益の2倍を超えるが、これは旅行予約だけで稼いだ結果ではない。インドのメイクマイトリップ株式の売却などによる投資関連利益が大きく、本業の利益を過大評価しやすい。2026年7月には中国当局が約7.6億ドルの制裁金等を命じ、ホテルとの独占契約や不合理な取引条件の是正を求めた。
それでも強みは本物である。中国のオンライン旅行市場で約56%のシェアを持つとの業界推計があり、2025年には世界で約1兆1000億元の予約を扱った。宿泊施設170万件、航空会社680社以上の供給網を持ち、利用者と旅行業者を結び付ける規模は容易に再現できない。海外のTrip.comも伸びており、2026年第2四半期の国際プラットフォーム売上は前年比50%超の増加だった。
10年後も旅行予約は必要だが、予約画面が今と同じ価値を持つとは限らない。AIエージェントが旅程を組み、航空券とホテルの予約まで代行すれば、検索や比較に依存した手数料と広告の収益力が薄れる。さらに美団、飛猪、同程旅行などの競争が強まる。中立では2035年の売上を約157億ドル、営業利益を約35億ドル、純利益を30億ドルとみる。5つの筋書きの確率と資本コスト8.5%を通じた現在価値は約185億ドルで、基準時価総額251億ドルを約26%下回る。旅行市場の成長は魅力的だが、将来の利益を少数株主がどれだけ受け取れるかには慎重でありたい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初に旅行予約という仕事が10年後も残るかを考える。旅行者は宿泊先と移動手段を探し、予約と支払いを行う必要がある。AIが旅程を決めるようになっても、宿泊施設と航空会社の空き状況を確認し、予約を成立させ、問題が起きれば対応する機能は残る。したがって事業そのものが消える可能性は小さい。
しかし、会社が必要とされることと、高い手数料を取り続けられることは別である。ホテル側の販売経路を制約して得た交渉力は、2026年の独禁法処分で明確に傷ついた。今後は利用者の信頼、予約品質、問い合わせ対応、送客力で手数料を正当化する必要がある。世界的な予約網は資産だが、強いネットワークが必ず強い株主利益になるわけではない。
オーナー利益を見ると、2025年の純利益46億ドルを毎年の稼ぎと扱うのは危険である。投資売却益を含むからだ。営業利益は22億ドルで、フリーキャッシュフローは19億ドルだった。しかも株式報酬と海外での集客支出が続く。保有する現金や投資有価証券の価値は認めるが、実際に株主へ戻る割合と、その資金が本業の利益に二重計上されていないかを確認する。
筆者が長期株主として求めるのは、独禁法上問題のない取引条件でも予約件数が増え、営業利益率が持続する証拠である。2035年の中立では旅行予約の規模は大きくなるが、資本効率は高成長期ほどではない。正味の還元を加えた現在価値には十分な安全域がない。悲観ではなお現金と売却可能な投資資産が残るものの、株主がそれを確実に受け取れるとは限らない。優良なプラットフォームを所有する魅力と、今の値段で10年間保有する魅力は区別したい。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、旅行者とホテル、航空会社、鉄道、旅行商品販売会社をつなぐ予約仲介である。ホテルや航空機を原則として自社保有せず、予約取扱高に対して手数料やサービス料金を受け取る。旅行者にとっては比較、予約、決済、変更、返金を一つの場所で行えることに価値がある。供給者にとっては多数の旅行者に商品を販売できる販路であり、この双方を集めることで利益が生まれる。
2025年のホテル予約取扱高は約2800億元、航空券予約取扱高は約5500億元だった。ホテル予約収入は261億元、交通予約収入は225億元である。ホテルの実効収益率は取扱高の約9%だが、交通予約は航空券以外の鉄道や関連サービスを含むため、同じ定義で計算すると約4%になる。ホテル予約のほうが利益を生みやすく、経営の価値を左右する。会社は事業全体を会計上の単一セグメントとして管理しており、以下のサービス別営業利益は開示利益ではなく、全社の費用を配賦した推定値である。
携程は中国の比較的支出額が大きい旅行者に強く、去哪儿は価格比較を重視する利用者を集める。Trip.comはアジアを中心とする海外旅行者を取り込み、スカイスキャナーは航空券の検索と比較で世界中の利用者に接する。四つのブランドを組み合わせることで、中国国内旅行、出境旅行、外国人の訪中旅行、世界の航空券検索まで幅広い接点を持つ。
募集型旅行商品と法人出張管理も営む。旅行商品では提携業者のツアーを販売して紹介手数料を得る。法人出張では企業との契約に基づき、航空券、宿泊、経費管理に関係する予約サービス料金を受け取る。その他には自社媒体の広告と金融関連サービスがあり、2025年の売上構成比は約10%である。法人向け事業も主に予約件数を収益源とするため、一般的な席数課金の業務ソフトとは稼ぎ方が異なる。
国際展開のための技術と集客費は重い。2025年の製品開発費は約22億ドル、販売促進費は約21億ドルに達した。これはホテルや飛行機を持たないことによる資本効率の良さと引き換えに、検索技術、利用者獲得、サポート体制へ継続的に支出しなければならない事業であることを示している。
優良さと弱いところ
最大の堀は旅行者と供給者が互いを引き寄せるネットワークである。2025年末には約170万件の宿泊施設、680社以上の航空会社、6万を超える提携先があり、取引注文の9割以上がモバイルで行われた。予約後の変更や返金、言語の異なる旅行者への支援まで提供するため、単なる検索サイトよりは置き換えにくい。中国国内で築いたブランドと利用者の旅行履歴も、新規参入者にはない資産である。
ただし、この堀のすべてが健全な価格決定力に由来するわけではなかった。2026年7月の当局判断では、ホテルに対する排他的な契約や不合理な取引条件が問題とされた。独占的な条件を撤廃しても利用者が残るなら本物の堀だが、同時にホテル側が自由に複数の予約サイトへ在庫を出せるため、手数料率への競争圧力は強まる。筆者はネットワークの強さを認めながらも、堀を強いではなく普通と判断する。
資本効率は大きく改善した。2023年から2025年まで営業利益率は25%前後で、旅行需要の回復と規模の拡大が効いた。一方、過去10年のROE中央値は1.9%と低く、パンデミックによる赤字や過去の買収による大きなのれんが残る。2025年のROE18.9%には投資売却益の影響があるため、恒常的な再投資利回りの証拠にはできない。今後の増分利益が成長に必要な自己資本を上回って生まれるかを重視する。
2025年の株式報酬は約3.3億ドルで、費用として利益に含まれている。自社株買いの総額をそのまま還元とみなせず、株式報酬による持分希薄化を差し引く必要がある。中国本土の規制事業を支えるVIE、すなわち契約による支配の仕組みもある。2025年にはVIE関連事業が純売上の約19%を占めた。香港と米国の上場があっても、株主が中国の事業資産を直接所有しているわけではない点は忘れられない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
中国の旅行市場そのものは大きい。政府統計では2025年の国内旅行は約65億回、支出額は6.3兆元だった。2030年には国内旅行83億回を目指す計画が示されている。ただし2026年1〜9月の国内旅行回数の伸びは6.2%、支出額の伸びは2.2%であり、2025年の回復ペースがそのまま続くとは限らない。人口の高齢化と消費者の価格志向が強まる中、旅行回数は増えても一回当たり支出は伸びにくくなっている。
競争の中心は中国では美団、アリババ系の飛猪、同程旅行、抖音などである。2024年のオンライン旅行予約でトリップ・ドットコムのシェアは約56%と推計され、オンラインホテル予約では2020年から2025年まで一貫して過半を占めていたと中国当局が認定している。ただし会社全体の海外を含むシェアではない。同程旅行には同社が少数持分を保有しており、単純な独立競合関係でもない。美団は地域の飲食や生活サービスからホテル予約に送客でき、飛猪はアリババの購買基盤を使える。双方とも既存顧客の獲得費用を下げられるため、競争が長引く力を持つ。
海外ではブッキング・ホールディングス、エクスペディア、エアビーアンドビー、航空会社とホテルの直接予約が競争相手だ。2025年の国際OTAの予約件数は約60%増加し、外国人の訪中旅行者も約2000万人取り込んだ。しかし海外は中国ほどシェアが高くなく、先行投資と販売促進費がかかる。海外の成長率をそのまま全社の営業利益成長率に変換することはできない。
10年の中立では、中国の国内旅行回数の実質増加は徐々に年2〜3%へ落ち、海外・訪中旅行がそれを上回るとみる。ホテル予約取扱高は実質で約1.7倍、交通予約は約1.4倍となるが、ホテル手数料の実質比率は規制と競争で低下する。楽観では海外の予約網が広がって中国国内の鈍化を補い、悲観ではAIエージェントが予約の入口を握って手数料交渉力を弱める。ホテルの在庫と旅行者の接点を誰が持つかが、業界の利益配分を決める。
資本政策と M&A
資本配分の歴史には成功と負担の両方がある。2015年の去哪儿の連結、2016年のスカイスキャナー買収は、中国の予約市場での地位と国際的な航空券検索網を築いた。一方、買収に伴うのれんや無形資産は大きく、過去の投資が常に資本コストを超える利益を生んだとはいえない。2025年にはインドのメイクマイトリップ持分の一部を約30億ドルで売却し、投資資金を回収した。ただしこの売却益は継続的な旅行予約利益ではない。
株主還元は2023年に裁量的な方針を設け、2024年から再開した。2025年は配当約2.1億ドル、自社株買い約6.1億ドルを実施し、8月には最大50億ドルの新たな自社株買い枠を承認した。これは買付上限であって、実施時期と全額執行の保証ではない。2025年の株式報酬約3.3億ドルを差し引くと、正味の還元は約5億ドルにとどまる。将来の10年累計還元額は会社の約束ではなく、各筋書きの予測である。
2025年末には純現金が約67億ドルあり、財務的な余力は大きい。ただし顧客前受金、供給業者への支払い、現地の運転資金と海外への送金条件があるため、全額を自由な株主資金とはみない。2026年の制裁と事業条件の是正は、現金の流出に加えて今後の利益率にも影響する。会社全体について公表済みの買収合意、非公開化、上場廃止の確定計画、継続企業の前提に関する重大な不確実性は確認できない。2035年の長期売上や還元率に関する拘束力のある数値目標も確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中国の旅行市場で長期間にわたり高いシェアを維持し、2025年の予約取扱高が1兆元を超えた事実には大きな意味がある。旅行者は航空券と宿泊先を一度に探せることを重視し、予約後の変更や返金まで安心して任せられるブランドを選ぶ。宿泊施設は大勢の利用者に販売できる販路を簡単には捨てられない。独禁法上問題となった条件をなくしても、170万件の宿泊施設と多数の航空会社を結ぶ供給網そのものはなくならない。
国内の顧客基盤はさらに海外へ伸ばせる。2025年に国際OTAの予約件数は約60%増え、2026年第2四半期の国際プラットフォーム売上も50%超の成長を続けた。中国の訪日、東南アジア、欧州への旅行需要が増えれば、Trip.comが新しい利用者を獲得する余地は大きい。スカイスキャナーで旅行を探す利用者を自社予約へつなげられれば、広告費を過度に増やさず顧客を増やせる。海外市場では競合のブッキングやエクスペディアが既に高い利益を稼いでおり、旅行予約事業が成熟後も収益性を保つことは不可能ではない。
AIも必ずしも敵ではない。AIによる旅程提案を自社アプリに組み込み、世界各地の在庫を検索して予約まで完了できれば、利用者の時間を節約できる。自社の利用者を維持したままサポート業務を効率化できれば営業利益率の上昇につながる。ただし新しいAIサービス自体による売上の定量的な裏付けは不足しているため、この上振れは既存予約事業の改善として考えるべきだ。
2025年の投資資産売却は現金の回収につながり、最大50億ドルの自社株買い枠もある。今後の成長投資を内部資金で賄いながら還元を増やせれば、少数株主にも価値が届く。中国市場で首位を維持しつつ海外で利益を増やす場合、10年後の営業利益は2025年の倍以上になり、十分な資本配分が伴えば大きな株主価値を生みうる。
慎重な見方
独禁法処分は単なる一時費用ではない。中国当局はホテルとの排他的な契約と不合理な取引条件を問題とし、制裁金と違法所得の没収を命じた。会社は条件変更を受け入れている。これまでの高いホテル手数料の一部が市場支配力を使った取引条件によって支えられていたなら、その利益は永続しない。ホテルが美団、飛猪、同程旅行、直接予約へ自由に販売できるようになれば、予約サイト間の価格競争は強まる。取扱高が増えても、収益率が下がれば利益は伸びない。
もう一つの脅威はAIエージェント代替である。現在は旅行者が比較サイトや予約アプリを開き、検索結果を見て選ぶ。将来はAIが旅程を組み、複数の予約経路を比較して最も都合のよい場所で購入する可能性がある。そうなると予約画面への訪問数が減り、上位表示広告や比較画面の価値が低下する。ホテルと航空会社は自社の予約APIをAIへ直接提供でき、プラットフォームの手数料を交渉する力も増す。予約の成立と顧客サポートは残っても、入口を失う損失は大きい。
国際事業の急成長も過大評価できない。ブッキングとエクスペディアは宿泊施設との長い関係があり、中国以外ではTrip.comのシェアがまだ小さい。利用者を増やすための広告費、現地対応、決済、規制対応が重くなれば、売上の成長が株主利益に変わらない。中国の人口構造と景気も逆風となりうる。
2025年のGAAP純利益には投資売却益が含まれるため、今の利益を元に高い成長率を延ばすのは誤りだ。VIEを通じた事業支配、海外送金規制、株式報酬による希薄化、過去の買収で残ったのれんも、少数株主にとっては無視できない。最も悪い場合には予約事業の利益が資本コストを大きく下回り、帳簿上の自己資本ではなく現金と売れる投資資産だけが株主価値の主な支えとなる。
どちらに重みを置いたか
予約網の大きさと海外成長には十分な根拠があり、事業が10年後も存在するという判断は変わらない。一方で、2026年の独禁法処分は実際に発生した構造変化であり、将来の手数料と契約条件に影響する。AIによる予約導線の変化も、比較サイトと広告にとって具体的な危険である。
そのため楽観とやや楽観を合計27%、中立を30%、やや悲観と悲観を合計43%とした。同じ旅行プラットフォームでも、中国の規制対応とVIEを抱える同社は、ブッキングより悲観側を厚くする理由がある。中立の本業収益は伸びるが、確率加重した現在価値は基準時価総額を約26%下回る。利益の質と資本配分が改善する余地は認めつつ、現時点の結論はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 48.17 ドル305 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 11.90 ドル75 億ドル)。 今の値に割り戻すと 29.22 ドル185 億ドル、今との差 −26.2%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 103.43 ドル654 億ドル | 17.40 ドル110 億ドル | +205.2% | +13.1% | 12.08 ドル76 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 80.16 ドル507 億ドル | 18.19 ドル115 億ドル | +148.4% | +10.8% | 16.72 ドル106 億ドル |
| 中立 | 30% | 57.68 ドル365 億ドル | 17.40 ドル110 億ドル | +89.6% | +7.7% | 22.52 ドル142 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 17.67 ドル112 億ドル | 7.12 ドル45 億ドル | −37.4% | −5.2% | 6.45 ドル41 億ドル |
| 悲観 | 17% | 13.54 ドル86 億ドル | 0.00 ドル0 億ドル | −65.8% | −10.2% | 2.30 ドル15 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 48.17 ドル305 億ドル | 11.90 ドル75 億ドル | +51.7% | +4.8% | 60.07 ドル380 億ドル |
今の株価時価総額 39.59 ドル250 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:海外予約網が育ち、規制後も高い予約品質で顧客を守る 利益 51 億ドル · PER 12.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 103.43 ドル654 億ドル
2035年には中国の国内旅行が成熟しても、海外と訪中旅行の拡大が全社の予約を押し上げる。ホテルの実質取扱高は850億ドルとなり、国際予約網の拡大で中国国内のシェア低下を補う。ホテルの実効手数料率は2025年とほぼ同水準を保ち、物価上昇と予約件数の増加が売上に反映される。交通予約も国際線の回復と利用地域の拡大によって伸びる。
独禁法上の問題があったホテルとの契約は是正されるが、旅行者とホテルが予約網から離れない。美団や飛猪が価格で競争しても、変更・返金対応、海外ホテルの在庫、複数言語のサービスで差を保つ。スカイスキャナーとTrip.comの送客が効率的に結び付き、海外の販売促進費が売上ほどには増えなくなる。
AIは自社の予約を使いやすくする手段となり、第三者エージェントにも予約在庫を提供することで顧客との接点を守る。ただしAI製品自体から新しい売上が生まれるという未確認の利益は含めない。法人出張も企業の予約管理を効率化し、サービス収入が増える。
投資有価証券の大規模な売却益は繰り返さず、本業のGAAP純利益が2035年に50.5億ドルへ伸びる。10年間の純利益累計は339億ドルとなり、正味110億ドルを還元する。資本配分が改善し、海外成長のための投資が資本コストを超える利益を生む。
- 宿泊予約:数量 850(宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.13(宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入)→ 売上 109 億ドル・営業利益 34 億ドル。実質取扱高は2025年比2.13倍。海外比率が上昇し、実質手数料率はほぼ維持する。
- 交通予約:数量 1,420(航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.06(交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入)→ 売上 80 億ドル・営業利益 17 億ドル。国際航空券の増加で実質取扱高は1.81倍。関連サービスの収益率を維持する。
- 旅行商品・パッケージツアー:数量 155(パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.13(旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料)→ 売上 20 億ドル・営業利益 3 億ドル。海外の現地観光商品が増え、予約取扱高は2.14倍。
- 法人出張管理:数量 145(法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.07(法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入)→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。海外企業の利用が増え、予約処理の自動化で利益率が改善する。
- 自社媒体広告・金融関連サービス:数量 1,500(自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.01(送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益)→ 売上 11 億ドル・営業利益 4 億ドル。AI代替後も自社媒体を守るが、送客可能数量は2025年比0.95倍にとどめる。新たなAI製品売上は含めない。
倍率:k8.5%、長期g2.0%、moat normalで残る割合0.5。現金利息控除後の事業純利益は49.52億ドル、事業に要る自己資本は473.6−70=403.6億ドルで、事業ROEは12.27%。RONICは8.5%+0.5×(12.27%−8.5%)=10.38%。正当化PERは(1−2.0%÷10.38%)÷(8.5%−2.0%)×1.02=約12.67倍。高い利益の質を認め、上限の約98.7%に当たる12.5倍とする。時価総額は(50.5−70×0.014)×12.5+70×0.5=654.0億ドル。
確率:中国の国内旅行予約で首位を守りながら海外のTrip.comが大きなシェアを獲得する筋書き。規制条件を完全に守り、手数料の実質的な低下が小さく、海外集客費の効率も改善する必要がある。全条件が揃う可能性を10%とした。
やや楽観 17% やや楽観:規制下でも首位を維持し、海外の成長が国内を補う 利益 40 億ドル · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 80.16 ドル507 億ドル
2035年のホテル予約取扱高は実質760億ドルとなる。中国国内では美団と飛猪がシェアを伸ばすが、携程と去哪儿は大規模な予約網を守る。手数料率は実質で緩やかに低下するものの、宿泊単価の名目上昇と海外ホテル予約の増加が売上を支える。交通予約では航空券の販売が広がり、取扱高は1250億ドルとなる。
海外のTrip.comは東南アジアと訪中旅行を中心に成長するが、世界市場でブッキングに並ぶほどのシェアは獲得しない。スカイスキャナーの検索利用者の一部を予約へ誘導できるものの、広告と技術開発への投資は続く。営業利益率はホテルが30%、交通が20%となり、全社では24%台に落ち着く。
AIエージェントは一部の旅行者の検索行動を代替し、画面広告の価値を削る。ただし予約の確定、決済、取消し、旅行中の問い合わせを担う役割は残るため、本業の取扱高は増える。会社は独禁法上問題のある契約を使わず、サービス品質を競争力の中心に据える。
2035年のGAAP純利益は40.2億ドル、10年間の累計利益は255億ドルとなる。正味115億ドルを株主へ還元するが、大型投資のための資金も残す。海外での顧客獲得は成功するものの、過去の強い手数料決定力が完全に戻るわけではない。
- 宿泊予約:数量 760(宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.12(宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入)→ 売上 91 億ドル・営業利益 27 億ドル。海外の拡大で実質取扱高1.90倍。ホテル実質手数料率は小幅低下。
- 交通予約:数量 1,250(航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.05(交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入)→ 売上 66 億ドル・営業利益 13 億ドル。実質取扱高1.59倍。航空会社との競争で収益率がやや低下する。
- 旅行商品・パッケージツアー:数量 132(パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.12(旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料)→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。海外の現地ツアー商品が増える。
- 法人出張管理:数量 126(法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.07(法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。法人出張の手配件数が増え、管理サービスの収益性も改善する。
- 自社媒体広告・金融関連サービス:数量 1,400(自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.01(送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益)→ 売上 10 億ドル・営業利益 3 億ドル。広告への送客可能数量は0.89倍。AIによる画面訪問の減少を含む。
倍率:k8.5%、g2.0%、moat normal。現金利息控除後の純利益39.5億ドル、事業自己資本334.6億ドル、事業ROE11.81%。RONICは10.15%、正当化PERは10年目の利益に対し約12.60倍。競争と海外集客費を考慮し、上限の約96.8%に当たる12.2倍とする。時価総額は(40.2−50×0.014)×12.2+50×0.5=506.9億ドル。
確率:規制後のホテル手数料がやや低下しても、国内の予約網は維持され、海外事業が順調に拡大する可能性を17%とした。海外でブッキングやエクスペディアとの競争は残るため、最大の楽観よりは実現しやすい。
中立 30% 中立:予約件数は伸びるが、ホテルの収益率と株主利益は平準化する 利益 30 億ドル · PER 11.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 57.68 ドル365 億ドル
2035年のホテル予約取扱高は実質670億ドルとなり、2025年の約1.7倍へ増える。中国国内の旅行需要は伸びるが、美団、飛猪、同程旅行との競争でオンラインホテル予約のシェアは現在の過半から徐々に低下する。海外のTrip.comがその一部を補い、全社の予約数量は増える。ホテルの実質手数料率は2025年より約15%下がるが、物価上昇を含む名目収益は維持される。
交通予約は航空券や鉄道の需要に沿って実質1.4倍へ増える。航空会社の直接販売と他の予約サイトとの競争で、関連サービスの実質収益率は約1割低下する。パッケージ旅行と法人出張は成長するものの、全社の利益を左右するのはホテル予約の収益性である。
AIエージェントは旅行者が比較画面へアクセスする回数を減らす。その他の広告・情報関連サービスでは、送客可能数量が2025年の0.80倍となり、名目収益単価も1.10倍にとどまる。予約決済やキャンセル対応の機能は残るため、ホテルと交通の取扱高は減らさない。ただしその収益率にはAIによる交渉力低下を織り込む。
全社売上は約157億ドル、営業利益は約35億ドル、GAAP純利益は30億ドルとなる。10年間の純利益累計は203億ドル、正味の還元は110億ドルである。2026年の制裁費用と利益の正常化を含み、2025年の投資売却益は繰り返さない。2023〜2025年の高い営業利益率は一部薄れるが、予約事業としての収益力は残る。
- 宿泊予約:数量 670(宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.11(宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入)→ 売上 73 億ドル・営業利益 20 億ドル。実質取扱高1.68倍、価格1.20倍。物価1.41倍に対して手数料率の実質低下が約15%ある。
- 交通予約:数量 1,100(航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.05(交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入)→ 売上 56 億ドル・営業利益 10 億ドル。実質取扱高1.40倍、価格1.27倍。航空会社の直販で実質収益率が低下する。
- 旅行商品・パッケージツアー:数量 115(パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.12(旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。国内と海外のツアー需要が増えるが、販売手数料の実質上昇はない。
- 法人出張管理:数量 110(法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.06(法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。予約取扱高1.40倍、価格1.26倍。事務作業の自動化により契約単価は物価を下回る。
- 自社媒体広告・金融関連サービス:数量 1,258(自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.01(送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益)→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。画面依存の広告・情報収益はAIエージェント代替で数量0.80倍、名目価格約1.10倍。
倍率:k8.5%、長期g2.0%。2035年の余剰現金32億ドルの税引き後利息0.448億ドルを純利益から控除し、事業純利益29.552億ドルとする。事業自己資本は337.6−32=305.6億ドル、事業ROEは9.67%。普通の堀としてRONICは8.5%+0.5×(9.67%−8.5%)=9.09%。正当化PERの上限は約12.24倍で、その約96.4%に当たる11.8倍を用いる。高い配当持続力ではなく、予約と決済の事業が残ることを評価する。時価総額は29.552×11.8+32×0.5=364.71億ドル。
確率:中国国内旅行の実質成長が徐々に鈍化する一方、海外予約は成長を続ける。国内のシェアは規制後に緩やかに低下し、実質の手数料率も下がる。規制変更が既に発生しているため、この条件を中立に含めて30%とした。
やや悲観 26% やや悲観:ホテルの手数料が下がり、海外集客費が利益を圧迫する 利益 13 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 17.67 ドル112 億ドル
中国のオンライン旅行市場は成長するが、携程と去哪儿の支配力は明確に弱まる。美団と飛猪がホテルへの送客を増やし、同程旅行も地方都市と低価格旅行でシェアを伸ばす。ホテルが複数の予約サイトへ同じ在庫を出せるようになり、トリップ・ドットコムの実効手数料率は大きく下がる。2035年のホテル取扱高は実質500億ドルと増えるが、売上は45億ドルにとどまる。
交通予約も航空会社との直接予約競争が強まり、関連サービスの手数料率が低下する。海外のTrip.comは利用者を増やすものの、ブッキングやエクスペディアとの広告競争が厳しく、集客費を十分に回収できない。パッケージ旅行と法人出張でも事務の自動化が進み、サービス料金の値上げは難しくなる。
AIエージェントが予約の比較と手配を代行し、スカイスキャナーなどの検索を経由せずに購入する利用者が増える。予約機能そのものは必要だが、広告枠や検索誘導から得る利益は減る。自社の顧客基盤を守るため、販売促進費と開発費は売上ほど下がらない。
全社営業利益は17億ドル、純利益は13億ドルとなる。10年間の純利益累計は105億ドルで、正味還元は45億ドルへ縮小する。余剰現金の一部は海外投資や競争対応に使われる。会社は存続するが、株主が受け取る利益は成熟した首位企業というより、競争の強い旅行仲介業者に近づく。
- 宿泊予約:数量 500(宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.09(宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入)→ 売上 45 億ドル・営業利益 11 億ドル。取扱高は増えても、独禁法対応と競争でホテルの実質手数料率が大幅に低下する。
- 交通予約:数量 900(航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.04(交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入)→ 売上 38 億ドル・営業利益 5 億ドル。航空会社直販が進み、関連サービスの収益率が低下する。
- 旅行商品・パッケージツアー:数量 85.0(パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.11(旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料)→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。他社商品との比較競争で紹介手数料が伸びない。
- 法人出張管理:数量 90.0(法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.06(法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。法人出張の管理機能が自動化され、単価競争が進む。
- 自社媒体広告・金融関連サービス:数量 1,000(自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.01(送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。AIによる検索と予約導線の代替で、広告への送客可能数量は0.64倍。
倍率:k8.5%。余剰現金の利息を除いた事業純利益は13−20×0.014=12.72億ドル、事業自己資本は284.6億ドル、事業ROEは4.47%で資本コストを下回る。資本を再投資しても価値を増やしにくいため、PERは1÷k=11.76倍以下とし、競争の強い事業の利益持続性を考慮して8.0倍とする。現在の自己資本から見た売却可能資産の床より高く、稼ぐ力から求める価値の範囲内にある。時価総額は12.72×8.0+20×0.5=111.76億ドル。
確率:独禁法処分でホテルの契約条件を改め、競争相手が予約在庫へアクセスしやすくなる。さらにAIによる比較サイトの訪問減少が起きる可能性を重く見て26%とした。国内の高いシェアがあるため急激な消滅ではなく、緩やかな利益率低下とする。
悲観 17% 悲観:予約の入口を失い、手数料収益が構造的に崩れる 利益 3 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 13.54 ドル86 億ドル
2035年には旅行の予約方法が大きく変わっている。利用者はAIエージェントに希望を伝え、ホテルや航空会社の予約APIから直接条件を比較して購入する。携程と去哪儿の予約画面を開く必要が減り、検索順位を上げる広告と予約を囲い込む手法の価値が弱まる。ホテルと航空会社は美団、飛猪、同程旅行、自社直販を使い分け、トリップ・ドットコムの手数料交渉力は大きく低下する。
ホテルの実質取扱高は350億ドルに縮み、名目手数料収入も25億ドル程度となる。交通予約の取扱高は670億ドルで、関連サービスの収益率が大幅に下がる。パッケージ旅行と法人出張の収益性も失われ、広告や情報サービスは画面訪問数の減少に直撃される。海外のTrip.comはブッキングやエクスペディアに十分なシェアを奪えず、集客費を削って縮小均衡へ向かう。
2026年以降の規制対応と競争によって、途中の複数年には赤字が発生する。初期の利益と後半の小幅な黒字が相殺され、10年間の純利益累計はほぼゼロとなる。2035年の営業利益は約4億ドル、純利益は3億ドルにとどまる。新たな株主還元は停止し、余剰現金の一部が事業維持費に使われる。
この状態では、のれんや過去のブランド取得費用を額面で評価できない。株主価値の中心は現金と換金できる投資資産になる。会社の消滅や破産までは前提とせず、現在の自己資本を基準とする保守的な資産価値で評価する。中国におけるVIEと資金移動の制約があるため、帳簿の全額が株主へ返るわけではない。
- 宿泊予約:数量 350(宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.07(宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入)→ 売上 25 億ドル・営業利益 3 億ドル。ホテルの取扱高が縮み、実質手数料率は2025年から4割以上低下する。
- 交通予約:数量 670(航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.03(交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入)→ 売上 23 億ドル・営業利益 1 億ドル。航空会社の直販とAI経由の販売に取扱高を奪われる。
- 旅行商品・パッケージツアー:数量 58.0(パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.09(旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料)→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。商品は残るが紹介手数料が費用を賄うだけになる。
- 法人出張管理:数量 60.0(法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.05(法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。企業のAI内製化と競合サービスで料金が下がる。
- 自社媒体広告・金融関連サービス:数量 650(自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル)× 価格 0.00(送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。AIエージェント代替で送客可能数量は0.41倍。広告と画面依存の情報収益が構造的に縮小する。
倍率:事業ROEが資本コスト8.5%を大きく下回り、永久の成長を前提とする利益倍率では資産の処分価値を十分に表せない。悲観の床として、将来の積み増し後ではない現在の自己資本244.6億ドルに0.35倍を適用する。85.61億ドルは純現金と税後の売却可能資産から求めた床85億ドルとほぼ一致する。将来ののれんを額面で評価せず、過去の市場PBRの底値から決めた倍率でもない。時価総額は244.6×0.35=85.61億ドル。
確率:中国で大きな競争力を持つ会社が10年かけて構造的に負ける筋書き。独禁法による交渉力の低下、AIエージェントによる検索・予約導線の代替、国内競合の攻勢が重なる場合を17%とする。旅行そのものの消滅ではなく、中間業者としての価値が薄れる場合である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
宿泊予約
携程、去哪儿、Trip.comを通じたホテルとその他宿泊施設の予約仲介。ホテルの予約取扱高に対する手数料が主な収益源であり、独禁法処分の影響を最も受ける事業。
| 数量宿泊予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル | 価格宿泊予約取扱高1ドル当たりの名目実効手数料収入 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 400 | 0.09 | 36 | 12 |
| 10 年後 中立 | 670 | 0.11 | 73 | 20 |
取り方:2025年決算説明会の予約取扱高約2800億元を1ドル約7元で換算して400億ドルとした。ホテル予約収入261億元から求める実効手数料率は約9.3%。添付factsの全社売上86.8億ドルを正とするため、2025年20-Fのサービス別売上構成比で換算し、実効単価を9.06%へ調整した。営業利益12.2億ドルは未開示のため、ホテルの高い収益率と全社の研究開発・広告費配賦から推定。市場シェアは中国オンラインホテル予約で過半という当局認定を用いる。取扱高の資料は2026年2月の決算説明会、https://www.roic.ai/quote/TCOM/transcripts/2025-year/4-quarter 。
交通予約
航空券、鉄道などの交通予約と関連サービス。取扱高に対する手数料率は宿泊予約より低く、航空会社の直販や国際線の供給に左右される。
| 数量航空券を中心とする交通予約取扱高、2025年価格の実質・億ドル | 価格交通予約取扱高1ドル当たりの名目関連サービス収入 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 786 | 0.04 | 31 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.05 | 56 | 10 |
取り方:2025年決算説明会で航空券取扱高が約5500億元と開示された。約786億ドルに換算し、20-Fの交通予約収入225億元を参照した。交通予約収入には航空券以外の鉄道や関連サービスを含むため、ここでの約4.0%は全社の交通関連収入を航空券取扱高で近似した実効収益率であり、純粋な航空券手数料率ではない。添付factsの全社売上に合わせた値を採用。営業利益5.5億ドルは共通費を配賦した推定値である。
旅行商品・パッケージツアー
提携先の旅行商品、現地観光、ツアーの予約を仲介する。旅行商品の取扱高と紹介手数料から売上を得る。
| 数量パッケージ旅行の取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル | 価格旅行商品取扱高1ドル当たりの名目紹介手数料 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 72.3 | 0.09 | 7 | 1 |
| 10 年後 中立 | 115 | 0.12 | 14 | 2 |
取り方:20-Fの2025年パッケージツアー収入46.88億元を使用。サービス別取扱高は開示されていないため、紹介手数料率を9%と仮定して実質取扱高を逆算した推定値である。市場統計から確認できるのは中国の旅行需要全体であり、ツアー単独の市場規模と同社シェアは確認できない。数量の成長率は中国国内旅行の伸びを出発点に、海外旅行商品への拡大を追加して推定した。営業利益は推定配賦額である。
法人出張管理
企業の航空券、ホテル、旅行商品の手配と管理を支援する。主な収益は取引ごとの手数料と契約サービス料であり、単純な席数課金ではない。
| 数量法人出張の予約取扱高推定、2025年価格の実質・億ドル | 価格法人出張予約取扱高1ドル当たりの名目サービス収入 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 78.6 | 0.05 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.06 | 7 | 1 |
取り方:2025年20-Fで法人出張売上は28.29億元、企業との契約に基づくサービス料金が収益とされる。取扱件数と総取扱高は非開示のため、取扱高に対する実効サービス料を5%と仮定して78.6億ドル相当の予約規模を推定した。席数課金のSaaSではなく旅行予約の処理を伴う事業なので、席課金型のAI代替係数を全額には適用しない。管理画面と事務処理の自動化による料金圧力は将来の単価に含める。
自社媒体広告・金融関連サービス
旅行者向け自社媒体の広告、検索・比較サービスからの送客、金融機関向けプラットフォーム料金など。情報提示と操作画面への依存があり、AIエージェント代替の影響が比較的大きい。
| 数量自社画面で広告や金融サービスへ送客できる予約取扱高相当額、2025年価格の実質・億ドル | 価格送客可能な予約取扱高1ドル当たりの広告・金融関連の名目収益 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,572 | 0.01 | 9 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,258 | 0.01 | 8 | 2 |
取り方:2025年20-Fではその他収入64.04億元で、オンライン広告と金融関連サービスが中心とされる。広告表示回数、金融取扱件数、各事業の売上内訳は非開示。会社の中核OTA取扱高約1.1兆元を約1572億ドルに換算し、その取扱高と広告等を発生させる送客機会との関係を近似した。表示回数そのものを開示数量と偽らないための代理指標である。AIエージェント代替の対象はこの画面依存部分とし、中立の送客可能数量を10年で0.80倍、名目単価を1.10倍とする。営業利益は共通費配賦後の推定額である。
リスクと懸念
独占禁止法処分とホテル手数料の恒久的な低下
中国当局は2026年7月に約52億元の制裁金・違法所得没収を命じ、ホテルとの排他的な契約や不合理な取引条件を是正させた。2026年第2四半期にはこの費用により営業赤字となった。最大の問題は一時費用ではなく、ホテルの取引条件が正常化した後も従来の手数料率を維持できるかである。ホテル予約は売上の42%を占めるため、収益率が数ポイント低下すると全社の利益を大きく削る。
AIエージェント代替
旅行者がAIに旅程作成から予約まで任せるようになると、比較サイトと予約アプリへの直接訪問が減る。自社媒体の広告、検索誘導、旅行情報サービスは特に影響を受ける。中立では画面依存の送客可能数量を10年で0.80倍、名目価格を1.10倍としている。ホテルと交通の予約決済機能は残るが、AI経由の販売が増えれば手数料の交渉力も弱まる。自社のAI機能が売上を増やすという定量的な証拠はまだ不足している。
中国競合との価格競争
美団は地域生活サービスからホテル予約へ利用者を送客でき、飛猪はアリババの顧客基盤、同程旅行は交通・地方都市への強みを持つ。独禁法処分によってホテルが複数の販売経路を利用しやすくなると、他社の販売在庫が充実する。競争は利用者向けの割引だけでなく、ホテルが負担する手数料を下げる方向にも働く。予約件数が増えても利益率が下がるリスクがある。
海外展開の費用と投資回収
Trip.comの海外予約は急成長しているが、ブッキングとエクスペディアが既に供給網と顧客を確保している。新しい市場で広告、決済、顧客サポート、言語対応に費用をかけても、十分な取扱高と手数料を得られる保証はない。売上が高い伸びを続けながら営業利益率が低下する可能性がある。海外での投資収益率が資本コスト8.5%を下回るなら、成長自体は株主価値を増やさない。
VIEと中国事業の資金移動
米国ADSはケイマン諸島の持株会社の持分であり、中国本土の一部事業は契約支配によるVIEを通じて運営される。2025年のVIE関連純売上比率は約19%だった。規制変更、契約の執行可能性、海外への資金移動、米国上場制度の変更が株主の取り分を損なう可能性がある。純現金が厚くても、全額が無条件に米国ADR保有者へ返される資金とは限らない。
投資持分の評価益と利益の質
2025年のGAAP純利益46億ドルには、メイクマイトリップ株式の売却など投資関連の利益が含まれる。継続的な旅行予約事業の利益と混ぜると、会社の稼ぐ力を過大に見積もる。2026年第2四半期にも投資有価証券などの評価損益が利益を動かした。長期の企業価値は本業のGAAP利益を中心に測り、保有資産は換金可能額として別に評価する必要がある。
景気、航空運賃、旅行制限
旅行は消費者の所得と景況感、航空機の供給、燃料価格、国際関係に左右される。2020年には売上が大きく減り営業赤字となった。2026年第2四半期にも高いエネルギー価格と地政学的な変動が交通予約の売上を圧迫した。固定的な開発費と販売促進費があるため、予約数量の減少は営業利益を大きく振らす。中国の人口構造と旅行者の価格志向も、10年間の数量と単価に影響する。
今後の分かれ目
- 独禁法対応後もホテル予約取扱高が年10%以上増え、実質手数料率の低下が5%以内に収まるなら
- 予約網の強さが排他的契約に依存していなかった証拠となる。ホテルの利益率がやや楽観に近づくため、楽観側の確率を引き上げる。
- 中国オンラインホテル予約のシェアが過半から40%以下へ落ち、競合の供給在庫が増え続けるなら
- ネットワークの優位が縮小したと判断する。やや悲観の確率を大きく引き上げ、ホテルの取扱数量と実効手数料率を同時に引き下げる。
- Trip.comの国際プラットフォームが3年間で取扱高を2倍以上に増やし、全社営業利益率が25%以上を維持するなら
- 海外成長が国内の規制負担を補っている可能性が高まる。海外の利益率を改善し、やや楽観と楽観の実現可能性を高める。
- AIエージェント経由の予約が急増し、広告や検索関連の収益が2年連続で減少するなら
- その他の画面依存収益の数量を悲観側へ近づける。同時にホテルと交通の実効手数料率を確認し、AIによる交渉力低下が本業へ波及しているかを判断する。
- 大規模な自社株買いの実行後も株式報酬による希薄化が続き、純現金が積み上がり続けるなら
- 正味の還元と現金の株主帰属を低く評価する。公表された買戻し枠ではなく、実際に減った株数と支払われた配当から資本配分を再評価する。
- 2027年以降のGAAP利益から一時的な評価損益が減り、純利益と営業利益の関係が安定するなら
- 本業の利益と投資資産の価値をより正確に区別できる。営業利益率と正味の還元が中立以上を保つ場合には、利益予測への確信度を高める。
- 中国の海外送金やVIEに関する規制が強化され、保有現金の親会社への移転が制限されるなら
- 余剰現金の株主帰属価値を低下させ、悲観の確率を上げる。帳簿上の純資産が大きいだけでは、少数株主に安全域があるとは判断しない。
見ておくもの
- 中国オンラインホテル予約における携程・去哪儿のシェアと美団・飛猪・同程旅行の変化
- 宿泊予約取扱高と宿泊予約売上の伸びの差から求める実効手数料率
- 交通予約取扱高と関連サービス収入の伸び、航空会社の直販比率
- 独禁法処分に伴うホテルとの契約条件変更と、追加の規制対応費用
- Trip.comの国際予約件数、国際売上、集客費用と海外事業の収益性
- AIエージェント経由の予約比率、スカイスキャナーの検索利用と広告収入
- 営業利益率、GAAP純利益、投資有価証券の売却益・評価損益
- 純現金、投資有価証券、株式報酬、配当、実施済み自社株買いの正味額
- VIE関連売上と中国本土から香港・持株会社への資金移動
倍率と資本コストの決め方
今の株価や過去・同業のPER、PBRを10年後の倍率の根拠には使っていない。2025年の宿泊・交通予約取扱高とサービス別収入から数量と単価を分け、その他の事業も開示の限界を明記して積み上げた。2025年の投資売却益は将来の営業利益に繰り返し計上せず、余剰現金の利息は事業利益から控除した。普通の堀、k8.5%、長期g2.0%と事業ROEから正当化PERを求め、楽観から中立を上限の7〜10割の範囲に収めた。中立は上限の約96.4%であり、規制とAIの損失は主に数量・単価と悲観確率へ反映した。2026年の制裁費用は利益の道筋に含め、2025年の異常なGAAP純利益から10年累計利益を機械的に外挿していない。各筋書きの自己資本は244.6億ドル+10年間の利益累計−正味還元と一致する。総合の差が約マイナス26%となったのは、これらの前提からの結果であり、値段に合わせて倍率を調整していない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。資本コストは基本8.0%+quality0.5%=8.5%。β、市場のPER、中国企業への一律上乗せは使わない。事業の継続性と財務の健全性からdistress上乗せは不要である。独禁法違反、VIE、国際展開の失敗、AI代替は利益の筋書きと確率に反映する。