結論
アルタ・ビューティは、化粧品・スキンケア・ヘア・香水を、ドラッグストア並みの値ごろ品から百貨店級の高級品、店内の美容室・まつげ・眉のサービスまで一つの店で売る米国最大の美容専門小売である。2026 年 1 月期(会社の 2025 会計年度)は売上 124 億ドル、営業利益率 12.4%、純利益 11.5 億ドルで、帳簿の自己資本利益率は 41% と高い。店は 1,622(米国 1,534・海外 88)、会員制度の会員は 4,000 万人台で売上の大半を会員が占める。強みは品ぞろえの広さと会員データ、弱みは高級帯でセフォラ、低価格帯でターゲット・ウォルマート・アマゾンに挟まれていること。10 年の中立の筋書きは、米国の美容市場が実質で年 +0.8%、同社のシェアが 2% 増、価格が物価並み(1.41 倍)で売上は約 198 億ドル、営業利益率は 12.6% 前後で純利益は約 18.4 億ドル。10 年後の倍率は資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k)で、資本コストを超える稼ぎは先で薄れる。事業の ROE 38%・g 4% で上限 17.3 倍)の 80% の約 13.9 倍で、今の 22 倍よりかなり低い。悲観の筋書きは、10 年後にセフォラ・アマゾン・ターゲットにシェアを奪われ、もう優良でなくなる構造的な後退で、12% を置いた。計算の結論は、確率で重みをつけた価値が今の値段を約 26% 下回る(やや割高)。中立の 10 年の年率は +4.3% で資本コストに届かず、利益率が 12% を割り込む筋書きにさらに敏感である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見る点は三つある。第一に、10 年後もこの事業は存在し、今より強いか。化粧品は景気が悪くても買われ、実店舗の体験(試す・相談する・美容室)はネットで置き換えにくいので存在は確かだ。ただし堀は中程度で、広い品ぞろえと会員は強みだが、ブランド各社にとって販売の入口が増えるほど、店が握る力は弱まる。第二に、オーナー利益(株主のものになる利益)は大きい。設備投資が軽く、純利益 11.5 億ドルのほぼ全額を還元できる。ただし 2025 年度に売上が +9.7% 伸びても営業利益率が 1.5 ポイント落ちており、利益の質は売上の伸びほど良くない。第三に、資本配分は良いが、割高な時期の自社株買いは価値を削る。今の PER 22 倍は、利益ベースの中立の倍率(約 13.9 倍)より高い。安全域の見方は、中立の 10 年の年率が +4.3% と資本コスト 8.75% に届かず、確率で重みをつけた価値も今の値段を約 26% 下回り、シェアを失う悲観の筋書きが 12% あり、利益率が 12% を割ると結論がさらに下がることから、安全域は無い。事業は予測可能性が比較的高く(来店の頻度が高く、景気の谷でも赤字にならない)、確信度は中程度である。バリュー投資家なら、良い事業だが値段が高い会社として、利益率の下げ止まりを見ながら待つ。
何で稼ぐ会社か
売上の約 37% が化粧品、24% がスキンケアとウェルネス、20% がヘア(シャンプーから高級ヘアツールまで)、13% が香水、4% が店内サービス(美容室・まつげ・眉)で、残りがその他である。品ぞろえはロレアル・エスティローダー・e.l.f.(エルフ・ビューティ)・コティなど数百のブランドで、マス(ドラッグストア価格)とプレステージ(百貨店・セフォラ級)を同じ棚に並べる点が最大の特徴である。会員制度(アルタメイト・リワーズ)の会員は 4,000 万人台で、売上の大半が会員の購入であり、購買履歴を使った割引と新商品の案内で再来店を促す。店は約 1,600 で、郊外のショッピングセンターに大型店(約 1 万平方フィート)を置き、多くに美容室を持つ。2025 年にスペース NK(英国・アイルランドの高級美容専門店。数十店)を買収し、海外の足がかりにした。ほかにメキシコなど提携先の出店もある。米国ではターゲットの店内にアルタの売り場を出す提携(850 店超)もあり、店の少ない地域の客と来店のきっかけを取る。電子商取引(アプリ・サイト)は売上の 2 割台と見られ、店舗とネットが在庫を共有する。収益の形は、粗利益率が 39% 前後と高く、店の賃料・人件費・広告費がかかり、営業利益率は 12〜13% に収まる。固定費が重いので、既存店売上が +3% を割ると利益率が下がりやすく、+5% 前後なら利益率が上がる。設備投資は年 4〜4.5 億ドルと軽く、稼いだ現金の大半を自社株買いに回す。
優良さと弱いところ
優良さの核は三つある。第一に、品ぞろえの広さである。ブランド各社にとって、マスとプレステージの両方の客に届く米国で唯一の店であり、新ブランドが最初に棚を取りたがる場所になっている。第二に、会員データである。購入履歴から客ごとに割引・提案を変えられるので、同じ商品を売る競合より再来店が多く、広告費の効率も高い。第三に、資本の軽さである。設備投資は売上の 3% 前後、在庫は 24 億ドルで前年と同水準、借金はほぼ無く(リースを除く)、利益の大半を自社株買いに回しても足りる。帳簿の ROE が 41% と高いのは事業の軽さと自社株買いによる。弱い所は明確である。(1)堀は中程度で、価格を決める力は低い。化粧品は同じ商品がセフォラ・ターゲット・アマゾン・ブランドの直販で買え、客は値段と品ぞろえで簡単に移る。(2)高級帯ではセフォラ(LVMH 傘下)が先行し、コールズの店内にも店を出している。(3)2025 年度は売上が +9.7% 伸びたのに営業利益率が 13.9% から 12.4% に落ちた(成果給・店の人件費・基盤投資で販管費率が 24.9% から 26.6% に上がった)。売上を伸ばしても利益を守れない面がある。(4)2024 年に最高経営責任者が替わった後の戦略「アルタ・ビューティ・アンリーシュド」はまだ実績が乏しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の美容市場は、2025 年にプレステージが 360 億ドル(+4%)、マスが 727 億ドル(+5%)で合計約 1,087 億ドル(調査会社サーカナの値)。名目で年 +4〜5% の伸びだが、物価 3.5% を除けば実質 +1% 前後で、化粧品は景気が悪くても口紅効果で落ちにくい。2025 年はヘア(高級帯)と香水(マスで +17%)が伸び、プレステージとマスの境が溶けて、価格の高いブランドがマスの店に、安いプレステージブランドが高級店に並ぶ動きが続く。競合は五つに分かれる。(1)セフォラ:高級帯の最大手で、LVMH の資金力で米国の店を増やし、コールズ内にも出店。アルタの最大の競合。(2)アマゾン・ウォルマート・ターゲット:低価格〜中価格帯で品ぞろえを広げ、ターゲットはアルタ・セフォラ両方の売り場を入れた。(3)ドラッグストア(CVS・ウォルグリーン):店の数は多いが品ぞろえは薄く、閉店が続く。(4)ブランドの直販(動画販売含む):若い世代の発見の場。(5)専門店のスペース NK(同社が買収済み)など。10 年の構造は、(1)美容市場は実質 +1% 前後で安定した伸び、(2)スキンケア・ウェルネス・香水・ヘアの高単価化、(3)実店舗の体験と会員の価値、(4)競合の店の増加、(5)人件費が物価を上回って上がる、の 5 点である。リスクは、セフォラとの価格競争、動画販売による発見の場の移動、AI を使った購買の入口が会員制度を迂回すること。関税は化粧品の調達が分散しているので家具ほど効かないが、容器・包装の輸入原価が上がる。今の水準が続くことを中立とする。
資本政策と M&A
還元は自社株買いが中心で、配当は無い。2025 年度は自社株買い 8.9 億ドル(純利益の 77%)、株数は年 4〜5% 減ってきた。2024 年 10 月に 30 億ドルの買い戻し枠を作り、残りは 10 億ドル。2026 年度の買い戻しを 15 億ドルから 18 億ドルに増やし、上期に 7.9 億ドルを使った。このため短期借入が 3.4 億ドル、現金が 1.6 億ドルと、純でわずかに借りる形になるが、利払いは小さい。買収はスペース NK(英国)が最初の本格的な海外で、規模は売上の 3〜4% 程度。大型買収で価値を壊す心配は小さいが、海外は利益率が低く(推定 8% 前後)、投資の回収に時間がかかる。経営陣の資本配分は、軽い設備投資と高い還元で株主向けだが、自社株買いは株価が高い時期にも続けており、2025 年度の買い戻しの平均価格は今の株価と近い。10 年間の還元は純利益の合計から、伸びに要る投資(増えた利益 ÷ 事業の ROE)を引いた額として置いた。TOB・再編の可能性は小さい(時価総額 250 億ドルで、ブランド各社も同業の大手も買い手になりにくい)。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 7.9 億ドル(10-Q・2026 年 2 月〜8 月 1 日)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アルタは、マスとプレステージを一つの店で売る米国で唯一の美容専門小売で、ブランド各社にとって欠かせない販売の入口である。2025 年度は売上が +9.7%、既存店が +5.4%(客数 +2.0%・客単価 +3.3%)と伸び、2026 年度も見通しを引き上げて売上 +6.7〜7.2%・営業利益 +8.3〜9.3% とした。これは美容市場の伸び(名目 +4〜5%)を既存店で上回っているということで、シェアを取っている。会員は 4,000 万人台から 2028 年に 5,000 万人を目指し、ターゲット内の売り場は 850 店を超え、店のない地域にも届く。スペース NK で海外の高級帯に入り、サービス(美容室・まつげ)は店への来店のきっかけで、ネットでは置き換えられない。設備投資が軽く、利益の大半を自社株買いに回せるので、利益が伸びなくても一株の価値は年 5% 近く増える。営業利益率は 2022 年度に 16.2% を付けた実績があり、販管費の投資が一巡すれば 13〜14% に戻る余地がある。セフォラが高級帯で伸びても、アルタの客は価格と品ぞろえで選ぶ層で、別の客である。
慎重な見方
アルタの利益率は下がっている。2025 年度は売上が +9.7% 伸びたのに営業利益率は 13.9% から 12.4% に落ち、2026 年度の見通しも営業利益の伸びは売上の伸びと同じ程度で、売上を伸ばしても利益率が上がらない。説明会の目標(約 12%)も、利益率が上がらないと会社自身が見ていることを示す。競合は強い。セフォラは LVMH の資金力で店を増やし、コールズの店内にも出店して、アルタの高級帯の客を取りに来ている。アマゾンとターゲットは品ぞろえを広げ、ブランド各社の直販(動画販売を含む)は若い世代の発見の場を店から奪う。化粧品は同じ商品がどこでも買え、会員の囲い込みは割引でしか効かず、割引は利益率を削る。ターゲット内の売り場は、店のない地域の客を取る一方、アルタの店の客を食う(カニバリ)可能性がある。自社株買いは短期借入で賄い始めており、株価が高い時期の買い戻しは価値を削る。リーマンでは株価が −84%、コロナで −34% 下がり、固定費の重さを考えると今の PER 22 倍は、利益率が 12% を割る筋書きに備えていない。
どちらに重みを置いたか
両方に理がある。強気の見方は、既存店が美容市場を上回って伸びている事実と、資本の軽さに支えられる。慎重な見方は、利益率が売上の伸びについてこないことと、競合の強さに支えられる。10 年の中立の筋書き(市場は実質で小さく伸び、シェア微増、利益率 12.6%)が最も確からしいと見て 36% を置いた。確率は、楽観・やや楽観に合計 28%、やや悲観・悲観に合計 36% と、悲観側に少し寄せた。理由は、利益率が上がらない実績があること、競合の店と売り場が増えていること、固定費が重いこと。ただし事業の質は高く、悲観でも赤字にはならない。利益ベースの倍率(資本コスト 8.75%、上限 17.3 倍の 8 割で約 13.9 倍)では今の値段は中立の価値を上回り、結論はやや割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 557.84 ドル240 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 279.50 ドル120 億ドル)。 今の値に割り戻すと 424.87 ドル183 億ドル、今との差 −33.1%、 期待の年率 +2.8%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 913.05 ドル392 億ドル | 330.81 ドル142 億ドル | +95.9% | +7.0% | 99.51 ドル43 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 725.88 ドル312 億ドル | 307.53 ドル132 億ドル | +62.7% | +5.0% | 206.68 ドル89 億ドル |
| 中立 | 36% | 597.83 ドル257 億ドル | 291.24 ドル125 億ドル | +40.0% | +3.4% | 320.07 ドル137 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 409.50 ドル176 億ドル | 263.30 ドル113 億ドル | +6.0% | +0.6% | 161.47 ドル69 億ドル |
| 悲観 | 12% | 217.67 ドル94 億ドル | 195.79 ドル84 億ドル | −34.9% | −4.2% | 49.61 ドル21 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 557.84 ドル240 億ドル | 279.50 ドル120 億ドル | +31.9% | +2.8% | 837.34 ドル360 億ドル |
今の株価時価総額 635.01 ドル273 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:シェアを 1 割上乗せし、利益率 14% へ 利益 25 億ドル · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 913.05 ドル392 億ドル
米国の美容市場が実質で年 +1.5%(10 年で 1.16 倍。ウェルネス・スキンケア・香水の伸び)、同社のシェアは会員 5,000 万人とターゲット内の売り場・サービスで 1.10 倍、価格は物価 1.41 倍にスキンケア・香水の高単価化を加えて 1.43 倍。米国の売上は 220 億ドル、海外はスペース NK の出店と提携先の出店で 14 億ドル、全体で 234 億ドル。営業利益率は 14.2%(2022 年度の 16.2% と今の 12.4% の間。販管費の効率化と自前ブランド・高粗利の品が効く)、営業利益 33 億ドル、純利益 24.6 億ドル。競合との比較では、セフォラが高級帯で取る分より、ターゲット・アマゾンに流れる中価格帯の客を会員制度の囲い込みで取り戻す分が大きい。この筋書きなら 10 年後の利益は今の 2 倍超、競合に負ければ中立(18.4 億ドル)に戻る。還元は 10 年合計 142 億ドル(自社株買いから株式報酬を引き、伸びに要る投資 29.1 億ドルを除く)、増資は無い。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 9.0 割にあたる 15.9 倍に置いた。
- 米国の美容小売(店舗・ネット・サービス):数量 1,262(米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定))× 価格 17.5%(同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 220 億ドル・営業利益 31 億ドル。米国:市場 × シェア × 価格
- 海外(スペース NK・提携先の出店):数量 290(英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定))× 価格 4.8%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。海外:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、15.9 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 24.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 40.7%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 34%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.2(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 25 億ドル × 15.9 倍で 392 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:市場が実質で年 +1.5%、シェアが 10 年で 1.10 倍、利益率 +1.6 ポイントを同時に満たす筋書き。投資家説明会の目標(利益率 約 12%)を大きく上回るので 8%。
やや楽観 20% やや楽観:市場が小さく伸び、シェアも着実に取る 利益 21 億ドル · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 725.88 ドル312 億ドル
米国の美容市場は実質で年 +1.2%(10 年で 1.13 倍)、シェアは 1.05 倍、価格は物価並みの 1.41 倍。米国の売上は 201 億ドル、海外 12 億ドル、全体 213 億ドル。営業利益率は 13.3%(今より +0.9 ポイント。販管費率が 26.6% から下がり、成果給の負担が正常に戻る)、営業利益 28 億ドル、純利益 21.0 億ドル。会員が 5,000 万人に達し、ヘアと香水が伸び、サービス(まつげ・眉・美容室)が客を店に連れてくる。競合との比較では、セフォラ(コールズ内の店を含む)が高級帯でシェアを伸ばしても、ターゲット・ウォルマートのマス寄りの客が品ぞろえで同社に戻り、差し引きでシェアは少し増える。競合に負ければ利益は 14.3 億ドル程度に下がる。還元は 10 年合計 132 億ドル。倍率は正当化 PER 17.5 倍の 8.5 割にあたる 14.8 倍に置いた。
- 米国の美容小売(店舗・ネット・サービス):数量 1,225(米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定))× 価格 16.4%(同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 201 億ドル・営業利益 27 億ドル。米国:市場 × シェア × 価格
- 海外(スペース NK・提携先の出店):数量 283(英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定))× 価格 4.2%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る)→ 売上 12 億ドル・営業利益 1 億ドル。海外:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.5 倍に対し、14.8 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 23.5%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 38.2%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 31%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.2(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 21 億ドル × 14.8 倍で 312 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:直近の既存店 +5.4%(FY2025)・+3〜4%(FY2026)と、新店の純増が続く場合。利益率は説明会の目標を 1 ポイント強上回る程度で 20%。
中立 36% 中立:市場は実質でわずかに伸び、シェア微増、利益率 12.6% 利益 19 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 597.83 ドル257 億ドル
米国の美容市場は実質で年 +0.8%(10 年で 1.08 倍。業界ノートは ULTA の売上を名目で年 +5〜7% と置くが、会社の説明会の目標 +4〜6% に寄せ、物価 3.5% を除いた分を市場の伸びとシェアに割る)、同社のシェアは 1.02 倍(10 年で約 11.1% → 11.3%)、価格は物価並みの 1.41 倍。米国の売上は 188 億ドル、海外(スペース NK の通年化と緩やかな出店)10 億ドル、全体で 198 億ドル(年 +4.8%。説明会の +4〜6% の中)。営業利益率 12.6%(説明会の 約 12% と今期の見通し 12.6% 前後)、営業利益 25 億ドル、純利益 18.4 億ドル。競合との比較では、セフォラは高級帯で利益率が高く(推定)、ターゲット・ウォルマート・アマゾンは低価格帯で品ぞろえを広げる一方、同社は両方の中間を一つの店で押さえ、会員の再来店で利益率を守る。競合に負ければやや悲観の利益 14.3 億ドルに下がる。還元は 10 年合計 125 億ドル(伸びに要る投資 17.8 億ドルを除く)。倍率は正当化 PER 17.3 倍の 8.0 割にあたる 13.9 倍に置いた。
- 米国の美容小売(店舗・ネット・サービス):数量 1,177(米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定))× 価格 16.0%(同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 188 億ドル・営業利益 24 億ドル。米国:市場 × シェア × 価格
- 海外(スペース NK・提携先の出店):数量 275(英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定))× 価格 3.6%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る)→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。海外:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.3 倍に対し、13.9 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 22.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 36.7%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 30%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.3(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 18 億ドル × 13.9 倍で 257 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:説明会の目標(売上 +4〜6%・利益率 約 12%)と、今期の見通し(営業利益 +8〜9%)の延長に近く、最も確からしい。36%。
やや悲観 24% やや悲観:セフォラとマスに挟まれ、利益率 10.8% へ 利益 14 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 409.50 ドル176 億ドル
米国の美容市場は実質で年 +0.4%(10 年で 1.04 倍)、同社のシェアは 0.97 倍(セフォラのコールズ内の店とターゲット・アマゾンの高級帯が会員を分け合う)、価格は物価並みの 1.41 倍だが値引きとポイント還元で粗利益率が下がる。米国の売上は 172 億ドル、海外 8 億ドル、全体 180 億ドル。営業利益率は 10.8%(今より −1.6 ポイント。人件費が物価を上回って上がり、値引きが増える)、営業利益 19 億ドル、純利益 14.3 億ドル。自動化で人件費を抑えようとしても、サービス(美容室・まつげ)の人手は減らしにくい。競合との比較では、セフォラの店舗数が増え、同社の既存店の客数が頭打ちになる。この筋書きでも黒字で借金は小さく、自社株買いは続くが、利益の伸びは年 +2% 台。還元は 10 年合計 113 億ドル。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 7.0 割にあたる 12.3 倍に置いた。
- 米国の美容小売(店舗・ネット・サービス):数量 1,132(米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定))× 価格 15.2%(同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 172 億ドル・営業利益 19 億ドル。米国:市場 × シェア × 価格
- 海外(スペース NK・提携先の出店):数量 263(英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定))× 価格 3.0%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。海外:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、12.3 倍(7.0 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 24.2%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 39.7%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 14 億ドル × 12.3 倍で 176 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:販管費の増加(成果給・人件費・基盤投資)で利益率が 13.9% から 12.4% に落ちた実績があり、説明会の目標も約 12% と控えめ。さらに 1.6 ポイント下がる筋書きとして 24%。
悲観 12% 悲観:構造的にシェアを失い、もう優良ではなくなっている 利益 8 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 217.67 ドル94 億ドル
10 年の途中でリーマン級の不況に一度あい、そのあと、セフォラ(LVMH の資金力と店の拡大)・アマゾン・ターゲットの高級帯・ブランド各社の直販(動画販売を含む)に会員と品ぞろえを分けられる。米国の美容市場は実質ゼロ成長(10 年 1.0 倍)、同社のシェアは 0.85 倍、価格は値引き競争で物価に届かず 1.30 倍。米国の売上は 133 億ドル(今の 121 億ドルの 1.1 倍。物価で 41% 上がる中で実質 −22%)、海外 5.5 億ドル、営業利益率 7.5%(2008 年度 4.3%・2020 年度 5.1% より上で、今の 12.4% よりずっと下)、営業利益 10 億ドル、純利益 7.6 億ドル。ROE は 25%、成長 g は 3.0% まで。もう優良な小売ではなく、店の賃料と人件費の固定費がのしかかるが、赤字にはならない。還元は 10 年合計 84.1 億ドルと、利益の大半を払い出す。
- 米国の美容小売(店舗・ネット・サービス):数量 1,087(米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定))× 価格 12.3%(同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 133 億ドル・営業利益 10 億ドル。米国:市場 × シェア × 価格
- 海外(スペース NK・提携先の出店):数量 250(英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定))× 価格 2.2%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。海外:市場 × シェア × 価格
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 27.1%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))、k 8.75%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 12.3 倍。RONIC = k + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k)= 17.9%。上限の正当化 PER 16.4 倍の 7.5 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 8 億ドル × 12.3 倍で 94 億ドル。
確率:リーマン時に株価 −84% を経験した事業で、10 年の途中に深い不況に一度あい、そのうえで競合にシェアを奪われる筋書き。悲観の下限 5% を超え 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国の美容小売(店舗・ネット・サービス)
米国の約 1,534 店と電子商取引。化粧品・スキンケア・ヘア・香水・店内サービスを会員向けに販売する中核事業。
| 数量米国の美容市場(プレステージ+マス、億ドル、2025 年度の実質に固定) | 価格同社のシェア ×(2025 年度=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,087 | 11.1% | 121 | 15 |
| 10 年後 中立 | 1,177 | 16.0% | 188 | 24 |
取り方:全社 124.0 億ドルから海外(スペース NK の買収後の半年強とメキシコ等)約 3.4 億ドルを引いた 120.6 億ドル。市場はサーカナの 2025 年の米国プレステージ 360 億ドルとマス 727 億ドルの合計 1,087 億ドルで、シェアは 11.1%(サービスとヘアツール等が市場に入らないので過大側の推定)。営業利益率は非開示で、全社 12.4% に合うよう米国 12.5% と置いた。
海外(スペース NK・提携先の出店)
英国・アイルランドの高級美容専門店スペース NK(数十店)と、メキシコなど海外 88 店の一部。
| 数量英国・アイルランド等の美容専門小売の市場(億ドル、実質、推定) | 価格同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立)。2025 年度は買収後の半年強だけが入るので、通年化の分もここに入る | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 1.4% | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 275 | 3.6% | 10 | 1 |
取り方:スペース NK の買収は 2025 年中で、2025 年度は半年強の寄与(推定 3 億ドル)に海外の他の売上を足して 3.4 億ドル。通年では 4.7 億ドル前後。市場を 250 億ドルと置き(英国・アイルランドの美容専門小売とメキシコ等の合計。推定)、シェア 1.4%。営業利益率は非開示で、買収の償却と小さな規模から 8.8% と推定。
リスクと懸念
利益率が売上の伸びについてこない
2025 年度は売上 +9.7% に対し営業利益率が 13.9% から 12.4% に低下した。販管費率が 24.9% から 26.6% に上がった(成果給・店の人件費・基盤投資)。人件費は物価を上回って上がるので、既存店売上が +3% を割ると利益率が下がりやすい。営業利益率 1 ポイントは営業利益で約 1.2 億ドル(純利益で約 0.9 億ドル)、倍率 30 倍なら価値で約 28 億ドルに当たる。
セフォラの店舗拡大
セフォラは LVMH の資金力で米国の店を増やし、コールズの店内にも出店している。高級帯の客と新ブランドの先行販売を取られれば、同社の客単価が高い層が薄くなる。セフォラは選択的小売全体で 2026 年上期に +5% の伸び(有機)。
マスとアマゾン・動画販売の追い上げ
ターゲット・ウォルマートは高級ブランドを入れ、アマゾンは美容の入口を広げ、動画販売はブランドの直販を後押しする。化粧品は同じ商品がどこでも買え、価格競争で粗利益率(39%)が削られる。会員制度は割引に頼るので、競争は利益率に直結する。
ターゲット内の売り場の共食い
ターゲット内のアルタ売り場は 850 店を超え、店のない地域に届く一方、近くのアルタの店の客を食う可能性がある。ターゲットへの手数料などで売り場の利益率は店舗より低いと見られ(推定)、増えるほど全社の利益率を押し下げうる。
海外(スペース NK)の投資回収
海外は買収で始まった事業で、利益率は米国より低い(推定 8% 前後)。英国の消費の弱さと関税、出店の遅れがあれば、買収の償却と投資が利益を押し下げる。売上の 3〜4% の小さな塊で、失敗しても全社を壊さないが、成長の話の一部を失う。
景気後退での株価の大きな下落
2008 年は株価 −84%(営業利益率 4.3%)、2020 年は −34%(営業利益率 5.1%、店が閉まった)。固定費(賃料・人件費)が重く、売上が 1 割落ちると利益は 3 割落ちる。化粧品は口紅効果で落ちにくいが、高級帯とサービスは落ちる。借金が小さく倒産の心配は小さいが、株価は 5 割以上下がりうる。
今後の分かれ目
- 既存店売上が 2 四半期続けて +2% を割り、販管費率が 27% を超える
- 利益率が 11% 台に下がるサイン。やや悲観の筋書きに近づき、倍率も縮む。確率を悲観側へ寄せる。
- 会員が 5,000 万人に前倒しで届き、既存店の客数が +2% 以上で続く
- セフォラ・マスとの競争に勝っている証拠で、シェアが上がり、利益率が 13% を超えて楽観に近づく。
- セフォラがコールズ内の店を大きく増やし、アルタの高級帯の既存店が落ちる
- 高級帯の客単価が下がり、シェアが 0.97 倍へ。やや悲観の筋書きが濃くなる。
- 関税や調達コストの上昇で、化粧品の価格が物価以上に上がり、客数が落ちる
- 価格は上がるが数量が落ちる。粗利益率が 1 ポイント以上動き、利益は 1 割前後動く。
- リーマン級の不況(失業率の急上昇)
- 売上 −4〜−10%・営業利益率 7〜8%、株価は 5〜6 割下落しうる。借金が小さく倒産はしないが、自社株買いは止まる。
- スペース NK の買収の効果が出て、海外の売上が通年で 5 億ドルを超え、利益率が 10% に近づく
- 海外が第二の柱になる見通しが立ち、その他の海外の出店(中東・メキシコ)の確率が上がる。
見ておくもの
- 既存店売上の客数と客単価の内訳、販管費率(26.6% の推移)
- 営業利益率の推移(12.4% → 今期見通し 12.6% 前後)
- 会員数(5,000 万人の目標)と会員の購入比率
- セフォラの米国の店数とコールズ内の出店ペース、アマゾン・ターゲットの美容の売上
- ターゲット内の売り場の店数と売上への寄与
- 自社株買いの額と借入(短期借入 3.4 億ドルの推移)
倍率と資本コストの決め方
倍率はすべて利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k)で、資本コストを超える稼ぎは先で薄れる)の 7〜9 割(中立は 8 割)で出し、今の PER 22 倍や過去 19 期の中央 27 倍に寄せていない。式の ROE は帳簿 41% が 40% を超えるので ROIC から出して 38〜41%、k は基本 8.0% + quality +0.75% の 8.75%、g は市場の実質・シェア・価格の内訳で 4% まで。中立の 10 年の倍率は約 13.9 倍で今の 22 倍よりかなり低く、ROE が高くても資本コストを超える稼ぎは先で薄れると見た式の結果で、式の外では割り引いていない。悲観の確率を 12% に厚くし、悲観の深さを利益率 7.5% と稼ぐ力の式で表した。二重に下げた点は無い。今の株価は筋書きを作った後に最後に比べた。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 0.90 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。美容は必需に近いが消費の落ち込みに振れ、売り場の優位に長い目で不確かさがある。財務は軽い。個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率、悲観の深さで表した。extra は 0。